EP42 逆走する乙女達
もう梅雨も終わったのに今度は台風の雨で憂鬱ですなぁ。
おもろいと思ったら・・・おもろくなくても評価ポチってね?
きっとですよ?絶対ですよ?お顔は覚えましたよ?
評価しないとおうちまで付いて行きますよ?(嘘)
「電子介入・・・分解!」
コッファは紋章術によって自らの手の甲に刻み込んだ電撃の魔法を使い、強制的に界獣の内部に侵入その存在を分解した。
「・・・。七番艦の皆って恐怖って言う感情がないのかなぁ?」
時間が惜しいというロペの提案により、海王星ダンジョン九十九階より全力ダッシュで上りの階段を発見道すがら全員で手分けして次々と界獣を分解していく。
「この新しい力は危険ですね・・・。でも・・・気持ちいいかも。」
そう言いながら片手間に視界に入る全ての界獣を分解していくシーニャは進化前から得意だった軽業師のような身のこなしで、壁やら天井やらを駆け回り余すところなく分解を続けていく。
・・・。
雨宮はがっかりしていた。事前に聞いていた分期待はしていなかった。していなかったのだが、正規のルートで攻略するでも無く冒険者としてきたわけでも無く、唯々分解しサーバーへと強制送還していく。
それだけの為にダンジョンに来た。その現実が雨宮にはとても辛い。しかもこのダンジョン、必要なのは分かっているのだが非常に長い・・・と言うか一層が非常に広いのだ。
「生身で踏破するには何年時間が掛かるか分かりませんねぇ?」
若干遠くを見るような目で辺りを見回し、地平線も無い彼方を見つめていながらも、手を休めず眼前に広がるギッチギチに詰まった超巨大界獣を分解していくアトばぁ事、アト・レイギントー、御年八十五歳・・・だった女。
「生まれ変わったんだからゼロ歳ですぅー!」
と言い張ってはばからない。
「アトちゃん?火風はおばーちゃんでも気にしませんよ?」
「誰もそんなこと聞いてないんだよっ!」
七番艦ではよく見るやりとりをこなすもう一人は・・・俺にとっては只の不思議ちゃんだった火風小和前世からの知り合いだ。昔は突然顔を真っ赤にして発狂するなど、奇行の目立った彼女だったが根はとても良い奴なのだ。
何度も助けられた覚えがある。
もう何階層上ったかも覚えが無いぐらい広い広いダンジョンを上って上って・・・分解して分解して・・・。時に何故か目くらましのトラップが生きていたり、落とし穴で何故か前の階層に落とされたり、四角く切り取られた床がバネのように跳ね上がり、天井に叩き付けられたり、流石にこれだけ隙間無く界獣の詰め込まれたダンジョンで、罠が生きているとは思いもしなかった。
そんな罠の中には、忘れかけていたが最深層ならではの致死性の高い罠が目白押し。
「あぁ!ジュリオーネママー!!」
そう叫んだコッファが見上げる先に数ミリ直径で出来た、あり得ない程密度の高い針で出来た釣り天井によって蜂の巣状態どころか粉微塵ににされた元巨人主婦ジュリオーネの姿があった。
「死んでいるかー?」
「意識はありまーす。」
「ねぇそのやりとり何なの?どういう意味があるのぉ?治してあげようょ?てかその状態で意識があるってどういう事なの?」
ロペが思わず気を遣ってしまう程の惨状に若干微笑ましいものを感じながら、俺が心血を注いで生み出した新しい人類達は張り切って前へと出る。ジュリオーネはナノマシンの自己再生能力によってあっという間に元の姿に戻った、
「わっぷ!」
ザッパーン!
界獣を分解して出来た隙間に躍り出たコッファの足下がパカッと開き、又落とし穴か・・・と思った全員の期待を狂ったように裏切ってくる海王星ダンジョン。
「さ・・酸だー!!」
じゅわじゅわと煙を上げて沈んでいくコッファだったが・・・。
「分解無敵です。」
と、どや顔で両手をビシッと広げ酸を分解し空中に一瞬静止したように見えたが、底の無い穴へと落下していった。
「これ下の階に降りていったのかねぇ?明らかに上った階段よりも高さがあるんだけど・・。」
そう言うロペについ俺は突っ込んでしまうのも仕方が無い。
「お前が作ったンやろ!」
「ちがうょ?」
あれ?
