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EP50 風魔の女

|/゜U゜|丿


 ちょっとよく分からないが幻聴では無いようだ。


 専務さんもそこに誰か居ることをしっかり確認しているようだし。


 「椅子の後ろにいるんだから見えなくて当たり前でしょ!誰に話しているのよ!?」


 おっと?


 俺は椅子の後ろの声の主を確認する・・・あれ?


 「トランクに運ばれていた少女。」


 「アレは乗り物なの!運ばれていたんじゃ無いから!乗ってたの!」


 ふむ・・・。奇妙。


 「奇妙じゃ無い!!」


 何故この子は俺の心のつぶやきにツッコミを入れてくるんだろうか?


 「ワザとやっているでしょう!?」


 「バレタか。」


 「もー!」


 非常にアンバランスな大きいサングラスを外した女の子はプリプリと怒りながらも、特に気にしたようでは無い様子で専務の隣の席へと座った。

 綺麗な栗色の髪はよく手入れされているようだが、短めのツインテールがフリフリと揺れ、ふくれっ面が因り幼さを強調させる。


 「彼女が我が社の新技術開発部、開発部長のアプレ・マクラフトだ。」


 「ああ、あの残念な兵器を作った人・・・?」


 こら。ちょっといい話で纏まりそうだったのに、急にヒビが入った気がする。


 「うちのと比べたら駄目だろう。」


 「ああそうか、まだなんだったっけ・・・その・・・色々。」


 今なんか言わなくていいことを言いそうになっていたな?


 「・・・うちの?」


 「貴方達ティタノマキアと何か関係があるの?」


 あれ?そっち?


 「説明するのがめんどくさいが、銀河旅団の傘下にあると考えて良い。」


 「「・・・ぇ?」」


 何だろうな、今迄何だか良い感じで話が続いていたと思ったんだが、ものすごく訝しげに俺を見てくるこの二人のこの感じ・・・どうしたら良いかね?


 「まぁ色々あるって事だ。」


 「その色々が気になるでしょーが!」


 少女が椅子の上に立ち上がって指を指してくるが、気になられた所で話すようなことは無い。

話してもしょうが無いことだしな。


 「まぁなんか色々話してくれたんだが、目的を果たさせて貰っても良いかな?四百億だっけ?払うから端末でも出してくれよ。」


 なんかもうめんどくさくなっちゃったわ。値切ったりチャラにしたりとか色々考えていたけど、これ以上時間が掛かるのも嫌だし、こんなに話し込む事になるとは思わなかった。


 「ちょっとその前にその話をもっと詳しく・・・。」


 「話す必要は無い。聞く権利も無い。以上。」


 俺は自分の端末を差し出し、何時でも送金できる状態で待つ。


 「・・・仕方ありませんな。では。」


 専務はやはり話の分かる人のようだ。先ほど触っていた端末に、ショップで見た様な読み取り機を接続し此方によこした。

少女の方は椅子に座り直し完全にすねているが、正直もうどうでも良いさっさと帰りたい。

 

にゃおん!


 何だか聞き覚えのあるような無いような、サウンドが鳴った後取引完了の文字が端末に表示される。

取引後の残高は・・・また前よりガッツリ増えてる。なんで?・・・桁増えてない?


 「ふぅ。じゃぁ帰るか。」


ーーーーーーーーーーー


 「あの・・・良かったのですか?」


 あの金額をあっさり支払ったものだからゴルゴネアは恐縮してしまっているが、俺としては特に気にしていない。


 「俺も最初はどうかと思っていたんだが、よく考えたら別に気にすること無かったと思ってな。」


 「えぇ・・・。」


 「折角交渉に来たのに結局只支払っただけになったわね?」


 「そうだなぁ。なんか長くなりそうになったから面倒になってな。」


 「あんまり良くないと思うよ?そう言うの。」


 「分かっているんだがなぁ。」


 あの子供がティタノマキアの話を出した時から、目がキラッキラしだしてこれは長くなりそうだと思ったんだ。

事が落ち着いたらまたこのショールームに見に来よう。正直見るべき所はあんまり無いのだが、このメーカーはSWも販売しているようで出がけにチラ見した感じでは、なかなかの数が揃っているようだった。


