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随分と最悪な目覚めもあったものだ。

 怪我の痛い表現、軽いグロあり。

 走った閃光・・・雷、がっ!?


 顔面に突き刺さり、皮膚を焼き、眼球を、血液を沸騰させて蹂躙するっ!!!


「あ゛あ゛あ゛ぁぁァぁあアぁっ!?!?」


 脳髄が焼かれる激痛に、のたうち回る。


 雷、雷、雷・・・


 こっ、の……痛み、はっ!?!?


 早くっ、早く早く、再…生っ、をっ!?


 焼けた脳髄、脳幹、悩の再生・・・


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


「っ……っ!?!? ・・・・・・は、ぁぁ・・・」


 頭蓋が焼ける激痛と、自分の絶叫とで目を覚ますとは、随分と最悪な目覚めもあったものだ。


 なんか知らないけど、頭と顔面が焼かれたらしい。痛む顔面の再生を急ぐ。


「・・・ああ、クソっ…頭と顔面が痛い」


 掠れた声。その声を聞く耳も遠い。視界も悪い。くらくらと目眩(めまい)もする。


 火傷は治りが遅いんだ。痛いし、嫌になる。


 なんだっけ?なにがあった?


 僕は・・・?


 確か、ローレルと()り合って・・・?


 ああ、記憶が飛んでる。繋がらない。


 次に見たら、絶対殺す。けど・・・


「今は、いつだ? そして、ここは?」


 戻って来た感覚で、辺りを見渡す。


 見覚えの無い場所。


 なにかの会場。


 潮の匂い。そして、一定の揺れと波の音。


 船の中か?なんで僕は、こんな場所にいる?


 そして、僕を警戒するようにナイフを構え、怪我でもしたのか、額を押さえている女がいる。


 その女から、胸糞の悪くなるローレルと、他種族の混ざった匂い。そして、僅かに漂っている、アークの匂い(・・・・・・)


 もしかして、これ(・・)のせいか?

 僕は、無意識にこれを追ってここへ・・・?


「ねぇ、君はなに?」


 その女の目の前に移動して、聞く。


「っ!?」


 (ひるがえ)そうとしたナイフを持つ腕を掴んで止める。


「アレク様っ!?」


 叫んだのは、床に座り込む人魚。


 アレク?この女の名前か?


 その顔を隠すのは、額を押さえる手と長いプラチナブロンド。金のような、銀のような淡い色の髪。


「?」


 とても、見覚えのある色彩。そして・・・


「・・・君、混血だよね?」


 ローレルの匂い。混血。淡い月色の髪。女。


「顔を、見せろ」


 額を押さえる手を顔から引き剥がして、下からその顔を覗き込んだ。


「っ!?」


 (あらわ)になったのは、翡翠(・・)に浮かぶ銀の瞳孔。


「・・・え? なん、で・・・?」


 僕は、これ(・・)色違い(・・・)を知っている。


 ()に浮かぶ銀の瞳孔。


 僕は、この顔(・・・)を知っている。


 幼いながらも、挑むように僕を見上げた顔。


 僕は、この匂いを知っている。


 道理で、アークの匂いがするワケだ。


 だってこれ(・・)は、昔アークが血を与えた(・・・・・・・・・)混血のガキなんだから。

 そしてその後、僕が血を与えた(・・・・・・・)んだから。


 アークと僕の血が、混ざった匂い。


 僕は、この混血を知っている。


「あ、ははっ・・・ハ、ハハハハハハハハっ!? 凄いっ!? 凄いよ、ローレルっ!? 本当に驚いたっ!? 絶対殺したと思っていたのに、まだ生きてたっ!? ずっと君を、僕から隠してたんだねっ!」


 あのとき、僕が壊したローレルの娘っ!!!


 なぜか、自然と吊り上がる口元。


 驚きと共に広がる、楽しい気分。


 ゴクリと、喉が鳴る。


「な、にをっ……」


 けれど、僕を睨む翡翠(・・)の瞳には、なぜか僕を知っている様子が見えない。


「? あれ? 覚えてないの? 僕のこと。あんなに痛め付けてやったのに・・・?」


 なんだろう・・・

 こう、そこはかとなく・・・

 胸がざわつくような・・・?


「クッ……」


 白い手が、額の方へ行こうとするのを阻止。


「ああ・・・もしかして、あのとき(・・・・)みたいに、また(・・)記憶が飛んでたりする?」


 それなら、納得だ。


「あ、の…と、き…?」

「やっぱり、覚えてないんだ?」


 ナイフを持つ腕を軽く引く。と、


「ぅ、ぐぁっ!?」


 ゴキン! 鈍い音を起ててその肩が外れ、だらりと力無く腕が垂れてカランとナイフが床に落ちた。


「相変わらず脆いな? 君は」

「アレク様っ!?!?」


 上がった悲鳴は、なぜか人魚のもの。


「アレク、か・・・君って、そんな名前だったんだね。知らなかったよ」


 それは、昔より幼くはないが、見慣れた(・・・・)苦痛に喘ぐ顔。変わったことと言えば、赤くない瞳(・・・・・)と、幼女から成長したことくらいだろうか?


「初めて逢ったときも、こうして・・・」

「放っ、触るなっ!?」


 蒼白な顔へ手を伸ばした。嫌がって逃げようとすることを、許さなかった。


「嫌っ、ヤだっ!?」


 震える声と、恐怖に見開く瞳を無視して・・・


「っ! ぃ、ゃ・・・ゃ、めて・・・」


 額へと手を(かざ)し・・・


(いや)あァぁァあぁぁぁっ!?!?!?」


 絶叫を上げ、厭がって怯える君の、その本性を無理矢理引き()り出して・・・それ(・・)を砕いた。


「僕は、君を壊したんだ」


 死に掛けの君に僕の血を与えたことで、自分の名前もわからなくなる程に壊れて、瞳の色が赤くなったから。


「ねぇ、思い出したかな?」


 そんな君に、気紛れに名前を付けたんだ。


「ルチル」


 赤を意味する言葉(名前)を。


 side:イリヤ。


※※※※※※※※※※※※※※※


「っ! この声はっ!? あっちかっ!?」


 アルゥラも、この船にいたのかっ!?


 そして一体、なにが起きているんだっ!?


「クソっ!? 早く行かないとっ!?」


 side:女好き。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 寝ぼけイリヤ、漸くお目覚めです。

 寝ぼけてた方が色々とマシですが・・・


 ルチルは印欧語で赤を意味するそうです。


 そして次回、アルの正体を明かします。

 もう判っている方は、いつまで引っ張るんだよ?と思っていることでしょうが、もう少しお待ちください。

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