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EP39 銀河旅団選抜セレクションその 三

後書きの二人は、アナウンスをしている娘と、レンタルの受付のおねぇさんです。

EP39 銀河旅団選抜セレクションその 三


 死屍累々のあの惨状から数時間、挑戦者達はナノマシンによる治療を経て次のステージへと進む。


ーーーーーーーーーー


魔導操作術競争


 ざくっと言えばスペースワーカーの操作能力の測定・・・のようなものである。

もちろん個人で所有しているものはそれを使う、しかしこれには少し罠が仕掛けてある。


 ・・・というか。


 「マスター。これ、レイブをレンタルした方は凄く有利なのでは。」


 ファムの言う事がもっともだ。


 レイブ・・・量産型レイブであるレイブン・ゼタは、一般クルーにでも利用出来るようにライ達が用意したこの世界でも最高峰のマシンである。

現行市場に出回っているスペースワーカーなど全く相手にならないレベルの性能を持っている。

たとえて言うな量産型ナイチ〇ゲール(無いと思うが)VSザ〇Ⅰのようなものだ。正直比較にもならない。

ビル〇インに向かっていく無改造のマ〇ンガーぐらいきっと差があるだろう。絶対捉えられない。


 「まぁ・・・ちゃんと動かせるなら・・・の話なんだが。」


 起動に必要な魔力は極限まで抑えて設計されているので、そもそも起動出来ないのなら魔力が足りないし、それははっきり言ってうちでは要らない子だ。

仮に動かせたとしても、エースクラスの操作能力が無ければ赤ん坊にハルバードを持たせるようなもので、まともに動かす事も出来ないだろう。


 要は難しいのだ。自分で使っているものを使って善戦してくれればそれでいいと俺は思っている。幸いドルフも用意してあるのだ。寧ろここで初めてというか、見た事も聞いた事もないマシンを選ぶ事自体がアウトだろう。


 そしてここからは解説の席に改めて新庄、ライ、そしてロペ、ファムとネシアが座っている。


 「拙者も居りますが。」


 「居たのかござる。」


 そしてこの雨宮銀河とござるこの七人で見ていこうと思う。


ーーーーーーーーーー


 ・・・・。どうしよう。SWとか軍で昔使っていたグリーフの拠点防衛用しかまともに動かした事がないんだけど・・・。

あれはドの付く初心者でも簡単に動かせるように、ボタン一つでいろんな事をしてくれるオートマチックコントローラー式だった。

マニュアル操作とか覚えてないんだけど・・・。


 レームは生身で戦う冒険者だった為、SWには殆ど触れる機会が無く、数年前に数日間だけ乗った資格を得る為のマニュアル操作のSWの使い方など頭の片隅にも残っていない。


 因みにグリーフ拠点防衛用とははっきり言えば只の移動砲台である。下半身がマグネットキャタピラになっている、ガ〇タンクのようなSWで非常に簡略化された操作機構を持って万人に愛された機体でもある。

様々な宇宙戦艦に搭載され、追加砲台のような使い方をされている動く事をほぼ想定されていないSWだった。


 このレイブとか言うSWなんか凄い威圧感があるんだが・・・。ホントに触っても良いのだろうか?


 レームの居る貸し出し用ハンガーには先行量産型の通常レイブ、そして本格的な量産型のガ・レイブ、ライ達の作ったレイブン・ゼタそしてキャッシュマンエレクトロニクスことCE社のドルフ、そして雨宮がネタで再現したゲルン・ガウスが並んでいる。


 ・・やばい・・・。全部マニュアル操作だ・・・。せめてセミオートのものはないのかな・・・?


 一つずつコックピットをのぞき込み、操作系を確認していくがテクニカルな操作を要求される事になる実技試験だけに、マニュアル以外の選択肢は雨宮にはなかった。


 せめてドルフにしよう・・・あれならきっと・・・あぁでもグリーフとは違うメーカーのだから全く何処に何があるか分からない!


 そこでレームはある事に気づく。


 はっ。あそこにあるのは私も知ってる・・・ゲルン・・・ガウス。でもあれは・・・いや・・・しかし・・・あれはきっと罠・・・。

きっと途中で壊れるに違いない・・・。


 「ふむ。ゲルン・ガウスとはまた趣の有る機体が用意してあるものだ。」


 ふと気がつくと他の挑戦者がレームの横に並び立っていた。


 「あれはどうおも・・・!!?」


 裸!?いやバスタオルを腰に巻いては居るけど・・・?


