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EP38 銀河旅団選抜セレクションその二

キャラのバックストーリーに力を入れすぎた気がする。

でも彼はいなけりゃ話が成り立たないから仕方ない。

EP38 銀河旅団選抜セレクションその二


 朝倉美汐は思う。


 私は一体何をやっているのかと。


 上手く気持ちを伝える事さえ出来ず、あまつさえ相手の機嫌をこの上なく損ねてしまう事までシームレスにやってしまった。

しかもグーで殴られるぐらい。


 「うぅっ・・・。」


 顔面はナノマシンによって完全に治っている。しかし心の傷は中々治らない。雨宮の残酷な所は相手がどういう存在であれ徹底的に潰しに掛かる所にある。

身体が動くなら身体を、心が折れていないのなら心を、砕くまで朽ち果てるまで徹底的に攻撃する。身じろぎ一つでもしようものなら完全に沈黙するまで肉片を踏み潰すぐらいはやってのけるだろう。


 怒らせるつもりなんて無かったのになぁ・・・。


 不意にフラッシュバックが起こる。


 「ひっ。」


 だめだ・・・考えないようにしても勝手にナノマシンがあの時の事を見せてくる。

ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。


 私は・・・。私は・・・。


ーーーーーーーーーー


 「みっしー?でばんだよ~?」


 はぁ!?


 「え?えっ?えー!?」


ずるずるずる


 え・・ええりーさん?ななんああああああーー。


 自分より二十センチ近く身長の低いエリーに手を握られ、そのまま振り返る事無くエリーは美汐を引きずるように・・・。

両手でエリーの手をしっかり握って・・・打ち上げられたアザラシのように引きずられていく美汐は、あまりの急展開に頭が付いていかず混乱を極めた。


ーーーーーーーーーー


 まぶしい・・・お日様なんて何ヶ月ぶり・・・ってここはどこですか!?


 「エリーさん!歩けますから!あるけますからぁあああ!!」


ずずずずずずずー


 「あれ?おねむだとおもっていたのよ~。」


 「起きてますよずっと!寧ろ寝られなくって困っていましたよぉ!ってかずっと立っていたじゃないですかぁ!!」


 あれー?と首をかしげてまぁ良いかとそのまま私を引きずっていくエリーさん・・・。


 「だからーーーーー!?」


 「もう付いたのよー。」


 「けほっけほっ。何処ですかここー?」


 周りを見回してみると全く見覚えのない・・・ない?え?あれ?


 「国立競技場?」


 「どこのことをいっているのかわからないけど、ここはしんいきだよー?」


 え!?神域って何ですか!?聞いた事無いんですけど!?


 「えっ?えっ?」


ーーこれより魔力測定を開始します。美汐さんは定位置まで移動して椅子に座ってください。参加者の皆さんは仕切りより後ろの位置で合図と同時にマジックシールドを展開してください。

  あまり近すぎると命の保証は出来ませんので、充分ご自分の実力と相談してから移動してください。


 んんっ!?なにっ?どういうこと?ここに座れば良いの?


 混乱する気持ちもあるが何故か案内されるとされるがままに動いてしまう、古い日本人の悪しき習性に従い美汐は椅子に座る。


ガチャンガチャン

しゅるしゅるしゅる


 「えーっ!?」


 椅子に座った途端両手両足を拘束され、全身が謎の布で拘束される。


 「なんでー!?私又何かしましたかー!?」


 辛うじて動く首を動かし天を仰ぐ美汐の前に回り込んだエリーは、美汐の口の中に錠剤を二つコロンと流し込む。


 「むむっ!」


 あっイチゴ味・・・。


 「まみーちゃーん!準備完了なのよー!」


ーーそれでは参加者の皆さんマジックシールドを展開してください。エリーさんも退避を。


 「はーい。」


 え?え?どうなっているの?


 不意に美汐の視界が閉ざされる。


 (魔力の限りを込めて叫んで良いぞ美汐・・・。)


 頭の中に雨宮の声が響き、近くにその気配を感じた。


 雨宮さんがいる・・・。ぎんがさんがいる・・・。


 早鐘を打つ胸の鼓動が頂点に達した。


 (これがあのときのおまえのか・・・お・・・。)





















 何も見えないはずの視界いっぱいにあの時の自分の顔面が映し出された。





















 「ひぎぅ!」



ーー身構えてください。




 ひぃやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!?!??!??

















