EP4 脱獄不可能!監獄戦艦ヘルフレム!
200回もアクセスがあるなんて・・・ちょっと感動してしまった。
俺は今、また目隠しをされている。異世界に来て早二回目だ。正直こんな波乱万丈な人生は望んでいない気がするような気がしないでもない。つまりどっちだって?俺はこんな展開も嫌いじゃない。つまり好きだ。
めっさワクワクしている。それもこれも、この強靭な肉体のおかげだ。何をされても死ぬ気がしなくなってきた今日この頃。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。正直目隠しプレイも嫌いじゃないです。でもどちらかと言えば相手を凝視していたい。
いやそうじゃなくて、今目隠しのままおそらく留置所のようなところに移動させられているのだろう。
宇宙船の技術の凄さゆえか、スピード感も圧迫感も感じない。ただ。一つ感じていることがある。
・・・・。
俺の両脇を固めるごっついおっさん?のような何だか妙に密度を感じるこの感覚。きっと体積もごっついんだろう。隙間なくくっ付いているこの感覚。不幸せ感覚この上ない。汗の臭いすらしてきそうだこの距離感。まさにゼロ距離。
某ゲームのデンドロビウムとガーベラの一戦のようだ。それはもうみっちりしている。一応長袖の服を着ているので、直にお肌の触れ合いをしているわけではないが、非常に不服である。せめて女の子ならいいのにとか思っちゃうんだが。仕方ないことだよな?
しかも耳栓もされているし口もマスクのようなものでガッツリふさがれている。
全身拘束具のせいで全く身動き一つとれないんだが?
芋虫状態。きっとこけないように両隣に座ってくれているのだろうけど・・・。
割と拷問に近い。というかすでに拷問は始まっている?精神的苦痛を与えるのは拷問の基本中の基本だが、まだ甘いな。俺はまだ十分は耐えられる!つまりもう限界だってことだ!
正直全く身動きが取れないといっても、力技でどうにかすることもできる。実際移動させられて一分もたたないうちに腕を縛っている拘束具の部品は、身じろぎしただけで外れてしまっている。新しくきついやつを付けられないように隠し続けるのが大変だが、そこは両脇のマッチョメンによって隠されているから何とかなっている。
正直つらい、あとトイレ行きたい。時間の感覚はナノマシン先生によって保たれいている。
かれこれもよおしてから6時間は立っている。俺のスーパー膀胱でなければヤバかっただろう。
もよおしたことを伝えもしたが、その際返ってきた言葉は・・・。
「一回外すと付けられないから我慢しろ。」
という事らしい。正直もう出してしまってもいいんじゃないかとさえ思えてくる。責任もてねぇよ?お前らのせいだぜ?もぉ・・・ゴールしちゃってもいいよね・・・。
と、急に両脇マッチョメンたちが動き出した。おう右のも左のも、いきなり動くと危ないぜ?
爆発しちゃう。主に下半身が。
「ーーーーーー」
なんか喋っているみたいだがほとんど聞こえん。耳栓外せっちゅーねん。という思いが通じたのか知らないが、外してくれた・・・。耳栓だけ。
「着いたぞ!ここがお前の終の棲家になる場所だ。」
あん?終の棲家だど?紹介されても何も見えねーよ。
「お前も何をやらかしたのか知らねーが、こんな掃き溜めにぶち込まれることになるとはな。
同情するぜ。」
同情するぐらいならトイレに行かせてくれ!
「これからこのまま、お前は独房へ入れるからな。担いでいくぜ。」
は?おまっ。チョーシ乗ってんなよ?いやマジふざけんな。トイレが先だっつーの!
「こっこら!暴れるな!今の今までおとなしくしてたってのに、急になんだ!」
なんだじゃねー!もう人類が我慢できる限界なんかとっくに超えてんだよ!激おこなんだよ!激おこぷんぷん丸なんだよ!もう意味わからねーけどトイレに行かせろ!ください。我慢しすぎて腹が痛くなってきたんだよ!
「あっ。そうかこいつトイレに行きたいんじゃないのか?」
神が下りた。それ!そうそれ!お前マジ神。右のか左のか知らねーが、お前が俺にはトイレへの道を指し示すモーゼのように見えるぜ。
「行かせてやりたいのは山々なんだが・・・今から手続きやら説明やらで、半日は軽くどこにも行けんぞ?」
神は死んだ。
今から半日だと?十二時間?さっきまでと合わせて十八時間?何それ?膀胱炎になるわ、いやナノマシン先生がそんなこと許さないが。俺も許さない。
お願い・・・。嘘だといってぇ!
