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EP33 裏の裏は表

明けましておめでとうございます(遅)

 「排除します。」


 誰もが呆然とする中無機質な女と男の声が法廷内に響き渡る。


 改めて思うが・・・。勇者とか言う奴らは規格外過ぎてあほらしくなってくるな。

他の普通の人間とは役割が違うから仕方が無い事なのだろうが、それでもその他大勢の人間からしてみれば、畏怖や羨望、崇拝の対象になるぐらいは注目を集める存在だ。

俺としては見知った名前を見てしまった手前、簡単に分解してしまうのも何だか悪い気がしてしまっている。

 モーニャの父親だと思われる男の方は、公的な記録では死亡しているはずだ。モーニャはそれを知らないわけだが・・・。

エクスの姉・・・だったか。女の方は調べた事は無かったんだがナノマシンによってこの世界でも調べる事が出来たようで、ある程度詳細は把握できた。

しかし妊娠中のおなかの子供は一体どうなるんだ?体がどうこうされるというわけでは無いらしいが、少なくとも精神が正常な状態であるとは言いがたい。

そんな状態の母体は子供にとってあまり良い環境ではなさそうだ。

 

 「NPCコントロールサーバーへの不正な侵入は違法です。直ちに侵入をやめなさい。」


 ・・・はぁ?


 こいつ今何てった?NPC?


 「なぁおっさん。あんたNPCだったのか?」


 「わしにはそのNPCとやらがよく分からんが、委員会の管理するサーバーへの不正アクセスは確か死刑、じゃったとおもうが。」


 そんなのも確かにあるなぁ・・・だがこれで少し分かった事がある。

俺は確かにおっさんと話をしている間、ずっとナノマシンを使ってこの世界を調べていた。その中に管理サーバー001から225と言う番号の付いた不思議な物体を発見している。

でも俺がそれ以上に気になっていたのは、この世界の異常な狭さ。この世界はたった一つの惑星のみで構成されている。それが不思議でならない。

空には確かに太陽があり雲があった。人々が行き交い空気があり経済活動もある。だが・・・。

この世界には生物が存在しなかった。


 俺はこの狭い世界の全てを調査し終え、ナノマシンを自分の元へと呼び戻した。


 「今はもう何もしていないんだが・・・。それでも死刑かな?」


 「・・・・・・。」


 「何じゃ・・・?止まったぞ?」


 法廷からは全ての傍聴人が消え、この場に残ったのは裁判官三人と裁判長のおっさんそして俺だけになっていた。ガードマンと思われていた奴も消えている。


 「・・・・。」

 「・・・・。」


 「一体何がおこっとるんだ?わしにも分かるように説明してくれると助かるんじゃが。」


 そういうおっさんに対して俺は何も帰さず、ナノマシンに命じNPC管理サーバーに適当な命令を書き加えた。


 するとおっさんは急に席から立ち上がり、腰が痛いのも何のその、しっかりした椅子の上で腰をフリフリと振りながら踊り出した。


 「な・・・なんじゃーーー!!」


 たまたま裁判官側に居た為逃げる事の出来なかった他の三人にも同じ命令を書き込んでみる。


 「か・・・体が勝手にーーー!!」

 「まっ・・待って私はヘル・・・あ”-っ!」

 「一体何でこんなことに・・・。」


 それぞれ椅子の上で手を扇子に見立ててひらひらと頭の上で翻しながら狂ったように踊り出した。


 ・・・。NPCか・・・。サーバーの節約だったのだろうか、NPCのサーバーは一つしか無かった。しかしそれとは対照的に、委員会サーバーと銘打たれていたモノは100から存在していて、

それぞれが様々な下位世界に対応したサーバーのようだった・・・。もちろんその中には今俺たちが所属する第三超広域開拓世界のサーバーも存在している。

しかしそのサーバーにはたいした情報は無かった。てっきり俺は世界の全てをそのサーバーで管理しているのかと思っていたが、管理していたのはその世界の超人種、勇者だった。

そしてそれらのサーバーは、一つの大きなスーパーコンピューターのようなモノにつながっているようで、もちろんそれが勇者システムの基幹部分だった。

だがそれでも謎は多い。あんなチンケなスパコンで超人種をどうにか出来るとは思えないのだ。中には超機人種だっているはずだ。逆探知だって簡単にできそうなモノである。

しかしそれらは一切起こらなかった。


 「訳の分からん世界やのぅ。」


 「もう腰が!腰が限界なんじゃ!頼むっ!止めてくれぃ!」


 俺は再びナノマシンを通じで強制力のある指示を取り消す。


 「ふぅ~~!!一体何があったんじゃ!何をしたんじゃ!」


 額からテカテカ光る汗を流したおっさんはポケットからハンカチを取り出すような仕草をして、不意にその手に何も無い事に気づく。


 「おぉ?ハンカチが無い・・?・・・おかしいのぅ?今朝出かける前にポケットに入れたはずなんじゃが・・・。」


 ・・・・。何のことは無い。そもそもおっさんには出かける家など、存在していない。

ポケットに何かを入れる事など無いのだ。


 「反対側のティッシュも無いのぉ?こまったぞぃ?」


 そのままスーツの袖でぐしぐしと汗を拭うおっさんだったが、俺の知った現実には到達し得ないようだった。


 「俺は割とおっさんの事気に入っていたんだがな。」


 「何の話じゃ?」


 俺はここに来て直ぐにおっさん達をスキャンした。だがその前の事を思い出す。光を抜けこの世界に来た時、そこには誰も居なかったはずだ。

つまり、おっさん達はその時に生まれたんだな。誰かがNPCサーバーにデータをインストールして。


 この法廷の中には第三世界から連れてこられた二人と俺、そしてNPC四体が現在配置されている。

法廷の外に逃げ出した傍聴人や他の者達は、扉の外に出たところで設定されたイベントが終了したのか、はたまたプログラムがバグを起こしたのかは分からないが、今のエクスの姉、モーニャの父親のように焦点の合わない目をしたままで立ち尽くして止まっている。

元々この世界の住人(NPC)達に自我などありはしないようだった。だがどうだろう。このおっさんはまるで普通の人間のように振るまい、俺の質問にも答える。

調べてみれば実にくだらない、それにとても簡単な話だった。

おっさんだけ遠隔操作されているのだ。サーバーの中のおっさんのデーターに紐付けられた、解読に妙に時間の掛かる謎のプログラム。

このプログラムは細い糸のようなモノで異世界とおっさんをつなぐ操り糸だった。

 おっさんはここを第三世界の上位世界だと言った。しかしここより更に上があると言う事だ。

ここが必要な理由はただ一つ、俺たちの居る最下位世界から上位世界へと上がってくる者を追い返す為の、偶然迷い込んだ俺を追い返す為だけの、只それだけの為に作られた新しい世界。

俺の頭の中の記憶を参照して作り上げられた只のイベント。しかし作成者の意図とは違う決着が待っていた。


 俺が全てを把握したって事は、上の奴は気づいているんだろうか?この世界は徐々に縮小している。恐らくもう何分もしないうちにここも消えるだろう。急いでナノマシンを引っ込めたがさっさと帰らないとな・・・。