 「さてぇ・・・。お?」


 帰りは車に乗らず、のんびりと海岸線沿いの歩道を歩いていた。所々に小さなショップが点在し観光客に向けて販売されるような土産物屋の屋台が所狭しと並んでいる。


 「賑やかなのです!」


 「そうね。お祭りみたい。」


 「レジャーコロニーですからねぇ。」


 皆に歩調を合わせながらゆっくり進み、ふと海岸を見てみるとマリンスポーツに燥ぐ者、砂浜にシートを敷き日焼けをする者など、元の世界でもあった夏場の海を思い出すような光景が広がっていた。


 「レジャーかぁ。」


 俺はふとミンティリアへと目を向ける。


 普段は支給されたであろう揃いの制服を着ている彼女だったが、今日は何故かかなりラフな格好をしている。流した金の髪に白のワンピースとか・・・一応銀河旅団としてきたんだからそれもどうかという話なんだが・・・。

トトも何故か短めのキュロットパンツとアロハのような服を着て麦わら帽子をかぶっている。ゴルゴネアは・・・ずっと変わらないな・・・?最初に見た時と同じシャラシャラの某RPGの踊り子の服のような格好のままだ。


 「なに?」


 「いや、何故二人とも制服じゃ無いのかと思ってな。」


 「いや、暑いでしょ!夏服があるかは聞いてみたけど、まだ完成してないって言ってたから・・・。」


 「そういってたのですー。」


 一応確認はしてみたんだな・・・。まぁ服装に関しては特に思う所は無いんだが、全部任せっきりになっているから。


 俺?俺は何故か眠っている間に着せられていた、皆が着ている制服の発展系みたいな物を着せられている。一応俺用にあつらえた物らしいが・・・確かに若干暑苦しいな?


 「寧ろそのまま出てくる方がどうかしてるわよ・・・。暑くないの?」


 「あぁ・・・ナノマシンのお陰で何の問題も無いんだ。」


 「それずるいわねー。」


 まぁ望めば眷属化することもやぶさかでは無いが、ちょっと特殊な事情がある時以外強制的に眷属化したりはしない。今迄がどうかしていたんだ、ちょっとハイになりすぎていたかもしれん。


 「私も眷属になろっかなー・・・。」


 そんな温泉に行きたいなーみたいに言われてもなぁ。一応意味は分かっているらしく、チラチラと此方の様子を覗うようにのぞき込んでくる。


 「ぎんさん!ぎんさん!」


 おっおっ!?


 トトが突然俺の肩に座ったままで俺の頭をぐりんぐりん回してくる。


 「なんだなんだ。まーわすなー。」


 しかもぎんさんって何だよ。ひゃくさいか?


 「お土産買おうよ!」


 あー。


 「そっか何か有ったら買って帰るって言ったっけそう言えば。」


ーーーーーーーーーー


 俺達は近くの屋台ののれんをくぐりのぞき込む。


 「ああわっ!!い・・いらっしゃい・!?」


 あん?何でそんなにビビってんだ?


 恰幅の良い馬獣人のおっさんは、自分のガタイの良さを棚に上げて俺に驚いているようだ。


 「ちょっとぉ、あんたデカいんだからそんなに急に顔だけのぞき込んだらびっくりするに決まってんでしょ?」


 おおお?


 確かに今の俺は前の世界では考えられない程身長も伸びて・・・のびて・・・え?


 「いや俺デカくね?」


 ふと自分の身体を確かめるようにナノマシンを使って観察してみると、妙にデカい・・・気がする。

そう言えば、何でのれんをくぐるなんて言うことをする必要があったんだ?この屋台も相当デカいんだが?

俺の身長は・・・前に計った時は二メーター五十位だった筈なんだが・・・いやそれでも充分デカいけど。


 今もっとデカくね?


 俺は少し屋台から離れ店を見た。


 「・・・。」


 おかしいな、店の天井が俺の頭より下にあるんだが。


 「あれー・・?俺こんなにデカかったっけぇ~?」


 ???