ーーそれでは魔力測定を終了します。皆様お疲れ様でした。ごふっ。


ーーーーーーーーーーー


 よし・・・。次は魔力測定って事ね。私自身有ります!

これでもレベル九十五のAランク魔法使いですので!マラソンも怪物を倒すのも駄目だったけど、これなら私でもトップを狙えるわっ!


 「な・・なぁ俺達棄権して良いかな・・・?」


 「えー?何で急に!?」


 フレグもレードもだらしないなぁ。まだ三つ目の試験なのに。


 「いいよ別に・・・私一人で受けるから・・・。」


 実にあっさりしたものだった。しかし彼女たち三人は幼なじみの冒険者として実に二十年以上もパーティを組んでダンジョンの攻略に力を注いできた。

時に彼女を取り合ってフレグとレードは争い、彼女は両方共に男としての興味は無いと線を引いた。

時にレイドクラスモンスターの討伐にたった三人で挑んだ事もあった。

楽しい時も苦しい時も悲しい時も幸せな時も、ずっと一緒にいた三人だった。


 しかし、このセレクションに挑む数時間前・・・。


ーーーーーーーーーーー


 「俺結婚するんだ。」


 「マジか・・・。」


 「あらおめでとう。」


 「「・・・・。」」


 で?


 「それがどうかしたの?」


 「嫁が危ない事からは足を洗ってくれって言うから・・・。」


 「引退するのか。」


 「あら。残念ね。折角年収一億クレジットも見えてきた所だったのに。」


 彼女がそう言うとフレグは奥歯をギリッと噛みしめて俯いた。


 「彼女の実家が実業家らしくてさ、後を継げって言われてね・・・。」


 そう言うフレグは悔しそうにしながらも既に諦めが付いている様で、このセレクションの入賞賞金を持って引退する事を二人に告げた。


 「そっかぁ引退かぁ。折角だけどこの挑戦で解散かなぁ。」


 「そう。」


 素っ気ない返事で彼女は競技場の入り口を見据えていた。


 「しかたないわね。レードはどうするの?貴方もここに入隊するつもりはないんでしょ?」


 彼女は知っている。レードは既に結婚していて子供も二人いる。


 彼女に振られて直ぐに、レードは結婚していた。だがそれを二人に告げる事はきっと無いだろう。


 私も聞かないわ。もう合う事もないでしょうし・・。


ーーーーーーーーーー


 一人でも成し遂げてみせる。


 私は今最高に燃えているのよ。


ーー身構えてください。


 私は全身全霊の魔力でマジックシールドを自分の周りに展開する。


 「停滞の壁えぇええええええええええええええええええええええ!!!!!」


キーーーン


 え?嘘?耳が聞こえない?何が起こったの?


 耳が聞こえなくなった瞬間不意に襲う浮遊感。巨人に握りつぶされるかのような全方位からの衝撃。


ドゴン!


 「ガッ!」


 なに?なにがおこったの?頭痛い!


 競技場の壁に数百メートル飛ばされ叩き付けられた彼女は、そのまま数メートル自由落下した。


 「ーーーーー!」


 身体が動かない!


 痛みで体中にしびれが走り、体中至る所から危険信号が脳に届く。


 ぐぅ・・・アナライズ・・・!


ーーーーー


ミンティリア・リーミゾーワ


HP 7 / 24500


MP 2 / 89900


状態 全身粉砕骨折(重度)

   臓器損傷(中度)


ーーーーー


 し・・・死ぬっ!?


 「ーーぁーーーぁーーー。」


 声が出ない・・・・。アナライズなんかするんじゃなかった・・・!

魔力が・・・。


ーーーーーーーーーー


 私はレーム。まさか海王星宙域に来る事が出来るなんて思わなかった。

ロペが面白い事になるから来なよって、ずっと誘ってくれていたんだけど・・・。

気ままな冒険者暮らしが板に付きすぎて、中々踏ん切りが付かなかっんだ。


 軍にいた時はゼルミィもキュキュも皆で楽しかった。でも仕事がつまらなかったんだ。


 「あ。」


 「居た居た。れーむんごめんね?なんかタイミング悪かったみたいでさぁ。一緒にセレクション受けてもらわないとおかしい事になりそうだったからさぁ。」


 ロペは何だか少し・・・ううん。凄く綺麗になった。恋人でも出来たかな?


