EP92 ダンジョンアタック
またせたか・・・・・・・?
ーーーーーーーーーーside エクス
ダンジョン一階層に作られた人の領域で在った大広間を探索し、その場でギリギリまで生きていたギルド職員達の最後の叫びを受け取ったエクス達は、目的を少しだけ修正し一階層のマッピングを新たに再開する。
「ふーむぅ・・・・・・。まさかほんまに生きた人間がおる間にダンジョンが変化するなんて事が有るとはなぁ」
固まって歩くエクス達五人から少し離れ、周囲の警戒をしながら歩くエリナはモンスターの気配が全くしない事に首を傾げながらも、リアルタイムに先頭を進みつつ簡単な周辺図を作成し、パーティーメンバーへと共有する。何処まで行っても薄暗く、相変わらず銀河旅団のクルー達は周辺に沢山居るものの、このダンジョンの異常な広さに辟易し、恐らくエターナルグレーに残っていたと思われる一般の冒険者達は次々と準備不足を痛感し、二階層への階段を見つける事も出来ず撤退していく。
「徐々に冒険者の数が減っていますね」
「この広さは普通の冒険者にしたらちょいと広すぎるんちゃうかな?何や一階層にしてはめっちゃ奥行きもあるし、階段が全然見つからん」
「さっきから超ナノマシンを周囲に散蒔いてるのに、途中で何かに邪魔されるのよね」
「このダンジョンが生きとる証拠やねぇ」
ナノマシンをダンジョン全体に浸透させ、一気に内部の構造を把握しようとしていた眷属達だったが、それぞれが自分の居る場所から数メートル範囲位までナノマシンを飛ばすと、何かの干渉に遭いナノマシンは見えない壁に打つかり、ナノマシンの本体である眷属が動くとナノマシンもそれに合わせて移動が出来るようになる。結局自身の数メートル先にまでしかナノマシンは飛ばせず、ちょっとだけ遠くが見える程度の効果しか得られず、エリナからしてみれば自らの察知能力を使い肌感覚で確認していく方が広範囲で探知が可能である為、ナノマシンが全く役に立たない。
「何だかここに来てナノマシンに頼らないダンジョン攻略が必要になるなんて思わなかったわ」
「旦那様なら丸ごとナノマシンでくろてまう事も出来たかも知れへけどなぁ。それを警戒・・・・・・?何でナノマシンを?・・・・・・?」
ゆっくりではあるが他のパーティ達と間隔を空け、人海戦術で一層を歩きマップが徐々に出来上がっているのだが、その歩みはやはり予想より遙かに遅く、それもそれぞれ上位眷属達がこの新しく変化したダンジョンへと何か危機感のようなものを感じ取り、スピードを上げて進む事を躊躇わせていた。
「エクねぇ?」
「・・・・・・?ナノマシン・・・・・・警戒・・・・・・制限・・・・・・??」
「??」
イミルと手を繋ぎつつもう片方の手で顎のラインをツンツンとなぞり、頻りに首を傾げ何かヒントのようなものを得たエクスは、辿り着けそうで辿り着けないこのダンジョンの違和感にモヤモヤしつつも、徐々にパーティは奥へと進んでいく。
「!・・・・・・突き当たりまで来てしまったわね」
数十分は歩いただろう頃に、エリナはこれ以上先に進めない所まで到着した事を、周りにパーティに居る斥候達と情報を共有して確認する。此処で一つおかしな点が発覚した。
「え?階段無かったで?」
「そう言えば・・・・・・」
「もしかして此処で終了?」
「流石にそれは無いと思いますが・・・・・・」
此処で今迄首を傾げながら歩いていたエクスが一つの可能性に辿り着いた。
「・・・・・・ナノマシンお断りのダンジョン?」
「どういう事ですか?」
「ん~・・・・・・ナノマシンで探索出来へん訳では無い、せやけどかなり制限されとる・・・・・・誰かがリアルタイムでこのダンジョンを作り替えとるか?・・・・・・それは・・・・・・いや・・・・・・?」
「それが可能かどうかは、ロペさんに聞いてみれば分かるかな?」
ヒューニがロペに確認をとってみると、ダンジョンはそもそもそう言うものでは無く、進化する巨大生物なのだという事が判明した。ダンジョン生物説は一部学者達の間では長い間物議を醸してきたが、確認をとろうにも魔法は通らずスキルも通らない、電子機器による鑑定も反応が無かった。それ故に生物説は常に出はするものの結局確信に至る情報が得られず、建造物説が一歩リードしている現状があるのだが、構造が変化するギミックを解明できないことから、此方も又主力説ではあるが確定的では無いと議論を水に掛け、空転する議論は何度も何度も同じ話が繰り返し行われるだけに止まっている。
「ダンジョンがモンスター・・・・・・!」
イミルがぼそりと事実を確かめるように考えていると、ハッと彼女に天恵が舞い降りる。
「分解出来るんじゃ・・・・・・」
「ふふふ、モンスターやのうても分解は出来るんよ。せやけどさっきの事があるさかい、分解するんは止めとこか」
モンスターを分解する事で得られるエネルギーを得られるのだが、そのエネルギーの多さはこの第三世界で使用されたリソース量に比例し、ダンジョンは壁を削っただけでそこそこのエネルギーを得られた事から、この世界のリソースを大きく使用した存在であると言える。そしてリソースを大きく使用しているという事は、それが失われた時に失われたリソースを補充する為に、周辺のリソースを大きく削る可能性が有ると言う事も意味する。
ダンジョンは生物では有るが、生物兵器の可能性も有り後者の場合大半が他世界からの侵略の為に利用される。ダンジョンは膨大なリソースを使用して産まれる事で強力な存在へと進化する可能性が有り、討伐さえされなければ徐々に周りのリソースを吸収し、更に怯懦な存在へと至る。その過程で世界を移動する手段を手に入れる個体が現れ、ダンジョンは世界間を移動する。そしてその移動方法が問題で、ダンジョンは雨宮のようにナノマシン化したり、精霊のように粒子化したりする事が出来る訳でも無い。それとは別の方法で世界を移動する。
ダンジョンは自らの意思で世界の壁を貫通する肉体を造り出し、よりリソースを得られる世界に移動する・・・・・・のでは無いかと言うロペのような上級管理者、多元世界管理委員会によって特殊なリサーチを行った結果判明したのだが・・・・・・、結局は推論以上の事は委員会でも出ず、ダンジョンという存在について詳しく知る事は出来なかった。それを思えば雨宮はダンジョンという存在を唯一解明しうる存在と言えるだろう。・・・・・・エネルギー問題が解決すれば。