 一体何時から俺はこんなにデカくなったんだ?急にこんなにデカくなったら直ぐに分かるよな?あれー?


 俺が屋台の外で首を傾げていると、俺の足下にトトがやってきて両手を万歳している。あぁ・・・肩車ね。


 「改めて思うけど視界が高くなったわぁ。」


 「わぁって・・・。普通気づくでしょ?」

 

 「ぎんさんはどんどん大きくなるのです!」


 きゃ~。と俺の肩の上で燥ぐトトの手には何やらごっそり詰め込まれた重そうな紙袋があり、俺の頭をバシバシ刺激する。


 「俺が持つから・・・ちょやめ・・。」


 当たる当たる。


 結局俺はそこで何を売っているのか確認する事を忘れていたが、ミンティリアとトトがそれぞれ土産を買い込んだようなので良しとしようか。

会計の際はミンティリアに端末を渡し、俺がちゃんと支払いました。


 「今話題に上がったから気にするようになったんだけど、確かにデカいわね。三メートル以上有るんじゃ無い?顔を見て離すと首が痛いわ。」


 ミンティリアが俺の方を向いて話そうとすると・・・確かに倍近く身長があるからかほぼ真上を向いて話している。


 「ちょっと離れた方がちょうどいいかも?」


 なんや寂しいやんけ。


 「ひでぇ。」


 「嘘よ。」


 すっと離れていたミンティリアが又隣に戻ってきた。


 「ミンティリアも肩車して貰えば良いのです!」


 どっからその発想が出てきた。


 「いいの!?」


 何でそんなに乗り気なの?リゾートのコロニーだから?パリピなの?


ーーーーーーーーーー


 「ふぅぉあ!たっか!」


 あがが・・・。


 結局トトは馬跳びでもするように俺の肩からひょいっと飛び降り、満面の笑みを浮かべて万歳するミンティリアを肩車することになった。


 「おいこら、頭を掴むな、後暴れるな!」


 首がいてぇ。


 「これが四メートルの目線かぁ!高いねぇ!」


 燥いじゃってまぁ・・・。と言うかお前の座高を合わせたらもっとあるじゃろが。


 ミンティリアの長い足を支え、パタパタとサンダルの音を鳴らし駆け回るトトを歩いて追いかけていると、ぐっと服を引っ張る感触がした。


 「あの・・・。」


 えぇ・・・?


ーーーーーーーーーー


 「ふぁああああああ!」


 何をやっているんだ俺は・・・。


 結局ゴルゴネアまでもが何故か俺の肩に乗ることになった。


 その美貌で只でさえ周りの目を引いているというのに、俺の肩の上に乗っている日にゃ・・・。


 「何だか見世物みたいねぇ?服装の性かしら?」


 俺もそう思う。只でさえ目立つ娘なのにそれを遠くからでも分かるぐらいの高さにいるものだから、男の観光客達はそのアンダーショットを目に焼き付けようと俺の周りに集まってくる。


