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・・・アルちゃんって、お嬢様じゃなかった?

 サブタイの通りです。

 アルちゃんが起きたのと、クラウド君が出て行ってから数日が経った。


 あの話をして、アルちゃんはどこか吹っ切れたというか、俺達との距離が少し縮まったような気がする。

 あと、ミクリヤと乱闘で怪我とか・・・確りと釘を刺しておいたし。


 だから・・・こないだ聞きそびれてからずっと気になっていたことを、


「アルちゃんってさ、クラウド君のこと、好き…なのかな?」


 アルちゃんに聞いてみた。


「?」

「いや、だってその…キスとか」


 クラウド君が出て行ったとき、図らずも…二人がキスとハグをしているのを見てしまった。というか、二人共、ミクリヤがいても関係無いとばかりに堂々としていたというか・・・

 かなり、恋人同士感が漂っていた気がする。クラウド君は、アルちゃんの婚約者候補だって言っていたし・・・シーフ君よりも、親密そうだった。

 こう……別れを惜しむ恋人同士というか・・・そういう風に見えた。まあ、俺の主観なんだけどね。


「キスは挨拶ですよ? あと、オレにとっては食事ですからね」

「・・・食事?」


 思いもよらぬ答えが返って来た。


「ええ。食事。エナジードレインとか、血を頂くことの一環です。それがなにか?」

「…仲、良いんだよね? クラウド君と」

「ええ。友達です」

「・・・友達、なの? クラウド君」

「? ええ。友達ですよ?」

「だって、キスしてた…よね?」

「挨拶でしょう? キスは。狼なら、顔を舐めたりしますし。似たようなもんです」

「似てる…かな?」

「親愛でしょう? あれは」

「キスは親愛、なの?」

「? ええ。親愛と食事ですよ?養母(かあ)さんが口移しでご飯くれるのと似たようなものです」

「・・・アルちゃんてさ、いつからレオンハルトの家で暮らしてるの?」

「幼少期からですが? それがなにか」

「口移しって、生肉…だったりするの?」


 まさか、さすがにそれは無い…


「いや、それはさすがに・・・一回、狼型の養母さんに兎を生で食べさせられて吐きましたからね。養父(とう)さんとレオが、お腹壊すから生肉はやめとけって養母さんを説得してくれました」

「クレアさんっ!?」

「で、ヴァンパイアなんだから血だろうって。仕留めたての水牛を一頭持って来られて、思う存分飲みなさいって言われたときは困りましたね」

「…ねえ、アルちゃん。俺は、なににツッコミを入れればいいのかな?」

「そしたら、養父さんが生きてるやつに決まってるだろうって、養母さんが納得して・・・」

「…それで、どうなったの?」

「レオも、養母さんにやめろって言ってくれて、別のヴァンパイアハーフに、食事は人間と同じでいいっていうのを聞いてくれたんです」

「よかったね。アルちゃん」


 ふっと苦笑するアルちゃん。


「本当に。それで、血や精気が欲しいときには分けてくれるようになったんです」

「へぇ・・・って、それが口移し?」

「ええ。狼のヒト達って、傷の治り速いじゃないですか? 一々傷作るの面倒だって、舌噛み切って血を分けてくれるんです。養母さんとレオ」

「レオンハルトもっ?」

「? ええ。シーフもですが」

「待ってっ、それおかしくないっ!?」

「? だって、レオの筋肉、硬くて噛み切れないんですよ? 噛んでもすぐ治るし。アイツが軽く拳握ると、それでもう手首にオレの牙通らないんです。筋肉硬過ぎ。首も柔らかくないし、牙通らないからって力一杯噛むと痛いって文句言うし、オマケに余計な力入って更に牙が通らない。そしてすぐ治る。羨ましいやらムカつくやらで、レオの血なんざ要らん! って、喧嘩売って負けましたねー。昔」

「それ、どういう喧嘩なの?」

「取っ組み合い挑んで、あっさり鎮圧。馬乗りで押さえ付けられて、口ン中指突っ込まれて、おら飯だぞアル、さあ飲め!って感じですかねー?」

「なにしてんだレオンハルトはっ!!」

「で、養母さんにブッ飛ばされてレオが撃沈」

「え?」

「養母さんに血を飲まされて…飲まされ過ぎて吐いたりとか…そして、オレは学びました。食事を許否するのにも、武力が必要なんだと。つか、今考えても、幼児に奴の筋肉が噛み切れるとは思えないぜ。狼の咬筋力(こうきんりょく)を幼児に求めるなっての」


 もう、色々とおかしいよね? 最初からさ?