眷属達の分解機能は限定的で、マナとΔエナジーに分かれる前の生命エネルギーを確保する事が出来るが、それより先への分解は出来ず雨宮が分解した時よりも遙かにエネルギーロスが多く、それに次いでロペ・エクス・ティオレ・アマリー・ヒューニ・ゼニス・ライの順番で分解効率が良く、それぞれの進化具合によっても結果は大きく変わる。しかしロスが多いとは言え元々Δエナジーは雨宮にしか現状で利用出来ず、マナに至っては魔法使い達も魔力に変換する為には数多くの手順を踏む必要が有り、失敗すれば即死が待っている。そう言った事を考えれば其処まで分解する必要性は全くと言って良い程無い。使える状態のエネルギーが有ればそれで良いのだ。雨宮は其処から自身で更に必要なだけ分解すれば事足りる。
「完全に分解してしまった所で後処理がロペさんに回ってくるから止めろ、と言う事か」
「それに余所の世界に多分繋がっとるやろ?ダンジョンが無くなったらそれこそ穴が空きっぱなしになるさかい、旦那様の力を使う必要が出てきてまうしねぇ」
「お・・・・・・お父さんの力?」
(アラ恥ずかしがってかわええなぁ)
イミルは雨宮とロペの養子としてきちんとした形で籍を入れ、名実共に娘となったのだが中々良い呼び方が思いつかず、思春期に突入したイミルには普通に接する事が少しハールが高く、かといって変な呼び方もしたくない上イミルは雨宮が大好きなので、呼びたい声を掛けたいという欲求も有って実に悩ましい状況なのである。
「旦那様のユニークアビリティ、アレは多分大きく見た世界の中で唯一にして無二、本物の万能能力やよ。もしかしたら他にもそんな力が何処かにころがっとるかもしれへんけど・・・・・・。でも成る可くは使って欲しくは無いんやけどな」
「危険?」
「そらねぇ。無限に使える訳や無いけど、使うエネルギーは天文学的な数字に跳ねる時も有るやろうし、ダンジョンが消えた分のリソースの補填なんかしてみぃ。折角ウチ等がエネルギーを確保したって一瞬で消えてまうかも知れへんし、それこそ足りへんかったら旦那様かて只じゃすまへんやろうしなぁ」
「大きな力はそれだけ反動を生む、と言う事ね」
「エリナ」
周辺を隈無く探していたエリナは、漸く下へと下りる階段を発見したようで、皆はその案内に従い階段が在る場所までやって来た。
「・・・・・・どないしたんや、皆こんなとこで集まって」
下へ下る階段の周りには、銀河旅団のクルー達とそれに付いて漁夫の利を得ようと後を付けてきた冒険者達が、押し問答になっていた。
ーーーーーーーーーー
「だからぁ分からない?こっから先は専門家に任せてさぁ」
「だったら貴方達が行く理由は無いわね」
「お嬢ちゃん頭悪い?俺達はずっと此処に潜って・・・・・・」
「浅層しか潜れない無能が口を開くにはちょっとね・・・・・・」
四人パーティーと思われる小集団のリーダーと思わしき男は、元Sランクの冒険者で有った銀河旅団の新規クルー、ザキ・アンダーソンに詰め寄り難癖を付けているようだ。
「喧嘩売ってんのか!?あぁ・・・・ん?」
恐らくエクス達が到着するまでの間暫くこの状態が続いていたのだろうが、ザキは唐突に興味を失ったようで男をあっさりと分解し、他の三人を押し退けて階段を下っていった。唖然とする三人の冒険者は暫く何が起こったか理解出来ず億へ進んでいくザキとそのパーティを見送り、それから一拍を置き正気を取り戻した。
「なぁ、何が起こったんだ?」「わかんねぇよ!?」「消えた・・・・・・」
ーーーーーーーーーー
「ほなウチ等も行こか」
「うん」
「ハイハイあんた達邪魔邪魔」
先頭を歩くエリナに押し退けられた冒険者達は、突然邪険に遇われた事で瞬間的に沸騰し偶々自分の側を通ったイミルの頭をがしりと掴んだ・・・・・・掴んでしまった。
その行動を見ていたこの場にいる全クルー達の注目が一身に集まり、その全てから殺気を感じた冒険者はイミルの頭の上に右腕だけを残して消滅した。
「殺すであんた」
「殺してから言う・・・・・・もが・・・・・・」
丸太の様に太い腕が頭の上に乗っかったままのイミルは、折角作って貰った自分用の制服を汚したくないが為に頑張ってそれを引っぺがし、偶々残った二人の冒険者の方へと投げてしまう。
「いてっ・・・・・・へ?」
もはや何が起こっているのかすらも理解する事を放棄した冒険者達は、血まみれになった自分の防具を呆然と眺め、その場にへたり込んだ。
「た・助けてくれぇ」「俺達は何もしてないだろ~」
「連帯責任・・・・・・と言いたい所だけどぉ」
クルー達の人垣をかき分けロペが漸く階段へと到着し、イミルに飛び散った血液を分解してへたり込んで後ずさる冒険者達の側へとやって来た。
「イミルたんは如何したい?」
「・・・・・・びっくりしたけど別に・・・・・・其処まではしなくても良いかなって・・・・・・」
イミルは一瞬だけとは言えずっと繋いでいたエクスの手の感触がなくなった事にも気付かず、何が起こったかを理解するのにバラバラになった冒険者の方を見て、うーむと考え残った二人にはそこまでしなくても良いんじゃ無いかと提案するのだが、まさか自分に決定権が移ってくる事も想像していなかった為、具体的な事は旨く言えずふわっとした考えを述べるに止まった。
「ほなほっといて行こか」
「ほら皆もこんなところで止まってないで超行った行った」
エリナが周りのクルー達を促し、次々と二階層へと下りていくクルー達。
「あ・あの俺達はどうすれば・・・・・・」
「あぁ??」
声を掛けられる事も想定していなかったクルーが冒険者から呼び止められ、不快感を露わに下斜め四十五度から冒険者を見上げ、怖い方の上目遣いでじろりと睨む。
「イミルた・・・・・・イミル様に汚い手を付けておいてそのまま見逃してやるって言ってんのよぉ。さっさと消えたらぁ?」
「「は・はひぃ・・・・・・」」
ドスの利いた底冷えするような声で冒険者達を追い払う眷属クルー、元都会コロニーに住んでいた只のヤンキー少女アリーシュ・皆神は切れ長の鋭い目でその背中を睨み付け、長い髪を掻き上げる。
「ヘタレが」
