EP93 調査報告
風邪引かないようにね
マギア・ラピス メインブリッジ
(暇だ・・・・・・何もする事がねぇ)
雨宮は皆がダンジョンへと向かった後、一人ラピスへと取り残されていた。勿論艦内を維持するクルーは残っているが、ブリッジへと入る事が許されたクルーは全て異世界ダンジョンの内部へと侵入し、エネルギーの確保に努めているのだった。
(まだ作戦が始まってから半日も経ってないが、やはり暇だ・・・・・・大きくエネルギーを使うのは流石に出来ないし、精々ウルトラロボットクリエイターのアップデート作業をするぐらいか・・・・・・)
一般人には指先が消えている様に見えるレベルの高速タイピングでARキーボードをタイプする傍ら、牢屋として使っている区画をモニタリングし、雨宮はふと思い出す。
「あ」
もうどの位の時間が経っただろうか、彼らはアトレーティオ4襲撃の実行犯であると同時に、貴重なサンプルとして雨宮はトリアエズロウゴクと閉鎖区画にブチ込んで以来一切気にした事が無かった。因みに生命維持はナノマシンのオートプログラムによって勝手に行われている為、データログのみが雨宮に転送され、その長ったらしいログを雨宮が見る事は無く、大体一年半程放置されていた。
(オークとかそう言えば居たっけか・・・・・・)
そんな何でも無い事を考えながら時間を潰していた雨宮の目に、諜報員からの報告通知が映る。
ー・・・報告者 ティプリー・ウエッサ
木星圏首都戦艦タイタンから・・・
セントラルギルドは月圏マッサマンギルド本部からの通信途絶に伴い、星間航行能力を伴う上級冒険者クランの派遣を実施、七つの大型クランが名乗りを上げ、現在およそ三世代前の超空間航法(第三超広域開拓世界において一般的なもの)を使用し、エターナルグレーへと進行中。最短の到着予定時刻は五日後の予定。派遣されたクランは以下の通り、到着順に列挙。
ーモリモリエルフカンパニー 構成主要因 エルフ フェアリー
構成人数凡そ二万人 SランクからAランクの冒険者が最も多く、次いでDランクからF迄の初心者。最も多いとされている中間層B・Cランクの所属はゼロ、このランクの間は余所へと放逐される模様。
クランマスターはサミファルシア・ジュピター・イチイバル。ボスのご友人ジェイク・ジュピター・イチイバル殿の妹君であらせられます。
サブマスターはイオンセスナソン・ダンダガ・タイオタイ・センス・ミトネアシオ・ジュン。ハイフェアリーの精霊巫女としても界隈では有名な人物で、クラン内随一の実力者でもあります。
その他にも高名な冒険者も数多く所属しており、一軍に匹敵する戦闘能力を持ち合わせた大型クランです。
空間戦闘能力としてサラマンダー級改造戦艦を十隻、ウンディーネ級を四隻、シルフ級十五隻と中規模艦隊を形成し、木星圏戦艦シェアトップスリーとしても知られているマーテル社とサポート契約を結んでいる他、所属冒険者の中にはタレント事務所と契約し芸能活動を行っている者達も多数所属しています。それに伴いスポンサー契約も数十社と多く、資金繰りは割と順調なようですが、今回の遠征に伴い報酬が少ない事をかなり気にしている様子です。
ーマジ狩るヴィナス・ツー 構成主要因 人 機人 獣人
構成人数凡そ二千人 AランクからDランク迄。入団に制限があり、女性のみDランクからと初心者お断りのクランです。尚当方に所属のジャスティオーン氏とは厳密には関係が無いらしく、クランマスターの憧れによる命名のようです。
クランマスターはカヤコ・イノセニア。木星圏の食糧事情を賄う一角を担うイノセニア水産の娘さんで、クランマスターなのに冒険者ランクはFと所属冒険者の中で最も低く、かなりの病弱で年の半分は病で床に伏せっているそうです。入団要項と反目しますね?
