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Case 31-2

2020年10月21日 完成


 七殺(ザミディムラ)に渡した空手形の約束に決着をつけた八朝(やとも)

 依頼が終了した事の報告と一緒に『ある事』を部長に伝えに行った……




【4月21日17時44分 篠鶴学園高等部・第二異能部部室】




「それで、化物(ナイト)斡旋を止めたいというのは?」

「ああ、これからは能力(ギフト)鑑定に絞りたいと思う」


 依頼終了の報告のついでとして部長に『化物(ナイト)斡旋』の中止を相談してみる。

 そもそも生活費を稼ぐ程がっつりとできてなかった上に、危険な割に使命(オーダー)の『記憶遡行』に特に寄与している訳でもない。


 ただ、用無しになる可能性が高いので鞄には退部届も一応忍ばせている。


「そう、じゃあ明日からはそのように切り替えるわね」

「……え?」


 意外なほどにすんなりと八朝(やとも)の要求が通ってしまう。

 面食らっている八朝(やとも)に呆れた表情の部長が返してくる。


「大体貴方は正式な部員でもないし

 そもそも『化物(ナイト)斡旋』も止めて欲しいと今しがた言おうとしていたところだわ」

「そう……なのか……?」

「そういうものよ、だから勝手に止めて頂戴ね」

『ほら、やっぱりふーちゃんは考え過ぎなんだよ!』


 エリスに止めを刺される始末である。

 意外そうな顔をする部長を無視して辻守(つじもり)が割り込んでくる。


能力(ギフト)鑑定って、もしかして2月の僕にしてくれたような事ですよね!」

「まぁ、そんな感じだ」

「だったら僕も賛成ですよ!

 ついでに手伝いたいぐらいです!」

「そうね、意外にも需要があるみたいだし、その方向で頑張ってもらうわね」


 誰一人に止められる事も無く、トントン拍子で決定されていく。

 そして部長からは投げ渡された紙には『入部届』と書かれていた。


『あれ?

 ふーちゃんって第二異能部部員じゃなかったの?』

「そうね、元々はEkaawhsを倒すまで手伝うって約束だったし、正式な部員じゃなかったわ」

「え!? そうだったんですか!?」


 意外そうに驚く辻守(つじもり)と、想定の割に何も驚かない八朝(やとも)

 そんな様子をまじまじと観察されているのにも気付かず八朝(やとも)が記入を進めていく。


「貴方……4月以前の記憶は無くしたのではなくて?」

「……ああ、唐突に思い出してな」

「そう……」

「あ! ならば僕とのめくるめくメモリーたちも……!」

「残念ながら、身に覚えがない」


 残念そうに呻く辻守(つじもり)

 だが、ここで誰かが足りないことに八朝(やとも)が気付く。


「あれ? 鳴下(なりもと)は?」

「彼女はもう既に帰っていったわ

 ……もしかして、後遺症(レフト)の事も?」

「それは知ってる、2時間ぐらい蛇になってしまうんだろ」


 そこまで言って漸く彼女の不在に思い当たる八朝(やとも)

 ついでに渡された書類への記入を終えて部長に返す。


「ええ、これで貴方は今日から第二異能部員ね

 本当ならEkaawhsを倒す程の実力も借りたかったけど、そこは致し方ない」


「改めてよろしくね、八朝風太(やともふうた)君」


 部長からの握手に応じる。

 と、ここでエリスからの横やりが入ってくる。


『そういえば、今更だけど第二異能部って何なの?』

「あら、貴方はそれも分からずに入るのね?」

「異能部から漏れた依頼者を受け入れる部活だろ、忘れたのか?」


 部長から間接的に煽られた気がしたのでそれとなく答えてみる。

 だが、どうやら不正解だったらしい。


「少し違うわね

 私が異能力使用の許可を教師に取り付けて、その権限内で依頼を解決していくという形よ」

「そういや篠鶴市は辰之中以外での異能力の使用を禁じてるな、確か」


 八朝(やとも)以前の5月以降(・・・・・・・)の記憶を思い出しながら返す。

 あの時も教師への異能力使用許可の書類作成が主であった。


「まぁ、そういう事よ

 それで本来は貴方みたいに非合法の請負をやってる生徒を受け入れる為でもあるわ」

「それはすまんかった」

「別に責めている訳では無いわ

 現に貴方は私たちの軍門に下ったのだから、帳消しでいいわ」


 ひらひらと見せつけられる紙には『決闘許可』の確認書であった。

 それは箱家(はこいえ)の件で八朝(やとも)が独断専行したものであった。


「まぁ、こういうのは得意な人に任せるって事ね」


 珍しく部長が微笑んでいた。

 そこに辻守(つじもり)からのウザ絡みが割り込んでくる。


「じゃあ早速僕から何か頼んでいいですか?」

「もう帰るところだから手短にな」

「はい!

 それで、朝に姉さんのプリンを間違えて食べてしまってから今まで機嫌が悪いんですよ、どうしたらいいんですか?」


 全くもって『能力(ギフト)鑑定』とかすりもしない内容であった。

 だが、原因は一瞬で思い当たった。


「もう一回きちんと謝ってこい」

「えー! 適当過ぎませんか!?」

「貴方……その調子で謝ったのなら八朝(やとも)君に同意するわね」

「え……嘘でしょ……?」


 エリスも無言で頷いている(ように端末を傾けている)。

 四面楚歌にしてしまって悪いが、言った手前で手段は何も考えていないのでこれ以上は何も言えない。


「ま、帰りに私が相談に乗るわ、それでいいでしょ?」

「えー! 僕は八朝(やとも)さんと……」

「いいわね?」


 部長からの圧にこくこくと頷くしかない辻守(つじもり)

 ついでにエリスからコツンと小突かれる。


(ふーちゃん、助け船貰えてよかったね)

(……これからは気をつける)


 改めて部長からの言葉を噛み締める八朝(やとも)であった。


続きます

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