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EP82 混ざり者

マインドがアップしなくてですね・・・・・・

斗捌(とべつ)さん斗捌(とべつ)さんブリッジまで出頭してください・・・・・・繰り返し・・・・・・


 トトとロペ、イミルの三人は朝食を済ませ、ブリッジへと戻ってきた。その後ろにはロペの旧友で在るレーム、ルミコ、ゼルミィ、学生時代からの後輩キュキュ、ロペがこの世界で築いてきたコミュニティの皆が、ゾロゾロとブリッジに入り適当な所へと腰を落ち着ける。


 そして其処へ斗捌和真(とべつかずま)が、ゆっくりと入室してきた。


 「珍しいな私をブリッジに呼ぶなんて・・・・・・あれ?銀ちゃんじゃ無いのか」


 「そゆこと、色々聞きたい事があってね」


 「分かった、何でも聞いてくれ」


 斗捌(とべつ)は入り口付近のサブシートを壁から引き出し、腰を掛ける。女性達がブリッジの到る所に居る為に落ち着ける場所が其処しか無かったからだ。


 「試験用第二開拓世界で君が死ぬ前に何が有ったか聞かせて欲しいんだけど、君が死んだのは何年だったかな?」


 斗捌(とべつ)は髭の伸びた顎に手をやり、軽く首を傾げながら記憶を探る。


 「確か・・・・・・西暦二千百十年・・・・・・だったはずだ。銀ちゃんが死んだのが二千百年丁度だったから、それから十年後だな」


 話の続きをどのようにして切り出そうかと考えているロペだったが、入り口が再び開き、切嗣、新庄、そして小型化したテツ、そして雨宮が入ってくる。

雨宮は艦長席へと向かうが、其処には既にトトが何故か座っており、雨宮はマスコットシート(艦長席の直ぐ横)を床から引き出し座らせる。新庄は自分のオペレーター席へと着席し、切嗣は入り口の真上、シールドコントロール用のシートへと座る。


 「ありゃ、皆来たんだね」


 「大事な話の様な気がしてね」


 雨宮は呼んでくれたら良かったのにと、隣に座るととの頭を撫で耳をコシコシ摘まむ様に撫でる。


 ロペは話のとっかかりを雨宮に説明し、斗捌(とべつ)へと続きを促した。


 「ふーん、とべっちゃんはそこそこ長生きしていたんだな」


 「長生きと言われるとそんな事は無いと思うが、まぁ、前世の私にしては長く生きた方だと思うけど」


 前世の斗捌(とべつ)は、世界最悪と言われる程のマッドサイエンティストであり、大量虐殺者としても世界中に名を轟かせていた。


 「・・・・・・こんな事を言っても信じて貰えないかも知れないが、俺は異世界からやって来る敵に備えて、戦力を造ろうとしていたんだ」


 (つくる・・・・・・のニュアンスが何だか違う気がするなぁ)


 「確かにあの時の私は正常な判断が出来なかったかも知れないが、銀ちゃんが死んだ後のあのクレーターから、未知の生物がこの世界にやって来たんだ。何故か周りは皆それに気が付かなくて、周りの人間が喰われていくのにも全く気が付かなくて、それで・・・・・・」


