表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/179

アルがその気になるまで、ずっと待つ。

 百合注意。

 混乱したように固まるアルを見下ろす。色々な感情と思考がぐちゃぐちゃに絡まっている。


「アル? 落ち着いて」


 宥めるように、頬へキスを落とす。


「返事は今じゃなくていいから。ね?」


 そう。返事は別に、今じゃなくていい。


「何十年、何百年、千年だって待つよ」


 不安げな翡翠が見上げる。


「…千、年って・・・そんなに、待つの?」

「うん。アルがその気になるまで、ずっと待つ」


 アルにイリヤの影響が強く残るのなら、アルに、(あたし)の影響を及ぼせばいいと考えた。


 イリヤはヴァンパイアの真祖(しんそ)


 アルは、ヴァンパイアのハーフ。


 アルは、半分だけ、ヴァンパイアだ。

 元々は母方の血の方が濃かった。

 なのに、真祖の血を与えられた。

 アルは、イリヤの血を分け与えられた子供だ。


 ハーフなのに、真祖の強い血を無理矢理与えられて、壊された子供。


 アルは元々、そんなに血を必要とするタイプじゃなかった筈だ。けれど、調子が悪いときには血を必要とする。


 それ(・・)が一体、どういう意味なのか?


 アルは、イリヤが活動を再開してから、調子が悪かったらしい。そして、自分では気付いていないだろうけど、明確に血の摂取量が増えている。


 イリヤの影響でアルがヴァンパイア寄りに成って行くというのなら、(あたし)の精気や血を与えることで、アルを夢魔(おれ)に寄せればいいと思った。


 幸い、アルは(あたし)子孫(こども)達の血や精気を長年取り込んで来ている。そんな彼らの先祖である(あたし)の精気はきっと、アルには馴染み易いだろう。


 そしてなにより、アルは(あたし)の愛し子だ。


 アルを(あたし)に馴染ませる。

 そして、夢魔である(あたし)の方に寄せる。


 イリヤやアルの実兄がしたように、許容できない程に大量の血と魔力を短時間で一気に与えてアルを壊すような真似は、絶対にしない。


 アルに触れ、撫でて、キスをして、(あたし)の精気を与えることで、ゆっくりゆっくり、じわじわとアルを(あたし)に馴染ませ、アルを夢魔(おれ)寄りに創り変えて行く為の準備を整える。


 何百年掛かろうとも、全然構わない。

 時間は、幾らでもある。

 死ぬまでに返事をくれれば、構わない。


「ふふっ、忘れてもいいよ?」

「・・・さすがに忘れないでしょ」

「そうだね」


 アルの唇をそっと塞ぐ。


「愛してるよ、アル」

「ん…」


 ほんのり冷たくて柔らかい唇を(ついば)み、ゆっくりと精気を分け与える。


 閉じる、銀の浮かぶ翡翠の瞳。


 アルにとって、キスは挨拶と食事、愛情表現の方法でもある。そしてそれは、(あたし)にとっても同じこと。キスは食事で、愛情表現で、挨拶だ。


 唇をやわやわと()み、開いた口からそろりと舌を入れ、ゆるゆると絡ませる。


「んっ、ふ・・・ぁ…」


 可愛い、好き、愛しているという気持ちを()めて、ねっとりとキスを深めて行く。


「はっ、ぁ・・・ハァ、ハァ…」


 上気する頬、とろんと潤む瞳、乱れた甘い吐息。


 息継ぎの為に軽く唇を離し、呼吸が整う前に、また唇を塞いで精気を流し込む。


「は、ぁ・・・んっ…」


 くたりと力の抜けたアルを抱き上げ、ベッドへ。


「る、ぅ…も、ぃ…」


 呂律の回らない舌っ足らずな甘い声でアルが首を振る。口の端から垂れた唾液を舐め取る。


「ん、可愛い♥️」

「んっ…」


 とろけた表情がもっと見たい。だからアルに、もっと(あたし)を与えて、馴染ませておこう。


 空気を求めて喘ぐ半開きの唇を、また塞ぐ。


「る・・・んっ、ふ・・・」


 (あたし)も、少しローレルの真似をしようかな?


 side:夢魔。


※※※※※※※※※※※※※※※


 目を覚ますと、ルーがいなかった。


 そして、ベッドサイドには覚えのない血晶(けっしょう)が十数個と、置き手紙とが置いてあった。


『愛しいアルへ。

あたしの血晶。使い方は、わかるでしょ?

ちょっとヒトを探して来るから、またね?

愛してるわ。ルーより。』


 という、キスマーク付きの手紙だ。


 あのヒトは、本当に・・・

 来るのも、いなくなるのも突然だ。


 つか、オレは、どれくらい寝てたんだ?


 キスをされてからの記憶が曖昧だ。


 side:アル。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 夢魔のヒト、再び退場です。

 メリークリスマスということで、(ウソです。あまり関係ありません)イチャイチャしてます。

 けど、キスはアルと夢魔のヒトにとっては食事と愛情表現の一環なので、気持ち()くはなっても、ムラムラはしません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