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EP35 無意味な抵抗、解き放たれた獣

キャラ紹介でもまとめた方が良いかなぁとか思ったり思わなかったり。

 折角の見せ場だったのになぁ。


 「に”ゃ"ーーー!!」


 ムラサメの感情が振り切れてしまってから数分が経っただろうか。徐々に落ち着きを取り戻しつつあるが、フルフェイスをかぶったままイヤイヤする奴を見るのは何だか変な感じだわ。


 「ムラサメ、気が済んだか?良し今からあそこまで移動するぞ。ナノマシンでタイミングをリンクしろ、フィールドの外に出ないようにしないと食い破られるかもしれんからな。」


 オリハルコニウムとミスリルの合金であるオリハルコニウムを囓ってくるネズミとか洒落にならん。しかもあのふらふらバランスのおかしくなったガ・レイブにはきちんと囓りとられた後がある。

つまり食ってるんだな。鉱物を。


 「ウルテニウム合金の装甲は流石に囓れはしないと思うが、触らぬ神に祟りなしと言う言葉もあるからな。」


 俺達はティオレの円形フィールドに合わせて陣形を組み中心にティオレを据え先頭にアマリー、殿は・・・。


 「ひぃっ!!又踏んだ!」


 ムラサメである。既に緊張の糸は切れて久しく前は絶対嫌だと譲らなかったのだ。


 はぁ・・・。後ろは前が見えないから余計怖くねぇか?しかも後ろは後ろで普通にネズミも蜂も迫ってくるんだが・・・。


 「はわわ・・・。」


 このポンコツめ・・・。グロ耐性が無いとか最初に言ってくれりゃ連れてこなかったのに・・・。王様とやらもミンチにする気満々だったしな。


 「ムラサメっ!後ろで暴れるな!気が散るっ!」


 ティオレはまだ数分とはいえ大量の蜂とネズミの残骸を後方に排出しながらゆっくりと進む。俺達全員はそれに合わせ慎重に歩みを進めるが、ナノマシンリンクによってティオレの歩みに歩調を自動で合わせられる為、ムラサメとティオレ以外に疲労は無かった。


 「ティオレは最後まで持ちそうか?」


 「はいっ!お任せくださいっ!」


 キラッキラの笑顔で最高の返事を返すティオレは普段のクールさが直ぐに剥がれる。

何故か理由は分からんが名前を呼ぶと喜んでくれるのだ。


 妙に元気の出たティオレの歩みが僅かに早くなり、小高い丘を越え・・・漸くつなぎ目が視界に入った。


 「う”ぅわっ・・・。キッモ・・・。」


ブブブブブブブブブブブブブブブブブ

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ


チュチュチュチュチュチュチュチュチュ

チュチュチュチュチュチュチュチュチュ


カサカサカサカサカサカサカサカサカサ

カサカサカサカサカサカサカサカサカサ


 ・・・。


 「し・・しゅよ・・・。私はフレンドに呼ばれ・・・。「嘘つくなし。」「」」


 なんか違う奴が混じり始めた。


 俺達が繋ぎ目に近づいたことに気がついたかね?ここの様子を見ている?


 「おーい。レイブぅー火炎放射ー。」


 「そうだって!マジ早くっ!ちょっとぉ!こっちに来るんですけどぉ!?」


 突入時は神殿の入り口で待機していたフレイミィ隊、こいつらも近衛だ。一緒に歩みを進めてきたが奴を見つけるや否や俺の腕にしがみついてくる。


 「ちょっと私マジでアレ駄目なんだって!無理無理無理無理!!」


 ふぅ・・・。バトルドレス着てなかったら幸せ体験待ったなしだったんだがなぁ。


ーーごめんなさーい!蜂が多くてそっちまでいけませんー!


 「ちょ!マジで早く来いッてぇ!!」


 実のところ俺もそんなに虫は得意では無い。羽音よりあのカサカサ音が苦手だ。普通の人間だった時なら全身鳥肌が立っていたことだろう。

ティオレの歩みが早くなっていることもあって凄いスピードで接敵するはずだ。目測二十メートル。数秒で決着が付きそうだ。


 「ロペのには火炎放射は・・・。」


ーー流石に乗っけてないんだぁ。イファリスが焼いてしまえば良いと思うよぉ?


 その言葉を聞いたフレイミィの反応は早い。


 「はいタブレットこれ。いつでもバフるから。てか今やれ。直ぐやれ!早くやれっての!」


 「うぅうぅ・・・私もアレは苦手で・・・。」


 「そんなことどうでも良いからー!潰れた奴らの体液とか掛かってるから!アレの奴とか絶対ヤダから!」


 そう。フレイミィの言うとおりティオレのグラビティコントロールと言うスキルは段階の低いモノは有機生命体にしか効果が無いらしく、死して無機物となったバラバラの外骨格や骨、そう言ったモノはティオレが手動で高段階のスキルをコントロールし進行の妨げにならないように後ろに排出している。しかし手動故に完全では無く時折こつんこつんとスキルの力の流れから漏れた骨やら体液やらが当たるのだ。


 「ううぅ申し訳ない主殿・・・。」


 「ティオレは良くやってるから。」


 「はい・・・。」

 

ブブブブブブブブブブブブブブブブブ

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ


チュチュチュチュチュチュチュチュチュ

チュチュチュチュチュチュチュチュチュ


カサカサカサカサカサカサカサカサカサ

カサカサカサカサカサカサカサカサカサ


ぐちゃっ!


べちょっ!


 フィールドに押しつぶされる奴らの数が劇的に増えてきた。それに伴いムラサメの絶叫が再び酷くなる。


 「ぎゃぁーーーーー!なんかかかったぁ!」


 「ふぅ・・・エクスプロード・エクステンション。」


カッ


 ふぉおおおおおおおおおおおおお!


 目の前で突然大爆発が起こった。


ブブブブブブブブブブブブブブブブブ

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ


チュチュチュチュチュチュチュチュチュ

チュチュチュチュチュチュチュチュチュ


カサカサカサカサカサカサカサカサカサ

カサカサカサカサカサカサカサカサカサ


 一時的に周辺の奴らは一掃され残骸一つ残さない大爆発に誰もが唖然としていたが、その爆発に吹き飛ばされ生物では無くなったアレ等の死骸が俺達に降り注ぐ。


 火炎放射じゃねぇ・・・。


 「~~~はぅ。」


 「ひぃっ!!」


 ムラサメは気を失いフレイミィは俺の背に隠れる。このやろう・・・。


 全身余すところなく体液を浴びた俺達は再び歩みを進める。因みに気絶したムラサメはデカスの背にくくりつけてある。


 「ゴキぐらいで気絶してて良いのかコレ・・?」


 「良くは無い。良くは無いが気持ちは分かる。」


 イファリスも反省したのか、爆発は控えることにしたらしく手のひらから火炎放射のようなモノを出し、湧き出す側から奴らを消し炭にしていく。


 暫く経つと別働隊として行動していたゼルミィの部隊が合流し、火の属性魔法を使える全員で繋ぎ目に向かって火炎放射のようなモノを放つ。


 「とは言え何時までもこのままではなぁ。」


 「はいっ。」「むぐっ・・。」


 餅つきのようにフレイミィがイファリスとティオレにタブレットを放り込み、ボリボリとタブレットを咀嚼する。

ゼルミィの部隊もフラググレネードを繋ぎ目の手前へと転がしドカンドカンと激しい爆音が辺りに響き渡る。


 「ブルーベリー味なんてありますのね。」


 「後オレンジとチョコミントなんてのもあるよ。」


 フレイミィは先ほどまでの慌ただしさがなりを潜め、いつもの冷静さを取り戻していたがあまり余裕はなさそうだ。

ギャル語が消えている。


 周囲から持ち場の殲滅を終え徐々に身内が集まってくる。白兵戦の不得手な者達はこの状況下の中では流石に外に出ては来ないようだが、それなりに腕に覚えのある者達はマシンから降り俺達の居る繋ぎ目の方まで駆け寄ってくる。


