Case 03-6
2020年7月13日 Case 03より分割完了
2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期
2021年4月21日 ノベルアップ+版と内容同期(二回目)
相対する化物のステータスが壊れていた。
だが、依頼者を助けるにはこの『バグ』に立ち向かわねばならず……
【同日同時刻付近 水瀬海岸(辰之中)】
やがて地属性電子魔術の効果が切れ、戒めから解放された化物は大ジャンプして再び海の上に立つ。
伸ばした両手の先に黒い球が現れている。
「や、八朝君……」
「先程の攻撃からして、そのまま逃がしてくれそうにないな……だったら」
『謌・繧医j陲ゅr蛻・°縺、 豎・縺ョ蜷・縺ッ■■ 逶イ逶ョ繧呈垓縺丈コ悟香莠後・蜻ェ縺・ケ・』
『Ghmkv』
八朝は生み出した黒霧をランプが吊り下がった杖の形に固定する。
その状態異常は相殺、それを三刀坂に差し出す。
「これなら多少狙いが雑でも相手の力を力で押さえつけられる……三刀坂が持っていてくれ」
「え……でも……」
「今の状況では三刀坂が一番強い
故に三刀坂に戦力を集中させて勝機を作る」
八朝は化物に直接ダメージを与えられない。
能力の攻撃力を表すSTR値も電子魔術の強さを示すMGI値も0である。
何よりも今の状況で攻撃力が0とは、防御力が0である事も暗に示している。
「それじゃあ八朝君は?」
「俺については心配するな
戦っている間に依頼者と化物を引き離す策でも立ててみるさ」
そう言って安心させようとする。
三刀坂はおずおずと受け取ると一瞬驚愕の表情になるが、直ぐに表情を引き締めて八朝に問いかける。
その向こうで生み出された黒い球が分裂して2個に増える。
この戦いの勝利条件は一つ。
三刀坂が手加減して戦っている間に、化物と引き離す。
「三刀坂は後退しながら前衛を務めてくれ
エリスは障壁魔術で三刀坂を守り、俺はある方法を試す」
『あいあーい、わかったよー』
「後退!?
そんなことしたら八朝君が……」
三刀坂は弾かれたように後ろを見ると未だに眠り続けている神出来を捉える。
抗議の視線を八朝に向けている間に化物が生み出した球が更に分裂し、右手両足の平に移動する。
化物の超高速の突貫が三刀坂の意識の間隙を縫って眼前に躍り出る。
球の力で宙に浮きながら、球を握り込んだ右手を引く。
その動きに合わせて本能的に化物の右手攻撃の位置にかち合うように灯杖を突き出す。
半身で踏み込み、黒色の波動を右ストレートに合わせて放つ。
『Libzd!』
夜空よりも暗い破壊の奔流とフルスイングの灯杖が衝突すると
奔流が解きほぐされた綱の様に分けられて、三刀坂以外の周囲をランダムに穿つ。
『Immofa be baqrqdj / Sptrhe jw dhnomu / Ocufuvdm ai jmthjqax』
先手を打てた化物が、三刀坂に追撃を加えようとする。
『Hpnaswbit!』
三刀坂をドーム状の3重魔法障壁が包む。
障壁に押される形で三刀坂も黒い轍を引きながら後方に押され飛ばされる。
「謌・繧医j陲ゅr蛻・°縺、 豎・縺ョ蜷・縺ッ……」
その間に八朝は神出来の手を掴んで一か八かのチャンスにかける。
「■■!」
八朝が黒霧を出現させる。
末端が疎らに白く変色しながらそれらを思いきり吸い込み、再び魔力言語に変声させる。
罰則から発せられる激痛が八朝から思考力を奪う。
『ふうちゃん!』
そして障壁も隅々まで罅が入り始める。
その間に編もうとしたダウンバーストの詠唱が完了するよりも早く化物の猛攻が障壁を破る。
『Rhumvha……ッ!』
◆◆◆◆◆◆
【TIMESTAMP_ERROR ■■■■■】
「で……できた……」
呆然と少女が呟く。
扉の先には、あるべき学校の廊下が無く少女の部屋と繋がっていた。
「おめでとう」
これは……俺の声なのか?
その割には柔らかく、今の八朝と別人のような乖離を覚える。
「勘違いしないでください
これは先輩の為であって、貴方の為ではないんですからその顔止めてよ!」
「いや、嬉しくてつい……ね」
どうやら目元を拭っていたらしい。
そんなにも能力発現は珍しい物なのか、俺はいつも……
待て
いつも『何』だ?
「それよりも貴方も急いだ方が良いんじゃない?」
「?」
「もう私に心配事なんて無いわ
だから■■ちゃん、私が取っちゃいますよ?」
俺らしき男が少し逡巡する。
『源宿』『誓約』『毒の鞭』『転生者』『端末の妖精』『水星の迷宮』『灰色の霊』『雷雨』『赤き石』『■■』『■■■』……
『ようやく思い出し始めたね、でも……』
(!?)
突然現れた情報の洪水に頭を抱えようとしても、今の自分に手が無い事を思い出す。
これは記憶遡行……記憶遡行の筈なのに明らかに異質な情報が頭から離れてくれない。
やがて俺らしき男がフッと微笑みかける。
案の定神出来が困惑している。
彼女でなく『俺』に向かって言葉を返したのだ。
「大丈夫、貴方に負ける気はさらさらありませんので」
◆◆◆◆◆◆
一瞬の記憶遡行から戻った八朝は
依頼者の異能力を発動する為の二つの仕掛けを発動させる。
一つ目は展開している霧……これに回転を加える。
即ち中心部に目のような空洞が生じるので、これを扉として定義する。
『■■■■■!』
続いて■■■■の持っている固有名。
これによって丸い空洞にある『意味』が与えられることになる。
即ち、召喚魔術の逆となる■■■■の退去。
ソロモン王の魔術が小さな『鍵』を利用するなら
同じく『鍵』の依代を持つ依頼者にもそれを使う資格がある。
あの短い記憶遡行にて得た■の秘策たる……
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!』
暴れ藻掻く化物の手をがっちりと捉え
足元の魔法円に重ねて意味を与えていく。
『退去せよ! 退去せよ! 退去せよ!!』
そして依頼者を包んでいた化物のヴェールが外れ
元の室内着姿の神出来が姿を現した。
「っしゃあ!」
これで少しぐらいは時間が稼げるであろう。
元に戻った親友に向かって三刀坂が駆け寄っていく。
「想像以上に上手く行った、助かった」
「ねえ……八朝君は異能力の模倣も出来るの……?」
「ん……まぁ、出来たらしい
一か八かだったんだがな」
八朝が先程の記憶遡行を噛み締める。
他人の能力の模倣……『創造神』からも説明が無かった潜在能力に文字通り浮足立たされた気分である。
「三刀坂もエリスもよく耐えてくれた
お陰で漸く対策を話し合える場が作れた、本当に有難い」
『ふふん! もーっとほめていいのよ!』
八朝が素直に賛辞を送る。
そんな彼らを祝福するように一条の光が南東方向の空を駆け上がった。
「花火なのかな?」
「タイミングが良すぎて気持ち悪いが、そうなのだろう」
「エリス、程々にしとけよ」
『えっ? 私あんな魔術使えないんだけど』
続きます




