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なんかこう、急に背筋が寒く・・・

 シスコン、ヤンデレ注意。

 宴会の翌日は、ヒューとアマラが二日酔いでダウンしていた。それをカイルとジンが介抱。


 雪君が笑いながら消化にいい食事を用意して、二人は青ざめた顔でちびちびと食べている。


「アマラが食堂にいるのって珍しいよね?」


 アマラはいつも船底にいて、食事もカイルに部屋に持って来させるというのに。


 なにげに、全員集合の光景は昨日初めて見た。


 今日も集合と言えば集合だけど・・・


「…うっさいわね、小娘」


 青い顔で張りの無いハスキー。


「一人で倒れられると厄介だからね。具合い悪いときには出て来るように言ってるんだ」


 苦笑しながらジンが言う。


「成る程。ジンと雪君は二日酔いじゃないんだ?」

「医者が二日酔いはマズいでしょ。酒は飲めなくもないけど、俺はヒューみたいに大好きって程じゃないから。節制しても平気なんだ」

御厨(ミクリヤ)も、そんなに強くないの自分で判ってるからねー? アホ程は飲まないよー」


 相変わらず雪君は、なかなか辛辣だ。


 side:アル。


※※※※※※※※※※※※※※※


 さて、ロゼットを呼ぶ為の口実は、どういう名目の集まりにしましょうか?


 別に名目はどうだっていいのです。


 僕にとっての最重要は、ロゼットの参加。

 この一点に尽きますからね。

 ロゼット以外の存在はどうだっていいのです。

 むしろ僕は、ロゼットしか呼びたくない。

 しかし、そうも行かないのが(つら)いところです。


 父上の代理としての当主権限が僕には与えられましたが、それに拠る強権を椿とロゼット、フェイド、エレイスに発動することは禁止されています。


 ですが、当主代理としての僕には、ある程度の裁量が認められているのです。


 なので、僕は身内としてではなく、経営者としてロゼットを呼べばいいのです。


 わざわざこうして遠回りをしなければ愛しいヒトに逢えないというのも、不便なものですね。


 ロゼットを、愛しい愛しい僕の妹だと胸を張って公言したいものですが、それは叶いません。


 ・・・いえ、やはりロゼットを公言などしたくはありませんっ! あの子は非常に美しい容姿をしていますからね。しかもあの子は、自分のその類稀(たぐいまれ)な美貌に無頓着なのです! そこが可愛らしくもあるのですが、無防備にその愛らしさと美貌とを振り撒くロゼット・・・

 あっという間にあの子へ有象無象の他の男共の視線が(たか)るでしょう。そんな(ゴミ)共の目があの子の美貌を映すなどっ・・・考えただけで虫唾(むしず)が走る。(ゆる)し難い。消してしまいたくなる。


 ・・・少し、落ち着きましょう。

 深呼吸です。


「・・・はぁ」


 難しい。ジレンマというやつですね・・・


 ロゼットを妹だと公言したい。しかし、美しいロゼットを見詰めるのは、僕だけでいいのです。


 あの子を僕の腕に閉じ()めてしまいたい。


 望む物をなんでも与えてあげて、どろどろのぐちゃぐちゃに甘やかして、僕がいないと生きて行けなくなるくらいに、僕だけを必要としてほしい。


 けれど、おそらくロゼットはそれを望まない。


 椿も、嫌がりましたからね・・・


 なにがいけないのかは判りませんが、椿は僕のこの愛情を認められないと言っていました。


 ・・・実に悩ましいことです。


 椿とロゼット。二人の容姿は然程(さほど)似ていませんが、その感性は割と似ているのです。


 なので、おそらくロゼットも望まないでしょう。


 ロゼットが望まないことは、したくありません。


 僕は、ロゼットには嫌われたくないのです。


 一度椿に徹底的に避けられて、地獄を見ました。その(てつ)は、二度と踏むまいと、僕は誓ったのです。


 ロゼットに嫌われるという想像をしただけで、身が裂かれて血が凍るように恐ろしい。


 まあ、この辺りは僕が一人で悩んでいてもどうしようもない問題なので、置いておきます。


 今の問題は、ロゼットを呼ぶ為の口実です。


 ロゼットが絶対に、僕のところへ来てくれるであろう文言は、既にありますからね・・・


 場所はここ。リリアナイトの船です。


 リリアナイトはもう、説得済みです。


 ロゼットは、必ず来てくれるでしょう。


 後は、あの子を呼ぶ為の名目とその他細々としたことを決めるだけです。


 今は・・・父上も、スティングさんも、クレアさんも、ハルトも、フェイドも、椿の邪魔さえ無い。


 さあ、この絶好の機会を活かす為にはどうした方がいいでしょうか?


 どう動きましょうか?


 ああ、とても楽しみですね。

 ロゼット。貴女に逢えるのが、待ち遠しい。


 月色の髪、銀の浮かぶ翡翠の瞳。

 貴女を思うだけで、僕の胸は高鳴ります。


 side:フェンネル。


※※※※※※※※※※※※※※※


「!」

「アルちゃん、どうかした?」

「…いや、なんかこう、急に背筋が寒く・・・」

「風邪?」

「いや、それとは違う気がする」

「そう? 具合いが悪いならちゃんと言ってね?」


 side:アマラの船。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 久々のフェンネルでした。

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