 「銀河君ナノマシンをこの隙間の中に送って貰っても良いかな?」


 ゼルミィは俺の手を何故か取りぶんぶんと振りながら、仕上げの依頼に来たようだった。


 「そうだな。Ωウィルスの事が気になるが一度やってみるか。」


 そして俺はナノマシンの群体を切り離し炎の隙間をぬって隙間へとナノマシンを降下させる。


ーーーーーーーーーー


 (なんだコレは・・。)


 ナノマシンから送られて来る映像はとても広い空間だった。祭壇のようなモノの上に腹の割かれた女が一人ポーション漬けにされたままで悲痛な表情を浮かべている。

その横に立っている腹の出たおっさんは杖のようなモノを振りかざし喜々として何かを叫んでいる。

 祭壇の周りには騎士のような姿をした者達も立っているがコレといった反応は無く、この妙な儀式のような光景を目に入れているのかどうかすら窺えない。

おっさんが何かを唱え終わったのか杖を取り落とし、膝を突く。すると割かれた女の腹の中から先ほどまでとは違う一匹数メートルはあるであろう蜂と、ネズミが現れる。

全ての虫たちが這い出してきた後、女は力尽きたのか息も絶え絶えと言ったところだろうか、時折ぴくっとけいれんしながら虚空を見つめている。


 (あの女・・・何か良い情報を持っていそうな予感がする。)


 暫くすると虫たちは祭壇の周りをうろうろと動き始めたが、祭壇の更に奥の空間からから現れた背の高い男が此方の方を見据え何かを口走る。


 「レビティション!!」


 一際大きな声で魔法の名前だろうそれを叫んだ男は、その虫達を俺の入ってきた隙間へと投げ飛ばした。


 ・・・させねぇよ?


 俺はナノマシンを解放し次々と飛んでくる蜂とネズミを分解した。俺の中で何かがざわざわとうごめいている気がする。

だが俺はそのうごめいている・・・おそらくは、Ωウィルスと呼ばれるそれを隔離し分析を始めた。


 プロテクトの突破を含めてもかなりの時間を要するようだ。ディメンションカッターの解析も再開しているし、数ヶ月単位は覚悟しておいた方が良いかもしれないな?


 (しかしやけに堅いプロテクトが掛かっているな。こいつらの文明でこんなことが可能とはとても思えないが・・・。)


 一通り虫達を投げ捨てた男はへたり込みぜぇぜぇと肩で息をしている。俺が隙間ギリギリで奴らを分解したことで勘違いしているようだ。

一仕事終えたと思ったのか大の字になって汗を拭っている。


 (この様子だと近づいても大丈夫そうだな。)


 俺はナノマシンの状態のまま入れ物に貼り付けられた女の側まで移動し、小指の先ほどの大きさの実体に変化した。


 (プチ銀河推参!)


 しゅたっ!とポーズを決めるも誰にも見られては居ないようだ。

俺はそのまま女の耳元まで行きたかったのだが、ポーションっぽいとは言え何の液体か分からない液体にいきなり飛び込むようなまねは流石にしない。


 (なになに・・・?まぁポーションか・・・と思っていたら何だか大分違うな?)


ーーーーー


液体の成分分析結果


聖別された処女の血液を濾過しΩウィルスと融合させた液体

生物のエーテルサーキットに直接作用する増進効果が有る


ーーーーー


 エメラルドグリーンの液体が、近くにあるかがり火の光を反射してキラキラと波打っている。


 (透明なのは濾過されているからか・・・?)


 聖別か・・・。何だか嫌な予感がするな?しかしこのまま分解してしまうと多分この女は死んでしまうだろう。

理屈は分からないが回復する効果があるのかもしれない。

よくもまぁこれだけなみなみと・・・。大人一人が完全に浸かってしまうぐらいの血液を一体どこから持ってきたのやら?

エーテルサーキットに直に作用するとあるから、自己回復の底上げなんて事も出来るのかもしれない。

まぁちょっと分析してみるか・・・。


 見つからないようにしたとはいえ、少し小さくなりすぎたかと後悔しつつ俺はめいいっぱい器の縁から手を伸ばし、謎の液体にそっと指を入れてみた。


ーーーーーーーーーー


 「んあっ!」


 突如背筋に走る電撃のような衝撃に蜂型モンスターを追いかけ回していたピュリアは、空中で急停止し背筋をいっぱいにのけぞらせた。


 ???


 「ピュリア?戦闘中ですよ?何をしているんですか?」


 「わかんない・・・。なんかビリッとした。」


 (何だ・・・?ここは外か?)


 「ほぇ?銀河おにーちゃんかな?」


 (む?ピュリアか?)


 俺の意識は所謂聖水を通じて何故かピュリアに繋がったようだ。隙間の手前に置いたままの本体とプチ銀河、精神だけの自分、三つに分かれているのは何だか変な感じだ。

 彼女は今隙間の近くでレーザーソードを振り回し残った蜂を追いかけ回していた。

先程までと打って変わって追加のモンスターが出てこなくなった聖域は掃討戦の様相である。持ち場の掃討の終わった機動部隊と白兵部隊は、雨宮の本体のいる繋ぎ目の周りに徐々に集まりつつある。

 

 (まだ戦闘中か。答えられるならで良いが一応聞いておく。お前閉鎖世界と関わりがあるのか?)


 一匹だけ残った蜂は妙に素早くピュリアの拙い剣術では中々追いきれないようでブンブンと空を切り。携帯片手に交差点に突入する学生のような様子で崩れかかった柱に猛スピードで追突するが、さながら発泡スチロールの壁をぶちまけるかの如く柱をぶちまけ、ぺっぺっと口に入った砂埃を吐き出しながらも何とか蜂を見失っていないようだった。


 (おいちゃんと前を見ろ。)


 「大丈夫だよ!痛くないから!」


 (そうか・・・。で?)


 「ごめんなさい・・・私はわからないなー。でも銀河おにーちゃんの見たのは多分聖櫃だと思うの。えいっ!」


ジュッ


 「やった!」


 (ん。良くやった。)


 最後の一匹を討伐できたようで周りの空気が少し弛緩するようだ。雑談に興じる者達もちらほら現れる。


 「聖櫃って言うのはね、聖女の血と聖人の肉体を入れる器のことなんだよ。」


 ・・・?聖櫃・・・。ようは棺桶のことか?


 (その聖櫃にはどんな効果がある?)