 「え・・・っと?サハギンの方ですよね?」


 「うむ。よし。私はあのゲルン・ガウスにしよう。」


 それだけ呟くとスタスタとパイロットスーツをレンタルしに行ってしまった。


 決断が早くてうらやましい。いやしかし・・・!!


 仕方ない・・。


 「レンタルはお決まりですかー?」


 「はい・・・。げ・・ゲルン・ガウスで・・・。」


 「はーい。ゲルン・ガウス入りマース。」


 ズシンズシンと先ほどのサハギンがゲルン・ガウスを操りハンガーの外へと軽やかに歩いて行く。


 よかった・・・壊れる奴じゃないんだ。


 先ほどのゲルン・ガウスが居なくなった後ろの壁が開き、新しいゲルン・ガウスが追加される。


 ・・・?先ほどのゲルン・ガウスと色が違う。


 「あっ。当たりですねー。ゲルンガウスのスーパーエースカスタムの再現モデルですよー。」


 余計な事を!!!!!


 「えっ?あのっ!?」


 ガチャかよ!?普通のでもちゃんと乗れないのに!?なんだよそのスーパーエースカスタムって!?


 「ロペさんが乗っていた機体の再現をしてみたかったんですってー。流石銀河さんですねー。さす銀ですー。」


 ニコニコと嬉しそうに語ってくれる受付の女の子は私に機動キーを渡してくる。

今私の手はじっとりと手汗がにじんで酷い事になっている。背筋を冷や汗が伝うのが分かる。


 これに・・・乗れと・・・?


 しかもロペの乗っていたものを再現したって言ってた。これはまさか・・・・。


 「あ・・あの?自爆とかしないですよね・・・?」


 「それは貴方の腕次第でしょうねー。」


 ここまで来ていきなりバッサリと切り捨てられる。

実技試験っっっ!!!


 「分かった・・。ありがとう。」


 もう行くしかない。転んでも泣かないもん・・・。


 レームは颯爽とゲルン・ガウススーパーエースカスタムに乗り込み起動キーを差し込む。


 全身がスキャンされ搭乗者情報がコックピットの画面に映し出される。


ーーメッセージが一件有ります


 え?


 どういうこと?まさか・・・。


 ロペ?ロペなの?たすかるぅ・・・。


ーーこの機体はちゃんとれーむんに届くようにしてあるから安心して乗って良いょ。


 え?これだけ?操作方法とかは?試験内容のリークとかはないの??

え?やばくない?あっ。


ーーすみませーん搭乗した方は速やかに外へ出てくださーい!


 あっ!あぁ・・・。動かないと・・・。でもどうやって・・・。


 ・・・?ホントにどうやって?


 改めてコックピットの中を確認してみると、古い機体にありがちなセレクトレバーや、フットペダルなどと言うものがない。

モニターを切り返るスイッチさえ見当たらない。有るのはコックピットに座り自然な手の位置にある謎の球体だけ。

あまりにも簡素なコックピット。しかし・・・。


 あ!!??まさかこれ!


 起動キーを差し込んだだけでは動く気配すら見えなかったゲルン・ガウスはその球体に魔力を通す事によって起動した。


 動く・・・こいつ動くよっ!!


ーーあっ、やっと動いた。だいじょうぶですかー?


 「だ・だいじょうぶだっ!もんだいな・・・い?」


 コックピットの中で叫んだ所で外に聞こえるはずがない。基本的な事を失念して恥ずかしくなったが、未だモニターすら表示されておらず動かせるのは分かるが見えない。


 そうか・・・魔力操作の試験だったっけ。ならこれはコックピット自体がフェイクなんだ。

これで全部動かせるのか・・・。きづいてよかったぁ・・・・。


 少しうるっと涙が浮かぶレームは、魔力の導通を感じ、コックピットの機能を思い描きフル稼働させる。

するとコックピットの周りが三百六十度モニターになり周り全てが視界に写る。


 全天周囲モニター!?でもこれなら私でも動かせる!