 「スゲー・・・。」


 「みえ・・・。」


 「おらっ!野郎共くっつくんじゃねぇ!!暑苦しい!散れっ!散れっ!」


 俺の周囲だけ以上に人口密度が高まった原因はもちろんゴルゴネア。その露出過多な衣装?は下乳が丸見えである。


 俺は無言で彼女を地面に降ろした。


 「楽しめたか・・・?」


 「はいっ!とっても新鮮でした!」


 めっちゃ楽しそうやんけ・・・まぁ本人が気にしていなかったのならもう追求はするまい・・・。


ーーーーーーーーー


 「おいアイスこぼすなよ?」


 「らいじょぶなのれす!」


 もごもごと定位置に収まったトトの口にはこれまためっちゃ長いアイスキャンディーがこれでもかと頬張られている。


 「あーたれるたれる!」


 俺の頭の上にポタポタとミルキーな匂いの液体が落ちてくる。


 ミンティリアはかがんだ俺の頭をハンカチで拭き取ってくれたと同時に、トトのアイスをポキッと折り、自分の口に運んだ。


 「もー。普通のにすれば良かったのにー。これはべとべとになるなー。」


 そら素手でそれを食べてりゃそうなるわ。


 その後も何軒かの屋台に三人は顔を出し、最終的に四人全員の両手にはこれでもかと土産物の紙袋がしっかりと握られていた。

え?位相空間に仕舞わないのかって?持ちたいって言うんだよ・・・トトが。


 「いっぱいお土産買ったのです!」


 俺がな。


 「流石に全員分は手では持てないわねー。」


 「安値やすねで捌いても良いのでしょうか・・・。」


 ゴルゴネアはもはや転売する気でいるらしい。身内価格にしてやってほしいものだ。


 結局買い物を終えて宇宙港の前までやってきたのはお昼を少し回ったぐらいだろうか、目に付いたオープンテラスのカフェには、ランチを楽しむ観光客達が所狭しと集っていた。


 「おなかすいたのですー。」


 「そうねぇ。もうランチの時間よね?どこか寄っていきましょ?」


 「が・・外食ですか・・?」


 俺を挟んで反対側にいるミンティリアは反対側をのぞき込み、不思議そうにゴルゴネアに問いかける。


 「あれ?外食しないの?」


 「え・・と・・・はぃ・・・。」


 ふはっ、そうだった。


 「ブレ魔女は確かにそんな余裕は無かったよな。話を聞く限りでは。」


 「お恥ずかしい限りです・・・。」


 「じゃあ尚更よ、これからは違うんだから、そういうのも慣れていかないとね。」


 確かにそうだな。今迄俺達もそうだが人の居る所に行くようなことを殆ど出来なかったからな、これからはもっと色々やっていきたいし、家族のある奴もいるだろうからなぁ。


 「よし、じゃぁ・・・「ととぉおおおお!!!!!」あ?」


 辺りに響き渡る程のデカい声で呼ばれたトトは、一瞬でその声の主を理解したらしく俺の頭にしっかりとしがみついた。


 後ろから凄い早さで走り寄ってきた三人の女は、何故か俺の前に回り込み、後ろの方をのぞき見る。

なんとなく俺は一歩横に動いた。


 「あ!ちょっ!動かないで!」


 そう言いながらまた俺の前に何故か隠れようとする三人。動く俺。


 「ちょ!ちょ!ちょ!動くなって!」


 遠くから声が聞こえる。


 「くいにげだぁああああああああああああ!!!!」


 俺はしっかりその言葉を認識し、俺の腹にしがみつき隠れている三人を見た。俺ってやっぱデカいな。


 俺の顔を見上げてしーっと指を口に当てるポーズをとる三人だったが・・・。


 「「「おまわりさんこっちでーす!」」」


 俺達三人は艦長と部下のスリープラトンで応戦する。すると漸く気づいたのか追いかけてきた主は俺の近くまで来ると肩で息をしながらも、しっかりとその女達を捉えた。


 「八万クレジット・・・・。はぁ・・はぁ・・・払え・・・・はぁはぁ!!!・・・・!」


 立派なひげを蓄えたシェフと思われるおっさんは、鬼のような形相で彼女達に迫る。


 「ああ・・いや・・・その・・・今はちょっと・・・おほほ・・・。」


 「今は・・・ちょっと・・・じゃ・・・ないだろ・・・はぁはぁ!!」


 なんかよく分からんけどもう行っていいかな?ちょっと腹減ってきたんだけど。


 ランチタイムの独特な空気に腹を刺激され、他の三人と同じ様に俺も少し小腹が空いてきた。


 「行こうか。」


 「そうね。」


 「はい。」


 相変わらずトトは俺の頭に顔を埋めてしがみついたままだ。何か有るんだろう。


 「ちょまっ・・・!この人が払うから!ねっ!?」


 「すみませんそういうのお断りしてるんで。」


 スタスタと去ろうとする俺だったが、俺の服の裾をがっつり掴んで話さない女達はそのままずるずる引きずられるまま、段差で膝をすりむこうともお構いなしに俺を話さない。


 「ええいうっとおしい。」


 「今回だけだから!今回だけだからぁ!」


 アホか、何で初見の他人に金を出さにゃイカンのだ。


 「出世払いで!」


 「俺に言うこっちゃねーだろーが!!そっちのおっさんに言えよ!」


 「トトぉ・・・。」


 率先してしがみついてきた一番年上と思われる奴は相変わらず俺の服の裾を話さない、そして一番年下と思われる女はトトへと呼びかけるが、必死に俺にしがみついて見向きもしなかった。

