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もっと、要る?

 シスコン・ブラコンのべたべたにご注意。

 自傷、吸血行為があります。

 ちょっと甘めだとは思いますが、よく考えると割とヒドいかもしれません。

『甲板で火を()いてる馬鹿共がいるから、今すぐなんとかして来なさいっ!?』


 と、慌てた様子のアマラに言われて来てみれば――――


 シーフが炭を燃え散らしていた。

 そして、なにをしているかと聞くと、飯だと言う意味不明な答えが返って来た。

 思わず、雪路を見やる。


「おい、雪路(ゆきじ)

「なーに? ひゆう」

「いや、なにというか……なんなんだ? あれ」

御厨(ミクリヤ)に聞かれてもねー?」

「お前に聞くしかねぇだろ、雪路」

「…おいシーフ、なにしてンだ? お前」

「? …ご飯?」

「や、火焚くのが飯になンのか?」

「ん。…おれ、半分イフリート・・・火、とか…熱? で、栄養補給…可能」

「ああ、そういえばアマラがシーフ君のこと、イフリートだとか言ってたけど……そういうこと」

「?」

「そう言や、少しおかしいな。火ぃ焚いてた筈なのに、全く暑くない」


 それに、あれだけ激しく燃えた後の灰が舞い散っていても、灰に熱を全く感じない。普通なら、火傷してもおかしくない筈の温度だろうに。そして、


「……むしろ、少し気温下がってねぇか?」

「え?」

「あ、そういえば・・・少し肌寒いかも?」


 自然、シーフへと視線が集まる。


「…ん。熱、奪った…ご馳走、さま?」

「…美味しいの?」

「? ・・・空気…は、美味しい…から、吸う?」

「え? いや、呼吸はしないと死ぬ…でしょ?」

「ん…」

「え? は?」


 質問に質問で返され、たじろぐカイル。


 とりあえず、仕切り直そう。


「・・・あ~、シーフ?」

「?」

「アルは?」

「…まだ、寝てる。・・・起こす?」

「あ? いや、寝てんなら」


 起こさなくていい、そう言い終える前に、シーフがアルの部屋の方へと歩いて行った。


 side:ヒュー。


※※※※※※※※※※※※※※※


 眠るアルを見下ろす。


 微かな呼吸の、深い眠り。


 金のような、銀のような柔らかく淡い色合いの月色の髪。閉じた瞳を彩る長い(まつげ)も、同じ色。通った鼻筋。白く滑らかな肌。薄く色付く唇。細い顎。眠るアルは、相変わらず綺麗。


 でも、起こすのも好き。

 普段おれは、起こされる方。だから・・・アルを起こすのは、久し振り。凄く、楽しみ。


 ベッドに腰掛け、白い頬に触れ、耳元に(ささや)く。


「…アル、起きて」


 勿論、起きる気配はしない。だから、起こす。

 頬へ手を添え、薄く色付く唇を小さく開かせてそっと口付ける。柔らかい唇を割って入り、ゆるゆると精気を分け与えながら、ガリッと舌を噛み切る。

 口内にとろりと広がる血の匂いと暖かい液体を、ゆっくりとアルの口の中へと流して行く。


「…ん、ふ…」


 コクンと喉が嚥下(えんか)するのを確認し、動かない舌を絡め取り、噛み切った舌が治る度にまた噛み切り、血を流し込み続け、ゆっくりと口付けを深める。


「・・・・・・は、ぁ…」


 息継ぎをし、また口付ける。と、


「・・・ん…」


 アルの睫が小さく震える。そして、


「ん、ふ…ぁ…」


 ぼんやりと開く翡翠の瞳。いつもと違い、無防備な顔の幼げな表情。おれの、一番好きな(かお)


「? ・・・しぃ、ふ…?」


 寝惚(ねぼ)けたような舌っ足らずな声がおれを呼ぶ。


「ん。おはよ…アル」


 アルが覚醒()きる前にチュッと軽く口付ける。と、とろんと落ちる(まぶた)。そして、


「っ!?」


 パッと開く翡翠。残念。ちゃんと覚醒()きた。


「・・・おい、なにしてンだ? シーフ」


 低い声が言う。不機嫌に。


「…アルを、起こした?」

退()けやこのアホっ!?」


 と、ベッドから蹴落とされた。


 ちゃんと目を覚ましたアルは、いつものアル。寝惚けたアルは、非常に可愛い。無論、普段のアルも、意地っ張りで可愛い。けど多分・・・寝惚けたアルの無防備な顔は、おれとレオ(にぃ)養父(ちち)養母(はは)しか知らないだろう。

 兄貴とリリアンに、ちょっと優越感。


「・・・ふゎ…」


 身を起こしたアルの欠伸。下ろしたままの月色の髪が、さらりと揺れる。


「…よく、寝た?」

「そこそこ」


 ぷいとそっぽを向いての返事。


「もっと、要る?」

「・・・」


 迷うように揺れる翡翠。だから、またベッドに上がり、そっとアルの頬へ手を添えて・・・


「ん…」


 精気を分けながら、チュッと軽く触れるだけのキス。嫌がる様子はない。

 どうやら、お腹が(・・・)空いて(・・・)いるらしい。


「血と、どっちがいい?」

「・・・じゃあ、手首」

「首からでも、いい…よ?」

「・・・多分、加減できないぞ?」

「ん。いい。吸血(キス)、して?」


 アルの翡翠の瞳が、薄赤の燐光を帯びる。普段よりも艶めいた表情が、ゆっくりと寄せられ・・・首筋を吐息が(くすぐ)る。柔らかい唇が首元に落ち、血管を探るように彷徨(さまよ)い・・・


「っ…は、ぁ・・・アルっ…」


 牙が、皮膚を食い破る。痛いのは、最初だけ。すぐに気持ち()くなる。同時に、どっと精気が吸われて行く。容赦の無い、エナジードレイン。


 ちょっと、嬉しい。アルが遠慮も配慮も容赦も無く牙を突き立て、エナジードレインをするのは、三人だけ。養母とレオ兄とおれを含めた、三人。

 しかも、首への吸血(キス)相思相愛(とくべつ)な意味を持つ行為なのだと、アルが昔教えてくれた。


 これは、魔力が強くて濃い父や兄貴にはできなくて、アルがリリアンには、絶対にしないこと。

 やはり、アルをおれで(・・・)満たす(・・・)のは、気分が()い。

 少々難点があるとすれば、おれもアルの血が欲しくなるところ・・・だろうか?


 ヴァンパイアは愛する(・・・)モノの(・・・)血を欲し(・・・・)愛する(・・・)モノを(・・・)自分の(・・・)血で満(・・・)たしたい(・・・・)という欲望を持つ、因果な種族。これは、本能に(・・・)根差し(・・・)た欲求(・・・)だ。


 兄貴みたいに、アルの意志を無視するのは(いや)だから、おれは我慢する。


 けど・・・ふと、思った。


 ・・・おれやアルが、『それ』を我慢できるのは、両方共母方の血が濃いからなのかもしれない。ヴァンパイアとしての本能(・・)が、純血の兄貴に比べると、薄いのかもしれない……と。


「・・・はぁ…」


 段々、くらくら…して、来た。

 感覚的に、血はそんなに減っていない。けれど、精気を…吸われ、過ぎた…よう、だ。


 ああ…眠く、なって・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


 side:シーフ。

 読んでくださり、ありがとうございました。

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