サブマスターはサオリーヌ・源。彼女はマスターカヤコの主治医で冒険者ランクはAですが、その実力は既にSランクに届いているとの事。実質的に彼女がこのクランを運営しており、冒険者・医者・クラン運営の三足を履きこなす優秀な人材です。
重量型SWを数多く所有し、採掘委託や破壊活動依頼を主にするクランで、そのSWを輸送する為の輸送艦を五隻所有しており、太陽系各地で紛争後の片付け等で財を築いていくタイプのようです。
ービトーKの食奪 構成主要因 獣人
構成人数凡そ八千人 SランクからFランクまで幅広く採用を行っているが、獣人のみの制限有り。殆どの人員が過去に虐げられる等の心の傷を負っており、そう言った者達の救済として行き場を失った獣人種達が行き着く先の一つとして機能しているようですが・・・・・・。もう少し調査が必要と思われます。
クランマスターはピトーKこと伊藤圭介、転生者の獣人で通常の依頼から裏の仕事まで幅広く請け負うSランク冒険者ですが、限りなく黒に近く、公的な記録の改竄が見て取れますが、当方に関係が無い様なので放置しておきますね。
サブマスターはコーコ・ミヨシ。マスターと同じくSランクの冒険者ですが、裏の仕事は請け負っていない様で、事ある毎にマスターと反目しクランの勢力は彼女とマスターの二つの勢力に別れているようです。
白兵戦闘を得意とするクランで、要人護衛や暗殺、施設制圧などを主な仕事として請け負っているようです。このクランはチャーター便で二つの勢力に分かれて現場へと向かう模様です。
ー夏の日差し 構成主要因 サハギン 人 獣人 メロウ 等
構成人数凡そ十二万人 SランクからFランク迄幅広く、特に制限の無いクランですが、制限と言って良いのかは分かりかねますが、夏が好きだと尚良いと募集要項に記されていました。
クランマスターはディーン・オイリー。彼はSランク冒険者であると共にボディビルインストラクター及び選手としても有名で、太陽系全土に支店を持つオイリージムのトップでもあります。
サブマスターはサフィーマ・イロリナート。当方の・・・・・・というかボスの奥方様の一人であるエクシリス様の妹君であらせられます。当方のお二人程好戦的では無いそうですが、クラン運営は実質的に彼女一人で行っており、組織の運営や指揮に携わる事柄を一手に引き受ける、超優秀な人材であります。
構成人員が多く今回の作戦で動く人員は二万との事ですが、太陽系全土に所属員が居り増援の可能性も有るようですが、このクランも宇宙船等を所持していないようで、チャーター便で現地へと向かうようです。
ー 構成主要因 ドワーフ 人 エルフ 等
構成人数百四十万 SランクからFランク迄幅広く、制限はクリエイターを志すものであれば誰でもと言う事です。
クランマスターはインドン・ガッハ。世界最高のガンスミスと呼ばれている程の方ではありますが、どうやらアルコール依存症のようで常に酒樽を持ち歩かないと不安で居ても立っても居られなくなるとの事です。
サブマスターはメイリーン・ガッハ。マスターの娘さんですね。アル中の父親に代わってクランを運営している方です。彼女も又Sランクの実力者で、木星ダンジョン内で配信プラットフォームを使った生配信を行っている冒険者ライバーだそうです。リンク張っておきますね。
太陽系内で屈指の構成人員数を誇るクリエイタークランですが、実際に動く人員は一万との事です。あ、今回の依頼ではサブマスターのメイリーン氏が来るとの事で、生配信が予想されます、有名配信者ですので配信を阻害する事によるデメリットが発生する恐れがありますので、ご注意をお願いします。
ーサイキックシンフォニー 構成主要因 人?
