EP31 秘密の銀河 不在の秘密
お待たせ?
・・・相変わらずなんだけど無茶するなぁ。勝ちがないのは近づいた時点でわかっていただろうに。
雨宮の傷一つ無い体を湯船に浮かべて独眼竜アヒル宗を腹の上にちょこんと置く。
「人の気も知らないでさぁ・・・。」
ロペとアンジーは雨宮の体と自分の体を洗い、浮かべた雨宮の体に頭を乗せていた。
「目を覚ましませんわね。」
「また進化中なんだろうねぇ。あの界獣、桁違いの性能だったしぃ・・・。」
アンジーはふと雨宮が一番巨大な界獣を分解したときに現れた人間?と思われる存在のことを思い出した。
「情報リンクで手に入れた情報によると、勇者と・・・。」
勇者なんて今時珍しくも無い。ミリオンな数で産まれる世界だってあるし、どこもかしこも勇者勇者。ゆーしゃの大安売りだょ。
「ふんむ・・・。そもそもあの界獣ってゆーのが良くわから無いんだよねぇ?めちゃめちゃ強いし、数も多いしでっかいし。」
「それは確かにそうですが・・・。銀河さんのデータベースにアクセスしようとしても、今は知らない方がいいって警告と共に弾き出されてしまいました。」
アクセス禁止か・・・。権限使いこなしてるなぁ。
ちょっと前に調べたときはまだアクセスできたんだけど・・・。人とモンスターの融合生物・・・。それだけじゃただのキメラだねぇ?
人工人類が使われているから、あんな姿になった?
人工人類とは・・・なんだっけ・・・?思い出せないなぁ・・・。今度銀河きゅんに聞いてみょう。
「ロペさん。あまり長湯も体に触りますわ。」
ブクブクと湯船から吹き出しながら考えるのをやめたロペは、わざわざぎゅっと大事なものを抱くように運んでいく。
「このまま寝よっかなぁ・・・。」
「まだ駄目ですわ。一度説明したとはいえ、ブリッジに顔を出すぐらいはしないと・・・。」
「ふにゅ・・・。めんどくさい~。」
「あ!ちょっと!」
寝ると決めたせいか既に半分意識の無いロペは、裸の雨宮を抱いたまま、そのまま廊下へと歩いて行く。廊下に居るクルー達は大浴場から全裸で出てきたロペにざわつく、と同時に同じく産まれたままの雨宮に目を向け、そのまま何故か雨宮の部屋に向かってゾロゾロと行列を作ってロペの後ろをついて行く。
手早く着替えたアンジーは、その行列を何事かとその行列の後について行くと、自然と雨宮の部屋にたどり着く。
「何々?何の行列なの?」
「ロペさんがぁ・・・。」
「館長抱っこされてた・・・。」
「とりあえずついてきたけど・・・。」
皆が思い思いに雨宮の部屋に入りそこら中に座り込み雑談を始める。
ロペは雨宮をベッドに横たえた後ベッドの脇に腰掛け、端末を開いている。
「ちょっと皆さん・・・仕事はいいんですか?」
「ははー・・なんとなくついてきちゃいましたー。」
「みんなすぐに戻りなさい!!」
アンジーの一喝にゾロゾロと立ち上がったクルー達は雨宮の体にペタペタとひと触りして、各々の持ち場に戻っていった。
「全く・・・縁起物ですか?」
そう言いつつ自分もさわさわと愛おしそうに体を触り・・・頬ずりをし・・・・
ぎゅむ
「いっっっっ!!!痛っ!!」
端末を片手に持ったままのロペは、振り向くこと無く雨宮の体に口を近づけたアンジーの頬を抓りあげる。
「!!???!?!?!?」
突然の攻撃に怒髪天と言った様子のアンジーだが、すぐにロペの横に座り端末をのぞき込んだ。
「痛いです。」
抓られた右の頬をさすりながら恨めしそうにロペに文句を言うが、当のロペは全く意に介した様子は無く、逆にアンジーに端末の画面を見せた。
「何ですの?・・・あらこれは・・・。」
ロペがアンジーに見せたのは、雨宮の意識が途絶える直前の界獣に関する分析結果だった。
ー
報告者ーーー雨宮銀河
・この世界に対して攻撃的であり非常に危険と思われるこの生物と思われる存在群を、仮に界獣と呼称する。
・群れに対して近づき、目視で観測した結果様々な形態を持ちその数は極めて多いと言うことが判明。また、総じて巨大であり人類とは比較にならない質量を持つことが判明した。
・現在の状態は休眠状態であり、こちらからの攻撃にも反射反応以外の反応は無かった。
・分解を試みた結果、最も巨大であると思われる(目視できる範囲での話)界獣から素体となったと思われる人型生物五体を確保することに成功した。
ナノマシンに命じ、完全分析を開始する。分析結果は下記の通り。
・佐藤洋介 48歳 混合β超人種 勇者
元試験用第二広域開拓世界人。小学生の頃に閉鎖世界、試験用第八牧場世界に強制召喚召還後まもなく当世界の管理官補佐イントエシリーズと融合。
反転し、質量限界を超え増殖し続ける超巨大界獣仮呼称『壁』となり、試験用第八牧場世界のリソースを圧迫する。
試験用第八牧場世界が閉鎖される原因となった存在。
社畜雨宮の住んでいたアパートの近くに住む雨宮のゲーム仲間だった。
エマ 混合β超エルフ種 僧侶
元第五双性世界人。第五双性世界の基幹システムであるシステムユグドラシルの外部管理責任者。
この者の存在を失ったことで第五双性世界は現在混迷の時を迎えているという。
