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EP32 生臭い話

年内滑り込みセーフ!皆さん良いお年を!

この物語を読んで少しでも何か響くところがありましたら、評価、感想など頂きたいです。

よろしくお願いします。

 ・・・。


 私は一つ間違いを犯した。あの時、奴と始めてあったあの時。処分しておくべきだった。


 「ロペ・キャッシュマン・・・侮ったのが凶と出たか。」


 ハードボイルドを思わせる低音の声が一人乗りの宇宙用戦闘機『タイ』のコックピットに静かに響く。


 「こちらフィッシュ1、コーラルベース応答せよ。」


 手元のコンソールに呼び出し中の文字と共に、波紋のようなエフェクトが繰り返し表示される。


ーーこちらコーラルベース。フィッシュ1どうぞ、


 「間もなく目標艦隊と接触する艦隊の進行状況はどうか。」


ーーフィッシュ1。まもなく通常空間に帰還しますワープアウト予測地点のデータを送信します。


 ・・・おおよそ考えていた場所と変わらないな。今の我らならあの憎きキャッシュマン一族を根絶やしにすることも可能だろう。先日は不甲斐ない話だがこそこそと逃げ帰るほか無かった。まさかあのような生物兵器を隠し持っていたとは思わなかった。

 ・・・いや。今更そんなことを言っても仕方が無い。私は未来を生きる男。


 「フィッシュ1よりコーラルベース。一時間後目標と接触する、交渉が失敗した際は交戦することになるが後はよろしく頼む。」


ーー・・・少佐ご武運を。



ーーーーーーーーーー


マギアラピスメインブリッジ


 「ぎんちゃーん!お寝坊なのよー!」


 忙しく手元を動かすエリーは、雨宮の寝室に呼びかけるが返事が無く、就寝中だったクルー達を全員を叩き起こすべく非常警報を鳴らすことにした。


ウーーーーーーーーーーーーーー!!


 「この音は・・・空襲!?」


 「違います!非常招集です!」


 非常警報を鳴らしている割には慌てている様子の無いブリッジ。ブリッジクルー達は特に急ぐことも無くそれぞれの定位置へと着席する。


 「火器管制システムオールグリーン。」


 「シールドコントロールシステムオールグリーン。」


ーー動力室安定しています。


 「ダメージコントロール各部異常なしですっ!」


 「スペースワー・・・。」「ストップ。」


 イントがスペースワーカーの準備状況を報告しようとしたとき、艦長席に座るジェニから待ったが入った。


 「スペースワーカーって言うけどさぁ?なんかもう違うんじゃないかい?ここにあるワーカーはドルフ位で、後は殆ど全部銀が作った物だろ?」


 え・・・?そんなこと言われても・・・と目を点にして艦長席を振り返るイントは手元が止まらないままで、足を組みうーんと考えるジェニに注目している。


 「ジェニちゃん邪魔しないのー。」


 「そうは言うけどねぇエリー?やっぱり気になるじゃんか。」


 ジェニは昔々から一つのことが気になり始めるとテコでも動かない頑固さを持ち合わせていた。

かつて連合軍に居た頃、敗戦濃厚と言われた戦場で轟沈寸前の戦艦に最後の最後まで残ることを躊躇わない程には頑固である。何故生きているかと言えば、結果的にその戦艦はすんでの所で墜ちなかったのだ。この理由は様々憶測を呼んでいるが、ジェニ本人は知らないの一点張りで決して語ろうとはしなかった。


 「面倒なのが来たみたいだねぇ?」


 足を組んで顎に手でさすった状態のままジェニはブリッジの出入り口の扉を開け、副艦長席に着くロペを見る。


 「ロペぇ遅かったじゃん?」


 ロペは素早く手元のコンソールへと何かを打込み、情報を全艦隊へと発信する。

所属艦全体に発信された情報はかなりの情報精度を誇っていた。


ーーーーー


所属 スプラシオ帝国所属


船籍 不明 連合外船籍の為表示できません


艦隊情報 


 サラマンダー級 6


 ウンディーネ級 8


 シルフィード級 10


 ???級(大型) 1


ーーーーー


 情報を確認したブリッジがにわかに騒がしくなる。


 「ロペちゃんスプラシオ帝国ってどこのことなのー?」


 「まぁまぁ・・・今から説明するから。」


 スプラシオ帝国というのは、旧宇宙歴百年に地球圏へと外宇宙からやってきたサハギン種達の急先鋒で、出会い頭に連合艦隊を壊滅させ侵略戦争を仕掛けてきた超タカ派の帝国主義国家である。

しかしこの戦争が始まった時点で既にスプラシオ帝国は分裂しており、侵略派と共生派の間でも内戦が起こっていた。

 エルフ種の機転により、地球圏側は共生派との接触に成功、挟撃する形で帝国を壊滅させ僅か一年にも満たない期間で戦争は終結した。しかし皇帝とその血族は敗戦の折に逃亡しており、現在は所在不明となっていた。

 今回のスプラシオ帝国は恐らくその侵略派の生き残り、もしくは皇帝に付き従う者達で在ろうと推測される。


 「ひーふーみー・・・。」


 エリーが指折り数えていつのことだか数えている。


 現在は統合歴四百二十三年。旧暦は四百年を境に統合歴へと変わっている為、スプラシオ帝国が戦争を仕掛けてきてから七百二十三年もの月日が流れている。

その間に力を蓄えたスプラシオ帝国が一体。此処に何の用があるのか、ロペはそれを考えていたようだった。


 「スプラシオ帝国ねぇ。皇帝の血族か生きていたって事かい?」

 

 「その可能性もあるし、そうじゃない可能性もあるねぇ。」


 「どちらでも良い気がするのだが・・・、どう対応する?このままでは三十分も経たないうちにマギアシリーズの主砲の射程圏内に入るぞ。」


 「それが問題なんだよねぇ。オートロックオンで牽制しても良いかもしれないけど、向こうに戦う意思がないのなら困ったことになるしぃ。」


 かといって、既に互いの位置が確認できる位置まで接近しているにもかかわらず、通信の一つも送ってこない現状では戦いに来ましたと言っているようなものだ。


 「仕方ないねぇ。こっちから呼びかけてやんな!止まらないと撃つって。」


 「了解しました!」


 イントは手慣れた手つきで文章を作成し近距離通信波を使い、恐らく旗艦とお思われる巨大戦艦へと通信を送った。


・・・・・


 「返信来ました。」


 「読みな!」


 「はい。我人類二非ズ魚人之ヲ許サズ、闘イ滅スベシ。」


 「はい主砲開いてぇ。」


 「「了解。」」


 ホムラとアンジーは主砲発射に向けそれぞれチェック作業に入った。


 「主砲の起動を確認、マジックサーキット安定しています。」


 イファリスの抑揚の無い声が主砲の準備完了を告げる。


 「ロペ。トリガーは任せるよ?」


 「任せるってーか、私と銀河きゅんしか権限無いじゃんょ。」


 ロペはコンソールパネルから現れた接触認識型AR拡張トリガーを両手でしっかりと握りしめ、狙いをつける。

 雨宮は以前の主砲発射の被害を鑑みて、気軽に主砲を撃つことが出来ないように物理トリガーを廃止、権限によってトリガー自体を触れられないようにナノマシンに封印した。

そして雨宮により権限の与えられた、各艦の艦長及びロペ以外の人間にはトリガーを呼び出せないようになっていた。


 「フルパワーなら銀河系が捻れる位の威力はあるからなぁ・・・。」


 「ほいじゃロックオンっと。」


ーーーーーーーーーー


???ブリッジ


ウィーーーーニュ!ウィーーーーニュ!