「アリーシュパイセン言葉遣いが・・・・・・」
彼女と同じパーティに編成されているヘルフレムからの仲間で、同じく元只のヤンキー少女クローシュカ・西条がその言葉遣いを指摘し、矯正する。
「アラヤダ・・・・・・ほほほー・・・・・・直んねぇなぁ。アンタもパイセンとか言うなよ・・・・・・」「アレ・・・・・・」
彼女はそろそろ自分も上司達の様に成りたいとそう決心し、教えを請うているのだが中々長年染みついた喋り方は直らず、上手くいかないなぁとイミルの頭にぽんと手を置き、ひらひらと手を振りながら先へと進んでいった。
「おー、かっけー」
「言葉遣いは真似せんでええんよ~」
チームエクスの面々も階段を下りる集団に続き、二階層へと歩みを進める。
ーーーーーーーーーー
残された冒険者・・・・・・
階段を見つけた銀河旅団のクルーの後ろに、付かず離れずの距離で後を付けていた元マッサマンギルド所属のCランク冒険者パーティ『傷だらけのドーラ』は、パーティの盾役と斥候を失い、残った攻撃役二人箱師を抜かしてダンジョンの壁に背を預けていた。
「・・・・・・何なんだ一体・・・・・・あの・・・・・・化けもんみたいな女達は・・・・・・」
「し・知らねぇよ・・・・・・そう言えば、総督府みたいな所にいた奴らと同じ服を着ていたな・・・・・・」
彼らも又雨宮によって一度分解され、エターナルグレー構築の際にその辺に放置されていた人間の一人だったが、ガーディオン達の説明を今一つ飲み込めず、取り敢えず自分達は冒険者だからダンジョンへ行こう。と思考を放棄し、仮設された冒険者ギルドエターナルグレー支部へと再登録を済ませ、所属国家については説明が理解出来なかった為後回しにしてきた。
「俺ちょっと出たわ」
「止めろよきたねーな」
「どうやって帰る?」
「普通に帰るしかねーだろ」
「・・・・・・遺品も残ってねーな」
「何が起こったのかすらわかんねー」
二人は天を仰ぎゴツゴツとした洞窟の天井を見つめ、自分達の浅はかさを呪う。
「死ぬかと思った・・・・・・」
「これからどうするよ・・・・・・ベーンもグックも居なくなってさぁ」
「暫く女は見たくねー」
「受付に居た奴は女ばっかりだったぞ」
「冒険者止めるか」
「どうやって喰ってくんだよ」
「だよなぁ~」
漸く膝に力が入る様になり、立ち上がった二人は記憶に残ったルートを辿り、ダンジョンの入り口を目指す。腐ってもCランク、自分の歩いたルートを憶えるぐらいは問題なく出来るのだった。
「太陽が眩しいぜ・・・・・・」
「ああ、そんな時間だったっけか」
そうそう勤勉とも言え無い彼ら四人は今日に限り、騒動が起こった事もあってかダンジョンに朝早くから突入しようと思い立ち、エターナルグレーの道ばたに転がっていた自分達に疑問も抱かず、ギルドを探していたのだが、彼らの憶えていた町並みは既に無く、見慣れない町並みを手探りで散策し漸く仮設ギルド受付を見つけ、銀河帝国へと所属を変え新たにエターナルグレーギルドへと登録を済ませた。そして銀河旅団のクルー達がダンジョンへと殺到している現場に出くわし、その後を付いていけば漁夫の利を得られると考え、スキルによって気配を消し後を付けたが、あっさりと見つかり焦ったアタッカーのベーンとタンクのグックが自分達を発見した女性に詰め寄り、返り討ちに遭った。と言うのが事の顛末。
「やっぱあいつらは切るべきだったな」
「何時かやらかすとは思ってたんだけどなぁ」
残された魔法使いトイサとシーフのアンドラは元々二人のペアだったのだが、Sクラスダンジョンに挑戦する為にも前衛が必要だと考え、マッサマンで新たなメンバー、ベーンとグックを受け入れ少しずつ連携を深めてきたのだが、この二人はとても真っ当とは言え無い生き方をしていた男達で、各所で問題を起こしてきた経験も有り、周りからの評価はあまり良くなかった。それでも本人達の此迄の経緯を聞き、大きな問題にはならないのでは無いかと少し軽く考えていた二人は、結局最悪の結果を招き入れた二人に悪態をつく事になったのだが、彼女等も又やりすぎなんじゃ無かろうかとも想う。
「まさかいきなりあんな事になるなんて思わないよなぁ」
「あれが最近噂の銀河旅団って奴か」
「銀河旅団?」
「ああ、俺達みたいなシーフの情報網ではもう持ちきりの噂ってやつでさ、ここ最近急激に勢力を伸ばしてきた新興勢力って奴でさ、太陽系各地からスゲー奴らが集まってるってもっぱらの噂なんだぜ」
「マジか・・・・・・」
「しかもよ、あのトキカゼの守護姫まで参加したって話だぜ」
「嘘だろ・・・・・・月の英雄じゃねーか、何が起こってんだよ・・・・・・」
「わかんねー。だがよ、何かとんでもない事が起こりそうじゃねぇか」
「俺等も参加してみっか!銀河旅団」
「イヤイヤ・・・・・・多分無理だ」
「ん?何でだよ」
「俺の知ってる範囲ではなぁ・・・・・・、Aランクパーティーでさえ受かるのはリーダー格の奴だけだったって話だぜ」
「ぅえー?マジかよ」
「でもまぁ、話の流れを考えるに俺達も銀河帝国とやらの所属になったみたいだし、まぁ余計な事さえしなければ敵対はしないだろ」
「はぁ~」
「「生きてるって素晴らしい」」
ーーーーーーーーーーチームエクス
異世界ダンジョンB2
次々と階段を下り地下にそうへと進んでいく銀河旅団の各パーティ達、それぞれ周囲を警戒し警戒範囲の穴を無くす目的で、一定の距離を保ちながら十数パーティが等間隔に進んでいく。入り井口こそ狭かったが階段を下って行くにつれ徐々に幅も広がり、次第に巨大な大階段とも呼べる程の規模にまで大きい階段で在る事が判明し、優に高さにしてビル二十階分位の高さは降ったであろう長い階段の先には、一階層とは全く異なる光景が広がり、先に地表に辿り着いたクルー達はキャンプを設営し、通信機器の設定に入っていた。
「・・・・・・えー?」
「エラい広いとこに出たなぁ・・・・・・」
イミルと手を繋ぎゆっくりと階段から足を滑らせないようにと降っていくエクスは、途中から左右の壁が無くなった事に気付き、イミルを階段の中央へと誘導し、手摺の無い階段から下を覗き込むシスの服を掴む。
「おちるおちる」
「この階段どうやってここにあるのでしょうねー」
