Case 24-5
2020年9月22日 完成
丸前が放った超重力の一撃を粉砕し、彼に再び打ち勝った八朝達。
だが、そんな彼らに最悪の相手の声が届くのだった。
【5月19日19時59分 磯始地区・隠し通路?】
「お兄……ちゃん……!?」
驚愕する三刀坂に対して、丸前が苛立たしく吠える。
「墓標!
我等に対する背信……死を以て償え!」
『はて、なんのことやら』
「とぼけるな! 我らの掟の初めに『裏切りは死によって償う』とある、忘れたとは……」
『我は初めから十死の諸力ではなかったぞ?』
これには八朝すら呆れて何も言えなくなる。
それでもまだ彼の忠誠心を信じて丸前が糾弾する。
「ああ……このことは我が主に報告する! 追って沙汰を待つがよい!」
『我が主とはこれのことかな?』
八朝の腹から突如出現した蜻蛉が丸前の目の前まで飛んでくる。
そして、二つのスイカ大の物体をぼとりと落とす。
一つは原形が付かない程破壊され、そしてもう一つは。
「い……異能部の部長だと……!?」
八朝の驚愕に合わせて吐瀉音が聞こえる。
丸前があまりの絶望に胃の内容物を吐き戻していた。
「お前……俺に盗聴しないって約束はどうした!?」
『いくら眷属の頼みでもそれは聞き入れられなかった
現にこれが無ければ眷属たちは命を落としていた、違うか?』
そういう問題じゃなかった。
それほどまでに彼の精神は歪み果てていたのである。
『そして言葉を返そう、新たなる第一席よ
貴様は我が掟たる『家族に手を出した者は拷問死となる』を破った
よって『天使の石』の礎となるがよい』
蜻蛉が赤く輝くと、夥しい量の同族達を生み出す。
丸前を処断する死神に取り囲まれる。
「……かくなる上は!」
もう一度祈りを捧げようとする。
だが……
『遅い』
あの天体を再び呼び出そうとする丸前に蜻蛉の群れが襲い掛かる。
だが、それらを一太刀で消し飛ばした。
『ほう?』
「我が『渦動斬』を舐めるなよ薄汚い裏切者!」
残り数匹の蜻蛉が縦横無尽に飛び回り、丸前を追い詰めようとする。
一太刀は数個の渦を呼び、その渦動が蜻蛉の動きをかき乱す。
(これは……)
八朝も認めざるを得ない。
性格はどうであれ、丸前は間違いなく武人の域に達した者であると。
だが、相性が非常に悪かった。
『そちらこそ、我が力を舐めないで貰いたい』
墓標が電子魔術の詠唱を始める。
彼の名……即ち三刀坂弘治の名は学園内にも残っている。
炎雨……即ち電子魔術の達人として……
「無駄!」
蜻蛉がもう一度雲霞の如き子を放ち、そこから針のように細いレーザーが放たれる。
それでも通路の岩盤を深く貫く威力……これを丸前が渦を使って逸らし続ける。
だが、終わりの時が訪れた。
「がっ! ……ぐっ!
……ぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!」
雨に紛れた蜻蛉の突進が丸前の胴体を貫く。
そして彼の体が足先から順に溶解していく。
「……!
亡霊……必ずや……貴様を……!」
それが彼の最後の言葉となった。
後には『天使の石』の被害者と同じ、苦悶の声を上げる血だまりだけ残された。
「……」
『その気持ちは大いにわかる
だが、君達にその余裕は残されていない』
「どういうことだ?」
『十三席が元の化物へと戻った』
それだけで八朝達に事態の深刻さが伝わった。
完全復活した八朝と共に新しい生活を送りたかった七殺が人の形を失えば狙うのはただ一つ。
別の身体である。
『そら、もう来たぞ』
再び青一色の世界に逆戻りする。
振り返るともうあの蜻蛉の姿が消え去っていた。
代わりに目深くフードを……被っていない普通の七殺が立っていた。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!』
だが使っている言葉は化物の呻き声とそう変わらないものに変わり果てていた。
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使用者:丸前巧
誕生日:4月12日
固有名 :不明
制御番号:不明
種別 :S・UMBRA?
STR:2 MGI:1 DEX:0
BRK:2 CON:4 LUK:4
依代 :妖刀・村雨
能力 :水分子操作
後遺症 :三方替
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■■■■■■■ 24-a 終末 - Apocalypse
END
これにてCase24、丸前との決着回を終了いたします
彼も頑張っていたのですが、まさかその背後がとんでもない事になっていたとは
主人公側に例えるなら太陽喫茶&第二異能部の現メンバー皆殺しに等しい事態です
そりゃあそうなるよね……
次回は七殺です
再び主人公が殺しに手を染めてしまう
次回も乞うご期待下さい