構成人員は百二十人 構成人員こそ少ない者の、調査に当たり細心の注意を払わざるを得ない存在でありました。冒険者ランクはFのみで、公的な記録が全て改竄されている事が判明しております。
クランマスターは真田傭兵。冒険者としてのランクはFですが、能力としてはSランクを軽く上回る実力の持ち主で、超能力を有する敵対存在として認識出来ます。
サブマスターは倉敷志緒理。彼女はサブマスターですがコレといった活動はして居らず、マスター真田に引き摺られるようにしていたのが印象に残っています。
間違いなくエスパーです。最大級の警戒が必要と思われますのでご注意を願いします。
彼らは小型の宇宙船を一隻保有しており、全員で参加するようです。これ以上の調査は危険ですので帰還します。
ーコレクトファンタジー 構成主要因 人 機人 獣人 等
構成人員千二百万 現在この世界で二番目に人員の多いクランで火星を主な拠点とするクランです。SSSからFランク迄制限無く受け入れを行っています。
クランマスターはイチロー・スズキ。旧世紀の勇者と呼ばれた転移者で、火星帝国を興した方ご本人ですね。帝位を息子に譲った後は太陽系を彷徨いダンジョンを討伐する毎日を送っているのだとか・・・・・・。あと、ボスへのメッセージを預かっておりますので添付ファイルに入れておきますね。
サブマスターはイノリ・スズキ。マスタースズキのお孫さんの一人ですね、先日敵対していたダイゴ・スズキと大分年は離れていますが、同じ血を継ぐ兄弟のようです。このクランも又彼女がクラン運営を一手に担っており、その巨大さ故法人格を持ち、支持母体などを持たず自ら資金を捻出する事が出来るクランのようです。
所有する艦は多く、シルフ級からオーガ級迄百隻近い艦艇を所持しているようですが、今回はサラマンダー級五隻での参加という事です。尚参加に当たってマスタースズキが直接指揮に当たるとの事ですので・・・・・・多少やっかいかも知れませんね?
このクランは所用で出立が遅れるようで、一番最後に到着する予定であります。
ーーーーーーーーーー
(追伸、一つ大型ではないクランが混じっておりますが、其処が一番危険だと思われます。・・・・・・か)
雨宮もロペから必要な情報は与えられているのだが、記憶という点において雨宮には新しく、情報が明らかに不足している為今一つ危機感が湧かず、不結理を復活させれば何か分かるかとも思ったのだが、エネルギー問題が解決していない今彼女を復活させても、彼女のリソースは大きく一瞬で再び枯渇してしまう。
(わくわくする情報の中にげんなりするものが混ざっていると、わくわくも半減だなぁ)
エターナルグレー内外に及ぶ情報インフラの新規構築には多少の時間が掛かるが、それもガーディオン達の能力を加味すればそれほどの時間は掛からないだろうと雨宮は軽く見積もっている。そしてそれも間もなく終了するとの報告が入り、改めて地球圏へと向かうナノマシンマーキングされたクランの人間達に注目する。
(エロフ・・・・・・いやいや・・・・・・そうじゃ無くて、鉄の金床とやらも気になるんだが、やっぱり気にしない訳にはいかないよなぁ)
雨宮は添付されたファイルを開き、そのファイルの中に仕込まれた通信サーバーへと自動的に情報を送信するバックドアをわざと動かし、ナノマシンを送り込んだ。
(旧時代的というか、古い世界的というか)
ナノマシンによってラピスの居場所を隠蔽したままで発信された通信は、きちんと相手に届いたようで、誰も居ないブリッジに恐らく彼からだと思われる通信要請が届いた
。
ーー此方コレクトファンタジー、オペレーターの真喜野葵です、ぎんがりょ・・・・・・えっ!?失礼致しました!銀河帝国旗艦応答願います!
「・・・・・・此方銀河帝国の皇帝をやっている雨宮だ」
ーーえっ!?しっ失礼致しましたー!!
コレ代わらんか!とスピーカーの奥から壮年男性の声が聞こえ、ブツッと耳障りな音が聞こえた後通信相手が代わり、ハキハキとした声がよく耳に通る。
ーースマンスマン、ウチの孫の一人なんじゃが何ともどんくさくてのー。
そんな事無いですー!と発信源が遠いのか小さく否定する憤慨した声が聞こえるが、映像が映らない為雨宮には先程と同じ声としか認識出来て居らず、暇つぶしが出来てもよく判らない事に巻き込まれるのは困るなと、雨宮はそう思う。
「で、何か用か?」
ーーまぁそんな所じゃの。今の今まで所在が掴めんかったもんで連絡も出来んかったが、おぬしも転移しちゃじゃろ?
「・・・・・・黙秘する」
ーー何故じゃ?ワシは別に敵では無いぞ?