 ブリッジの天井隅に取り付けられたウナギのような形をしたサイレンが鳴り響き、全艦隊に非常放送が鳴り響く。


 「安心するギョ!只の牽制だギョ!」


 ふ・・・。悍ましい人間どもめ、我らに先駆けて先制攻撃を仕掛けてくるつもりだな?

浅はかな・・・実に愚かなり!


 「全砲門開け!こちらから先制攻撃をするのだ!」


ざわざわ


 ん・・・?何故だ何故そこで相談している。こちらに報告せぬか。

そして何故誰も攻撃しようとしないのだ?


 「あのーぉ?皇帝陛下?」


 「何だ!?早くしないか!このままでは先制されてしまうぞ!」


 「いえ?ですから?あの?」


 「何故疑問形なのだ?何か問題があるのか!」


 「いえ?ですが?・・・まいっか?じゃー?撃ってください?」


 何故疑問形?と首をかしげながらも火器管制官は取り敢えず、ミサイルを一発だけ発射した。


 ギンギラに磨き上げられた巨大なマグロが宇宙空間を飛翔している姿は、さながら宇宙という海を泳ぐ遊漁・・・。マグロ型大型ミサイル黒いダイヤは徐々に失速し、腹の面を上にして宇宙空間にて静止した。


 「よしっ!当たったか!?」


 「え?」


 「ん?」


 なんだ貴様ら!何故こちらを死んだ魚のような目で見ている!私は・・・皇帝だぞ!


 「ミサイル推進剤切れにて停止しました。回収しますか?」


 火気管制官は何を言っているのだ?推進剤切れだと?


 「おい!一体どういうことだ!説明しろ!」


 「え?」


 「なんだ!?」


 一段高い皇帝専用のシートに座った金魚・・・のような頭をしたサハギンの男は憤りを隠さず辺りにわめき散らしているが、周りの者達は意に介さず黒いダイヤの回収に向かわせたようだった。


 「報告書?読みました?よね?」


 一段低い位置から皇帝金魚を見上げるホタテを頭の上にのせた女性は首をかしげ、小脇に抱えた少し大きめの端末を開き、自分の行動を再確認した。その行動の履歴の中には、この度の救援交渉の工程表をまとめた書類を、陛下に渡す。と記されていた。間違いは無い。


 「手渡し?しました?よね?」


 ・・・?なんだ?そんな物見てないぞ!


 「しらん!貴様が間違えているだけだろう!」


 「ですから?手渡し?しました?よね?」


 「知らんと言っておるだ  」


カッ


ーーーーーーーーーー


 最小限に威力を低下させたマギアラピスの主砲ディメンションブラスターは、見事に敵と思われる大型戦艦のブリッジの数ミリ側を通り抜け、その後ろに追随するサラマンダー級戦艦を一隻消滅させた。


 「ふむぅ・・・2%だとこんなものかねぇ?」


 「ロペねぇ様十分すぎると思います。これで連射が出来るんですから極悪ですよ。」


 威力を絞りに絞って、照射時間をも削った結果、マシンガンのような使い方が出来ると言うことが判明した。当たったら中型戦艦が一発で消滅するような代物を秒間百二十発以上の速度で発射する。

これを極悪と言わずして何という。イントは射線軸上の被害状況を詳細に確認している。


 「でもちゃんと一発だけ発射したょ?余剰エネルギーはどうしようかねぇ?」


 「たいちょ・・・副艦長。シールドコントロールに回しますので問題はありません。」


 艦全ての壁面に張り巡らされたマジックサーキットは、エネルギーの変換を行うコンバーターとも接続されている為、これを利用し破壊する為のエネルギーを安全に変換する事が出来る。


 「にしてもあのマグロは何のかなー?チェックチェックー。」


 主砲を発射する数分前、何故か敵大型戦艦からマグロが射出された。マグロはお互いの中間地点にも満たない場所で停止し、今なお宇宙空間を漂っている。エリーがチェックしたところ、あのマグロは核弾頭が積み込まれていることが判明した。


 「・・・マグロ核爆弾なのよー・・・。」

 

 この世界では、教会戦争が行われた旧暦五十一年以降核爆弾を始めとする核兵器を全て禁忌とし封印、以降の使用が禁止されている。このルールは今現在に至るまで脈々と受け継がれており、違反した場合連合からの強制脱退指導者及び主犯格の死刑など多岐にわたるペナルティーがある。


 「銀河きゅんが居たら速攻で分解されてるねぇ。」


 原子力の力を得た銀河きゅん・・・おなかから手が生えたりするのかなぁ?


 「フォトに・・・。」「ストップです!ストップ!」


 ちょっとしたお茶目なのに・・・。

 

 「レゾナンスチャンバーはともかく、あのマグロはこちらで回収。・・・・そうだねぇ?」


 ロペは艦隊じぶんたち評価を過大にはしない、正当に評価した中で艦隊の持つ力の強大さをしっかりと認識している。その点に関しては、世界の基本となるような情報が欠落している雨宮とは、違う角度からモノを見るちゃんとした司令官である。世界に与える影響を考えるところまで考えが行くのは、世界の管理者であった事も関係しているだろう。


 「イファリスぅ。シールドコントロールよろしく、アンちゃんもっともっと旗艦に近づいて、イントたん直通出来る距離になったら直ちに入電・・ってことで。」


 ブリッジの面々はロペがイファリスにシードコントロールの念押しをした時点で、体当たりかと身構えたが指示を聞き終わる頃には各々動き出し、交渉用の制服に身を包む。雨宮の知らないところで女達が相談し制作した揃いの制服は、一目見ただけで軍隊のそれを思わせる外見を作り出し、見る者の緊張を呼び起こす赤を基調とした以前着ていた物とは違う交渉せんとう用の物だった。


ーーーーーーーーーー


ぶぅん


 大型ARモニターに映し出された相手の姿を見て、ラピスのクルーの心臓は飛び跳ねた。


 (ぶふぅ!!あ・・・あれは反則だろう!)


 (ひぅ!で・・でめきん?)


 (金魚さんなのねー・・ぷふー!)


 (マスターから聞いていた金魚という魚に似ています。首から上だけ・・・。可愛くないです・・・。)


 (外見がっ!外見が殺しに来てる!)


 (・・・私の知る金魚はあんなに不細工では・・・ぷっ!)