 「いいよ別に。受かるし。」


 「おっ?でたねぇビックマウス。」


 ビックマウスじゃないもん。うかるもん。


 これでもSランクなんだから。余裕だよ。


 「ふふーぅ。じゃぁ私は運営の方に居るから、暫く会えないけど失格しても大丈夫だから気軽にやってね・・・あ。」


 「失格にならないってば!・・?」


 「いや・・・うん。きお付けてね?マジで。」


 ・・・?


 ロペは時々分からない事を言う。どうせ考えても分からないから又今度聞こう。





 あの時ちゃんと聞いておくべきだった。


ーーーーーーーーーー


ーー身構えてください。


 身構え・・。


キーン

 

 ぶはっ!しまった!シールド!


 首から上の穴という穴から盛大に色々なものを吹き出したレームは、辛うじてシールドを張り衝撃を完全にそらした所で自らの異常に気づく。


 「ーーーっーーー?」


 声が出ない。ヤバ・・・。


 グラつく視界に身体が引っ張られる感覚を覚え、レームはその場に倒れた。


 大見得切ったのに、失格しちゃう・・・。


 「ぃーーぅ!」


 もうちょっと・・・。


 「ひ・・・ぅ!」


 がハッ!


 喉が・・・。


 「ひぃー・・ぅ!」


 発動しない!ぐぅ・・。


 「いぃーーる”ぅ”!!」


 発音が・・・。


 「い”ぃ”ーーーる”ぅ”うう・・・。」


 辛うじて両腕のしびれが収まりかけてきたのを感じたレームは、自分の喉を満身の力を込めて抑える。


 ぐぐっ。一瞬だけ・・・いっしゅんだけっ!


 「ひぃいいいいいいるうううううううううううううう!!!」


 はつどうしたっ!


 「ひーる!ひール!ヒール!!」


 軍時代から培った比類無きど根性で辛うじて窮地を脱したレームはポタポタと流れ落ちる涙を拭って控え室へ向かう。


 ・・・ぐすっ・・・死ぬかと思った・・・。ロペの馬鹿・・・。


ーーーーーーーーーーー


 むんっ。


 ふっ!


 はっ!


 今日も良い。


 キレてる。


 私はレビルバン。誇り高きサハギン族の一員。


 この鍛え上げた魚肉。世界の平和を守る為に使いたい。


 我が友イントは元気にしているだろうか。


 これほどの猛者の集うセレクションは初めてだ。まさかスキルを使わない私をあっさりと上回る漢がいるとは思わなかった。


 先ほどから私に刺さる視線が熱い。


 「何か気になる事でもあっただろうか。」


 「あいえ・・サハギンの方を近くで見るのは初めてだったもので・・・。すみません。」


 うむ。分からなくは無い。我らサハギン族は何故か避けられる事が多い。

私も幼い頃から一人だった。私の場合は偶然周りに同族が居なかっただけだが、他の者達ももしかすると似たような状況にあったりするのかもしれない。


 「無理もない。我らの見た目は特殊だ。近くに居ると嫌な思いをする事もあるだろう。」


 「いや・・・そうじゃない、そうじゃなくって。」


 ん?気を遣ってくれているのだろうか彼女は。優しい娘だ。


 「服を着た方が良いんじゃないかなって。」


 ん!?


 しまった!さっきの怪物競争の時にマッスルパワーで服が弾け飛んでしまったのだった!


 「これは失礼した。」


 いそいそと大きなアタッシュケースから取り出したのはスーツだった。


 「しまった・・・。ペーパーテストの時に着ようと思っていたスーツしかないっ!」


 (え?スーツでテスト受ける人って居るのかな?あ、でも入社試験とかそう言うものかな・・・?)


 「次も実技ですよ?動きにくくないですか?」


 もちろんだ。このスーツは普通のリクルートスーツだ。特に奮発してストレッチ素材のものを買ったりもしていない。


 ・・・。普通に破れる奴だ・・・。


 「ど・・・どうしたものか。」


 「これで良かったらどうぞ・・・。」


 彼女の目がもう返さなくて良いですからね?と訴えてきている。


 「すまない。この恩は必ずセレクションに受かって返そう。」


 「そんな私が死ぬみたいに言わないでください!」


ーーーーーーーーーー


ーー身構えてください。


 「うぼあー!」


 ばかなっ!マッスルパワーは全開だったはずだ!