試験用第八牧場世界にて生産母体として肉体を改造され、エルフ系β種を生み出す基幹存在として重宝されていた。
試験用第八牧場世界人の異世界移住によって不要とされ、イントエシリーズと融合され反転するも融合は失敗、自壊が始まっていたが佐藤洋介に吸収される。
サーパンス 混合機人種 無職
元第三超広域世界人。産まれる直前に母体である母親ごと試験用第八牧場世界に拉致、イントエシリーズと強制的に融合されるも反転せずにイントエ・母・自分三人が融合した機人種として産まれた。
しかし、普通の機人種の存在価値を見いだせなかった試験用第八牧場世界は存在を破棄、佐藤洋介に吸収させた。
太蔵 混合β人種 路上パフォーマー
元試験用第二広域開拓世界人。夢はトップパフォーマーと言う目標を立て、各地のイベントなどに出没していた。第三超広域世界に引きずり込まれた際次元の裂け目に飲み込まれ、試験用第八牧場世界に流れ着く。
自身のパフォーマーとしての才能を現地人に完全否定され、絶望の淵に立たされるも自殺する前に佐藤洋介に吸収される。
トメッツァ 人β種 スパイ
元試験用第八牧場世界人。第三超広域世界へと諜報活動の為に潜入し様々な情報を牧場世界へと持ち込んだが、あらゆる分野で劣っていると知った牧場世界の王は乱心。
嘘の情報を持ち込んだとして、彼女を産まれて間もない合成モンスター佐藤洋介を育てる為の栄養源として吸収させた。
・以前遭遇したときより更なる進化を遂げている。海王星絶対防衛ラインを壊滅させた時の界獣は、目視で約二十メートル前後だったことに比べ今回確認した同種と思われるタイプの界獣を比較すると、約十倍ほど巨大化していることが判明。
最小サイズで約百メートル、最大サイズは計測可能だが時間が掛かりすぎる為計測経過データを破棄、少なくとも最小サイズの百倍以上の大きさとなる。黒一色の宇宙空間では数百キロメートル離れていても全体を把握することが不可能だった。
このことから、最低でも小惑星サイズの質量を持っている可能性があり仮に開戦した場合、体当たりによってコロニーが壊滅することが容易に予想できる。
ーーーーー
「めちゃくちゃですわね。」
「と言うか、銀河きゅん余所の世界の情報はどうやって手に入れたの?」
銀河きゅんホントに寝てるんだよねぇ?・・・うん。完全にスリープしてる。
眠い目をこすりながらロペは雨宮の頬を指でつついて、その横で横になった。
「ねよう。」
「ちょ・・ちょっと・・・。」
パタパタとアンジーはベッドの反対側に回り込みロペの反対側に横になった。
私が気になるのはやっぱり銀河きゅんが余所の世界の情報をどうやって手に入れたかなんだよねぇ?いくら界獣を分解したとしても、そこまで情報を手に入れられるものかねぇ?ひょっとすると銀河きゅんは私が思っているよりももっともっと凄いことをやっているんじゃ無いのかなぁ・・・?
・・・。
銀河きゅん・・・起きたらいろいろ教えてほしぃなぁ・・・。
まどろむ意識の中眠る雨宮の腕にしがみついたロペは、ゆっくりと眠りに入るのであった。
ーーーーーーーーーー
マギアラピスブリッジ
「界獣は動かないのよー。」
「そうですね。一番大きいと思われる個体が居なくなったのにもかかわらず・・・ですね。」
「あれらに自意識というか、個別の意識があるのなら何らかの反応があるかと思ったが・・・。」
ブリッジではオペレーター三人が雨宮が意識を飛ばす前に送信した界獣のスキャンデータを検討していた。
「ラピスにゆっくりカウントさせてるけどーまだ終わらないねー?」
「もう億は既に超えて久しいな・・・。」
額にしわを寄せ難しい顔を作るエリー。中身はそこまで困っていないようで・・・。
とは言っても、このデータが事実ならナノマシンに食べさせちゃえばいいのよー。
銀ちゃんも強くなるし、ナノマシンも増えるし、世界も平和なの・・・でも。
「侵略者にはお仕置きが必要なの。」
「そうですね。それだけは絶対です。必殺です!」
イントは声を大きくするほど思いの丈を言葉に出すものの、今のところ決定打を見いだせないままである。
そこに、メインモニターへと分析半からの定時報告が入った。
ーーイントたんやっほー楽しい報告の時間だよー。
その報告者は以前は連合艦ネタローに所属していたイントの軍役時代の同僚、元機密情報分析官シーナ・ミルフィス中尉。
ーー新しい情報を見つけたよー。ほいっ。
ほいっとメインモニターの端に映し出されたデータはクルファウストの報告書にあった、未知の環境ウィルスΩウィルスのサンプルだった。
「これが異世界の遺跡と呼ばれるところに居たウィルスか。これは安全なのか?」
ーーもち。そもそも酸素に触れたらアポっちゃうから宇宙空間限定で繁殖することが出来るウィルス・・・分裂かな?まぁ。普通に呼吸できる場所では無害だから大丈夫だよ。
「これは一体どういう影響があるんですか?」
ーー影響と言っても・・・直接注射したりしない限りほぼ無害だけど・・・それでも体の中にも酸素ってあるからね?血液注射したってちょっと体がかゆくなるぐらい何だよ?