 しかし、新庄を除く全員はナノマシンによってその内からあふれ出す思いをブリッジの外へと追いやり、発散していた。


 「ぷうっ・・・ぐえほっげほっ!!」


 「・・・きょうちゃんめー・・。」


 エリーがその隣で大爆発する寸前だった新庄を口を開かず、首も動かさずにひそひそ声で一喝する。新庄は一頻り咽せた後ハンカチを顔に当て眼鏡を拭きだした。


 「失礼。眼鏡が曇っていたもので。」


 何とか落ち着きを取り戻した新庄はロペに交渉の開始を促した。新庄の醜態を一部始終見ていたクルー達はその姿を反面教師とし落ち着きを取り戻していた。


 そしてロペは交渉とは名ばかりの脅迫たたかいを始める。


 「そうだねぇ?サハギンという種族を皆殺しにされたくなかったら、大人しく降伏して欲しいんだけどねぇ?あ、でも無理に降伏しろなんて言わないょ?跡形も残らないからぁここに来たことも無かったことになるだろぅし?核なんて持っている時点でコミュニティとしては連合規約違反だからぁ?解体されるし?恐らく大々的にニュースになるだろうし?サハギンはこれから、獣人種を越える酷い差別を受けることになるだろうねぇ?でも気にしなくて良いとおもぅんだ、ね?」


 わかってるよね?と言わんばかりにバチコーンとウィンクを飛ばすロペに、モニターの向こうにいる皇帝と思われる出目金以外のサハギン達は、全身から血の気が引き泡を吹き気を失う者まで現れた。


 (ロペさんも大概・・・人外的ですわね。)


ーーぐぬぬ!貴様!私が誰だか分かっているのか!わたしはぷぎょ!


 モニターの向こうで腰を抜かしていたホタテを頭に乗せた女性は右の拳に石膏のような物を纏わせ、出目金を殴った。


ーーそ?そそ空耳です?よ?!


 ロペは艦内だけでも意思の統一がされていない可能性を考え、交渉相手をホタテの方に切り替える。


 「君はどぅするぅ?そっちの出目金は死ぬ気満々みたいだけどぉ?」


 聞く物がいらだつようなイントネーションで煽りながら、ロペは矢継ぎ早にメリットデメリットを詳細に説明し分かるよね?解ってくれるよね?判ってくれないと困るよぉ?と、ホタテをした下から舐めるように睨み付ける。


ーー・・・私達の?目的は?・・・。


 完全に萎縮しているホタテは、頭の貝をカパカパさせて目尻に涙がうっすら浮かんでいる。


 「目的わぁ!?」


ーーも・もくてきわぁ?


 「ん・もくてきわぁ!?」


 ヨーヨーと絡むヤンキーのようになってきたロペをイントが注意し、ホタテに説明を促す。


 「ロペねぇ様?下品ですよ?で?ほたてさん何をしにここに来たんでしょうか?核ミサイルを撃ってまで。」


ーー誤解です?違うんです?私達は逆らえなくって?この出目金は馬鹿だから普段は命令しないんですけど? 今回は命令されてしまったので?撃たざるを得なかったのです?


 「どうして疑問形なんですか!こっちに聞かれても分かりませんっ!」


ーー癖なんですぅ?


 「知らんがな。」


 中々話が纏まらないまま十数分が過ぎたとき、出目金がすっくと立ち上がりロペに向かって指を指す。


ーー気に入った!私の嫁にしてやろう、いや!私の嫁になれ!


 そう言って自信満々に言い放つがそれ以後の言葉が出てこない。


ーー・・・?何をしている?私が嫁になれと命令しているのだぞ?


ビキッ


ーーさっさと嫁入り道具を・・ギョフン!?


ビキビキッ


 「みんな?あいつ殺して良いかな?」


 「良いとは思うがまだ待ってくれ!」


ーーいいとおもいますぅ!?でも!?ここから外に出してからにしてください!?


 ロペは生理的に受け付けない存在から求婚されたことが甚く気に入らなかったようで、殺害を心に決めたようだった。だがまだ交渉も終わっていないからとクルーに窘められシートの背もたれにもたれかかり、モニターの向こうで完全に簀巻きにされ天井からつるされた出目金にモザイクをかけた。


 「グロ画像みたいなのー。」


 「しっ見ちゃいけません。」


 イントとエリーはこそこそと相手戦艦のスキャンと構成人員数を調べる為に、ナノマシンを送り込んでいた。次々とナノマシンから情報がリストアップされていくが、特にこれと行って有益な情報は無かった。


 「銀河きゅんならこうするね。そこの出目金はあんたが殺せ。そしたら悪いようにはしない。ってね。」

 

ーー銀河きゅん?


 「どうするの?やるの?やらないの?」


 決定を促すロペだったがその通信に割り込むように別の通信が割り込んできた。


ーー待ってくれ!ロペ・キャッシュマン!ま


チョキン!


 まるで鋏を勢いよく動かしたときのような音が大きく鳴り響き、モニターのモザイクから盛大に出汁が・・・血液が噴き出した。


ーーやってやりましたよ?これで私達も社会に復帰させてください?


 「おおぅ・・・モザイクかけておいて良かった。」


ーー・・・・えぇ・・・?


 画像が不鮮明な為誰だか分からないが、割り込んできた通信の主はあっけにとられているようで二の句が継げないでいた。


 「じゃ・・じゃぁ。まずは改めて目的を聞こうか?取り敢えずその物騒な鋏はおいて・・・ね?」


 ホタテによると、帝国が敗北してから数百年もの間小惑星を改造した居住コロニーで暮らしてきたが、つい先日謎の光がコロニーの動力部を貫通、脱出を余儀なくされた。それ以降どこかのコロニーに身を寄せようかとの議案も上がったが、出目金が良しとせず今までほぼ自活能力の無い戦艦の中で、限界を迎えるまで生活を続けていた。しかしそれ以前に、帝国サハギンは近親婚が主流となりすぎ種族としての限界をも迎えていた。


ーーもう?限界?何です?ぐすっ・・・。


 「成る程ねぇ。・・・一応銀河きゅんならそうするか・・・。でも・・・。」


 「ロペねぇ様?」


 「あぁ・・。ごめんごめん・・・。まぁ私にどの程度出来るか分からないけど・・・そうだねぇ?

そこのホタテちゃんとあと何人かでこっちに来なょ、今後のことを相談しよぅ。あと・・・。」


 不安を隠せない表情のロペだったが意を決したようでモザイクを指さした。


 「そこの出目金の死体もってきてくれるかなぁ?」


ーーこれ?ですか?汚れちゃいます?よ?


 「ラップかなんかに包んで持ってきて・・・。」


ーー分かりました?直ぐに向かいます?


ーーその相談、私も同行する!もう貴艦の近くまで来ているのだ、着艦を許可して欲しい!自分は!


 「おっけー・・・確認したょ。ゲスト用ドックを開けるから武装を解除して入ってきて。あー、そっちの船には横付けするから直繋ぎしよぅ。」


ーーわかりました?お待ちしています?