「着いたぞ。拘束具を外すからな、暴れんじゃねーぞ。」
おっ?おっ?おっ?自由来た?
がちんがちんと聞きなれない音を聞きながらも、少しずつ拘束具が外れ、空気に触れた手足が
息を吹き返すようだ。
「ぶはぁ!トイレはどこだ!ぜんいんころ・・・いや。トイレに行かせてくださいお願いします。」
全身全霊を込めて土下座した。これ以上ない位想いを込めた。もうそれだけで世界が救えるんじゃないかっていうぐらいお願いした。
「却下。では今から手付きを・・・ひぃっ!」
瞬間的にあり得ないほどの憎悪が湧く。一瞬とはいえ戦艦が揺れた様な錯覚を起こしたものもいたようだ。俺のまとわりつくような激しい憎悪は、目の前の年若い看守ともわしき青年に絡みつく。
「な・・・何をした・・・。貴様いったい私に何をしたんだっ!」
「黙れよ糞が!」
特に何もしていないはずだが、若い看守の体が宙に浮き、天井に叩きつけられた。
「ガハッ!」
意識を失ったようだ。
「お前たち。トイレに案内しろよ。右の。左の。」
「た・ただいま・・・!ごあんない・・・します。」
腰から綺麗に頭を下げた二人は、俺を囲む看守達を押し退け、進み始めた。
「待てお前たち!一介の護送官が、命令を無視するのか!」
「うるせぇ!黙れ!さっさとどきやがれ!俺は死にたくねぇんだ!」
「どかねぇとぶっ飛ばすぞ!」
俺が感じたモーゼは、自らの力によってなされた。最初から力を振るっておけばよかった。
ようやくたどり着いたトイレは非常に清潔に保たれていて、とても新しい空気がした。
「お前たちも来いよ。護送官?ってやつなんだろ?」
「わかった・・・だから!」
「何もしやしねーよ。ただの連れションだ。」
あーーーーーーーーー・・・・。
とまらねぇ・・・・。
「おい・・・あんた大丈夫か・・?止まらねぇんじゃねぇか・・・?」
「なんせ六時間以上我慢していたからな・・・。そりゃもう満タンよ。」
「そういうもんか・・・。」
さっさと終わらせた右のと左のは、手を洗い俺のほうからじっと俺を見ているみている。
「あんた何でここに来ることになった他のか聞いていいか?」
「殺人らしいよ。」
「他人事だな。」
「実際に死んだのを確認できたわけじゃないしな。だが心当たりがないわけじゃない
だから来たってこと・・・っと。やっと止まったか。」
センサー式のトイレは離れると勝手に水が流れるのは良いな。たまにあるだろ?
押している間だけ水が出るようになっている奴。あれはちゃんと意識して押さないと、
ちょろって水が出るだけで、全然流れないままでほったらかしにしていくことになるんだぜ?
トイレが臭くなる原因の一つってやつだ。ちゃんと流れたか確認すること、これ大事。
「どっちにしてもここに来るような話じゃない気がするが・・・」
最新式の手洗い場もいい。石鹸と水が同時に出るようになっているのか・・・。
「お上の鶴の一声でも出たんだろ?まぁおりゃ早々死なないだろうから別にいいかなって。な?」
「いいのかよそれで・・・。」
このエアータオルってのもなかなかいいな。うちの会社には導入されていなかった。
乾燥肌の人にはお勧めできないが。
「それに、こういう所のほうがいろんな情報を入れやすいからな。」
「なんだ?情報屋か?わざと捕まったのか?」
「わざと捕まったのは確かだが、情報屋って訳じゃない。俺が情報ほしいのよ。」
そうかっと呟くと二人は先にトイレを出た。
「あいつら良いやつだな。」
そして受付に戻ってきた俺たちは、その場にいた全員から銃を突き付けられることになっていた。
「動くな!これ以上勝手な真似はさせんぞ!」
「膝をついて後ろを向け―!」
「御用だ御用だぁ!」
ツッコミどころ満載だな。最後の奴はいったい誰だよ・・・。
「トイレ行ってきただけじゃねーかよ。しかも今迄トイレに行けなかったのは
お前たちのせいなんだからな。」
「ふざけるな!そんな自由がお前達にあるわけないだろう!」
あぁ・・・いかんいかん。ちょっとイラッときた。
「お・おまえ!さっきのはもうよせよ!」
「下手すりゃ死んじまうって!」
みぎの・・・ひだりの・・・。やっぱお前ら良いやつだな。だがこいつ等はちょっと、今の俺の触れちゃいけない部分に触れちまったみたいだわ。
俺に自由がないだと?ふざけやがって。
「何をこそこそしている!さっさと膝を・・・ひぐっ!」
ははは・・・なんか感覚で掴んじゃったわ。コツをつかんだってやつ?