「・・・蚊・・・?なのか?」
ーーさすが新庄氏。私もそれを考えていたのさー。でも蚊と言えばマラリアの方が危険だけど、特効薬があるし普通に買えるからそれも・・・って話がそれたね。とにかくこの世界の人間に、Ωウィルスは無害です。以上。
「ちょっとまつのー。」
ーーはい?
「このウィルスが体に無害だって言うのはわかったの。でも、そもそもこのウィルスは精神情報に感染するって報告書にはあったのよー?それはちゃんと調べたのー? 」
ーーえっ?あの・・・。
「そもそも体に感染するウィルスなんて、マギアシリーズの中に居る限り感染したりしないし、感染してもナノマシンで無害化されるからそんなこと調べる必要は無いのよー?」
ーーえっと・・・。
「無駄なのー。」
一体何をしていたのかと、ため息をついてあきれるエリー。
「もう一回最初から調べ直してーと言いたいところなんだけど、そもそも分野が違うのねー?もっとマナ的な分野の研究が必要だと思うのー。」
(相変わらず凄い人だな・・・。三十歳児恐るべし・・・。)
一瞬、ほんの一瞬エリーと新庄の目が合う。考えが見透かされたかと思いドキリとする新庄はさっと目をそらし、適材を探すべく人員リストを開いた。
ーースミマセンデシタ・・・。
シュンとモニターからシーナが姿を消すと、三人は気を取り直して各艦の魔法使いを検索する。
「やはり、クルファウスト氏が適任か・・・?」
「イーちゃんもサターンさんもいるのよー?」
「ファムさんとネシアさんは・・・駄目ですね。万が一のことがあったら世界が・・・。」
あの人はどう?この人は・・・?と適正人員を探してリストを見進めていく三人はそれぞれ目当ての人物のプロフィールをメインモニターに表示する。
「この人はどうだ?」
新庄がピックアップしたのは、現在自ら名乗り出て艦内のレイアウトを担当している元ウェディングプランナーキオ・ジェミナだった。
「魔法の適性が非常に良い方ですね。でも何故・・・?」
「経歴を見てくれ。」
その経歴には元紋章術士という記述があった。紋章術士とは魔力付与に特化した魔法技術者のことだ。
「エンチャンター・・・。なるほど。こういった研究には適していそうですね。」
「だが正直彼女だけでは心許ない。ブランクがありすぎる。」
「じゃあこの娘も一緒の方が良いね。」
そう言ってエリーがモニターに映したのは、現在牢屋の看守をしているヒストリア・リリリ。
「名前でちょっと損をしていそうだな。」
「もぅ。そんなこと無いでしょう?」
「リリリちゃんって響きがかわいいよ?」
「いや・フェミリーネームだろう?」
じゃぁ・・・おとーさんとかおにーちゃんとかが居たらどんな名前なんだろー?マックス・リリリとか・金右衛門・リリリとか・・・?
目を細めてあれこれ思案するエリーを余所に、イントがもう一人の人物を表示する。
「成る程。適正だな。後はクルファウスト氏が居れば成長の見込みも出来てなお良いな。」
そしてΩウィルス研究特命チームモスキートが発足、そのチームリーダは・・・。
ーーーーーーーーーー
雨宮専用ハンガー研究室
「ふぇくしっ!!」
「まぁ。誰かが噂でもなさっているのかしら?」
「あー。なんだか面倒ごとを押しつけられる気がする。」
「何ですかそれ・・。」
ライ、キャンディ、パメラ、ルミコの四人は自らのマシンを作ったあのマシンクリエイターを何度も何度も繰り返し、今では自由にVR世界でマシンを作れるほどにまで極めていた。
「あれからどのぐらい時間がたったのでしょうか・・・?」
ライはVR世界から戻り自らのシートに体を投げ出し、大きく背伸びをした。
「三人が眠りについてからもう一週間以上・・・正確には十日経ちましたわ。」
「まさかロペおねーちゃん達まで起きなくなるとは思わなかったなぁ。」
「でも、あの化け物も動かないし、時間は結構ありそうだぞ?」
「そうですね。もう一ダイブ行きましょうか。」
この十日間でようやく量産に足るスペックのマシンを設計し、今は数をそろえる為にクズロボ狩りを懸命に行っているところだった。よせば良いのに一度に作ろうとするから、現存クルーと同じ数より少し多めの二千機を量産する試練を自らに科してしまっていた。
「正直すまんかった。」
キャンディはパメラの頭をポカリと叩き、反省を促す。
「やめなさいといったらやめなさい?次同じ事をしたら独房に入れますよ?」
「うぅ・・・行きたくないなぁ・・・。」
「でも今のペースで行けば後一月もあれば素材が集まりそうですね?」
一月・・・。ライの口そう聞いた三人は、不敵に笑いライの方へ詰め寄る。
「「「一週間で終わらせる。」」」
そう言って三人はライにVRデバイスを装着させ、自らもあの工場へと向かうのだった。
ーーーーーーーーーー
「ルミちゃんの居場所がサーバーの中になってるのー。」
「えっと・・・?」
「そういえば、量産機を作るとか言っていた気がするな。それの為か?」
事情を知らない三人は首をかしげて改めてルミコの居場所を追跡する。
「研究室でみんな寝てる・・・あれ?」
「あれは・・・VRデバイスか?」
「・・・独立しているようですね・・・。こちらからのリンク要請が途中でカットされます。」
「この研究室は銀ちゃんの管轄だから仕方ないのー。」
とは言ってもねー?時間がもったいないのよー。あ・・・。そっかそっか。
「サーバーにいるんだから、普通にそこに行けば良いのよー。」
「「それだ。」それですね。」
エリーと新庄はイントにブリッジを任せ、サーバールームへと向かう。途中でイファリスと合流し牢屋となったサーバールームへとたどり着いた。牢屋の扉が開くと、中に入れられた報道陣がにわかにざわめき出す。しかしこのサーバールームは非常に広く、ちょっとやそっと声を出した程度では全く声が届かないのだった。
「あれ?」「ん?」「あら?」
そういえばここは銀ちゃんが牢屋にしてしまったままだったの。あれ?じゃあサーバーはどこにあるのかな?
