表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/582

Case 23-4

2020年9月18日 完成


 救出した神出来(かんでら)から衝撃の真実が伝えられる。

 それと共に意識だけの本物(・・)と対面し、ついに字山(あざやま)から託された力を手にする




【5月18日14時7分 北篠鶴地区・用賀所有の空ビル】




「気が付いた?」


 目を開くと三刀坂(みとさか)の姿が確認できる。

 どうやら膝枕されていたらしい……慌てて飛び起きる程体調が万全でないのでゆるりと体を起こす。


「いきなり頭を抱え始めて、何が起きたのよ」


 心配してくれる神出来(かんでら)にこれまで起きた事を話す。

 それと共に試してみたい事が一つあった。


 ■■■(pit)と唱え、あの字山(あざやま)のように刀印で右腕をなぞる。

 指先に小さな赤色黒雷が迸る。


「それって字山(あざやま)君の……」


 どうやら本当に使えるようになっているらしい。

 恐らくは麻痺の状態異常(ギフト)……■■■という神名が正しければ七殺(ザミディムラ)の弱点を付けるかもしれない。


 だがそれは同時に『本物』の魂魄を代償にする一撃であった。

 三刀坂(みとさか)達にも話していない秘密に、一瞬だけ苦虫を噛む様な表情を浮かべる。


「へぇ……そんな簡単に八朝(やとも)さんはパワーアップできるんだね」

「失くしていた力を取り戻しただけだぞ」

「私だってそんな風にパワーアップ出来たら苦労しなかったのに……」


 神出来(かんでら)がそっぽを向いて捨て台詞を吐く。

 だが、八朝(やとも)にはその態度が不思議でしょうがなかった。


「……神出来(かんでら)能力(ギフト)も改善の余地があると思うんだが?」

「へぇーじゃあ聞かせてみてよ!」


 掻い摘んで要点だけを話す。


 彼女の能力が探索・接続・跳躍の三工程で空間移動を為している事。

 そして灰霊(グラフィアス)の攻撃が結果的に『空間同士を中継する異空間』の生成に成功している事。


 そして先程の七殺(ザミディムラ)の発言を加味する。


「『Minomotoboshi』を召喚する……だって……!?」

「ああ、ソイツが敵対的でない限りであるが大きな戦力になると思うぞ」


 神出来(かんでら)(アーム)を見つめている。

 やがて、固有名(スペル)を叫んで能力(ギフト)を発動させる。


「ちょ……!?」


 三刀坂(みとさか)が驚愕して言葉を紡げない。

 あの日エリス込みでも瀕死まで追い詰められた悪夢(ナイト)が、扉の奥から姿を現した。


 八朝(やとも)■■■(pit)を呼び出そうとしたが、神出来(かんでら)に制止される。

 どころか『Minomotoboshi』に向かって歩み寄っている。


「待て、何が起こるか……」

「心配しなくていいよ、絶対に大丈夫だから」


 この手の蛮勇を振るった相手の『絶対』ほど信じられないものはない。


「……Libz」

「待って!!!」


 三刀坂(みとさか)の援護すら大喝にて打ち切らせる。

 そしてようやく八朝(やとも)が気付いた……先程から『Minomotoboshi』が一切攻撃行動に出ていない。


 固唾を飲んで見守るしかない八朝(やとも)達のその先で神出来(かんでら)が手を伸ばす。


「……私、何となく気付いてた

 私がピンチの時にあなたが手を貸していてくれていたのよね?」


 言われてみればそうであった。

 海岸で戦ったあの時『Minomotoboshi』は、執拗に八朝(やとも)達を攻撃していたが神出来(かんでら)には終ぞ何もしていなかった。


「何が目的なのかは分からない

 でも私も命を狙われてかなり危ないの」


「だからお願い!

 私も何でもするから守って欲しいの!」


 『Minomotoboshi』が神出来(かんでら)の身勝手な願いを真摯に聞いていた。

 それは比喩ではない……神出来(かんでら)の前で『Minomotoboshi』が跪いて敬意を表したからである。


 伸ばした手の中で(アーム)が姿を変え、手の甲に刺青として巻き付いた。

 恐らくそれが『Minomotoboshi』との契約の証かもしれない。


 そして幻のように掠れて消えた『Minomotoboshi』を見送って、改めてこちらに向き直る。


八朝(やとも)さん、改めて思ったけどマジで凄いよそれ

 この騒動が終わったらうちのクラスにも口コミで広めてあげるから」

「あ、ああ……それは助かる」


 神出来(かんでら)からの予想外の返しに歯切れ悪く返答する。

 あくまで机上の空論でしかなかったソレが形を成して、神出来(かんでら)の異能力のポテンシャルを向上させた。


「まぁでも七殺(ザミディムラ)は『Minomotoboshi』を狙っている訳なんだよね……」


 複雑な表情を浮かべる神出来(かんでら)

 即物的なレベルアップではなかったので致し方ない。


「じゃあ改めて……

 七殺(ザミディムラ)墓標(メトセラ)、それと先輩たちを無視して去った用賀(ようが)をどうするの?」


 八朝(やとも)は改めて今直面している問題に向き合う。


 七殺(ザミディムラ)については神出鬼没で対処できない。

 用賀(ようが)の表情を考慮すればもう少し彼から何かを聞く必要があったかもしれない。


「まずは神出来(かんでら)についてだが……

 しばらくの間は三刀坂(みとさか)と行動を共にしてもらう」

「願ってもないわ! でも……」


 不安そうに三刀坂(みとさか)の方を向く。


「うーん……そういえば料理作ってくれる人がいてくれたらいいなって」

「料理作れます

 寧ろ大得意です」


 グイグイと圧してくる神出来(かんでら)に特に嫌がる様子が無い三刀坂(みとさか)

 取り敢えずこの問題は解決した。


 あとは墓標(メトセラ)の情報収集である。

 だが墓標(メトセラ)についてはアテがあった。


「俺は弘治……墓標(メトセラ)の隠れ家に行ってみる」

「え……一人で行くの!?」


 弘治の隠れ家は『渡れずの横断歩道』の先……即ち旧鳴易トンネル内にある。

 その理由を説明すると三刀坂(みとさか)が食い下がって来た。


「私、キミと一緒にあのトンネルの向こう側に行けたのに!?」

「だが神出来(かんでら)が越えられないだろ」

「ん? 普通に越えられるんだけど」


 神出来(かんでら)能力(ギフト)でドアの先を変更し、全員でその向こう側に渡る。

 交差点名には『遠海駅前北』……バッチリ『渡れずの横断歩道』の向こう側であった。


「ね、できたでしょ」


 唯一の問題である『八朝(やとも)しか行けない』がここで瓦解する。

 という事で、改めて神出来(かんでら)にお願いをする。


「そのなんとかトンネルってのは分からないけど、磯始駅なら行けるからどう?」

「それで十分すぎる、助かる!」


 神出来(かんでら)が再びドアの先を磯始駅に変更する。

 八朝(やとも)達は墓標(メトセラ)の秘密を暴く為に一歩踏み出した。

次でCase23が終了します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