ーーーーーーーーーー


マギアラピス応接室


 応接室の革張りのソファーにはロペ、ジェニ、そしてキャシュマン一族から護衛として末の弟、昇竜・キャッシュマン、そして相対するのはほたて事、エルマ・スキャロ、そして、ドレン・ジャッジョ、ファントマーニ・タイと言う軍師だという鯛のような頭の男の三人。

 ファントマーニに関しては何故か非常に態度が大きく、応接室に入るなりソファーに腰掛け安いソファーだとブツブツ独り言を言っている。


 「ファントマーニ!何故勝手に座っている!?立て!この愚か者が!」


 ドレンがそんな横柄な態度をとる鯛の頭を掴み、床にたたきつけた。


 ・・・床が汚れるからやめて欲しいんだけどなぁ。


 「まぁそいつの処刑は後にして、取り敢えず座ってよ。」


 「申し訳ない。」「しつれいします?」


 応接室のドアがノックされ、メイド姿のファムとネシアがティーセットとお菓子を持って現れる。


 二人とも何してんのさぁ・・・?にしても・・・見事に欺かれていたなぁ。ドレン・ジャッジョ・・・。只のテロリストだとばっかり思い込んでいたよ。まさか帝国のスパイだったとはねぇ。まぁ火星のスパイじゃ無かっただけまだ良しとするところかなぁ?でも火星のスパイは別に居るし、どうでも良いか・・・なぁ?


 「で。何をしに来たのさ?あんた達。」


 少し大きめの三人掛けのソファーにジェニとロペ、ドレンとエルマが向かい合って座っている。部屋の入り口にはファムとネシアが扉の側に控えており、ジェニとロペのソファーの後ろには体の大きいロペの弟、昇竜が後ろに手を組んで威圧感たっぷりに立ち尽くしている。そしてソファーで挟むように配置されているテーブルの横には目を回し気を失っているタイが転がっている。


 「それは・・・?」


 エルマが話しにくそうに話そうとした時、ドレンはそれを遮り話し出す。


 「我らがスプラシオ帝国は・・・いや。旧スプラシオ帝国は先日滅亡した。その生き残りの数千名は、命辛々この宙域まで何とか辿り着いたのだ。この宙域の先にはコロニーがあるはずだ。我々はそこに移住しようと船を進めてきたところだった。」


 「ですが・・・?そんな場所まで?辿り着く推進剤は既に残っていません?」


 いやしらんがな。銀河きゅんならきっとそう言うね。私は我慢するけど。


 「そんなとき偶然にも何故かこの航路の中間に留まるあなた方の艦隊が見えました。返せる物も何もないのですが、是非にお力添えを頂きたくこうして参じました。」


 あー・・・。滅亡しちゃったかぁ・・・。あのトリガーを引いたのは誰だったかなぁ・・・。四番艦だったかしら?射線軸計算と調査は必須事項だねこりゃ。撃つ度にどっかのコロニーが滅びちゃうかもしれないしねぇ?


 「全面的に?こちらに?非があるのは分かっているのですが?どうか?どうか?仲間を?安全なところ?に移住させては頂けませんか?」

 

 ・・・それは別に良いんだけどねぇ?銀河きゅんも起きないままだし、このまま進むことも考えていないわけだから手は空いているしぃ。んー、銀河きゅんだったらきっとこういう。


 「おっけー。」


 「何かの作戦の為に展開中で非常に難しい話である・・・は?」


 「え~?」


 「手は空いてるし、買い物にも行ってきて欲しいからそのついでで良かったらアトレーティオ4にでも下ろすょ?あそこは今人手が要るだろうし、直ぐに招き入れてくれると思ぅ。ただし。」


 ジェニは目を伏せたままうんうんと肯き、ロペの方を向いて首をかしげる。

今の彼らに何を求めるというのか?と言う疑問がジェニの頭によぎる。


 「女の子を何人か置いていって欲しいなぁ。多分・・・いや絶対ここの方が余所より良い暮らしが出来るし。生け贄も必要だよね。」


 生け贄・・・。そう聞いた二人は顔を青くするが、向き合い決意を込めて頭を下げる。


 「分かりました?私がここに残ります?」「分かりました。女では無いがこれでもサハギン特異固体として、長く生きた身決して損はさせません。」


 「ドレンさん?」


 「だから女の子だっちゅーにぃ。」


 「いやしかし・・・。我らにはそう居りませんので・・・。」


 「でも要るんでしょ?居るでしょ?」


 「います?十人程見繕って連れてきますので?それでいいでしょうか?」


 「ん。じゃあそれで手を打ちましょか。」


 「ま・・・まて・・・!」


 話が纏まったところだったが、床ペロして気を失っていた鯛が目を覚まし全てをひっくり返そうとしている。


 「貴様らは帝国の皇帝を殺した!その罪をつぐな・・・ガッ!!」


 立ち上がり意味の分からないことを言おうとしたところで、後ろから昇竜に組み伏せられ再び床にキスをする羽目になった鯛。昇竜の力はすさまじく、外で聞いていてもミチミチと筋繊維のちぎれる音が聞こえてくる。


 「・・・勘違いするな。貴様らはこの船に核を使った。その時点でもう避けることの出来ない滅びの道がある。姉上と兄上に救っていただけただけで感謝をするところであろう。」


 その兄上はまだ寝てるんだけどねぇ。


 「それが事もあろうか、そちらのほたてが殺した皇帝の殺害をこちらに擦り付けようとするなど言語道断。この場で打ち首にしても文句は言わせんぞ。」


 「打ち首?にしたら文句?は言えない?と思いますよ?」


 「む。そうか。そうだな。」


 場の空気が一気に弛緩する中、ゴキンと失われた筋繊維の果てに折れた骨の音が鳴る。


 「アガーーー!!」


 「昇竜。もう離してやんな。」


 「む・・・承知。」


 音も無くタイから離れ、ジェニとロペのソファーの後ろに戻ったが、その二人の鼻にスッとかぐわしい匂いがする。


 「魚・・・・。」


 「生臭っ。」


 昇竜の服には最初に組み伏せた時に付いたと思われる、何かの液体のシミが付いていた。

それはタイの唾液や涙や汗などが作ったシミであった。

そしてそれは匂いの発信源でもある。


 「強烈だわそれ・・・。クサッ・・・。」


 「昇君着替えてきなさぃ。」


 そして更にまた気を失ったタイ本人からも強烈な生臭さが放たれている。


 「死んだのかい?」


 「意識を失っているだけだと思うのですが。その・・・。サハギンの体液は非常にその匂うと言いますか・・・。」


 「否、姉上悪いがあの者は暴走しているようだったので止めを刺してある。」

 

 あらまぁ・・・しかし磯臭い・・・ここは砂浜だっただろうか。・・・。

そう錯覚できる程の濃密な磯臭さ。こうなると非常に気になることが・・・。


 「女の子もそうなの・・・?」


 「無いです!?・・・無いと思います?」


 ま・・まぁその辺りは銀河きゅんに直接確認して貰えば良いか。

ナノマシン。匂いを分解してデータベースに情報入れといて。あと・・・掃除もよろしく・・・。


 「まぁ、お互い言いたいことも終わったことだし、お茶くらい飲んでいきなょ。」


 「では・・・お言葉に甘えさせて貰います。」「いただきます?」(匂いが消えましたね?)


 私もブレイクしよっか・・・。ん?良い匂い?


ブフッ!!