支えの無い階段に疑問を呈するシスは、そのまま引き上げられお尻を一発エクスに叩かれ、涙目のまま少し先を降っていく。
地平線の彼方まで見渡せるぐらいには高低差があり、其処はさながら別の世界だが、既に足下に広がる前線基地では、NVDの導入が検討されている。
ーーーーーーーーーーチームロペ
「レイブ持ってこよう。此処はちょっと広すぎる」
「そうだねぇ、しかもナノマシンによるサーチ範囲が狭いから、目の良い機体を選ばないとね」
「でも入り口は小さかったから入れ無いんじゃ無い?」
アーニーは入り口の狭さについて疑問を差し込んでみたが、良く考えれば自分達が近くに居さえすれば、狭い入り口だろうがナノマシンサーバーを通じて呼び出す事が出来るのだったと口にしてから思い出す。
「じゃあ皆それぞれの機体を呼び出して・・・・・・」
「端末は?」
「だいじょび、私が持ってきているから。こんな時の為に銀河きゅんから幾つか必要そうなアイテムを預かってきてるから。任せて」
「ん。じゃあ私達は暫く此処を拠点にして周辺の探索を始めようか」
周辺の探索とは言っても、地形の把握位なら既に階段の上から皆が周囲を見渡し、見える範囲全ての地形はマッピング出来ている。ナノマシンの動きを阻害する事は出来ても、彼女等の能力自体を阻害する事はどうやらこのダンジョンには出来ない様だった
「森が広いけど、この森の少し先に集落らしきものが見えたね・・・・・・えっと東側かな?」
「じゃあこっちが北・・・・・・で良いかな」
エストとアーニーはAR地図に周辺情報を入力し、見て直ぐに分かる様な周辺図をあっと言う間に創り上げていく。
「おねーちゃん達凄いねー」
「私機械は少し苦手です」
「マシンには乗れるのにねぇ」
「それとこれとは少し話が違ってですね・・・・・・」
パメラとキャンディは次々と仕上がっていく周辺図に感嘆し、時折建物の外へ出ては実際の様子と周辺図を見比べて、キャッキャとはしゃいでいる。
「邪魔しますえ」
「おー」
チームロペが思い思いに過ごしていると、エクスとイミルが指揮所としての機能を持った建物へとやって来た。
「エラい立派な前線基地や無いの」
「此処はちょっと広すぎるからねぇ。ナノマシンが探査に使えない以上、時間が掛かるのは仕方ないし、いちいち船に戻る時間が惜しいしねぇ」
「ロペまま、大変そう」
「あはは、そんな事は無いょ。銀河きゅんから預かったものを使っているだけだからねぇ」
ロペは位相空間の中からパックのジュースを取り出し、イミルへと二つ渡す。そうするとイミルはそれを察し、外に居るシスへと持って行った。
「で、此処はなんなん?明らかにダンジョンの中とは思えへんのやけど」
「まぁそれはそうだよねぇ。でも一応ダンジョンの内部で在る事は変わらないょ。但し・・・・・・」
「?」
「ダンジョンに呑み込まれた世界の一部・・・・・・と言えば分かるかなぁ?」
「!?なんやて?」
「此処の特徴は森、そして・・・・・・」
階段の麓に建設されたこの前線基地からでも見える巨大等というレベルでは無い程大きな樹木、誰もがこの空間に入って直ぐに認識し、驚き感嘆した。
「樹木系管理システムユグドラシルナンバーズ」
「ユグドラシルて・・・・・・」
「この管理システム事この世界はダンジョンに呑み込まれたんだろうね。そんでこんな事が起こった事例は一件だけ」
かつてこのユグドラシルシステムには大きな二つの特徴を付加して創り上げられ、委員会から大きな反響を呼んだ。しかしその特徴のせいで数え切れない程多くのダンジョンを無秩序に産み出し、ダンジョンを制御しきれなくなったユグドラシルシステムはダンジョンに呑み込まれ、ロペ達が見上げるユグドラシル零号機ともプロトタイプユグドラシルとも呼ばれるこの管理システムは、次元の狭間の彼方へと消え去った・・・・・・と思われていた。
「原因はともあれ、アレは多分間違いなくユグドラシル零号機。あの薄く緑色に輝くマナの光は、まだ機能を失っていない証拠だから、生きてる」
「・・・・・・!ほなアレを手に入れたら・・・・・・」
「うん、エネルギー問題は解決出来る・・・・・・けど」
「ん?何や問題が?」
「近くに集落があったのを見た?」
「そうやねぇ、確かにあったけど・・・・・・?」
「あの集落は何だと思う?」
「何って、人が住んで・・・・・・?え?」
「幾ら何でも今の今まで入り口も出口も無いこの空間で、普通の人間が住んでいられると思う?」
「せやけどダンジョンの中やし、食べるもんも川の水かて・・・・・・ん?」
「今の私達なら分かるはず」
「・・・・・・Δエナジーが無いんかこの空間」
「そう、この空間はマナだけで出来ている。つまり魔法って事」
「ほんでこんな事が出来る魔法ゆうんは、夢魔法か・・・・・・」
「そうだねぇ、規模から考えてまず間違いないかなぁ」
ロペの頭に有る情報の中には、他にもこう言った事が出来る可能性の有るスキルや魔法が分かるのだが、この供給され続けるマナとユグドラシルにエネルギーを与え続けるダンジョン、そしてダンジョンにエネルギーを与える冒険者や世界。恐らくこの空間は今迄時空の狭間に潜み、異世界ダンジョンの最下層として今迄存在していたのだろう。ダンジョンの心臓部、コアの存在も恐らくあの彼方に見えるユグドラシルの付近に存在しているのだと推測出来る。
「ちゅー事は何か?いきなり最深階層までぶっ飛んだと?」
「あの階段の長さはそれしか考えられないかなぁ」
「他の階層は?」
「多分違う階段から行けるんじゃ無いかな?」
「ウチ等は見つけてへんから何とも言えんなぁ」
「こっちも見てないょ?有るかどうかはまだ分からないし」
この階層・・・・・・世界はエクス達上位眷属が感じた通り、Δエナジーが存在せずマナのみが存在するのだが、世界のバランスという観点から言えばあり得ないと言わざるを得ず、世界が現出する為に必要な思いの力と、世界を世界たらしめるΔエナジーどちらが書けても世界は産まれない。そう考えれば今の彼女達に有る情報の中には。夢魔法を体験した事もあって、それが表に出てくる事は必然だった。
幻の世界にしてはハッキリとしている上、実際に触れもする不思議な空間で在る事が混乱を招く・・・・・・事も無く、銀河旅団のクルー達は各々周辺を探索し、主力パーティーは集落として認識されている場所を探索へと向かう事になった。