 斗捌(とべつ)は今言っても仕方が無いかと、頭を振り、話の方向を修正する。


 「俺が死んだ後、どうなっていたんだ?」


 「そうだな、其処から説明した方が良いな」


 雨宮が死んだ西暦二千百年、世界は節目を迎え沸き立っていた。そんな折りに居酒屋ヨモツヒラサカを中心とする大爆発が世界を震撼させた。

しかし、それを引き起こした原因とされていたトラック運転手は、何故か生存しており、逮捕拘禁された後獄中で自殺した。

しかし斗捌(とべつ)の見解は全く違う物で、雨宮を除く現場に居た人間は全員只巻き込まれただけだと断言し、雨宮は頭を掻く。


 「俺の転生に・・・・・・か?」


 「違う違う、爆発の方だよ。銀ちゃんはトラックで死んだんだろ?トラックが爆発したのは恐らく別件だ、人一人殺すのにあんな爆発は必要無い。過剰すぎる」


 「へぇ、当時の俺はそんな事気にもしてなかったから分からなかったけど、相当か?」


 切嗣の声が上から聞こえ、斗捌(とべつ)は上を向き再び思い出す。


 「そうだな、あの一帯、冥木町(めいきちょう)周辺は半径五キロ前後クレーターになっていた」


 「「「「「五キロ!?」」」」」


 「ああ、町一つ丸ごと消滅した」


 「そう言えば・・・・・・」


 冥木町はその爆発が原因で約五十万人の犠牲者が出た。夜の歓楽街を中心に起こった爆発は町一つを丸ごと消し飛ばし、戦後最大のテロとして世界は報道に沸いていたという。


 ロペは雨宮の離れた世界が異世界人による侵略を受け、占領されたと雨宮に伝えていた事を思い出し、雨宮の様子を見るが、流石に死んだ後の事など知るよしも無い雨宮は、斗捌(とべつ)の言葉を待っている。


 「銀ちゃんが死んでからあの世界は、表向き何事も無かった様に進んでいたが、徐々に異世界人と現地人が入れ替わり、現地人は奴隷の様な扱いを受け家畜同然の生き方を強いられていた」


 「俺もそうなる前に死んでいたから、詳しい事は分からんがクレーターが出来た事は知っていた。行方不明者が多数いると言う事ぐらいか・・・・・・俺が知っているのは」


 新庄は雨宮の死んだ次の年に、女に刺され死んだ。ロペも其処までは把握しているのだが、その後の事は調べられず、辛うじてテツと斗捌(とべつ)の魂を確保しその後の事は分からずじまい、調査もしていないのだと言う。


 「切嗣はどっかの女と相打ちとか言ってたっけ」


 「その筈だけどなー。既に日付の感覚なんか無くなっていたから、何時の事だか分からないが」


 切嗣は雨宮達が居なくなった後、ホテルの一室に閉じ込められ、殺害された、だがその詳細は誰にも分からない。


 「話の続きだが、最後に切嗣が死んだニュースを見たが、犯人は不明だったな。切嗣もズタズタに引き裂かれていたらしいし、怨恨の線が濃厚とか言っていた気がする」


 「恨まれてるなー」


 「フラグかー」


 切嗣自身も雨宮も、この第三世界に切嗣を殺した女がいる様な気がしている。どのような出会いがあるのかは分からないが、感覚的に響く物があるのだという。


 「ふぅ、でだ」


 やっと本題かと周りの女達は今迄流して聞いていた耳を戻す。


 「俺は大学の研究室を改造して、人間の構造を調べていた」


 「「「「「「「「「「「「何で??」」」」」」」」」」」」


 突如想像の斜め下の話が始まり全員の疑問が吐き出された。


 「分からん、あの時はそれが最善だと思っていたんだ」


 斗捌(とべつ)の研究は会話では大分端折られていて、改めて詳しく確認した所、これまたよく判らない実験を繰り返し行っていて、その内容が異世界人と現世界人の肉体を融合させる、と言う物で、進行してきた世界の人間は、第三世界で言う獣人種らしくその肉体の一部を切り取り現世界人に移植する事で、異世界人と同等の戦闘能力を手に入れる事が出来たのだという。


 「この世界の人間には全員に存在している体内器官を移植する事で、第二開拓世界でも魔法が使える肉体になるんだが、それを実戦に移す前に奴らに気付かれてしまってね、研究を放棄するしか無かったんだ・・・・・・だがね、あの世界には種を巻き終えたんだよ。きっと今頃向こうの世界は新しい人類が闘いを選んでいるはず」


 「ふむ・・・・・・獣人種か」


 雨宮はトトの頭を撫でると、いそいそと膝の上に登ってくるイミルの頭も撫で、獣人種の能力について考える。


 この世界での獣人種は一昔前迄かなりヒエラルキーが低く、人類として認識された時期がかなり遅かった。しかしかなり人数が多く、現在では人種と対等に渡り合える程の数を数える大多数の一角となっている。


