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EP34 銀河旅団

あさちゅん


 俺達がこの冥王星宙域の端っこまで来てからもう直ぐ一年が経過するらしい。だが実際俺自身は半分以上眠っていたので実感が全くない。その間も界獣は動かないし、第三世界も小競り合いこそあれ平和らしい。

危機に陥っている様子は全くないとの事で情報が完全に止められている事が窺える。

だがこれはバーバラの情報戦略の一環であるから特に問題視はしていない。

この情報をこちら側から意図的に封鎖する事で、時間を稼ぐという目的もある。

まだロペに殴らせる奴は他にもいる事だし。


 時間が経つにつれて戦闘状態を続けていく事に疲弊していく・・・・。なんてことは無いわけで。


 「ちょっとあなた!銀河さんから離れなさいよ!あなたテロリストでしょう!?刑期を終えてもいないのに何故ここに居るんですか!?」


 「キーキーとうるさいでんなぁ?あんたこそ旦那様に手ぇ出して只で済むとでもおもてんのかぇ?」


 両方の腕に豊かな送球を押しつけながらいがみ合うこの双子達、ギュウギュウと押し合いながら喧嘩するのをやめねぇか?非常に歩きにくい。


 艦隊全体のスケジュールを合わせ集合をかけるのに約一週間かかったが、それぞれが今現在の目的を見失う事無く着々と準備を進めている。


 「手を止めさせて逆に悪かったかね?」


 「そのような事はございません。皆主様がお戻りになる事を心待ちにしておりました。」


 「そういうことです。時間を頂けた事で補って余る程の戦力増強が可能となりました。今ならあの動かない界獣を私達だけで絶滅させる事が可能です。」


 前を歩くライとティオレはこちらを振り返る事無く前方を警戒しながら、気を遣ってくれているのだろう。

だが・・・今ちょっと気になる事を言いましたねライ・・?


 そんな俺の気がかりを余所に、通路毎に集まった各艦のクルー達が俺が通り過ぎる度に左手を肩に当て、背筋を伸ばす。


 「あれは一体何だ?」


 「オリジナリティー?を演出したかったとか言っていたような気がしますが?」


 なんだそれ、どこかでありそうな動きじゃ無いかね?


 「まー、敬礼みたいなもんだょ。因みに銀河きゅんの敬礼は左手グーでそのまま親指を胸にドン。後は右手で・・・。」


 「ちょっと待て、なんだその誘い受けみたいなポーズ。」


 「かもぉ~んって言ってもいいのよ~。」


 上役の女達は皆遊び心が豊富である。主に俺を巻き込んでくれるがやめてください。


 「みんなスリスリしたいのを我慢しているのよ!褒めてあげても良いと思うわっ!」


 何だか久しぶりに見たような気がしないでも無いショウコ。獣人系の女子達は皆ちぎれんばかりに尻尾を振って敬礼をしている。非常に歩きにくい状態のまま何とかドックに辿り着いた俺は目を見張った。


 (こんなに沢山いたっけ!?めっちゃ人が増えてるんだが!)


 先ほどからここに辿り着くまでの間、通路にぎっしりクルーがいたのはこのせいだったのか。

今の段階で広いドックの作業スペースにものすごい数のクルーが集まっている。そしてそのど真ん中に一段・・・いやこれは前に使った朝礼台?より一回りデカいな?

そんなサイズのお立ち台のようなものが置いてある。そして俺はちょっと逃げようと身じろぎするも、両脇を黒いバラの棘に絡め取られている為どう動いても幸せ・・・じゃない。逃げられない。


 「アン。旦那様逃げたらあきまへん。」


 「もぅ。ちゃんとするのよ?」


 何だかなぁ・・・。


 年の近い二人は何故かこの一週間ずっと俺の側を離れずこんな調子で俺の世話を焼いてくる。それにロペとティオレを合わせて何故かこの五人・・・・?

よく考えてみたらこの一週間、俺は一人になっていない事に気がつく。


 (あぁ・・・一人になりたい禁断症状が出そうだ・・・。)


 させねぇよ?と聞こえてきそうな視線が四方八方から刺さる。


 何これ居心悪い。


 そうこうしているうちに俺はお立ち台の上に一人取り残される。

ロペはお立ち台に上る階段に腰を下ろしGOGOと俺の行動を促すが、こんなところで一体何をするんか。

俺はこれから何をしようとしているか、とか、スキルを切った影響の確認とかしてみたかっただけなんだが・・・?


 そしてドックの扉が閉まった音が響き、何故か増えた身内、総勢約八千人のクルー達の視線が刺さる。

見渡す限り・・・女・・・女・・・女・・・女?・・・男?


 ちょっと割合がおかしくないかな?なんでこんなに女ばっかり何だ。

女か男かわからんような奴も結構混じっているし、どっから連れてきたらこんなことになるんだか・・・。


 「あー・・・。なんか期待してるのか分からんが・・・そんなに大したことじゃ無いから肩の力を抜いてくれ。」


 ぐるーっと見渡してみると様々な種族かいる。人種はもとより、獣人種、機人種、人工人類種、エルフ種、ドワーフ種、フェアリー種、オーク種なのかな?豚耳の可愛い女の子もいる。

それにひときわ目立つのが巨人種の女達。つい先頃巨人族の女達の壮絶な生い立ちを聞いてしまった事でより目がいく。

 まぁ単にデカいから目立つというのもあるが。そしてその肩の上や頭の上には、比較的小さい・・・と言うかあの距離で彼女たちの上にでも乗らないとこっちまで見えないのだろう。

ホビット種や、デーモン種とフェアリー種のハーフとも言われるインプ種の女達小柄な娘達が乗っかっている。

 幹部と呼んでも差し支えのないブリッジに出入りするメンツは比較的お立ち台の近くにいる。イントなんかもうかぶりつきである。お立ち台の真下でキラッキラの目でこちらを見ている。

その周りにはファムとネシア、アイリーン、千里、ゼルミィにフレイミィ、野郎どももこの押し合いへし合いの中で、両脇にわざわざ女がいるポジションを取る当たり抜け目ない。

新庄はイントの真後ろにぴったり付けて、その後ろの女達にイントが潰されないようにガードのポジションに入っている。その新庄の左右を固めるように背中に『イントたんラヴ』と金の糸で刺繍された法被を着たクルー達がスクラムを組んでいる。


 皆元気で何より。


 「皆俺が居ない間、尽力してくれていた事を感謝する。」


ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 地鳴りかと思うような咆哮。


 ’(数の力ってすごいわ。)


 「長い間快適ではあるとはいえ、艦内で過ごしていたことは少なからず負担になっていると思う。」


 先ほどの方向とは打って変わり総長の水面の様に波一つ立たない静けさ。


 「だが皆が温めたこの期は熟したといえるだろう。」


 ちらと、足元にカンペが現れる。


ーー此処に、銀河旅団の結成を宣言する


 !?つい口に出して読んでしまった!

しかも何の脈絡も無い話じゃん?


 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!