 「ファムたん!?出汁じゃんこれ!?」


 ネシアはウシシと白い歯を見せて笑い、ファムは頬を赤く染めもじもじとしている。


 「魚には出汁だと思いました・・・。」


 「和食じゃん!?ティー!ティーは!?どんな発想なのそれ!?」


 と言うか世界の柱に只の魚認定されているサハギン種ってどうなんょ・・・。

突っ込むところが多すぎて忙しいょ!


 「てかあんたら普通に飲めるの!?」


 「こういう物なのかと?」「中々濃い味で良いかと。」


 リラックスできないティータイムが終わり。お菓子もゼリーかと思いきや煮こごりだったりと、サハギンにはやや受けが良かったようだが、ロペとジェニは喉が渇き食堂で大量の水をがぶ飲みするのであった。


ーーーーーーーーー


 会談の終わった数時間後、残ったサハギン船団に補給を行い船団はアトレーティオ4に向かい船を進めることになった。


 「度重なる協力、感謝しても仕切れません。このドレン皆を送り届けた後、是非こちらで共に戦わせていただければと・・・。」


 ドレンとロペは以前から度々テロリストと、相対する連合軍人として戦いを繰り広げてきた経緯があるが、お互い目的がそれぞれあった上でのことだと言うことで、気にしないと言うことに落ち着いた。


「まぁそれは好きにして貰って良いんだけどぉ、結構時間が掛かるとおもぅし道中海賊も出ると思うから気をつけてねぇ。」


 冥王星宙域は非常に海賊が多く、以前壊滅させたオークを中心とする丸焼き団、獣人奴隷を中心とした超絶雌猫海賊団等、大規模な海賊団が数多くひしめき合い、しのぎを削っている。


 「そうですな・・・。まぁ、魔王軍に遭遇でもしない限り、今の我らの戦力なら何とかなるでしょう。数百年物間武装の研究や、戦の訓練しかしてこなかった我らです故、こと戦いに関しては譲りはしませぬ。」


 魔王軍かぁ・・・。一応今の時代にも居るんだねぇ。でも弱すぎて冥王星ダンジョンに居られなくなったって聞いたけど・・・。それでも外ではそこそこのレベルってことなのかなぁ?


 「まぁ、八番艦と九番艦を護衛に付けるからそれも無視していけるとおもぅよ?」


 「ありがたい話です。」


 「戻ってくる時はどっちかに乗ってくれば良いし直ぐだょ。一応私の方からアトレーティオ4の管理者には連絡を入れておくから、後は何とかしちゃってね。」


 「何から何までありがたい話です。」


 「ロペねぇ様これ以上引き留めても何ですし・・・。」


 ぉ・・・そうだね。


 「じゃぁ、シンとフェトラの二隻は発進準備を」


 ドレンは側付きの者達を従え旗艦へと戻っていった。


ーー了解ッ!

ーーりょうかいしましたぁ~。


 切れの良い返事と間延びしたけだるげな声がロペの耳に当てられた感応スピーカーから発せられ、安全用の外部隔壁の開いた窓から外をのぞくと、二隻の船へと続いていた通路が切り離されゆっくりと遠ざかっていく。


 「魔王軍ねぇ。あんまり目立った様子は見られないけど・・・。」


 「最近は?大人しい?ですけど?少し前に?いざこざがあったみたいですよ?」


 残ったほたて娘ことエルマは、首をかしげながらロペに話しかける。


 「いざこざ?」


 「はい?何でも?大きな監獄?が壊れたとか何とかで?魔王軍のトップが死んだとか何とか?」


 魔王軍のトップって魔王じゃ無いのかねぇ?


 「あぁ・・・?トップと言ってもえーっと何でしたっけ?魔王軍三銃士?ですっけ?」


 「え?何それ初耳なんだけど?そんなの居るの?」


 「居る?と言いますか?居た?と言いますか?名前は分からないのですけど?三人とも死んだという話は?ドレンさんから聞きました?よ?」


 「はぁ~。何というか・・・まぁ・・・安全になったのは良いことだょね?」


 「そうおもいますぅ?」


 何だかこの娘と話ていると、自分の発言に自信が持てなくなってくるねぇ?


 「まぁ今すぐどうこうという話じゃ無いなら良いか。ところでさ・・・。」


 「はい?」


 二人で並んでブリッジに向かう途中、ふと足を止めてロペがじっと見つめるのは、エルマの頭の上に乗るホタテ。かぱっと開いた回の中にはプリッとした身と、キラッと光る真珠のような塊が見える。


 「その頭に乗っているのは・・・ほたて・・・?だよね?」


 「ホタテですよ?」


 「何か意味があるの?」


 「意味と言いますか・・・?体の延長と言いますか?」


 サハギン族の女子は大きく分けて二通りに別れ、ドレンやその他サハギン族男子と同じように首から上が魚類の形をした者と、その他人種と同じ体と頭で頭の上に貝の付いた女子、その二通り。

エルマは後者で、生まれた時から頭頂部にその貝はひっついているのだとか。


 「ほー。・・・・と言うか首から上が魚類って女子的にどうなのよ?」


 「私は?産まれた時からそういう環境で育ってきましたので?特に気にならないですけど?」


 「そ・そっかぁ。こう言っちゃ悪いけど、美的感覚の問題なのかもしれないねぇ?正直エルマが前者のサハギン女子じゃ無くて良かったょ。」


 「そうですかぁ?それならよかったですぅ?」


 「うん。そうだ、ブリッジに行く前に銀河きゅんの所に寄っていこう。一度見ておいて欲しいし。」


 「銀河きゅん?ですか?」


 「そ。ここのボスだよ。」


 ロペ達二人はエレベーターに乗り、F3にある雨宮の私室へと向かった。


ーーーーーーーーーー


 暗い部屋の中に一人雨宮は佇んでいる。


 どこだろうここは?


 ずいぶんと長い間眠っていたような気がしている雨宮は、体の感覚を取り戻し自らの足で立った。


 暗い。


 目を開けても光の無いこの場所は何だろうか?


 すると突然光があふれ、顔をしかめて光を遮っていた雨宮の目の前に、裁判所内部と思われる場所が視界に入る。


 裁判所?誰も居ない・・・。


ーー雨宮銀河前へ進みなさい。


 不意に名前を呼ばれ驚くも素直に視界に広がる裁判所と思われる場所へと向かって歩みを進める。


 そして感覚が現実世界と同じ色を取り戻していく。


 「被告人雨宮銀河証言台の前に立ちなさい。」


 「断る。」


 間の無い返事に戸惑う聴衆、そして裁判官と思われるおっさん。・・・聴衆?