ーーエリーさん新庄さん、サーバーは今個室にて待機中です。
個室?・・・あー。そういえばそうだったのー。
「リファンリアちゃんがサーバーだったのー。」
「リファンリア・・・・?誰だ?」
「私もあまり覚えがないのですけど・・・。」
「行けば判るさーなのー。」
ーーーーーーーーーー
ラピス内リファンリア個室
コンコン
エリー達三人はサーバー娘ことリファンリアの個室に辿り着き軽くノックをする。
「は・・・はい?どなたですか?」
・・・?あれー?なんだか聞いていたのとちょっと違う感じなのー?
「エリーだよー!」
「いや、判らんだろう。」
ノリが悪いのー。もー。
そんなやりとりをしている間に、本来開くときは全開で開くはずの扉がゆっくりと開き、顔の半分だけをのぞかせたリファンリアが三人の方を見ている。
「えっと・・・?」
「エリーだよっ!」
「いやだから判らんだろ。」
まったくもーまったくなのー。
「きょーちゃんはもっとノリが良くなきゃ駄目なのー。」
「そこを突っ込まれるとは思わなかったんだが・・・。」
「あの・・・?」
特に意味の無いやりとりをする二人の間をぬってイファリスが改めて自己紹介をする。
「あなたには必要ないかもしれませんが、私はイファリス、こちらがエリー、そして新庄さんです。あなたに力を貸してほしいことがあってきました。
突然の来訪に目を白黒させ、どこか落ち着きのない所作のまま、リファンリアは三人を部屋へと通した、
慣れた手つきでプラスチックのコップへとお茶を注ぐ。指の先からコポコポとあふれる熱々のお茶に、エリーは興味を注いでいる。
「魔法・・・?なの?」
「あ!いえ!違います・・・。保管して置いたお茶を取り出しているだけです・・・。」
何か一言発するたびに、びくりと肩震わせ驚く反応を見せるリファンリアに、エリーの加虐心が刺激されるがその思いは雨宮が居るときにしか発揮されることはないので、リファンリアは一命を取り留める。
「るーみーちゃんをね。呼べないかなーって思ったの。」
「る・・・ルーミィさんですか・・・?警備部隊の・・・。」
あれ?そんな人も居たかな?でもちがうの!
「ルミコさんですイバナカジマさんのところの。」
「どこだよそれ!」
イファリスに関してはボケているつもりはないのだが、ついツッコミを入れてしまう新庄。
「ルミコさんですね・・・。現在構築用第二隔離クラスタにて生産業務に従事されています。」
生産業務?あぁ。例の量産型のことなのね。
「そこにコンタクトは出来るの?」
「は・はい。可能です。マスタから許可はいただいています。」
この娘が生まれた経緯はわからないけど、サーバーっぽいことはちゃんと出来るみたいで良かったの。
「じゃあ・・・えっとぉ?」
エリーがどのようなメッセージを伝えようか思案していると、イファリスが引き継いで言付ける。
「新たに発見されたΩウィルスの研究特命チームへと参加してください、と、お伝えいただければ。」
その言付けを聞いたリファンリアは、言葉を吟味するように首をかしげ疑問を呈する。
「あの・・・。こんなことを言うのもどうかと思うのですが。私が解析すれば良いのではないですか?」
・・・あれー?そっかー・・・なぁ・・・?
んんん?そういえばそうなの?あれ?
三人は今までナノマシンに頼ってここまでやってきた。しかしそれは雨宮という司令塔を通じてと言う認識でしか無かったのだが、今此処にその雨宮の権限の一部を付与された存在が居る。
と言うことは自分たちの中にナノマシンに頼る、ナノマシンを使うという意識が希薄だったという事実が浮上した。
「確かに・・・。そうだな・・・。何故今までそんなことに気がつかなかったのか・・・。
ナノマシンを使えば、複雑な計算も、入り組んだプロテクトも全部任せられるじゃ無いか。」
と言うよりも、今まで散々オペレーターとして端末に触ってきたのに何でそんな意識が無かったのかなぁ?
