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Case 19-2

2020年8月23日 完成

2021年3月12日 ノベルアップ+版と内容同期


 柚月(ゆづき)も帰り、すっかり静かになった第二異能部部室。

 そこにタイミングよく来客がやって来た。




【5月11日(月)・放課後(17:01) 篠鶴学園・第二異能部部室】




「失礼します」


 八朝(やとも)が突然の来客に戸惑ってしまう。


 というのも、旧第二異能部でもこの時間帯は各々が依頼で出かけており部室には誰もいないことが多い。

 第二異能部への依頼は昼休みや終礼直後の時間帯で為される。


「……柏海(かしみ)、か?」

「へぇ、よく覚えてるんだね」


 篠鶴七不思議の一つ、『笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)』未遂事件の時の人物である。

 魂を入れ替えると言っておきながら事実は双方の魂を破壊する悪意の七不思議の魔の手から皆を守っている一族の末裔である。


「覚えてるも何も

 依頼者が騙してきた案件をそう簡単に忘れられる訳が無いだろ」

「確かにそうかも」


 よくころころと表情が変わる。

 数秒前までは神妙な面持ちだったのに、まるで打ち解けたような友達のように笑っている。


「……っと、それよりも大変なことが起きたの」


 また、先ほどの表情に戻る。

 彼女が持ってくる話と言えば一つしか無い。


「『笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)』関係か?」

「そうそう、それそれ

 つい先日使われた形跡があるのよ!」


 それは聞き捨てならない事であった。

 また、あの依頼者たちが性懲りもなく試したのかと聞いても柏海(かしみ)は違うと答えた。


「あたしも何が何だかさっぱり分からなった。

 だからもしかすると『笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)』に近い怪現象を拾ったのかもしれない……でも」


ミチザネ(アルキオネⅢ)事件の直後に起きたって言ったら?」


 その言葉に八朝(やとも)が押し黙ってしまう。

 心当たりがある、というよりも心当たりしかない。


 今この瞬間でやって来たというタイミングの良さすらも仕組まれているような気がして思わず訊く。


「……断罪者(デコレーター)を疑っているのか?」

「そう、それ! 良く分かったねぇ!」


 意外そうな声を上げる柏海(かしみ)


「家が近いから偶に会うんでな」

「へぇー……いいなぁ」


 何がとはこの際聞かないことにする。

 適当に相槌を入れると、柏海(かしみ)が詳細を話し始める。


「それでさ……

 私、彼女と同級生なんだけどあのタイミングからまるで人が変わった(・・・・・・)ようにおかしくなったのよ」


 その内容は八朝(やとも)が感じた違和感と大差が無かった。

 そして八朝(やとも)の反応を逐一観察した柏海(かしみ)が確信を以て証拠を出した。


「……?

 それは、RAT Visionの解析結果画面か?」

「そ、これで『笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)』の反応を追うんだ。

 でも今回は違う使い方……断罪者(デコレーター)ちゃんの分析結果がこれ」




 使用者(ユーザー)天ヶ井木花(あまがいこのか)

 誕生日:11月4日

 

 固有名(スペル)Ifebeim(アイフェベイム)

 制御番号(ハンド):Nom.116842

 種別(タイプ)  :T・UMBRA(・・・・・)


  STR:5 MGI:0 DEX:2

  BRK:4 CON:1 LUK:5


 依代(アーム)  :薙刀

 能力(ギフト)  :斬撃生成

 後遺症(レフト) :記憶混濁


 備考:

  ・『漂流』の時空間魂魄移動魔術(グラムアンブラ)を所持

  ・端的に言うと任意の『死に戻り』+『憑依』

  ・自殺した時のみ有効、他殺では発動しない




「な……闇属性(UMBRA)!?」


 それが意味する所は一つ。

 十死の諸力フォーティーンフォーセス、それ以外が持ち得ない属性(エレメント)である。


『ちょ……ちょっと待って!?

 ゆーちゃんそんな異能力じゃなかったし、反応だってこの通り』


 エリスが慌てた声音で柚月(ゆづき)が今遠海(とおみ)商店街に居る事を画面で示す。

 彼女のプライベートを覗き見るようで悪いが、唯一の反論である。


「本当に……商店街なの?」

『そうだよ!』




「そこ、『渡れずの横断歩道(フォレストラット)』の外なんだけど」




 この町の異能力者は『渡れずの横断歩道(フォレストラット)』より外のエリアに出ることが出来ない。

 八朝(やとも)は、自分が何度も『渡れずの横断歩道(フォレストラット)』の外にある弘治の家に行けている事から思わず失念してしまった。


「……すまんが、この話からは早々に手を引いた方が良い」

「そんな訳にはいかない!

 私だって同級生のピンチを見殺しになんかできないし……」

「馬鹿を言うな、殺されるぞ!」


 ふと、正気に戻る八朝(やとも)

 自分から出たとは思えない大声で、すっかり柏海(かしみ)が怯えている。


「すまん、取り乱した」

「ううん……そういやあなたも大変だったよね」


 暗に部長たちの事を言っている。

 見ず知らずの人間にこれ以上の重荷を背負わせる気は無いので、話を続ける。


「なんにせよ、この話は俺たち第二異能部に任せてくれ」

「うん、わかった

 でももし会ったら、つぐちゃん達が心配してるって伝えてて」

「ああ、任された」


 柏海(かしみ)はこれ以上何もいう事なく任されてくれた。

 彼女が部室から出て行って数分ぐらいのタイミングで三刀坂(みとさか)に連絡を入れる。


『丁度いいタイミング!

 さっき鹿室(かむろ)君とはぐれちゃって……』

「ちょっと聞きたい事があるんだが……」


柚月(ゆづき)属性(エレメント)が闇属性に変貌していた」


 電話越しで彼女の息を呑む雰囲気が伝わってくる。

 この一言だけで八朝(やとも)が何を言いたいのか察してしまう。


「もしかして柚月(ゆづき)は……」

『うん

 多分キミが目を覚ます少し前から七殺(ザミディムラ)だったよ』


 『ザミディムラ』がさそり座の恒星の名前だという事は一瞬で分かった。

 即ち柚月(ゆづき)は最初から『十死の諸力フォーティンフォーセズ』であった。


「キミには聞いて欲しい事があるんだけど……」

「『約束』については極夜(アンタレス)の異能力で見た」

「そうなんだ……

 じゃあやって欲しい事が一つあるんだけど……」



続きます

そして……

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