 雨宮はふと周りを見渡すと、そこには先ほどの暗闇に閉ざされた空間は無く、正に裁判所・・・法廷だった。多くの傍聴人がひしめく傍聴人席からはざわざわと、喧噪があふれ出している。


 「静粛に!」


 裁判長と思われるおっさんの一言で静まりかえる法廷内。


 「雨宮銀河、もう一度言う。証言台の前に立ちなさ「断る」い。・・・この・・・。」


 「むしろお前がこっちへ来い。何様のつもりだ。」


 証言台の手前にある椅子にどっかと腰を下ろした雨宮は、憮然とした表情で辺りを見回しくだらないという感じで吐き捨てた。


 雨宮の不遜な物言いに一瞬静まりかえる法廷、しかし雨宮はこのような時でも、自分のナノマシンが確実に把握できコントロール出来ることを確かめていた。


ーーーーー


 ゼムロス・アーマラー・マキナ 68歳 人種 多元世界管理委員会所属第二委員長

 

Lv1 職業 裁判官 


HP 5


MP 10


状態 腰痛(重度)

   冷え症(足)

   糖尿病(軽度)

   高血圧(中度)


スキル 種族スキル 

    共感(封印)


    個人スキル(先天)

    決断力

    冷静

    勤勉

    

    後天スキル

    裁判官

    司法書士

    弁護士


ーーーーーー


 頑張って勉強したんだろうなぁ・・・。と思うんだがそうじゃないなぁ。今のこの状況が飲み込めない。別に拘束されているわけでも無いからいつでも逃げられるんだが・・・。逃げたところでここがどこだか分からないことにはどうしようも無い。できれは急いで戻りたいんだが・・・。今の俺は一体どうなっているんだか・・・。


 雨宮は改めて周りに居る人間をナノマシンでスキャンしてみたが普通の人間しか見当たらない。

警察官、裁判官、弁護士、検事、傍聴人、全て普通の人種、レベルも1、特殊な力を持った者も存在しないし特別な力のあるアイテムや物質も存在しない。


 ここは・・・どちらかというと前世の世界に近い。ファンタジーのかけらも無い超技術も無い、俺の嫌いな普通の世界。法に従属するくだらない世界・・・いや。第三世界も法が無いわけでは無いんだが・・・。


 「で?あんた達は何がしたいんだ?」


 このままでは話が進まないと思ったのか、渋々裁判長と思われるおっさん、ゼムロスが長い椅子に座った俺の横に座る。


 「やれやれ・・よっこいせっと・・わしは腰が悪くてな・・・。」


 ふぅーと深いため息をついたあと、ゼムロスは雨宮にことの顛末を説明に入った。


 「今君は所謂魂と呼ばれる状態でここに居る・・・はずだったんじゃが・・・。まぁこの際それはおいておくとして・・・。君には今、世界管理権不法奪取という罪の疑いがかけられて居る。」


 「なんだそれ?俺はそんなもん知らんぞ?」


 「むぅ・・・なんと言えば分かりやすいかのー。そう。君、第三超広域開拓世界の柱を手元に置いておるじゃろ?あれが罪に当たるんじゃわ。」


 「柱ってーと、ファムとネシアのことか。」


 「と?と?とはどういうことじゃ?」


 「どうもこうもあるかよ。二人に別れた理由ぐらい分からんのか?あんた委員会の人間じゃ無いのか?」


 むむむ。と額にしわを寄せるゼムロスは、ゆっくりと立ち上がり雨宮に向かい合う位置で証言台の手すりに肘をつく。


 「すまんがその辺りはわし等でも把握出来んかったんじゃ。」


 管理する組織と言っても万能ではないと言うことか。

一体何をする組織なんだろうなぁこのおっさん達は?


 「ざっくり言うと、余所の世界から侵略を受けて安全の為に二人に別れた。それだけだ。

まぁ、今は二人ともうちに居るがな・・・。」


 「侵略・・・か。その辺りを詳しく・・・。」


 「・・・。あんた達はそれを知ってどうすんだ?」


 「どうするもこうするも、法によって裁かねばならん。他世界への無意味な進行は侵略罪に当たり・・・。」


 「罪だとか罰だとかは良いよ。具体的に何をするんだ?何か出来るのか?」


 ここがどういう世界なのかは分からない。だが、ステータスの隠蔽すら出来ない普通の人間が一体何をする?何が出来るというのか?謎はいろいろあるんだが、疑わしいことこの上ない。


 「管理システムに対して強行権を行使する許可を与えることになるじゃろうな。限定的にじゃが。」


 管理システム・・・ねぇ?


 「正直なところ、俺はあんた達が疑わしい。何も出来ないとさえ思っている。」


 ゼムロスは立っているのに疲れたのか、再び雨宮の横に座り直し腰をさする。


 「ふぅー。確かにの。わし等自身が何かを出来るわけでは無い、あくまで『法』の裁きじゃ。

今君らの居る世界においては、法というモノはいわば約束事。その程度のモノでしか無い。

ルール、常識、そう言ったモノと対してかわらんのじゃろ?じゃがな、この世界ではそうでは無い、『法』は絶対なのじゃ。この世界においては、法に背く事は『不可能』なのじゃ。」


 「不可能?」


 「そうじゃ。そしてこの『法』はこの世界を上位とする全ての下位世界に対して適応される。」


 ・・・何だと・・・?


 「それも『法』によって定められたことじゃ。背くことは出来ん。・・・出来んはずじゃった。じゃが君は言うたな?侵略があったと。」


 「そうだな。」


 「そのような行為は本来起こりえないのじゃよ。『法』によって制限されて居るからの。」


 今の話を聞く限り、『法』とやらは人の行動だけじゃ無い、思考すら制限もしくは制御することが出来るらしいな?だが俺はそんな物に制限された覚えは全くないんだが・・・。いや・・・無いか?

待てよ・・・なんか・・・有ったような気がする。


 「じゃが・・『法』の執行者が動いた形跡は無かったんじゃ。」


 「成る程ね、『法』ヲ犯すことはそもそも出来ないはずだったし、出来たとしても、執行者とやらが断罪する。そういうシステムがこの世界にはあるんだな?」


 「そういうことじゃ。じゃが執行者は動いて居らぬ。『法』も犯された。これが意味するところはじゃな。」


 「ふむ・・・。」


 「意図的に世界を滅ぼすことが出来るようになるという事じゃ。そもそも止められるモノが動かんのじゃからの。」


 「そうか。そもそもファムネシアが避難しなければいけない事態になることが、そもそもおかしいことだったのか。」


 「うむ。そう言った意味では第三世界の柱は良い判断をしたと言えよう。」


 なんとなく言いたいことは分かったが、俺がここで裁かれる理由が今ひとつ分からないままだな。


 「一つ疑問が出たんだが・・・。聞いても良いか?」


 「うむ?」


 「その執行者とやらは普段はどこで何をしている?そもそも人なのか?」


 「しらん。」


 「はぁ?」


 「そもそもそんな事態にならんのじゃから、うごいとる所を見ること等無いのじゃよ。居場所も分からん。そういうモノが居るのじゃと『法典』に記されているだけじゃからの。」


 「その法典?とやらを見ることは出来るのか?」


 そう言うとよっこいせと、重い腰を上げゼムロスは階段を上り自分の席に戻り人が死ぬレベルの分厚い書物を投げてよこした。


 「軽い・・・。」


 「重さなどほぼ無いのじゃよ。それはそういうモノじゃ。物質であって物質で無い。不思議な本じゃ。」


 ほっほっと、愉快げに笑い自分の席に腰を下ろすゼムロスを見届けると、雨宮はナノマシンで『法典』を取り込んだ。


ーーーーー


ERROR情報量が多すぎます


データサーバーを整理します


データー『法典』を閲覧可能状態で圧縮します


 