「どういう事?」
ロペに寄れば、ダンジョンというのは言わば一匹の大型モンスターのようなものらしい。俺はてっきりロペとか、ファムネシア当たりが作った物なのかと思っていたのだが。
「作る事も出来るけど、管理がめんどくさいから大体はダンジョンはモンスターとして自然発生させる・・・んじゃ無かったかなぁ?」
曖昧な言い方をするロペはこういう話をしながらも、少しずつ前世の記憶を取り戻しているようで、探り探りで話をする癖が付いたと愚痴っていた。
猛ダッシュで戻ってきたコッファは現在の四十階層から八十階層まで落下し、何もいないダンジョンを走ってきましたと報告してくれた。
「思ったより全然深かったなこの罠・・・。生身の人間が生きていられないレベルだなこれ。」
と言うか逆走しているせいで若干判断基準が厳しくなっているようなそうでも無いような?最初の方が致死性の高い罠がもっと多かった。
だが今は所謂中層程にまで上ってきた事もあり、一拍は考える余地のある致死性の罠に切り替わっていた。
だがその一拍でドヤることで彼女は落下していったわけだが。
「気をつけるように。下の階層で砕け散ったんだからな?お前。」
「はいー。」
ポリポリと頭を掻き破損した装備を修復するコッファは、よほど慌てていたのだろう、修復することを後回しにしてダッシュで戻ってきたのだ。
「若干罠がヌルくなってきている、地上・・・えっとネプトラティアか。迄もう少しだ。」
・・・ネプトラティアの名前を出したことでふと思い出す。
「ネプトラティアは大丈夫なのか?モンスターが暴れていたりしないのか?」
ロペは端末を少し触るとせわしなく表示された状況報告の推移を分析する。
「今はまだ問題なさそう。でも一般クルーの娘達が疲労困憊って感じかなぁ?ここで眷属のクルーと入れ替わったら多分瓦解するかな・・?」
ロペが言うには、ブリッジクルーはマギアシリーズの性質上機密情報が多すぎる為に眷属以外のメンバーを排除してある。それが何を意味しているかというと、眷属達が表に出て戦うとブリッジが空になり、戦術支援がストップする。
すると外で戦っている一般クルーは撤退こそ出来ても、まともに休息出来ずにマシンの補給だけ済ませて飛び出していく羽目になる。そんなことになるぐらいなら普通に増援を出す方が建設的だと、ロペはそう判断した。
「寧ろ入れ替えてしまった方が良いか。ラムとブロアをレムルとベリスに交代、同じ状況下での実戦を行うか。」
「それが良いかもね。ラムとベリスは白兵機動戦の方が若干数字が良いけど、レムルとベリスは逆になりそうな予感がするねぇ。」
三番艦レムルと四番艦ベリスの艦長は二人とも元連合軍のエリート士官だ、艦隊運用や戦術運用についてはロペやアミィから太鼓判を押される程の実力が身についている。
頭でっかちになっていなければ良いんだがなぁ。
リトリナもイオリスも他の候補を寄せ付けない程の力を見せつけて艦長の座を勝ち取った実力派だ。
他にも多くの元軍属の士官やその候補生達、現役の上級将校だった者達までいる中、その能力は頭一つ飛び抜けている二人、そして初期の頃に問題児を預けた経緯のある四番艦ベリスは生まれ変わったかのように士気が高い。
なぜならあの艦には七番艦で雨宮のおもちゃになり生まれ変わった者達が、多数存在していることも戦力の高さを表す一因としても考えられる。
四番艦は七番艦に次ぎ眷属の比率が高いそれもそのはず・・・と言うかペナルティを受ける馬鹿の数が飛び抜けて多かっただけなのだが、今となってはそれが良い結果をもたらしている・・・筈。
三番艦は逆に優等生を集めた絵に描いたようなエリート集団だ。爽やか系で尚且つ真のエリート、ノブレスオブリージュを地でいくような優秀な者達を集めた。