 「えっとね・・・。はんえいきゅうきかんって言ってた様な気がする?」


 (はん・・・あぁ。半永久機関ね。成る程。理屈はよく分からんが魔力とも何だか違う力のようだな。そう言ったセンサーには今まで引っかからなかったし。)


 「うん。私は神の力を取り入れるよりしろって聞いたよ。」


 (神の力ねぇ・・・。)


ーーΔ(デルダ)エナジーのことだねぇ。世界を安定させる為にファムネシアと直接繋がっている安定力と呼ばれるエネルギーだよ

  要するに世界を作る時に必要なエネルギーって事。


 (そんなもん勝手に使って良いのか?)


ーーいいわけないじゃん?しかもあいつらはこの世界の(・・・・・)Δエナジーを使ってる。

  仮にそのエネルギーが無くなったとしたら、世界は自己防衛機構の働きで周辺の世界から無理矢理エナジーを吸い上げ始めるから、周りの世界を全部敵に回すことになるかもしれないしぃ。

  無くならないとしても、減った分を補給するのが非常に難しいと言う話。


 (ふむ。因みにそれってどうやって補給するんだ?)


ーーわかんなぃ。


 (おおっと?)


ーー何でかって言うとΔエナジーの管轄がそもそもここより上位の世界のモノだから。減ってきたら上位世界から勝手に供給されるようになっている筈なんだけどぉ。

  それがどういう条件で来るのかどこから来るのかいつ来るのかも分からない。


 ふむ・・・そこまで聞いてしくじったと思った雨宮は過去の自分を叱責し次あそこに関わる時はその辺りを調べようと固く誓う。


 (因みに今使われている分は問題ないのか?)


ーーこの位なら全然問題ないけど・・・正直言うと絶対使われたくないエネルギーではあるね。


 よし。


 (近衛三隊突入。)


 「「「了解っ!」」」


ーーーーーーーーーー


 雨宮からの突入の合図と共に、近衛第一部隊エスト隊、第二部隊ゼルミィ隊、第三部隊フレイミィ隊は隙間へと躊躇無く飛び込んでいく。


 ・・・


ガンッ!バキッ!ミシミシミシ・・・。


 祭壇の周辺に突如として現れる謎のパワースーツ部隊に壁へと押しつけられる男達、雨宮に分解された巨大蜂と巨大ネズミを生み出したおっさんも、それらを隙間へと投げつけた若い男も、周辺に陣取っていた騎士を思われる男達も全員が全員床や壁に猛烈にキッスをし半分顔面をめり込ませていた。


 「全員動くな!抵抗すると撃つぞ!」


 「いやそれ言うの遅いって言うか~?」


 騎士の一人を地面にめり込ませているフレイミィはフルフェイスの中で苦笑いしながら雨宮へと適切なツッコミを担当する。


 儀式の祭壇が振動する程の勢いで叩き付けられた男達は気を失い、祭壇のある広間の奥から数人の人間と思われる足音が近づいてくる。


 「何事だ!儀式は・・・なっ!!」


ぐちゃっ


 「あ。」


 「「「「「「「「「「「あっ。」」」」」」」」」」


 祭壇の聖櫃の前、広間の上座とその奥の通路、そのど真ん中に立っていたのは運悪く雨宮。相当の実力者であったであろう猛スピードで迫ってきた男は一人、雨宮の真後ろへ飛び出し何かがぶつかりそうな気配を感じ取った・・・が、雨宮のそれを抑えようとして出した手によって、偶然その手の届く程度の位置に壁があったことによって、男の頭は雨宮の手という凶器と壁に挟まれ勢い余って顔面がはじけ飛んだ。

その身体は宙を舞い聖櫃を飛び越え中央で何とか我を取り戻し、騎士の一人を叩き付けていたムラサメの元へと激突する。


 「わぁ~~~~~~~~~~~~!!!!」


 砕けた頭蓋そしてずるりと飛び出し神経ごとむき出しになった眼球、飛び散る脳漿。その全てを一身に浴びムラサメは再び意識を手放した。


 「きゅ~ぅ・・・。」


 叩き付けられつつも何とか意識を保っていた若い男と、はじけ飛んだ男と共にやってきた騎士と思われる青い鎧に身を包んだ若者は顔面蒼白となり、その元凶へと視線を向ける。


 「「団長ーーーーーーーー!!!」」


 あーあー・・・。しまったなぁ。つい力んでしまったわ。壁に手を突いて「何処へ行こうとしてるんだ?ちょまてよ。」なんてしようとしたばっかりに・・・。


 「なむ・・・。」


 「「貴様ーーーーー!!」」


 さぞかし名のある男だったのだろう。付き添いの二人だけでは無い、周りにいるめり込んだ騎士達もバケツヘルムで見えないが意識を取り戻した者達はかなりの絶望感を醸し出している。


 「きさまぁっ・・・きさま・・なに・・・?なんだ?何をしたあっ!」


 恐怖と怒りと絶望が混じった感情なのか、何かを言いたいのだが引っ込めて、だが引っ込める必要も無いのだが怖いみたいな狼狽えっぷりがちょっと面白い。


 ちと不謹慎だが。今回のに関してはわざとでは無い。ホントに偶然だ。壁ドンしようとしたんだけど間に合わなかったんだ。

だってあいつめっちゃ早かったんやもん・・・。


 「さーせん。」


 「「??」」


 訳の分からないものが何かを発した・・・って感じ?しかも通じてないなコレは・・・。

言葉が通じていないわけでは無いんだろうけどなぁ。


 「ごめんちゃい?」


 てへぺろ感を出したつもりだったが逆に怒らせてしまったみたいだ。・・・当たり前か。


 「貴様何者だ!ここを何処だと思っている!?」


 「よくも団長を!」


 二人の青い騎士は俺の胸ぐらを掴まんばかりに迫ってくるが。その間に二人のデカいパワースーツが割り込んでくると俺の圧迫感が半端ない。ちょっと遮るにしても俺に近すぎじゃ無かろうか。

寧ろ俺が押されて聖櫃の中にドボンしてしまいそうだ。


 「おいちょっとお前等・・・質量が・・・おい押すなって・・・。」


 ちょっと待てもぞもぞするなし。


 「やめんかって!」


 野郎の背中に押されるとか誰得だよ。テツもデカスももうちょっと物理的な間をだな・・・。


 「雨宮のっ!急に押すなよ!あっ。」「ボス!びっくりしたじゃ無いか!あっ。」


 俺に背中から思いっきり突き飛ばされた二人は、意図しない方向からの衝撃に耐えきれず、前に倒れ込んでしまった。


 「あれ?騎士の人達は?」


 キョロキョロと周囲を見回してみるが特に人影は無い。テツもデカスもしっかりと倒れてしまっているせいか中々起き上がらない。


 「ほら、悪かったから早く起きろよ。」


 俺は二人に手を出し、手を引いて起き上がるように促すと二人は互いの顔を見合わせ俺の手を取って起き上がる。


 「よいしょっt・・・!!」


 リアルど根性・・・。


 「なんか・・・なんかごめん。」


 「ボス・・・治してやれないのか?」


 「いや出来るけどさ・・・。」


 この空間は何故か死んだ人間の魂が抜け出すことが出来ないようで、肉体さえ再生してやれば魔力やら俺のナノマシンやらで無理やり魂を突っ込んでやれば一時的には生き返る。

まぁ・・・エーテルサーキットの損傷度合いにもよるんだが・・・。


 「こいつらがどの程度世界に未練があるかに寄るかなぁ?死ぬってことはエーテルサーキットを無理やり引きちぎる事と同義だから、それ自体を修復できなければ簡単に魂は体から抜ける。」