「お前の孫か子供か知らんが、余計な事をしでかした奴が居ただろう。アンタもそんなに代わらないような気がしている。それだけだ」
ーーダイゴの事か、アレとは縁を切って居ると言っても信じられんだろうな。おぬしらの間に何が有ったのかは知らんが、ワシの家族と彼奴の繋がりなどもう悠の昔に切れておったのだからな・・・・・・。
何を思って言葉を切ったのかは雨宮には分からないが、しばしの沈黙が続いた後、再び陽気なじいさんの声が響き渡る。
ーーまぁそう言う事じゃて彼奴とワシ等は関係ないんじゃ。其処は信じて貰うしかないの。それに・・・・・・。
「ん?」
ーーワシ等と繋がりが有れば火星で役に立つと思うんじゃがの!
(・・・・・・しがらみが出来てうっとうしいとも言うな)
ーーともかく今は月へと向かっておるんじゃが、何処かのタイミングで有って話がしてみたいのじゃが・・・・・・。
「今は無理だ。忙しい」
ーー何か急ぎの用事かの?
「そう言う事だ」
ーーふむ・・・・・・実はワシ等ギルド本部から調査員を護衛しておってな?月に何かがあったという事なんじゃが、おぬし何か知らんか?
「逆に聞こう、ある程度の事を知っているからアンタが動いたんじゃ無いのか?」
雨宮は一瞬も躊躇わず声だけの主イチロー・スズキに問い返す、火星帝国の元皇帝がギルドの依頼があったからと言ってそうそう動くとは雨宮には思えなかったからだ。
ーーんむ・・・・・・まぁ、火星からもある程度衛星など飛ばしておるからの、ギルドの情報よりも正確な情報を掴んでおるつもりではおる。そして・・・・・・目の良い艦なら、月の姿が球形に戻っておる事ぐらい見て直ぐ分かるわ。どんな高名な魔法使いでも、惑星一つを再生するなどという事は不可能じゃ。だとすれば科学技術、可能だとすれば・・・・・・ワシはナノマシンしか知らん。そしてナノマシンを今、真面に使う事が出来ているのは雨宮銀河、おぬしだけじゃ。
(そう言えばこの世界ではナノマシンは今使われていないんだったか)
ーーワシがこの情報を手に入れたのは・・・・・・理由は分かるな?
「シン・トラウバルだろ?」
シンの流した情報はロペと雨宮によって検閲され、流す事が許可された情報でしか無く、その内イチロー・スズキを動かしたいと思っていたからこそワザと注目せざるを得ない様な情報を流させた。ナノマシンの情報とは世間にとってはその位大きな情報なのである。
ーーそうじゃ、そろそろ彼も此方に・・・・・・。
「それはもう出来ない」
ーー何?どういう事じゃ?
「彼奴は既に銀河旅団の機密を保持している。それに・・・・・・いや、それだけだな」
(本人が望んでいると言っても理解はされないだろうな)
ーー一応彼は一軍の少佐、上級士官なのじゃが・・・・・・。
「だとしてもだ。詳細は話せないが、彼奴に関してはもう此方にいて貰う他ない。寧ろ其方に戻れば火星が集中攻撃を受けるんじゃ無いか?」
ーー何じゃと?どういう事じゃ?
「言っただろ?彼奴は余所に出せない情報を知ってしまっているんだ。銀河帝国の機密をな。そんな奴をどうこうするなら死んで貰うしか無くなる。それに未知の技術を持つとか噂になっている銀河旅団の機密情報だぞ?欲しい国は幾らでもある」
ーー・・・・・・じゃがそれは、銀河帝国と火星の戦端を開く事になるのでは無いか?それはどちらにもデメリットしか無いと思うのじゃが?
「いいや、此方にはデメリットが無い。寧ろメリットはかなり大きなものだ」
雨宮にとって敵とは、ダンジョンのモンスターと同じ存在であり、死んだ所で特に何も気にする事が無い。仮に火星が敵に回った所で分解してエネルギーが増えるだけで、最悪惑星ごと分解、再構成してしまえばそれで良い。今の雨宮にはそれが出来る。
ーー言うだけなら幾らでも言えるぞ?
「知らないのならもう口を閉じろ。これ以上無駄な話は不要だ」
ーー彼には家族がおるのじゃぞ?それを・・・・・・。
「ふっ・・・・・・それがどうした。本人ならともかく、俺には関係の無い話だ」
ーー・・・・・・その本人は出せんのか?
