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痛くて熱くて、とても痛いっ!!!

 暴力、流血。

 怪我の痛い表現あり。

「っ!? リリの、悲鳴っ!?」


 リリ・・・


 疼く額を押え、立ち上がる。


 行かな、きゃ・・・


 side:アル。


※※※※※※※※※※※※※※※


「っ!? 女の悲鳴だとっ!」


 さあ、助けに行かなくてはっ!!


「よし、あっちだなっ?」


 side:女好き。


※※※※※※※※※※※※※※※


「あああァぁアぁあぁアぁァっ!!!」


 腕がっ!?


 痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!

 熱い熱い熱い熱い熱いっ!!!


 脳天を貫くような激痛っ!!!


 炎を押し当てられた二の腕の、(あぶ)られた皮膚が焼け焦げ、(ただ)れる。


「さあ、通してよ」


 炎を近付けられた皮膚が乾燥してヒビ割れる。


 痛くて熱くて、とても痛いっ!!!


 けれどっ、駄目っ…ですっ!?


 駄目なのですっ!?


 来…ない、で…くだ、さいっ!?


 来て…は駄目、なのですっ、アレク様っ!?


 リリの部屋から、出ないで・・・


 部屋の鍵を掛けっ、壊されました・・・


 この会場へ続く扉を全て閉じ、鍵を・・・


 それでも、単なる時間稼ぎにしかならない!


 駄目です!扉がどんどん壊されっ…


 リリはアレク様へ移動制限が掛けられないっ!


 リリがっ、悪いのにっ・・・


 リリがっ…アレク様にお逢いしたいからと、アレク様をお呼びしたのがいけなかったのにっ!!!


 リリの我儘がこんなことになる、なんてっ・・・夢にも思わなかったのっ!


 駄、目・・・


 リリは、こんなの平気だからっ…


 こんな怪我すぐに治るからっ…


 駄目っ! 来ないでくださいっ!


 リリを助けになんて来ないでっ!!!


「聞いてるの?」


 低い声が、酷薄な金眼が見下ろします。


「っ!?」


 駄目、なのにっ・・・


「?」


 来ない…で、ほしいのにっ・・・


「……っ!?」


 ダンっ! と、なにかが扉にぶつかる音がしました。ダンっ!ダンっ!と、続きます。


「……リっ!? …け…っ!?」


 駄目なのに、駄目なのに駄目なのに駄目なのにっ!? なんで、こんなに嬉しいのっ!!!