ーーーーーーーーーーチームエクス
レレイマナラーニャ・マーズ・林原 八十五歳 エルフ種? 銀河旅団零番艦ラピス第四機動部隊
火星エルフ氏族林原の産まれ。元宇宙海賊だがヘルフレムの囚人でもあった。過去海賊同士の大きな戦争があり、白兵戦の末に右目を失う。その戦争で敗北した彼女の海賊団は多くの死傷者を出し、その中でも巨額の賞金をかけられていた者はヘルフレムへと収監された。彼女もその一人である。
彼女は数年間に亘りヘルフレムの中で生活をしていたが、右目の無い状態ではなかなか上手くいかず、苦しい毎日を送っていたが、アンジーの派閥に引き取られ一時の安寧を得る。
銀河旅団再編時、一度七番艦に送られ右目の再生手術を受け、何故か目のようで違う何かを雨宮によって植え付けられる。それは普通に見える目であり、兵器で有り、圧縮したエーテルサーキットである。その名を『万死の目』と言う。カテゴリー的にはアーティファクトに分けられるそれを、自らの目として使用可能なまでに改良された彼女はもはやエルフとは程遠い何か別の存在へと昇華しつつある。
好きな食べ物はリンゴ。無類のリンゴ好きで初めて支給された給料で四分の一コンテナ(一コンテナ=四トン)いっぱいのリンゴを購入。彼女の腰にはリンゴを三つ常時携帯可能なリンゴホルダーが装着されており、常にリンゴを囓っている。
またVRゲーム、スペースアーク2における生産者ギルド『リンゴの誓い』のリーダーであり、VR空間でリンゴの味を再現する為に専用のMODを開発し、運営から厳重注意を受けたことがある。しかしそのMODは後に運営に買い取られ、とある大型アップデートの際味覚再現アップデートとしてスペースアーク2の拡張性を更に広げる一役をになった。
プレイヤーネームはリンゴレディ。
(2)ウルテマエルフ化 銀河帝国戦技教導隊所属
アーティファクト『万死の目』を完全に使いこなす事が出来るようになった。
進化した事に寄り全体的に戦闘能力が向上、雨宮の生み出したアーティファクトを使いこなし、白兵戦闘では無類の強さを誇る眷属クルーの中での上位勢へと食い込む事に。
徒手空拳による戦闘スタイルで、エルフの中でも特に特殊な闘いを好み、第三世界にて伝説のエルフと呼ばれている『フェイオルン』と言うエルフから学んだエーテルブリッツと呼ばれる特殊な流派を操り、元々素手でSWと渡り合う事も出来るのだが、進化した事に寄り並のSWが相手なら視界に収めるだけで、その存在を消滅させる事も出来るようになった。但し万死の目の力はエネルギーの消耗が激しく上位の力は使用を制限されている。
対マシン戦闘のエキスパートとして、エーテルブリッツの普及に余念が無く、ロペやティオレ等最上位眷属達にもその力を認められ、戦技教導隊の一員として銀河旅団各部隊を巡り、その教えを広げている。
シス・セブン 六ヶ月 人工人類Δ種 銀河旅団七番艦ジェド試験体
雨宮によって作り出された特殊な人工人類の女性。
本来人工人類が生み出される時は、幼年期、青年期、それ以降と大体三段階に分けて肉体を作成し、その肉体を乗り換えて精神の成長を促すのだが、彼女に対してはそのような段階を経ず青年期の肉体を始めから与え、七番艦にて教育を施した。
しかし案の定精神バランスはかなり悪いが、僅か半年の子供扱いを経て、親離れを済ませた。
精神状態が正常な時は~ボーイ、~ガール、~レディ、~ガイ、と男女と目上っぽいなどの特徴を呼び分けて居るが、雨宮から貰ったプレゼントなどをとても大切に扱っており、それらを自分の意図に反して傷つけた時は精神バランスが崩れ無理矢理押し込めた幼年期の精神状態に一時的にロールバックしてしまう。
彼女には専用のバトルドレス『メギドウェア』と完全に同調するように調整が施されており装着感が全く無い状態、同調率百パーセントを地で弾き出す結果を出している。
趣味はVRゲーム。好きな食べ物はおにぎり。偶々雨宮が幼少期の頃に手作りで与えたおにぎりに特別な思いを抱いた事から、おにぎりに対して大きな関心を持つようになった。自らおにぎりを握り、具の研究をし米粒の成分に至るまで研究をしている姿を見て、雨宮はちょっとやりすぎじゃなかろうかと考えたが、本人はとても楽しそうにしている事から自由にやらせている。
(2) シス・雨宮 銀河帝国皇女兼近衛見習い
雨宮とロペの養女として籍を入れ形だけ皇女という立場となり、いずれ来る時の為に教導隊の教師群達から様々な訓練を受ける事になる。
ヴァルハランテ消滅前の戦闘で大きく精神に揺らぎを発し、一時的に前後不覚に陥ったがゆっくり周りの眷属達のケアにより回復し精神の安定に成功、不安定状態の時に発していた口調に絶望し自らが中二病患者であった事を知る。
月圏に入り戦闘が本格化するにつれ、指揮官としての才能を開花させ、マッサマン地下掃討作戦の指揮を執り多くの民間人を救出、雨宮の負担を少しでも軽減出来たのではと自分で自分を褒め称えた。
同じ立場のイミルを妹のように大切に思っているが、生まれた育った時間はイミルの方が長く、お姉さん風を吹かせようにも社会経験豊富なイミルに機先を制され、逆に教えられる立場になる事方が多い。
精神的には安定していると言えるが、今は間だ大人とは言い難く、身体だけ大人の子供として眷属達からは優しい目で見守られている。
イミル・ウル・エイ・ジャジャ・コンフォ・イナ 十一歳 エルフィン種 門を開く者所属
名の由来は、イミルは愛され扉を開く。古代フェアリー語を用いた名付けを行う事は非常に危険で有ると言われている。
彼女は月共和国の辺境、フェアリー種が主に住むコロニー、『ケチャロンド』の生まれで、名付けの儀式と呼ばれるフェアリー種特有の守護霊降ろしの儀式を正しく行い、この世界に生まれ落ちた。この儀式を行うことで守護霊からファーストネーム以降の長い名前を授かることが出来る。しかもこの名は、名付けられた本人の魂に新たな力をもたらし、この儀式を正しく経て生まれたフェアリー系種族は、他種族を圧倒する力を持つハイフェアリーとして大成することが出来る、と言われている。
彼女が産まれて間もない頃は、月周辺の宙域は非常に荒れており、多くの海賊や軍属崩れの犯罪者達が跋扈しており、人々の恐怖の的となっていた。
