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やっぱり悪女だ・・・

 アマラが荷物を届けに来た男とアルちゃんを連れて行き、この大量の荷物を「荷物はアンタ達で運びなさい」とヒューに言ったらしい・・・


 そして、俺が呼ばれた。


 まあ、荷物自体はそう重くはない。

 しかし、これはアマラの荷物だ。


 俺にはわからない物が入っているのだろう。

 ぞんざいに扱えば、大層立腹される。

 それなら自分で扱えばいいと思う。しかし、そんな理屈はアマラには通じない。


 アマラは我が儘だ・・・男のクセに女王様気質…本人に言うと面倒だから言わないけど…


 船の中に入れさえすれば、後はアマラがどうにかする筈だ。分類やら、置く場所なんかは。


 適当に・・・ではなく、それなりに慎重に、手早く片付けよう。ヒューと二人、荷物を運ぶ。


 荷物の積み込みが終わり、ヒューに聞く。


「あのヒト誰?」

「アクセルって言ってたぞ?あと、ブライト」

「・・・アクセル…ブライト? ああ、だからアルちゃんと仲良さそうだったのか」


 納得した。


「知ってンのか?」

「知ってる…というよりかは、一部では有名だからね。ブライト家は」


 立場が微妙というか、難しい家ではある。


「そうなのか?」

「うん……混ざりモノの家だってさ。元々は純血のヴァンパイアの家だったのに、人間や獣人の血を取り入れた家として、有名なんだ。純血を至上とする風潮のあるヴァンパイアとしては、異端扱いされてるけど・・・混血のヒト達には優しいと定評がある」


 あそこの家は、不思議だ。


 一族で一番ヴァンパイアの血が濃いモノを当主に()え、一族で一番血が混ざっているモノを当主の相談役に置くらしい。かなり変わっている。


「まあ、商人の家だから、かなり打算的な部分も持っているんだけどね」

「打算的? どういう意味だ?」

「囲い込みとか? 割とえげつないらしいよ。役立つ人材は、掴まえて離さないとかさ」

「……えげつない?」

「商人には商人のやり方があるんだよ」


 返せないくらいの恩を売るのはマシな方。借金浸けにしたりとか、金銭的に追い込んだり・・・


 ある意味では、怖い家だと思う。


 まあこのブライトの情報は、俺が実家にいた頃の情報だけどね。今はどうだか?


 エレイスに入ってない上、海にいる俺は、ネットワークが結構前に切れてるからなぁ・・・


 アマラは、実はかなりの資産家だったりする。


 昔、倉庫に真珠が数百個ずつ(びん)詰めされているのを見て驚いたことがある。宝石珊瑚もその近くに置かれていた。

 真珠や珊瑚は、場所に拠っては金以上に価値が高い物だ。そして、「一粒、一欠片でも()ったら、海に叩き落としてやるから」と言われた。

 ちなみに、ヒューとカイル、ミクリヤはアマラにそんなことを言われてないらしい。


 俺だけに言うとか…なんか俺の扱いがヒドくないか? 信用がないというか・・・


 まあ、そんな資産家のアマラだから、商人のブライト家が接触してもおかしくはない。


「それって、アルは…」


 ムッと顔を(しか)めるヒュー。


「ああ、アルちゃんは大丈夫でしょ。っていうか、ダイヤ商会に喧嘩売る馬鹿はそうそういないよ」


 ダイヤというよりはアダマスに、かな?


 アダマスの次期当主のヒトは、冷血の君だとか称されてて、敵対するモノには容赦しないらしい。

 現当主よりも苛烈な性格だと噂されている。


 そういえば、次期当主は混血を差別しない…非差別主義の変わり者だって聞いた覚えもあるな?


