Case 29-5-3
2020年10月12日 完成
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蘇った『本物』の正体は顕現級の転生体であった。
八朝は未だに決められずに時間だけを消費する……
【5月20日12時39分 集合海・『ロゴスの大樹』】
『もう時間が無い!』
急かされても、決められないものは決められない。
そうして三刀坂の方へと向く。
ふと、彼女の顔が思っていた以上にしっかりとしていてて驚く。
だから、一言聞いてみる。
「三刀坂……大丈夫なのか……?」
「うん!
ありがと……最後に私を信じてくれて!」
三刀坂が『本物』に駆け寄り、ゼロ距離で鈍足弾を放つ。
約十秒弱の連射で『本物』を致命的に崩壊させることに成功する。
けたたましい警告音が嘘のように静まる。
『まさか……涼音が……!』
「ごめんね……八朝君に会いたかったのはこの為だから」
「今まで私に優しくしてくれてありがとう!
でも、もう私は一人でも大丈夫だから……支えてくれる人が出来たから!」
きっと血を吐くような表情で言い切ったのだろう。
少々卑怯であるが、三刀坂の真意を知ることが出来て本当に良かったと思う。
『……完敗だ
正直、もしも八朝が手を下していたら手遅れになっていただろう』
「え……?」
「……それがENIAC……いや、『濃霧』の蚩尤の意思だからか?」
死にそうに穏やかだった顔が、驚きの色に染まる。
『まさか、アルキオネ0の真名を……』
「いや、まさか当たっているとは思わなかった」
『それでも見抜いた理由……言うまでもなく間割達の所で見たアレだね』
単なる連想でしかなかった。
大樹の形の化物、そして落ち葉のように『鱗』を落としていく様。
何となく蚩尤の最期である『楓人』を思い起こしたからである。
であれば、この神性は武器の祖である五兵を生み出した者……即ち依代の砕き方に知悉したものである。
『そう、僕は『蚩尤』
化物と異能力を生み出した『始まりの化物』だ』
「始まりの……」
『そして僕が出た時点で本来は手遅れなんだ
もしも、また僕に触れようとする者が居たら……』
「ああ、何度も止めてやるよ」
再び『本物』が穏やかの表情に戻る。
「八朝君! さようなら!」
三刀坂を見守りながら『本物』が二度目の死を迎える。
『ロゴスの大樹』も同時に砕け散り、この場に八朝達と転送陣以外に何もかも消滅した。
「帰ろっか」
「ああ」
転送陣から機関長達が居た区画に戻る。
何となく予想であるが、飯綱が勝ったような予感がしていた。
まもなく、その妄想じみた確信が真実となる。
「よお、遅かったな」
「……」
血の海が広がっている。
その凄惨な光景から守るように八朝達が歩き去っていく。
「……じゃあな、八朝
上で『創造神』に打ち勝ったお友達が待ってるぞ」
「ああ、ありがとう」
一言、飯綱に感謝を述べる。
その言葉通りに駆け寄ってくる神出来と、咲良にで迎えられる。
「先輩!」
「ふーちゃん!」
取り敢えず、咲良からは回避して奥にいるマスターに面と向かう。
「ただいま」
「馬鹿野郎……遠足は家に帰るまでだ」
マスターの柔和なツッコミと労い代わりの拳骨に出迎えられた。
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使用者:三刀坂弘治
誕生日:7月10日
固有名 :Nzyuk
制御番号:Nom.140283
種別 :O・LUCIS
STR:1 MGI:5 DEX:5
BRK:5 CON:2 LUK:4
依代 :光
能力 :物質の光変換・保存
後遺症 :寿命のみ常人の10倍
備考:
光属性は火地風水に弱く、闇に強い
摩利支天真言を利用して『蜻蛉』を出現させている
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■■■■■■■ 29-a 決別 - "DEATH" Reversed
END
Case30-0-3(エンディング)に続きます