世界の消滅に巻き込むとか、考えるスケールが違うわな、上の人。


 「おっさん。俺はもう行く。」


 「なんじゃ・・・もう行くのか。どこにも行けないこの世界でどこに行くというのかの?」


 ふっ、とおっさんの目から光が消え無機質な声色でおっさんがしゃべり出した。


 「お前はちょっと俺を舐めすぎてたんだろうね。無駄な時間を過ごしたわ。」


 俺はナノマシンに命じ改めておっさんをスキャンする。しかし結果を見るのはまた後だ。

世界の消滅するスピードが急激に速くなった。


 「急に慌て始めたな。ダサいであんた。最後まで演じきれんのかい。」


 「図に乗るな下位存在。やはり貴様は危険だこの・・「この世界の消滅と共に消えろ?だろ?」・・・。」


 「勇者システムは「他の世界にもある。だろ?」・・・。」


 「貴様には「何も出来へんと本気で思ってるんか?」・・・。」


 「お前とおっさんの存在を固定した。とっても簡単な方法でな。」


 「訳の分からない事を。」


 「そーか。どういうことか分からんか。でもどうでもええねんそんな事。」


 俺はナノマシンでサーバーマシンを全て分解しエクスの姉にナノマシンを送り込む。


 「ゲートを開け。魔力は俺のもんをつこたらええ。」


 ナノマシンで傀儡と化したエクスの姉はナノマシンが記録した第三世界へのゲートを再び開いた。

しかし、そのつないだ先は我が家である。


 二人も一緒に連れて行こか・・・。元に戻ればなんか話も聞けるやろうし。


 「ほなさいなら。」


 俺は二人の手を引き、ゲートから元の世界に帰った。


ーーーーーーーーーー


 「何が起こっているのだ・・・・。」


 今雨宮の居なくなった法廷の中は、端から徐々に崩れ色の無い無の空間が押し迫っていた。


 「この肉体から離れられない・・・。」


 おっさんを操っている存在は、雨宮達の使っているフルダイブコントロールシステムに近い方法で、NPCを操っていた。

しかし、つながった細い糸のようなモノ、その先には機械では無くその存在の器が存在していた。

雨宮はそれをナノマシンで確認した瞬間、その器と糸の接続を根元から切断した。

恐らく今頃器の方は残りカス程度の魂が残り、その器を維持できない状態に陥っているだろう。

そしてその魂の大半をおっさんの中に強制的に封じ込められた存在は、世界と共に消える事になる。


 「馬鹿な・・・私は上位存在・・・委員会の!」


ーーーーーーーーーー


 雨宮が目を開くと、辺りは暗くお気に入りの巨大ベッドの上で仰向けに寝ているところだった。

死にかけたせいで非常に面倒な事に巻き込まれた雨宮は、深くため息をつき両腕を広げ目を閉じようとしたが、その広げた手の先に何かが当たる。


 「そうか・・一時はどうなるかと思ったがちゃんと連れて帰ってこれたのか。」


 エクスの姉エクトラス、そしてモーニャの父ディンゴ。雨宮は無言でディンゴをベッドから蹴り落とし、再び深いため息をつく。


 「この、法の執行者・・・とか言う称号と、勇者、これを取り外せば操られないですむのかね?」


ーーーーー


エクトラス・イロリナート 34歳 超人種 火星帝国軍近衛隊一番隊副隊長


Lv239 職業 帝国軍人


HP 68025/68025


MP 5660/153660


状態  魔力枯渇症(重度)

    空腹(軽度)

    睡眠

 


スキル 種族スキル 共感Lv3(封印)

    個人スキル イロリナート流抜刀術Lv7

          生物兵器バイオニックウェポン

    後天スキル 帝国刀技Lv5

          時魔法Lv5

          空間魔法Lv5

          時空魔法Lv1

          時空剣Lv1



ディンゴ・ティンク 328歳 デーモン種 太陽系共和国軍魔窟監視大隊少佐


Lv508 職業 軍人


HP 185050/185050


MP 23012/120012


状態 魔力枯渇症(中度)

   空腹(重度)

   睡眠



スキル 種族スキル 巨大化Lv8

    個人スキル マッスルコミュニケーションLv9

          金色こんじきの拳

    後天スキル CQCLv10(M)

          コマンドサンボLv7

          (きわみ)道式空手Lv10(M)


ーーーーー


 ナノマシンは便利やなぁ。簡単に解決した。


 「なんか精神的にどっと疲れたからねるかぁ。」


 色々気になる事もある雨宮だったが、特に急ぎでもないので後回しにして眠りにつくのだった。


ーーーーーーーーーー


 「ぴこーん!」


 マギアラピスのサブオペレーターになるべくメインブリッジのオペレーター席の一つに陣取った、アイリーン・雨宮事元β種人工人類は流したロングヘアーの一部が反り上がり、天を突いた。


 「その髪便利だね?センサーでも使ってるの?」


 普段は皆が年上であり上の立場でもある為、砕けた話し方が珍しく見えるのは、イント・ジャーマンスープレックスイオタ・レックス27歳。

なかなかの大所帯になってきた雨宮勢ではあるが、二十代が何故か圧倒的に少なく元軍属のメンバー以外では下に見られがちなイントは、転生前の同僚でもある彼女に対しては砕けた様子で話しかけている。


 「うん。反応するように調整したの!」


 イントはどういうことかと首をかしげているが、アイリーンは得意気に「凄いでしょぅ!」と豊かな胸を強調し自慢げに腕を組む。


 「銀河さんが目覚められたのですね?」


 「そういうこと!」


 二人は今すぐにも持ち場を離れて雨宮の私室へと向かおうと思っていたのだが、シフト制の残念なところで踏みとどまった。


 「今は夜中だし・・・私達しか居ないから・・・。」


 イントはため息をつきながらもモニターの接続先に雨宮の私室を追加し、モニターの端に表示した。


 「・・?!!!!????」


 一瞬何が映っているのか判断に迷ったイントだったが、直ぐにそれが女であると認識した。


 「あれは誰ですか!?クルーリストに載っていない第三者ですか!浮気ですか!横恋慕なのですか!」


 「お・・落ち着いてイント・・・。でも誰だろうね?」


 クワッ!と見開いた目デモニターに張り付き、雨宮の横で眠っている女性を凝視していたが、ふと自分に出来る事があると思いだし、それを実行する。


 「スキャンです!解析です!解体新書です!」


 「バラバラにするの・・・?」


 「違います!」


 興奮しつつも冷静に反論するイントを見て、アイリーンはほっと胸をなで下ろすが、雨宮の部屋にナノマシンを送り込む事は出来ないのだがと、首をかしげる。


 「普通に確認するだけです!突然現れたにしても何かそれらしい情報があるはずです!」


 イントは眷属に許された情報リンクにて、ナノマシンサーバーへと情報の確認を試みる。雨宮が何か情報を共有していればリクエストに応えてくれるはずだ。

逆に共有するつもりがないのであれば、そのリクエストに応えるものは無い。


 「・・・・・・。」


 「イント・・・?」


ーーーーー


Q あれは誰ッッッ!