意識的に殺気というか怒気のようなものを向けると、面白いように刑務官たちがビクンビクンし始めた。
「「エロい。」」
右の、左の、それは分かってても行っちゃだめだ。心の中に収めておきなさい。鼻の下が伸びちゃってるぞ。
「女。誰の自由がないって?もう一遍言ってみろや。」
俺は練習するように、一人の看守をビクンビクンさせながら横柄に尋ねた。
「き・貴様に決ま・・・っく!・・・ひぃぁ!」
なんか声に艶が出てきたな・・・。こいつはひょっとして・・・。
「俺が言うのもなんだがそろそろやめてやらねーと。後で面倒にならないか?」
「む?うわっ面白いことになってんな!」
刑務官たちのいる床の上は、もうモザイクなしでは語れない惨状になっていた。
臭い。
「なんだぁ?くっさいもの垂れ流しやがって。トイレけよトイレ!あんな綺麗なトイレあるんだろ?使えよみっともない。」
ちょっとすっきりした。このへんで勘弁しておこうか。
「ぐすっ・・・。貴様のせいだろうがぁ!どうしてくれるんだ!まだ仕事中なのに・・・・。」
「そこまでにしないか。」
場の引き締まるような凛とした声が響き渡ると、相変わらず床は見せられないよといった状態だが刑務官はお構いなしに姿勢を正し、その声の主を迎えた。
「いったいなにがあ・・・げぅえほっげほっ!臭い!」
この場に踏み込んだが最後、悪臭漂う刑務所の入り口に、ドン引きしながら、彼女は歩けるであろう場所を探していた。
「よっと・・・。君いったい何があったか報告しなさい。」
「はっ、新しく来た囚人が暴れました!」
「普通に嘘つくんじゃねーよ!」
イカンつい突っ込んでしまった。
「ふむ。では君は何をしたのかな?」
「トイレに行ってきただけだ。邪魔してきた奴がいたんで押し退けたけどな。」
「押しのけたか・・・。それはよくないな。君は刑期を・・・?」
すると彼女は部屋の隅っこをずりずりと背中で擦りながら俺に近づいてきた。
「君はもしかすると、ギンガ・アマミヤかな?」
「そうだが。」
「やっぱりそうか!待っていた!待っていたぞ!」
急に両手を掴まれた俺は一瞬身構えたが、ブンブン振られるがままに付き合うことにした。
「詳しい話はここではしたくないから私の部屋に行こう。」
あらら。刑務官たちが胸に手を当てて涙目になっている。
「いいのか?」
「いいのいいの!手続きはもう実は終わっているから、迎えに来たの!」
何か急に幼い感じになったな。後ろについて開いているときに彼女を見ていると。
なんだかアンバランスに見えて、不思議な感じがする。
「お前たちはもう帰ってもいいんじゃないか?」
「「そういうわけにはいかんだろう!!」」
「お前に脅されたとはいえ、おれたちゃ越権行為をしちまったわけだし。」
するとくるりと彼女は振り向いてムフフと笑う。
「むふふー。気にしなくってもいいよー?君たち二人にも、手伝ってもらうから。
それでチャラね!」
「何をさせられるんだか・・・。」
到着した先は向かい合わせのソファーに小さなテーブル、デスクとキャビネットが一つあるだけの、割と質素な部屋だった。
「すわってすわって!」
「あぁ。」
促されるままに座る俺たち・・・むぎゅ。
「お前たちは仕事だろ!はさむなよ!」
「おっと・・・ついつい。」
「仲良しだね?」
急速湯沸かし器からティーパックの入ったカップにお茶を注いでくれた。
「天然のお紅茶なんだよ?パックだけど。」
「紅茶も久しぶりに飲むなぁ。いただきます。」
俺が熱い紅茶をすすっていると、眉間にしわを寄せて困った様子で、現状を教えてくれた。
「君のことは実はロペから聞いていたの。何年も前から。」
「えっ?何年も前から?」
「うん。だから他人って気がしなくてねー。私たち幼馴染なのよ。生まれた時からご近所さんでね?ずっと一緒に育ってきたの。そしたらハイスクールに行ってた時かな?急に君のことを話してきたのよ。」
「いったいどんなことを・・・?」
「それがね・・・。」
世間話をするおばちゃんみたいだな、すっげぇ嫌な笑い方しやがる。
「むっふ。ロペの体を嘗め回すように見ていたとか。」
「ぶっふ!」
折角の紅茶を吹いちまったじゃねーか!