 えー・・・。


 俺は不自然でない程度に頭を抱え後ろを向く。


 ロペは心底楽しそうにしししっ!と幹部連中の肩を抱え笑っている。


 あー・・・もぅ・・・。


 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「銀河旅団!」」」」」」」」」」


 それぞれが鍛えられた精鋭たちであることもあり、凄まじい声量。全方向からそれが俺に向いてくる・・・。

まるでライブ会場にでもいるような錯覚を覚える。・・・一度も行ったことはないが。


 俺は頭を掻きふと顔を上げる。すると水を打ったように再び静かになるドック。


 (よーもまぁ訓練されとるこって・・・。)


 「はぁ・・・。でだ、旅団の初戦果は異世界からの侵略を止めるって事で良いか?」


 ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 ・・・と言うか、女の子ばっかりの筈なのにうおーって・・女子的に有りなのか?


ーー皆ノリが良いのです


 俺に宿るナノマシンの奥底からそんな声が聞こえた気がした。


 「まずは界獣どもを殲滅して、海王星ダンジョンへと進路を開く。然る後ラピスを先頭とし、ダンジョンへと突入する。パイロット各員は各自機体のチェック、メンテナンスクルーは出撃機体の点検が終わり次第予備機体のチェック及機体交換マシンスイッチのスタンバイだ。

各艦ブリッジクルーは各々の艦のチェックが終わり次第、船団陣形スキル(マギアフォーム)のプログラムチェック及びコンティションチェックに入れ。

白兵戦部隊はバトルドレスの駆動チェックを怠るな。あと・・・。」


 俺が矢継ぎ早に指示を飛ばす姿に固唾をのむクルー達。


 「キッチンスタッフはみんなのご飯とお弁当の準備を速やかに行うように。」


 飯ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!


 そこ食いつくとこかね?


 「情報によって相手側も一応人間である事が確認されているが、ダンジョンを抜けるまでどの程度時間が掛かるか予想できない。各艦長は情報の更新がされ次第、改めて人員配置の整理を行い長期戦に備えてくれ。」


 「「「「「「「「「ハッ!!!」」」」」」」」」


 皆の気合いは満タンと言ったところだろうか。


 「良し、では各々方解散し奮起せよ。」


 ・・・なんか変に時代がかった言い方になったが気にしないでおこうか・・・。

なれない事はするもんじゃ無いな。


 ・・・・・・・?


 解散と言ったのにまだ誰一人動こうとしない。なんでや・・・。

やっぱり変なしゃべり方になったんがあかんかったんか・・・?


 後ろからツンツンとカンペが渡される。


 ・・・?


ーーおかえり。


 あー。


 「みんなただいま。」


 「「「「「「「「「お帰りなさい!」ボス」マスター」にーちゃん」銀河様!」銀ちゃん!」兄様!」銀河!」雨宮様!銀!」」


 こういうのは初めてかもしれない。ちょっとうるっときた。もう年だな俺も・・・。


 とうとう新庄達イント親衛隊のガードが決壊し、皆がお立ち台に押し寄せてきた。それと同時にティオレ達テ・・テンプルナイトだっけか?各方面に面した扉を開ける。

俺はよっこらしょっとお立ち台の縁に腰を下ろし、手を上げてキャーキャー言う娘の手をぺちっと叩いた。

するとどうだろう。何故かそこに突如として列が出来先ほど手を叩いた娘は、「私もう手を洗わない!」とか言いながらドックの外へと走り去っていった。


 いや、洗え?


 パチンパチンとハイタッチの列を消化していく俺、そしてその列の整理に当たるラピスのクルー達、他の艦の者達は俺とハイタッチしてそのまま流れるように自分達の艦へと戻っていく。

何だろう・・・アイドルってこんな気分なのかなー?


 しばらくハイタッチが続き、漸く他の艦のクルー達が全員いなくなった事でラピスのクルー達は一息突く事が出来た・・・。しかし。

 

 「あ・・あの・・・私達は・・・?」


 ん?思いのほか体力を使った皆は思い思いにそこいらに座り込み談笑していたが、一人の犬耳クルーがそっと手を出してきた。ここしばらくの間で見た事の無いクルー。ナノマシンによるスキャン結果は。


ーーーーー


トト・風魔 犬獣人種 22歳 


Lv 56 職業 聖なる拳(パラディン)


HP 14550


MP 5500


状態 不安


スキル 種族スキル ハウリング


    個人スキル(先天)神速歩行 超嗅覚


    後天スキル 風魔忍術Lv5

          風神抜手エアーバッシュLv4

          忍耐Lv7

          房中術Lv4

          気配察知Lv5

          罠探知Lv6

          風雷魔法Lv3

          風魔法Lv7


ーーーーー


 風魔・・・。ふーま・・・ふーーーま・・・・?

どっかで聞いた事があるな?あー・・・前見たのは甲賀か。しかしいつからここに居たのかねこのワン娘は?

データベースを見てみても情報が無い。


 「お前さんいつからここに居るんだい?」


 そう質問すると、ハッ!!?と耳と尻尾を逆立てて離れようとするが俺はそっと頭に手を置き、やさし~く力を込める。


 「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」


 「侵入者でござるな。」


 俺が片手でわんこを持ち上げて遊んでいるとござるが現れ、まじまじとわんこの顔をのぞき見る。

少し考えるような仕草をしてござるはその知識を披露してくれた。


 「この娘は風魔四姉妹の末っ子でござるな。大方商業国家にでも雇われて偵察に来たのでござろう。風魔には惑星間移動可能な小型の高速戦闘機がありますからな。あのものぐさな長女のことですから、自分に振られた依頼を末っ子に押しつけたのでござろう。」


 ほほう。風魔四姉妹とな?


 「ござるその話詳しく・・・聞きたい所なんだけど・・・。」


 「流石に今この話をすると親方様の興味をひきずぎる様な気がします故、作戦の終了後と言うことで。」


 「うむ、俺もそう思っていた。このわんこどないしょかね?」


 「きゅ~~~・・・。」


 わんこは頭への激痛に耐えかねて目を回していた。


ーーーーーーーーーー


 「全艦隊発進準備、全艦隊発進準備、ただいまの時刻をもって海王星ダンジョン攻略作戦を開始します、各艦パイロットはスクランブル待機白兵戦闘員はバトルドレスを装着し待機せよ。繰り返し・・・。」

 

 新庄の渋い艦内通信が響き渡る中、モニターに映るクルー達は慌ただしく動き、それぞれの備えを正しく行っているようだ、非常に良く訓練されている。

この数ヶ月でクルー達の練度は飛躍的に上昇し、各々が自らの役割を全うしようと目を輝かせている。

元海賊、元囚人、元連合軍兵、異世界の住人達。種族も育ちも様々な皆が一つのことに向かい研鑽する姿は俺にとってはとてもまぶしく映る。


 マシンのチェックに奔走する者、バトルドレスの調整に余念のない者、精神統一を行い自身を研ぎ澄ます者、皆それぞれ思いもあるのだろう。


 ブリッジに戻った俺は自分のシートの座り心地に一心地付き、右手に掴んだままのわんこを思い出した。


 「おっと忘れていたぜ。」「うそじゃん!」


 すぐさま隣のジェニ様から突っ込みが入る。ありがたいことです。


 「つい持ってきてしまったわ。」


 「どうすんのその子?取り敢えずここのシートにでもくくりつけておくしか無いけどぅ。」


 言うやいなやロペは手元のコンソールを使いシュッと客人用の補助シートを展開する。


 「じゃあそれで・・・「私の席は!?」ー。」


 ジェニ専用のシートとなりつつある副官席の横の客人用シートは埋まってしまった。さあどうするジェニ。大人しく部屋に戻るか!?


