Case 22-3
2020年9月13日 完成(0時04分)
太陽喫茶で久々の晩御飯を食べる。
翌日、いつも通りに学校に通った八朝であるが……
【5月18日9時16分 篠鶴学園・教室】
「でさー聞いたか昨日の事件?
篠鶴機関のジョークだっつってるけど限度があるよな」
「確かに、流石に悪趣味過ぎだ」
八朝がクラスメートと昨日の話で盛り上がる。
あの騒動……八朝が異能力者を数人殺したあのデマの話が一切ない。
それは三刀坂も同様で、彼女に至っては冷や汗すら浮かんでいる。
全て神出来の功績であった。
(後で彼女にはお礼か何かしないとな……)
八朝達はこうして平和な日常を送っていた。
「ああ、それと……
天ヶ井柚月について何かあるかな?」
「おおう、どうした急に……」
「いや、性格が急変したって話を掴んでな……」
断罪人の話を聞き出そうとして引かれる八朝。
クラスメートが考え込んでいると、ふと何かに気付いたように話し始める。
「ああ、そういや彼女を追い回していた2人の女子もあの騒ぎで死んだんだっけな」
「そうなのか……」
「あの時は色々あったからなぁ……
お前のデマといい、それを庇ってくれた三刀坂ちゃんといい……」
どうやらあの時の騒動はそういう結末となったらしい。
だが、それ以上に気になる話が聞けた。
「追い回していたってのは具体的に」
「ん……ああ、ストーカーって訳じゃなくて単なるウザ絡みだよ」
「それで殺したってのは一体……」
「まぁ断罪人だしなぁ……」
認識の相違はさておき、あの柚月がウザイだけで人を殺すような狂人には見えない。
恐らくはもうこの時点で七殺にすり替わっていたのだろう。
「あ、それあの日に遺体が発見されたってだけで死んだ日は違うんだって」
「へぇー……いつよ」
「5月4日……ミチザネの翌日だってよ」
その言葉に愕然とする八朝。
またも柚月と七殺を繋げる線が濃くなってしまった。
「どした、八朝」
「ん、ああ……何でもない」
「そういやさ、お前鹿室どうすんのよ」
「鹿室か……」
保安条例が施行され、この学園から消え去る部活を守るべく非能力者の助力を得ようとした鹿室。
だが、この6日間状況が変化していないことを鑑みると、そろそろ潮時なのかもしれない。
「逆に聞くが部活はあった方が良いか?」
「……正直言うと運動部の俺は大会に出る度にあの手錠を嵌めるのが何か嫌でさ」
「わかる、そんで異能力者は出場禁止なんて言われるとな、だったらこっちから願い下げだって」
「正直部活で得られる成績もたかが知れてるし、だったらお前の第二異能部に頼んで強くしてもらって課題こなした方が……」
八朝は複雑な気持ちになった。
三刀坂からの話だと部活は篠鶴学園でのセーフティーネットの筈が、もう既に機能していなかった。
「という事で俺の依頼の時は優先的に頼むな」
「ま、報酬額によるな」
ここで授業開始のチャイムが鳴る。
本来なら先生が教壇に来るはずの時間に、5分10分と来る気配が無い。
「お、おい俺見て来る」
前の方の席の生徒が廊下から出て確かめる。
やがて1分もしないうちに血相を変えて戻ってくる。
「た……大変だ!
先生が……先生が……!」
要領を得ないので八朝が教室を出て確認する。
すると、あの時見た呻き声を上げる血だまりがそこにあった。
「な……篠鶴機関は嘘だって……」
遅れて来たクラスメイトたちが口々に何かを言う。
「え!?
嘘だってなったのは暴動だけじゃないのか?」
「そんな訳ないだろ!
あの悪趣味な電波ジャックも……」
だが、今度はノイズ交じりの放送が流れて来る。
『やぁ、おはよう篠鶴学園諸兄
昨日のアレを夢にはさせない……再び『裁き』を受けよ』
八朝が全速力で放送室へと走り出す。
あの時の続きが起きる前に、ここで彼をとっ捕まえる必要がある。
施錠されたドアを異能力の身体強化でぶち破る。
だが、放送室には誰もいない。
「ねぇ! 待って!」
「どうした三刀坂!?」
無言が怖かった。
そして放送室の椅子から赤い雫がポタポタと落ちて来る。
あの呻き声が……
「まさか……やられたのか?」
無言で首を振って否定する。
再びクラスメイトの元へと戻ると、首なしの死体が数体倒れ伏している。
どうやら逃げた跡らしい。
そしてこの殺され方には見覚えがあった。
「……七殺か
そういえば弘治と同じ十死の諸力か」
こうなると危険な人物が一人浮上する。
「縁ちゃんが……」
「……急ごう」
続きます