「痴女扱いされたとか。あられもない姿を見られたとか?」
「どういうことだよ・・・。」
「ふふふ。それはそれ。今日話したかったのはそういうのとはちょっと違うの。」
急に真面目な顔に戻った。さっきまでのお転婆な感じも可愛かったが、仕事モードもなかなかいいな。
「惚れた?」
「まぁな。」
「ぅえっ!」
顔が真っ赤になった。大丈夫か?
「ま・・・まぁその話はまた後で・・・しようね?そういう話は終わりっ!仕事の話なのよ!」
「どーぞ。」
彼女は紅茶を一口すすって話始めたないように、俺は眉をしかめた。
「この監獄戦艦ヘルフレムでは今、あなたの力を欲しています。あなたという存在の真実は私個人は、ロペから正しく聞いています。ただ、私は転生者でも転移者でもないわ。」
「どう正しいのかわからんが、面倒な事なのか?」
「面倒・・・そうねとても面倒。いまこの監獄の中は、今までにない位凶悪な犯罪者が大勢収容されています。しかしこれはロペ・キャッシュマンいえ、管理者ベロペによって仕組まれた状況なのです。」
「管理者ベロペ・・・?どういうことだ?」
「ここに集められた囚人の中で、ほぼ冤罪で入れられた者もいますし、今まで放置されていたようなレベルの凶悪犯罪者も、近年突然逮捕されて収容されています。」
「それが俺と何の関係が。」
「ロペは言っていました。彼ならあいつらを抑えてつけてコントロールできると。」
「押さえつけてコントロール?何かさせる気なのか?」
「そういう事です。では前置きはこのぐらいにして、本題に入りましょう。」
「お・おう。」
若干イラついているな俺・・・。イラつくようなことはないはずだ。転生して、人生やり直させてもらってそのお返しにすることだ。そうだ。俺の自由を奪う事じゃない・・・はずだ。
「監獄内に居る凶悪犯罪者を討伐、若しくは連れて行ってほしいのです。」
「は?」
「ですから・・・。」
「いや討伐って、ここ監獄なんだろ?そいつらを入れておくのが仕事だろうに。」
「問題ありませんよ。この中に囚人がいるという事は、お金がかかるという事ですし、何より数が多すぎるのです。」
「そんなにか。」
「はい。この船の収容区画には現在約7万人もの犯罪者がいます。」
「な!七万人!?ちょっと多すぎじゃね?」
「そうなんです。多すぎるんです。食費だけで一体幾らかかるやら・・・。運営も手が回らないのです、刑務官の数も圧倒的に足りていません。そんな状態では監獄としてそもそも機能できないのですよ。」
「だから間引けと。」
「そうです。ですがそれはあくまで貴方の気に入らない受刑者だけでいいのです。気に入った者たちは連れて行ってもらって結構ですし。」
「連れていくっつったってよ。どこにって話なんだが。」
「まぁ・・・何とかなります!」
「いやならねーだろ。」
「だいじょーぶですって。いざとなればグーで殴ってやればいいんですから。」
スッゲ―嬉しそうに言うなこの人は・・・。
友達作るのってそんなに得意じゃないんだよなぁ。
「まぁ恩返しと思えば。いいか。やるよ。好きにやっていいんだろ?」
「もちろん!あっ!でも・・・。船は壊さないでね・・・?この船壊れちゃうと、私が監獄に入れられちゃうから・・・。」
「そうなのか?」
「うん・・・。この船は外宇宙から流れ着いてきた難破船だったの。多くの研究者がここを調べたいといってきているわ。そんなものが壊れたとなったら・・・。でも今はそれどころじゃないから、断っているんだけれどね。」
「いったい何を調べるって言うんだ?」
「この船のエネルギーだね。今のところ無尽蔵に出るんじゃないかって言われているのよ。」
「永久機関・・・か?」