真のエリートは応用力が高く汎用性も高い。又それを更に高める専門性を追求する向上心まで持ち合わせた・・・外から見ればカルト集団のような・・・凄い奴らの集まりだ。
だが実情を知れば只のスポ根女性の集まりだと分かるだろう。決して努力を怠らず、目的の為には手段を選ばない非常さをも持っている。それでいて弱者へと手を差し伸べることを躊躇わない勇気。
・・・。実は彼女達三番艦の存在も雨宮をかつて悩ませていた要因の一つであった。
雨宮が上位世界の存在に隔離されていたことがあったが、その原因を紐解きその糸を辿っていくとどの可能性を試しても必ずレムルに行き着くのだ。
雨宮はその時初めて勇者という存在の特殊性に気づいた。勇者とは上位世界の手駒であると同時に、レーダーであり目であり耳であると。
その事実を確認した後の雨宮は、全クルーの中から勇者の素養のある者全員を三番艦に集め、逆に監視をすることになった。
しかしそれ以外にも勇者の素養のある者が何故か銀河旅団には無数に存在しており、眷属化していない一般クルーの中にもその存在が確認されている。
もしかするとこれは異常事態かもしれない?と雨宮は考えロペから再度勇者と魔王に関する情報を聞き出した。
すると以前聞いていた勇者と魔王のシステム的なつながりとは別に、この世界で勇者が大量生産されていることの理由をロペが思い出した。
何のことは無い。元々そういう風に作られた世界だったと言うだけだ。勇者を量産しシステムに供給する。そう言う要素が勝手に付け加えられていただけだったのだ。
ベロペであった頃のロペはこの事実に気がついていたが、その時は戦力が増えるだけだと楽観視して特に何の対策もしていなかった。
この世界のシステムは上位世界に若干良いように弄られているのかもしれない。しかしファムとネシアを通じ、雨宮はこの世界の勇者達とシステムとの繋がりを完全に遮断することに成功した。
ナノマシンの情報ではこれのせいで、この世界にはぐれ勇者なる危険な存在が無数に生まれた可能性があることを確認出来る。
以前のエトラのように自我を失って、違反者に襲い掛かるのでは無く、そのルール自体を参照出来ない勇者とは一体どういう動きをするのか?
もしかすると無分別に辺りを破壊しているかもしれないし、誰彼かまわず襲い掛かっているかもしれない。しかし今のところそう言うニュースはこの世界には無いようだった。
現段階での雨宮のはぐれ勇者への対応は特に何もしない。に決まった。
レムルのクルー達にも特に変化が無いことからも、慌てて対応する程のことでは無いし、既にこの世界において上位世界からの直接的な干渉は不可能な状態になっている。
それを確信出来ている雨宮だったが、以前のことを忘れている訳では無い。寧ろ結構根に持っている。
しかし色々と忙しい今は、今だけは見逃しておこうと、偶々システムで操ったのが当時雨宮の側にいなかったエトラだったことの一点において、身内に干渉したのでは無いことを許すべき根拠とし一時的に保留という措置を執った。
雨宮の煮えたぎる思いは今もサーバーの奥底に黒い炎をたぎらせたまま封印されている。
「銀河きゅん?」
「む。ちょっと考え事だ。」
「よそ見して歩いてると危ないょ?」
そういうのはフラグだろ。
雨宮の足が空を切り今迄何も無かった足下に突如落とし穴が口を開けた・・・。一瞬焦った雨宮だったが、雨宮が罠に掛かった瞬間ロペを除く他の五人が雨宮の体を支え。傘の骨のように五人が雨宮を周囲から押さえ、宙ぶらりんになったままで暫く沈黙が流れたが、落とし穴の口が自然に閉じ五人は雨宮をゆっくりと地面におろした。
「もっと他の方法は無かったのかと。」
人という字は~とロペの脳裏に房人気ドラマの名台詞がリフレインされている。
(何で全員手のひらで銀河きゅんを押さえたかねぇ?)
