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EP57 父は母も子も想う

ふーむ・・・二年か・・・。

 雨宮が目を覚ますと、目の前に美しい美白美女が雨宮の腕に抱きつきすぅすぅと寝息を立てている。


 (・・・毎度想うが何がこう・・・彼女達をこうさせるのかね。俺が望んでいるのもそうだが、それにしても普通の考え方とはちと考えにくいな。)


 身長と比べて少し小さいぐらいの大きさの翼を器用に折りたたみ、雨宮の腕を抱いたまま寝返りを打とうともぞもぞしながらも、雨宮が動かない為眠りながらも若干眉をひそめて見える表情が雨宮には微笑ましく映る。


 (よく分からないが・・・ロペと居る時と似たような感じがするのが不思議だな。)


 「うぅ・・・ん・・・。」


 (寝言か・・・。)


 「・・銀河きゅん・・・銀河きゅん・・・。」


 ロウフェルの寝顔を眺めている雨宮の耳にロペの唇が触れ、はむはむと甘噛みされるがまま意識だけをロペに向けてそっと振り向いてみると、ロペは既に制服に身を包み、にこにこと雨宮の顔を包み込むように抱きしめてくる。


 「ロウちゃんはまだ起きないみたいだね。他の皆はもう起きて船団の方に戻ったよ。」


 「神域の方はどうなった?」


 「そっちはイントたんがアイリーンと替わって入植を進めているょ。次に戻った時が楽しみだね。」


 そんな話をしている間に雨宮は腕に絡みついたロウフェルを解き、そっとベッドから抜け出した。


 「水星はどうなっている?」


 「ふふぅ・・大混乱。だって結局何にも起こらなかったしぃ、突入した銀河旅団は帰ってこなかったしぃ、ヴァルハラゲートは消えたしぃ、何か水星圏全土から全戦力が集まってきたしぃ、大混乱だよ。」


 (なんだそれ。最初の方は解るが最後のは何なんだ?)


 「何か有ったのか?」


 「寧ろ何も無いから問題かな?」


 雨宮は制服を身に纏うとロペを伴って部屋を出る。


 部屋を出た所でふと気付く。


 「・・・ラピスじゃねーか。」


 「げーとげーと。」


 ロペのスキルかと思っていたが、どうやらそう言う訳では無いようで、ロペはいつの間にか練習し空間転移の魔法を習得・・・思い出し、海楼の城に有る雨宮の私室を、ラピスにある雨宮の私室の扉へとつなげたようだ。


 「便利だなぁ魔法。」


 「うんむ。銀河きゅんも直ぐ出来るようになるよ。」


 「そかぁ。」


 二人は連れ添って二種族増えたラピスの中を進み、ブリッジへと向かう。


ーーーーーーーーーー


 「あ・・総帥、お帰りなさい。」


 「銀ちゃんおはよー。」


 「おぅ。」


 軽く挨拶を交わしたクルー達は既に各配置に付き、忙しなく手元のコンソールとそれぞれのモニターとの間で視線を行き交わせている。

既に戦隊各部のチェックは終了し、何時でもポセイドンコロニーを脱出する事が出来る状態にはなっていたが、実際は脱出する必要など無く・・・なっているはずなのだが・・・。


 「銀河君、何だかよく分からないけど、水星軍のいろんな人達から通信が入っているのだけれど・・・どうする?」


 ミンティリアは引っ切り無しに接続を求める水星軍からの通信を保留し、雨宮に指示を求めるが雨宮の首を傾げる所を見て、厳選した話の通じそうな人を雨宮に薦め、通信を繋ぐ。


ーー此方水星軍機動巡回大隊所属トゥンガ・ギータ中佐だ。貴艦の所属を問う。


 雨宮はそのままミンティリアに進めて、と促し話を進めさせる。


 「此方海王星圏独立国家銀河旅団所属、マギア・ラピス、サブオペレーターのミンティリア・リーミゾーワです。水星ダンジョンへと挑戦しに来たのですが、宣戦布告の煽りを受け、出航を見送るようにとの指示を受けて一時此方に留まっています。」


ーー独立国家だと・・?そのようなものは聞いた事が無いが?


 「当然です、つい先日からの事ですから、ですが其方が知る必要は今のところ有りません。」


ーー・・・了解した、では今貴艦は何処の誰の指揮下に入っている?