因みに次女っぽい奴は必死に頭を下げておっさんをなだめている。


 「大体ねぇこんな所で食い逃げなんて、冗談じゃ無いよ!」


 おっさんもちょっと落ち着いてきたのかお説教に入る感じだ。これは長くなりそうだ。


 「じゃあ俺達はこれで・・・「う~。」・・・?」


 長女と思われる女はぼそっとこれだけは使いたくなかったが・・・とか言っている。


 「キャーーーーーーーーー!っげふ!!!」


 あっと・・・振りほどいてつい顔面を蹴ってしまった・・・。美汐のせいで叫ぶ女にトラウマでも植え付けられたかもしれん。反射的に身体が動いた。


 そのままロータリーのど真ん中までころがっていく長女(仮)バスが急ブレーキを踏んで更に彼女をロータリーの外へと弾き飛ばした。


 ・・・。


 周りの視線が俺に突き刺さる。なんかすんません。お食事中失礼しました。


 「ふぅ・・・。八万だっけ?端末有る?」


 「あ・・あぁ。・こっこれに・・。」


にゃおん!


 「さ・・・行こうか。」


 「ちょっとまてやゴルァ!!!!」


 めっちゃ元気にダッシュして長女(仮)が駆け寄ってくる。俺はゴルゴネアとミンティリアを小脇に抱え、ダッシュでその場を離れた。


ーーーーーーーーーー


宇宙港受付前


 「あのー。」


 「えっ?」


 人混みに紛れて巻いたと思ったが・・・。


 「目立ちすぎよね。」


 「その背の高さでは隠れませんね。」


 二人ともクスクス笑いながら俺の腰をぽんと叩いてくる。肩までは手が届かないらしい。


 「てぇめーーーー・・・・。」


 「ひゃぁ!鬼が来たぁ!」


 俺は大きくリアクションを取りつつジリジリと下がりたかったのだが、流石に受付の前ではちょっと迷惑なので、背中に圧を受けながらも手続きを済ませ船に戻ろうとゲートをくぐり・・・。


 「だからスルーすんな!!!」


 「おごってやったんだからもうあっち行けよ!」


 ガルルルルと八重歯をむき出しにした長女(仮)は結局俺の服の裾をもう一度掴み、ラピスまでしっかり付いてくる・・・。


ーーーーーーーーーー


マギア・ラピス応接スペース


 「うわー何ここ広っ!」


 「豪華なソファー・・・。」


 「・・・広い。」


 結局この三人は艦内まで付いてきた。もちろんナノマシンのセキュリティにより、入り口で一度はじかれたのだがギャーギャーと三十分ぐらい騒ぎ散らしていたので仕方なく中へと入れたのだ。


 「お前等一体何だ。」


 「あ?なに?人の顔面を蹴っておいてそんなこと言う?」


 このやろう・・・。


 「それは八万でチャラ。」


 「そんな訳無いだろ!!下手したら死ぬ所だったんだぞ!!バスにはねられたっての!!!」


 よくそこまでしっかり覚えてるな・・・。


 「しかし丈夫な奴だな。もう帰るか?」


 「何で追い出そうとすんだよ!?トトは居るだろ!?」


 流石に名前を出されて何も言わない訳には言わないと思ったのか、未だ肩の上に乗ったままのトトは渋々三人のことを話し出した。


 彼女達はトトを合わせて風魔四姉妹で通っていた何でも屋なんだとか、そう言えばござるから聞いた覚えがあるな?