A エクトラス・イロリナート 34歳 超人種 火星帝国軍近衛隊一番隊副隊長


Lv239 職業 帝国軍人


HP 68025/68025


MP 5660/153660


状態  魔力枯渇症(重度)

    空腹(軽度)

    睡眠

 


スキル 種族スキル 共感Lv3(封印)

    個人スキル イロリナート流抜刀術Lv7

          生物兵器バイオニックウェポン

    後天スキル 帝国刀技Lv5

          時魔法Lv5

          空間魔法Lv5

          時空魔法Lv1

          時空剣Lv1


 そうじゃなくって!・・・いろりなーと・・・?


Q もっと詳しくッ!


A 零番艦マギアラピス所属 パイロットエクシリス・イロリナートの双子の姉

 火星帝国に婚約者有り 妊娠していたが世界移動ワールドポーテーションの副作用により胎児は消滅 マスター雨宮による肉体のロールバックにより

 健康状態は極めて良好 


 ・・・えっ?不倫・・・?NTR・・・なの・・・?


ーーーーー


 「イント・・・?」


 「ハッ!」


 知りたい事のようで特に知らなくても良かった情報にさいなまれていたイントは、アイリーンに顔をのぞき込まれていたが頬をつつかれるまで思考の海に沈んでいた。


 「NTR!」


 「NTR?」


 「そう!NTRです!」


 「銀河さんの世界の情報カテゴリーにそんな物が有ったような気がするけど・・・それと何か関係があるの?」


 「人妻です!・・・あれ?婚約ってそういうモノでしたっけ?」


 「婚約だとまだ予定であって、未定でもあるかもしれないね?」


 「なら良いのか・・・。いいの?」


 「私に聞かれても・・・?」


プシューン


 二人がきゃいきゃいと人妻談義に花を咲かせていると、時間が経っていたのか交代の者がやってきた。


 「お待たせー。って何だか楽しそうなのー。」


 「あぁエリーさん。今人妻が大人気でNTRが・・・。」


 「イントイント・・・違うから・・・。そんな事言ってないから・・・。」


 イントは混乱しているだけだった。


・・・


 「銀ちゃんが戻ってきたのねー。情報が更新されてるってことはきっとそう言う事なの-。」


 「そういうことですね。もう、イントったら・・・NTRNTRって。」


 「スリリングなアバンチュールなの?」


 若干大人な雰囲気のあふれそうになるエリーを見て固唾を飲み込む二人だったが、交代の事を思い出し雨宮の部屋へと向かおうと立ち上がる。


 「そうそう。銀ちゃんの部屋は今は入れないのよー。おねむの時間だからきっと邪魔されたくないのよー?」


 「「そんなぁ・・・。」」


 ーーーーーーーーーー


 「寝過ぎた気がする。」


 目を覚ました雨宮は、隣に寝るエクスの姉エクトラスを見て記憶の海を探り今までの経緯を思い出した。


 「双子の姉妹か。方や帝国の近衛騎士、方や星間テロリスト。なにがあったのかねぇ?」


 今の雨宮にとってみれば記憶の領域にアクセスする事は出来ないものの、強制的に操作し自ら暴露させるような事は可能だ。しかし、雨宮は身内には甘い。


 「・・・まぁ人の女をとるつもりは無いが・・・。」


 エクスの姉・・・どっちも略すとエクスなんだよな。エトラとでも呼んでおくか。エトラは何故か俺の腕を掴んだまま眠っていて中々目を覚まさないようだ。お陰で起き上がって動くのが躊躇われる。


 エトラはあの裁判所でチェックした時は妊娠していたが、この世界に連れて帰ってきてからもう一度見た時にはそう言った状態は無くなっていた。何が原因か分からないが、最初から妊娠していたのかすら分からんからなんとも言えないが、元々妊娠していて急におなかの子供が居なくなったら・・・。

母親としては発狂ものだろう、まぁ妊娠した経緯にもよるが・・。普通に考えれば婚約者との間の子供なのだろうが・・・。


 それにしても訳の分からない話だった。委員会とやらが俺を危険視していた事が原因であの世界に引きずり込まれたらしいのだが、理由が今ひとつ思い当たらない。

俺自身ロペにこの世界に転生させられて、一応・・・一応な?世界を救う為に活動しているんだが・・・。その神やら上位世界やらに恨まれるような事をした覚えはないし・・・。


 めんどくせぃ・・・。


 とにかく俺の中でその委員会とやらは敵として認識する事にした。関わってこないのなら見過ごしていても良かったが、あのなんだよく分からんおっさんの存在していたであろう世界を少しだけ観測する事が出来たお陰で、若干ではあるがこの世界に干渉する俺以外の別な存在の事を認識する事が出来るようになった。その感覚を研ぎ澄まし、ナノマシンサーバーに情報を送り分析する。

世界と一つになるような不思議な感覚。普通の人間であった時、近所のスイミングスクールのプールで目を開けたままぶくぶくと沈んでいく遊びをやっていた時のような、何かに包まれるような不思議な感覚。

そんな中でゆっくりと違和感を感じる方角に意識を向けてみる。


ーーーーーーーーーー


 近い。やはり海王星。この感覚だけで分かる。海王星には大きな穴が開いている。

この世界の全てが吸い出されていくような、それでいてこの世界に何かが流れ込んでくるような相反する二つの感覚。

どちらも放置しておくと問題が起こる・・・。それだけは俺にも分かった。




 遠く。ここからは凄く遠いところ。意識を加速させ近づく。

月だ。だが海王星のような何かが動くような感覚は無い。・・・扉。扉がそれらを遮っているようだ。




 更に遠く。

水星。ここにも扉がある。だがこの扉は頻繁に開け閉めが行われているようだ。

しかし門番がいるようで流出や流入は無いようだ。・・・門番と目が合う。


 「何者だ。他の者の目はごまかせてもこの私の目をごまかす事は出来ん。」


 俺を見た門番は俺に話しかけているようだ。


 (まだなれていないんだ。遠隔操作で意識だけを飛ばしている。)


 「む・・・。不死者の類いでは無いようだが、何かを伝えたい意思がある事は分かった。」


 どうもまだうまくいかない。明確な意思を思いに乗せて門番の肩に触れてみる。

びくんっ!と門番の体が大きく跳ね上がり血の気が引いていくのが分かった。


 「な・・・。な・・・。!?」


 (聞こえているだろうか?)


 門番はびっくんびっくんと身体を強張らせ俺が居るであろう肩の上に向けて手のひらを見せる。


 「酢・・・すまないがもっと小さな声で話しかけてくれないだろうか・・・。あまりに強烈な波動で私の魂が吹き飛ばされそうなんだ・・・。」


 (・・・何だかよく分からないが伝えたいと思って力を入れすぎたようだ。)


 「そ・・・そのぐらいで良い。お前は一体・・・。」


 「おいおい!おっさん!何びくんびくんしてんだよっ!気持ち悪いったらありゃしないぜ!さっきから何独り言言ってんだよ!」


 門の反対側に位置するもう一人の若そうに見える門番は、先ほどからこちらの様子を覗っていたようで、訝しげに俺が肩に乗っている門番を問い詰める。


 「なに・・・。客人がいるようでな。あまりの波動の強さに驚いていたところだ。・・・後俺はおっさんじゃ無い。」


 (ところで聞いて良いだろうか?ここは一体どういう場所なんだ?)