 「酷い目に遭った・・・。これが正式に所属しているクルーの実力か・・・。」


 盛大に衝撃波に吹っ飛ばされながらも怪我一つ無く、パンパンと身体に付いた砂を落としながらレビルバンは控え室へと帰る。


 ボロボロになったバスタオルを腰に巻き付けて。


ーーーーーーーーーー


 ジーナ・アモーランは困っていた。


 な・・ななな・・・っ。


 私の目の前に座ったサハギンの人は何故か全裸です!

周りの人も皆ちょっと変な人を見る目でずっと見ているのですけど、何だか眠っているのか瞑想しているのか分からないですけど・・・気づいていませんね?


 「何か気になる事でもあっただろうか。」


 声が渋いっ。じゃなくて!全裸は何でですか?


 何でも前の実技で破れてしまっていた事に気がつかなかったんだとか・・・。ないって!


 セルフノリツッコミなんて私のキャラじゃないんです・・・。


 次の魔力測定なら何とかなるってそう信じたいんです。前の二つはもうボロボロでした。

このままじゃ絶対落選です。前のお仕事辞めてきてしまったのですよ?落ちたら無職なんです。


 「絶対受からないと・・・。」


 しかもここは海王星圏です・・・。金融機関が動いているのかどうかも怪しいんですよ?

私実はここに来る前にお財布を落としてしまいまして・・・。帰りの航空券を買うお金がないんです・・・。

住み込みって聞いていたから、マンションも引き払ってしまいましたし、お金も家もない・・・どうしよー・・・。


ーーーーーーーーーー


ーー身構えてください。


 「輝け!マイシェルター!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 うわわわわわわわ!!!


 ななななに!?なにこれ!?


 氷で作ったかまくらのようなシェルターを召喚し完全に外部と遮断された空間を作る。自分手作り出したオリジナルの魔法。

マイシェルター・・・。


 おかしい!おかしいよ!遮断出来ていないよ!揺れてるよ揺れてる!


 魔力がー!魔力がー!


ーーーーーーーーーー


 ・・・・はぁー・・・。


 「いきてる・・・。」


 丁度魔力がつきるかと思った瞬間だった。


ーーそれでは魔力測定を終了します。皆様お疲れ様でした。ごふっ。


 アナウンスの人大丈夫かな・・・?


 でも・・・これってどうなの?合格?不合格?


 周囲を見渡してみれば死屍累々。老若男女問わずシールドの威力の足りなかった者達は壁に叩き付けられ、シールドが上手く展開出来衝撃を中和出来た者達も、防げない音の振動で身体の至る所を損傷し膝を着いている。

ほぼ無傷で居るのは只一人。


 「サハギンの人・・・。スゴ・・・。」


パタリ


 辛うじて自身もその無傷の一人としてその場に立っていたものの、完全に魔力が枯渇してしまった事で意識を失ってしまった。



ーーーーーーーーーー


 「あー。死屍累々だなこれ。」


 事前にバトルドレスを纏った雨宮は身を乗り出して競技場内を見渡す。


 自分の力を過信し、仕切りの直ぐ後ろである最前列に居た十数人のうち、まともに動けているものは二人だけ、犬っこも最前列に居たのだがあいつのシールドでは音は防げなかったらしく、犬耳から盛大に出血しつつ競技場内をのたうち回っている。


 馬鹿犬・・・。


 ロペの親友の一人だという女も最前列にいたが、あいつぼけっとしていてシールドを張り遅れて盛大に音の波にやられていた。だがあのど根性。俺は好きだぜ。

もう手に汗握る感じで見てた。もう年かな・・・。ちょっと回復に成功した時はうるっときたよワシ。


 後はそうだな・・・ちょっと地力が足りていないのか、衝撃でぶっ飛ばされて大けがしたのに何故かアナライズで自分を観察していたあの娘もまぁ良い線行ってる。


 あのシェルターの魔法も中々の防御力だった。最後は魔力切れで倒れてしまったがなかなかの逸材なのではなかろうか?