 「侵攻してきた世界の獣人達は、魔核と呼ばれる臓器を上手く使えない奴らが多くて、それを引っこ抜いてそこら辺に転がして置いたのが悪かったか」


 「お前それ舐めてんだろ」


 斗捌(とべつ)は事態の発覚の理由が分からないと、あっさり頭の悪い行動を暴露し、周りから総ツッコミされていた。


 「とまぁ、十年間は研究を続けていたんだが、あの後世界に起こった事と言えば、世界の殆どの人間が異世界人と入れ替わったと言う事ぐらいか」


 「入れ替わったのか?」


 「そうだ、何故入れ替わろうとしたのかは不明だが、奴らはあの世界の科学を使う事が出来ないのに、入れ替わった」


 彼らには学習能力が足りないとか、応用力が無いとか、そもそも基礎教養・基礎知識が足りないだとか、ボロクソに扱き下ろしていたのもその後の話を聞けば何となく分かると周りの皆は頷き、雨宮は前世の事を少し思い出した。


 「入れ替わった後はどうなったんだ?其処まで駄目な奴らだと社会が成り立たないだろう?」


 「勿論、奴らは機械を扱えなかった。車の運転も出来ないし、電車も動かせない、自販機も使えないし、医療機器も使えない」


 「何が出来るのそれ」


 「山や森に居た動物は根こそぎ狩り尽くし、食料生産工場は再起不能な迄に破壊し、釣船すら扱えなかった。そんな奴らが辿る未来なんか知れている」


 その頃には私は居なかったが、と斗捌(とべつ)は額に皺を寄せてため息をつく。


 「幾ら何でもアホ過ぎやせんか?」


 「銀河きゅんそんなタイプの人類に心当たりがあるね」


 「ほぉ?」


 「牧場世界タイプの世界でほぼ間違いないね、多分文明を持たせないで破壊する事だけを念頭に置いた造られ方をしているんだと思う、偶にそういう事をする管理者がいるんだよ」


 はた迷惑な奴もいたもんだと雨宮はシートに背を預け、周りの皆を見渡した。


 眷属クルーこそ殆ど増やしては居ないものの、優秀なクルーが手に入り、しかもそのクルー達は遙か前世の彼方から、わざわざ雨宮の所に集まって来たのだという。

意識こそしていないらしいが、魂が惹かれ合っている何て言われても雨宮には実感が無かった。


 レームやルミコにしてみても、ロペの友人としての認識しか無く、雨宮自身に記憶が無い事も在って、事実かどうかの確認すら出来ない。


 (やめだやめだ、考えても分からんもんは分からん)


 雨宮の興味が薄れたのを見計らって、ロペが此処に皆を集めた本当の目的について雨宮に尋ねる。


 「銀河きゅん前に前世の事を話してくれていた時に、スキルを使って死にかけたって言ってたよね?」


 (ん?)


 「ああ、そう言えばそうだったな。あの時は気が付いたら病院に居たから何が起こったか分からなかったが・・・・・・」

 

 「何をしたか覚えてないの?」


 「俺がか?」


 「そう。スキルで」


 雨宮は首を捻りながら眉をひそめ、記憶の奥底に沈めた前世の記憶を掘り起こす。


 「あー・・・・・・ははは・・・・・・」


 当時の事を思い出したのか雨宮にしては珍しく、その感情が読める程の変化が見られ、周りの眷属達は頬を染めその顔を覗き込んだり、遠巻きに眺めたり珍しいモノを見たと言うのと、思い人の別の一面を見られた事に対する感動とで、(にわか)にざわめく。


 (そうか、あの時はそんな事を願ったか、そんな事の為に力を使ったんだなぁ)


 「家族が居ない世界があるなんて・・・・・・ってな」


 (あー、思い出した、思い出したわ、あの世界でも訳の分からん事があったのを)


 「・・・・・・雨宮それはもしかして大学の時の事か?」


 「新庄の、大学の時というとあの・・・・・・」


 新庄とテツは顔を突きあわせ、少しの間迷いを見せたが、雨宮へと確認の為に質問をすることにした。


 「雨宮の家族が殺された時の事か?」


 雨宮はその質問に答えを返すことを戸惑い、一瞬何とも言え無い苦々しい表情が表に出たのだが、瞬時に目を瞑り、いつもの眠たげな表情に戻る。第二開拓世界に居なかった眷属達には何も反応することは出来ず、只雨宮の言葉を待っている。


 「そうだ。あの時俺は研究室から夜遅くに帰った」


 「帰りに誘われたけど私は研究室で寝るからと断った・・・・・・あの時か?」


 斗捌(とべつ)はその時の事だけ覚えていると言い、近くのコンソールへと背を預け当時何が有ったか思い出そうとしているのだが、その後の事は全く思い出せなかったらしく、記憶の中に何かズレがある事に気付いた。