 「ここはヴァルハラゲート・・・の人界側だ。この扉の向こうには我ら巨人族の故郷、第四極小世界ヴァルハランテがある。許可亡き者を通す事は出来ない。」


 俺は巨人の門番から離れ、ヴァルハラゲートと呼ばれた巨大な門に近づき手を触れてみた。


 (水のような・・・風のような・・・実体の無い感じ?触れそうで触れない・・・が。)


 俺はぐっと力を込めて門を押してみた。


ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごおおおぉおおぉぉおん!!!!


 (あっ・・・。)


 「「なんだぁっ!!」」


 ちょっと力試しのつもりで押してみただけなんだが・・・。

ものすごい勢いでゲートの片側が完全に開いてしまった。


 (なんかすまん。)


 扉の向こうに見える景色は幻想的で、とてもダンジョンの中とは思えない程青々とした緑が茂り、遙か彼方にこの距離でも分かる程の巨大な建造物が見える。

草花を凪ぐ風がひゅっとこちら側に鳴り、一つの花びらを散らした。


 扉の向こう側には門番は居ないようだ。必要ないのだろう。


 (あの草原は寝っ転がると気持ちよさそうだ。)


 「力任せにこじ開けるとか、どれほどの力があればそんな事が出来るというのだ・・・。」


 「なんか勝手に開いたんですけどぉ!?おっさん何したんだよっ!!」


 「俺は何もしていない。今は扉の前に居る客人が試しに押してみたら開いたというのだ。・・・後俺はおっさんじゃ無い。」


 本来は門番の持つ鍵が必要だそうで、不思議な物質で出来ているとはいえ相当な質量と重さを有するこの扉は、巨人族1000人を動員してもびくともしない程の物なのだという。

俺としては全く重さを感じなかったんだがなぁ・・・。


 二人の門番が薄紫に輝く鍵を掲げると、全開だった片方の扉がゆっくりと戻り、ゆっくりと閉じ・・・なかった。


 「オイオイ!ちょっと開いてんだけどこれ!完全に閉まりきらないんですけど!?」


 (もしかして壊れたかな?)


 「分からん。こんなことは初めてだ。もう一度やってみよう。」


 二人の門番はもう一度鍵を掲げ、扉を閉じようとしたがゆっくりと扉が開いた。


 (どうなってんのそれ?)


 二人の門番も閉めようとした扉がむしろ開いた事に驚いているようで、しきりに首をひねっている。


 「おっさん?」


 「おっさんでは無い。壊れたか?」


 そう言ってもう一度鍵を掲げると今度は最後まで扉がきちんと閉まった。


 (?)


 「?」


 「分からん。」


 (もしかしてその鍵で動く扉の距離が決まってるんじゃね?あと動く方向は一回毎に切り替わるんじゃね?)


 「む・・・そうなのか?」


 (しらんがな・・・。)

 

 「おっさん何をしゃべってんだよ!俺にも聞こえるように言ってくれよ!お客もよ!」


 (そんな事言われてもな・・・。)


 「そんな事言われてもな・・・と言っている。後おっさんじゃ無い。」


 「そうじゃねーよ!」


 結局俺は二人に軽く自己紹介をした後鍵を見せて貰い、解析すると何のことは無い。そういうことだったのだ。鍵を作った物のメッセージを見た時には少し頬が緩んだが、巨人とはそういう者なのだろう。


 「なぁ・・・雨宮さんよ!人界の外ってのはいろんな物があるって言うぜ!?俺も外に出てみてーんだが何とかなんねーかな?」


 「はぁ・・・。またお前は・・・。我ら門番は生涯門番。ここから動く事は許されてはおらん。」


 「そういうのを時代錯誤って言うんだぜ!おっさん!この間ここを通った冒険者に聞いたんだ!宇宙船っての?それに乗ればどこへでも行けるってよ!」


 (冒険か・・・。気持ちはよく分かる。俺もそんな憧れがあったから今こうやっていろいろやっているわけだし。)


 俺はドランドゥオと名乗った巨人から離れ、グゥルメィクと名乗るやんちゃな方の巨人の肩に触れてみた。


 「おっ・・・おっ・・・?おっ?」


 びくんびくんとのたうつように奇妙な動きをするグゥルメィク。


 (これで俺の声が聞こえるようになったんじゃ無かろうか?)


 「自分の声が届かんからと言って我々を改良するのはどうかと思うが・・・。」


 (めんどくさいもんよ。)


 ドランドゥオはこの状態の俺と話す事になれたのか、触れていなくても声が聞き取れるようになっていた。


 (他の奴に門番が変わってもらえるんだったら、俺の船に乗るかい?)


 「おー・・・「乗ろう。」い・・。」


 ドランドゥオの方がかなり早い反応で俺の言葉に応えた。よくよく話を聞いていると二人は質に長い間この場所で門番をしていたらしく。非常に退屈をしていたそうだ。


 「俺も俺も!次に同族が来たら無理矢理門番押しつけてやるぜ!俺は宇宙に出るんだ!」


 二人は長寿としても有名な巨人族の中でも比較的若い方ではある。そんな若者の情動を抑えて今まで門番としての責務を全うしてきた。今回のようなチャンスが巡ってくる事も無く、数百年の間ヴァルハランテへ向かおうとする冒険者の力量を測る為に戦い、扉の開閉をしてきた。

たまに通る天使族からはチクリと嫌みを言われ、同族からは哀れみの言葉を投げかけられる。そんな門番で居たいと思える程老成している二人では無かったのだろう。


 「おっさんは外に出たら何がしたい!?」


 「おっさんじゃ無い。そうだな・・・。俺はここじゃ無い別の迷宮に行ってみたい。あと、え・・エルフに会ってみたい ・・・。」


 ヤダ。このこ可愛い。まるで中二を見ているよう。


 「俺も俺も!俺はフェアリーとか同族の女も見てみたい!」


 (男子校かな・・・?)


