表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/582

Case 20-2

2020年8月28日 完成


 翌朝、いつも通り三刀坂(みとさか)と登校する。

 だが昨日の事件を上回る信じられない事態が密かに進んでいた。




【5月12日8時40分 篠鶴地区・学園橋前交差点】




「それでさ、第二異能部復活させたら最初に何がしたい?」

「取り敢えずは、記憶探しの為にX(バツ)級向けの依頼を飛ばしてみるさ」


 まだ能力(ギフト)も発現せず、弱弱しい電子魔術(グラム)依代(アーム)だけで戦わなければならないX(バツ)級相手に能力(ギフト)の鑑定を行うというものである。

 旧第二異能部には無い新たな顧客層の獲得と、八朝(やとも)の記憶遡行のトリガーに能力(ギフト)鑑定が関わっていることが大きい。


 少なくとも、現在の鹿室(かむろ)が空回りをしている状態で総動員するような大きな依頼を受けるべきでないと考えている。


「それって……」

「まずは本物探しだな、ちゃっちゃと終わらせて使命(オーダー)に取り掛かりたいしな」


 八朝(やとも)には、三刀坂(みとさか)が求めている『本物』探しと、エリスを元に戻すという創造神との約束(オーダー)の2つの目標が課せられている。

 前者については空振りはおろか、捕捉までされてしまった状態である。


 今後の身の振り方を考えていると、エリスから着信の知らせが伝えられる。

 電話の相手は咲良(さくら)であった。


『ふうちゃん、今いいかな?』

「大丈夫だが、何かあったのか?」


 一瞬の沈黙だったが、それだけで彼女が緊張している事を察する。

 恐らくは嫌な知らせなのであろう。


『落ち着いて聞いて

 斎崎(さいざき)って人が通学途中に妖精(エルフ)に襲われて死んだわ』


 斎崎(さいざき)とは箱家(はこいえ)掌藤(たなふじ)を巡って争った挙句RATをウイルスで破壊された可哀想な非能力者である。

 彼は榑宮地区に住んでおり、電子魔術(グラム)じゃ飽き足らず化物(ナイト)を特殊な電子魔術(グラム)で従わせた妖精(エルフ)も侍らせるほどの異能力者嫌悪主義であった。


 そして妖精(エルフ)が主に反旗を翻すなんていうケースは0に等しい珍事である。


『誰も妖精(エルフ)がやっただなんて信じてない

 それよりも昨日の事件絡みで、ある人物に嫌疑が掛かりつつあるの……』


 まさか、とは思った。

 だが柏海(かしみ)といい斎崎(さいざき)といい、全員八朝(やとも)と関係のある人物である。


「……どうやら俺は暫く家に帰らない方が良さそうだな」

『……ごめんね』

「いや、別のセーフハウスがあるから心配しなくてもいい」

『うん……わかった……』


 通話を切ると、心配そうな三刀坂(みとさか)の顔が映る。


「大丈夫だ、それと……」


 信号が青になり、横断歩道を渡り切った所で数人が待ち構えていた。

 篠鶴学園の制服と、その上から掛けているタスキを見るに『掌藤親衛隊』のメンバーであった。


「なんだ?」

「お前だな?

 我らのリーダーを殺したのは……」

雨止(あめやみ)が何だって?」


「しらばっくれてんじゃねーぞ!

 お前が昨日我らがリーダーを串刺しにして化物(ナイト)に食わせた!」


 証拠だと突き付けられたタスキに夥しい血と、恐らくは待針(digg)と同じ大きさの針で貫かれたような破れ痕が付いていた。


「待て、俺の能力はSTR(干渉力)が0で直接攻撃してもダメージは与えられないのはアンタらでも……」


 怒りと憎悪の叫び声と、八朝(やとも)の弁明に野次馬がどんどん集まっていく。

 ひそひそと大勢が『裏切者』と言っているのが聞こえる……


 篠鶴学園は化物(ナイト)退治で死者が出やすい環境で、友人の死に慣れている傾向にあると言われているが『とある死因』に関しては蛇蝎の如く嫌っている。


 即ち、人殺しである。


三刀坂(みとさか)は……どうやら野次馬側に紛れてくれたみたいだな)


 一触即発の状況で三刀坂(みとさか)の姿が見えない事に安堵する八朝(やとも)

 魔女裁判と化していく状況下で八朝(やとも)が決断する。


「それでも俺はやっていない!」

「「ふざけるな!」」


 突如、針山地獄の如き石の柱が屹立する。

 足元から刺し貫かんとする一撃を何とかかわしながら八朝(やとも)固有名(スペル)を叫んで臨戦態勢を取る。


 だが、状況は絶望的であった。


 非能力者の放つ電子魔術乱舞(グラムストーム)なら破壊一辺倒で対処方法が無くは無いのである。

 目の前の野次馬達が依代(アーム)を抱えて発動しようとする、謂わば『能力乱舞(ギフトストーム)』には統一性の欠片もない。


 即ち人数が多ければ多いほど付け入る隙が無いのである。


『裏切者には死を!!!』


 今度は剣山だけではなかった。


 ありとあらゆる自然現象、そして空間を歪ませて発動する呪術的な能力(ギフト)、それ以外の今この瞬間に表現できないようなあらゆる異能力の攻撃が濁流となって襲い掛かる。


 それらが八朝(やとも)の目の前にいつの間にか発生していた黒い壁に阻まれて地べたに撃墜される。

 目の前には三刀坂(みとさか)の後ろ姿があった。


「な……!」

「大丈夫、安心して

 キミを守るって約束したからさ」


 そんな悠長なことを言っている場合ではなかった。

 だが、そんな彼女の自信を裏付けるデータがエリスより齎された。


『ふうちゃん……

 みーちゃんの異能力が闇属性(UMBRA)に変わった……』


 闇属性、それは異能力者が持ちうる全ての属性に攻撃有利な性質を持った特殊属性。

 そしてこの学園生なら誰もがこの属性の持ち主がどういう人物なのか察することが出来る。


「お……おい、RAT Visionで闇属性って……」

「この女、あの薄汚い十死の諸力フォーティーンフォーセスのクソ共か!?」


「薄汚いとは言ってくれるなこの■■■■野郎!」


 とても常人が発してはいけないようなスラングで啖呵を切る三刀坂(みとさか)

 それと共に激しいブーイングが飛び交い始める。


「あの時もそうだったな……

 お前らはいつだって数人以上つるんでいれば、人の話すら聞いてくれないよな!?」


 その言葉通り、誰も三刀坂(みとさか)の話を聞いてくれていない。


 この怒り方は知っている。

 あの時選択を間違えた()を無惨に殺したあの三刀坂(みとさか)である。


 このままでは取り返しのつかないことが起きる、そう八朝(やとも)が確信する。


「ま、待て!

 一旦落ち着い……」


「私の名前は三刀坂涼音(みとさかすずね)……否!

 十死の諸力フォーティーンフォーセス・十四席 聖堂のレサト!」


「私の戒律に人でなし(おまえら)の生きる場所は無い……ゴミクズのように潰れて死ね!」

あ、とうとうプロット外の事やっちまった……


勿論続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