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Case 21-1:『盗み』を操る能力

2020年9月5日 完成(19:05)


 とうとう本当に人殺しをしてしまった八朝(やとも)

 泣き崩れても安全を得られる訳は無く、再び神社の本殿へと目指す。




【5月12日12時17分 遠海地区・■■神社】




「よォ……遅かったじゃねーか! 八朝(やとも)!」


 石畳の上に異能部の平部員、丸前巧(まるさきたくみ)が立っている。

 無論、彼がこの場所を知っているわけがないし、ここに立ち寄る理由すらない。


 その傍らに転がっている血達磨を見て三刀坂(みとさか)が短く悲鳴を上げる。


「なんで……?」

「あ?

 ここにいる裏切者(飼葉倉次)は指名手配犯だろ……だったら我等異能部が看過するわけにはいかねぇよなァ?」


 篠鶴学園、ひいては異能力者の治安を守る異能部としては道理が通っている。

 だが所詮篠鶴機関に内定している程度の異能部員では治安維持組織に足る権限は与えられていない筈。


「だったら他に狙うべき相手がいるんじゃないのか?」


 三刀坂(みとさか)の目の前に立ち、丸前(まるさき)現行犯(八朝風太)を狙わなかった不備を暗に告げる。

 対して丸前(まるまえ)は不敵な笑みを崩さない……寧ろ今になって感情的になり始めている。


「その通りだ

 お前が飼葉(かいば)と通じていたのは知っている……だったら」


「コイツをぶち殺してここで悠長にしていれば、後が無くなったお前と鉢合わせが出来る」


 丸前(まるさき)村雨刀(アーム)を構え、何かの詠唱を始める。

 八朝(やとも)が三方替を狙って意識を集中させるも、まもなくその目論見が外れる。


『Vrzpyq!』

『Libzd!』


 刀も丸前(まるさき)初級水属性電子魔術(アクアグラム1)の超加速によって掻き消える。

 すんでのところで三刀坂(みとさか)の異能力が間に合い、八朝(やとも)は速度の鈍った突進突きを間一髪で躱す。


「おっと

 お前の真似をしてみたが、案外使えるなコレ」


 その後も初級水属性電子魔術(アクアグラム1)を使って反動を殺し、刹那の立て直しから再び近接戦闘へと移行する。

 三刀坂(みとさか)が騎士槍で応戦するも、その数回の斬撃が難なく当てられてしまう。


「くうぅ……」

「我より袂を分かつ汝の名は■■■■(kap)!」

『Vrzpyq!』


 八朝(やとも)がA0の6倍のサイズの仕掛け絵本(kap)を呼び出す。

 エリスの初級水属性電子魔術(アクアグラム1)がページを捲らせ、剣豪の絵をポップアップさせる


 紙でできた剣豪の一撃を丸前(まるさき)初級水属性電子魔術(アクアグラム1)で躱そうとする。


(甘い!

 そう来ることは想定済みだ)


 仕掛け絵本の紙のソデを引っ張り、剣豪の剣筋を捻じ曲げる。

 相手は両断できなくとも毒の状態異常(ギフト)丸前(まるさき)の眼前へと迫っていた。


『Vrzpyq!』


 突然丸前(まるさき)の剣筋もねじ曲がり、剣豪の持つ刀とかち合う。

 そして、水以外を透過する村雨刀(アーム)が剣豪を両断し、仕掛け絵本(kap)を崩壊させる。


「まだだ……まだだ!

 お前たちの実力がこの程度な訳があるか!」


 勝ち誇ったように丸前(まるさき)が叫ぶ。

 捻じ曲がる剣筋を目の前に、三刀坂(みとさか)八朝(やとも)も成す術なく打ち倒される。


「さァ! さっさと再生するがよい!

 そして俺をもっともっと愉しませろォ!」


 悠長に第二ラウンドの開始まで律義に待つ丸前(まるさき)

 戦いと名誉、それ以外に彼を突き動かすものが存在していない。


 八朝(やとも)固有名(スペル)を唱え、(アーム)を呼び出す。


「幻影は使わないのか?」

「我が神聖なる決闘を幻に穢されてなるものか!」

「そうか、じゃあ異能部部室で使ったアレは良いんだな?」


 ようやく丸前(まるさき)の顔が苦痛に歪む。

 戦わなくてもいい、その代わりに彼の選択肢が激減する程の『不名誉』を与えればよい。


「異能部とやらはお前の誇りすらゴミのように踏み躙ったワケだ」

「黙れ」


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」


 刀を構え、幽鬼のようにふらふらとこちらを見据えながら近づいてくる。

 これならばある程度は予測できるようになる。


「黙れ!!!」


 刀は狙いを外さず、逃げようとする八朝(やとも)を両断し、上半分を地面に転がす。


「!?

 馬鹿な! 俺の一撃では断ち斬れぬ筈……!」


 その後ろから衝撃が入る。

 1メートルサイズの待針(digg)を構えた八朝(やとも)の一撃が深々と刺し貫かれる。


 だが、同時にカツンという音が響く。

 ……唐突にエリスが落下したのである。


「エリス!?」

「エリスちゃん!?」


 慌てて駆け寄ってエリスの様子を確認する。

 激しいブロックノイズの間をブラックアウトが覗かせる嵐のような画面、尋常ではない。


『鬧?岼窶ヲ窶ヲ騾?£縺ヲ?∽クク蜑阪′窶ヲ窶ヲ?』

「おい! しっかりしろ!」


 エリスの声が理解不能な物へと壊れ果てる。

 そのせいで丸前(まるさき)が『自力で八朝(やとも)状態異常(ギフト)を破れる敵』である事をすっかり忘れる。


『Vrzpyq!』


 大上段から衝撃波を引き起こす程の一撃が繰り出される。

 確かな感触から八朝(やとも)にトドメを刺せたと喜ぶ。


「宿敵討ち取ったり……何だァ!?」


 刀は八朝(やとも)ではなくその下にあった地面を深々と差し込んだだけであった。

 それどころか三刀坂(みとさか)も、ついに壊れた(・・・・・・)エリスすらいない。


 丸前(まるさき)は死と消滅ですっかり静まり返った神社にてあらん限りの悪態をついた。

こんばんは、DappleKiln(斑々暖炉)でございます


皆さん、お忘れではないでしょうか?

八朝を公然と殺せる材料が揃った状況を『彼』が見逃すわけがありません

しかも2人いますよ


勿論、この部分でこの2人の攻撃が炸裂しています

誰がやったのか知りたい人は読み直すのも手だと思います()


それでは引き続きお楽しみください

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