 「ぎんちゃ~ん?」


 ジェニとロペがやいやいと言い合いを始めている間に、艦内の様子を観察していたエリーは何かを見つけたようでスピーカーを切り替えた。


ーー誰か!聞こえるなら返事してくれ!伝えたいことがあるんだ!ここの責任者の方は居ないか!?


 「あれは・・・。佐藤洋介・・・。本物かな・・・?」


 なんともタイミングの悪いことで、今の今まで何をしていたのかと思ってしまった俺は捻くれているのだろうか?目を覚ましていたのは知っていたが、なんだかんだで俺の知るよう君と同じ人物であるか計りかねている。スキャンの結果はほぼ間違いが無いのだが・・・。


 「銀河さんのお知り合いですか?」


 「前世で雨宮の家の直ぐ近くに住んでいた・・・小学生だったよな?」


 「ああそうだ。だが・・・そうだな。転移したとしても時間軸の違いがあったりするし、転生しているならそもそもって話だからな・・・。」


 俺は手元のコンソールを操作し牢屋に声を届けるように操作する。


 「よう君かな?」


ーー!!!その声は銀河さん!何故ここに!?


 良く声だけで分かったな・・・。さすがは勇者・・・?なのか?自分の声なんて意識したことも無かったから前世と変わっていないとか変わっているとか全く分からん。


ーー今何をしているんだ?どうしようとしている!?


 「これから君たちの来た閉鎖世界のトップを潰しにいくところだよ。君も連れて行くんだけどさ。」


ーーそんなコンビニに行くみたいな良い方・・・。


 「取り敢えずここに来ると良い・・・発進してからね一応。」


 その言葉を聞いたロペは牢屋の見張りに声をかけ彼を案内するように指示を出したようだ。


ーーーーーーーーーー


 前回来た時はギンサーガと強襲型だけで来たが、今度はマギアシリーズ十隻全軍での侵攻だ、今回は前のように無駄に力を使うようなことはしない。俺のスキルを使う為無駄なパッシブも切った。因みにスキルのレベルはこの世界に来てからずっと使っていたせいで、既にレベルは10。これ以上無いぐらい無駄遣いだわ。

今まででこのパッシブが効果を発揮したのは・・・数えるくらいだな。新庄に急所を撃たれた時とか・・・。・・・・・その時ぐらい?


 おのれ新庄・・・。じゃない。


 既に艦隊は前進し、目の前には司令塔を失い漂うだけの肉塊・・・界獣達がうごめいているが・・・俺はここへ来てふと思い出す。


 「コロニーに寄るの忘れていたな?クルファウストの息子だったか、ほったらかしになっているが・・・いいよねもう?」


 他のブリッジクルー達もこのところ準備から何から忙しく動き回っていた為か、誰もそのことを覚えていなかったようで何人かは首をかしげている。


 「あー・・・バーバラから連絡が行っているかもしれないねぇ?」


 「しかし今更戻る選択なども無いだろう?もう敵地だぞ?」


 良し。


 「海王星ダンジョン攻略へレッツゴー。」


 忘れよう。


 「おー。」


 ロペはやる気の無い返事をしつつ忙しそうに手元のコンソールを叩きながら、各所へと指示を出している。

新庄達オペレーターも艦隊行動の連携の為かAR宙域図を操作し各艦に指示を出しつつ、陣形を維持している。


 「時々シールドに小型の界獣が当たっているようだが、問題は無いか?」


 「はい主よ。当たってはいますが減衰率は微々たるものですので即時修復可能です。」


 ラピスを先頭にぐいぐいと押しのける感じで小型の界獣を押しのけつつ、ゆっくりと隙間を塗って進んでいくと大きな惑星が視界に入ってきた。


 「海王星か・・・。」


 海王星自体は見たこと無かったが、球体のコロニーがポツポツと周辺にあるのが見える。あの中に移住した人達が住んでいるのだろうか。それとも別の何かがいるのだろうか。

 ぐんぐんと近づくコロニーを通り過ぎ一際大きなコロニーへと近づく。そのコロニーの直ぐ近く人工衛星が多数浮かぶなか淡い光を放ち自己主張する様に徐々に光を増している。


 「主の帰還を待っていたようだな。」


 海王星圏を統括する首都コロニーネプトラティア、その機能はダンジョンを管理することに特化している。様々なレーダーやセンサー、時折ダンジョンからあふれ出てくるモンスターを討伐する為の防衛装置。

太陽系連合軍海王星方面軍の司令部を擁するこのネプトラティアは、その性質から非常に大きなコロニーで有りコロニーの機能が完全であった頃には数多の連合軍艦を停泊させる超巨大ドックの役割も果たしていた。

そのドックの使用者の中にはクランと呼ばれる冒険者達の集まりで形成された集団も存在し、大型クラン『緑血の瞳(りょっけつのひとみ)』有する大型戦艦も多数停泊しているはずだった。


 「ござるか。」


 気配も無く俺のシートから一歩離れた後ろに現れるござる。よく見るとござるも何故か制服を着ている。


 「ハッ。殿から許可を頂きまして直ぐに集められうるネプトラティアの情報を集めました。」


 慌てなければ中々優秀な諜報員なんだよなーござるって。

頭を使うより身体を使う方が得意らしいけど。


 「ネプトラティアはスキャンの通り海王星圏の首都としての機能を持っております。それ故非常に多くの人々の集まる・・・所謂都会ですな。そういうコロニーであったと言うことです。

五年前の時点での情報しか無いのが無念ではありますが、当時の総人口は約四十億人相当な大所帯でありますな。主な産業は金属加工などの重工業、そして数多の戦艦を製造し販売するメーカーの犇めいていた場所でもあり、当時の太陽系の最先端技術が集まる最重要拠点でもありました。・・・そして・・・。奥方様の・・・神域と呼ばれる空間へとつながる唯一のルートでもあります。」


 神域か。そこに拠点を造っているとの話だったな。あちらさんの技術がどの程度のモノなのかは分からんが、進行してこないことを思えばひょっとすると科学技術なんかはそう大したモノでは無いのかもしれないな?


 「クルファウストにつないでくれ。」


 「りょーかいなのー。」


 エリーがクルファウストの研究室を呼び出し、モニターにクルファウストの姿が映し出される。


ーーおお。主どの間もなく到着ですな。


 「気になることがあってな、今占拠されているであろうネプトラティアには、多くの戦艦やSWが配備されていると言う話を聞いたんだが、あちらの技術でそう言ったモノをどの程度運用できるか分からないか?