何とも言えない表情で分解を試しながらロペは首をかしげる。
パンパン
「ほら。もう上層に着くんだからシャキッとしろよ。外の討伐が終わってなかったらそのまま分解して情報ゲットだぜ?」
雨宮はまだ見ぬモンスター達に思いをはせ、ロペの後をスタスタと歩いて追いかける。
残された五人はお互いの顔を見た後、軽くため息をつき高鳴る胸を押さえながら苦笑いで場を濁した。
「勢い余って銀河さんを潰してしまうかと思ったのよ。」
「わかるー。咄嗟のことだったから加減が出来なかったんだけどねぇ。」
「この年になってこんなにドキドキしたら死んでしまうょ・・・。」
「アトばぁ・・・アトちゃんもうそんなに弱くないでしょ。先輩はそんなに簡単に死んだりしませんし。」
「いやぁ・・・焦ったけど結果的になんともなくて良かった。ちゃんと制御しなきゃなー。」
それぞれ自分の主である雨宮に対して攻撃をしてしまうのでは無いかと、無意識にナノマシンが反応し一時的に処分保留状態となり動けない状態になっていたのだが、特に雨宮が気にしていないことから彼女達にペナルティは無いようだった。
うっかりミスで攻撃などしてしまえば、自分を許せなくなるかもしれないという思いと、雨宮本人を除いた眷属達のネットワークに定められた不可侵のルールの中、一番上位に定められた『雨宮を裏切らない』のルールに抵触してしまうのでは無いかと言う二つの思いが彼女達の作られた心臓に大きな負担をかけていた。
彼女達は雨宮のおもちゃであるのと同時に、最も雨宮から必要とされている存在でもある。その信頼を裏切ってしまった時のことを思うと、五人とロペはその後のことを考えて目眩がする程血の気が引いているのだった。
なんだかんだ全力で雨宮の体を押していた五人だったのだが、雨宮には普通に押されているのと変わらない程度にしか感じられないような強さであった為、宙ぶらりんになっていた状況が何とも気恥ずかしい。雨宮の中で子犬を抱っこした子供の姿が頭をよぎったりする位には不思議な時間だった。
「何だか気まずい空気だねぇ銀河きゅん。」
「おー。なんかよく分からんが足がぷらーんってなるの恥ずかしかった。」
雨宮達七人は界獣達をサクサクと分解し、表層階層八階まで一気に上り階層を一掃した後遠くから微かに音が聞こえるのを確認した。
「何の音だ?ここには界獣しかいないはずじゃ無かったか?」
「おかしいねぇ?その筈なんだけどぉ?」
外の音が聞こえることもあり得ないし、界獣以外が今此処にいることもあり得ないが一つだけ可能性がある。
「マスター。もしかしてモンスターがダンジョン内にポップし始めたんじゃ無いですか?」
コッファの言うことも確かにと、あり得る。
「そうだな。ここまで一掃してきたんだリソースとしてはもう十二分に空きがあるはずだ、その可能性もあるな。」
「だとしたら無抵抗の界獣達にモンスターが攻撃しているかもしれませんね?」
こんな浅い階層のモンスターが界獣相手に傷を負わせることが出来ることは無いとは思うが、逆はもしかしたらあるかもしれない。
俺が最初に分解した時のようにカウンターでもしていたら・・・。
「界獣のレベルが上がったりするのかな・・・?」
火風もその可能性を考えたようだが、分解の妨げにならないなら問題は無い・・・と思う。
「とにかく行ってみるか。」
「らじゃ~。」「「「「「ハッ!」」」」」
ーーーーーーーーーー
海王星ダンジョン七階層
其処はさながらプチ戦争と言った様相を呈していた。
大型の犬やら羊のような奴やら、腕が四本有る小人やら、色取り取りのスライムみたいなのもいる。そう言った一目で雑魚モンスターと思われるモンスター達が、必死に自分の住処を取り戻すべく界獣に戦いを挑んでいた。
「可愛いですねー銀河さん。」
「俺はあの青い色のぷにぷにが可愛いと思うな。」
「そぉう?私としてはあの犬は良い感じだと思うなぁ。」
「三人とも何だか現実から逃避していませんか?」
俺とロペとジュリオーネの三人は微笑ましい光景にそれぞれ自分のお気に入りの選定を始めていたが、火風によって現実に引き戻された。