「居ないからな」
ーーそうか・・・・・・。
何とかして少佐を取り戻したい火星側の情に訴える手段は雨宮には一切通用しない。寧ろ今の雨宮としては少佐の家族が人質になっている言質を取った事が、多少の成果として認められる。分かっていた事ではあるし、本人も納得した上で今の仕事をしているのだろうから、表面上は何も代わらないだろう。しかしシンと雨宮はラピスに居る間にそこそこの間柄になり、そこそこの信頼関係を持つまでになった。普通の友達なのだ。
そして元来の雨宮の聞き上手な気質から色々な事を語り、シンは雨宮とこの銀河旅団に自らの理想を重ね、既に雨宮や諜報員を通じ自身の周囲に手を回し始めている。其れ位には距離を縮めていた。
シンは自ら覚悟を決め雨宮に眷属化を願い出た。彼の中に明確なビジョンが出来た今、普通の人間のままでは達成が難しい目的が有り、雨宮から課せられた欲しいものは全て手に入れるの志の元に、機人種の肉体を捨てハイパーヒューマノイドの肉体を手に入れた。
シンは家族をラピスへ呼ぶつもりでいるのだ。
(・・・・・・彼奴は彼奴で娘も嫁もLOVE奴だからな、離れすぎて禁断症状が出てきたとか言っていたし)
ーー・・・・・・居ない?どういう事じゃ?
「出かけてるだけだ」
ーー既にそちら側に組み込まれているという事か?
「そう言う事だ」
ーーうーむ・・・・・・まぁこの話は良かろうて、ワシでは解決出来そうに無いの。
「まだ何か有るのか?」
ーーふむ、単純に会ってみたいと思うのじゃが、それもかなわんかの?
(・・・・・・俺も確かに会ってみたいというのはあるが、非常に面倒臭そうなじじいだ)
ーーどうした?
雨宮は少し考えた結果、素直に真情を吐露した。
「面倒臭い」
ーー・・・・・・は?
「今割とやる事が多いんだよ、面倒臭い又今度にしろよ」
ーーそれは何時じゃ?
「知らん、ジェニにでも聞いてくれ」
ーーな・何!?ジェニ?ジェニとはまさか・・・・・・。
(ん?何か狼狽えだしたぞ?)
ーージェニファー・キャッシュマンの事か?
「それがどうした?」
ーーい・いや?あー、そう言えばワシもこの後用事が有るんじゃったわ!じゃあの!
最初に繋いだ時と同じ様にブツッと不快な音を発し、通信は一方的に切れた。
(ふぅ・・・・・・ジェニ?)
ーん~?リンクを繋いでも大丈夫なのかい?
(少し位なら問題ないぐらいのエネルギーは送られてきている。問題ない)
ーそっかそかー。二人だけの通信も久しぶりだねぇ?で、どうしたんだい?あたしゃ今統括監督署の中で色々やってる所なんだけど。
(イチロー・スズキと知り合いか?)
ーん?あぁあのノータリンか、何か有ったのかい?
(向こうから会いたいだの何だのと色々言ってきたが、ジェニの名前を出した途端逃げていった)
ーはン、彼奴は太陽系連合政府をアタシが立ち上げた時に、クッソ下らない文句を言ってきたから、正論で論破してやったらそん時も逃げていったね。
(成る程)
ー頭悪い癖に理知的に見せようとする様な所が有るからね、彼奴。確かに力は強かったけど所詮只のサイボーグさ、機人種の始まり何て言われているけど、実際の機人種はドワーフやらエルフやらの合作さね。まぁ詳しい話は又今度データベースに入れ込んどくから、適当に目を通してくれな?
(まぁあんまり近くに置いておきたい奴じゃ無いってのだけはよく判った。ロペもバカだバカだとよく言っては居たしな)
ーまぁそんなもんさ。伝説の勇者なんて言ったって、ウチにはそんなレベルの子達が山程居るんだ。全盛期の力ももう無いみたいだし、隠居じじいの道楽クランみたいだろ?あんまり気にする必要は無さそうだね。
(ところでギルドの調整は上手くいっているか?)
ーおっ。そうだね?もう数日もすれば本格的に職員を送り込んでくるって話には落ち着いたよ。商業ギルドの方も企業を送り込むつもりで居るみたいだし、来年の春ぐらいには移民も募集出来るんじゃ無いかなー?