 俺はこの場で初めて巨人族の生態とも言える、長い営みの一部を聞いた。


 巨人族の男は生まれて直ぐ万感の峡谷と言われる、ヴァルハランテのモンスターが集まる谷底に突き落とされモンスターの群れの中で生き残る事を強要される。

そして力を付ける為百年程谷底で生存競争を生き抜いた後掬い上げられ、一族の為に戦いに赴く事になる。しかしそこで力を付けすぎた者は、国から遠ざけられ彼ら二人は門番になったのだそうな。

そんな思いもあり、性格こそ天と地程の違いがあるが考えていた事はほぼ同じ二人はうちの船に乗り込む事を決めたようだった。

 ちなみに巨人族に産まれた女は外の世界へと放逐され、ヴァルハランテに留まる事を許されないのだそうな。ならどうやって子供が産まれるのかと言うと、簡単な話だ。子供を作る為だけに女はこのゲートをくぐり『城』とやらにある一室で子を産みそして殺される。

巨人族には母は居ない。だが産まれた子供には罪は無いとして余所の世界に捨てるのだという。

なら母の罪は何だと言うのか?女を産めば女を産んだ罪、男を産めば人の身でヴァルハランテに存在する罪が適応されるのだという。

俺からすれば実にアホくさい。だがその慣例のお陰でこの世界に巨人があふれ出してくるような事態に鳴らないのだろうと思うと、善し悪しだとも言える・・・。

巨人の戦闘能力は普通の人間とは比較にならない程強力だが、レベルが非常に上がりにくく直ぐに他種族に追いつかれてしまうらしい。

そんな事態を招かないように、先に教えて貰った谷へと産まれて直ぐに突き落とされるのだという。


 (しかしそんなに都合良く巨人族がここを通る事があるのか?)


 「問題ない。呼べば来る。今までその必要が無かったから一度も呼んだ事は無いが。」


 (それって大丈夫なのか?)


 「大丈夫だって!非常事態だーって呼べば直ぐ来るって。」


 (まぁそれなら良いんだが、俺は精神体のみでここに居る訳であってすぐにどうこうという事は出来ないぞ?)


 「見れば分かる。」


 「俺は見えないけどな!」


 (事が済んだら迎えに来よう。今はちょっと忙しい。ここに来たのは試しの意味合いでだけだったんだ。)


 感覚になれる訓練そして好奇心。ここに来たのはそれだけだった、だが思わぬ収穫だ。テツの知り合いかどうかは・・・まあ聞かなくても良いか。

その内分かるだろう。


 (じゃあ俺は戻る。いつまでものんびりしても居られないからな。)


 「そうか。」「まってんかんな!」


 俺は「また。」とだけ言い残して元の身体に戻る。途中木製辺りで小競り合いが目に付いたが今の俺には関係ないかな。


ーーーーーーーーーー


 ゆっさゆっさ ゆっさゆっさ


 誰かが俺の身体を揺さぶっている。


 「ねぇ!大丈夫なの!?起きなさいよ!」


 「あんだうるせーな・・・。」


 目を開けた時に居たのは俺の隣に居たエトラ・・・エクトラス・イロリナート元勇者にしてうちのエースパイロット、エクシリス・イロリナートの双子の姉だった。


 「よかった・・・。死んでいるのかと思ったの。脈もないし心臓も動いていなかったから。」


 どっちも今の俺の身体には必要ないからな・・・。人間らしさの追求の為にそういう形をしているだけだ。


 「問題ない。そういうモノだ。」


 「どうして私がここに居て、何があったのか聞いても良いの?」


 エクスとは違う意味で強引な奴だな。普通は一つずつ聞くだろぅ?


 「お前は勇者システムに乗っ取られて俺を殺しに来た。たまたまその場所が異世界だった性だろうな。お前しか来られなかったんだろう。ここに居る理由は連れて帰ってきたからだが・・・お前記憶は無いのか?」


 どうやらエトラは勇者として操られている間の記憶が無いらしく、しきりにあれはどうだとかこれはどうだとか矢継ぎ早に質問攻めにしてくる。


 「いってててて・・・・何だ?ここはどこだ?」


 む?


 どうやら俺が質問攻めに遭っているうちにもう一人床に転がしていた元勇者が目を覚ましたようだな。


 「目を覚ましたかおっさん。お前の娘が4番艦に居るが会いに行くか?」


 「なに!?モーニャはヘルフレムに居るはず・・・。」


 ヘルフレムなんてもうねーから。と思いつつもこのおっさんはそんなにも前から記憶が無い状態だったのだと考えた。。


 ずいぶんと前から勇者システムの管理下にあった様だなこの二人は。

ヘルフレムと言えばもう半年程前になるのか・・・。それ以上前から操られて・・・何をしていたんだ?やはり粛正か?


 「おっさん、あんたはどのくらい前の記憶がある?」


 俺は二人に自分の知る勇者システムのあらましと、二人が俺を追ってきた時の状況を話してみた。


 「・・・俺が覚えているのは・・・ダンジョンの見張りを交代したあと、妻の様子を見に行って・・・そこまでだな。」


 ディンゴは冷凍睡眠中の妻の様子を見に行った後、家に戻った記憶が無いという。恐らくその時にシステムによる乗っ取りを受けたのだろう。


 「私は・・・。あ・・・あいつから乱暴されて・・・それから・・・あいつを殴ったところまでは覚えているわ・・・。」


 あいつ・・・ね。どこの誰のことだかなんとなく察しは付くが、もしそそれが事実だとするなら、殴って逃げたようにも聞こえる。システムに乗っ取られた後どうしていたのか覚えていないのなら、知っていそうな奴に心当たりがある。彼女は火星出身、つまり帝国軍の人間に聞くのが一番早い。


 「おっさんは四番館に行って娘に殴られてこいよ。」「ちょ!なぜ!」


 「えとら・・・あーエクトラスは俺と一緒に来い。多分お前も知っているだろう奴のところへ行く。」


 「分かりました。」


 その後俺たち三人は、マギアシリーズの艦内リンクポーターと呼ばれる新しい発明品の説明を、ティタノマキア社の出向社員から聞き零番艦ラピスから四番艦ベリスへとディンゴを送り、

ラピスにてとある仕事を任せている男の元へ向かった。



ーーーーーーーーーー


 「ひのふのみの・・・。はぁ・・・。つらい・・・。」


 食料品倉庫の一角にある冷凍倉庫の中で帝国近衛軍諜報部隊シン・トラウバル少佐は白い息を吐き出しながら、肩をふるわせ独りごちた。


 食糧倉庫備品管理の仕事は、シン自身の身から出たさびなのだが今はそのことを深く後悔している。


 「何だがよく分からないが外と通信しようにも持ってきた通信機はいつの間にか無くなっているし、艦内の通信施設を使う許可はいつまで経っても下りない。来る日も来る日も食い物の数を数えてリストを更新する毎日・・・。」


 シンはいつものように端から端まで一人で食糧倉庫を回り、手に持った端末を近づける事でデータと実数を照合し、リストを更新していた。


 「盗み食いする奴らも現れやしない。食料は献立によって出るモノが変わる程度、このところ戦闘も起きないし上では何が起こっているのか全く分からない。

これでは仕事も何もあったモノでは無いな・・・。」


 倉庫を回り終え更新したリストをアップデートし、今日の仕事は終了した。シンの手元のコンテナには今日の夕食の献立に使用される食材が詰め込まれている。


 「ぐぬぬ・・・・・おもぃ・・・・!!!」


 毎日朝昼晩と三食分の食材を食堂に届けるのもシンの仕事である。


 「この重さはおっさん一人にやらせる仕事じゃ無いだろうに・・・!!」


 文句を言いつつもスパイとしての身分がばれている状態でなお、普通に居させて貰っている手前、ずっと牢屋に押し込まれているマスコミの連中よりは遙かにましだとそう思う。


 「はぁ~~ビールが恋しいわぁ・・・。」


 火星に居た頃は毎晩のように妻との晩酌に喉を鳴らしていたシンであったが、ここしばらくは一滴も酒を飲んでは居ない。それも偏に仕事中であるという事がシンのルールにあり、自重を促していた。