今の時点で戦艦が出てこない。俺はひょっとすると・・・と思っているんだが?」


ーーその考え、当たりですな。私共の産まれた世界は所謂専制君主制、そしてその君主が世界全てを掌握しておりました。しかし、この世界と比べれば比べるべくもない程小さい世界でした。大きさで言えばそう、その海王星と同じぐらいでは無かったでしょうかな・・・。詳しくは調べたことが無かったので省かせていただきますが、宇宙などという空間も存在せず空は見えない壁に覆われ世界の端は鏡のような壁に覆われておりまし  た。・・・おっと技術的な話でしたな。あの世界では科学という概念が存在しません。この世界で言えば文明レベルは古代・・・と言ったところでしょうか。せいぜい金属の加工に試行錯誤している程度ではあります。

 しかし、私共は魔術と呼んでおりました、魔法。この技術はこの世界のモノと匹敵する程であると考えられます。非常に恐縮ではありますが事私の研究していた人造生命体に関しましてはこの世界よりも・・・。


 「それは無いね。」


 クルファウストの話を遮ったのは意外なことにジェニだった。俺はロペがいつ絡むかと内心考えていたのだが違うところからの言葉だった。


 「あたしも眷属になって浅い、だがロペと情報を共有するようになってから一つ気がついたことがあった。」


 ジェニはそう言うとクルファウストのスキャンデータと自分のスキャンデータ、そしてついでのように扱われているいぬっこのスキャンデータの三つを表示した。


 「あんたのスキャンデータにはβ種、というデータがある。それに覚えはあるかい?」


ーーβ種・・・ですかな?はて・・?


 クルファウストも自分のスキャンデータを確認し首をかしげている。


ーーそう言った表示はありませんが・・・。


 成る程。


 「閲覧制限が掛かっているな。」


 「恐らくそういうことさね。」


 この世界にはこの世界のルールがある、そして又あっちに世界にも何かしらのルールがあるのだろう。

その中にそういう都合の悪い情報を確認できない様にする、制限があるのだろう。


ーーでは皆さんには・・・。


 「わたしにもみえるのよー。」


 「私にも見えます。」


 「俺もだ。」


ーーではアイリーン殿は・・・。


 「私は眷属だから・・・。」


ーーそうでしたな・・・。


 「まぁその辺の考察と確認は勇者がここに来てからでも良いだろう。で?」


 俺はジェニに話の続きを促した。ジェニも考えついたことを吐き出したくてうずうずしているように見える。


 「このβ種のベータ。これは試作品・・・と言う意味じゃ無いのかい?と思ってね。どういう理屈でこの表示になるかは今のところ分からない。けど、βっていやぁ私は開発段階って言う言葉が思い浮かぶんだけどねぇ?」


 俺もそうだ。α版で無いだけまだその先を行っているのだろう・・・なんてフォローにも成らないことも考えたが、そういう話じゃ無い。βと言えば正式では無いと言うのが先に思い浮かぶのは俺がゲーム好きだったからだろうか?そう言ったモノに興味の無い人達にとっては又違う考えがあるかもしれないが、少なくとも俺はそんな風に感じる。


 「確かにな。俺も気になってはいた。俺が造った身体にはそう言った表記がされたことは無い・・・とは言っても俺に閲覧権限が無い可能性も捨てきれないが。」


 「銀河きゅんにはもうそんなの無いょ。有るとすれば・・・。たぬきのち〇このふぐり巻きのほどほどこねくり回す位じゃ無いかな?」


 !?


 今引っかかったな!?何を言おうとしていたんだ?もうえっちぃー!・・・じゃなくて。


 「ぐぬぬ・・・。」


 ロペ姫様はお怒りのようである。せめて隠蔽するにしてももうちょっとなんか選べないモノかね?

何だか作為的なモノを感じざるを得ない。


 「まぁまぁ・・・しかし俺にも分からないことがあるって事が分かっただけでも良しとしようか。」


 「ふんぅ~。委員会めぇ・・。」


 委員会か・・・。


 「それより、もうそろそろじゃないか?」


 俺はモニターに映る目前まで迫ったネプトラティアへと目を移すが、通信が繋がる気配が無いらしく、既に電子戦部隊がハッキングをかけているという報告を受けた。


 「うちには機人種も沢山いるからな。直ぐに・・・と。」


 新庄が話をし終わらないうちにどうやらコントロールを奪ったらしく軍艦用のメインドックのゲートが重々しく開いていく。重々しく・・・。


 「何だか動きが悪いな・・・。」


 「そりゃぁ五年も放置されていたんじゃ、まともにメンテナンスもされていないでしょ。」


 それもそうか。技術水準の差とはかくも恐ろしい。


 ・・・はて?


 「どうでも良いことかもしれないが・・・。」


 「どうした?雨宮。」


 ・・・。


 「中も五年間放置されていたのかね?」


 「「「「「!?」」」」」


 皆一様に驚愕の表情を浮かべる中、ロペは冷や汗をかきながらコロニーの状態を確認しているようで、様々なパラメーターを流し読みのような感じでざっと確認している。


 この距離まで近づけばナノマシンを直接コロニーへと送り込むことも出来るし、俺も確認してみようかな。


 「銀河きゅん。悲しいお知らせと残念なお知らせと、絶望的なお話と・・・どれから聞きたぃ?」


 「全部聞きたくないんだが・・・。」


 どうやらバーバラの輸送船団は流石にここまでは来られなかったようで、ここの情報は全くと言って良い程更新されていない。あのドックの開き方を見た時点でなんとなく嫌な予感はしていたんだよなぁ・・・。


 「銀河きゅん。悲しいお知らせと残念なお知らせと、絶望的なお話と・・・どれから聞きたぃ?」


 「わかったわかった。全部聞くから・・・。」


 俺はあえてナノマシンから得たデータを読み取らずプールしておくことにした。さぁ・・・聞こうか。


 「じゃぁ・・・。テンプレだな。絶望的な奴から聞こうか。」


 「ふふふ・・・ぅ・・・。あのね。」


 ふぅとため息をつきながら重々しく開いたロペの口からは、案の定絶望的なお話が出てくるわけで。


 「中には界獣しかいません。」


 「駄目じゃ~ん。」


 そう・・・ここのゲート開きっぱなしだよね。俺モンスターが出てきちゃっているのかと思ってた。


 「ダンジョンがめちゃくちゃになっています。」


 「なんやとゴルァ!!!!?」


 わらわば笑え。今の俺は電気ケトルよりも早く沸騰するぜ。


 「それってどういうじ状況なの~?」


 エリーも俺の突然の叫びに苦笑いしながらロペに続きを促していく。


 「なんかねぇ、一本道になってるくさい。まーっすぐ。」


 ハァ?


 開いた口がふさがらないぜ。何してけつかんねん。


 「俺めっちゃ楽しみにしとったんやぞ!!!!」


 「ま・・・まぁまぁ銀・・・落ち着いて・・・な?」


 ジェニが俺を気遣ってくれる。うれしい。でもちゃうねん。


 「俺めっちゃ楽しみにしとったんやぞ!!!!」


 つい二回言うてしまうのもしゃーない。


 俺は楽しみにしていた。初めてのダンジョン。


 それは男のロマン。


 それは男心をくすぐるファンタジー。


 それは・・・愛。


 じゃない。


 「一本道のダンジョンておかしいやろが!それダンジョンとちゃうやろ?なぁ?」


 「確かに・・・。そう言われれば・・・いやしかし・・・。」


 そして更なるロペからの追撃が放たれる。


 「モンスターはいません。」


 「よし。滅ぼそう。」


 「「「「「「「「「「まて!!!」」」」」」」」」」


 こんちくしょうが!


 只のトンネルじゃねーか!誰だよダンジョンなんて言った奴は!?俺も折角ダンジョンデビューしてレベルアップしたいとか思っていたってのによ!