(来年の春・・・・・・季節感も時間の感覚も大分狂っているな俺・・・・・・今冬か)
ー四季で言えば時期的にはもうそんなとこだね、十一月だし。只季節を直に味わおうと思ったら、火星に行くしか無いけどねぇ。
(艦内で気候変化とか無駄過ぎるからなぁ)
ー暑いのも寒いのもあんまり良い事は無さそうだね?
(寧ろハイパーヒューマノイドに寒暖の差なんか微々たるものだ。ナノマシンフィールドのお陰で暑かろうが寒かろうが一定に保つ事も出来るしな)
ー確かにそうだねぇ、で?新しい情報は何か有ったかい?
(五日後木星のギルド本部から職員と、調査に派遣された冒険者クランが順次到着するらしい。)
ー成る程了解、適当に遇っとくかい?
(気になる奴らもいる事はいるし、どうするか迷っては居る)
報告にあった優秀な人材を引き抜こうと考えている雨宮ではあったが、特に伝も無く当然の事ながら面識も無い。突然曲がりなりにも一国の皇帝で在る雨宮が、いきなり会いに行くのも世間体はよろしくない。そしてやって来る敵と思われるクラン、雨宮はイチロー・スズキにかのクランの事を尋ねておくべきだったと少し後悔する。
(エターナルグレーで良いようにされないようにだけ、上手くやってくれ)
ー分かった。お?データさんきゅ。愛してるよ銀!
(おう)
元気に通信を切り仕事に戻ったジェニは、これからやって来る冒険者達への対応だけで無く、ギルドの職員や普通の移民等への対応、周辺コロニーへの対応などに追われ、忙しい時間を過ごす事になる。
ティプリー・ウエッサ 四十八歳 ウルテマヒューマノイド ????所属
元金星軍所属の情報将校だった人種。冒険者歴は無し。
金星圏参謀本部付き情報将校として、二十四年に亘り勤め上げてきたエリート将校だったが、金星軍全体を網羅する程の裏情報網を築き上げ、弱みを握る事で自らの身の保身を図り、数多くの金星軍の軍人達を操ってきたフィクサー的存在。
自らの安全と安寧を何よりも重視し、その命を守る為なら身体も安売りし、味方もバーゲンセールで出品する筋金入りの悪党だったが、その能力に目を付けたロペによって仕掛けられた監視型ウィルスによってその情報の全てを遮断され、軍への背任の現行犯で逮捕、ヘルフレムへと投獄される事になる。
若い頃から軍人として最低限の身体作りはやって来たものの、ヘルフレムに入れられるような海賊や、高ランク犯罪者達敵うはずも無く、散々冷遇されたあげく自ら独房へ入るという行動を取り、可能な限り一人で安全に過ごす時間を求めていた。
ヘルフレム脱出後は再び身の保身を図るように行動し、雨宮に擦り寄り眷属としての地位を手に入れた。
眷属化し自らが若返っている事に気づいた後、今迄の彼女の生き方は決して楽しい物では無かったと振り返り、これまでとは違う生き方を模索し、その人心コントロール術を用い雨宮と接触、コミュニケーションを取っていく内に雨宮の奔放な生き方に感銘を受け、心からその軍門に降る事を誓った。
彼女はナノマシンを通じ雨宮と主従の契約を結び、裏の眷属の一人としてロペの統括する諜報部へと所属して、雨宮への情報を制限する目的で創られた諜報部の方針とは真逆の行動を取るようになる。彼女の手に入れた情報は直接雨宮へと送られ、その後にエリナ・ロペへと送られる。
趣味はネットサーフィン・VRゲーム。好きな食べ物はインスタント焼きそば。
彼女も又『スペースアーク2』のプレイヤーの一人で、ゲーム内でも最新情報を一手に引き受ける情報屋クラン『隣の晩ご飯』のリーダーを務め、ゲームの最新情報からプレイヤーの中身の情報に至るまで、情報を金銭で売買する悪質プレイヤーとして運営にマークされていたのだが、銀河旅団に所属するにあたりクランを解体、トップクラン『銀河研究会』へと所属を変え、ゲーム世界でも今迄と違う生き方を満喫している。そしてゲームをする彼女の傍らには常に段ボールに詰まったインスタント焼きそばが有ると言う。