ーーシン。居るか?入るぞ。


 食糧倉庫の管理室兼自室の天井に備え付けられた艦内スピーカーから、雨宮の声が聞こえたと思った途端扉が開く。シンは条件反射でモニターと向かい合っていた自分をただし、出入り口に向かって帝国式の敬礼をし、右手をピンと伸ばし額に付け、左拳を上に向け脇を締めて腰に付ける。

上司に対する最上位の敬礼である。


 「ハッ!!食糧倉庫は異常有りません!!本日の夕食メニューは!「いや、良いから、聞いてねーし。」で、有りますか・・・。」


 雨宮は一人では無かった。その後ろに黒髪のロングを一つ結びにして帝国軍の・・・帝国近衛軍の上級士官の制服を着た女がいる。


 「え・・・エクトラス・イロリナート!!」


 「凄いな。見ただけで分かるのか。」


 エトラとエクスは、はっきり言って見た目だけで判断するのは素人には難しい。俺の場合は感覚的に分かるんだが99%同じ外見の人間を見分けるなんてのは、普通は無理だろう。


 「あなたは、シン・トラウバル少佐!何故ここに!?」


 「それはこちらの台詞だ!大尉こそ一体何故ここに居る!?あの後折角火星からの脱出を手助けしたというのに何故ここに・・・。」


 「火星からの脱出・・・ですか・・?」


 これは当たりだな。シンはどうやらエトラの記憶の無い部分を一部知っているらしい。


 シンが言うには、エトラには近衛軍の上司ダイザ・ダッバダバーナ大佐とかいう、とにかく言いにくい名前の婚約者が居たらしい。しかしそれはテロリストに変貌したエクスの正体をばらされてく無い、エトラの姉としての一心で強制されていたモノなのだそうだ。

そして衆人環視の元堂々と襲いかかってきたダイザ(ryを愛刀の鞘で瀕死の重傷を負うまで打ち据えた事で、追われる身となったのだとか。


 しかしこの話だけでは彼女が妊娠していた理由が分からん。ダイ(ryは未遂だったようだから、もしかしたら他に男がいたのかもしれないな。


 「ふむ・・・。そのダイザとか言う奴以外に男はいたのか?」


 「ちょ!」


 「はっ!私の調べでは処女であったと判明しています!」


 「こらぁ!」


 ふむふむ・・・ますますわからんのぅ?


 「いいいい!居ませんから!そんな人居ませんからっ!・・・・しょじょですし・・・・。 」


 ちょっと残念そうなのは何だ・・・。


 まぁ嘘は言っていないらしいから別に良いとして、もう直に聞いてしまっても良いじゃろうか。


 「エトラは異世界で俺に会った時妊娠していたんだが・・・覚えはあるか?」


 「!?」「!?」


 シンもエトラも驚愕の表情で俺を見る。シンも何でそんなに驚いている。


 「うそ・・・。」


 自分のおなかに手を当て何やら魔力を使っているエトラだが、ほっとした表情になりこちらを見た。


 「今はなんともなっていない・・・のですね?」


 「うむ。この世界に戻ってきた時には既に消えていた。その当たりは正直俺にもよく分からん。」


 すると、シンが何やら考える様な仕草をして話し始めた。


 「・・・処女受胎という言葉があります。」


 それはある日突然起こり、年齢問わず女性に訪れる悲劇。その処女受胎をする女性には条件があるのだとか。


 「噂には聞いた事がありますが、まさか自分がそういったことになるとは思いませんでした。」


 エトラはおなかに当てた手をさすりながら首をかしげる。


 「その条件とは何だ。ここには女が多い、そういう不確定な要素はなるべく排除しておきたいんだが・・。」


 「はい、あくまで我々の調べによるモノであり、世界共通であるかは不明ですが・・・。双子の処女・・・しかも二人とも処女である事が調べによって判明しています。それ以外の共通点は何もありませんでした。」


 双子の処女・・・ねぇ?


 「エクスは処女じゃ無いぞ。」


 「!!?」


 エトラが驚愕の表情に戻りあれの目の前まで突っかかってくる。

 

 「何で!?」


 エトラはおおよそ女性がしていい表情では無い表情で首を横に傾けながら詰め寄ってくる。ちょっと面白い。


 「私は我慢していたのに1?」


 左に首をこてん。


 「私は無理矢理婚約させられていたのに!?」


 右にこてん。


 しかし俺から決して視線を外さない。


 「レイプされそうになったのに!?」


 左にこてん。


 「一人だけ楽しんでいたのぉ!!??」


 そしてガックンガックンと俺を揺さぶるエトラ。


 あっはっはっ!やめろってぇ。


 「姉より優秀な妹ぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 カッ!と両目を限界まで見開いて大絶叫。美汐でなれていなかったらひっくり返っていたんじゃ無かろうか。


 「気が済んだか?」


 「すみません。」


 「いやかまわんよむぎゅ。」


 唐突にキス。そして胸ぐらをこじ開けようとするエトラ。


 「わたしもぉぉぉぉおおおおお!!!!」


 シン・・・。


 おれはシンにこの状況を尋ねたかったが、シンは分かりませんとジェスチャーで伝えるばかり。


 流石エクスの姉。ぶっ飛んでる。


 他にもいろいろやらなければならない事があるんだが、取り敢えずはこのバーサーカーを沈静させてやるとしようか。


 「仕事の邪魔して悪かったな。」


 「寧ろ暇すぎて助かったぐらいです。」


 「そうか。今度艦内通信を使えるように情報更新するから、その時にでも帝国の皇帝に取り次いで貰っても良いかな?」


 「ハッ!ありがたき幸せ!更新され次第お伺いを立てます!」


 「頼んだ。」


 そうして俺はがっつりエトラに抱きつかれたままで、自室へと戻った。


ーーーーーーーーーー


 「がるるるるぅ!」


 「よしよし。」


 俺はナノマシンでエトラの着衣を全て分解し分析した。


 大小様々な傷は前線を任される猛者の証、しかしその元の肌は陶磁器のように透き通るような光を纏って見える。エクスの時はごちゃごちゃしていてじっくり観察する余裕は無かったが、これは惹かれるものだ。


 「物怖じしないな。」


 「覚悟がありますので!」


 正に侍。俺の刀を収める覚悟を決めた決意のまなざしが・・・。ってそうじゃない。


 「肩の力を抜け。お前がエクスと違うのは分かっている。だが血は争えないなぁ。」


 俺は優しくエトラを抱きそのままベッドへと倒れ込んだ。


ーーーーーーーーーー


 「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 ぬぬ・・・また耳元でデカい声だなぁ・・・。


 「脱!処女!キターーーーーーーーー!」


 女子コーセーかよ・・・。知らんけど。


 「朝から騒がしいやっちゃなぁ・・・。」

 

 ベッドのシーツを掴んだまま広いベッドの上をコロコロと転がり、上半身だけ起き上がった俺にぶつかる。視線が絡む瞬間俺の身体をよじ登ってそのまま枕の上に俺を押し倒すエトラ。


 「んんーーーーーー!」


 そのまま俺の胸の上で顔を埋めてもだえるエトラ。


 やれやれ・・・ベクトルは違うがやはり双子だな・・・。


 「それで・・・?お前はこれからどうする?」


 そう尋ねる俺の方をじっと見つめるエトラは、ふぅと小さなため息をついて俺の胸に再び顔を埋め・・・。


 「いててててて!!!」


 このやろー!そのまま胸にかみつきやがった!