 エーテルサーキットの役割の一つとして肉体と魂の繋ぎ糸と言うモノがある。無論その役割を果たす為にはエーテルサーキットがきちんと輪として繋がっている必要があるわけだ。

だがそれが一度切れてしまうと外的な方法での修復は不可能、更に切れたエーテルサーキットは徐々に世界へと還元されていく。肉体と魂には器としての肉体とその器に満たされるべき質量エネルギー魂とがエーテルサーキットという糸によって物理的エーテル的につなぎ止められている必要がある。だが一度千切れたエーテルサーキットは無論元には戻らない。短くなるのだ。

そして器の大きさと魂の量のバランスを持ってつなぎ止める為に必要なエーテルサーキットの長さが存在する。しかしコレは普通の人間には最低限の長さしか与えられていない。

なぜなら・・・。


ーーエーテルサーキットを継ぎ足そうとするとΔエナジーが必要になるんだょ。


 「まぁそういうことだ。俺が新しく作った命はエーテルサーキットが不要なので何度死んでも問題ないんだが、世界のΔエナジーから生まれた存在はそう言う訳にはいかないんだわ。だからもし無理矢理生き返らせても寿命が著しく短くなったり、ふとした拍子に突然死んだりする。」


 だが俺には一つ試してみたいこともある。足りないエーテルサーキットは余所から持ってきたらどうなんだろうかと言うことだ。例えば・・・そこでぺしゃんこになった騎士Aと騎士Bそのどちらかからエーテルサーキットのまだ還元されていない部分を抜き取って移植する。すると長さ自体は元の必要な長さに戻るだろう?


 「そして最も大事な問題が。」


 「「?」」


 「エーテルサーキットの直し方なんかわかんねーよ。誰も知らねーし。知っているとしたらファムかネシアだけだ。後はロペか。」


 「確かに、そもそもエーテルサーキットの存在をちゃんと把握しているものがどれだけいるか分からないし・・・。情報も少ない訳ね。」


 俺の中に眠っている数十億の意識達の中からその情報を引き出そうとしては見たものの、エーテルサーキット自体を知っている者が殆どいない上、知っていても生体魔力回路としての役割しか知っている者はいなかった。


 「今度ファム達に聞いてみるか。因みにロペは知ってるのか?」


ーー知ってるよ?と言うか今思い出したんだけどねぇ?


 何というタイミングで思い出すのかこの嫁は。


ーーなんか、それっぽい話をしている時に思い出せるみたいだねぇ?不便だけどいろいろ経験しないと思い出せないのもまぁ。RPG的で面白いょ?


 「レベルが上がるまで魔法は覚えませんみたいな?」


ーーおっフレイちゃんそれ的を得てるかも?経験値がある程度いるのかもしれないねぇ?直ぐに要る情報もそんなに無いし特に気にしてはいなかったんだけどぉ、まぁ取り敢えずナノマシンサーバーに思い出した情報をアップして置くから銀河きゅんもアプデするヨロシ。


 「じゃぁ早速かくにんっと・・・。あ。駄目だコレ。」


 「何でだよ雨宮の。」


 「なんて言うかな?エーテルサーキット自体に個体識別プロテクトが仕掛けられているっぽくて、それを解読しようとしたらなんか等速で二億年ぐらい掛かるんだと。最大出力でやったとしても千年単位で時間が掛かるから無理だわコレ。ディメンションカッターの分析より全然時間掛かるわコレ。無理無理。」


 ナノマシンの並列処理でそんだけ時間が必要になるんだ、普通の人間の作ったコンピューターで分析しようとしたら兆なんか飛び越えて京とか垓とか?単位が変わる程時間が掛かるンじゃね?無理無理。時間の無駄だわコレ。


ーーもしそれが可能になるとしたら・・・どんな条件が必要かなぁ?


 ・・・。


 「この世界をまるごとナノマシン化してしまってもちょっと難しいんじゃね?主に俺のエネルギー不足で。」


ーーそっかぁ。処理速度が上がってもエネルギーが足りないかぁ。じゃぁ銀河きゅんが成長するに従って時短出来る感じかなぁ?


 「まぁそんなとこだな。気の長い話だわ。」


 因みに・・・俺達と同じハイパーヒューマノイドに作り替えてしまえばこの限りでは無い。が。

俺にその気が全く無いと言うことだからあきらメロンちゃん。でも・・・。


 「奥に行く前にちょっとくらい情報が欲しいな・・・。」


 「フェインがここにいればリザレクションの一つぐらい使えたでしょうが、私はまだ光属性の魔法はそこまで使えませんので何ともしがたいのが残念ですね・・・。」


 イファリスは腰のポーチに入ったタブレットのケースを触りながら頭のはじけ飛んだ死体に近づきつつ、俺に少し気になることを言った。


 「?ちょっとまて。魔法で何とかなるのか?」


 「はい。魔法はマナの現象化、魔力さえ有ればある程度のことは可能です主よ。そして光属性の体系魔法として死者の蘇生魔法リザレクションが有ります。」


 裏技キター・・・。


 なに?・・魔法って何・・・?マナって何なんだ?エーテルサーキットをマナで修復する?いやそれは無理だ。そもそも切れた時点で元の長さには戻らんのだから。

じゃあ新しくエーテルサーキットを継ぎ足したり出来るのか?・・・それもさっき無理だってロペが言ってたろ?エーテルサーキットはΔエナジーと同義だ。いや、出来なくは無いのだろうか?

だがそれは千切れたエーテルサーキットの話であって、千切れていない時はどうなの?・・・いやそもそもエーテルサーキットとΔエナジーが同義ならそれを補おうとすればΔエナジーが必要になるはずだ。

・・・多分。


 「なぁロペ。マナって何だ?」


ーー私も実はマナについては一般的に知れ渡っている情報しかしらなぃんだょ・・・。

  そもそもマナって言うのは無から生まれてくるようなモノじゃないし、発生源は特定出来ているんだけどそれが何なのかって言われたらやっぱりよく分からないっていぅ・・・。


 この世は謎だらけだな。分かったことだけ繋ぎ合わせても大概大きな情報だけど、まだまだ知らないことがいっぱいだわぁ。


 まぁマナについては魔法の使える奴らも沢山いるし、今必要なことじゃないから又今度にしようか。


 ううむと頭を抱えてうなっていると、一緒に付いてきていた洋介君がこの話に食いついてきた。


 「マナについてはエマから聞いたことがありますよ。何でも五つから成る原初世界の根源足る力・・・何だとか。」


 え?何それ超大事そうな話なんだけど?急にやめてくれるかな?今話を切ろうとしたところだったのに。


 「銀河さんの話と照らし合わせてみると、そのΔエナジー・・・でしたっけ?それって世界を形作ったマナを世界として安定させる役割を果たしているんじゃ無いですか?」


 そうか・・・エーテルサーキット、Δエナジー・・・。根源たるマナ・・・。


 「お・・・。繋がった。」


ーーだねぇ。そう言うことかぁ。マナって大事だねぇ。そりゃ減りすぎたら駄目だって事だゎ。


 「正に糸のように絡み合った話が紐解けたようで。」


 ・・・。あれ?


