表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/582

Case 20-7-2

2020年9月4日 完成(23:40)


 『カマイタチ』を介抱すると決めた数分前。

 先に■■神社内へ逃げた三刀坂(みとさか)が朦朧とした意識の中で思う。




【同日11時41分 遠海地区・■■神社境内】




 一体、今まで何だったのだろうか。


 私はただ『八朝風太』を取り戻したかっただけだ。

 何もその(むくろ)の中に入った転生者(悪魔)の事まで気に掛ける必要は無かった筈だ。


 あのモールでの事も。

 前日の『脳内会議』でそうだったように、転生者(悪魔)七殺(ザミディムラ)を選んだ。


 元より転生者とはそんな物だった筈だ。

 前世の世界に戻りたいと口では言いながら、異性を多数侍らせてニヤついている。


 本当に戻りたいなんて思ってるのか?


 私だって戻りたい。

 『八朝風太』が■■■に逆らう直前に戻ってこの人生をやり直したい。


 でも、彼は何かが違っていた。


 記憶が無いとか、字山(知り合い)がいるとかそんなレベルではない。

 寧ろ馴染み過ぎなのである。


 2月の事件……辻守(つじもり)の一件でもそうだったように

 Ekaawhsを倒すために再び全ての記憶を破壊した時のように

 後輩の(ゆかり)ちゃんの為に二度も命を張り

 ミチザネ(アルキオネⅢ)に仲間たちを殺され

 そして、住んでいた場所からも追い出された今も同じように


 この世界の悲劇に立ち向かい過ぎ。


 どこかで逃げてしまえばよかったのに。


 まだ倒れるわけにはいかない。

 そんな道理があってたまるか。


 そうだ、私だってお父さんお母さんが殺されたあの日に自殺して逃げればよかったのに。

 そうすれば『八朝風太』と別れるなんてもっと耐えがたい悲しみに襲われる事も無かったのに。


 だから、そんな彼を憐れんであの異様な『脳内会議』すら拒んだ。

 そして彼を襲い続ける『■■■■■』から彼を守って来たのに……


 どういう訳か『■■■■■』と何度も戦っている。


 ああ、そういえばここは『■■■■■』の沈降帯(アンカー)に似ている。

 安全地帯の寺社仏閣すらこの通りに辰之中の異界に引きずり込む。




 ……思い出した。




 駄目だ……


 キミと『■■■■■』は会ってはいけない!

 『■■■■■』の正体は……


 いや、そうじゃない!

 『■■■■■』を殺してはいけない。


 ソレは……彼女は……


 この世界で字山(あざやま)君と2人しかいない『鷹狗ヶ島』を知っている人間だ。

 彼女を失えばエリスとの約束すら危うくなる。


 いつの間にか騒音のする方向へ走り出していた。

 やがてその騒音すら止んでしまった。


 ああ……遅かった……




◆◇◆◇◆◇




「……ふうちゃん?」


 日常で聞いた声が化物(ナイト)から聞こえてくる。

 天ヶ井柚月(あまがいゆづき)のものであった。


 ほぼ声がかすれている。

 聞き取りにくい事甚だしいが、致し方は無い。


 エリスの分析結果曰く『心肺停止』

 あの(アーム)柚月(ゆづき)の肺が変化したものと判明した。


 即ち、これが柚月(ゆづき)後遺症(レフト)

 彼女が他の実力者と異なり、表立った活躍に乏しい理由である。


 何故意識を保っているのか分からないレベルの柚月(ゆづき)の手を握る。

 そんな事をしても意味が無いのに、柚月(ゆづき)は自身の苦痛に耐えて微笑みを見せてくれる。


「ごめ……ね……鷹狗ヶ島でも……れなくて……」

「鷹狗ヶ島だと……!?」


 それは八朝(やとも)と、字山(あざやま)ぐらいしか知らない有人島の方の鷹狗ヶ島。

 彼女も八朝(やとも)の記憶に関わっているのかもしれない。


 だが……


 こんな状態で聞き出すなんてできるわけがない。


「でも……う大丈……夫

 わた……し、倒せる……らいに強く……たから……」


 そんな訳があるか。

 例え本当に強くなったとしても、これでは意味が無い。


「……で」


 これが最後の声であった。

 何も聞き取れない、でも最後の最後まで八朝(やとも)の事を想ってくれたのだけは伝わった気がした。


 腕の力が無くなり、握った手ごと地面に叩き落される。

 その痛みで立ち上がろうとすると、後ろから暖かな感触に包まれる。


「まだ倒れるわけには……」

「キミ……家族が死んだのにまだそんなこと言ってられるの?」

「だが……」

「だがじゃない

 いいから、こっち向いて」


 暗に泣き崩れてもいいと諭される。

 『カマイタチ』は討伐されても、追手がいなくなったわけでもない。


 再び立ち上がろうとする所を重量増加の異能力で強制的にひざを折らせる。


「キミの気持ちは痛いほど分かるよ

 でもここで中途半端に立ち上がったら私と同じになっちゃうよ」


 三刀坂(みとさか)が人生で唯一の『報復』に出た事件の事を聞く。

 甚だ現実感の無い出来事ではあるが、声のトーンからしてどうやら事実のようである。


「……」

「だから今のキミに必要なのは、あの時私が得られなかったもの……だから」


 懇願するように言われて、漸く彼女の言うとおりにした。

 いつの間にか、立場が彼女と真反対となってしまった。




◆◇◆◇◆◇




【データ型キャスト・成功】

【情報取得まで、残り10秒】

【Status Code 200 ... OK!】




 使用者(ユーザー)天ヶ井柚月(あまがいゆづき)

 誕生日:11月4日

 

 固有名(スペル)Ifebeim(アイフェベイム)

 制御番号(ハンド):Nom.116842

 種別(タイプ)  :T・IGNIS


  STR:4 MGI:3 DEX:5

  BRK:0 CON:1 LUK:4


 依代(アーム)  :肺

 能力(ギフト)  :■■式

 後遺症(レフト) :呼吸不全(依代(アーム)破損時)




■■■■■■■■ ■■■


  ■■■■■■■ 20-a   連鎖 - Malus Chain




END

これにてCase20、カマイタチの正体回を終了いたします


彼女の描写については主人公の心情の割にCase5ぐらいしかありません

不自然に思われるかもしれません、そんなときは目次を見返すのをオススメします


次回は神社で逃亡生活回となります

またも三刀坂ちゃんにフォーカスが当たります

彼女、これでもヒロインなんですよ()


それでは次回も乞うご期待下さい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