「……アー、ク?」


 小さく呟いたのは、歓喜に震える声。


「来ないでっ!!」


 side:リリアナイト。


※※※※※※※※※※※※※※※


 鍵が掛かり、閉ざされた扉。リリの拒絶を、


「邪魔っ!!!」


 大剣(クレイモア)でぶった斬る。


 そして・・・仮面舞踏会(マスカレイド)の会場へ辿り着く。


「リリっ!?」


 目にしたのは、床に倒れたリリの髪の毛を掴み、無理矢理その上半身を起こしている少年の姿のモノ。


 瞬間、ドクン! と強く脈打つ鼓動。

 背筋が、ざわつく。

 額が、疼く。


「っ…リリを、放せっ!?」

「アーク?」


 ソレ(・・)は、オレを見て微笑んだ。

 どさりと、髪の毛を放されたリリが倒れる。


「逢いた、かったんだ…ずっと、君に…」


 潤む金色の瞳。心底からの、笑顔。


「…っ!」


 ズキン! と、額が強く痛む。


 大剣(クレイモア)は駄目だ。コイツ相手には、オレの技量じゃ通用しないと確信。床に落とす。


「どうしたの? アーク?」


 それを無視して床を強く蹴り、一息でソイツの眼前へと移動。


「え? …っ!?」


 喜びに溢れる表情のソイツの腹へ、スピードと体重を乗せた、全力の蹴りを叩き込む。


 ドッ! と、裸足の足へ強い衝撃。次いで、ドゴンッ!! とソイツは壁へ叩き衝けられる。


 その間に床へ力無く倒れるリリを抱き上げ、ソイツから距離を取る。


「…ア、レク…様…ど、して…?」


 涙に濡れるアクアマリン。その、左の二の腕から肩にかけてが酷く焼け爛れて痛々しい。


 人魚は、火や熱に弱い。火傷の傷は、他の傷と違ってとても治り難いのにっ・・・


「オレがリリを放っとける筈ないだろ!」

「…っ、アレク、様っ…」


 応急処置をしている時間は、無さそうだ。


「・・・どう、したの? アーク」


 叩き衝けられて崩れた落ちた壁の瓦礫からガラリと起き上がり、不思議そうにオレを見上げる黒髪金眼の、少年に見えるモノ。


 折れた肋骨が内臓を傷付けたのか、その薄い唇の端を伝う赤。


 漂う血の匂いに、くらりと一瞬視界が揺れる。


「っ!」


 それを、頭を振って振り払う。

 さっきから、額が疼いて堪らない。


 ソイツが、一歩踏み出す。


「寄るな」


 低く言ってナイフを向けると、


「っ!? ・・・僕が、その女を傷付けた…から? だから、怒ってるの? その女を、気に入ってるの?」


 傷付いたという風な、今にも泣きそうに顔を歪めたソイツが、足を止める。


「謝る…から、だから、アーク。そんな物、向けないでよ…? お願い、だからっ」


 意味が、わからない。


 そして、やけに額が疼く。気持ち悪い。


 とりあえず、奴が止まっている今のうちにリリの応急処置をすることにする。


「リリ、少し我慢して」


 リリを床へ降ろし、シーフから貰ったメスを取り出す。そして自分の手首を軽く切り、


「…は、い」


 リリの傷口に、血を垂らす。


「ぅっ、ぐっ!?」


 痛みにか、歯を食い縛るリリのアクアマリンからぽろぽろと零れ落ちる涙。


 オレの血には高い抗毒、解毒作用があり、そして免疫活性化の作用がある。

 消毒の代わりと、そして垂らした血液を血晶(けっしょう)化させて傷口の保護。

 自分の傷口も血晶化して傷を塞ぐ。


「遅くなってごめん。リリ」

「っ!」


 謝ると、リリはふるふると首を振る。


「…な、んでっ…!」


 落ちる、低い呟き。そして、リリを睨む金眼。


「なんでっ、君はっ……どうしていつもそう(・・)なのっ!? なんでっ、いつも他の誰かに優しくするのっ!? なんで僕を見てくれないのっ!? なんでっ・・・そんな女なんかにっ、君が血を分け与える必要無いだろっ!? その女の傷ならっ、僕が治すからっ!? お願いだからっ、僕を見てよっ! アークっ!!!」


 癇癪を起こしたように喚く声が、額に響く。


「っ・・・」


 なんなんだ? コイツは、なにを言っている?


 意味が、わからない。


「・・・お願い、だからっ…君の血を、誰にもあげないでっ! 僕、だけが・・・」


 赤く染まる金眼が、オレを見た。


「っ!?」


 咄嗟(とっさ)に跳んでリリから離れる。と、


「アレク様っ!?」


 手を伸ばしたソイツが大きく口を開き、オレの喉笛へ喰らい付こうとして・・・


「「っ!!」」


 バヂィィッ!!! と、走った閃光と強い衝撃に、奴とオレが吹っ飛ばされた。


「があ゛あ゛あ゛ぁぁァぁあアぁっ!?!?」


 焼け焦げた顔面を押さえ、奴が絶叫を上げて床にのたうち回る。


「くっ、ハっ!?」


 オレも、床に叩き衝けられたのと、胸に走った強い衝撃とに息が詰まる。


()っつ・・・」


 自分の声が遠い。耳がちょっとやられたようだ。

 痛む胸元を押さえて起き上がると、ヅラも吹っ飛んだのか、地毛が垂れて来た。

 そして、ドレスが一部裂けて谷間が露になっていた。ちなみに、見えているのは谷間だけ。

 兄さんのくれたドレスはなかなかに頑丈なようだ。職人さんグッジョブだぜ!


 あと、父上の所有印(しるし)が消えていた。


 どうやら、あの(いかずち)は父上の仕込みだったらしい。つか、オレも胸痛いし、軽く火傷・・・


 まあ、顔面が溶けてるアイツよりマシだけど。


「ロ゛ぉーレ゛ル゛ぅぅぅっ!?!?」


 なんか、凄くアイツに恨まれてないか? 父上。


 一応、オレは感謝しとくけど・・・


 それにしても、…が疼く。


 side:アル。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 ローレルは用意周到です。

 そしてトールは迷走中。奴は船の構造を知りませんから・・・

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