ーー?


 「「「「「?」」」」」


 あれ?分かってもらえてない。そ・・・そうかそうですか・・・。


 「まぁいいや!そいつら動けなくしてもう奥に行こうぜ!謎は全て解けた!」


 「主よ脱線した話の謎が解けただけですよ・・・。」


 「わかってる。」


 ぐすん。


 「もう一時的でも良いかサクッと復活させよう。そのぐらいなら出来るかな?イファリス。」


 「承知いたしました。」


 「まぁまぁ待ちなさいよ。ここは私が適任だと思うのだけれど?」


 近衛しかいないはずのこの場に、今のところ判断を保留しているエクトラスが何故かバトルドレスも着けずに現れた。


 「そうね・・・五分程戻せば良いかしら。・・・ロールバック!」


 エトラは頭のはじけ飛んだ死体に手をかざすと膨大に高められた魔力の塊をその死体に浸透させていく。


 ・・・おぅ。


 飛び散った血肉が映像の逆再生のように集まり、飛んで来たルートをそのまま逆にすっ飛んでいき空中にいる間に飛び散ったモノが次々と失われる前の状態に戻っていく。


 途中の状態を見ているとかなりのグロさだな・・・ムラサメはまだ気絶しているようで何よりだ。


 ゆっくりとした速度で空中で逆再生をし、広間の入り口に戻った。


 「何者だ!・・・何処だ!?・・・?何だ!?エンジ!?ゲゲイルード!?何処だ!?何が起こっている?コレは一体どういうことだ!?皆を離せ!」


 分かりやすく混乱しているようだが、辺りを見回すうちに状況の一部を把握したのか騎士団長と思われる男はつかつかと聖櫃の縁に座っている俺の所へとやってきた。


 「ここを何処だと思っている!?」


 「いや。何処でも良いしどうでも良いわ。」


 「いや、え?」


 (エトラ、この状態はいつまで続くんだ?)


 (まぁもって半日って所ね。何故かは分からないけどそれ以上時間が経つと・・・こいつの場合はさっきの死体の状態に戻るわ。)


 (それはそれでホラーだな。)


 何も知らずに普通に過ごしていたところでいきなり死体に変わるとか、ホラー以外の何物でも無い。しかもこいつの場合頭が弾け飛んでいるから目の前に偶々いた人は酷い目に遭うだろう事が想像出来る。


 「おい!何とか言ったらどうだ!」


 「ハイハイ。何とか何とか。アマリー?」


 俺が呼びかけると一番遠い所に居たアマリーは高速で男の膝を折り、強制的に地面に膝を着かせ髪の毛を掴んで頭を地面に叩き付けた。


 「ガッ!」


 「ボスに対して頭が高いよ?」


 二メートル近くあった彼女は騎士団長よりも遙かに小柄になってしまっている事が気になるらしく、相手の高さを下げることに余念が無い。顔面をぐりぐりと擦りつけ俺に対する敬意が足りないとばかりに連続で地面に叩き付けている。


 折角元に戻ったのに又死ぬぞ?


 「お前の名前と・・・いやそれは良いか。ここに居る目的は何だ?その口から話すならお前の命を助ける唯一の手段を使ってやる。何も言わないならもうお前に用はない。」


 額や頬から血を流した騎士団長は一瞬何かを考えたような顔をしたが、直ぐに思い直したように俺の方を向いて暴言を吐く。


 「黙れ!私は「君が黙るんだよ?」グエッ。」


 ・・・と思ったんだが吐き捨てる前にアマリーによってしっかりと首を絞められ、強制的に発声が出来なくなる。

がっつりと喉を小柄になったアマリーの手でつかまれ、ギリギリ潰れない程度の力加減でミシミシと音を立てる筋肉が引きつり、叫びを上げたくても締めあげられている為に呼吸さえままならない状態の彼には、もはや酸素の送り込まれていない両手で空を掻くぐらいしか出来ることが無いようだった。


 「話す気になったか?そう言った苦しみは永遠に続けることが出来るが。足も喉も治してやり直そうか?お前がどうしたいかにも寄るが・・・。もうこれ以上時間をかける気も無いから次の返事で最後な。慎重に答えろよ。」


 騎士団長は再びイファリスの回復魔法で怪我を治され、つい今し方自分を地面に叩き付けた小柄な女の圧力に後ずさりしながら何とか踏みとどまる。


 「君が答えるべき相手は僕じゃ無いでしょ。」


 「む・・ぐぅ・・・。」


 すっかり恐怖に縛られて動けなくなってしまった騎士団長は、その恐怖を何とか振りほどき辺りに押さえつけられた騎士達の方へ一瞬目をやると、改めて俺の方に向き直った。


 「私達の目的はこの儀式をやめさせることだ!このままではこの世界までも滅びてしまう!移住した民も助からない!」


 一応この儀式についての重要性はデータ的な部分を除いて把握していたようで、この儀式がもたらす事柄を事細かに説明してくれる。・・・さっき俺が確認したことのデータなしの話だな。


 「大体分かった。この儀式については直ぐやめさせることが出来るし、コレを実行した奴らも今から消滅させに行くが、お前達はどうしたい?」


 先ほどの話のついでに彼は自分達『ガーラ騎士団』についても詳しく話してくれた。


 ガーラ騎士団とは所謂国王と呼ばれている奴の手足として動く実働部隊のようで、洋介君とも面識があるようだ。命令されるがままにあらゆる事を実行してきた結果が今の儀式コレなんだとか。

ここに身動きを取れ無くされて転がされている騎士達は全員そのガーラ騎士団の人員だという話だ。と言うよりも。


 「我らガーラ騎士団以外の騎士は、世界の壁を越えられなかった。」


 世界と世界の間にある壁、その壁は実体を通すがそれ以外のモノを通さない性質を持っているらしく、生きてその壁を越えられたのはクルファウストのような強力な魔術師や、それに守られた王や一部の大臣、怪獣の口の中に保護されていた非戦闘員の移住者達、そして洋介君と共に閉鎖世界の滅びを止める為に奔走し鍛え上げられたガーラ騎士団。閉鎖世界のごく一部の者しかその壁を越えることは出来なかったという、

越えられなかった者達は例外なく魂だけをその壁に絡め取られ、世界と一緒に消滅したのだろう。


 「洋介殿が居なければ、移住するべき民も皆死んでしまう所だった。」


 何でも移住する際、急に界獣から襲い掛かられたと思った民は騎士団に助けを求めたが、洋介君は界獣となったことで世界の壁の性質を理解することが出来たようで、唇型の界獣・・・口型の界獣に非戦闘員を全員保護させ無理矢理今の移住先のコロニーにまで送り届けたのだそうな。