 雨宮は頻りに皆に見えない所で両手を合わせ、祈る様に握り締める。


 「三人はリビングで貼り付けにされていた」


 周りの仲間達からの反応は無い、まだ続きが在る事を確信しているのか、ジッと雨宮を見つめ話したいだけ話せと先を促す様な視線に後押しされ、雨宮は当時の事を話し始めた。


 「かぁさんは食卓に撃ち付けられて、正中線を開かれて居た、ナイフとフォークが食いかけの臓器に刺さっていたな」


 何事も無かったかの様に語る雨宮の言葉に蹈鞴を踏むのはレームやルミコ、キュキュ等の今だ眷属と成っていないロペの仲間達、その様子を見る周りの眷属達は進退を伺う様な視線を向けたが、三人は頭を振り元の位置に戻りぐっと目を閉じる。


 「とぉさんはテレビに頭を突っ込ませていたな・・・・・・首から上は無かったが」


 感情豊かなトトも息を呑み静かに語り続ける雨宮の腕をぎゅっと掴み、瞳を潤ませている。


 「妹は・・・・・・(かなで)は四肢を根元から切り取られて、そこら辺に蒔かれていた」


 其処まで話を聞いた雪之丞はふと何かに気付き頭の中に残っている知識を掻き集める。


 「銀河さん、その時の映像はまだお持ちになられていますか?」


 「あぁ。今思い出したらちゃんと保存したよ・・・・・・共有しよう」


 雪之丞は映像を共有し一瞬息を呑むが、現場の様子を目の当たりにし、自身の考えに確信を得た。


 「外道移送方陣・・・・・・ですわね」


 「何だ?それは」


 ロペはその言葉を聞くと、そういう事かと改めて表示レイヤーを変更し、魔方陣を映像と被せてみる、すると魔方陣の魔力供給ポイントに雨宮の肉親がそれぞれ配置されており、後は魔力の供給さえなされれば、魔方陣は完成する・・・・・・と言う状況で在る事が確認出来た。


 「外道移送方陣と言うのは、外法に値する魔術の一つで、闇魔術浸食系統の魔法、生け贄を代償に自らの魔力を使う事無く大魔法を使う為の魔方陣ですわ。恐らくこの時は銀河さんの魔力を使う事で魔方陣を発動させようとしていたのでしょう、この魔方陣の形は出口の形状になっているので、何処からか何かを送り届けようとしていた・・・・・・と考えられますわね」


 「この規模の魔方陣だと其処まで大きな物は移送出来ないし・・・・・・あー、そうかそう言う裏技か」


 「裏技・・・・・・ですか?」


 「そう、コレを魔力の無い世界でどうやって使うかと考えたら、Δエナジーだったり、マナをコンバートするしか無いんだけど、Δエナジーは認識できないし、マナは世界を跨いで使うなんて事は出来ない」


 「じゃあ何の為に・・・・・・」


 ロペは雨宮へとコレから向かうダンジョンの詳細データを渡し、頭を掻いてため息をつく。ダンジョンの問題は割と深刻な様である。


 「ダンジョンを其処に貫通させようとしていたんだろうね」


 「その為の出口か」


 「でもその時は失敗した?」


 雨宮は一瞬その言葉に返事をしようとしたが、覚えていない事を思い出し、首を横に振る。


 「分からん、あの後は直ぐにテツが救急車を呼んで病院に連れて行かれたから」


 「家に誰も居なくてな、飯を食わせて貰おうと家まで行ったらあの有様でよ、大慌てさ」


 ガハハと笑って言いものかと思いながらも、大きな口を開けて当時の事を振り返るテツは、後ろから一緒に付いてきていた妹のリファンリアに正座をさせられ、やめなさいと咎められていた。


 雨宮自身には何事も無く怪我もしていなかったのだが、その後暫くは無気力になり病院のベッドで過ごしていたが、絶望の底まで気落ちした雨宮はスキルを使い、そのまま死の淵を彷徨い、半年程病院のベッドで過ごしていた。