「やっぱり、アルちゃんが少しおかしいのは彼らが原因…だよね。どう考えても」

「? オレ、おかしいですか?」


 きょとんと首を傾げるアルちゃん。

 自覚、無いんだね・・・うん。わかってた。


「女の子っぽくない…よね?かなり…」


 相当控え目に言っても、大分(だいぶ)だけど。


「まあ、そうですね。エレイスの家では、サバイバル全般と護身術を叩き込まれましたからね」

「・・・アルちゃんって、お嬢様じゃなかった?」

「まあ、身分的にはそうらしいですねー? オレは全くそういうつもり無いですけど」

「・・・」


 お嬢様どころか、女の子の自覚も薄いけどね…


「俺が血を分けてあげるって言ったら、キスしてもいいのかな? アルちゃんに」


 パチパチと瞬く銀色の浮かぶ翡翠。そして、考えるように眉が寄せられる。


「・・・う~ん…兄さ…レオに、殺されないくらいの実力、持ってます? ジンは」

「え? いや…どういう意味かな? それは」

「え~と、ですね・・・うちは、シスコンというか…その、みんな、オレに過保護というか…」


 困ったようにアルちゃんが言う。


 まあ、シスコンというか…「俺の妹に手を出したらぶち殺す。そのつもりでいろ」レオンハルトはそう言っていたけど・・・

 アルちゃんを自分のものだと、言葉ではなく態度で示していた。首筋を噛み、唾液を付けてマーキングして。


「ぶっちゃけ、オレに手ぇ出すと殺されますよ? シーフも、なんだかんだで結構面倒だし」


 スティングさんの言葉を思い出す。「俺の娘に手を出すな…と、言いたいところだが、まあその辺りも手前ぇらの自己責任だな。但し、この子には婚約者候補が複数いる。ンで以て、どの野郎もこの子に執着している。弱ぇ奴ぁ、殺されても知らん。その覚悟があンなら、特に文句は言わねぇよ」確か、そう言っていた。


 アルちゃんへの執着、か・・・

 シーフ君も、思いっ切りアルちゃんにベタベタしてたよなぁ。

 何度も結婚しようと言っていた、アルちゃんを見詰める灰色の浮かぶ熱っぽいエメラルド。

 あれは、姉弟の情・・・にはとても見えなかったけどね? 今思えば、シーフ君は…アルちゃんは自分のモノだと、全身で主張していたんだ。


 アルちゃんが、『姉弟の情』に収めたいんだろう。

 ハッキリと、弟と結婚して堪るかと言っていたし…


「アルちゃんは、結婚自体が嫌なの? それとも、相手が嫌なのかな?」

「え?」

「クラウド君が言っていたよ? 君の結婚相手として条件が一番いいのは自分だろうって。次点がシーフ君、かな? そんな感じのことを、ね」

「まぁ・・・多分、そうなんでしょうね。だから、クラウドが好きかっていう質問を? ジン」


 溜め息混じりに俺を見上げるアルちゃん。


「まあ、そんなところかな? クラウド君とアルちゃん、かなり仲良さそうだったから」

「まあ、クラウドは割と好きですよ? あのヒトと結婚したいとは思いませんけどね。勿論、シーフとも、ですけど」

「そっか。変なこと聞いてごめんね?」

「いえ」


 結論。アルちゃんは、俺が思っていたよりも、更に女の子らしくないことが判明した。


 あれだけシーフ君やレオンハルトに執着されている割に、それを判っていなさそうだ。

 アルちゃん自体の考え方が男の子っぽいというか、まだ子供・・・なのかな?

 まあ、この子の状況も状況だしなぁ・・・


 そして・・・


 スティングさんやクレアさんは、明らかにアルちゃんの育て方を間違えたと思います。

 想像以上に獣っぽい扱いを受けていたというか・・・もっと女の子扱いをしてあげてください。

 切にそう思います。

 特に、クレアさん・・・

 あなたがかなりヒドいです。


 side:ジン。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 狼の家でのアルの幼少期をチラッと・・・

 アルとシーフが変な子になるワケです。

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