 魔力の動きを感じ取りその流れを操作する。すると軽やかにゲルン・ガウスは動き出し漸くハンガーの外に出る事が出来た。


 「空が良い天気だ・・・。」


 ここがどこかは分からないけど。なんとかなって良かった・・・。

 

ーーーーーーーーーー 


 私は思う。どうしてこんなに高い所にコックピットの入り口があるのかと。

もう足から乗り込めるようにしても良いんじゃないかと。


 不意に搭乗用タラップから下を見てしまう。


 「ひゅっ!」


 変な声が出た。早く乗り込むべし・・・。ちょっと・・足下・・・ひ・・開きすぎじゃない?いや・届くんだけど・・・。

遠く感じる・・・。


 トリプルミルクティの三人は素直にSWには乗った事がないと受付に告げる。


 「あー。大丈夫ですよー。うちのマシンはマインドフィードバックシステムを採用していますから。魔力だけで簡単に動かせますー。」


 そうしてそれぞれ気になるマシンに乗り込んだ。・・・乗り込もうとしているのだが。


 手すりにしがみつきながらめいいっぱい足を伸ばして、ギリギリ足がコックピットに届く。


 マシンが・・・・こっちに・・・・来なさい・・・よ・・・!


ーーリン?どうしたの?早く乗り込まないと後ろが詰まっているわよ?


 「高いとこ怖いの!」


 そう言うや否や、今度は別の方からリンのフード付きローブのフードがつまみ上げられ「ぐえっ。」そのままコックピットの中に落とされる。


 「あたたた・・・・。」


 このマシンはカードスロットのようなものが空いていると聞いた。そこに貸与されているゲスト用IDを差し込めばマシンは動く。後はシートに座って魔力を流すだけ。


 簡単。


 「ウィムリー後で覚えていなさい。」


 非常にゆったりとしたシートに身体を預け、手元に魔力を流す。


ーーカードが挿入されていません


 「忘れてた。」


 カードスロットに自分のIDを差し込むと、ひゅっと吸い込まれ起動準備が整ったようだった。


 よし。これでかつる。


 「はっしん!」


 魔力を流し込むと全身が大きな人になったかのような錯覚を覚え、ゆっくりと閉じていた目を開く。


 視界に入ってきたのは搭乗用タラップに並んだ次の人。


 ・・・ああ後ろ向きなのか。


 ゆっくりと旋回し先にハンガーの外に出た二人を追う。


 「高い・・・。」


 視界の高さにビビりながらもゆっくりと歩みを進め、三機のガ・レイブがお互いを観察するように見合った。


ーーリン遅かったね?


 「うっさい後でコロヌ。」


ーーなんで!?手伝ってあげたじゃん!?


 「しらない。」


ーーはいはい。二人ともスタート地点に行きましょう?リミッターが掛かっているみたいだから、全力で魔力を流しても大丈夫そうね。


 そうなのか。この高さが怖すぎて他の事を考えている余裕がない。


 私は手を差し出して気合いを込める。


 三機のマシンの手が重なりいつもの私に戻る。


 「トリプルミルクティふぁいっ!!」


ーーおーー!

ーーおー!



ーーーーーーーーーー


 蹈鞴を踏んで見上げたそこには圧巻のスペースワーカーが其処には有った。


 「あー貴方も初心者ですかー?」


 「は・はいっ・・・。こんな高価なものには触れる機会も無く・・・です・・・。はい。」


 先ほどの魔力測定で気を失ったあと、医務室で目覚めた私は魔導操作術競争開始のアナウンスを聞き慌てて医務室を飛び出した。

しかし既にレンタルのハンガーには結構な人が並んでいて、私は一番最後だった。


 「大丈夫ですー。無くなったりしませんよー。」


 次々に乗り込んだ人達がマシンを動かし、ハンガーの外へと出て行きます。

そんなに簡単に動かせるものなんですね。


 「魔法使いの貴方なら全然大丈夫ですよー。はいこれ。」


 私は一番簡単だと聞いたマシンに乗り込みシートに座る。パイロットスーツを借りるのを忘れていた・・・。


ーーそのままでも乗れますから大丈夫ですよー。


 「あ、ありがとうございますー。」


 魔力を通すととっても高い視点で周りを見回す事が出来ます。凄い。天井がこんなに近いです!