圧縮中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・終了しました


再構成します


現実世界に再出力します


再現率100%


ーーーーー


 『法典』を受け取った雨宮の手元が一瞬光ったと思った次の瞬間には、特に何も起こっていないかのような雨宮の姿があった。実際には一度分解したのだが、それを理解できる人物は雨宮以外にこの場には居なかった。


 「成る程ねぇ・・・。こりゃ情報が多いわ。上位世界に下位世界、執行者に『法』。ガッチガチに固められているかと思いきやそうでも無い。確かにこの世界はこの『法』によって守られていたかもしれないが、下位世界はそうでも無い、それに執行者を見たことが無いのも当然だ。」


 「ほほう、というと?」


 「あんたこの『法典』をどこまで読んだ?」


 「人の守るべき法・・・と言うところだけじゃ。それ以外は見ることが出来ん。その事実に気がついたのもつい最近の事じゃ。そもそもその項目以外のモノが存在することすら知らんかった。」


 「成る程ねぇ、そりゃ知らんわけだ。」


 「君は読めるのか!?」


 読めるというか何というか・・・まぁ情報としては読めると言うべきか。


 「まぁな。似たようなもんだ。」


 「それで!?」


 あぁ、執行者のことだったか・・・。


 「執行者とはその世界毎に存在している。つまり、ここにはここの執行者がいるが、ここは動くことがそもそも無かったから見ることが無かったんだろう。だが第三世界ではたまに現れている。」


 「勇者システムというモノがあんたの言う執行者とか言うモノと同じモノだとこれには記してあった。」


 「勇者システムとな?」


 「そうだ。誰がこんなダサい名前にしたんだか分からんが、本来は侵略とかそう言った逸脱行為に反応して、新たに世界が生み出しその対処に・・・処罰させる為のシステムらしい。」


 勇者ねぇ・・・。アンジーに、なんて言ったか・・・あの犬・・・まぁ良い。それに洋介君。後はイチローだったか、考えてみれば結構居るな。他にももっといそうだ。


 ・・・と言う事はだ・・・。それだけ『法』ってのに違反した奴がいたって事か?それもそうだがちょっと待てよ・・・?この『法』が下位世界である第三世界にも適応されるって事は・・・だ。もっともっと沢山勇者がいてもおかしくない・・・って事だ、それだけ無茶な『法』が有るんだからな。


 一つ例を挙げよう。


ーーーーー


 神の存在を疑ってはならない。


ーーーーー


 これもう無理だろ。第三世界では神として知られているロペは、一回死んでるんだぞ?

ロペの存在を知っていた奴らは、もういないって思うこともあっただろう。その度に勇者が現れてしまうのか?そんなことあるか?有るのかもしれないが・・・。ちと現実味が無いな?


 他にもあるぞ?


ーーーーー


 食事は24時間以内に三度以上摂っては鳴らない。


ーーーーー


 とかな?小腹が空いておやつは食事に入りますか?って事じゃね?

しかもそれで勇者が殺しに来るんだぜ?勇者忙しすぎだろ?と言うか記してある法典の通りなら、罪を犯すモノが現れる度に勇者が生み出される事になる。おかしくね?世界中勇者だらけになるだろ。


 「ってな感じの『法』も有るんだが・・・。」


 その話を聞くや否や、傍聴席が騒がしくなる。それもそうだろう。ナノマシンで調べた限りこの世界は俺の産まれた世界と殆ど変わらない。この誰が作ったか分からない『法』ってのがあるぐらいで、そのほかが殆ど変わらない。むしろほぼ同じ・・・。

俺の知っている歴史とほぼ・・・。


 ここは何だ?俺は何を見ているんだ?俺は元いた世界に戻ってきたのか?

いや・・・そんなことはあり得ない。・・・あり得ないはずだ。


 「雨宮君。どうかしたかね?」


 「いや・・・何でも無い。」


 「では、この世界で執行者、勇者が生まれない理由とは何だか分かるかね?」


 「簡単な話だ。この世界には勇者とやらを生み出す為の要素が存在していないからだ。」


 「要素・・・?」


 「そうだ。勇者とは第三世界で言う超人種のなれの果てだ。超人種がその『法』を違反した存在を察知した勇者システムによって作り替えられ、勇者は生まれる。しかし超人種は一定程度のマナ濃度が保たれた世界でしか発生しない。しかもその発生は極めて限定的な要素を含む。・・・。このぐらいで良いか?要するにマナの存在しないこの世界では勇者は生まれない。と言うことだ。」


 「ではこの世界にはそもそも執行者は・・・。」


 「居ないかもしれないし居るかもしれない。」


 俺がこんな曖昧な言い方をしたのは理由があるんだぜ?・・・俺みたいな例があるからな。


 「そうか・・・転移や転生でそうなる事もありうるのか・・・。」


 勇者がそのまま転生したり転移したりする事があればの話だがな。そんな存在を世界が放って置くはずが無い。きっと世界中たらい回しにされてあらゆる違反者を裁きに回らされる事だろうよ。

つまり、転移や転生の線も望み薄って事だと俺は思うね。


 そう言った意味で俺の居た世界とこの世界の決定的な違い。俺はここに居るガードマン的な奴らは警察官だと思っていたが、どうやら違うらしい。本当に只のガードマンのようだ。この世界には『法』が存在するのに、それを守らせる為の警察組織が存在しない。全て執行者に任せていたのだろう。そうなると気になる事があるな?


 「この世界では『法』を犯した奴はいないのか?」


 「さっきも似たような話をしたと思うがの・・・。この世界ではつい最近まで『法』を逸脱すると言う事を思いつく事すら無かったのじゃ。無意識に『法』を犯す事も無かったはずじゃ。この裁判所も今日初めて使用したのじゃからな。」


 「今日初めて!?しかも余所の世界の俺の為にわざわざ!?なぜ!?」


 何だろう、覚えの無い事で急に連れてこられたせいか余計に腹が立ってきた。


 「悪いがその質問には答えられん・・・。」


 「知らないのか・・・。」


 「そういうことじゃ。わし等も気がついたらここに居ったのじゃ。そうじゃな?皆。」


 ゼムロスは周りの皆を見渡して確認をとるが、首を縦に振っているのはどうやら内側の人間だけらしい。傍聴席の人間達は一様に首をかしげ、気味の悪い者でも見るかのように法廷の内側を見つめざわめいている。


 「私は弁護士なんかした事が無い。そんな資格も持っていない。」


 「俺だって検察官じゃ無いぞ、俺は只の本屋だ。」


 「俺だってガードマンなんかやった事も無いぞ。俺は只の学生だし・・・。」


 今まで事の成り行きを見守っていた内側の人間達が口々に不平を漏らし始めた。

すると、弁護側の出入りする通用扉が開きこの場に全く似つかわしくない格好をした男女が現れた。


 「『法』の違反を感知。排除します。」


 「『法』の違反を感知。排除します。」


 ・・・?今更かよ?しかも今ナノマシンに全く反応しなかった。

いや、反応はあったが・・・扉の後ろにいきなり現れやがったぞ?