そして彼女の産まれたコロニーにも海賊が押し入り、ハイフェアリーの一部を残して奴隷商や研究施設などへと売り渡され、彼女は生き延びたハイフェアリーによって月共和国の首都『工業都市マッサマン』の孤児院へと預けられる。
感情の起伏が非常に乏しく、孤児院の担当医もコミュニケーションに難あり、と言うことを言っていたが、それ以外の分野は全てにおいて非常に優秀であり、彼女は孤児院にいる間に、孤児院での最高ランクDランクへと到達、チャイルドエリートとして冒険者ギルドへと正式に加入し、マッサマンにて一人暮らしを始める。
一人暮らしを始めて間もない頃、アントンと出会いパーティー『門を開く者』を結成、中級ダンジョンに挑むレベルの力を手に入れたが、アントンの子供が中等部に上がるのを機にリーダーであるアントンは引退を表明、パーティも解散が決まった。
最後のクエストで一山当て、解散するという話をした後、アントンは彼女を養子にするはずだったが、解散した後で良いと伝えた事で、結局その話は無くなってしまった。
趣味は肩車(される側)好きな食べ物はたこ焼き。
雨宮に肩車をされた事で開眼、全てを忘れて楽しんでいた。
過去に冒険者ギルド主催のお祭りで、一緒にお祭りを回ってくれた女性冒険者からおごって貰った事が切っ掛けと成り、たこ焼きが大好きになる。(EP76)
(2)イミル・雨宮 銀河帝国皇女
雨宮とロペの子供として養女になり籍を入れた。
結果として銀河帝国の姫、皇女という立場になったが、国自体が殆ど機能していない為その立場も書き割りのような物となっているのだが、周りの眷属やクルー達からはマスコットのように扱われ、やれ可愛いだのやれ着せ替えようだの持て囃されている。
同じ立場のシスや、初代マスコットの風魔トトと仲が良く、雨宮の役に立とうとトトの教えを受け風魔忍術を身に付けた。元々斥候としてトラップの感知や警戒、様々な経験を積んでいたが、時間や経験の蓄積という点で他のクルーに水を空けられている現状を打破しようと、時折無茶な訓練をしている所を眷属クルー達に止められている。
元来ポジティブな思考を持ち合わせている反面、近親者を失う事に異常な程恐怖を抱いており、生まれ故郷を失った過去の悪夢を度々見ては雨宮の私室へと忍び込み、布団の中に潜り込んでいる。そう言ったトラウマが解消されていない現状を雨宮達はよく思っていないのだが、彼女に関してはナノマシンによる強制進化や人体変換等を行わない事を決定しており、何時でも余所へやれるように深く関わらせないようにしているのだが、彼女の自己防衛本能は銀河旅団から離れる事を良しとせず、常に誰かの側に居る事で心の安寧を得ている。
又トラウマの影響からか銀河旅団のクルー達以外の人間を見ると海賊に見えてしまうらしく、無意識に武器を抜こうとしてしまうPTSDの様な症状が見られる。しかしこの症状は近しい眷属、ロペやティオレ、トト等が側に居る間は発症しない為、精神生命体若しくはエーテルサーキットに何らかの異常を来している可能性があり、医療部隊による精密検査が必要とされているが、彼女は病院が苦手らしく、トトが医療セクターへと連れて行こうとすると壁に張り付いて離れなくなる。
最近のお気に入りはエクスに教えて貰ったピアノ。どうやら絶対音感があるらしく、鍵盤を叩き音を身体にしみこませている所をよく見かけられている。
エクシリス・イロリナート 34歳 超人種 元テロリスト パイロット
元超過激派テロリスト集団、『世界の終焉』のトップ。様々な事件に関わっており自ら手にかけた人数は万を超える。死が世界を平和にするという教えを自らの手によって布教するカルト教団としても知られていたが、雨宮収監の数日前、冥王星宙域ににて襲撃を起こそうとしたところ、偶然彼方から旧式戦艦の外装と思われる金属の塊が飛来、乗っていた戦艦が大破、意識を失っている内にヘルフレムに収監された。
生粋の殺戮者だが努力を怠る事のない勤勉な性格で、収監されていた時間こそ短かったものの、自らの足を使いヘルフレムに収監されているすべての人間を洗い出し、生贄を探していたがあまりにも謎の人物が多かった為断念せざるを得なかった。
ヘルフレム脱出後は、雨宮と自分の差に愕然とし、何とか一目自分を見てもらいたいとトイレ戦争を精神力で克服し、近づこうとするも叶わずキャッシュマン邸目前で倒れ、ラビスに入るまでその視界に入ることはかなわなかった。だが雨宮との差に驚くのも束の間、ロペに詰め寄り雨宮の近くのポストを要求するもあっさり叩きのめされ、ワーカーが動かせるからとパイロットに配属になった。
かなり危険な思想の持ち主だが、何故か徐々に普通の女子の様に柔らかい彼女に変わって行く。彼女を見ていたタッグを組むことになったヒューニは「ナノマシン恐るべし!」と言っていたとか。
火星首都出身で、サカイ氏族と呼ばれる特殊な人種の一人で独特なしゃべり方をするが、雨宮はその喋り方が大いにツボに入ったようで、「はんなりや!はんなりさんや!仲間がおった!西の同士や!」と燥いでいたという。
雨宮教信者にしてテンプルアサシンの称号を得たもの。雨宮の為にありとあらゆる障害を排除することを固く誓う。
(2) ハイパーヒューマノイド化 銀河旅団近衛第二部隊隊長
眷属化した当初こそ殺人衝動に駆られ戦闘の際にその衝動を発散していたものの、徐々にその衝動も消え、軍やテロリストとして活動していた事で味わう事の出来なかった様々な物事を経験する為に、ヒューニを伴い様々なアクティビティをラピスにて研究、其処を通じて第三世界全域に目を向けるようになる。
マーメイドコロニーに寄港した際、サーフィンをしたいが為にラピスを飛び出し、ヒューニを困らせていたが、結局二人でビーチを堪能し若干日焼けをして艦に戻った。
銀河旅団発足後は近衛として雨宮の秘書を兼務し、銀河旅団全機動部隊指揮官を統括する機動部隊司令官をついでに執り行っている。
雨宮教に所属する事に特に意味が無いと考え、より雨宮に近付く事の出来る親衛隊に鞍替え、一時七番艦へと出向する。同じ時期に七番艦へと出向し肉体を再構築したヒューニ、アマリー、ティオレと仲が良くなり、雨宮の側に居ない時でもこの四人は大体一緒に居る。