「かもしれないってこと。だから壊したらだめだよっ。」
「わかった。じゃあ今からどうすれば?」
「ちょっとまって・・・。」
彼女はデスクへ行くと引き出しのなかから、腕輪のようなものを三つ出してきた。
「腕輪か?」
「そぅ。受刑者用のバングルだよ。位置が特定出来たり、スピーカーが付いているから、コラッていえるよっ?」
スピーカーの役目ェ・・・。
受け取ったバングルをつけると付けやすいように開いていた部分が閉まり、完全に外せなくなった。
いや、壊せるけどね。
「あと二つは?」
彼女はニコニコして結局後ろで立っていた二人にもバングルを渡した。
「俺たちも付けるんすか?」
「付けてないとおかしいでしょうよ。」
「中に入ることは確定事項なんですね・・・。」
二人はぶつくさ文句を言いながらもバングルをつけ、ポージングをしていた。
「このバングルは特別なもので、三人と私で通信が出来るの。便利よ?」
「ほう。それで報告すればいいんだな。」
「うん、何かあった時だけでいいからね?あと何かしてほしいとき。」
「ほぅ?してほしいとき。」
「で・・できる範囲でね?」
「よしっ。よしっ。」
「出来ることだけだからねっ!?」
「おっけーおっけー。俄然やる気が出てきた。・・・と、そうだ。俺からも一つ条件を出していいかな?」
安請け合いはしない。俺がこれからの俺のモットーだ。
「なにかな?」
「全部うまくいって俺がここから出たら。俺の女になれ。」
「うえええぇええぇえええ!」
顔面が真っ赤になって叫びだす彼女、そしてマッチョたちはひそひそ話だした。
「むむむむむ・・・うぅぁ。」
「あらやだ奥さん聴きました?女になれですって。」
「若いっていいわねー。」
「返事は?」
ティーカップをカタカタ鳴らしてぶつぶつ言っている彼女を正気に戻す為に、顔を両手でやさしく挟み込んでみた。
むぎゅ
「にゅーーー。」
「どーなんだ?」
「あにゃた、ロペのダンナでしょーいちおうー?」
「名義はそうらしいな。で?」
「・・・。あなたがそれでいいなら・・・。」
「「マジか!」」
「よし決まり。辞表用意しとけよ。俺はここから出たら冒険の旅に出るんだからな!」
勢い良く立ち上がったところでふと気づく。
「さあ行こうかって一人で歩いていたらおかしいよな?」
「んっごほん。案内します。大丈夫だと思うけど一応気を付けてね・・・?」
「いざとなったら本気出すさ。」
「「「それはだめだって!」」」
三人から一斉にだめだしされるがまま、彼女の後をついて行く。
「そういえば、あんたの名前を聞いてないな。」
するとおどけたようにこちらを振り向いて照れ笑いかな?かわいい。
「ごめんなさい自己紹介が遅れちゃったわね。私は、ゼルミィ。ゼルミィ・ゼフィルードです!これから末永くよろしくね?」
なんか名前が超カッコイイ。スーパーロボみたいだ。
「雨宮銀河だ。知ってると思うがよろしく。」
「俺は!・・・」
歩き出す彼女について行く俺。
「いいのかあれ?一応聞いておきたかったんだが。」
「なんとなくノリで歩き始めちゃった・・・。テヘペロ」
「「ひどいな二人とも!」」
ーーーーーーー
「ううぅ・・・ひどい辱めを受けた・・・。」
全くなんだというんだあいつは!ギンガ・アマミヤとか言ったか。
脱糞なんて生まれてこの方初めてしてしまった・・・・。もうお嫁にいけない・・・。絶対責任を取らせてやる!
シャワールームを出た私は、着替えながら隣で着替えている同僚に話しかける。彼女も先ほどの惨劇の場に居た一人だ。
「ひどい目に合ったね・・・。」
「全くよ。あなたが余計なこと言うから・・・。」
「えっどういうこと?」
なに?私のせいなのか?