ナノマシン・・・急いで奴らの痕跡をトレースしろ。


ーーーーー


執行者の存在を検知スキャンします・・・・・


ーーーーー


エクトラス・イロリナート 34歳 超人種 火星帝国軍近衛隊一番隊副隊長


Lv239 職業 帝国軍人/勇者/法の執行者


HP 68025/68025


MP 3660/153660


状態  魔力枯渇症(重度)

    空腹(軽度)

    意識不明(重度)

    妊娠(1ヶ月)

 


スキル 種族スキル 共感Lv3(封印)

    個人スキル イロリナート流抜刀術Lv7

          生物兵器バイオニックウェポン

    後天スキル 帝国刀技Lv5

          時魔法Lv5

          空間魔法Lv5

          時空魔法Lv1

          時空剣Lv1



ディンゴ・ティンク 328歳 デーモン種 太陽系共和国軍魔窟監視大隊少佐


Lv508 職業 軍人/勇者/法の執行者 


HP 185050/185050


MP 20012/120012


状態 魔力枯渇症(中度)

   空腹(重度)

   意識混濁(重度)



スキル 種族スキル 巨大化Lv8

    個人スキル マッスルコミュニケーションLv9

          金色こんじきの拳

    後天スキル CQCLv10(M)

          コマンドサンボLv7

          極道式空手Lv10(M)


ーーーーー


以上二名の出現位置にわずかな空間のずれを確認


トレース開始します・・・・・・完了


空間接続先→第三超広域開拓世界海王星ダンジョン最深部


空間接続を維持しますか?


ーーーーー


 イエスだ。その穴はしばらくそのままで維持してくれ。


ーーーーー


了解しました


ーーーーー


 にしても・・・見たことある名前だしなんだかとっても強そうなんだが・・・。俺の知ってる勇者と違う・・・。うちの勇者は可愛いのやらポンコツやら、ゲーム大好き少年(過去)やら・・・共通点は不幸ってことぐらいか。


 執行者たる勇者たち二人は、法廷内全てを見渡し全員に先ほどと同じ言葉を繰り返す。


 「『法』の違反を感知。排除します。」


 「『法』の違反を感知。排除します。」


 あぁ・・・そういえば犯罪を見過ごすのも犯罪・・・みたいなことも書いてあったなぁ。つまり・・・。


 「この法廷内にいる人間全員がギルティ対象ってことかぁ。」


 俺のそんなつぶやきを聞いたかどうかはわからないが、傍聴席にいた一般市民と思われる奴らは、一斉に法廷から飛び出そうと扉に殺到するが開く様子は無く周りの人間を押し倒し踏みつけ、

阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

ドレン・ジャッジョ(2) 偽装略奪団の構成員サハギン種のテロリスト。サハギンとしては非常に珍しく好戦的で流血を好む。サハギン種としての自分の体に大きなコンプレックスを抱いており

容姿を貶められると激情する。サハギン種特有の整った体、そして首から上の赤い魚の顔が特徴。短命なサハギン族の特殊個体で、千年近くも生きる生き字引ではあるが

その経験や知識を組織のために役立てるつもりはないらしく、不審な行動が目立つ。また、世界の秘密を知る人物の一人としてイントエからマークされているため

割とおとなしくしている。


 上記の設定で海賊に傭兵として雇われていたが、見切りをつけ脱出したドレンは本来自らが所属する、サハギンのみで構成されるスプラシオ帝国へと戻った。

諜報活動として世界中を飛び回っていたが、方法が違法だった為連合軍や連合警察から指名手配されている。

 帝国では、スプラシオ帝国軍特殊個体特選隊所属の階級は少佐。元々破壊活動を主たる任務として活動してきた。


エルマ・スキャロ 29歳 超サハギン種 ほたて娘


 閉鎖された国家スプラシオ帝国出身の元皇帝補佐官。と言ってもその整った容姿のせいで無理やり副官として取り立てられた不運の持ち主。居住コロニーが大破した際に家族は皆消滅し、偶然艦の点検作業の為戦艦内に居た彼女は一人助かった。生き残ったのは彼女を含めた二千人程の軍関係者のみで、まともな生活を送れる生活基盤は完全に失われていた。

 スプラシオ帝国には教育という概念が希薄で、知識はデータ圧縮技術により直接脳に書き込まれる為教職は存在しない。しかし知識として教導の目的を知り教師という役割を目指して残された教育データを研究していたが、どうしても足りない情報があると思い首をかしげる毎日を送っていたがロペと合流した後に教師という役割に一つの正義を見出し、教員免許を持つクルー達から教えを乞う毎日を送っている。

 マギアシリーズに登場した後の役割はサブオペレーター兼サハギン種専門医師。


ファントマーニ・タイ 24歳 サハギン種 鯛男


 鯛の頭部を持つ自称スプラシオ帝国軍軍師の若者。しかしその実は特に役職を持たない無職の一般人。皇帝が死んだことを戦艦内にて聞いたことでスキルが暴走、意識が混濁する中でエルマと共にラピスへと乗り込むが途中で力尽き、無意識にソファに腰を下ろしてしまう。そしてドレンから殴られ、昇龍に締め上げられ錯乱したまま命を落とした。

 しかし彼の遺体を分解することで雨宮たちは新たな力を得ることになる。

 個人スキルはタイムポーテーション。


エクトラス・イロリナート 34歳 超人種 火星帝国軍近衛隊一番隊副隊長


 元星間テロリストエクシリス・イロリナートの姉にして、火星帝国軍近衛一番隊の副隊長を務める超越者の一人。双子の姉妹として火星帝国に生まれ妹と共に帝国近衛大学を卒業、近衛の上級士官として最前線で戦いつつも慧眼を発揮し指揮官としての実力も磨き上げられた。

 現場の指揮官としても超一級の能力を持つが、磨き上げられた抜刀術はスペースワーカーをも切り裂く斬鉄の剣としても恐れられている。

 階級は大尉、妹がテロリストとして変貌を遂げたのち、何度となく剣を合わせるが説得する事が出来ず悲観に暮れているところ上司である一番隊隊長と意気投合婚約を交わすがその後行方不明となる。


ディンゴ・ティンク 328歳 デーモン種 太陽系共和国軍魔窟監視大隊少佐


 月共和国似てダンジョンを監視する共和国軍魔窟監視大隊所属のデーモンの三世。

長く共和国に住むティンク一族の若き当主、しかし当主と言っても形の上での話で組織だったものではない。妻と娘と三人暮らしで、本人の感覚でつい最近生まれた愛娘モーニャを猫可愛がりする親バカ。しかしその親バカが行き過ぎたせいか子供は戦時中に歴史上まれにみる大犯罪を犯すことになる。

 子供がテロリストとして投獄されたことで悲しみに暮れ母親であるメリダ・ティンクは、コールドスリープに入り娘の出所を祈り長い眠りについた。ディンゴはその妻を守るべく裏切り者の誹りを受けながら、あえて軍を離れることはなかった。

 しかし、当直が終わり代わりの者とダンジョンの見張りを交代したある日を境に、忽然と姿を消した。

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