 「当艦は連合軍の指揮下にありません。又これから先もそのような事はありません。」


ーー何・・・?今が非常時だと言う事が解っているのか?


 「既に非常時ではありません。そして非常時だとしても我々が指揮下に入る事はありません。」


ーー・・・。それがどういう事か・・・何?・・・す・・すまない一度通信を切る。


 プツン。と音を立てて通信が切れ、ブリッジに静けさが戻る。


 「大分不満そうだったな。しかしあそこまで喧嘩を売る必要は無かったんじゃ無いか?」


 「何を言ってるのよ、これから新しい世界を作るって言うのに第三世界ぐらいに頭を下げている場合じゃ無いでしょ?」


 (???何の話だ???)


 「銀ちゃん又別の人から通信が入っているのよー。」


 「またぁ?」


 「さっきより階級の高い人みたいだねぇ?くふふ・・・。」


 ロペは何か含む所のありそうな笑いをこらえている様ないないような、ニヤニヤとした笑いを携え回線を開く。


ーー失礼いたします!貴艦は銀河旅団の旗艦マギア・ラピスで間違いございませんでしょうか!?当方は水星軍総司令部護衛艦フェムタンキ所属!ゴンザレス・スープレックス・イオタ中将と申します!この度はウチの末娘がお世話になっております!母より詳細は伺っておりますので!どうぞご自由になさってください!当方でご協力できることでしたら喜んでご協力させて頂きますので!遠慮無く仰ってくださいませ!


 モニターに映るガタイの良い中将を名乗った男ゴンザレスは、微動だにせずその両脇に映るイントとよく似たスラリと背の高い二人は両手を後ろに組み、緊張に肩を張り口を真一文字に結んでいる。


 「・・・ひょっとしてイントたんのお父さんか?」


ーー左様でございます!!ゴンザレスと申します!以後お見知りおきをお願いいたします!


 その自己紹介に引き続き、後ろの二人も名乗り始める。


ーーはいっ!自分はイオタ中将閣下付き下士官!セイリーヌ・スープレックス・イオタ中尉であります!!


ーー同じく!イオタ中将閣下付き下士官!シンシア・スープレックス・イオタ中尉で有ります!!


 (イントたん姉妹いたんだ・・・。)


 「ロペ?彼女達は・・・。」


 「転生者じゃ無いょ。」


 だそうだ。


 「あー・・・イントたんのお父さん?今の状況を教えて貰っても良いかな?」


ーーハッ!現在総司令部の副司令旗下の全部隊が当該宙域へと集結中であります!宣戦布告による開戦との事で皆集まったものの、目標が確認出来ず総司令部へと確認を取っている次第であります!!


 どんな命令があったのかは雨宮達には解らないが、水星圏に存在する全部隊が此処へと向かって集結しているらしい・・・。

しかし命令系統が混乱しているようで、先ほどのような識別信号すら理解出来ない様な焦った通信も飛び交っているのだとか。


 「肩を張った話はもう良いだろゴンさん。」


ーーゴンさん・・・。はぁ。まぁそう仰られるなら・・・。二人共崩しなさい。


 ゴンザレスの指示と共に後ろのイントの姉二人が思い思いに姿勢を崩し、ため息をついた。


ーー雨宮殿、実は少しお耳に入れたい話がありましてな。


 (元々そう言う話し方なのな。)


 「ほほぅ?耳寄り情報かな?」


ーー耳寄りには違いないですが・・・。クロスチャーチルという組織の事はご存じですかな?


 雨宮達の聞いた話は実に懐かしい響きだが、近衛のティオレが所属していたテロ組織、そう雨宮には認識されている。


 「聞いた事はあるな。詳しくは解らないが・・・。」


ーー成る程、では此方から情報を・・・。


 モニターの向こうでタブレット型端末を手に持ったシンシアが一歩前に進み、情報を伝える。


ーー現在水星圏暗礁宙域・・・通称『掃き溜め』にてクロスチャーチルと名乗る組織が武装蜂起、この組織は旧世紀に隆盛を誇った教会王国所属のテンプル騎士団を前身として、教会王国崩壊の後テロ組織として新たに生まれ変わったと言われています。