 ・・・あとあのマッスルサハギン。あいつはシールドを張っていなかったのに吹っ飛ばされただけで無傷だった。どこぞの皇帝の今際の際みたいな声でぶっ飛んだんだが、盛大に地面をスライディングしただけだった訳だ。何気に凄いんだが・・・。

 この競技は二段構えのマジックシールドを使うのが正解だった。だがまぁ初見殺しも良い所だ。普通分かるはず無いよな。

音である振動とその振動によって生まれる衝撃波、この両方を防げて初めて無傷で居られる。


 俺はほっと胸をなで下ろして競技場を見た。


 あれだけ離れた所からでもあの威力なんだから、俺って相当酷い目に遭ったんだな・・・。目の前だぜ?俺があれを喰らったの。


 「あっと・・・エリー。そろそろ放してやれー。」


ーーりょうかいなのー・・・。・・・ぎんちゃんあとでごめんなさいしようね?


 「そうね。」


 そろそろ魂の奥底までトラウマが染みついた頃だろう。しばらくはロペの側に置いておいてそれからかな・・・。

正直俺も若干トラウマってるんだがな・・・。直に合うのちょっと怖いし・・・。


 あと三つ・魔導操作術競争・パン食い競争・勝ち抜き格闘


 ふふふ・・・おまいらの度肝抜いてやるぜ!




レーム・トーゲンティオ 三十歳 ヒューリー(人種とフェアリー種のハーフ)Sランク冒険者


 ロペ、ルミコ、キュキュとは軍学校時代からの親友。

 仲間達と一緒にいる事に関しては心地よさを覚えるが、軍の気質が肌に合わず二年程で退役。

 冒険者として地元に戻り『輝ける美のダンジョン』の攻略を進めていた。

彼女はその魔法使いとしての才能と戦士としての才能を磨き上げ、人類初の魔戦士としてギルドに登録されている。

メインウェポンは柄の長い両刃の斧ブルドガンドル、オリハルコンとミスリルの合金であるオリハルコニウム合金で作られたその斧は、破壊不可能とされていたダンジョンの床を傷つける事が可能であり、その斧を持って自在にダンジョンを滑り駆け抜ける姿から、ジェットレームの二つ名で呼ばれていた。


フレグ 三十二歳 獣人種 Aランク冒険者


 幼い頃から冒険者パーティ『三本の矢』の前衛として剣を振るってきた自由騎士。

ミスリルソードを愛用している事からミスリルナイトの二つ名で呼ばれる金星圏でも指折りの冒険者。

この程資産家の娘と結婚が決まっているが、仲間達に中々言い出せずに居た。


 実はセレクションを棄権してしまうとナノマシンに記憶を消されて永遠にナノマシンに監視される未来が訪れるのだが、本人がそれに気づく事はほぼ無い。



レード 三十二歳 人種 Aランク冒険者


 冒険者パーティ『三本の矢』の斥候兼中衛、影のレードという二つ名で呼ばれるアサシンギルドを兼任するAランクアサシン。

 過去に長差なじみ感で恋愛トラブルがあった際に、傷つき癒やしを求めて駆け込んだリラクゼーションペットカフェの店員に一目惚れし、僅か三日の交際を経て結婚。

二子をもうける。

 妻はエルフ種の元Sランク冒険者で自分を振った幼なじみ、ミンティリアの師匠でもある。

しかし本人は妻の過去を知らされていないうえ、結婚した事も秘密にしているが、ミンティリアは自らの師匠から結婚式への招待を受けていた為知っているが知らない振りをしている。


ミンティリア・リーミゾーワ 三十一歳 ヒューエル Aランク冒険者


 元Aランク冒険者パーティ『三本の矢』リーダー。


 木星圏出身の幼なじみ三人で構成されたパーティはそれぞれの役割が分担されていてとてもバランスが良く、長い時間をかけて培ってきた連携もベテラン冒険者として特筆すべき点。

 パーティの紅一点にしてリーダーそして魔法使いと、肩書きは多いが他人に関して非常に無関心。幼い頃から魔法使いの弟子として師匠の元で修行を積みながら冒険者としての実力を磨いてきた。