ーー・・・そういえば、この世界で界獣の被害に遭ったって言う報告はまだ聞いたことが無かったな・・・。


 ロペ達は界獣の大攻勢によって滅びてしまったが、この世界にやってきた界獣達は洋介君によって完全に使役されていて、宇宙空間から少しも動かなかった。

洋介君が言うにはその非戦闘員を送り届けた界獣達も先頃通り過ぎた宙域にまで引き返させていたとのことで、界獣との間で一切戦闘は行われていない。唯一の例外は雨宮による分解・・・そして。


 「俺達の世界は!ヴァルハランテは攻撃を受けて居るぞ!何故だ!」


 テツはこれまで黙って話を聞いていたが、俺達の考えが纏まった頃を見計らったように俺に新しい情報をくれる。

こいつは前世からこういう妙に気遣いな所があったよ。そのせいで散々酷い目に遭ってきたのにな。


 「ごめんテツさん・・・テツさんの世界については俺は分からないです。」


 「知っている可能性があるとすればこの先に居る王様か、クルファウスト位なんじゃないか?」


 しかし頭を振った騎士団長は、焦るテツに更なる追い打ちをかける。


 「もしそのことが事実ならば、あなたの世界に攻撃を仕掛けているのは我々とは違う別の世界の者に違いない。なぜなら・・・。クルファウスト殿のあの技術は既に余所の世界に輸出されてしまっていますから。」


ーーふざけるなぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!


 ロペの怒りはもっともだ。あの技術・・・界獣を造るにはイントたんの前世であるイントエシリーズと呼ばれる世界を管理する為の、ベロペのような者達を補佐する生命の犠牲が必要だった。


ーーあの時生まれて間もないイントエ達は余所の世界に逃がしたんだ!そんなことをしたら!そんなことをしたらぁっ!!!!


 ・・・余所の世界で生まれた界獣達。それは間違いなく余所の世界のイントエシリーズが既に犠牲になってしまったことを意味している。

ロペの逃がした先の世界にその技術が流れてしまっているとすれば・・・。可能性は拭えない。


ーーなんて事を・・・なんて事を・・・。


ーー許せない・・・。


 イントとアイリーンは前世のロペの補佐として仕えた最古参のイントエシリーズとして長い長い時を過ごす中、産まれて間もないイントエシリーズの教育係を行っていたこともあった。しかもアイリーンに至ってはその手で自らが余所の世界に逃がしていたが為に、牧場世界にとらわれてしまった経緯がある。


 怒りも一入と言った所だろうか。


ーー許せんな・・・。閉鎖世界・・・いや牧場世界だったか!雨宮!許すわけにはいかないぞっ!


 えっ?


 「新庄?」


ーーいやなんでも無い・・・。


ーーきょーちゃんは直ぐあてられちゃうのよねー。


ーーぐぬぬ・・・。


 イントたんファンクラブ会長としては何か許せないものが有ったのだろう。それか只単にイントたんに合わせただけかもしれない・・・。俺としてはそっちの方が有力な気がするんだが・・・。

アピりすぎでは?


 でもちょっと癒やされた。


 「ロペ。外が片付いたならこっちに来いよ。大詰めみたいだしさ。今度はアレ。使っても良いしさ。必要な情報さえ手に入れば用はないし・・・・。折角この世界に来たんだし、全力でおもてなしをしようと思うんだが。全力で。MAXパワーで。」


ーー直ぐ行くっ!


ーーーーーーーーーー


崩れかけた謁見の間


 少し前から小刻みに揺れが襲ってくる。幾本もあった柱も少し大きな揺れが来た時に半分近く倒れてしまった。この空間を支える私の魔力ももう限界が近い。

揺れが始まった頃から突如として魔力の消費が異常な程増大した。はっきり言って私は生きてココをでることは出来ないだろう。


 「陛下。これ以上ここに居るのは危険です、直ぐに脱出をしましょう。」


 チリチリの白髪とびっしりとしわの刻まれた年齢を感じさせる表情の読めない顔の男は頭を振って警告を発した男を叱責する。


 「馬鹿なことを言うな!ココは神殿だぞ!私の新しい私の世界の神域だぞ!!何故逃げなければならない!?」


 私は弱い男だ。生まれに囚われ、考えることを放棄し、傀儡にされるがまま数多の世界に多大な不幸を振りまいたことだろう。権力などと言う目に見えないモノに縛られて、私は自ら道を踏み外した。


 「しかし此処はもう限界です。これ以上私の魔力は持ちません。既にソウルクリスタルに蓄えられていた魔力も底を突きました。私にはこれ以上何も出来ません。」


 漸く解放される。陛下の力に操られることなど一度たりとも無かった。私は自らの欲望に身を任せ世界を滅びに導いたのかもしれない。只我が身の保身を願ったが為に・・・。

クルファウスト殿は上手くやっているだろうか・・・。彼の開発した技術は我々の世界を僅かに延命させた。そして移住を進めることが出来た。しかし・・・。


 「私の息子は死んでしまいました。」


 「何・・・?」


 「近衛の一人であった私の息子は世界の壁を越えられずに故郷と共に消えました。今はもう顔も思い出せない。妻が生きていることだけがせめてもの救いか。」


 「何を言っているガーファン。」


 「この世界に手を出してはいけなかったのでは無いかと私は思いましてね。」


 「私が全ての世界を統べる王になればそんな些細なことを気にすることなど無いのだ。」


 「それは無理でしょう。貴方のような力のないものでは。」


 「なにぃ!?」


 ガーファンと呼ばれた男は腰に帯びた剣を抜き、ゆっくりとした動作で王の首元にその刃をあてた。


 「もう私は疲れたのですよ。そして息子が居なくなったことで気がついたのです。もう無意味な事をしなくても良いのだと。貴方の言う事を聞く必要も、意味すらも無いのだと。」


 しっかりと磨き上げられて鈍く輝く剣の上に、脂ものらなくなった老いたろうじんの汗が伝い落ち、ゆっくりとその刃の上を赤い血液が滑り落ちる。


 「心残りは・・・。」


タッタッタッタッタッ


 「騎士団の皆を外へと出してあげられなかった事か・・・。」


タッタッタッタッタッ


 「おわりにしま「まぁあああてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」!?」


 大きな足音を立て猛スピードで飛び込みガーファンの剣を弾き飛ばしたと同時に王の目の前に勢いよく飛び出したのは・・・。


 「それはぁ・・・私の役割だよねぇ?・・・ねぇ?銀河きゅん?私我慢したよね?ずっと待ってたよねぇ?」


 雨宮以外には何故か見えない不可視の靄によって朽ち果てた玉座に縛り付けられた王は、身じろぎ一つ出来なくなった事への驚きと、見覚えの無い女に目の前に立ちはだかられている現状が理解出来ず、血圧の上昇によるめまいにさいなまれる程激情している。


 「はいはーい。近衛隊全ヒーラー前へ。」


 雨宮のかけ声で回復魔法の使える者達が前へと進み出る。その手にはマジックタブレットがしっかりと握り締められている。


 「あのぉ?ヒールはあっちの今にも死にそうなおじさんにじゃないんですよね?」


 と、今回の突入直前に雨宮によって近衛へと指名された、元囚人ミルヘイル・インゲラッハはアトレーティオ4にて雨宮に買って貰った、ミスリル製の杖へと魔力を注ぎ込みながら雨宮へと確認をとる。