ーー戦力ですが、彼らは艦隊を持たず、小型のステルス戦闘機を主力とし、主に白兵戦力によるゲリラ戦を得意としています。

 構成人員はおよそ一万、民間人に紛れ込んだ構成員を主軸とし各都市で武装蜂起のタイミングを待っていたようです。


ーー主にインフラや政治機能を中心として攻撃し、水星圏各都市に被害が拡大しています。


 「テロか・・・何を目的として動いているんだ?」


ーー・・・。現在までの情報を分析してみても目的は不明です。彼らの起こす行動としては破壊活動、そしてその破壊の後に小さな教会が建設されるのだとか。

 布教活動にしては過激すぎますね。


 「ふぅん・・・。」


ーピュリア・・・聞こえるか・・・。


ーあ、聞こえるよー!どうしたの?


ークロスチャーチルとはどういう組織なんだ?


ー・・・あー、えっとね・・・元々は教会王国っていう国の騎士だったんだけど、最終的には・・・神々の復活がどうとか言ってた様な気がする・・・。


ーふむ・・・。他に何か知っている事はあるか?


ー騎士団だった時の騎士団長の名前は、ガフィア・マーフィー・・・だったなぁ・・・。


ーわかった。


 雨宮がナノマシン通信を終えると、急に話さなくなった事に何か失礼でもしたかと、シンシアがセイリーヌの制服の袖を掴みオロオロと視線を彷徨わせていた。


 「ガフィア・マーフィーと言う名について情報はあるか?」


ーー!!その名は潜入捜査員によって存在が明らかになった、クロスチャーチルの教主の名前と一致しています!


 「ほう・・・。」


 (同一人物の可能性・・・有るかな?)


ーー撮影した画像がありますのでそちらへ転送します。


 「おっいいね。」


 送られてきた画像に写っていたのは、教会と思われる建物の教壇に立つスキンヘッドの大柄な男は説法の途中なのだろうか、その教会に集まった信者と思われる人達へと向かって何かを語りかけているようにも見える。画像から見える信者達の種族は様々で、見覚えの無い未知の種族も其処には参加しているように見える。


 だが建物自体はとても大きいとは言えず、かなり窮屈そうに信者達は座っている。


ーピュリア・・この男に見覚えはあるか?


ーある。ガーフィーだ。ガフィア・マーフィー。テンプル騎士団長だよ。これ何時の写真?


 「シンシア、この画像は何時のものだ?」


ーーはい、二日前に撮影されました。


 「最近だな。」


一昨日(おとつい)のものなんだと。


ーじゃぁどうやってここにいるんだろうね?間違いなく本人だと思う。銀河お兄ちゃん会いに行くの?


ー時期が来たと言う事なんだろうな。場所も解ったし行ってみるか。


ー私も行くね?良い?


ー分かった。


「ふぅ・・・。」


 雨宮の頭の中では過去からの来訪者がどのようにしてやってきたかと言う事について、可能性を幾つか並べる事が出来ていたが、特定などは出来るはずも無く、足りない情報を手に入れる為には直に確かめに行くほか無い事が判明しただけだった。


ーー如何なさいましたか?


 「面白そうだから会いに行ってみるか。」


ーー面白そうって!?


 「ちょっと因縁のある奴も身内に沢山いるしな、ご挨拶ついでに捕獲してみても楽しいかな・・と。」


ーーほ・・捕獲ですか?