彼女の戦闘能力は他二人よりも群を抜いて高く、攻撃魔法に関してはSランク冒険者を上回ると言われその師の優秀さも密かにささやかれている。

 彼女の師は同パーティーレードの妻となったエルフ種の元Sランク冒険者テンリン・ショーリー。

 結婚の際テンリンから招待状を受け取ったが流石に自分が振った相手の結婚式には行きたくない、と言う気持ちがあった為本人に祝福のプレゼントを贈るに留めた。

 レードの結婚後は気まぐれという体で、ダンジョン攻略に行く時だけ集まろうと言う決まりを作りパーティを解散する為に徐々に下地を作り始める。

こうする事でフレグにもその内良い相手が見つかると確信のあった彼女は、一人アトレーティオ4へとマイSWを購入する為出かけていた所偶然テレビのニュースで見た、新人類とされる雨宮を見かけ追いかけては見たものの、既に海賊が暴れ回っている状況であった為に完全に見失ってしまう。コロニーの至る所に海賊がいる状況で彼女は魔法を駆使し何とか雨宮を探してみようとしたが、結局かなわず十数人の海賊を魔法で焼き殺しただけに終わる。

 しかし家に帰るにも宇宙港が混乱の中で稼働せず、消沈し遠巻きに宇宙港の入り口を見つめていた時、宇宙港の入り口に雨宮がうろうろしている所を発見、慌てて声をかけようとしたが雨宮は突然掻き消えるように人混みの中に突入してしまう。


 ミンティリアには雨宮に合わなければならない理由がある。その一心で雨宮を探し太陽系中をを探し回っていた所何故か、師匠テンリンから銀河旅団新人隊員募集の情報を聞き身の回りの全てを整理し、参加を打診ラピスに乗り込む事に成功するが何故かパーティーの二人も付いてきてしまう。

 目下の懸念事項はフレグのことで有ったが、暫くラピスにすし詰めされている間は殆ど会話らしい会話もなく、何故付いてきたのか疑問だったがセレクション直前、突然の結婚宣言を受け漸く自分で付けた重りを外す事が出来たと内心安堵した。



ジーナ・アモーラン 三十一歳 エルード 元カフェ店員兼Sランク冒険者


 カフェ店員と冒険者を掛け持ちする三つ編み眼鏡の魔法使い。


 幼い頃から清貧を尊ぶ家庭で育ち、贅沢は敵との家訓を胸に生きてきた彼女であったが、女子高生として友人の家に遊びに行った際にとても可愛らしい洋服を発見、友人にこれは何かと尋ねた所カフェのアルバイトの制服だという。

その制服に一目惚れした彼女は、学校ではなく家から禁止されているアルバイト・・・ではなく。正社員として大学を卒業し入社、ひらひらの可愛い制服に身を包み楽しい生活が始まると思いきや、入社直後突然マネージャー業務の責任者として任命されパリッとしたスーツを支給され愕然とする。その後一日二十五時間労働という理解不能な業務をこなし、休みは年に数度有るかどうか。そんな彼女がストレスを発散する時それはダンジョンに潜る時である。

 高校を卒業する記念にと友人達と一緒に冒険者ギルドの門を叩き、Fランク冒険者としての冒険者カードを手に入れていた。

もう可愛い服を着るのはこの時しかないと、年に数回しかない休みは全てダンジョンアタックに費やしふとある事に気がつく。「あれ?私・・・休んでない?」


 そんな日が数年続いたある日、カフェの本社で業務刷新が行われ労働時間が劇的に改善、彼女と同じ時期に入社した根性のある社員達に向かい、役員達が訴えないでくださいと土下座、同僚はお金で解決しましょうといい彼女の懐に数年分の未払いの賃金が振り込まれた。


 張り詰めていた生活が改善し、彼女は一時体調を崩して寝込んでしまう。そんな時偶々ダンジョンでの効率の良いレベルアップを考察する掲示板を発見、元気になったある休みの日からその掲示板にあった情報を元に実戦を開始。

するとみるみるうちにランクが上がり、あっという間にSランクにまで到達してしまう。「この方法は駄目だ・・・。駄目人間になりそう・・・。」

 

 楽してレベルを上げすぎたせいで経験が足りず、パーティには入れないとソロで冒険をしていたがそんな折りに学生時代の友人だったロペから銀河旅団へのスカウトを伺うメールが届き、返事をする前に採用通知が届く。


