Case 32-1:神経毒で相手を操る能力Ⅰ
2020年10月25日 完成
妖魔の襲撃から6日間体調不良で休んでいた。。
その間七殺も見つからず、丸前にも遭わず、それどころか親衛隊との抗争も起こらない平和な日常を送っていた。
【4月27日10時10分 篠鶴学園高等部・グラウンド】
『ふうちゃん……』
「何もい言うな、俺がマジで馬鹿だった」
グラウンドで異能力の実技授業に明け暮れるクラスメイト達から目を背けて呟く。
本日は他のクラスとの合同授業であるため、心なしか賑やかである。
実に平和な光景ではあるが、それがエリスの八朝への信頼をゴリゴリと削っていったのも事実である。
八朝が兼ねてから言っていた『未来』の出来事。
丸前、灰霊ともエンカウントすることなくあっという間に6日間が過ぎていった。
『……』
エリスからの無言の圧が居た堪れない。
取り敢えず、今からこの記憶は『神隠し症候群』のせいという事にしてやり過ごすことに決めた。
そんな事を思っていたら、実習担当の教師がこちらにやって来た。
「八朝、そこで何サボってんだ?」
「今回の授業は属性スキルだよな、だったら水属性の出る幕は無いんじゃねーのか?」
属性スキルとは異能力制御技術の副産物たる無詠唱電子魔術の事である。
属性ごとにそれぞれの特色を生かした補助型の電子魔術であり、これの有り無しで化物への生存確率も大きく変わる。
例えば、創造・破壊の火ならLUKのステータスを振り直す『変容』、集合・定義の水なら依代をCONの値の数だけ所持できる『並列』等である。
特に『並列』は常時発動型であり、実質耐久を最弱にするだけのデバフであり、訓練でどうにかなるものではない。
「何を言ってるか!
『並列』を使ってあのように戦う彼を見習うがいい!!」
教師に頭を鷲掴みにされ、無理矢理授業風景を見せつけられる。
一言で言えばごく短いレンジで展開と回収を繰り返す『剣豪将軍』の如き戦い方をする者であった。
『Vrzpyc!』
「ちょ……! お前電子魔術は!?」
突き刺していた刀に円運動を加え、相手の背中を一閃する。
明らかに今回の実習内容を無視した攻撃であった。
「貴様!! 電子魔術は使うなと聞こえなかったのか!!」
「うるせぇ死ね」
刀を初級水属性電子魔術の加速でこちらに飛ばしてくる。
それを教師がエリスの障壁魔術に似た力場防御を発動させて全て弾き飛ばす。
だが、相手はそれを無視してこちらに突っ込んでくる。
それを教師が大喝と共に吹き飛ばす。
「属性スキルはこのように使うのだ、たわけ者が!!」
教師が勝ち誇ったようにそう宣言する。
生徒からのどよめきは無い……ただ、何か嫌な感じのヒソヒソ話が微かに聞こえてくる。
(ねぇ……あの電子魔術の使い方って似てない?)
(似てるも何もアレは……)
果敢に自分たちの戦法を取り入れ、戦うごとに強く狂暴になっていく。
倒れ伏した生徒へと近づいていく教師から猛烈に嫌な予感を感じ取る。
生徒への指導代わりに左手を踏み潰そうとする教師……だが問題はそこでは無かった。
「待て!
丸前のCONは1だ、複数あるのは何かがおかしい!!」
八朝の忠告を無視して、足を振り下ろす。
その足元に依代の霧が集まっているのが見えていないらしい。
そして教師は案の定短刀を踏み抜いてしまい、大量の血を足から迸らせたのち倒れ伏す。
『あーあ……異能部の丸前に噛みついたから』
『やっかみじゃね? いつもあんな風に倒されてるんだし』
『それであんな態度かよ、舐めてんのかホント』
『大体属性スキルオンリーって水が一方的に不利じゃねーか、最初から全部使わせろよな』
誰も助けようとはせず、あまつさえ実習中断を歓迎する声がぽつぽつと現れる。
取り敢えず八朝が保健室に連絡を入れようとすると、その生徒に腕を掴まれる。
「貴様……亡霊だな?」
「……人違いじゃないのか?」
「俺の『朧殺陣』のカラクリを見破る輩は部長を除いて貴様以外あり得ない」
その答えと表情を見るや否や、生徒……もとい丸前が狂暴そうな笑みを浮かべる。
「会いたかったぞ?
さぁ、磯始での続きをしようではないか」
その凶悪な笑みが八朝とエリスに緊張を走らせる。
(ふうちゃん、磯始って……)
(ああ、墓標の隠れ家に侵入した後だ)
一か月以上先の『未来』である。
どうやら相手は八朝と同じく覚えている。
「あの女がいないようだが関係無い……今度こそ殺す」
その不穏な気配を感じ取ったのか周りの生徒たちが囃し立て始める。
ここで逃げれば後で何を言われるか想像できない、こちらも挑むしかないらしい。
どうも、DappleKilnでございます
丸前……覚えていたんですね
ええ、このように覚えている人がいたりいなかったりします
それでも今回のストーリーはAルートからどんどん外れていく……
さて、誰が損をしてしまうのでしょうか?
では、引き続きよろしくお願い致します