もしかして・・・。
「ナノマシン=自分・・・なんて意識になってきていたのかも・・・・。」
エリーのぼぞっと呟くような言葉にイファリスと新庄はギョッとしてエリーの方を注目する。
「俺は一応眷属では無いんだが・・・。あぁ・・・。携帯デバイスによってある程度自由にナノマシンを使うことは出来ていたか・・・。」
「私たちに至っては眷属ですし・・・。ナノマシンによって再構築された・・・。人間・・・。ですよね?」
わかんないの・・・。私はナノマシン?人間?そもそもどうしてこんなことになったの?
銀ちゃんは知っているの?あ・・・。
「リーちゃん。」
「は・・・はい・・・?」
エリーはリファンリアの目の前にぐぐっと近づき、リファンリアの手を握る。
「眷属って何なの?」
ーーーーーーーーーー
ミリュ・トートエル私室
銀河様の意識が途絶えてからもう一月近くが経過した。相変わらずロペ・キャッシュマンは銀河様の体にべったりくっついたまま同じく意識を取り戻すこと無く眠っている。
銀河様の仕掛けた進化トラップが作動したログが残っている。彼女は懲りずにまた銀河様の精神にアクセスしようとしたのだろうな。恐らくまたサーバーにいくらかの負荷が掛かることだろう。
しかしそれも、微々たるものでしかない。サーバーのメイン管理者として任命され初めて銀河様の強大さに気がついた。
恐ろしい。
銀河様は私に始めてあったときにこう言った。
ーー物言わぬ骸として生きていきたいか?それとも傀儡として生きていきたいか?
と。
私は迷わず傀儡としての道を選んだ。獣人種は悪意というか・・・嫌気というか・・・生物的な感情に非常に敏感だ。私自身はそうでも無いとそう思っていた。むしろ獣人種としては鈍感な方だとさえ思っていた。その点に関してはミリアの方が数段優れている。
銀河様の虫の居所が悪かったのかは判らない。ロペ・キャッシュマンを始めとする女達への異常なまでの執着心・・・。
私にはそれが向けられなかった。
私は出会ったその場で実験結果を確認するかのように再構築され、ミリアとは別の存在になった。
今はもはや双子であるという認識すら希薄になっている。私は眷属であって眷属では無い。そういう存在としてあることを求められた。
故に・・・。
私は独立した存在として銀河様の後ろに立つことを許された。
私に与えられた役割は攻性防壁。身内の中に現れる異物を排除すること。
これは定められた必然だと、銀河様は言った。だから必ず裏切り者が現れる。
たとえ今は味方であったとしても、明日は違うかもしれない。昨日まではどうだったか?その行動は全てを物語る。
私が今注目すべき存在は少なくない。
ロペ・キャッシュマン・・・。彼女はそもそもがうさんくさい。銀河様の認識外の領域を探っている。理由は今のところ不明だ。
アンジー・ティタノマキア・・・。この世界における勇者の一人。現存するマイノリティ種族、超人種を超えるオーバーヒューマノイド・・・だった。
キャンディ・キャッシュマン・・・。銀河様の支配を受け付けなかった唯一の眷属。キャッシュマン一族の中の超越者。他世界の存在であることが疑われる。
エリューシア・クライオ・バハムル・・・。こいつはそもそも人間かどうかすら怪しい存在だった。銀河様によって普通の眷属として調整を受けている。
ガイキン・ヴァンガルド・・・。異世界に産まれた巨人。こいつはそもそも銀河様の支配下に無い。友人だと言うが先頃目的の一部が判明した。
ショウコ・カリバーン・・・。こいつも勇者だが絞りかす程度の存在。開花したアンジーには足下にも及ばない。だが危険だ。
エクシリス・イロリナート・・・。現時点で最も危険な思考を有している存在。雨宮様の支配に現在進行形で抗い続けている、恐らく現時点でこの船団の最高戦闘力保持者だ。今の私には打つ手が無い。
そして外部の存在ではあるが、タロー・ピーチカン。銀河様のナノマシン支配を唯一無効化した我々の反存在。
むしろ危険人物が多すぎるのでは無いだろうか・・・。目を覚まされたら銀河様にお伝えしなければならないことが山ほどある。
ーーーーーーーーーーー
ティオレ・アンク私室
主が戻ってからもう二月が過ぎようとしている。未だに主は眠ったままだ。『こちら側』の存在であるミリュは、主が眠りにつくこと自体は問題が無いという。
コンコンコン
「どうぞ。」
本来はノックなどせずとも互いの位置を把握できるので特に必要では無いのだが、人としての有り様を重視する主の方針でそう言ったある種無駄と言える行動を排除しないでいる。
教祖イファリス・・・。テンプルナイトヒューニを伴って私室に現れたようだが、一体何があったのか非常激しく肩で息を切らせている。
「お休みのところ申し訳・・・無いです・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」
「落ち着け。」
私はキッチンへと向かい水差しとコップをもち、水を注いだ。
