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・・・アル、遊ぶ?

 倫理的に問題、及び不快かと思われる表現がありますが、一応は史実であり、事実でもあります。歴史を調べると結構・・・です。

 そして、弟に厳しめのアル。

 よい子は真似しちゃいけません。

 

 驚愕の沈黙から、


「・・・アルちゃん?」


 (ようや)く声を出したのはジン。


「ああ、気にしないでください。コイツ、かなりどアホなんで」

「? 間違って、ない。・・・アルとは、婚約中? だし…プロポーズ、した。だけ」


 こんのアホはっ、余計なことを・・・


「「「は?」」」


「アル。おれと、結婚…しよ?」

「断る!」

「・・・残念」


 ふっ、と肩を竦めるシーフ。大して残念でもなさそうだがな? まあ、兄さんみたいに恐怖を感じる程の執着心を感じないのが、コイツのいいところなんだけど。


「いや、待て! お前らさっき姉弟だって言ったよなっ? 義姉弟かっ?」


 そう思うよなぁ……普通(・・)なら。


「? アルと、おれは…義理の、姉弟?」

「いや、なんでお前が疑問系なんだよ……」


 血で判るだろうに。


「…可能性の、問題? 父が…嘘。()いた、とか?」


 ンなワケあるか。


「・・・一応、腹違いではありますが、ちゃんとした実弟ですよ」

「おお…」

「だから、なんでお前が驚くっ! お前が驚くことに、オレは驚きだよ」

「?」

「は? 実、弟?」


 シーフを見下ろす飴色の瞳。


「ええ。腹違いの実弟で、婚約者候補の一人ですね」


 忌々しいことに。


「…ん。結婚、する?」

「しねぇよ。誰が弟と結婚するか」

「…残念」

「え~と、アルちゃん? いいの? それってさ・・・」


 倫理的に、という質問だろうか? ヴァンパイアにそんなものを求められてもな?


「…そう、驚くようなことでも…ない。ヴァンパイア同士では、よくある? こと。おれも(・・・)アルも(・・・)…ハーフ、だけど。人間も、よくある。近親相姦。特に…古代ローマや、エジプト…なんかの、王族では、普通。むしろ、どろどろ? 同母間の…兄弟姉妹なら、アウトでも…腹違いの、兄弟姉妹なら…結婚を、認めていた国や時代も…割とある。純血至上主義…を主張する連中は、大体そう。そういう血統(・・・・・・)は…実の親子、兄弟姉妹間。での、結婚も…少なくは、ない。アルが…ヴァンパイアとしては、かなり…特異(まとも)? な感性、してるだけ。おれの他の婚約者達も…ほぼ身内」


 淡々と喋る眠たげなテノール。つか、コイツがこんなに喋ってるの、久々に聞いたし。


「「「・・・」」」


 (ただ)れたヴァンパイアの実態に、なんとも言えない沈黙だな。だから嫌なんだよ。


「アル、好き。…結婚、する?」


 しかも、また…全く空気読まないし。いや、元々読めなかったか・・・コイツは。


「だから、しねぇっつってンだろ。このボケ。ヒトの話聞けっての。愚弟が」

「ぐてー…?」

「アホな弟って意味だよ」

「?」

「・・・あ~、とりあえず、シーフだったか? アルを連れ戻しに来たってワケじゃねぇンだな? お前は」


 困ったように頭を掻いてヒューが訊く。


「ん。…そんなつもり、無い」


 ぼんやりと眠たげなエメラルドがヒューを認め、その腰の辺りにじっと視線が固定された。


「な、なんだ?」


 どうやら気付いたらしい。ヒューの得物に。


「ASブランド・・・カトラス…」

「あ、ああ。判るのか?」

「ん。・・・」


 じぃーっとヒューの剣を見詰めるシーフ。じぃ~っと、無言で。あの視線、なかなか圧力あるからなぁ。目は口程にものを言うってやつ?