「何の問題もなさそうだな。」
「うーん。特に反撃もしていないみたいだし、攻撃されても一切効いていないみたいです。」
「レベルに差がありすぎる・・・とかそう言う問題でも無い。次元が違う。」
流石にレベル持ちのモンスターとはいえ、一とか二とかそんなレベルのモンスターが三桁を超える界獣達に何が出来るかという話だ。
万が一にも奇跡なんか起きない。ゼロパーセントの勝率は奇跡が起きないことを意味しているのだ。
「ふーむ何だかモンスターはかわいそうだから界獣だけ分解してさっさと外に行こうか。」
「「「「「「はーい。」」」」」」
すっかり毒気を抜かれてしまった俺達は、気づいたモンスター達に小突かれながらも、全くダメージを負わないこともあり完全に無視して界獣達を分解し、漸く一階層の入り口に到着した。
ーーーーーーーーーー
俺達の周りには保育園よろしくの状態で、スライムみたいな奴や七階層で見かけた犬よりもっと小さい犬たちに囲まれていた。
「何だか動物カフェに来たみたいですねー。」
「癒やされるねぇ。」
ガジガジと必死にかみつく小型犬たちの攻撃・・・と思われる行動も俺達のナノマシンにとっては甘噛み以下。寧ろ若干くすぐったい。
「マスター・・・。」
コッファは自分の足に必死にかみついている柴犬のようなモンスターを抱き上げ、俺に見せてくる。
「何だ?連れて帰りたいのか?別に良いけどちゃんと面倒見ろよ?」
「やった!」
コッファは割とガチの犯罪者だったにもかかわらず・・・ってそれは関係ないか。可愛い物好きの集団の一員としても俺は認識している。
自作の動物キーホルダーなんかも俺にプレゼントしてきたこともある。特に犬は大好きらしい。
「君の名前は・・・孤独のジュリオで決まりだっ!」
「おい待て!」
なんだその名前は!孤独のってなんだ!
「ジュリオで良いじゃねーか!何で頭になんか付ける必要があるんだ!?」
「だってかっこいいし・・・。」
そんなこと無いと思うんだが・・・。
俺は周りを見渡して他の奴らを見てみるがそれぞれ気になるモンスターを探しているらしく味方はいなかった。
「まぁ好きにしろよ・・・。」
「よーし!マスターからもオッケー貰ったどー!」
俺がそう言って眺めていると、俺の視界の端にJOIN IN 孤独のジュリオ とナノマシンが表示してくれている。
なんだかなー。
クルーリストの新しいページが増え、テイムモンスターの一覧が表示される。
ーーーーー
孤独のジュリオ ゼロ歳 雄 リトルケルベロス 海王星ダンジョン コッファ・サナ・グレア
レベル 1
HP 10/10
MP 2/2
アビリティ
ころがる
ほえる
みつめる
ーーーーー
レベル一か。育て甲斐がありそうだなー。
そんなことを考えていると他の奴らも次々とモンスターを連れてきた。
「はいはい、皆自分でちゃんと管理しろよ。」
「「「「「「はーい!」」」」」」
ロペまで・・・。まぁいいか。
ーーーーー
ぷりりん ゼロ歳 無し ブループリリン 海王星ダンジョン ロペ・キャッシュマン
レベル 1
HP 5/5
MP 3/3
アビリティ
なし
ーーーーー
ーーーーー
ぷにむす ゼロ歳 無し ピーチプリリン 海王星ダンジョン アト・レイギントー
レベル 1
HP 8/8
MP 1/1
アビリティ
なし
ーーーーー
ーーーーー
ぷにざえもん ゼロ歳 無し レッドプリリン 海王星ダンジョン 火風小和
レベル 1
HP 2/2
MP 8/8
アビリティ
火属性魔法Lv1
ーーーーー
ーーーーー
ぷにとりーな ゼロ歳 無し ブラックプリリン 海王星ダンジョン ジュリオーネ・タ・マン
レベル 1
HP 105/105
MP 1/1
アビリティ
なし
ーーーーー
ーーーーー
ベクトル ゼロ歳 雄 リトルウルフ 海王星ダンジョン シーニャ・ヴェバル・ジュピター
レベル 1
HP 15/15
MP 2/2
アビリティ
遠吠え
ーーーーー
何だか一匹だけ妙に強いモンスターがいるんだが。あいつも一層のモンスターなのかな?