ーーここでジャンプしないでねー。


 ちょっと楽しくなってしまっている自分を見透かされたようで、恥ずかしい。受付のおねぇさんは机を片付けハンガーの入り口へと移動していく。

私もそれに続きゆっくりとハンガーの外へと進んだ。


 既に先に外に出た人達が試験を開始しているようで、凄まじい早さで今迄そんなの有ったかな?と言うレベルの高さのビルのような建物や、水深の浅そうな水場の上を滑空し駆け抜けていく。


 レ・・レース・・?かな?


 皆さん凄い・・・。あんなスピードが出るんですね。


 あっもう一番の人がゴールした。早く行かなくっちゃ!!


 ドシンドシンと足を動かしジーナはスタートラインへと急いだ。


ーーーーーーーーーー


 私は呆然としていた。


 「何あれ・・・。私のSWついこの間買ったばっかりの新型なんだけど・・・。」


 レンタルのSW?が高性能すぎる。あんなの市場に出回らないわよ。特機?やばい・・・競争って事はやっぱりタイムで争うのよね?

噴射剤の補給も無料でしてくれたし、エネルギーパックは満タン、しかも予備のパックまで貸してくれた。

と言う事はよ、このマシンじゃエネルギーが足りないってそう言うコースな訳よね?


 「ぐぬぬ・・・。」


 仕方ないわね・・・。


 「やったろーじゃん!」


ーーーーーーーーーー


ーー準備の出来た方から速やかにスタートしてください。


 行くわっ!


 民間に出回っている最高のものを選んで買ったつもりなんだけど、全然追いつけない!


 「何なのあのマシン!おかしいでしょ!」


 私のこのSWはバーマニー社の最新モデル、カイエン高速機動型なのよ?レースにも使われているのと同じタイプの筈なのに一緒にスタートした人達からぐんぐん離されていくんだけど!?


 せめて・・・せめてゲルン・ガウスにだけは負けたくない。あんな欠陥品に負けたら私・・・。


 しかしそんなミンティリアの思いをよそに、二機のゲルン・ガウスが爆走しビルの直前で盛大に噴射剤を使い天高く飛び上がった。


 「嘘・・・。」


 いけない私も上にっ!!!!


 後ろからあっさり抜かされあわや激突寸前で何とか上昇に成功したミンティリアは額の汗を拭い、遠くから眺めていたコースの全容を思い起こす。


 この後はビルから飛び出したら駄目、真下に落ちなきゃぶつかるようになっていたはず。


 高速で流れる景色を横目に、自分と同じか少し遅いぐらいで飛ぶマイワーカー持ちの何機かを躱し、ビルの切れ目から空に踊り出す。


 ここで前方に行くっ!


 ビルの直上には何も無い空から突き出すように配置してある天井が、ミスを誘うように待ち構え、上昇しすぎて急制動をかけられなかったマシンは次々に天井と激突、リタイヤしていった。


 下ッ!!


 ミンティリアは奥歯を噛みしめ九十度の直滑降を細かくブースターを操作する事で実現し、普段掛かるGの何十倍もの重力に何とか耐えきり、水面コースへと突入する。


 飛び石・・・。じゃない!?罠だっ!


 湖のように広がる水面に点在する着地用と思われる足場は、直滑降のストレスに負けた挑戦者達の止まり木として設置してあるわけでは無かった。

一機のマシンが一息つこうとその上に載った瞬間。


ドッボーーーーーン!!


 うわぁ・・・。あれ発泡スチロールだ・・・・。着地すんなって事よね?ギリギリだけど・・・いけ・・・。


 突如何かがマシンをかすめ、大きく揺れる。


 「何!?」


 嘘でしょ?シーサーペントとか聞いてないわ!


 見た感じ全く深さがなさそうに見えるこの水たまりのように見える水場から、五匹のシーサーペントの首が駆け抜けるマシンに襲い掛かっている。


 スピードは落とせない。噴射剤もエネルギーも補給するのはこの湖を越えてから!


GOAAAAAAAAAAAAA!!


 しかも張りぼてじゃ無い・・・本物よねやっぱり。どんだけ本格的なのよ!