今まで中々表に出る事が無かった事もあり、彼女には雨宮とロペのやりとりや思いを知るすべが無かったのである。


 「そうだ。あいつはタブレットでも食わせておけば自分で何とか出来るだろう。」


 「光の魔法は蘇生を、大地や水の魔法は怪我の治療にあてましょう。」


 ヒーラー達のまとめ役としてイファリスが前へと一歩進み出た。ロペは既に暖まっている。


 「もう良いよね?準備出来た?殴るよ?殴るよ?」


 満身の力を込めたロペの拳がギリギリと音を立て、ハイパーヒューマノイドとして新たに生まれ変わったその身体を限界にまで引き絞り、全身のバネを使いロペの拳が一瞬消える。


チュン


 あー・・・これは・・・。


 「「「レイズデット。」」」

 

 王の首から上が突如消え、魔法の完成と共に再び現れる。


 蘇生魔法って一体どうなってるんだろうなぁ?エトラのような時間を巻き戻すのとも違うし、回復魔法のような再生や自己治癒能力の底上げのような物とも違う。

・・・うーん。不思議だ。いずれ解析しよう。うん。


 光の魔法を使う近衛達は皆一様に生気の抜けたような顔をしているが、仕事はしっかりこなしている。

これから先の訓練の事を考えると、ロペの訓練に参加している者達は不安の残る作業である・・・主にロペの今まで見た事の無い怒りの表情が・・・。


チュン


 「「アクアヒール。」」


 銃弾が通り過ぎたような音が辺りに響くと同時に、王の右の脇腹に穴が開いた。・・・が一瞬で水に覆われ完全に塞がる。


チュン


 「「マッドヒール。」」


 風切り音が鳴る度に王の身体の一部が消える。そして直ぐに魔法で治る。


チュン「ライトヒール。」

チュン「アクアヒール。」

チュン「マッドヒール。」


ーーーーーーーーーー


 どのぐらいの時間が経っただろうか、ティオレが倒れたままのおっさんの口にタブレットを押し込んでから長い時間が経ったような気がする。

ロペにも少し疲労が見えてきた。流石に全力だからな・・・。


 水浸しになり泥で全身がべっちゃべちゃになった王は何十何百とロペの拳を受け、一見無傷のように見える彼は憔悴し、ロペの拳に乗せられたナノマシンはこのときの為に新たにプログラムをくみ上げた特別製のおろし金仕様なのだという。

一体何をおろすのか。この仕様は雨宮の拷問からヒントを得たという話で、雨宮が肉体をおろしたのに対し、ロペは精神生命体をおろすのだという。


 怒りにまかせて拳を振るうロペの周りにうっすらと紫の光が纏わり付いているのが見て取れる。ロペが拳を振るう度の光は遅れて何かを削っていく。

王のうっすらと残った赤い髪の色が完全に白を通り越して崩れかけている。王の肉体は限界を迎えようとしていた。


 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”-----!!」


 吠えるロペが最後の一撃を放ち霞のように王が消えようとしている時、雨宮はナノマシンを展開し王の一部を取り込み、分析を開始した。


 「隊長・・・いえロペさんもう跡形も残っていませんよ。」


 「ふーっ・・・・!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・


 ん?急に揺れが激しくなったな?さっきまで気にする事が無いぐらいだったんだが・・・。


 「何かあったのかこれ?」


 俺が周りに訪ねると意識を取り戻したおっさんが此方へと駆け寄ってくる。


 「さ!先ほどの回復薬をもう一つ頂けませんかっ!もう魔力が!」


 そういえばこのおっさん魔力尽きかけてるな?でも俺の持っていた物はロペに渡してしまったし・・・。


 「誰かタブレットが余っている奴いるか?」


 「はい。これ凄いですよねーこの位なら三つも食べれば十分ですよー。」


 そう言って俺にタブレットを渡してくれたのは、ゼルミィ隊のミン・テックメン。ゼルミィが整備部隊に居た時に仲良くなったとかでそれ以降チームゼルミィの一員として行動を共にしていたらしい。

彼女はちょっと触れてはいけない軍の事情に触れてしまったが為に今は無きヘルフレムにたたき込まれた上、一族郎党皆殺しにあってしまうと言う聞いただけで悲惨な生い立ちを持っているが、本人は持ち前の器量で周りのそんな気持ちを見せずに明るく振りまいている。とっても前向きな子だ・・・。とは言っても表面上の話だがな。

まぁ只の良い子ちゃんが近衛として最前線へと出てきてまともにやっていけるかと言えばそうでも無い。

そして話が前後するが、彼女の一族が皆殺しにあったのが先で、彼女がヘルフレムに入ったのが後・・・つまり単純に考えれば彼女が無実の人間では無い可能性について気づくだろう。

彼女は他の無実の囚人達とは違う、ガチの犯罪者の方なのだ。ゼルミィが近くに居るのもそれが理由である。


 監視だ。


 彼女の戦闘能力は全クルーの中でも十指に入るレベルのもので、その類い稀なる身体能力だけでは無く天才的な頭脳そして一時世界を震撼させた凶悪なレアスキル、『生命解離(ライフパージ)』。

その名の通り命ある全ての者の命を強制的に引っぺがすスキルだ。アリから人間、巨人や神すらもそのスキルから逃れる事は出来ない、なんて言われている。


 普段は普通の気立ての良い娘さんなんだがなぁ・・・。

彼女の特殊性はそのスキルだけに留まらない。ロペ曰く俺のナノマシンでも修正が効かない要素は珍しい、との事で彼女は俺によって眷属化される事で安定した存在になった珍しい存在として俺は注目している。

まぁ、元々変な奴は結構多いのだが彼女はそんな中でも特にレアケースで、なんと魂が三つくっついているという謎の精神体としてこの世界に生まれたのだという。

それを眷属化する事で三つの精神体に合わせてカスタマイズされた身体を作り上げまともに生きる事が可能になった訳だ。


 因みに眷属化する前は酷いもので主人格であるミンが副人格であるアイス、フェムの二つを全くコントロール出来ず、ちょっとした精神的な変化が起こる度に人格が入れ替わり、人格が入れ替わる度に他の人格は完全に眠ってしまう為、記憶の共有が全く出来ず、常に記憶喪失のような状態のまま自分がどこに居るのかすら分からない状態で生活していた。


 町で他人とぶつかる度に人格が入れ替わり、おいしいものを食べただけで人格が入れ替わり、くしゃみをする度に人格が入れ替わり、建物の角に小指をぶつける度に人格が入れ替わり、犬に吠えられるだけで人格が入れ替わる。

まともに生活出来るはずが無い。しかし一つだけの例外そのレアスキル生命解離を使用している時に限り、一定時間だけ人格が強制的にアイスに変わり、自身の全てを掌握し把握する事が出来た。

しかしこれを彼女たちはコントロール出来ず、一度使ったスキルは誰かを対象にしなければその力膨大な力の行き場が無く自らの魂をバラバラにしてしまうのだと言うが、彼女がその扱いに失敗した時フェムのスキルによって自動的に彼女たちは元に戻る。