「・・・み、見たい…のか?」

「ん」


 コクンと頷き、蜜色の手が差し出された。が、バシンとその手の平を叩き落とす。


「あ、無視して構わないので」


 ヒューへ言い、余計なことをするなと眠たげなエメラルドを睨む。が、やはり意図が伝わらなかったのか、またもや差し出される蜜色の手。


「・・・」


 無言でまた叩き落とそうとした。瞬間、


「!」


 パッとオレの手を掴もうとした手を避ける。


「・・・惜しい…」


 ぼそりと一言。そして、じりじりと近寄るシーフ。


「惜しくない。そして、寄るな」


 じりじりと後退(あとず)さりながら返す。


「・・・や」

「だから、可愛くねぇンだよお前は!」

「・・・追いかけっこ…の、続き。する?」


 首を傾げながら、パッと動き出すシーフ。


「しねぇよアホ! つか、近寄ンな!」


 コイツ、喋り方はとろいクセに、動きはなかなか素早いんだよな? 微妙にペースを狂わされる。


「アルが、逃げる…から?」

「お前が寄るからだろっ!」


 side:アル。


※※※※※※※※※※※※※※※


 いきなり始まった追いかけっこを、呆気にとられて眺める。というか、さっきからあのシーフって奴の発言が爆弾過ぎていて、理解が追い付かない。


 とはいえ、今朝よりもアルが元気そうなのは、よかったとは思う。アイツの相手に、少々疲れてもいそうだが・・・


 このあいだの件で、アルとは非常に気不味い。

 アル本人に、自分の落度だと言わせたことが悔しい。謝らせてもくれなかった。


 あれからアルは、ずっと調子が悪そうだったのも気になっていた。だが、なにをすればいいのかがわからなくて・・・また、なにかやらかしてしまったら――――そう思うと、声をかけることさえ躊躇(ためら)ってしまう。


 そんなときだ。アルがシーフを連れて来た。アルを連れ戻そうとやって来た奴か? と、身構えていたんだが・・・どうやら違うようだ。

 しかし、このアルの弟だというシーフはマイペースというか、かなり独特な奴で・・・どう対処すればいいのか、少々困るな。


 それにしても、いつも雪路とだけは親しげに喋ると思ってはいたが・・・弟相手だと、(もろ)に男みたいな喋り方なんだな? アルは。


 ぼんやりとアルとシーフの追いかけっこを見ていたら、いきなりドン! と、シーフが吹っ飛んで行った。


「お、おい、大丈夫かっ、シーフっ!?」

「・・・痛い…」


 むくりと身を起こしたシーフの、眠たげな声が平坦に言った。あまり痛そうには聞こえないが。


「ハッ…寝てろ」


 冷たくシーフを見下ろす翡翠。


「おいっ、アル! やり過ぎだ!」

「大丈夫です。ソイツ、無駄に頑丈ですから」

「え~と、シーフ君、大丈夫?」

「…ん。そんなに、痛く…ない。・・・アル、遊ぶ?」

「チッ…またコイツは、厄介な・・・」


 アルの舌打ちと低い呟き。しかし、その口元には笑みが浮かぶ。上品なその顔にはあまり似合わない、獰猛な笑みが。


「いいぜ? 久々に遊んでやる。来いよ、シーフ」

「ん・・・行く…」


 そしてなぜか、追いかけっこが本格的な格闘の様相へと変わってしまった。


「え~と、ヒュー? 止めた方がいい…のかな?」


 困った顔でジンが言う。いや、わかりはするが、俺も困っているからな?


「…どう、なんだ・・・?」


 迷いつつ見ていると、雪路とのじゃれ合いは、アルが遠慮していたのだと、よく判った。

 アルのシーフへの攻撃は、遠慮も呵責(かしゃく)も無い。首や腹、顔面などの急所への蹴りが続いている。しかも、シーフは割と蹴りを食らって・・・また吹っ飛ばされている。そして、また起き上がってアルへと向かって行く。


「・・・まぁ、体術はアルの方が上のようだな」

「大丈夫なの? あれ…」


 カイルが心配そうに言い、


「痛い、とは言ってるけど・・・」


 ジンが返す。まあ、わかる。なんというか、シーフがあまり痛がっているようには見えないのだ。


 そうこうしているうち、攻撃を食らって倒れて動かなくなったシーフの腹の上にドカっ! とアルが座った。


「ぅわ・・・」


 カイルがアルにドン引きしている。俺も、さすがにそれはどうかと思う。


「え~と、アルちゃん?」


 声をかけたのはジン。やるな……さすがは医者と言ったところだろうか?


「はい?」


 普通に返すアルを、初めて怖いと思った。


「その・・・シーフ君は…」

「ああ、大丈夫ですよ。コイツ、頑丈ですから」

「いや、一応怪我とか」

「…ん。平気。アルの攻撃…軽い? から。そんなに…痛く、ない。怪我も…無い…」

「・・・」


 シーフの言葉に、アルの顔がヒクリと引きつる。あれは多分・・・怒った顔だな。


「…楽しかった…」


 と、腹に乗っかっているアルをものともせず、ひょいと軽く身を起こしたシーフが、バランスを崩したアルを抱き締めた。


「わ、なっ、シーフっ!」

「ん…捕まえた…」


 薄く微笑んだ唇が、アルの白い頬へと口付ける。


「…好き。アル…」

「やめろ。そして放せっ、暑苦しいっ!」

「? …体温は、アルより…低め。熱くない、筈…」

「そういうことじゃねぇからっ!」


 それには同意する。そして思わず、いちゃつくなら余所(よそ)でやれと言いかけ・・・


「…アル。どのくらい、寝て…ない?」


「「!」」


 微かな音量で囁くテノールに、ジンの顔色が変わった。多分、俺も一緒だろう。


「・・・」


 苦々しいといったアルの表情に、シーフが続けた。


「そのくらい、判る…」


 side:ヒュー。

 読んでくださり、ありがとうございました。

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