表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/582

Case 40-1:精霊を召喚する能力

2020年12月10日 完成


 化物(ナイト)を倒してから様子がおかしい鳴下(なりもと)を家に送る事となった。

 ノープランで提案したため大した話題が用意できず、最寄り駅まで無言が続いた……




【5月20日22時45分 磯始地区・某所】




 空気が重い。

 これほどまでに静寂が暴力的な物だと思った事は無い。


『……』


 その証拠にあのエリスが閉口している。

 ちょくちょく妨害(ジャミング)の可能性を考えて何度か呼び掛けているが全て正常。


 間違いなく、エリスすらも雰囲気に呑まれている証拠であった。


 何度見ても鳴下(なりもと)は俯いたまま何も話さない。

 杣根(そまね)部長への報告の時も、電車移動の時も、この時点でも同様に静寂を守っている。


(まいったな……)


 何度かエリスに『見切り発車止めろ』と言われているのにこの始末である。

 困惑の果てに頭を掻くしかなくなったときに、突然変化が訪れる。


「貴方、何故送ろうなんて突然言いましたの?」


 その目には不思議と疑いの色が一切見られない。

 レアケース過ぎて対応に困る表情に八朝(やとも)も正直に答えるしかなかった。


「あの化物(ナイト)を倒してから様子がおかしいのが気になってな」

「……それで、あの幻覚もやったのですの?」


 何かに気付いたように鳴下(なりもと)が問うてくる。

 無言で首肯すると、今度は呆れた色の溜息を吐かれる。


「貴方……見知らぬ土地でくつろげと言われましても困るだけですわ」


 それは割と最初からそう思っていた。

 だがそれ以外に良い方法が今でも検討が付かず、困った表情しか返せなかった。


「……でも、そのお陰で少しは落ち着きましたけど」


 鳴下(なりした)が呟くように言った言葉が上手く聞き取れず、反応に困る。

 『なんでもないですわ』と一方的に切られて会話が終了する。


 そういう訳にもいかないので、強引に話を続けさせようとする。


「まぁ、アンタは後遺症(レフト)で視界が著しく低くなるからな

 俺にとっての野生の熊と同じように、恐怖には敏感なんじゃないのかなと……」


 但し、これに対する反応は笑いであった。

 あまり気分が良くなかったので抗議しようとしたが、彼女の方が早かった。


「貴方、考え過ぎですわ

 でもそのお陰だったのですね」

「何がだ?」

「貴方が(わたくし)に手を差し伸べた理由が、です」


 それは鳴下(なりもと)後遺症(レフト)が悪化したあの日の事を暗に告げていた。

 もう既に鳴下(なりもと)の表情から過剰な翳りが消え去っていたことに気付く。


「そりゃあ、部長に頼まれているからな」

「ふーん、そうですの?」


 思わせぶりな首肯を最後に、会話は必要なくなった。

 その代わりに彼女の家と、その前に立ちふさがっている人影が出迎える。


「貴方、もう何時だと思ってますの!?」

「それは最初にお伝えしました筈ですが?」


 口調が似すぎていてどっちがどっちだか分からなくなる。


錫沢(すずさわ)……なのか……?」

「あれ?

 八朝(やとも)さんも何故ここに?」


 聞かれたので事情を説明する。

 傍らで鳴下(なりもと)の機嫌がどんどんと悪くなっていった気がする。


「それでですのね、全く」

錫沢(すずさわ)も心配しにここまで来たのか?」

「心配も何も(わたくし)鳴下(なりもと)の隣に住んでいますわ」


 その返しに今までなりを潜めていた疲労がドバッと吹き出す。

 自分のやらかした徒労を思うと、恥の上塗りをしたのが本当に馬鹿らしい。


「話は変わりますが、八朝(やとも)さんは私の本家に行く用事があったのですね?」

「……何故それを?」

「貴方が昔の記憶を探しに行くのでありましたら

 必ずや(わたくし)の『口寄せ』の一族に辿り着く筈でありますので」


 自信満々にそう言ってのけるが、それでは理由にすらなっていない。

 彼女の独自の情報網を警戒しつつ、再び見た表情は彼女らしからぬ怪訝なものとなっていた。


「どうした、そんな顔で」

「……今からでもいいですから、お止しになった方がよろしいですわよ?」

「それは一体どういう事だ?

 確かにアンタにとっては捨てた輩でも……」

電話口で(そとっつら)は親切ですからね、アレらは」


 まるで見透かしたように錫沢(すずさわ)が吐き捨てる。

 一体何があったのだと問いたくなる気持ちを必死で抑える。


「それでも手掛かりになるのであれば……」

「駄目ですわ

 貴方は錫沢(すずさわ)一族の恐ろしさをまるで知っていない」


 会話が一切成立してくれない。

 それ程までに恐ろしい相手なのかと鳴下(なりもと)の方へ向いてもそっぽを向かれるだけだった。


「それでも行くのでありましたら『七含人』に気を付けなさい」

「シチフク……ジン……?」


 恐らくは正規の『七福神』とは違う何かなのであろう。

 篠鶴市で『七』に関係するものと言えば『七不思議』だけなのだが……


 ふと、鍵を開ける音が聞こえてくる。


「ちょ……」

(わたくし)、記憶を失う前の貴方に会った事がありますのよ

 少なくとも記憶を失う前と今の貴方は『別人』でしたけどっ!」


 えらく不機嫌にドアを閉められる。

 取り残されたエリスと錫沢(すずさわ)が困惑の表情を浮かべるしかなかった。

お疲れ様です

DappleKilnでございます


唐突に予告しますと、今回もAルートでの登場人物が2人登場します

どちらも『七含人』関係となります


そしてそのうちの一人は……


それでは引き続きよろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