結局犬をつてきたのはシーニャとコッファだけで、他の四人は皆プリリンという丸っこいぷにぷにのモンスターを連れてきた。
「なぁロペ。黒いのだけ異常に強く見えるんだが・・・。」
「そうかなぁ?あぁスキャンデータのこれかぁ・・・。何でだろうねぇ?そんなに強くは見えないんだけどねぇ?見た感じ。」
色違いなだけでそれ以外の変わった所は見えないんだが、一匹だけ妙にHPが高い。
「ジュリオーネ。その黒いのは・・・ぷにとりーなは何でそんなに強いのか分かるか?」
そう俺が訪ねると、ジュリオーネはぷにとりーなとじっと見つめ合い、俺の方を向いた。
「わかんない・・・と言ってますねー。」
「分かるのかそれ・・・。」
「何だか頭の中で声が響く感じですかねー?銀河さんからのテレパシーにも似ているかもしれません。」
俺も一匹連れて行ってみるかなぁ・・・おっ。
俺は周りで全く効果の無い攻撃を繰り返しているモンスター達から離れた所に一匹だけちょこんと鎮座したプリリン?を見つけて抱え上げた。
そんなに重たくは無いな・・・。
・・・
ぷらーん
そう思いながらプリリン?を持ち上げた俺の腕にがっしりと歯茎をむき出しにしたままの犬が食らいついていた。
めっちゃ根性ある奴やな・・・。離れんぞ此奴・・・。
俺は片手でプリリン?を抱え右腕に噛みついた犬を、腕を振って放させようとしたが振った腕にしっかりと噛みつき腕ごとぶるぶるんと宙を舞う。
「はーなーせーよー。」
ちょっとなんだよこいつ、ホントに離れねーぞ?腕に歯が食い込んでねーか?
「銀河きゅんその子も一緒に行きたいんじゃ無いの?」
普通そんなだったらもっと大人しくしないか?こんなにがっつり噛みついてくる奴って有りなのか?
俺はプリリン?を地面におろし、犬の頭を左手でなでてみる。さわさわと撫で心地の良い小さな頭、よく見ると賢そうな感じもするんだが・・・何故こんなにも必死に噛みついてくる?
と思ったら今度は俺の腕から離れ、プリリン?の前に立ちはだかる。しかしプリリン?はその横をズリズリと避けて又俺の腕の中に収まった。
ーー
JOIN IN レンダ・ガーニー
ーー
!?だれ!?
