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Case 38-1:妖精を作成する能力(自然を歪める能力)

2020年11月29日 完成


【TIMESTAMP_ERROR 篠鶴学園高等部・教室】




「よっ!

 元気にしてるー?」


 背中からの衝撃に驚く八朝(やとも)

 それに伝染(うつ)されたように三刀坂(みとさか)までも驚く。


「え……本当に大丈夫なの!?」

「いや、何でもない……さっきまで寝ていただけだ」


 取ってつけたような言い訳であったが三刀坂(みとさか)は納得してくれた。

 それはそうと、彼女に話しかけられたのは実に3週間振りである。


「それはそうと何か用か?」

「あー……

 えっとね、あの時はありがとうね」


 主語はないが、恐らくは神出来(かんでら)の依頼の件なのだろう。


「事前に全部払ってくれたから、最善を尽くしただけだ」

「うん、それでも生傷(レフト)に悩まなくなって(ゆかり)ちゃん明るくなったんだよ! だから、ね」


 三刀坂(みとさか)が柔らかい笑みでそう言ってくれる。

 だから、つい願望が混じってしまったのである。


「まぁ、また『本物』に関する件があったらいつでも相談してくれ」

「えっ?」


 その時の三刀坂(みとさか)の顔を覚えている。

 『何のことだ』と『何を知っているんだ』という二重の嫌悪の表情である。


 たった一瞬だけ見せたその顔で、彼女も覚えてない側だと悟る。


「すまん……寝ぼけて変な事言ってしまった」

「そ、そうだねー

 もー……早く神隠し症候群治したいんだったら体調ぐらい気を付けないとね」

「それもそうだな」


 無駄話をする分には特には問題が無かった。

 だが、何度も直面する『巻き戻す前』の世界の記憶に頭がおかしくなりそうになる。


 まるで、それが彼女の感じていた苦痛だと言わんばかりに俺を苛み続けた。




◆◇◆◇◆◇




 集まった情報から、あの化物(ナイト)の一応の正体に辿り着く。

 主目的が解決したタイミングを見計らって鳴下(なりもと)が『巻き戻す前』の隠された部分を追及してきた……




【5月12日17時10分 篠鶴学園高等部・地底探検部部室】




「えっ?

 八朝(やとも)さん鳴下(なりもと)さんを見なかったのですか!?」


 地底探検部の部長が八朝(やとも)の質問を聞くなりそう返す。

 どうやらアテが外れてしまったらしい。


 今日は昼休みですらも鳴下(なりもと)の様子を見ていない。

 屋上にも、彼女のクラスにも、どころか第二異能部ですら『休んでいるんじゃないかしら』の始末。


 何やら嫌な予感がする。


「それより迷宮攻略の件はどうなったのですか!?」

「それはウチの部長が説明した通り、今月20日まで待ってもらえると有難い」

「……」


 明らかに焦った様子の部長である。

 命運が今月末に迫っている身としては同情するところもあるが、こちらにも正当な理由があった。


「5月20日にあの化物(ナイト)は確実に弱体化する

 それまでにも色々と確認したい事項があるから、出来るなら待ってもらえると助かる」

「……分かりました」


 明らかに分かったという顔では無かった。

 5月20日があの化物(ナイト)の正体と七冲となる亥日だといっても納得はしてくれないだろう。


「それまでは、予定通り内密に頼む」

「ええ……内密に、ですね」


 今は地底探検部の部長の策略を考慮する暇はない。

 もう一度鳴下(なりもと)のいそうな場所を洗い直そうとしてグラウンドに出たところで大きな声に呼び止められる。


「何か用か?」

「えっと……初等部6年、掌藤千早(たなふじちはや)と言います!」


 息が切れているのか、妙に歯切れが良すぎる口調で自己紹介される。

 だがこの少女に見覚えが無い……


『ふうちゃん……とうとう……』

「本当に見覚えが無いからやめてくれ」

「す、すみません!

 地底探検部に在籍してますっ!」


 これでようやく少女の身元が判明した。

 恐らくはあんな別れ方をして心配して追ってきたのだろう。


「すまんな、今はちょっと急いでいてな」

「こちらこそすみません!

 あのバカまた変な事しそうだし、強く言っておきますから安心してください!」


 何が安心なのかは分からないが、事情は察してくれたらしい。


「それを言うために態々ここまで……」


 気を抜いて低い声を出したのが災いした。

 いつもの柚月(ゆづき)がそうするように、すっかり身体を震わせて青い顔になっている。


 既に学んだはずなのに、ここで使わずいつ使うのだろうか?


「すまん

 非常に助かるが、くれぐれも無理しないようにな」


 しゃがんで彼女と同じ視線の高さで、声色にも気を遣う。

 すると彼女が花開くような笑みで『お任せください!』と宣言して走り去っていった。


 どうやらこの方法は上手くいくらしい。


『ふうちゃん……あの子『掌藤(たなふじ)』って言ってたよね』

「……そういえばそうだな」


 あの残虐無比の掌藤(たなふじ)に妹がいるとは初めて知った。

 もちろんこれに言及すれば命がいくつあっても足りないので心の中にとどめておくことにする。


「そ……そういえば鳴下(なりもと)って人ならお姉ちゃんと一緒に何かお話ししてたみたいです!」


 いつの間にかこっちに戻ってきた掌藤(たなふじ)妹が重要情報を口にする。

 今は急かさず、努めて優しい声音で詳細を聞き出す。


「どこかで待ち合わせるって話は無かったか?」

「えっとえっと……『月の館』でって聞こえた気がしますっ!」

いつもありがとうございます

DappleKilnでございます


開始早々、またもや懐かしい掌藤の名が登場します

彼女の姉の異能力は妖精作成で、しかもエリスの仮の作成者であります


錫沢の件でも立て込んでいる八朝にさらなる難題が襲い掛かります

果たして彼は全てのクエストを達成してあの化物に勝利できるでしょうか?


それでは、引き続きよろしくお願いいたします

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