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Case 36-2

2020年11月20日 完成


 久々の登校日とは即ち鳴下(なりもと)畜生化(レフト)の面倒事が再開することを意味している。

 しかし、今日は特にどこを探しても見つからない……




【5月7日16時50分 篠鶴学園高等部・某所】




『ふうちゃん屋上は?』

「駄目だ、見つからない」


 残り時間を10分を切っても痕跡すら見つからない。

 エリスの分析魔術で昨日の痕跡が濃かった下層と上階で手分けして捜索した。


 最早万策が尽きつつあった。


「今日に限って……」


 八朝(やとも)は突然の位階(クラス)上昇に身体が追いついていない。

 脂汗をかきながら、必死で息を整えようとする。


「あっ! 鞄の人じゃん!」


 と、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

 鳴下(なりもと)のクラスメイトが変なあだ名で八朝(やとも)を呼ぶ。


「どうしたのそんな汗で……まさか!」

「違う!

 1時間前に位階(クラス)が上がってな……」

「あー……それでか

 私もそれで一回失敗したナー」


 と、何やら良く分からないタイミングで共感される。

 正常な受け答えの出来ない八朝(やとも)では話が進まなさそうで、エリスが動くことにする。


『ねえ、なっちゃん見かけなかった?』

「なっちゃん……?

 あー鳴下(なりした)さんね、見かけなかったけど確か……」


 と、最近の鳴下(なりもと)のおかしな点も含めて話してくれる。

 もうこの時点でタイムリミットまで半分を切っていた。


「すまん!

 助かった!」

「いいって事よ!」


 急いで彼女が怪しいと言っていた『地底探検部』の部室へと急ぐ。

 ドアを開けると数人の部員らしき人たちが吃驚する。


「すまん、驚かせて……」

「あっ!

 キミが八朝(やとも)君だね」


 一番奥のひょうきんな青年が、訳知り顔でこちらに近づいてくる。

 どうやら彼が『地底探検部』の部長であるらしい。


「当てよう……君は鳴下(なりもと)君の居場所を探しに来た! 違うかね?」

『おお、何で分かったの!?』

「さっき廊下で話してたの聞こえてたからね!」


 この時点で残り時間60秒。

 自然に険しい顔となった八朝(やとも)が、意図せずドスの聞いた小声を出してしまう。


「どこにいる?」

「あ……アッ……えっと」

「早く」

「準備室にいる……ヨ?」


 助かった。

 準備室のドアを開けて鞄を置き、急いでドアを閉める。


 数分かすると、明らかに表情だけ笑っていない鳴下(なりもと)がドアから出てくる。


「ごきげんよう、皆さま

 それはそうと八朝(やとも)さんはこちらに……」


 鳴下(なりもと)に廊下へと引きずられる。

 そして逆壁ドンを食らう。


「貴方! 遅いですわよ!!

 あと3秒でわ……わたくしの……!!」

「すまん、ここに居るとは……」

「言い訳無用ですわ!」


 弓矢(アーム)を構えて脅してくる。

 彼女の(からす)落としはエリスの障壁魔術を貫通する為、エリスはおろおろとするばかりである。


「ま、待て話を……」

『むつにひき つくよみ……』

「アイツ等に聞こえてるぞ!?」


 まるで呪縛されたかのように動かなくなる鳴下(なりもと)

 冷や汗まで浮かんでいる……どうやら本当に気づいていなかったらしい。


「ほ……ホントデスノ?」

「さっき地底探検部の部長が廊下越しに俺とエリスの話を聞いていた」


 鳴下(なりもと)が油の切れた動きで『地底探検部』の部室に戻る。

 微笑みもどこか痛々しい……周りの反応がまるでお通夜のような有様となっている。


「ゆ……愉快な方なんですね!」

「ち……チガイマスワ、コレハ……」


 そしてこちらには本当に気づいていない。

 鳴下(なりもと)は無意識下で八朝(やとも)を引っ張って再び部室内に導いたのである。


「そこの彼も、赤い壁が通れるんですか?」

「え……?」


 ようやく気付いたらしく、気まずそうにパッと手を放す。

 取り敢えず何かに巻き込まれた様な気がするので、手近な言葉に手を付ける。


「赤い壁って地下のアレの事か?」

「おお、話が早い!

 そうです噂の学園地下迷宮の事です!」


 地底探検部。

 本来はその趣味を持った数人程度の集まりに過ぎなかったが、去年大きな転機迎える。


 辰之中でのこの部室の中央に地下へと続く階段が発見された。


 これ以降地底探検部はこの学園地下迷宮を攻略する前線基地と……なるはずだった。

 元来やる気が欠落している部員によって実に1年近くこの迷宮が放置されてしまった。


「早くしないと顧問が『地底探検部を潰して異能部に明け渡す』と脅してくるのだ!」

「……当然の報いではなかろうか?」

「酷い!

 血も涙もないのかキミは!?」


 そして、続く鳴下(なりもと)の説明で現在の第二異能部に依頼を出している状況となっている。

 勿論少し前に鳴下(なりもと)が現場に入るまでまたも放置されていた。


(……これ本当に異能部に渡した方が良いんじゃない?)

(……)


 よく考えると、その異能部というのは『巻き戻す前』を覚えている八朝(やとも)にとって重大な意味を持っていた。


 『十死の諸力フォーティーンフォーセス』の予備隊としての異能部。

 彼らに明け渡せば、あの時以上の大災害が予想される。


(どうしたの?)

(いや、なんでも)


 エリスに相槌をを打ってその場をやり過ごす。

 すかさず地底探検部の部長の声が割って入る。


「仕方ないんですよ!

 赤い壁のせいで鳴下(なりもと)君しかマトモに入れなくて途方に暮れていたんです!」

「でも楽だって部長が」

「ちょおおおおおおおおおお!!」


 奇声を挙げて部員のタレコミを妨害しようとする。

 鳴下(なりもと)を含めた表情が全てを物語っている……もう手遅れだと。


「という事でキミもテストを受けてもらいます!

 言い訳無用アーンド準備の時間なし! 即こっちに来てもらいます!」


 突如無許可の辰之中発動にギョッとする暇もなく、今度は部長に引っ張られる。

 もうなんにでもなれと思いながら目的地へと向かって行った。

続きます

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