 「・・・絶望的な話は分かった。次は?」


 「悲しいお知らせかなぁ・・・。」


 もう既にかなり悲しいんだが。


 「んとねぇ・・・。人間がいません。」


 それは別に悲しくないかなぁ・・・知り合いなんて誰もいないし・・・。


 「んー・・・。情報源としての人はいないかもしれないけど・・・ナノマシンの栄養としての元人は、いっぱい居るよな。」


 「じゃあ残念なお知らせ。」


 はぁ~・・・。いろいろ残念すぎてダメ押しが怖いんやけど・・・。


 「海王星ダンジョ・・・トンネルの中の界獣達は倒してもレベルが上がりません。」


 「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


 燃え尽きたぜ・・・。まっしろにな・・・・。


 「銀河さんしっかりっ!」「ぎんちゃぁ~ん!」


 エリー・・・イントたん・・・俺はもう駄目かもしれない・・・。

じゃあ一体海王星ダンジョンってなんなん??


ーーーーーーーーーー


 三分後


 「ハッ。」


 俺は一体何をしていた・・・?

 

 「お帰り銀河きゅん。もうすぐ神域に付くよ。」


 「早くね!?」


 「だって真っ直ぐだから・・・。界獣も動かないしはっきり言って押しのけて進んでるだけだょ。」


 きっと皆相当な激戦を考えていただろう。俺もそうだ。中にはモンスターが犇めいていて迷宮のように突破が難しいダンジョンで、うちのマシンも白兵戦闘員達もある程度覚悟はしていた。

だがご覧の有様だよ・・・。


 平・和・SO・NO・MO・NO!


 モニターに映し出された延々と真っ直ぐ続く機械的な壁、ラピスの正面には気持ち悪い姿の界獣達がミチミチとうごめいている。ちょっとすいませんよ・・・。なんて感じでその隙間を無理矢理こじ開けてマギアシリーズ十隻はぐいぐいと押し進んでいく。


 只それだけ。


 「普通のダンジョンであったなら、最深部の神域に到達するまでに四半期・・・四ヶ月は見積もっていたんだけどねぇ?まさか今日中に着くとは思ってなかったょ・・・。」


 流石のロペそもそもダンジョンがある想定でしか作戦を考えていなかったようで、戸惑いを隠せないようだ。


プシューン


 「ボス!男を連れてきました。」


 元気の良い声が弛緩した空気に支配されていたブリッジに響き渡り、開いた扉にはこの度改めて雨宮直属の近衛部隊へと転属した元デーモンのアマリーと、全裸の佐藤洋介がやってきた。


 「アマリー。一つ質問があるんだが。」


 「はいボス。」


 「彼は何故全裸なのかな?」


 「それは僕も聞きたいんだけどなぁ・・・?」


 あれ・・・?最初認識したアマリーは持っとこう・・・クール系というかもっとなんだろう?姉御系だったような気がしたんだが・・・。


 今のアマリーは雨宮のナノマシンによる実験に度々付き合わされているせいで、会う度に外見が変わってしまう為雨宮自身の中でも情報の齟齬が出来てしまっていた。


 「お前、前呼んだ時そんな姿してたっけ・・・?」


 「銀河さんそれより俺の服・・・。」


 あぁ・・そうだったな。


 雨宮はナノマシンに命じ新庄が着ている皆と揃いの赤い制服に、ゲストと分かるような腕章を付けて洋介に着せ付けた。


 「何が起こったのか分からないけど、下着は無いんだね・・・まあ今は良いか・・・。ってそうじゃなくて。今どこに居るの?」


 「もうすぐ神域・・・閉鎖世界の王様がいるところに着くんだとよ。」


 「早くない・・・?」


 「直ぐそこだったからな・・・何故か。」


 俺はつい憮然とした表情のままでシートに背を預けたがそこで背中に何かが挟まった。


 「むぎゅぅ。」


 「いぬっこ起きてたのかよ。何でそんなとこに挟まってんだ?」


 「わかりませんよぅ・・・。」


 あぁ、結局何処に座らせるか決まらなかったから適当に押し込まれたのね。

ジェニは結局いつものゲストシートに座っているし。というか、シートの背もたれに引っかけられていたいぬっこに気づかない俺もどうかという話。


 「まぁそんなことはどうでもええんや!」


 「ひどいぃ~。」


 一応聞いておくか。


 「君は本物の佐藤洋介で良いのか?俺の知ってる小学生の。」


 そう聞くと洋介は過去の自分の姿を思い出し頭をかき苦笑する。


 「そうですね。銀河さんは全然見た目が変わっていてぱっと見ただけじゃ分からなかったですよ。」


 前世の俺はお世辞にも観られるような容姿では無かったし、普通のデブのおっさんだった。

そこから考えれば見ただけで分かることなんか何も無いだろうよ。それでも声は殆ど変わっていないらしく、それで彼は俺のことが分かったらしい。


 「国王をどうするつもりですか?」


 「その質問に何か意味があるのか?」


 俺の中で答えは既に決まっている。そいつが居なくなることで何か大きな変化が現れることがあるかどうか、それだけを考えていた。俺の中で出た答えはNOだ。正直変な奴を自分の中に取り込んだりしたくないからナノマシンで分解して隔離してサイナラ。

これで終了。


 どちらかと言えば、ダンジョンやこのダンジョンを有するコロニーの今後をどうするかと言う問題が新たに出来たことで、そっちの方を考えたいと思っているのが実情。抵抗するならちょっとやってみたいことがあるから実験してみようと思っているが、抵抗しないならサラッと分解ばらしてロペからいろいろ話を聞きたいわけで・・・。


 抵抗はきっとあるんだろうけど、今此処に居る時点でもう負けはないと勝手に考えてしまうのは俺の悪い癖なんだな。


 「洋介君はどうしたい?」


 「俺はちょっとけじめを付けたいと思っています。あいつには散々痛い目に遭わされたんで。・・・あと他の四人のことなんですが。」


 そういえば何人か居たな?知り合いだけピックアップされたせいで霞んでいたが、何だかとっても大事なことが聞けそうな人が一人居るよな。


・・・太蔵じゃ無いぞ。


 「エマとか言う奴はうちで貰っても良いのか?」


 「貰うって・・・。本人がかまわないのなら別に良いのかもしれませんけど、彼女は俺の母親みたいな人なんであまり手荒なまねはやめて欲しいですけど・・・。」


 「まぁ事が済んでから・・・かな。」


 そんな話をしているうちにモニターに映し出される景色が変わり、廃墟のような場所に出た。

界獣もここには居ないらしい。所々にテントのような掘っ立て小屋のような・・・とても前線基地とは思えないような質素な集落がある。


ーーーーーーーーーー


神域


 俺はモニターに映し出された景色を前に首をかしげていた。


 「なんじゃいこりゃ?」


 「スラムかなぁ?」


 「それにしても酷いの~。」


 「とても人が住んでいるようには見えないな。」


 そんな中でイントは辺りをレーダーで検索し何かを見つけた。


 「ごくごく微弱な魔力反応が集まった場所があります。恐らくその辺りに目標が居るものだと思われます。」


 正直意識して感じ取らないと見過ごしてしまいそうなレベルの反応だ、本当に生きているのかどうかさえ危ういレベルの魔力反応。

それが一カ所に集中しているのだという。


 「広い空間だからこのまま近くまで行こう。一応ナノマシンもばらまいておくか。」


 「了解だ。・・・全艦微速前進。」


 「了解ですわ。微速前進。」


 「パイロット各員へ通達、艦外へ出撃よろしくお願いします。戦闘行動は許可されていません。周辺の警戒に当たってください。繰り返し・・・。」


 「近衛部隊は出撃準備なのー。」


 さて・・・拝んでくるとしますか。王様とやらのご尊顔を。


ーーーーーーーーーー


荒野のキャンプ


 ・・・。


 くっさ。


 「うっかりバトルドレスを着てこなかった俺に反省を。」


 俺は外に出て瞬時にバトルドレスを虚数空間から取り出し装着する。ナノマシンをばらまかずに匂いをカットするにはこれが一番だ。・・・とは言ってもこれ自体もナノマシンで出来ているのでどっちがどっちという話ではあるが。