差し出したところで直ぐその一杯を飲み干し、続いてヒューニにも渡そうとしたが、ヒューニは問題ないらしく手を出して断った。
鍛え変えたの違いか?だがヒューニは元々それほど運動の出来る人間では無かったと言うが・・・。
「何があった。」
珍しく慌てているようでイファリスの説明は要領を得ない。しかしヒューニの方へ目を向けるもそちらは事情を知らないらしく、首を横に振るだけだった。
「落ち着け、何を言っているのかまるで判らないぞ。危機的な状況なのか?」
そこまで聞いてようやく冷静さが戻ったのか、大きく深呼吸をしイファリスは私の方へと顔を向けた。
「ロペ教官が・・・目を覚ましました。」
「それで慌てていたのか?まったく「違います!」・・・?」
イファリスは大きな声で否定すると、歯を食いしばり今にも怒りだしそうな表情になる。
彼女がそこまで感情をあらわにするのは、主の前だけだと思っていたが・・・。
「ロペ教官の・・・いえ。ロペ・キャッシュマンの裏切りです!!!」
「それを先に言え!!!!」
迂闊だった。ミリュから危険人物のリストは受け取っていたが、監視は他の者に任せていた。それでも我々の勢力は少なくは無い。監視の目を掻い潜ることなど不可能だ。人的被害を想定しなくてはいけない。
私は慌てて私室を飛び出しブリッジへ向かおうとするが、開いていたはずの扉が突然閉まり開かなくなった。
「くそっ、先を越されたか!」
端末を使う必要は無い。思念波によってナノマシン同士のネットワークはつながることが出来る。
「同士アメリア!状況はどうなっている!」
ーーごめん。やっぱりあの人はちょっと別格だった。監視の目なんかモノともしないでコントロールの一部をハッキングされちゃったよ。
「同士ホムラ!ブリッジは!?」
ーーこちらも今完全に閉じ込められています。先ほどからセキュリティの解除に当たっていますが全く歯が立ちません。
「同士ミリュ!サーバーは!?」
ーー何を慌てているの。サーバーにアクセスする許可は彼女には無いわ。たとえ表層セキュリティをハッキングしたとしても何も出来ないの。以前から銀河様には、彼女の危険性を伝えていたもの。サーバーは無傷よ。
現に私たちは閉じ込められている。何故彼女はこんなにも冷静でいられるのか?サーバーの管理者だから?
「・・・なら扉を開けてくれるか・・?」
ーーええ。開いたわ。
早い・・・。先ほどまで慌てていた私が馬鹿みたいじゃないか・・・。
すんなりと開いた扉をくぐり外に出ると一階が騒がしい。やはり情報が錯綜しているようだ。
「皆何をこんなに慌てているのだ?結局ロペは何をしたんだ?」
そういえばそんなことも聞いていなかったな。主の側付きとしては恥ずべき失態だ。反省しよう。
ーー今確認しました。表層セキュリティを改竄し各階層の扉のロックシステムのコントロールを奪取・・・しただけですね。
私はさっとイファリスの方を見る、表情は硬くなっていたかもしれない。私はよく顔が怖いと言われてしまう・・・気をつけないと。
「教祖イファリス?」
「えっと・・・。」
さっとこちらから目をそらすイファリス。そして花が咲いたようにキラキラと笑顔を向ける。
「わかりません?」
「わかるか!!」
思わずその無駄に動きにくそうなシャラシャラした服を掴んでイファリスを壁にたたきつけた。
「全く・・・!非常事態じゃ無いじゃ無いか!全く・・・。」
恥ずかしい。慌てて損をした。主がいないときで良かった。あ!しかしログを見れば分かってしまうのでは無いか?
「同士ティオレ・・・。」
今まで黙ってついてきていたヒューニは私の肩に手を置き柔らかに微笑んだ。
やめろ!同情するな!優しい顔で私を見るな!
ーーーーーーーーーー
同日マギアラピスブリッジ
今非常に困ったことになっている。俺は今何故かブリッジに閉じ込められてしまっている。
「なんてタイミングが悪いんだ・・・・。」
先日の特命チームの話が消え、界獣達と界獣達から分離した人型の存在を両方ブリッジで監視している。もちろん今のところ特に何も異常は無い。あれから既に二月程経った。雨宮の目は覚めないままだが量産計画の方は日々成果を増している。
そして俺はオペレーターのローテーションの中で、少し用事があるとシフトの変更を申し出てきたエリー氏の代わりを務めることで、二十四時間勤務を終えたところだった。
「眠い・・・。」
今まさにエリー氏が現場に戻り、俺は私室に戻り惰眠をむさぼるところだったのだが・・・。
「きょうちゃんごめんね?」
「いや良いんだが・・・。何とかならないものか・・・。」
強制介入することでプロテクトを破壊することは出来るかもしれないが・・・今の精神状態ではとても無理だ。電子空間で寝落ちなんて洒落にならない。精神が拡散して消滅してしまう。
かといってこの場で寝るなんて俺のプライドが許さない。
今この場には、俺の他にホムラ氏、エリー氏、そしてアミィ氏がいる。この場でロペ氏のプログラムを突破できる可能性があるのはエリー氏だけだが・・・。
「ん?無理だよ?」
見透かされている。やはりエスパー・・・?