 凄まじい速度で自身を叩き付けてくる五匹のシーサーペントを躱し、辛うじてスピードを緩める事が出来たミンティリアは、空中でエネルギーパックと噴射剤の交換を行う。


 残った噴射剤を一瞬で限界まで使い切り、一瞬高く上昇し重力を振り切った瞬間を狙いスロットから各パックを分離、ガチンッと勢いよくパックの交換に成功した。


 「やってみるものね。出来るじゃ無い私!」


 しかしここで落ち着いているわけには行かない、次々と後続がやってくるのだ。それらにぶつかると目も当てられない。


 「後は只の直線だけど・・・。」


 絶対何かある。ぜっったいなにかある。


 私の勘がそう言ってる。


 四角く区切られたタイルのようなコースがゴールまで続いているが、私を追い抜いたゲルン・ガウス二機が何故かぐるぐると同じ場所を回っている。


 これは・・・私ラッキー!!


 間違いない。幻覚魔法だ。レジストマインドっ!


 ミンティリアは自身に魔法抵抗をあげる魔法をかけ、コースへと突っ込んだ。


ガッシャーーーーーン


 !?!?!?!?!?


ーーえーっとミンティリアさん高強度ガラス破損・・・八百万クレジットの弁済を後ほどお願いしますねー。


 はぁああああああああああ!????


 え!?うそ!?が・・・がらすぅううううううううううううううう!!!!!


 そうか!!あの二人はガラスを手探りで躱して進んでいたのか!


 このガラス見えない!裸眼でも全く見えないっっ!!!


 ミンティリアが仕方なく床に降り立ち、センサーをフル活動させつつガラスを壊さないようにマニピュレーターをそーっとガラスがあるであろう所に這わせて、進んでいると後ろから又凄い音が響き渡る。


ーーこら犬っこ!ガラス壊してんじゃねぇ!後で弁償しろよ!


 この声が雨宮銀河・・・。


 いけない。後続が来る・・・。


 しかし彼女の後ろで盛大にガラスを割った犬っこと呼ばれた人は、コックピットのハッチを開け、身を乗り出しクンクンと何かを嗅いでいる。


 ・・・犬っこ・・・!?犬獣人!?やっぱり今日は付いてる!


 ホバー移動でガラスを壊さないように移動する犬っこの直ぐ後を素知らぬ顔で付いて行くミンティリア。犬っこの鼻は的確で全く周りに手を触れず迷路のように入り組んだガラスの森を抜けていく。


ーーわふー!ついてくるのずるいー!


 「後で何かおごるから!」


ーーしょーがないなー・・・。


 よかった・・・良い子で・・・。ここで突き放されでもしたらもう私脱出出来ないわ。

ビーフジャーキーとか食べるのかしら?確かおつまみ用に買っておいたものがバッグに入っていたはずだけど・・・。


 そうして犬っこの後に付いていく事数分。


ーーごーる!!


 「やったぁ!!」


 ガラス弁償以外のトラップは無かったようで、悠々とゴールした二人はコックピットから顔を出しお互いに顔を見合わせ自然、笑みがこぼれる。


 「助かったわ!」


 「ずるは駄目なのですよー?」


 「おいしいもの作ってあげるから!」


 「ふうまはお肉が良いのです!」


 「期待して良いからね!」


ーーーーーーーーーー

 

 あっはっはっ!皆盛大に突っ込んでくれるなぁ。


ガッシャーーーーーン!


ガッシャーーーーーン!


ガッシャーーーーーン!


ガッシャーーーーーン!


 さっすがに見えないだろうこのガラス。


 雨宮が挑戦者達のガラスブレイクを眺めていると、結局一番でゴールする事になった犬っこがぐずぐずと、鼻をすすりながら参加者の女に付き添われながらやってきた。


 「お金ないのですー。ぐすっ・・・。」


 「わ・私が代わりに払うから・・・怒らないであげて・・・ください。」


 この犬っこはもぅ・・・。


 「建前だ建前!あんなもん幾らでも作れるから。只の障害として設定しただけの建前なの!」


 「えー?」


 犬っこはワンワン泣きながらどうしようどうしようと困っていたのだろう。俺も別に犬っこをいじめるつもりは無いからあっさりネタバレしてやったが、まだ信用してないなこいつ。


 雨宮はひょいっと犬っこを持ち上げ高い高ーいと言わんばかりに犬っこを持ち上げた。


 「嘘だから・・・な?もう泣くな。」


 「べんしょうしなくていいです?」


 「そういうことだ。」


 そう言うと漸く安心したのか犬っこが俺の身体にしがみついてきた。


 「ったく合格したんだからさっさと次の準備しに行けよ?」


 「わふぅ。」


ーーーーーーーーーー


 ふぅ・・・よかった・・・本当に良かった・・・。


 何だかもらい泣きしちゃう所だったわ。このこも予想以上に可愛いし。キュン来ちゃった・・・。


 「じゃあ行きましょうえーっと・・・。」


 「ふうまはトト!トトなのだ!」


 ??トトちゃんで良いのかな?