ーー銀河さん目標地点と思われる魔力反応の集まりは徐々に減っていっています、このままでは消えてしまうかもしれません。


 「何だと?消える?」


 俺の斜め左後ろにすっと降り立ったのはティオレ、フルフェイスのマスクの為顔は見えないがリンクシステムによって誰が誰だか分からないようなことは無い。・・・こういうのも魔法をしっかり身につけていれば魔力の反応で分かるのだと言うが、何故か俺はまだうまく魔力が操れないのでそういう感覚的なことは分からない。

まぁ・・・違う感覚なら俺も持ち合わせているので触れば一発で分かるのだが、そういう話では無いか。


 「主様。周辺の索敵は終了しています。」


 「あぁわかった。」


 更新された情報に目を通すと、周辺のマップとその詳細なレポートが表示される、この几帳面さはアミィたんか。


 乾いた砂が吹きすさぶ荒野のようでいて、砂漠のようでもあり、谷のようでもある不思議な地形。どこか継ぎ接ぎさを感じさせる不自然な地形だがそのつながりも又不自然だ。レポートには地形と地形の隙間があるとの報告が上がっている。


ーー銀河きゅん隙間に墜ちないように気をつけてねぃ。神域の狭間に墜ちると存在が否定されちゃうから。


 なにそれこわい。


 一体誰に否定されるっているのさ・・・。


 「理屈はよく分からんが足下には気をつけろって事だな。」


ーーそんな感じ。


 「良し。前進する。」


 今回は何故か分からないが最初からクライマックスなせいで、いきなりダンジョンの最深部神域へと到着してしまった。それ故に最高の戦力で挑むべしと、俺の中の誰かの意識が囁きかけてきたような気がした。

もう俺の中にいっぱい人がいるってのは諦めることにしよう。その内全員吐き出してやる。


 朽ち果てたテントの並ぶ砂地を越え、小さな神殿のような建物が見えてくる。

と言うかそれしかないとも言う。


 「界獣すらいませんわね。」


ーーこんなとこに又出てこられたら困るわぁ。


 ロペは何処まであるか分からない上空を自分用にカスタムした強襲型レイブで優雅に飛んでいる。

重力は地球標準1Gなのにそんなにひらひらと動き回ってエネルギー持つのかね?


 「寺院というか神殿というか。」


 「廃墟ですね僅かに人の気配がありますよ?」


ーー旦那様ぁ?レイブで突っ込んでみよかぁ?


ーーそんなことしたら崩れそうですけどね?


 エクスとヒューニのやりとりは相変わらずだ。軽い漫才を観ているようで飽きない。

二人も自分用にそれぞれガ・レイブを弄っているようでエクスのマシンには二対のオリハルコンブレードハンドガン、略してハルブレイガンと腰に短めの脇差しのようなものを下げているのが特徴の近接戦用高速機動型となっているのに対し、ヒューニのガ・レイブは中・遠距離サポート用とでも言うのだろうか、認識としては超長距離電子狙撃型と判別されている。折りたたみ式のバスターレールガンは少ないながらも決戦兵器レベルの威力の弾丸を発射することの出来るミリア&ミリュ、双子猫薫製の実弾兵器。目指せ惑星間狙撃をテーマに作り上げられたワロエナイ亜高速レールガンだった。残弾数は俺の方にも報告が来る。なぜなら・・・。


 「ヒューニ、使う弾丸はミスリルまでにしておけ。」


ーー了解です。・・・ちぇっ・・・。


 今ちぇって言った。残念がってる。


ーーヒューニちゃんそれ以上のを使うと砲身が保たないから。未完成品だからそれ。


ーーえっ?


 「おい・・・自爆すんなよ?」


ーーフラグを立てないでくださいボス・・・。


 システム的に出力をコントロールできる専用OSを積んだ超高性能狙撃銃とのことだったが、まだまだ完成の目を見るのは先のようだ。因みに実弾は鋼の徹甲弾が十発ミスリルの徹甲弾が十発オリハルコニウムの徹甲弾が二発、そしてウルテニウムの徹甲弾が一発だ。ウルテニウムを使う時が来ないことを切に願う。いやほんとマジで。

 そして電子狙撃型だけ有り超高性能光学レーダーを装備しそのせいで背中のバックパックが少々大型化している。そして一応レールガンの他にも新しい技術を生み出すライの研究室が、最高傑作と俺に自慢しに来た光子レーザースナイパーライフル。俺が出かける前は何度も爆発させていた記憶があるが、何とか完成したらしいな。


 ・・・でもあえて言おう。ここそんな広くないから。そんなデカい狙撃銃使う機会マジで無いから。

 

 更に言うなら、敵のマシンとかもきっと出てこないから・・・。


ーーーーーーーーーー


神殿廃墟


 「今にも崩れそうだな。」


ーーレイブ隊みんな離れておいてー着地した時の振動で壊れそぅー。


ーー了解。


 今になって思う、ホントに今更。二十機もレイブを出す必要があったかしらと。

何にも現れる気配が無い。寧ろその気配はどんどん消えて言っているらしい。


 「銀河さん、中に入りましょう。」


 マイペースね君・・・。


 俺達は入り口に数人の見張りを残し神殿へと侵入する。

近衛として俺と一緒にいるのは、ムラサメ、ティオレ、イファリス、アマリーそしてゲストのテツと洋介君だ。


 「テツも洋介君もバトルドレスは窮屈じゃ無いか?」


 テツはぐわんぐわんと両腕を振り回しハッハッハ!と笑いながら準備運動をしている。

こういう所は前世と同じような匂いがするな。


 「寧ろ何も着ていないような感覚に戸惑っているってのが正直なところだな。これは凄いな。」


 「ホントにそうですよ。向こうの世界なんかてつのよろいとてつのけんでしたらね。そんな装備でモンスターとまともに戦えるかって感じでしたから。」


 科学技術って素晴らしい・・・。としみじみ感動している洋介君はバトルドレスの感覚に戸惑いながらもあっという間に感覚を修正し、モノにしていた。


 「主よ、奥に誰かがいます。」


 周辺を油断なく警戒していたイファリスは神殿の奥に人影を見つけた。その情報は直ちに共有されイファリスの見ているモノの方へと視界を動かす。

何だろう?アレは。


 「進退窮まった感じか。」


 「おかしいです。人数が少なすぎる。」


 王様と思われる人を確認すると共に周りの情報を一機全員で更新する。明らかに少ない。


 「こんな少ない人数でここにずっといたのか?」


 両手で数えられる程の人間しか王の周りにはいない。もっともっと多くの兵士に囲まれる王様を想像していただけにちょっと残念だ。


 そんなことを考えていると何やら視界を黒い影が横切る。


ブーーーーーーーーン


 「ん?虫か?」


 「ボス、ネズミがいます。」


 はぁ?