眠気でふらふらと頭を揺らす新庄は、集中力を欠いているようで眼鏡を外しモニターから目をそらした。あくびが出そうになるのを必死に押さえコキコキと関節を回し、少しでも眠気を散らそうとしている。
「今こんなことをしてなんになるんだ・・・。」
「開きましたよ。」
「「えぇ?」」
オペレーター二人の声が重なり、緊張していた空気が急速に弛緩していく。
「・・・んん、・・・自室に戻るよ。」
「そうするといいのー。」
新庄はそう言い残し眠気で制御の利かなくなった体をふらつかせながら、自室へと戻っていった。
「ぎんちゃーん起きてー。」
最近非常に退屈な状態が続いているエリーは、雨宮の部屋のカメラをアクティブ化し、眠っている雨宮の様子をこっそり眺めることが退屈しのぎになっている。その映像が映し出されると、操縦席に座っていたコフィと、火器管制の調整をしていたセンリが手を止めメインモニターの側にやってきた。残るホムラも自分の席から身を乗り出して映像を見る。
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銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん
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ロペの脳内は今現在ミリュの設置した攻性防壁によって一時的に犯されていた。扉のロックを掌握したまでは良かったのだが、そこから先は既に雨宮のシナリオ通りだった。雨宮のが無防備な状態になることは今現在は無いと言っていい。しかしそれを知らされていない側の眷属達は果敢に雨宮の精神にアクセスを繰り返し、己の全てを雨宮の中に残そうと躍起になっている。
ロペもその一人だった。
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纏まらない思考の中、ロペは自らのサイバースペース内にて雨宮の形をしたナノマシンの鏡像に好き放題弄くられている。雨宮の精神を伴わない、体温すら感じないサイバースペースの中で幸せな夢を強制的に見せられる、ある種の麻薬漬け状態。雨宮の精神に侵入を試みたものへのお仕置きとして、ミリュおよびリファンリアの手によって作り上げられたカウンタートラップ・・・否。カウンタードラッグ。雨宮の精神に触れた瞬間、存在の全データをサーバーにコピーされ安全を確保。然る後に迫る雨宮の姿のみを模したナノマシン達。全裸のウェルカム状態である視界を埋め尽くす雨宮の群れに、最高潮の興奮をさらに突き抜けるマインドドラッグをぶっかけさせ、幸せと興奮の最高潮を演出する。
雨宮全裸
そう名付けられた眷属専用のカウンタードラッグは、非常に強い中毒性を持ち・・・制作者の意図では無いが、非常に強い中毒性をもち結果的に何度も何度もこのトラップを味わうべく、
電子的に優れた能力を持つ者達の飽くなき特攻が続けられていた。
銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん
銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん
銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん
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銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん
脳の全てを焼き尽くしていくかのような高揚感と、押し寄せる幸福感に抗えず次々と精神的な死を迎える挑戦者達。
しかしその死はサーバーに保管されている自らのデータがある限り、無かったことになる。
その電子的に優れた能力を持つ者達はそれを知っているが為に、何度も何度もそのトラップに自らの意思で突っ込んでいくのだ。
銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀河きゅん銀
また一人。このマギアラピスの猛者が散る。
ーーーーーーーーーー
「ハッ!」
キョロキョロと飛び起きたロペは何故か隣に眠っていたはずの雨宮が居ないことに気づく。それもそのはず、雨宮の精神に触れようとした者はその体を強制的に独房へと放り込まれる。いくら無かったことになるとはいえ、罰則も何もないようでは懲りる者も居ないだろうという雨宮の優しさで、トラップの最後のシーケンスは独房へと転送されることで終結する事になった。
僅か一畳のベッドのみの部屋。とても狭く非常に静かなこの空間は、反省を促すことに非常に優れた効果を発揮する。
ーーロペちゃん?二時間なのよ?
