Case 39-6-2
2020年12月9日 完成
2020年12月27日 細部修正
八朝達を危機から救ってくれたあの人影。
もう見失いはしない、二度目の正直に縋るように八朝が走り出す……
【Chapter 29-b → No_DATA】
八朝が我を忘れて来た道を戻っていく。
その後ろには鳴下はおろか、エリスさえも来ていない。
あの異能力は『巻き戻す前』を知っていない限り使用不能な筈だ。
だったら、何故あの時無言で『覚えていない』と返した?
その理由が聞きたくて後を追うように駆けていく。
やがて赤い壁が見え始める地点で人影を目撃する。
その、踊るように跳ねるポニーテールは間違いなく三刀坂のものである。
「三刀坂!!」
呼びかけると、人影がピタリと止まる。
肩で息をしている八朝の方を向く。
「どうして、来ちゃうんだろうね……?」
それは八朝にも、三刀坂にも係る言葉であった。
その事実として三刀坂がうっすらと涙目になっている。
「私……八朝君とちゃんとお別れできたのに……
どうしてだろ……キミにはちゃんと自立してから改めて会おうと思ったのに……」
「当たり前だ……あんな終わり方があってたまるかよ!!」
あの巻き戻し前にあった創造神からの拷問を思い出す。
彼のご機嫌の為に自分たちに芽生えかけていた絆をズタズタに引き裂かれたのである。
「そうじゃないよ
私……わたし……!」
そんな三刀坂を抱き寄せる。
突然の狼藉に一向に拒否する様子が無い……間違いなく彼女も『覚えている側』であった。
「もういい、帰ろう
それでまた始めよう」
そこでタイミングよくエリスと鳴下がやって来る。
ある程度の事情を説明すると、鳴下が目を丸くしながらも納得する。
「本当に『巻き戻す前』というのは存在しましたのね……」
ここにきてようやく確信に至ったらしい。
だが、それを心の底から痛感するのは地底探検部部室へと戻った時であった。
「ぐ……ぁぁぁぁあああああああ!!!」
『ふうちゃん!?』
まず、八朝が頭痛で蹲る。
今までで最も苦しい頭痛……その先に得た記憶は何もない。
それどころか、ここに来た理由が朧げになっていく。
(あれ……?
何故俺はここにいるんだ?)
そもそも今日は、と思い浮かべようとして見知らぬ人に声を掛けられる。
「大変だ八朝君!!
今すぐこの街から離れないと……」
それを聞いた八朝の反応が鈍い。
それを察した鳴下が窓口を引き受ける。
「何が起きたのですの?」
「そうか……じゃあテレビを見てくれ」
そういってテレビの電源をつける。
普段の放送の枠を圧縮し、それでできた外周部に文字の情報がひっきりなしに流れる。
やがて、テレビ番組がニュー種番組に強制的に切り替わる。
(まさ……か……?)
八朝が、ついさっきまで保持していた記憶の断片から直観する。
これは繰り返し……彼女と然るべき時を待たずに再会するのを創造神が静観するわけがない。
だが、その記憶も急速に褪せていき単なる妄想じみた直感だけが取り残される。
そしてその答え合わせをナレーションが代弁した。
『本日未明、突如復活したミチザネの雷雲域により海上戦力の50%が崩壊
その後、ミチザネが浮上を開始しまし……たった今落着予想地点が算出されたと作戦本部が会見しました』
『5月23日10時11分……篠鶴市北方沖2km地点』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
TRANSACTION_COMMITED
xxxxxxxx xxx
Chapter 14-a' 鉢頭摩 - The Scourge
END
今回はバッドエンドではなくAルートへの分岐となります
その整合性の為に主人公の記憶が消し飛んだという事なのですね
実際にはあのタイミングで休息を取らなかった場合
化物の洗脳の残り香で記憶が破壊されるので、ある意味では筋書き通りです
そしてこの後のルート分岐なのですが
残念ながら重要なフラグが立っていないので、ある時点でデッドエンドが確定します
それがどの分岐になるのか探してみるのもいいでしょう
因みに私は是が非でもお断りします
44万字から探せとかそんなご無体な……()
勿論Case40も執筆中であります
気長に明日の22時までお待ちください