 「新庄そっちのレーダーに小動物の反応は映るか?」


ーーまて・・な・・・なにっ!?


ーー雨宮さん!直ぐにそこを離れてください!おびただしい数の極小生物の反応があります!その神殿の中からあふれ出して!


ーーきゃっ!モニターに何か当たった?


ーー嘘でしょー!!ネズミがレイブかじってる!


ーーメインモニターに蜂が!前が見えない!!


ーー銀河きゅん!一応脱出して!壊そう!!


 「全員脱出するぞ!ティオレ!」


 「ハッ!グラビティコントロールワン!」


 ティオレのスキルが俺達に掛かる重力を僅かに和らげ、俺達は一気に加速する。

時々柱の角にぶつかっている気がするが、ほぼ抵抗なく貫通しているので気にしない。


 「くそっ!俺は虫が嫌いなんだよ!」


 「ハァッ!!」


 うっとうしくぶんぶん飛び回るものすごい数の蜂。テツは腕をぶんぶん振り回して追い払おうとしているが、のれんに腕押し。その腕をすいすいと躱し蜂の習性か耳の側を威嚇するように飛び回る。

そんなテツを尻目に、洋介は腰を低く落とし高速の正拳突きで一匹の蜂を粉砕した。


 「おぉー。」


 「おおーって銀河さんも出来るでしょ?雨宮流百歩神剣。」


 出来るでしょって言われてもなー?真面目に練習していたのなんか小学生までだからなぁ?

寧ろ出来る訳ねーよって言われる方がしっくりくるんだが。それに一匹一匹潰しててもこの数じゃなぁ・・・?


 「ボス!こういう時は範囲攻撃だ!」


 範囲攻撃!そう俺にアドバイスをくれるアマリー・・・しかし。


 「ダ・・・ダブルラリアットかな?」


 「ラリアットは範囲攻撃じゃ無いだろう・・・。」


 テツに突っ込まれた。なんか悔しい。ぐぬぬ。


 俺に範囲攻撃なんて・・・。ん?出来ないか?いや・・・出来るっちゃー出来るんだが・・・。


 「手加減が出来ん。」


 それに俺がなんかすると、大抵それに巻き込まれる奴がいるンだよなぁ・・・。


 「銀河さん頑張って!」


 「おめー魔法使えるだろ!?」


 勇者め・・・。っとか言っているうちにもう外だな。


 俺達が外に飛び出した瞬間、神殿の上空で囲むように待機していたレイブはバシュッと勢いよく何かを・・・。


ーーグラナーダ!!!


 ちょ!撃ってから言うなよ!!


ドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドド


 バシュッバシュッバシュッ!とこれでもかと打ち込まれるグレネードランチャー・・・。

ごごごごッ!と神殿の崩れる音共に猛烈な勢いで砂煙が舞い上がり、俺達の視界を奪う。


 アレ対人戦用じゃね?


ブーーーーーーーーーーーーーーーーン


 ・・・?まだいるっ!


 「くそっったれ!うっとおしい!うらっ!!」


ギィン!


 大きく鈍い金属音を鳴らし、俺は一匹の蜂を叩き潰す。

これでも相当加減したつもりなんだが、手のひらの上にはじけ飛び原型の残らない何かがこべり付いているだけだった。


 「まぁ蜂ですし。」


 「まて。」


 俺は蜂の残骸をナノマシンを使って分析する。


ーーーーー


パンデミックビー Ω蜂種


Lv1


メインアビリティ


 Ωブレス


サブアビリティ


 毒針


 威嚇


 高速機動


 飛行


ーーーーー


 Ωブレス・・・?蜂なのにブレス?


 「おい皆、こいつ何だかやばそうな力を持ってるぞ・・・。」


ーー嘘!オリハルコニウムの装甲が!マスター!ネズミに注意してください!!


 「ネズミだけに・・・ちゅぅ・・・。」


 「ムラサメマイナス一ポイント。」


 「ふぇっ!」


 うっかりなの何なのか、地上に降りてしまったガ・レイブの一機が足に大量のネズミをぶら下げてバランスを崩している。


 「全機飛行状態を維持しろ!蜂にブースターをやられるなよ!!」


ーー了解ッ!


 俺の言葉を合図にレイブは蜂を引き連れてレーザーサーベルで焼き切っている。と言うより、ぶんぶん振り回して追い払っているようにしか見えないが・・・。黒い塊のようになった蜂はレイブを覆い尽くす程の数で追いかけ回している。蜂に追いかけられるって言うのは地味に精神にダメージがあるからな。


 「それよりも、ティオレはこのままスキルを使い続けて問題ないか?」


 「ふふっ。先日よりパワーアップしておりますので、何も問題はありませんよ。」


 「よし。じゃぁこっちのバフは外して良い。周りの蜂どもを殲滅しろ。」


 「承知!グラビティコントロールツー!」


 そう宣言するや否や周りを飛び交っていた蜂は一斉に地面に落ち、辺りに黒いシミを作った。


 オイオイ・・・一瞬かよ。


 「おー、流石だなダークエルフの。俺は魔法はからっきしだからなー!ガハハ!!」


 テツの何故か分からない笑いは置いておいて、どこからともなく湧き出してくる蜂はティオレのスキルの範囲に入った途端重力に負け地面の黒いシミになる。


・・・ってどっからやってくるんだこいつらは?


チューチューチューチューチュー

チューチューチューチューチュー

チューチューチューチューチュー

チューチューチューチューチュー

チューチューチューチューチュー


 んんんっ!?


 「おいっネズミだ!」


 「ここは私か。」


 イファリスが一歩前に出て行こうとすると・・。


 「イファリス!持続力を重視している!それ以上動くと外だ!足を食われるぞ!」


 薄く波打つ膜のようなティオレの重力のフィールドは狭く、厚い。一匹もこの内側には入れないという決意の見える力の使い方だ。その言葉に反応したイファリスは慌てて一歩踏み出そうとしていた足を、強烈な自我によって引っ込めることに成功した。しかし一瞬そのフィールドの外に出た足を目掛けて、優に百を超えるネズミの群れが飛びかかってくる。


 「ぐぅぅぅぅぅう!!!」


 「ティオレ!保ちますか!?」


 「な・・・・・なななんんとかああああああ!!!」


 黒い色のネズミたちは見える限り動く絨毯のように此方へと向かって突撃を繰り返す。

俺達の目の前には薄くプレスされたネズミのせんべいが無数に折り重なり、幾重にも層をなしている。


 まずいな。このままじゃティオレの魔力が・・・ん?


 「ムラサメ、タブレットを出して食わせてやれ。」


 「あっはいっ!」


 「二錠くれっ!」


 ほほぅ。一錠じゃ足りなくなったか。


 俺はそれを聞くだけでティオレの持つエネルギーが大幅に増えていることに気がついた。

だがいつまでもボリボリとタブレットを食わせているわけにもいかんな・・・。


 どうもこの重力のフィールドは接触されると魔力を大きく食うらしいな。

あの無限にも思えるネズミと蜂の群れ群れ、どこかで歯止めをかけなければ、精神的に消耗してしまうな。


 「おいさっきネズミに足を食われていた奴はどうした?」


ーーだいじょーぶでーす!