「そうよ。私はこれでも猫獣人ですから。相手の心の機微には敏感なのよ。」
「そういえばそんなことを言っていたわね。」
「そうよ。彼はきっと拘束されることを何よりも嫌っているのよ。」
「よくそんなことまでわかるなぁ。」
「まぁ、一応カウンセラーだし。ね。」
そうか・・・。私は無神経だったのかな・・・?
「今ここの受刑者は、おそらく冤罪だろうっていう人も結構入れられているから。多分彼もその手の人なんじゃないかなぁ。」
その噂は私も聞いたことがある。なんでも当りやにぶつかったら、当たられた方が逮捕されたとか。最近テレビのニュースでもよく聞く。警察はおかしくなってしまったのかな?
「んもう。そこまで考え込むことじゃないでしょ?私たちはあくまで刑務官!警察とは関係ないの!」
そう、今のこのヘルフレム監獄戦艦は、独立して運営されているのだ。それはなぜか。警察関係者を逮捕するためにだ。
しがらみを完全に断ち切ることで、全ての犯罪者を受け入れられる、そんな監獄がここだ。脱獄不能なんて言うのもよく聞く話。昔ドワーフ種の人たちが、ここを大改造して、絶対脱獄できないような機能を詰め込んだらしい。でもしょせん、私はただの給食係。訓練は受けているけど、
それだけだ・・・。
「余計なことしたかな・・・?」
「そうだねー。」
「あの人怒っているかな・・・?」
「たぶんねー。」
「許してくれるかな・・・?」
「大丈夫でしょ?」
「えっ何で?」
「ふふーん。だって彼、女好きでしょ!」
「そうなの?」
「だいぶくねくねさせられてたじゃなーい?」
ぷぷぷーって。そそそ、そんなにくねくねしてたかな!?
「もうエロッエロだったよ。動画に収めたいくらいだった。」
「忘れてください・・・。」
「あっはっはー!って。何に着替えているの?」
「あなたもこれに着替えるのよ?」
私が差し出したのは、ゴム手袋とゴム長です。胸まであるゴムの長ズボンですよ。これからのことを考えると気がめいります。
「えっなにこれ?ゴム長?下水でも行くの?」
「受付です。」
「あ”っ」
「私たちで掃除しなさいって先ほど言われました。」
「嘘でょ?マジ?やだぁー。」
「私だっていやです!でもその・・・自分でも・・・ごにょごにょ。」
「うっ・・・それはそうだけど、花も恥じらう乙女の仕事じゃないよぉ。」
「我慢してください!」
かっぽかっぽかっぽ
掃除用具一式を持って、私たちは戦場へ向かいます。そのほか数人の仲間と共に。
「「「汚物は消毒だぁぁぁ!!!!」」」
私は下っ端刑務官セイラー・ミミル!いざ参る!
ゼルミィ・ゼフィルード 32歳独身。太陽系連合軍警察より出向しているヘルフレム監獄の所長
人種と獣人のクオーター。祖母がスノータイガーの獣人で、本人は人種と比べて非常に爪が鋭くかたい、そして白い毛におおわれた尻尾が生えている。
ロペ・キャッシュマンの幼馴染で、軍人と刑務官になる前まではずっと一緒に活動していた。ロペが信頼する数少ない現地人の一人で、自身の秘密も打ち明けている。
ロペが世界の管理者であることを知ってなお、普通の幼馴染としての付き合いを変えなかったことが、ロペにとっては信頼に足る人物の証拠となっているようである。
胸は控えめだが主張は大きくが心情。組織のトップという関係上舐められないように常に気を張って仕事をしているが、雨宮やロペの前では地の部分が出てしまうようで甘え倒してくることもしばしば。
実家のゼフィルード家は、スペースワーカーというパワースーツの開発販売会社であり、自身も娘の特権を生かして、実家から新型のSWを借り受けたり、型落ち品を安く買い入れたりしている。その為、少ない人数で運営しているヘルフレム監獄がSWだらけになり、刑務官は全員SWの免許を取らされることになった。
監獄にて雨宮に会う前から、ずっと雨宮のことを聞かされていた彼女にとって、雨宮の印象はあまり良いものではなかったが「実際にあったとき、物語の主人公にあったようなヒロインのような気持ちがわいてきたの。ビビビッって。」とは本人の話。