 混乱しつつも慌てて身の回りを整理し、カフェを退職。急いで迎えの来る宇宙港へと向かったが、宇宙港の待合スペースにて財布を落としブルーな気分でラピスへと乗り込んだ。



レビルバン・バンババンバン 二千四百六十歳 古代サハギン種 元神聖サハギン王国王子


 第一海洋世界を支配する超巨大王国、神聖サハギン王国に第三千六百二十一位王位継承者として産まれる。

神王と呼ばれる王は非常に子だくさんで有り更に非常に長寿、だが気分で突然王位を誰かに譲ったりする事が希によくある不思議な王であった。

しかしレビルバンはその非常識な王位の継承を非常に嫌っており、産まれてから百年も経たないうちに王家を出奔、海洋世界を旅してきたが、第一海洋世界は非常に狭く百年も旅をすれば端から端まで完全に把握してしまう程の狭さだった。

 若いレビルバンはある時世界の隅々まで記憶しているはずなのに非常に強い違和感を感じる、その違和感をたどって行くと海底に沈んだ正方形の見慣れない石を発見、手のひらに収まる程の小さなその石を手に取った瞬間、レビルバンは虹色に輝く光が目の前に漂っている事に気がつきその光に手を触れ、そのまま異世界へと旅だった。


 そして辿り着いた先は見た事もない光で覆われた・・・。クラブハウスだった。


 チカチカする目をこすりながら地下のクラブハウスを後にすると、車が飛び交い多くのサハギン種で無い人が行き交う戦艦タイタンにいる事が判明する。

それからの生活は目まぐるしく変わり、全裸で歩いていた所警察に補導され職業安定所に連れて行かれ、サハギンだというのシーチキン工場に就職、生活が安定し同じサハギン種の妻と出会い一人の子供をもうけ幸せな生活を続けられるかに見えた。

 しかしレビルバンの寿命は長く、子供が孫を連れてくるようになっても若々しいレビルバンの事を流石に周囲もおかしいと思い、本人に尋ねてみた所「王族は長生きなのだ。」とよく分からない理論を展開。

その世界には長寿な種族が存在せず、レビルバンはタイタンの監獄に何故か入れられてしまう。そこで一人永遠とも言える時間を過ごしていたが、有る時息子がやって来る「父よ、私もどうやら貴方と同じだったようだ。」と訪ねてきた時は既に二千年もの時間が経過しており、レビルバンは自我を失い発狂していた。


 そして更に長い年月が過ぎ、息子と二人だけになり息子は何とかレビルバンを正気に戻す事に成功した。


 正気に戻ったレビルバンは息子に対し「すまない事をしたと反省している。」と言ったが息子は「貴方程辛い思いはしていない。」と二人だけの現実を受け止めタイタンを散策する事にした。


 誰もいなくなったタイタンは広くとても煌びやかだったが、もの悲しい文明の名残だった。

息子はタイタンから人がいなくなった事を語らず、父を今では行方不明になっているメインコントロールルームへと導きタイタンの闇へと姿を消した。


 レビルバンは何とかタイタンを動かす事に成功し様々なプログラムを試してみたが、正常に作動するプログラムが世界間移動跳躍装置のプログラムのみであったが為に、これが起動タイタンは第三超広域世界へと突如現れる。


 新しい世界にやってきたレビルバンは、タイタンを放流し未だ文明の発展途上にあった第三世界のサハギン達を素手で叩きのめし、いつの間にかスプラシオ帝国というものができあがっていた。

しかしレビルバンは人の上に立つ事を良しとせず、一人宇宙船を作り旅を続け、太陽系へと辿り着く。


 太陽系では大小様々なコロニーが星々のように輝き、宇宙の海を輝きで彩っていた。


 レビルバンは少し郷愁に浸り息子達家族を思い涙を流すが、そこに見慣れた巨大戦艦を見つける。

「おお・・・タイタンは今日も人が大勢だな。」そう笑顔で一人こぼし第三世界でのレビルバンの生活が始まる。


 レビルバンは冒険者である。


 レビルバンが第三世界に辿り着き四百年もの時間が過ぎようとしていた。


 数少ないSSSクラス冒険者として世界各国の要人から依頼を受け、様々な事件を解決する。


 人は彼を宇宙刑事レビルバンと呼ぶ。

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