 片足を切り落としてふらふらと飛ぶガ・レイブの一機は火炎放射のような武器を振り回し、今度は蜂を追いかけ回している。


 火か・・・。


 「イファリス。どの程度の魔法が使える?」


 「広域殲滅・・・と迄はいきませんが、一時的に蹴散らすぐらいは。」


 「ふむ・・・。」


ーー銀河きゅん見つけた!あのつなぎ目だ!あそこから湧き出してくる!


 俺達はロペのレイブのいる辺りを見てみるが、大きな岩山が邪魔をして視界には入らない。


 「ここからじゃ迂回しないといけないな。」


 「あの岩山の向こう側ですか・・・。ふむ・・・この距離なら・・・。」


 ん?何やら蜂の群れとネズミの死骸に囲まれて真っ青(モニター越し)になっていたムラサメがしきりに周囲を観察して何かを考えているようだが?


 「どうしたムラサメ?漏らしたか?」


 「漏らしても大丈夫ですから!って漏らしてませんから!」


 バトルドレスの中で漏らしてもナノマシンがその場で分解してくれるからな。中の快適さは保たれる。


 じゃない。


 「イファリス、一瞬で良い・・・ほんの一瞬で良いから私が外に出る間あの黒いのを近づけないでくれ。」


 「一瞬で良いのですね?分かりました。」


 ムラサメが愛刀に手をかけると同時に、様々な色の光がムラサメを覆い、イファリスの手元に眩しい程に輝く火球が生み出される。


 ・・・魔法や!やっぱりホンモノは迫力がちゃうなぁ。


 「行きますっ!!!」


チンッ


 裂帛の気合いを込めて大きく息を吸い込んだムラサメは、一歩、右足を大きく一歩大地を揺らさんばかりの一歩を踏み出し、そしてその足にちゃぁ~っと大量の何かが張り付いた足を引っ込める。

その数秒後その足を目掛けて群がるネズミと蜂は、イファリスの放つドロドロとしたマグマのような炎に絡め取られ蒸発していく。


 何だろう・・・全然かみ合ってないんだが・・・?

思いっきり隙だらけじゃ無かった?ムラサメ。


 フォローとは・・・?


 「イファリスぅ!!!先に撃ってくれると思ってたぁ!!いっぱい踏んだ!いっぱい踏んだぁ!!ぐちゃってなったぁ!!!ずるってすべったぁ!!!」


ずずずずずぅううん


 地団駄を踏みイファリスに猛抗議するムラサメは切っていた。裂帛の気合いを込めた一歩で一瞬、数ミリネズミの死骸出足を滑らせながらも何とか踏みとどまり・・・。


ごごごごごおおおおん


 目の前にあった岩山を歩いて通れるぐらいの高さに切っていた。


 「ぱねぇ・・・。」


 俺の中にあったムラサメの甘えっ子像が少し修正された瞬間だったが・・・。


 「きーもーちーわーるーいー!!!」


 そろそろ止まってくれ、折角ちょっとすげーって思ったのに台無しじゃんよ・・・。


デカス・ギャンビート 年齢26歳既婚者。人種と熊獣人のクオーター

 (2)

 銀河旅団近衛第一部隊所属 フレイミィ隊


ロペの訓練に定期的に参加し、頭角を現した事で部隊長推薦によりフレイミィが獲得、自身の個人スキルオーバーパワーのレベルはメキメキ成長し、レベル一の時点で当初の雨宮では認識できない程の力を誇っていたが更に進化、レベル五にまで引き上げられたスキルを使用することにより、SWとも生身で戦うことが出来るまでにレベルアップした。

 雨宮により直接雇われのクルーとして再就職に成功、契約金である一千万クレジットは早速子供達と愛する嫁に何かプレゼントでもと考えていたが、サプライズを考えている為生活費を日々振り込むに留めている。しかし雨宮はサプライズについてはあまりよく思っていないようで、侵略者の排除が済めば普通に一回家に帰れと常々思っている。


アマリー・ティル 142歳 デーモン種→ウルティマヒューマドノイド 元放浪者


 生まれて間もなく孤児となり、政府に頼ることなく放浪し太陽系を渡り歩いてきたが、成人を迎えたある日ダンジョンの存在を知り入ろうとするも、ダンジョンには冒険者として登録しなくては入れないと知り、冒険者ギルドに登録をしようとするが戸籍情報の無いアマリーには許されなかった。だがあきらめることをしなかった彼女は、ギルドが発見していない未開のダンジョンに無断での侵入を繰り返し、数々の未発見ダンジョンを発見し多大な功績を残すことで冒険者ギルドに自信を売り込み冒険者として認めさせることに成功した。

 しかし、ギルド職員の中にはそれを快く思わないものが多数いた。そんな彼女が冒険者として認められていることに嫌気のさした一人の職員が、過去の未発見ダンジョンへの無断侵入を告発、既に冒険者として数々の功績を残していた彼女だったが、なぜかあっさりと逮捕ヘルフレム監獄に投獄される。

 監獄では模範囚としておとなしくしていた為、周りの者達には対して目立たない暗い奴として認識されていた。

 ヘルフレム脱出後は雨宮の自由な生き方に憧れを抱き、自ら雨宮の様々な実験の被験者となることを志願、雨宮自身と共にスキルの実験や雨宮の妄想技術の実験等に付き合い、モルモット生活を始める。

しかしその過程で浅黒かった肌は輝くほど白い肌に変化し、眷属として成った際には自慢だった大きな体も二割ほど何故か小さくなり、小型化した。

 得意武器はお好み焼きのコテを巨大化したようなモノ、切ってよしたたいて良しの本人曰く万能武器との事だったが、逮捕の際回収された時武器として認識されず処分されてしまった。

好きな食べ物はお好み焼きや粉もの全般、趣味は未発見ダンジョンの捜索。


 (2)ウルティマヒューマノイド化 銀河旅団近衛第七部隊所属


 超絶雌猫海賊団襲撃未遂事件の後雨宮によって近衛部隊への所属を命じられ、雨宮専用ドックの警備担当から転属する。個人としての戦闘能力は上位に位置する戦士だが、基本は雨宮のモルモットとして雨宮の好奇心を満たす為に尽力する数少ない雨宮の闇の部分を知る存在。

 有りと有らゆる実験に被験者として参加していたことが幸いし・・・幸いしたと思われるが、眷属として他の誰よりも早くハイパーヒューマノイドから進化し、ウルティマヒューマノイドとして常に雨宮の目の届くところに入ることを命じられる。現在は進化後の経過観察の途中であり、ナノマシンによるデータ収集の為最前線に配置される事に成った。

 実験に際しては雨宮を全面的に信頼していると共に、自身も実験による変化や進化にとても前向きな思いを抱いており、目下懸念事項は人型じゃ無くなると雨宮から捨てられそうと言う一点だが、彼女に関しては雨宮は完全となった理論を実践するだけに留めている為、本人がどんな状態であれ失敗することもないし、特に人外に対して考えが及ぶことが今のところ無い為、より可愛らしいデーモン種をコンセプトに雨宮は実験を繰り返している。

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