 「ふうまちゃん?ととちゃん?」


 「ふうまはトトなの!だからトトで良いの!」


 あぁそっか・・。おっけ。


 「じゃあトトちゃん次に行きましょうか。」


 「わふー!」


ーーーーーーーーーー


 「くそーーーーーー!!こんな高いガラスで迷路を作るなよーーーーー!!」


パキッ


ーーレームさんガラス破損小百万クレジットです。


 私の金がーーー!!!


ーーーーーーーーーー


 む・・・この先には・・・ある・・・あっ。


ぴしっ


ーーレビルバンさんガラス破損小百万クレジットです。


 「ノーーーーーーー!!!」



 オーリナー・キリレッスー 二十五歳 ハイパーヒューマノイド 銀河旅団五番艦マギア・イド所属機動整備大隊副隊長


 元ヘルフレム囚人にして五番艦のお母さん的存在。


 殆ど人種と見分けが付かないが元ライオンの獣人、普段はとてもおっとりとしてほわほわな印象が強いが、いざスイッチが切り替わると激しい感情をぶちまける獅子へと変わる。

元々力があった彼女は好きだった自動車の整備工場にて技術者として働いていた。しかし工場が何者かの手によって放火され、その犯人と偶然鉢合わせしてしまった彼女は激高、その場で犯人を殺害してしまう。

現場が人通りの多い場所であった事から、過剰防衛と判断されそのままヘルフレムへと収監される。

 黙々と機械いじりをしている時間が幸せだった彼女は、ヘルフレムにて偶然手に入れた時計を分解しては組み立て直し、雨宮が現れる時まで延々と繰り返して自分の精神を鍛えていた。

 女性クルー達によって、第一次眷属作成パーティと称される荒ぶる雨宮を沈める時に他の娘達を守る為身を挺して雨宮に抱かれ、最初期に眷属化した眷属の一人。

しかし本人にとってはそれは只のラッキーであり、獣人種としてより強いものに与し抱かれる事は至上の喜びである。前述では身を挺したと言う事になっては居るが、実際は本能が目覚め他の娘達を押しのけて自ら抱かれに行っただけだった。

 戦闘能力は高いものの無理強いをするつもりは雨宮には無く、本人の望んだ機械を取り扱う部署へと彼女を配属した。


 最近の悩みは纏う雰囲気のせいで何故かお母さんと呼ばれる事。



 マキュ・レイトー・リー 三十四歳 ハイパーヒューマノイド 銀河旅団五番艦マギア・イド所属メインブリッジサブオペレーター


 元超絶雌猫海賊団所属の海賊。木星圏にて奴隷として売られそうになっている所を海賊団の襲撃に遭い奴隷としての所属が商人から海賊へと移り、そしてマギアシリーズに蹂躙され捕縛される。


 元猫獣人で尻尾の色は白黒のしましま。くせっ毛のツンツンヘアーを猫耳の出る帽子でいつも隠している。

海賊として数々の襲撃に参加、レーザーシミターを片手に数々の冒険者を屠ってきた賞金首。しましっぽのマキュとして八千万クレジットの賞金がかけられていた。

 

 元々教育をあまり受けられる環境に居なかった彼女であったが、マギアシリーズに乗り込んだ後は、仲良くなったサダコについて様々なクルーに教えを請う勤勉な面を見せる。

そんな中で飛び抜けた才能を発揮したのがオペレーター業務と裁縫だった。実は銀河旅団の制服は全て手作りで、ナノマシンによって作られたものでは無い。

サダコや彼女のように裁縫に長けた者達が一つ一つ手作りで作った本物のお手製である。


 好きな食べ物は鯖の味噌煮、嫌いなものは尻尾を踏む奴。


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