 「その時に新しい第二開拓世界が出来た訳だ」


 「そういう事になるんだろうかね?俺にはよく判らんが・・・・・・家に戻ったら結局誰も居なかったんだがね」


 「多分、エネルギーが足りなかったんだろうね。死の淵を彷徨うってのはそういう事だょ」


 「力の使い方を間違えたんだなぁ」


 「あるいはそうかも知れないねぇ、でもそのお陰で暫くは銀河きゅんは落ち着いて生活が出来ていた訳だし、私も準備が出来たから悪い事ばかりじゃ無いょ」


 世界を造り消耗するよりかは、死を無かった事にする方が余程エネルギーを使わずに済む事は今の雨宮には容易に想像出来、当時何も考えられなかった自分の選択に、苦虫をかみつぶしたかの様な表情を隠す事無く、大いに反省し膝の上のイミルと共に背もたれに体重を預け深くため息をついてしまう。


 「そうだ雨宮の、今からでも出来るんじゃ無いのか?」


 「駄目だょ、そんな事したらそいつら(・・・・)に銀河きゅんの居場所がバレちゃうでしょ?」


 「隠れる必要が有るのか?」


 「有るに決まってるでしょ、世界と引き換えにすることを意に介さない世界が、丸ごと襲い掛かってくるんだょ?」


 世界対世界、その戦争の規模は計り知れず、少なくとも同じ世界がベースとなっていることを考えて、最低でもこの太陽系が丸ごと襲い掛かってくる規模で戦力を送り込んでくることは想像に難しくなく、先程聞いた異世界からの獣人達は、余程余裕のある世界からの侵攻勢力であるとロペは考え、既にロペの中でその勢力はほぼ間違いないと特定出来ている。


 「先輩には思い当たる節があるんですね?」


 「そゆこと、旧原初世界直下の牧場世界、わんにゃん牧場だね・・・・・・間違いない」


 今迄真面目に大事な話をしていたのに、急にわんにゃんとか言い出したロペを咎める周りの視線に、慌ててロペはおかしな事を言っている訳じゃ無いと反論し、データを纏め雨宮の近くへとARモニターを表示させる。


 「なになに?」


ーーーーーーーーーー


零番獣人研究牧場世界


内包リソース 獣人種 ダンジョン 惑星 


管理者 グランパシリーズ01 管理補佐 イントエEシリーズ


成長ベクトル 乱世


ーーーーーーーーーー


 雨宮の前に表示された世界の映像は太陽系を思わせ、生身の獣人が宇宙空間を泳ぎ大気圏に突入し、それと入れ違いに大気圏内から宇宙へと向かって獣人がジャンプし、宇宙空間へと飛び去っていく。


 宇宙船と思われる物は存在すらしていない様だが、子供を抱えた獣人が二人の大柄な獣人に両脇を固められ、宇宙へと飛び出していくそんな様子を見た雨宮は、コレがこの世界の日常的な風景なのだとそう感じる。確かに犬の獣人と猫の獣人がその大半を占めており、わんにゃん牧場でも間違いは無いかと雨宮は思う。


 雨宮はブリッジの中心へとモニターを拡大してぽいっと投げ、三度深いため息をつく。


 「なんだコレむちゃくちゃじゃねーか」「宇宙を泳ぐ犬とか意味分かんねー」「太陽に誰か居ますよねコレ」


 キュキュはモニターの端に映っていた太陽に何やら巨大な人影を見つけ、その場所を拡大する。


 「うっわ、デカ・・・・・・」


 「えぇ・・・・・・アレ何メートルあんの?」


 これ以上近付くと勘の良い獣人種は気付いてしまうからと、近付くことは無かったが、そんな宇宙空間からでも視認できるサイズの巨大な獣人は玉座の様な物に座り、此方を見ている(・・・・・・・)


 (コレは気付かれているな)


 「ロペ、リンクを切れ。自爆させろ」


 「え?」


 ロペの反応が疑問によって遅れた一瞬の間に、巨大な獣人はナノマシンカメラを呑み込み、映像が途切れた。


 「ロペ、減点一ね」


 「えーっ!?」


 一応自爆はさせた物の、どの程度ダメージを与えられたかすら分からないこの状況は非常に良くないと、雨宮は感傷に浸っていた頭を切り替え、各地に散っている眷属の諜報員達を中継し、世界中に干渉された後が無いか確認を取ると、海楼の城を任せた天使達から連絡が入り、監視していた先程の牧場世界の巨大獣人は世界の壁にタックルを続けている、と意味の分からない報告が上がり、一応今すぐに問題がある訳では無いと確認が取れた為ブリッジの面子は胸をなで下ろした。


