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Case 36-5

2020年11月23日 完成


 あらぬ誤解で天文台まで逃げてきた八朝(やとも)

 本来の目的である天ヶ井柚月(あまがいゆづき)を探しに天文台の裏口から侵入しようとする……




【5月11日13時05分 篠鶴学園・天文台裏口前】




『ふうちゃん!

 鍵見つけたけど……』

「ああ、言わなくても分かってる」


 案の定鍵がかかっていた裏口から入ろうと雑木林の中を探すこと数十分。

 これでは探すどころか昼飯すらままならない。


「鍵は元の場所に戻して、さっさとここから……」


 ふと、藪の中から白い何かが動いたのを捉える。

 目をこすると爬虫類の眼球によく似たものまで映っている。


『ふうちゃん、どうしたの?』

「いや、そこに何かがいる気がしてな……」


 指さした方向にエリスが分析魔術を掛ける。

 当たり前であるが、相手の固有名(スペル)を解読する電子魔術(グラム)擬きでそんな芸当は不可能である。


 だが、不思議なことを口にした。


『え……ホントだ

 みーちゃんの反応があるね』

「……鳴下(なりもと)……だと……!?」


 藪の中から白い正体不明物が姿を現す。

 それは鳴下(なりもと)後遺症(レフト)で化けてしまう白蛇と瓜二つであるのだが……


「アイツの畜生化は申刻……15時からの筈なのだが……?」


 時間が合っていない。

 であれば本当の白蛇なのだと思っていた。


『Wvisfef』


 聞き覚えのある固有名(スペル)と共に、これまた鳴下(なりもと)が持つ弓矢(アーム)が呼び出される。

 この白蛇は間違いなく鳴下雅(なりもとみやび)本人であった。


「お前、その姿でもしゃべれるのか?」


 首を振って否定する。

 どうやら魔力言語は可能だが、普通の人語は発音ができない。


『ねぇ、これ見て』


 エリスが分析結果を八朝(やとも)に見せる。

 変化のあった個所は以下の所となる。




  STR:5 MGI:5 DEX:1

  BRK:X CON:3 LUK:0


 X=-1




「な……!?

 軽症度(BRK)がー1だと……!?」


 この際ステータスが前回と様変わりしていることは捨て置く。

 後遺症(レフト)の軽症度を表すBRKが0でも致命的な発作を引き起こすのに、今の彼女はそれをも上回る重体である。


『ふうちゃん、時間も13時から17時って延長されてる!』

「未刻と申刻か……」


 今は風水上の『裏鬼門』を論じている暇はない。

 この状態の彼女……白蛇は篠鶴市民に『天使の日』事件(トラウマ)を想起させかねない。


 恐らく彼女がここにいるのもそれが理由であろう。

 だが雑木林の中は蛇すら食料にしてしまう禽獣が潜んでいる可能性もある。


「ひとまずそこは危険だ

 できるなら俺の首とかに巻き付いてくれ」


 手を差し伸べると、蛇特有の威嚇音を返されてしまう。

 根気強くそのままにしていたらとうとう指を噛まれてしまう。


「……ッ!?」

『ふうちゃん!?』


 一瞬、記憶遡行の頭痛が起きた気がする。

 ……いや、そんな事(・・・・)にもかまけている暇はない。


『どうする?

 障壁魔術掛けた方が良い?』

「いやその必要はない

 逆に噛まれたお陰で色々と分かった気がする」


 八朝(やとも)が変な返し方をすると、その場に座り込んで手を差し伸べる。


(そういえば蛇の視点はこれよりも低いんだったな)


 180を超える身長の八朝(やとも)は己と同等かそれ以上の身長の相手にあまり出会ったことが無い。

 それ故に自分よりも身長の高い者と出会った際の特有の威圧感を感じたことが無かった。


 そしてそれは柚月(ゆづき)との会話が失敗した原因にも繋がる気づきでもあった。


「俺はアンタを無害なものに見えさせる術を持っている

 それに鞄の件の事も考えたらどうこうした方が良いだろう、だから……」


 説得はあくまで二の次、あとは警戒心を解いてくれるまで待つしかない。


 少しずつ5時限目まで時が進んでいく。

 最初は頭で何度かつつく、そして首に巻き付くまで早かった。


(samek)


 幻惑(samek)の状態異常を白蛇に掛けて姿を変じさせる。

 校則との兼ね合いからマフラーにしてみる。


「どうだ、問題ないだろ?」

『ふうちゃん……今5月だよ、ちょっとおかしくない』

「何、首に酷いニキビが出来たと言えば分かってくれるだろ」

『ホントかなー……』


 エリスからの疑いの眼差しを無視して全速力で教室へと戻っていく。

 ギリギリのところで5時限目に間に合った。


 教師も特に何も言わず自分の席まで座ることができた。


「そのマフラーどうしたんだ?」

「ん、ああ

 ウルシでかぶれてしまってな、応急処置だ」

「そうか、お大事にな」


 余りにもあっけない返答に八朝(やとも)が唖然とする。

 こいつは確か『月夜ばかりと思うなよ』と呪詛を放った輩の筈だったのに……


八朝(やとも)

 同棲では無いんですよね)

(ああ、そういう事か……助かった)


 フォローしてくれた鹿室(かむろ)に小声でお礼をして丁度5時限目のチャイムが鳴る。

 今日もいつも通り授業をこなしていった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 使用者(ユーザー):鳴下雅

 誕生日:6月26日


 固有名(スペル)Wvisfef(ウヴィスフェフ)

 制御番号(ハンド)Sln.193237(はくちょう座P星)

 種別(タイプ)  :S.VENTO


  STR:5 MGI:5 DEX:1

  BRK:X CON:3 LUK:0


 依代(アーム)  :弓矢?

 能力(ギフト)  :神経毒による身体操作

 後遺症(レフト) :蛇化(未・申刻)


 備考:

  X=-1



xxxxxxxx xxx

  Chapter 19-b   赤壁 - Firewall




END

これにてCase36、地底の呼び声(序)を終了いたします


因みに主人公がレベルアップした1/4(S)級、及び1/2(O)級は不安定という裏設定があります

それについては次話でサラッと紹介いたします


今回から学園地下迷宮の話がスタートします

迷宮というからにはお宝、必要ですよね?


ご安心ください

人によっては『命よりも重い』一品となっています


次回は『水子の謎』

それでは引き続きよろしくお願いいたします

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