何でも先祖代々コンビニを継いできたらしく、その片手間に風魔忍術と呼ばれる流派を教えていたらしい。

 しかしそれも祖父が亡くなった時点で、コンビニの出入り業者は激減し、道場も閉鎖、貧乏生活を送っていたらしい。

トトも道場を祖父から任されていたらしいが、姉が勝手に売却してしまったらしくそれが原因で家を出てここへ来たのだという。


 「お前等酷い奴だな・・・。」


 「・・・誤解しないで下さい。」


 「そうです、悪いのは美空(みく)だけ。トトも私達も悪くない。」


 「あんた達は何にもしなかっただろ!?」


 姉達の言い分としては、何かをしようとしても姉に邪魔され、バイトすら禄に出来なかったらしい。


 「ふ・・・風魔の女がアルバイトとか・・・無いって・・・。」


 何のプライドだそれ。


 そしてその残ったコンビニでは妹たち三人は無理矢理姉に高価な普通の商品を売らされていた、だが妹達目当てで来ていた客も何故か姉が追い払ってしまい売り上げが無くなり畳まざるを得なくなった。


 「お前何やってんの?」


 真ん中の二人は朝早くから姉の目を盗んで警備員のアルバイトや、工事現場などのアルバイトを行い、姉が起きる前に帰ってきていたとか。


 「っふ。お前は何してたんだよ。」


 ちょっと笑いが出た。


 「あたしは・・・なん・・だろ・・・・ねー?」


 姉の目が泳いだ所で次女?がため息をついて姉の乳首をひねった。


 「お前はいっつも借金を返すお金でホストクラブに行ってただろーがあぁ!!!」


 「いだだだだだだだだだ!!!!!」


 あーあー・・・。又借金か・・・。あー・・・そう言えば俺のクレジットカードの支払いどうなっただろ・・・今更思い出してもどうしようも無いが。


 詳しく聞いてみたら上二人は双子らしく、三女は機人種、四女は獣人種と異母姉妹なんだとか。

そして長女は放蕩な父親の血を色濃く次いでいるらしく・・・。


 「ただのぱっぱらぱーよ。皆伝してなかったら叩き出してあげたのに。」


 三女は大人しいのだが、姉に対しては容赦が無い。さっきから次女と一緒にケツを抓っている。


 「痛いってもう!!私にはやる事が別にあったの!!その・・・たまにお金も持って帰ってきた・・・じゃん?」


 「「「・・・。」」」


 「もう帰って貰っても良いかな?」


 俺が改めてそう言うや否や、妹たち二人は俺の前にさっと移動し跪いた。


 「あいつはどうなっても良いので私をここで働かせて下さい。」

 「美空は死んでも良いので私はここで働かせて下さい。」


 別にそれは良いんだけどさ・・・。


 「お前等トトになんかしただろ?こんなに普通嫌がんねーぞ?」


 「「それは・・・。」」


 はぁ・・・。


 聞いてみたら予想していたよりも大分酷い。紐みたいなレオタードで接客させていただとか、スク水で接客させていただとか、主にコスプレなんだが・・・。

道場の合間にトトが子供の時からやらせていたとか何とか。


 「ちょっと通報してきますね?」


 「「私達は止めたんです!!!」」


 「嘘つくんじゃねー!自分が嫌だからって着せたのはお前達だろうが!!!」


 この姉妹は・・・。


 「ギルティね。」「電話電話っと・・・。」


 俺は別に普通にしてくれるんだったら別に良いとは思うんだが、何ともなぁ・・・。


 「トトはどうしたい?お前が決めて良いぞ?バラして欲しいんだったらそれでもいいし。連れて行きたいんだったらそれでもいい。好きなようにして良いぞ。」


 そう俺が言うと肩の上のトトに注目が集まる。


 「・・・・・・。」


 トトからはなかなか言葉が出てこない。まぁそれもそうだろう。トトが冒険者として強かろうがトラウマも多少なり有るだろう。

苦手意識というのはなかなか消えないものだ。


 「うぅ・・・もう嫌な事しない?」


 「それは俺がさせない。もしやるようなら・・・。な?」


 ちょっと色々試したい事があるから。


 「それなら良いのです。」


 トトはこう見えて俺の裏の部分も知っている。なんか知らんが俺のスイッチが切り替わってもそのまま付いてくるので、自然と知る事になったんだが何か「ボスなら良いのです。」とか言う超理論で納得しているらしい。