(3)ウルティノイド化 銀河帝国皇帝秘書兼機動部隊司令官
ナノマシンとの親和性を更に高め、極僅かにΔエナジーを認識する事が出来るようになったハイパーヒューマノイドの上位種として進化したエクス。
エクスの身体能力は更に向上し、スキル、魔法等各種特殊能力も軒並み向上している。人類の限界を遙かに超越した超越種の一つとして進化したは良いものの、特にコレといって戦闘がある訳でも無く力を持て余しているが、本人は特に気にした様子も無く、肉体の進化より精神生命体の進化が近付きつつある予兆を感じ取っていて、より雨宮に近付くチャンスが訪れる瞬間を心待ちにしている。
事戦闘に置いては現在の雨宮と同等のナノマシンコントロール技術を持ち、自らを完全にナノマシン化し電脳世界へとダイブする事も出来るようになった。
ヒューニ・ティノティノ 38歳 機人種(特異個体) 元大学助教授 パイロット
元は月に存在する共和国防衛大学の助教授として、ダンジョン魔道学の教鞭をとっていた。機人種としては特殊な魔法が得意な特異個体として産まれたが、成人するまで魔法に触れる機会が全くなく自身の得意とする実地調査や研究などを基礎として生きてきた。しかし魔道についての研究は机上の理論のみでは行き詰ってしまった為、護衛されるだけではなく自らも冒険者としてダンジョンに挑んでみようとした結果、うっかり木星ダンジョン通称『フラワーガーデン』に準備もなしで踏み込んでしまい、組んでいた初心者パーティは彼女を残して全滅、そのパーティの遺族から責任をとれと詰め寄られヘルフレムに強制的に叩き込まれる事になる。冒険者としては全くの濡れ衣だが、家族を失う者たちの気持ちもわからなくないと自らそれを了承、ヘルフレムへと収監されることになった。
収監後は荒れた状態のヘルフレムで生き残る為に様々な荒事に手を出し、以前のおとなしい助教授のイメージが180度反転、無口で鋭い目つきのスナイパーの様な殺気溢れる人物となるまでに成長した。
ヘルフレム脱出後はいの一番に雨宮に触れ、狙った獲物は逃さない闘争本能を如何無く発揮、その知識と教職者としての才能を雨宮に見いだされ、学の無い者達の教導を行う傍ら、パイロットとしてエクスが暴走しないように押さえつける役割を与えられる。
趣味は実地調査、好きな食べ物はたこ焼き。月のダンジョンに現れるとされているバーストオクトパスを使うたこ焼きが特に好物で、教鞭をとっていた時は週に10回は食べていたという。
(2)ハイパーヒューマノイド化 銀河旅団近衛二番隊副隊長
銀河旅団発足後、エクスと共に雨宮教を抜け親衛隊に所属する。
相変わらずエクスのお目付役として監視を続けていたが、徐々に危険な思想が消えていくエクスを温かい目で見守っていた彼女は、雨宮への報告の際にもう特に問題が無いと報告、監視の任を解かれるが、友人としての付き合いをやめるつもりが無く、そのまま同じ部隊へと配属される。
普段あまり感情を表に出さず奥手な彼女だが、感情表現豊かなエクスや、仲良くなったアマリー、ティオレ達と共に様々な経験を積む事で人間的に少し成長したのか、徐々に自己主張をするように変わっていった。
しかし相変わらずエクスの行動に引っ張られる形で様々な物事に巻き込まれ、事後処理をしていく様は周囲の皆も周知しており、その件で同情を引き多くのクルー達から声をかけられる。納得こそ出来ないものの、多くの友人が出来た事は本人至上最高の経験である事は間違いないらしく、以前に比べて格段に表情が明るくなったと雨宮から褒められ、若き日の自信を取り戻しつつある。
(3)ウルティマキナ化 銀河帝国皇帝秘書兼防衛部隊司令官
ハイパーヒューマノイドの上位種として新しく再構成され、進化した超長距離戦闘型の個体。
眷属と成る前は裸眼の視力は一を切っていたが、今は逆で視力が高くなりすぎて眼鏡が手放せなくなっている。その裸眼は地平線の向こう側を視認し、遠くのコロニーを寸分の狂い無く狙撃する。しかしこの目の良さは生活に支障を来す為、ナノマシンに視力の調整を任意に行えるようなプログラムを開発部へと発注している。
肉体の能力が全体的に底上げされており、朧気ながらΔエナジーを認識出来るように進化した為、目下Δエナジーを攻撃に転用する訓練を続けている。
雨宮の秘書をする傍ら、マギアシリーズ及び神域の防衛に関する全ての権限を雨宮から委譲され、神域の防衛について悩んでいるとか。
エリナ・甲賀 ウルテマヒューマノイド(元超人種) 七番艦マギア・ジェドイレーサーユニットNo2
アトレーティオ4襲撃の際にどさくさに紛れて艦内へと侵入しようとしたが失敗、ラピスに設置されている光学攻性防壁に寄って意識を失って居る間に捕縛され、雨宮によって再構成される。
地球がまだ生きていた頃から続く古流忍術の宗家に産まれ、免許皆伝の実力を持つ忍びとして裏社会を暗躍し情報屋として生計を立ててきたが、その情報を仕入れる為にラピスへと潜入する事を試みたが前述の通り失敗、逆に知っている情報を全て吐き出す事になった。
ハイパーヒューマノイドの上位種であるウルテマヒューマノイドとしての実験の為に、再構成され存在情報の全てを雨宮に寄って保存される。その後自由を失う事になる恐怖に負け、雨宮を攻撃しようとするもござるに寄って阻止され、眷属クルーによって再教育される。
ロペ曰く「ちゃんと餌を与えていればなつく。」
再教育が功を奏したのか以降雨宮に心酔する程の態度に切り替わる。
彼女自身は三食昼寝付きの職場で働く事に対して憧れを抱いていたようだが、現実は程遠くフリーランスの情報屋は実力と収入が釣り合う反面、時間が無く、目の回るような毎日に辟易していた。そんな日常を過ごす間に自由に対する人一倍の憧れを抱くようになり、人生の目標が定まらなくなっていた。そんな折りに銀河旅団によって捕らえられ、物の見方が百八十度変わるような体験をすることによって、考え方の根本が変化、雨宮について行くと面白そう。そんな思いから元々人が好きな彼女は、雨宮に事ある毎に雨宮にちょっかいを出してははたき倒され、次第に心が近くなっていくことに気が付いた。
趣味はネットサーフィン、好きな食べ物は極厚ステーキ。