 なんでも、妹が混血だとか・・・


「そう言や、そうだな」

「むしろアルちゃんはダイヤの子なんだから、囲う側なんじゃない?」

「・・・」

「あ、今心揺れただろ?」

「っ! 武器見放題とか、思ってねぇぞっ!?」

「ははっ、でもヒューには向かないと思うよ」

「なにが向かねぇンだよ!」

「ダイヤは武器商だよ? 剣を売らなきゃ」

「ぅ・・・」


 刀剣マニアで、コレクションをしているヒューには、売る方は向かないと思う。


 side:ジン。


※※※※※※※※※※※※※※※


「さあ、お嬢さん。他に欲しい物はあるか? 遠慮せずになんでも言ってくれ!」


 ドン! と笑顔で胸を張る馬の子。


「そうねぇ…」


 人魚ちゃんへの宝石は買ったし、(あたし)の服やアクセサリーも、お菓子やアルへのお土産も、馬の子に買ってもらった。他に欲しい物…今は特に無い、かな?


 ・・・もう帰っちゃおうっと♪


「あのね、トール君♥️よく聞いて・・・」


 (あたし)の話を真剣に聞いた馬の子は、


「フッ、それくらいお安い御用さ!」


 風のように去って行った。


 さぁてと、帰ろっと♪


「ただいまー♪」


 船へ戻ると、狼の子と鬼の子が揃ってお出迎え。


「お帰り…で、いいのかな?」

「おい、あのバカ…トールはどうした?」

「っていうか、その荷物、もしかして全部…」


 (あたし)の両手一杯の荷物へ、引きつった顔で琥珀の視線を向ける狼の子。


「ふふっ、トール君に買って貰っちゃった♥️」

「悪女だ……」

「で、そのバカはどこに行った?」


 もう、馬の子の名前さえ呼ぶのをやめた鬼の子。


「アルプス山脈へ旅立ったわ…」


 と、遠くを見詰めてみる。


「「は? アルプス山脈?」」


「いや、ちょっと待て」

「なんだってそんなところに?」

「実は…病弱でよく寝込んでいる女の子がいて」

「は? なんだいきなり」


 目をぱちくりさせる鬼の子を無視して続ける。


「外に遊びに行けない女の子の唯一の楽しみは、絵本を読むことだったわ。それで、いつか身体が丈夫になったら、絵本に載っていたアルプス山脈に咲く、エーデルワイスを見てみたいと・・・けれど、女の子は今…高い熱を出して、エーデルワイスが見たいって譫言(うわごと)を言い続けているの。誰か、その女の子の為にアルプス山脈からエーデルワイスを持って来ることができれば・・・」※高山植物を勝手に摘むのはいけないことです。真似しちゃいけません。


 ぎゅっと、胸の前で両手を組み…


「って言ったら、ちょっくらエーデルワイスを摘んで来るぜ! って走って行っちゃった♥️」


 にっこりと微笑む。


「嘘かよ!」

「あら、失礼ね? 事実よ。ちゃんとこの街に住んでいる、病弱な女の子のことだもの」


 夢魔の(あたし)に届くくらいに、強い夢だ。まあ、昼に寝てる人間(ひと)は少ないんだけど・・・


 ちゃんと、馬の子に女の子の住所も教えたし、エーデルワイスを持って行ってくれるだろう。※高山植物を勝手に摘むのはいけないことです。真似しちゃいけません。


「つか、アルプス山脈に花咲いてンのか? 時期とか、どうなんだ?」

「さあ? あたしはそんなの知らないわ♪けど、きっとトール君が見付けてくれるって信じてるの♥️」

「やっぱり悪女だ・・・(てい)よく追い払った」

「ふふっ♪」


 一応、馬の子を遠くにはやった。けど、あの子はきっと数日で戻って来るだろう。


 あの子、色々と頭は残念なんだけど、骨の(ずい)…いや、魂の底からの女好きだからねぇ?


 本来なら、魅了耐性が高い筈なのに、(あたし)の魅了にメロメロだったし。


 まあ、(あたし)というよりは…女という性別に対して、頭が常に花畑(ピンク)なんだろうけどね?


 side:夢魔。

 読んでくださり、ありがとうございました。

 アマラとアクセルの商談?をしてる最中の、裏側の話でした。

 トールがルーに転がされてます。

 また、暫く退場…

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