 「覚悟を決めたと言いました。」


 埋めた旨から顔を上げ俺の視線と交わる。


 「覚悟を決めたと言いましたっ!」


 俺はエトラの背をポンポンと軽く叩き、乱れて顔に掛かる前髪をそっと避ける。


 「人では無いかもしれない。」


 何故だろう。不思議と言葉が漏れてくる。


 「かまいません。あなたを見た時から超常の気配は感じていました。」


 すっと気になっていた事。ずっと避けていた事。頑なに誇示していた事。


 「人では無くなってしまうかもしれない。」


 「戦場に身を置いた時に既に心に修羅を据えております。」


 それは誰が言ったか。


 「俺はナノマシンかもしれない。」


 「細胞が機械なだけです。」


 「俺は・・・。」


 再び・・・今度は頭を抱えられる。


 「ナノマシンによって私の身体は新しいモノに変わりました。」


 ナノマシンによって作られた心臓の音が聞こえる。


 「しかし、私の心までは・・・ナノマシンは手を出しませんでした。」


 擬似的に作り出されたぬくもりを感じる。


 「俺の中には沢山の別人がいる。俺が俺である保証は無い。」


 瞬間。俺の身体が少し起こされる。


 「それは私が守るから大丈夫だよ。」


 ロペ。


 俺の頬をざらざらした舌がペロッと控えめになぞる。


 「雨宮様は背中は私が守りますから。」


 ミリュ。


 「主様は好きなようになさってください。」


 ティオレ。


 下半身に重み。


 「銀河はん、楽しゅう生きるんでっしゃろ?」


 エクス。


 ミリュと逆の頬に温かみ。


 「銀ちゃんめーなのよー。」


 エリー


 誰かが俺の右手に触れる。


 「ボス、私達は幸せですよ。」


 ライ。


 ・・・・・・・・。


 「そうか・・・。」


 俺の心には常にもやが掛かっている、良心の呵責でもあるのだろうか?


 俺の前世であるあいつが現れた時、俺の中に不安が生まれた。


 そして俺の中に他人がいる事を意識した時、拒絶反応が出た。


 俺の中に残った大きなしこり。

全てを忘れようと巨大な界獣へと、何も考えずに突っ込んだ。


 素直な思いをぶつけられた今。俺は一時だけ、偽る事をやめた。


ーーーーー

 

マスターのパッシブスキル 嘘 を解除します・・・完了


ーーーーー


 「お前達の中に宿った全てが嘘だったとしたらどうする?」


 実は進化なんかしていなくて、ずっと普通の人のままで、この世界も全部が嘘だったとしたら?


 「ふふふ・・・。エクスはどうか知りませんが私にそう言った力は通用しませんよ?」


 エトラは先ほどと変わらぬ笑顔を俺に向けてくれている。


 「何も変わりません・・・・。ボスが本気でその力を使う事があるなら、それはまた別かもしれませんが。」


 ライの右手を掴む力が少し強くなった。


 「雨宮様は間違っています。私達はあなたのお陰でそう言った力とは無縁なのですよ?


 左耳をはむはむと甘噛みするミリュ。


 脳がとろけそうだ。


 「銀ちゃんに助けて貰った時から、ちょっとずつ身体が大人になっているのよー。それはとてもうれしい事なのー。」

 

 右側の耳に舌を這わせるエリー。


 「主様が行った事は、私達にとってとても・・・とても素晴らしいと思える事なのです。」


 左手がティオレの胸に包まれる。


 「ふふぅ~。弱気はあきまへんでぇ?うちらの旦那様はもうっと傲岸不遜でええんよ?」


 エクス・・・俺は別に見下したりはしてないぞ・・・。


 「はぁ~船全体を覆っていた大きな力がなくなったねぇ。銀河きゅんの力・・・。前世の力とは全然違う力だったんだねぇ。」


 「そういうことだ。俺に魅了する力なんか無い。せいぜいごまかす事ぐらいだな。」


 だからこそ、ナノマシンを使ってあらゆる情報を手に入れる事に余念が無かった。この身体が無かったら、普通の人のままだったら俺は宇宙で死んでいただろうな・・・

それも偶然では無い。


 「銀ちゃん、偶然なんて世界には存在しないのよー。」


 「そうやでぇ?みんなそれぞれの思惑があって、それでもここを離れたくないと思ってるから旦那様のゆぅ事ちゃ~んと聞いてるやろ?」


 俺のスキルにはいろいろな力がある。それも追々みんなに説明していこう。


 「ありがとうとか言っとくか。」


 「「「「「「素直じゃ無い。」」」」」」


 素直さなんてとっくになくしてしまったわな。


ーーーーーーーーーー


 やらなければならない事がある時に限って、余計な事が起こる。もうそれは仕方ないと割り切っているが、自分でも寄り道とかしたくなってしまうんだよなぁ。

あっちいってこっち行って、もっといろいろ見て回りたい。テツの事もあるし、アンジーのスキル解析もまだ終わっていない。巨人達も迎えに行ってやりたいし、マスコミの奴らなんか牢屋に入れっぱなしだ。

オーク達もほったらかしになっているはず。リファンリアについてもちゃんとしてやらんといかんし、ファムとネシアは・・・無事なら良いか。

身内の中にももっといろいろ知っている奴らもいるだろうから、そいつらの話も聞いてみたいし、スパイを送り込んできた奴らにも挨拶しに行かないといけないしな(物理)。


 「だが今は・・・。」


 俺は結局俺の上に乗っかってスースー寝息を立てているロペの頭をなでる。

エトラはベッドの端に追いやられて今にも墜ちそうになっている。


 界獣は全然動く気配も無いから、割とのんびりしてしまったがあれを分解した時に分かった。

あれは一応人間だ。一番デカいのを分解した事でようやくその存在がどういうものなのかよく分かった。

そしてあれらを操っていた奴の事もおぼろげに見えてきた。


 「まずは海王星にいかないとな。」


 ロペのさらさらの髪をいじりながら一人でブツブツ言っていると、ロペが目を覚ました。


 「おあょー。」


 俺は一日中寝ていた気がするわ。


 「ああおはよう。」


 「スキル切ったままなんだねぇ?」


 「エネルギーの消費が半端じゃないからな。もう切ってても良いかなって。」


 俺のスキル、『嘘』このスキルは使い方が若干難しいというかやっかいで、アクティブな部分とパッシブな部分が両方ある。パッシプな方は範囲を決めてエネルギーを使い続ける必要があるし、アクティブな方はエネルギーを垂れ流す必要は無いが、一度使うと取り返しが付かない。

半端な設定をして使ってしまうと大変な事になる。恐らく何らかの失敗をしてしまった時にそれを塗り替えてしまう事も出来なくは無い。だがそれは本当に元に戻ったと言えるのだろうか?

