Case 26-1:404・Not_Found
2020年9月28日 完成
『カマイタチ』……七殺を倒した八朝達。
しかし満身創痍の上頼りの通路も破壊され、一度仕切り直すことにした。
【5月20日8時23分 篠鶴学園高等部・教室】
朝のHRより少し前の時間、段々と登校してきた人が増えて賑やかになっていく教室。
八朝が自分の席に着いて落ち着こうとした所に背中を思いっきり叩かれる。
「……だから椅子の背凭れごと叩こうとするなと」
三刀坂が涙目で手を押さえながら挨拶してきた。
こんな状況であるが、徐々に日常が戻ってきているのは喜ばしい事である。
「それで、今日も部室に集まるの?」
「そうだな……
ところで神出来は大丈夫か?」
「大丈夫!
でも、これ以上はいっしょに行けないって」
昨日の戦いで神出来は左腕を両断される程の大怪我を負った。
篠鶴機関の治療と異能力者の自然回復によってもう傷一つ無くなってはいるらしい。
だが、平気で人体をねじ潰すような化物のような敵と戦いたくないのは自明の理である。
「お、お前ら本当に生きてたのか!」
「まあな、第二異能部を舐めてもらっては困る」
八朝がクラスメイトからの冗談を受け流す。
三刀坂は未だに慣れてはいないが、八朝は大丈夫だと察知した他の同級生たちが寄ってくる。
「そういや八朝君って『影踏みの牛鬼』を倒したって噂本当なの?」
「そりゃあデマに決まってるだろ」
「いやぁ……お前なんだかんだ言ってやりそうなタチなんだけどなぁ」
「無いもんは無い、まぁここだけの話だが『断罪者』がトドメを刺してくれた」
口々に「あーそっかー」のような反応が起こる。
こんなに注目を浴びる事は稀ではあった。
だが、何か微妙に引っかかる……無視できない違和感が頭の片隅にこびり付く。
期待はずれで何人か輪から外れていく、それでも残った何人かが傍らにあった荷物に気付く。
「それアレか?」
「ああ、『断罪者』を勧誘しに、な」
三刀坂が不安そうに袖をほんの少し引っ張った。
恐らく、無理をして天ヶ井柚月が死んだ事を隠したのだろうと気遣ってのものである。
今反応すると面倒臭い事になりそうなので部室に行った時に改めて礼をしとこうと決める。
だが、クラスメイト達はそんなに甘くなかった。
「何だお前ら、あの1週間で何かあったのかよー」
「……別に何もなかった」
「怪しい……こりゃあたっぷりと話を聞かないと」
にじり寄ってくる野次馬達、だが申し訳ないが本当に何も無い。
基本は別々の家で寝ていたので期待している程の何かが起きた事は無かった・
「……ああ!
そういえば今日は担任が休みであの鬼教師がHRやるらしいからな、急いだ方が良いのでは?」
マジかよ、と弾かれたように自分の席へと戻っていく。
勿論ハッタリではあるが、それに気づくのはもう少し先になるだろう。
それでも、隣の席の人から先生が来る限界の時間まで話しかけられた。
そこで漸く違和感に気付く。
あの生真面目な鹿室の姿が見えないのである。
「一つ聞きたい事があるが、鹿室はどうした?」
「……そっか
あの時、八朝さん達はここに居なかったからね」
謎の含みのある答えで返される。
不安な気持ちを隠して訊いてみても『知らない方が良いよ』とだけ返されるのであった。
そしていつもの担任の先生が黒板側のドアから入ってくる。
十数個ぐらいの冷たい視線を冷や汗と共に浴びる。
「?
皆さんどうしました……何かありましたか?」
「何でもないですよー」
「そうですか、では朝のHRを始めます」
起立、礼、着席。
そして先生の口からとんでもない言葉が飛び出て来たのである。
「それでは連絡事項が一点。
十死の諸力に入ったとされる鹿室君について何か知っている事が……」
それ以上先生の話が入ってこなかった。
(あの鹿室が……!?)
呆然としていると、隣の席の人から揺さぶられる。
周りの反応を見る限り、先生が八朝に目星を付けたらしい。
「それでは八朝君
昼休みに職員室に来てくれると助かります」
「……わかりました」
クラスメートからの質問攻めを回避できた代わりに、更に恐ろしい予定が組み込まれる。
だが、心当たりは無くはない。
(まさか……まだ部活再興を!?)
ノートの切れ端で隣にそのことを聞いてみる。
返された返事には一言「そうだよ」と書かれていた。
後ろから紙片が渡される。
後ろの席には三刀坂が座っているので、彼女からである。
予想通り鹿室の事を訊いて来たので今知った事を簡潔に書いて返す。
(……無理し過ぎない事を祈りたいが)
と、彼の身を案じる。
彼は丁寧ではあるものの、目標達成のために強引になるきらいが……
(……あれ?
そういえば何故俺は鹿室の事を知った風に……?)
八朝が親友である鹿室の事を思い出そうとして引っかかる。
そういえば4月以降は掌藤親衛隊や部活再興の2点以外で彼と会った覚えが無いのである。
いや、会ったはずなのに思い出せない。
(な……何が起きてるんだ!?)
脳裏に過る最悪の可能性を振り切って午前の授業をこなしていく。
その間にも少しずつ記憶の欠落を意識させる出来事が続いたのであった。
毎度ありがとうございます、DappleKiln(斑々暖炉)でございます
のっけから主人公が何か変ですね
しかも彼の親友(?)の鹿室が十死の諸力に……
さて一体何が起きているのでしょうか?
それでは引き続きよろしくお願いいたします