常に腰から二つの改造スタンバトンを下げており。囚人たちはブルーバトンゼルミィと呼んで恐れている。
二つのスタンバトンは出力を市販品の3倍以上に高めており、最大出力で使えば即死は免れないとされているが。それはあくまで一般人に対してであり、
ヘルフレム監獄に収監されるレベルの犯罪者に対しては、しびれて動けなくなる程度のものという事らしく。本人はもっと出力を上げてもいいんじゃなかろかと思っているらしい。
右の 26歳既婚者。人種と熊獣人のクオーター。
獣人の血は薄く見えるが熊の特徴も強く残っている。幼いころから体が大きく、同じ年齢の人種の二倍近い身長であったことから、幼いころいじめを受けていた経験がある。だがその頃から片時も離れず共に過ごしていた、幼馴染のハーフメロウの彼女と、18で結婚、5人の子供に恵まれる。
共働きで働いているが生活は火の車。一番上の娘に習い事をさせてやりたいと思うがなかなかままならないと、転職を考える日々が続く。
軍警察での階級は軍曹。しかし今回の件で首になるかもしれないと内心気が気ではないようだが、雨宮の自由な生きざまにほれ込みついて行きたいと考えている。
左の 年齢29歳独身。もと火星やくざの生き残り。純粋な人種。
火星帝国のスラム生まれ、チンピラを経てやくざとなったが、テロに巻き込まれ組が解散になり、一時冒険者となりダンジョンに挑んでいたが、元やくざという肩書のせいでパーティ―に恵まれず、やむなく引退、軍警察の試験に合格したためそのまま就職し今に至る。
幼いころから大きな体を生かして好き放題やってきたが、軍警察にて左のと出会い、訓練にて叩きのめされる。
そのあとはパートナーとして犯罪者を護送する専門家として護送官になったが、さらに恐ろしい強さを持っているであろう雨宮に出会い、協力しようと心に誓った。
強いものに巻かれる性格をしているせいか、プロレスが大好き、自身もいつかリングに上がってみたいとひそかに思っている。
最近右のの子供たちの写真を見せられのろけられることが少しうざくなっているが、結婚願望が日に日に強くなる自分にも気づいており婚活でもしようかと考え始めている。
セイラー・ミミル 28歳独身。ヘルフレム監獄のやとわれ刑務官。元冒険者。
水星宙域に存在する、居住コロニー『ヨーツンヘイム』出身の元冒険者。幼少時は普通の女の子であったが、ある時を境に急に冒険者に目覚める。
水星ダンジョンに潜り、奇跡的に天使や巨人と渡り合う力に目覚め、天使巨人同盟との間の和平交渉をぶち壊しにしてしまう。
ダンジョンで手に入れた神話級の武具を身に着け、天使巨人を惨殺し、一時第一層とされているヴァルハラ平原の生きとし生けるものを皆殺しにしてしまった。
このことで、冒険者ギルド水星宙域支部から水星ダンジョンへの探索禁止命令が下される。
第一層で当時何があったのかは本人は一切語らないが、その後から憑き物が落ちたように、穏やかな性格となり、普通の就職活動を始める。
しかし、冒険者ギルドから流れた悪評は消えず、バーサーカーミミルと呼ばれまともな企業には相手にされなかった。
そんな中、実力のあるものを求めていたヘルフレム監獄からスカウトされ、今日に至る。
しかし、あまりの忙しさにもうちょっと休みがほしいとぼやくようになった。
純粋な人種で、育ちも普通な彼女のようなものが突如未知のパワーに目覚めることはまれによくあり、それもダンジョンに潜っているものが大多数を占めることから、
彼女たちのようなものを分けて考えようとするものも現れ始め、ハイヒューマンや、超人種と新たなカテゴリーが模索されている。
ヘルフレム監獄
脱獄不可能とされる隔離施設、主に凶悪犯罪者、殺人者等、カテゴリーA~SSの犯罪者が集められている。収監されると二度と出られないという噂。ここに入れられる犯罪者は、総じて純粋な力のあるものが多く、普通の刑務所では実力で簡単に脱獄されてしまうためここに送られる。
また監獄内の刑務官の強さも常軌を逸しており、並の犯罪者では太刀打ちできないものしか採用されないという。