 「「「トト!!!」」」


 トトにしがみつこうとした三人だったが急に俺が立ち上がったので、長女は俺の膝に顔面でダイブした。妹達はその気配を感じ取り直前で止まったのだが姉は顔を覆ってうずくまった。


 「ごめんねトト。」


 「あいつに絡まれるのが嫌だったの。」


 姉散々な言われ用だな。自業自得だが。


 「お前デカすぎだろ!」


 あんまりにもしつこくギャーギャーと言ってくるので美空の襟首をひっつかみ、ついでにその場にいた全員を連れて俺は自室にしけ込んだ。


 ごちそうさまです。


アプレ・マクラフト 二十四歳 ヒュント 煉獄社新技術開発部、開発部長


 水星圏に本社を構える煉獄社にて、新技術開発の責任者を任されている若き精鋭技術者。

ティタノマキアに遅れこそ有るが、たった一人でマジックサーキットの独自理論を確立した天才。

現在、新たに完成したテスト用戦艦を実地試験を行うべく調整中。

 とは言うものの、これまでのテスト艦はほぼ全てブレーメンの魔女によってスクラップに近い状態にされていた為、ほぼ新造戦艦に近い物になっている。

 一方的にティタノマキアをライバル視しているが、その技術の差には埋めがたい溝がある事も承知している。

マーメイドコロニーに銀河旅団が到着した頃、その入港の噂を聞き撮影用のカメラを大型のトランクカーへと押し込み、宇宙港の見送り用スペースにてマギアシリーズの外観を撮影していた。

 趣味は戦艦模型収集、好きな食べ物はビスケット。

常に肩から小さなポーチをかけていて、その中には割れないように専用の入れ物に入れたビスケットが入っている。

ヒュント(人種とホビット種のハーフ)の身体的特徴として成長は早いが、小学校高学年ぐらいの身長になったぐらいで成長が止まる。

それ故に成人しても子供とよく間違われ、諍いが絶えない。しかしホビット種を始めとする小人系の種族は成人と同時に左耳の耳たぶに星印の入れ墨を入れる事で、成人である事の目印としている。

近年は大分認知されてきた証ではあるが、雨宮にはそんな知識は一切無い為現在進行形で子供だと思われている。


風魔 美空 (ふうまみく)三十六歳 超人種 養分


 風魔四姉妹の長女。風魔流忍術の免許皆伝では有るが、本人は全くそれ自体に興味は無くむしろ憎んですらいる。

幼い頃から苛烈な修行を強要されてきた過去を持っているが、現在はそれを補って余り有る程奔放に遊び回っている。

 又、コンビニエンスストアの経営者としての顔も持っていたが、全く才能が無くやる気も全く無かった為経営状態は常に最悪、早くに亡くなった両親から店を継いで僅か二年で店を売り飛ばした。

しかも売り飛ばした事により、居住スペースであった実家をだまし取られ、姉妹四人住む家を失った。

 忍びとしてのコミュニティを頼りに妹達に裏の仕事をさせ、自分は常に遊びほうけていたが、雨宮銀河偵察の仕事が舞い込んできた際、本人指定の依頼であったのだが末の妹であるトトを無理矢理派遣し、クライアントから依頼金をだまし取った。


 一年近くたってもトトが帰ってこないため、経過報告すら出来ず依頼は失敗とされ違約金によって借金取りから追われる毎日に突入する。

そこからは三人一致団結し、全力でトトを捜索マーメイドコロニーに銀河旅団が入港しているタイミングで待ち伏せし、接触を図った。


 趣味はホスト遊び、好きな食べ物は天然牛のステーキ。

実家がまだあった頃は毎日のように男に貢がせ、ホスト遊びに夜の町へと繰り出していたが、決して自らを安売りせず良いように男を転がしていた。

しかし偶然貢がせた男がとある裏の組織の幹部で、その男から命を狙われる事になる。

そのことが契機となり、彼女はトトを探す名目で宇宙へと飛び出した。

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