・・・なんて自分の中で完結させなきゃいかん様な問題もあったりで、中々使いにくい。

もちろん俺の中で使いやすいようにある程度最適化はしているつもりだが。


 「銀河きゅんってそのスキルを誰かに使った事ってあるのぅ?」


 「ない。使う必要が無かったのもあるが、下手して自分が巻き添えになるのも怖かったからな。」


 「そういうものなんだねぇ。今度試し打ちしに行こぅょ。的はいっぱいあるし。」


 ロペの言う的というのは多分・・・。


 「界獣の事を言っているのなら駄目だぞ?あれはあくまで被害者だ。こっちに敵対してこない限り手を出さないつもりで居るぞ。」


 「そっかぁ。今の銀河きゅんにはそういうのも分かるようになったんだねぇ。」


 「みんなが起きたらいろいろ説明するわ。それにいつまでもここに留まっていても仕方ないしな。さっさと片付けてしまおうぜ牧場世界とやらの奴らを。」


 「牧場世界・・・?」


 む。そういうのもまだ何も言っていなかったな。


 「ああ。でっかい奴を分解しただろう?そいつの中に結構な情報があってな、ある程度向こうの世界の情報を入手できたのだわ。」


 「そういえば牢屋の一角に連れて帰ってきた人達突っ込んだままだったねぇ。・・・全裸で。」


 服ぐらい着せてやれよ。


 「おっさんの裸とか誰得だよ?」


 「ん?何人か牢屋にスケッチしに行っていたょ?」


 スケッチなの?エッチなの?ワンタッチなの?


 「写真とかじゃなくってか?」


 「画力を磨きたいんだろうねぇ。」


 何処へ向けて走っているのかはあえて追求しないでおくかな・・・。やけどしそうだし。


 この後みんなを集めて今後の方針の確認と行動計画を改めて話すか。


 「そろそろ起きるか。みんな集めて・・・そうな食堂で良いか?」


 「絶対入りきらないょ~?ハンガーね。」


 そう言ってロペは端末を取り出し、全体スケジュールの中に新たなイベントを書き込むのだった。







 『雨宮銀河総司令による初心表明』








 と。

ダイザ・ダッバダバーナ 45歳 人種 火星帝国近衛軍一番隊隊長 大佐


 帝国軍の皇帝を守る近衛軍の一番隊隊長階級は大佐。コネで近衛軍へと籍を置いている為戦闘能力は皆無。政治的な手腕はある程度あるものの、軍の内部ではほぼ使う機会が無い。しかし元々の生まれが上流階級の為生まれや階級を盾に様々な権力を掌握しつつある。

 とある事件をきっかけにイロリナート姉妹の弱みを握り、姉エクトラスを自らの婚約者にする事で自らの保身を図ろうとしていたが、エクトラスの色香に迷い公衆の面前であるにもかかわらず襲い掛かり、返り討ちに遭い首の骨を折り喉を潰される大けがを負う。

しかし死んだわけではないので今も捜索部隊を各地に派遣し、エクトラスを探している。

 ファミリーネームが非常に言いにくく、よく皇帝からダバダバと呼ばれている。


ドランドゥオ 245歳 超巨人種 ヴァルハラゲート門番


 生まれて直ぐに谷底に突き落とされて焼く二百年ほど谷底でレベルアップを続けていた猛者。

巨人の世界ヴァルハランテでは狂人として恐れられ、巨人族の長から直々にヴァルハランテと第三世界をつなぐヴァルハラゲートの門番を命じられる。

彼が二百年もの間谷底に居た理由の一つとして、誰も助けに来なかった事があげられる。普通は男親が一年もすれば迎えに来るのだが、ドランドゥオの父親は彼を谷に落とす際、誤って岸壁に当ててしまい死んでしまったと思い込んでいた為、迎えに来る事は無かった。

その時の傷跡は今も彼の脇腹に残っているが、当時の事など本人の記憶には無い為唯々生存競争のただ中に居ただけで、迎えに来るという考えすら無くひたすらモンスターとの戦いに明け暮れていた。

後に彼の身体が大きくなり、自力で谷を出られる程に成長した頃谷の上では彼のその戦いぶりを見ていた巨人族の長は彼を谷底から引き上げようとしたが、偶然谷底の主とも呼べる巨大モンスターとの死闘の途中であった為見向きもする事が出来ず、長の怒りを買ってしまう。そしてその怒りは巨人族の中で彼を狂人として認知させる事になった。

 死闘を終え谷から這い上がった彼はヴァルハランテの景色に感嘆の意を漏らしたが、谷底に子供を突き落とす行為自体を古くさいと長に向かってこき下ろし、自らゲートの門番となるべく長の城を去った。


 その後四十五年もの間ヴァルハランテへと渡る事を望む者達の力を試し、ゲートの前で過ごしていたが冒険者達から聞く第三世界の広さ、多種多様な生活スタイル、多くの人々、そして女。様々な情報を得て憧れを抱くようになる。特に冒険者として自らに立ち向かってきたエルフの女性に一目惚れするも、門番としての責務を放棄する事を躊躇った事でそのエルフはダンジョンを去り、彼の中に新しい感情の種が芽生えた。

 自由を手に入れたいと心の底から願うようになった彼は、偶然雨宮に出会い門番である事から脱出する事を決意、雨宮が迎えに来る時を今か今かと心待ちにしている。


グゥルメィク 245歳 超巨人種 ヴァルハラゲート門番


 ドランドゥオと同じ時期に谷底に落とされた巨人種の優男。その父親は巨人族一の美男子として多くの女性に子供を産ませた経歴を持つ巨人族のナンバースリーのガルメイク。

彼もまた美男子の素養を持つと言う事を父親が嫉妬、そのまま死ねと言われ彼を迎えに来る事は無かった。

 ドランドゥオとはまた違う谷へと落とされた彼は死に物狂いでその谷の食物連鎖の頂点に立つ。しかし谷の作りから中々這い上がる事が出来ず、彼もまた二百年もの間谷底で力を蓄える事になった。

 そして自力で這い上がり、城へと招かれた時彼の父親はその顔を見て直ぐに自らの子であると理解し、慌てて長に門番の仕事をやらせるように進言する。

その時点で力関係は逆転しおり、彼は長をもしのぐ力を手に入れているのだった。


 自分良し少し早く門番としてそこに居たドランドゥオのことを年上だと勘違いし、おっさんと呼ぶ。彼もまた冒険者達の冒険譚を聞き第三世界への憧れを胸に生きてきたが、雨宮の規格外の力を見てその誘いに乗ることにした。


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