このメッセージが出るって事はモンスターだろうけど・・・。
「おい誰だ普通の人と間違えそうな名前を付けた奴は。」
俺は皆に声をかけてみたがそれぞれ自分の見つけたモンスターと遊んでいて特にそれらしいものはいない。
「もしかしてお前のことか・・・?レンダ・ガーニーって。」
(はい。レンダです。よろしくお願いします。)
しっかりした子だ!じゃない。
「元々名前があるんだな。」
(不覚にも死んでしまいまして。転生したらプリリンになっていました。)
「そんなこともあるんだな・・・・。」
(因みにそっちの犬は私の姉のナーガ・ガーニーです。一緒に死んでしまいまして。姉妹で一緒のタイミングで転生するなんて奇跡ですねっ。)
きゃっきゃっと弾んだテレパシーを送ってくるガーニーは身体の一部をちょいと伸ばし、犬の耳を引っ張った。
「キューンキューン・・・。」
「こら・痛がってるからやめなさいっての。」
(しかしマスター様の腕をかんでいましたし。)
「まぁ・・・うん。なんか凄かったが。」
(では愚姉も連れて行きましょう。)
ーー
JOIN IN ナーガ・ガーニー
ーー
なんだかなー・・・。
プリリンと柴犬に生まれ変わったガーニー姉妹をペット?にした俺達は、ダンジョンの外に出た。
海王星ダンジョンの外・・・入り口は厳重に閉鎖されているようで重厚な金属製の扉と金網の扉との二重の扉で完全に閉鎖されている。
その扉は電子制御可能になっていて、シーニャがスタスタとロックに近づきあっさりと扉を開けた。
「うーわー・・・えらいこっちゃな。」
「おっかしぃなぁ?ちゃんと交代するように指示は出したんだけどなぁ?」
ダンジョンに隣接するネプトラティア駐留軍司令部の敷地内は、モンスター、マシン、バトルドレスのクルー達が入り乱れて乱戦になっている。
大型のモンスターとレイブが取っ組み合いになり、周りの味方を潰さないように押さえつけ、数えるのが嫌になる程埋め尽くされた小型のモンスター達を一匹一匹確実にバトルドレスのクルー達が屠っていく。
空中からの砲撃も射撃も味方を巻き込んでしまう為使用出来ず、味方のいないタイミングでガ・レイブの一機が急降下で着地しモンスターを踏み潰している。
「正に蹂躙。」
「しかしこれでは効率が非常に悪いのう?」
「数が多すぎてめんどうね。魔法で全部倒して良いのかしら?」
アトと火風は魔力を練り始め、俺の合図を待つ。
ふぅ・・・直ぐ終わるかねこれ・・・?
ジュリオーネ・タ・マン 四十六歳 ネオヒューマノイドⅡ 銀河旅団七番艦マギア・ジェド所属 イレーサーユニットNo4
元巨人種の主婦。ヘルフレムへと収監されるまでは戦闘とは一切関わりの無い所で暮らしていた普通の主婦だった。
普通の兼業主婦として家事にパートに忙しかった彼女は、ある日突然夫であるベベルー・タ・マンから離婚を求められる。
夫は浮気をしており、その事実を知ると彼女は消沈し抜け殻のようになってしまう。そしてそんな状態の彼女を置いて夫は蒸発、彼女は自らの生きる意思を失い幽鬼のような状態で自宅に座り込んでいた所で、何故か警察に連行されヘルフレムへと強制的に放り込まれた。そしてヘルフレムにて娘と同じぐらいの年頃の少女と同室になる。彼女の大きな身体は狭い部屋にはあまりよろしくなく、同室の少女から「しっかりしろっ!そんなでっかい図体でぼけっとするなっ!物理的に邪魔だ!」と檄を受け正気を取り戻した。正気を取り戻した彼女は獄中にて正式に離婚を決意、ヘルフレムへと入れられたことなどを弁護士と相談し、十億クレジットもの慰謝料を求める裁判を起こした。
その裁判は被害者不在のままあっさりと結審し、彼女の口座には即金で十億クレジットが振り込まれた。
裁判は終わったものの結局何が何だかあまりよく分からないままでヘルフレムから出ることが出来ず、仲の良くなった少女とヘルフレムの一角を占拠一大派閥を築いたが、雨宮がヘルフレムを爆破すると知った際、慌ててシャトルへと逃げ込んだ。