情報収集の合間に偶然発見した火星帝国のステーキ専門店にて、自らの食に関わる大発見をしてしまった彼女は、その店に通いたいが為に月から火星へと移住し、家を飛び出した。肉汁の滴る厚さ八センチもの天然牛の極厚ステーキ、一般庶民では年に一回口に入れる為に半年は絶食しなければならない程の超高価な贅沢品。
しかし彼女はその熱意と実力を持って月に一度は店に足を運び、その幸せを堪能していた。(58
(2)銀河帝国諜報部統括
ロペ直轄の諜報部のトップとして、雨宮夫婦からの信任を得た。
元々人の領域を逸脱した身体能力を保有していた彼女だったのだが、進化した後更にパワーアップし生身でSWと渡り合える程の力を手に入れた・・・・・・のだが、忍びに力は必要ないと特に気にした様子は無いが、雨宮の様に電脳世界にダイヴ出来るように成った事は素直に喜んでいた。彼女は手刀で鋼を切り蹴りで小惑星を割り瞳で心を折る、雨宮の影の一人として身辺警護を行う傍ら、太陽系各地へと散った諜報員の集めた情報を集約し、ロペを経由し雨宮へと情報を伝える等ナノマシンとの親和性も高く上位眷属として辣腕を振るっている。
因みに何故雨宮に直接情報を伝えないかと言えば、雨宮に余計な情報を伝える事によって雨宮の探究心を悪戯に刺激し、意識を散らして集中力を奪わないようにと言う配慮と共に、多くの情報を与えすぎると雨宮はそれを完全に理解しようとし、ナノマシンサーバーのリソースを大きく削ってまでそれを実行に移そうとする為、サーバーが雨宮のマルチタスクによる負荷に耐えられなくなる事を危惧したのだが、エクスやアミィ等ナノマシンとの親和性の高い眷属達はそもそもナノマシンをあり得ない程大量に常時運用しているのに、その程度で処理が遅くなったりリンクが途切れたりするような事は無いと確信が有るようだ。この辺りの危惧はエリナやロペ、雪之丞等突然無茶をする雨宮を目の前で見た事がある者達からの嘆願により起こる事であって、ある程度楽観視している眷属からは対した事は無いと思われているのだが、雨宮の興味が完全に散ってしまうと目的が定まらなくなり、艦隊が進まなくなる事がある為それを危惧している。
彼女は人としての形を捨てつつ人間としてのアイデンティティーを保ち続ける事が出来る強靱な精神の持ち主で、いざ必要とあらば雨宮の体の中に潜伏する事もいとわない・・・・・・と言うか、強烈な一体感を得る為にその提案をした事があったのだが、雨宮からは緩やかに拒否され内部への潜伏は断念したが、アクセサリーや洋服などに化けて雨宮と常に一緒に居る事は許された。
パーティー エイトムーン
ベーン 三十二歳 人種 エターナルグレーギルド所属
元マッサマンギルド所属のCランク冒険者パーティ。
アタッカーとしては・・・・・・二流。一般的なロングソード使いだが剣一本での闘いに違和感を憶えている。それもその筈。冒険者として登録する際に適性試験を行うのだが、彼の適性は僧侶。生まれた時から回復魔法ウォーターヒールを身に付けていた先天性の天才ヒーラーだったのだが、成長していく中で男尊女卑の考えが身に付いた上、ヒーラーに対する偏見が彼を剣士へと導いたのだが、剣術よりも圧倒的に回復魔法が得意な事をコンプレックスに思っており、自ら回復魔法を封印結果としてランクも上がらず、ずっと違和感と戦っていた為身体に変な癖が染みつき、左利きなのに右でしか剣を使えないなど肉体的にかなり不調を来していた。
不用意に虫の居所が悪い銀河旅団クルーに挑発を仕掛け、憂さ晴らしに死亡。
グック 三十五歳歳 人種 エターナルグレーギルド所属
パーティの盾役を担う大柄な男。
マッサマンギルドの受付嬢の一人と婚約していた経緯があり、今回のダンジョン探索で遺品か何かを見つけられればと思い、ベーンを焚き付けダンジョンへと探索に向かう事に。常に苛ついている様な仕草があり、周りから煙たがられている事も多いが、本人がせっかちなだけで特に感情的では無い。
アンドラ 二十八歳 人種 エターナルグレーギルド所属
銀河旅団の眷属達に喧嘩を売る仲間を止められず、その場の流れで見逃された一般冒険者。
エイトムーンのパーティを立ち上げ、相棒のトイサと共に月圏最難関ダンジョンで在る異世界ダンジョンの浅層を中心に細々と稼ぎを挙げてきたCランク冒険者、ポジションはアタッカー、ショートソードとバックラーを器用に使いタンクとしての役割も果たす、デュアルと呼ばれる二つのポジションを兼任する将来有望な青年。
エイトムーン立ち上げ時は八人の幼なじみと共にパーティを組んでいたのだが、ダンジョン攻略が進むと共に仲間は死に、現在では二人になってしまった。
マッサマン再生の直前に急ごしらえのパーティとして、野良の冒険者であるグックとベーンの二人を加えダンジョンの攻略を進めていたのだが、二人の素行が悪くパーティの解消を考えていた矢先、今回の事件が起こりこれ幸いとダンジョンの攻略へと乗り出したが、今迄挑戦していた異世界ダンジョンとは全く異なる構造に驚き、引き返す事を提案するも、ベーンとグックは受け入れず結局銀河旅団の後を付けていくだけで階段まで辿り着いてしまい、罪悪感に苛まれている所で二人は銀河旅団によって分解され跡形も残らず消えてしまった。銀河旅団のクルー達による殺気を一身に浴び、背筋の凍る思いをした事で冒険者として一皮むけたようで、エイトムーンを新たに再生しようと仮設ギルドへと向かい新しく今度はちゃんとした仲間を探すべく、頭を悩ませている。
トイサ 二十八歳 人種 エターナルグレーギルド所属
エイトムーン立ち上げ当初から所属し、相棒のアンドラと共に故郷を出た魔法使い。
若手の魔法使いとしては才能に溢れ、将来を嘱望されている優秀な冒険者、しかしその優秀さ故仲間を失ってしまう度に自責の念に苛まれ、同じパーティの中に居た恋人を失った事で、一時は冒険者を引退しようとしていたのだが、アンドラは人を見る目がなく、彼の知らない間に妙な男を二人も連れてきてパーティへと入れてしまった事で、その危うさをサポートする人間が必要だと思い、結局冒険者を続けていく事に決めたのだが、マッサマン消滅に伴い偶々巨大エアコンの在る場所に家のあった彼は、資産を全て失い、稼ぎを少しでも得る為に渋々今回の探索を受け入れる事になった。