 「過去から今迄どうやってやって来たとか、気になるだろ?最近目的が無くなってどうしようかと思っていたんだよ。」


 「いやいやいや!まだやる事いっぱいあるょ!銀河きゅん!」


 「おー。そうだな。」


ーーでは、『掃き溜め』へと向かわれるのでしたら座標をお送りします。


 「助かるよ。」


ーー・・・もう少しお話を聞かせて頂きたかったのですが、漸く事態が動きそうですので、今回はこの辺りで失礼させて頂きます。


 「色々助かったよ。」


ーーいえいえ・・その節は母がご迷惑をおかけしましたし、この位・・・。又娘にもよろしくお伝えください。失礼します。


 モニターの映像が消え、雨宮にブリッジの視線が集まる。


 「行くんだね銀河きゅん。」


 「なんか気になってな?ピュリアの事もあるし・・・なんかこう・・・引っかかってなぁ。」


 雨宮の頭の片隅に引っかかる何か、それが何なのかは判らないようだが、一度その目で見てみたいという衝動に負け雨宮はその選択を選ぶ。


 「『掃き溜め』へ向かう。各艦進路確認、出航次第順次超空間航行に入れ。」


 エリーが各艦へと指示を飛ばし、新庄、ミンティリアから報告が上がる。


 「総統閣下、出港許可下りました。」


 「全艦出航。」


 「「「「「「「「「「了解。」」」」」」」」」」


 次の目的地が決まり、あっという間に出航する銀河旅団。

外部ハッチが開いたその先には、隙間があるのか疑う程ひしめき合う水星軍の戦艦、戦艦、戦艦。

 ガイドビーコンの誘導に従い、数センチの隙間を維持しつつポセイドンコロニーを離れていく。


 「さぁ・・・何が有るのか楽しみだな!」


 「ハゲのおっさんがいるだけじゃ無いの?」


 そうかも知れない、と思いつつも銀河旅団は『掃き溜め』へと足を向ける。


ゴンザレス・スープレックス・イオタ 四十九歳 人工人類 太陽系連合軍水星圏方面軍諜報師団師団長 中将


 水星圏全ての情報を統括する諜報師団のトップに君臨する水星軍の実質ナンバーⅡ。

母であるバーバラから英才教育を施され、諜報の世界で力を身につけた。

 身体の大きさに見合わず繊細な機器操作が得意、入隊当初から諜報の世界で活躍し、裏の情報も表の情報もあらゆる情報に精通し、現時点で水星軍から派生する軍全て及び官・民問わずの情報を握っており、太陽系連合軍内外からイオタに逆らうと社会的に死ぬと言われており、方々から恐れられている。


 イオタの一族は代々情報処理や諜報の世界に精通しており、機人種にも劣らないと言われているが彼自身がそれを体現し、中将の立場まで他種族の将校を押しのけて上り詰めた。

 家族を非常に大切にする男で、母や娘、妻の記念日には欠かさず何らかのプレゼントを贈っており、家族仲は良好最近は母の引き籠もりに、妻が悩んでいるという話を聞いていたが、彼はその真実を理解している為にちゃんとしているから問題ないと上手く濁して伝えている。


 趣味は母から勧められたVRゲーム。好きな食べ物はハンバーガー。

彼も又スペースアーク2のプレイヤーでありトップクランの一つ、『ドラゴンスープレックス』のクランリーダー。

ゲーム内でもあらゆる情報を集める事で、稼ぎを上げ副収入を得ている。

 ゲーム内では無限にハンバーガーを食べられる為、常にキャラクターのインベントリの中には複数種のハンバーガーが入っている。


トゥンガ・ギータ 四十歳 ヒューエル 水星軍機動巡回大隊所属 中佐


 過去の戦争において大きな功績を上げ、年齢と共に順当に昇格を果たしてきた普通の軍人。

雨宮が転生する直前に集結した『採掘戦争』において大きな失敗をし、その際に一階級降格現在の中佐になる。


 採掘戦争における戦後を見据えた最新量産型SW(スペースワーカー)トライアルにおいて、上司達が不正をしている事を発見、その場で糾弾出来ず、正義と不義理の間で悩んでいた所、その不正の証拠を意図せず掴んでしまう。

 証拠の処遇に更に迷い、フラフラと艦内を巡回していた所、上司の子飼いと言われていた下士官が彼の私室へと侵入、その証拠を掴んでいた事を報告し、降格が決定した。

しかしその上司は当時太陽系全土で活動をしていたAGフォースによって弾劾され処刑、その煽りを受けて巻き込まれた彼は、酌量の余地があると一階級の降格にて収まり、現在の宙域巡回大隊へと転属する。


 自分の所属する部隊に弟ナージ・ギータが所属しているが、兄が結婚しないと言う理由で頑なに結婚しない事を危惧している。


 好きな食べ物はチョコバー、常に懐に一つ以上忍ばせている、下士官時代戦場にSWで出撃した際も忍ばせており、体温で溶かした事もあった。

趣味はゲーム、新作から旧作まであらゆるゲームに精通しており、現在はVRゲームスペースアーク2にて姫の下僕プレイをやっている。

プレイヤーネームは直爺、トップクラン『銀河研究会』に所属ゲーム内にて仕える姫が最近ログインしない事が心配。

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