ヘルフレム脱出後より心機一転その身体を生かした仕事をするべく雨宮に直訴、そのまま雨宮の実験台になる。
本人の意図した仕事とは少し違うとは思いながらも、丈夫なその身体は雨宮の実験に大いに役立ったことからある程度の満足感を見いだしている。
彼女はネオヒューマノイド、パメラ・キャッシュマンの後継存在であり進化形。パメラをウルテマヒューマノイドに作り替えるべく実験を繰り返し、ウルテマヒューマノイドから進化の妨げになる因子を逆トレースし、パメラに存在する因子を確定、改めて彼女に植え付けた。その結果彼女は人工ウルティマン的存在となった。
彼女を用いた研究によりウルティマンの謎を雨宮は解明した。しかしそれを特に余所へと発表することも無い為秘密のままになるかもしれない。
変身した彼女のことを雨宮はウルティマン・セブンと呼んでいる。それは変身後の彼女の頭部に鉈のような大きな飾りが付いていたからだという話。
コッファ・サナ・グレア 三十六歳 マギアノイド 銀河旅団七番艦マギア・ジェド所属 メインオペレーター
元超機人種で金星圏出身の電子ハッカー。
電子銀行強盗を繰り返す超の付く実力派ハッカー、脳幹、神経節及び両手両目が生体機械の超機人種。世界によって生み出された機人種の勇者。
軍警察に所属する機人種のエースハッカー、ファナ・リーナ・グレアとは年の離れた姉妹。木星圏に存在する商業連合中央銀行より、銀行突破用バスタープログラムと呼ばれる専用プログラムを用いハッキングを仕掛けていた所、妹でありライバルでもあるファナから割り込みをかけられ、電子空間にて存在をかけた殴り合いの末敗北、身柄を拘束されヘルフレム監獄の機人種専用房へと収監された。
元々生身でも能力の高かったコッファは、電子空間でもその力を存分に振るうことが出来たが、引くことを知らない妹を前に自ら戦いを放棄し敗北する道を選んだ。
収監前から雨宮の存在を知っていた彼女は、ヘルフレム内で幾度も雨宮の内部へと侵入を試みたが、謎の障壁に阻まれその度に当時のカウンタープログラム(ベロペの用意したもの)に感染し、雨宮本人を見たことが無いまま強烈な恋愛感情を埋め込まれ続けた。そのせいもありヘルフレム脱出の際宇宙空間に出る雨宮の行動に対し、自らも付き従おうとシャトルを飛び出しかけるが、寸でのところでセイラー達刑務官に引き留められ事なきを得た。
銀河旅団再編成の前、他の女達に阻まれどうしても雨宮の側へと物理的に近づくことが出来なかったが、物理的に難しいなら電子的に意思疎通をしてみようと思い、雨宮の携帯デバイスに侵入雨宮の秘密の研究を一部を垣間見てしまった。
それに気づいた雨宮は携帯デバイスをネットワークから遮断、彼女をデバイスの中に閉じ込め、その内に肉体を強制的に作り替え七番艦へと無理矢理配属した。
今はその精神は身体に戻ったが、前と全く違う身体に最初は身体を動かすことが出来ず、雨宮の前でハイハイから練習することになった。彼女の身体は前の身体の特徴を維持したまま、更に魔力的な進化をさせた電子戦特化マギアノイドととして改良されている。マギアノイドとなった為、輪廻の輪からも外れてしまいその存在が希薄になってしまったが、雨宮によってファム及びネシアとナノマシンによって繋がっている為少なくとも世界から認識されないと言うことは無くなった。
勇者とはシステムに干渉する権限を持つ存在である。と言う世界の根幹に関わる事実を電子的に解き明かし、自ら勇者システムの戒めを解き放った真の勇者。システムによって打ち込まれたの楔を自ら消滅させたことによって機人種を越え超機人種となった。世界のシステムから自らを切り離してしまったことに気がついていないが、雨宮に触れたことでこの世界から存在を改めて認識され、第三世界に戻ることが出来た。
が、雨宮によって結局色々と弄られてしまっている為、そんな彼女の大冒険は無かったことになっている。本人曰く「プログラムされた恋愛感情は切っ掛けに過ぎないんだっ!」と過去は振り返らないようである。