・・・。つまりそのレアスキルはあくまでアイスのスキルであると言う事だ。フェムとミンは又別のスキルを持っている。

三つの魂三つのスキル。その三つともが危険すぎる為にロペは彼女を手放してはいけないと俺に直に注意してきた程だ。


 うちにはちょっと危ない奴が多すぎる。


 「良し。ほらちゃんとかんで飲み込んだ方が良く効く。」


 「ありがとうございます!これで暫くこの空間を維持出来ます。」


 暫くか・・・。


 「あんたには聞きたい事がいっぱいあるから一緒に来て貰うぞ。それとがー・・・何とか達もこのまま一緒に来て貰った方が良いか。置いていくとやっぱり死ぬだろうから。」


 「分かりました。私はこの空間を維持する為に最後まで残りますので皆さんで先に脱出を。」


 「分かった。」


 俺達は大広間に安置されたままにしていた聖櫃ごと女を回収し隙間を無理矢理広げて外の神域へと脱出した。


ーーーーーーーーーー


神域


 「おぉ?何だかさっきとはうって変わって小綺麗な感じになっているな?」


 訪れた時の荒廃した聖域とは周辺の状況が全く変わっていて、小高い丘と思われる場所に出た俺達は周囲を見回し仲間達を探したが皆それぞれ散って探索しているらしく、妙に綺麗に整えられた空間にマギアシリーズは全艦停泊し簡単なキャンプを築いていた。


 「これが本来の私の神域の姿なのさぁ。」


 ロペは位相空間へとバトルドレスを戻し、いつもの制服姿へとさっと着替えて辺りを散策していた。

それを見た他のクルー達もそれぞれバトルドレスを脱ぎ去り、思い思いの羽を伸ばしていた。


 まだ敵が居なくなったのを確認出来たわけでも無いだろうに、のんびりしたもんだなぁ。


 「大ぁ丈~夫だよ銀河きゅ~ん。もう此処は私がちゃんと取り戻したし、ラピスとしっかり接続してあるからちゃんと完全に把握出来ているから!心配なっしーん。」


 それなら良いんだが・・・ん?接続?


 「おいロペ、接続って何だ?何の話だ?」


 突然飛び出した謎の単語に首をかしげるが今はまだ説明するつもりが無いらしく、うっきうきの顔で俺の腕に纏わり付き非常に大きな基地らしき建物を指さした。

あんな建物有ったんだ・・・。


 「なあロペよ。此処ってのはさ、俺達が最初に来た場所であってんだよな?」


 「そだょー。あの時はもう外の空間なんか無かったから、見せてあげられなかったからねぇ。きれいでしょ~?」


 そうだな。


 何処までも澄んだ空。地平線の向こう側を想像させる木々や湖が見える。だが・・・。


 「もうイントエは居ないんだけどねぇ・・・。」


 俺はロペに手を引かれ・・・レイブに用意した人員輸送用のかごに乗り基地らしき建物へと向かった。








ミン・テックメン 三十二歳 超人種 元精神病隔離病棟患者


 産まれた時から異常な程膨大な魔力を有し、母親はミンを産んだ瞬間その膨大な魔力の波動に耐えきれず跡形も無く崩れ去ったと言う。

その後父親の手によって三歳まで育てられたがその父親も娘の魔力に耐えられず、ミンを冥王星中央大学附属病院の前に捨てて姿を消した。

 そして彼女は異常な魔力を抑える為に第三世にて光の枷と呼ばれる封印具を腕に付けたままで病院にて育てられたが、表層意識が安定せず常に記憶が定まらない状態であった為、五歳になる頃には隔離病棟へと押し込まれ、周りの人達も自然と関わる事をやめた。

 そんな状態のまま彼女は育ち、ある日光の枷が何故か崩れ去り成長するに従い膨れ上がった莫大な魔力が一気に外へと解き放たれ、病院とその周囲を廃墟へと変えた。

冥星軍によって討伐隊が組まれ、巨大な魔力爆発が起こった廃墟に一人の少女が視点の定まらない状態のまま立ち呆けていた。

後に討伐隊の参加者は「そこに居るだけで死を感じさせる程の膨大な魔力を感じた。それが魔王だと言われても疑問を感じない程の恐ろしい化け物だった。」と語っている。

 討伐隊は多くの犠牲を払い彼女を封印し、ヘルフレムにあった巨人族専用の拘束用独房へと閉じ込める事に成功するが、封印はヘルフレムの中であっさりと解け、その瞬間ミンという人格が固着し産まれた。

ミンはとても穏やかな人格をしており、人格が産まれた十五歳の当初より看守達によって見守られ育てられてきたが、度々記憶を失い本来居るはずの無い所に現れる事が起こり始める。しかも近づく人間に目を向けるとその人間が繰り糸の切れた人形のように死んでしまう事もしばしばあり、本人はそのことを知らないというおかしな状況が続いた。そんな事が長く続くと彼女は孤独に怯え、周りの人間を求め度々独房を自力で抜け出し看守達に助けを求めるようになったが、そこに辿り着くまでに突如として意識を失い独房へと連れ戻される、そんな生活が十数年続きこれ以上看守の殺害を看過出来なくなったヘルフレムは当時既に引退していた勇者イチロー・スズキへと協力を要請、彼の勇者として手に入れた最高の拘束具を使いミンを完全に封印した。

 ミンが意識を取り戻した時は、雨宮が暴れヘルフレムが上へ下へと大騒ぎになっているさなかで、雨宮がヘルフレムのエンジン部分を取り外した事で封印に使われていたエネルギーが消えミンは勘だけで雨宮を探し出し、脱出するシャトルの中へと飛び込んだ。

 その頃にはミンの精神は一時的にかろうじて安定しており、危機感が生まれ脱出に成功するもありとあらゆる事に怯えるようになっており、シャトルの中で偶然フェインと出会い、テンプテーションで無理矢理操られている状態が偶然にも一番周りの人間には安全であった。

 そして自立したフェインから彼女の事を知らされたロペは直ちに眷属化するように雨宮に直訴、雨宮は引きずられるように完全に魅了され人形のようになったミンを眷属化し、彼女のスキルによる大量殺戮の事件は幕を閉じる。


ムラサメ・タチ ハイパーヒューマノイド(旧アークデーモン種) 652歳独身


 (2) 近衛第二部隊所属 ティオレ隊 兼給仕部隊所属


 銀河旅団立ち上げ再編成の際、近衛部隊へと組み込まれる事が決まっていたが、基本的には食堂に居る事が多い。

眷属として近接戦闘能力が群を抜いて高く、自らの荷物を自分で作り出し体操空間へとしまい込んでいる彼女は、常に腰から愛刀『無血散水』下げ、そのままの状態で食堂に立っている。

無類の可愛い物好きでクリエイター能力を持つサダコや双子猫達に人形をねだっている姿をよく見かけられている。

又グロ耐性が極端に低くビビり。曲がり角で突然出くわした際喉元に刀を突きつけられるクルーが続出、一時雨宮に愛刀を没収されるなんて事もしばしば。

 本人は上手く立ち回っているつもりで居るらしいが、周りからは徐々にポンコツの烙印を押すものが増え始めている。


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