 「・・・・・・雨宮、世界の壁って言うのは、触ると死ぬんじゃ無かったか・・・・・・?」


 「普通はな」


 「世界の壁は壊せないみたいだけどねぇ、あのクラスの獣人・・・・・・巨獣人?こっちに来たらエラいことになりそうだねぇ」


 「おっきーのだけじゃ無くて、普通サイズの獣人さんが来ても大変そうだねー」


 「戦闘能力はこの世界の冒険者や軍人達の比じゃ無いぞ、生身の獣人に戦艦の砲が当たるか?」


 口々に戦闘想定を挙げ可不可を考えているブリッジのクルー達は、直ちに戦力比較に入り、その情報は纏められ直ぐに報告が上がる。


 「・・・・・・互角?」


 「うん、と言うか銀河きゅんが居るから負けることは無いょ」


 (随分とまぁ大きく出た話だ)


 「まぁスキルを使えばそれで問題は無いか・・・・・・」


 (使える暇があればの話だけど)


 「そうょ、だから銀河きゅん抜きの戦力比なんだよね」


 「えっ」


 「大将なんだからあんまり前に出て欲しくないなーって言うのと、銀河きゅんが前に出ると周りの皆が育たないなーって」


 雨宮が感じたままの思いで言えば、自分が一番育っていないのでは?と首を傾げることになったが、その思いは罷り通らない様で、ダンジョンへと再びトライするまでは雨宮の成長は難しい様だ。


 「特に今・・・・・・」「待って待って!私の話は!?」「あれ?」


 「私の居た世界は・・・・・・?」


 (そう言えばこの話の元は、不結理という存在の事だったな)


 「お前はクレーターの話とか、知ってるのか?」


 「知ってる、その後に夢で・・・・・・あ」


 「夢?」


 「そう、夢で貴方に会って魔法使いになって観察者になって、それで・・・・・・」


 不意にバチンと何かが弾ける様な音が響き渡り、不結理の首から上が消え去った・・・・・・。








ーー発見、漸く見つけたよ、雨宮銀河。

第二開拓世界のその後


 前世で雨宮が死んだB世界、そしてその元になったA世界、この二つの世界が第二開拓世界なのだが、ロペがベロペであった時に認識していたのはA世界であり、比較的平和な世界であったが、雨宮を追う存在達に家族を皆殺しにされた雨宮の()によって世界が丸ごとコピーされ、それと同時に雨宮達はB世界へと移動した。


 A世界では雨宮の存在が確認されていた物の、仲間達により雨宮は病院へと搬送されそのまま世界を移動、追跡者達は雨宮を見失い八つ当たりに自分達の世界へと融合を果たそうと試みるも、管理者により阻まれコレに失敗直ぐに発見されたB世界へと侵攻を始める。


 A世界は人類を食料とする侵略者達によって全ての人類が腹の中に収まった。


 B世界に移動した雨宮は結局思いを果たせず、世界は侵略者が来なかった時点から穏やかな流れに乗っていたが、雨宮転生直前に前述の侵略者によって発見されるも雨宮は確保される前に死亡、その魂は第三超広域開拓世界のへと誘われ空振りに終わる。


 B雨宮の去った後仲間達もその人生を終え雨宮の関係者は第二開拓世界から姿を消し、消息を追えなくなってしまった追跡者達は、手掛かりを探す為に世界中の人類を全て一カ所に集め、奴隷として扱う王国の様な物を築き上げていたが、斗捌(とべつ)の蒔いた種は芽吹き、追跡者達は元いた世界に追い払われた。

 その後B世界は新しい人類の生きる文明の滅んだ世界として、管理者はリスタートを決め、改めて第二開拓世界の運営は再開された。

ーーーーーーーーーー


識別世界名 第二新型人類開拓世界


内包リソース 種 ダンジョン 惑星 


管理者 第二世代ヨシムネシリーズ 管理補佐 アシガルXTシリーズ


成長ベクトル 思考ループ型


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