「エリィイイイイイイイイ!!」
シューン
独房の扉の上部についている小窓はパタリと閉まり、完全な密閉空間となった。
明かりも無く、只黒一色の視界、目を閉じても開いても変わらない黒。
完全に密閉された空間には音すら反射せず聞こえるのは自身の身じろぎ、衣擦れの音。
ナノマシンによって正常化され綺麗な状態を保ち続ける空気は劣化しない。そのため通気口すら存在しない完全な密閉空間。
「あーー・・・。」
苦し紛れに誰も聞くことの無い声を出してみるが、その音は響くこと無く消えより一層孤独感を演出してくれた。
正常な精神と感情を取り戻したロペは、上書きされた異常な興奮と幸福感の履歴を消し去り次は失敗するまいと心に誓う。
「がーおー。」
吸い込まれるように消える声。あまりの静かさに耳鳴りがする様な錯覚を覚え、耳を塞いでみるが変化は無かった。
暫くの時間が経ち、耳鳴りが消え完全な静けさを取り戻した空間でふとロペは雨宮のことを思う。
銀河きゅんが目を覚まさないのは、界獣との戦いに向けて肉体となる部分の最適化をしているところなんだろう。その眠っている隙にあれやこれやいろいろ出来ると思っていたのに、結局扉を閉めたところでトラップに引っかかり幸せな地獄を味わった。
「したい。」
しかしロペの矜持として、意識を失ったままの雨宮を手にかけることはしたくなかった。
私は・・・良い嫁。
良い・・・女。
そうあろうと決めた。決めてしまったのだ。たとえ周りからどんな風に見られてもかまわない。銀河きゅんの心は私が守る、銀河きゅんの魂は私が守る。
折角この世界を銀河きゅんの為に作ったんだから。
ーーーーーーーーーー
マギアラピス研究所
ようやく・・・ようやく揃いました・・・。その数二千機。やってしまった感はありますが、やってやりましたよええ。
研究所の窓から見えるハンガーの様子は一変していた。つい最近まで雨宮の作った二十機ほどの特殊機体・・・と例外一。のみがぽつんと其処に有っただけだったが、現在は所狭しと研究し尽くされた量産型、プロトレイブンの派生形レイブンゼタ。希少金属系レアアイテムをふんだんに使って作り上げられた、高強度高機動を実現するモンスターマシン・・・。
「なんだか腑に落ちない出来ですわね?量産型とはこういう物でしたかしら?」
私もなんだか・・・。でも誰にでも使えることは間違いないのでまぁよしとしましょう。
総出力はレイブの半分程だが、OSが統一化され部位パーツなどもそれぞれ規格が定まっている為、幾らでも量産が聞く体制が整っている。三ヶ月以上もの時間を費やしたが、その成果はしっかりと実物化したマシンによって現れた。
「でも凄いよねー!壮観って奴!?これだけ全部の船にゼタが並んでると思うとちょっと感動だなー!」
「むしろ過剰戦力だなー!・・・人間相手ならだけど。」
この世界の軍隊は太陽系連合軍のみとされているが、私兵や防衛隊などを併せれば相当な数が存在している。しかし、この二千機というマシンの数は宙域軍の配備数数に追随する程の数である。しかもその性能は軍に正式採用されている量産型の比では無い。だがそれはあくまで対人戦闘においてのみの事で有る。こと界獣に対して現状の装備で問題が無いかと言えば、それもまだ未知数ではあるのだが・・・。
「界獣からしてみたら、豆粒みたいな物ですしね。」
界獣はその大きさが桁違いに大きい。現状確認できている界獣の最小サイズでレイブンゼタの五倍のサイズがある。マギアシリーズに現在配備されているマシンの中で最もサイズが大きいのがテラ娘・・・こと、ピュリア・ナッシュである。
このサイズの差は果たして吉と出るか凶と出るか?
「銀河おにーちゃんが起きたらきっとびっくりするね!」
「・・・そうですわね。あら・・・?そういえば私達のマシンはどこに・・・?」
「ボスの専用ハンガーに移してあります。流石に私達だけ自分用のマシンを持っていると・・その・・。」
「やっかむ方もいらっしゃいますわね、きっと。」
ライ、ルミコ、キャンディ、パメラの四人は、量産計画を円滑に進める為に自分のマシンを好き勝手カスタマイズし、もはや原型が無い程に改造を繰り返していた。
ライのコスモラヴァは近接戦闘を一切廃し、補助やサポートそして超長距離戦闘に特化した改造を施していた。巨大なナノマシン群体で作り上げられた目映い程のメタリックなマントで、全体を覆い隠すように纏いメインモニターとなる頭部の双眼のカメラアイには光の魔法のエンチャントが施されていて、搭乗者の魔力を呼び水にして超光熱を発する怪光線を放つことが出来るようになっていた。
コンセプトとしては雨宮のマシン化とはいうものの、雨宮自身の戦闘スタイルなど決まっておらず、本人もまたそう言った情報を持たない為、空想と想像の産物と成り果てていた。
マントの下には、キャンディが凝りに凝った赤地に金の竜の装飾を施した鞘に、全長の半分程のロングソードが刺さっている。もちろん雨宮はそんな物を使ったことも無ければ、今後もそうそう使うことは無いだろう。
造形や武装も含め、雨宮と言うよりライの描く勇者を体現したようなマシンに仕上がっていた。
「なんて神々しい・・・。」
両手を胸の前で組み、改めて自分のマシンを見上げて思いをはせる。
たかが三ヶ月・・・されど三ヶ月。毎日モニターとにらめっこをしていた怪がありました。
あぁ・・・美しいわ!コスモラヴァ!
ルミコのアーリマンはそんな神々しい・・・キンキラのコスモラヴァとは対照的に、マシン生命体をコンセプトに禍々しい気配を放つマシン?を作り上げた。
「うーん・・・。いぃ・・・。」
ルミコは顎に手を当て思いをはせる。
流石にこりすぎたと反省してる。見た感じで浜信徒は思えないこの造形。一見して悪魔か何かと思わせるようなこのフォルムが・・・たまらない!
背の翼型バックパックも完璧だし、伸縮自在のオリハルコンシザースも最高の鋏だ!
前衛感は否めないが避けて当てるスタイルで行くのが妥当かな・・・。
「要練習・・・たな・・・。」
実験段階ではルミコは何度もアーリマンを撃墜されていた。
それというのも、ルミコは元々自分で戦うタイプの冒険者で、マシンを使ったのは実は今回が初めてなのだった。その為か動かしてはこけ、起き上がってはこけ、戦うどころでは無かった。
オートバランサーを搭載すればそんなことにはならないのだが、本人がどうしてもマニュアル操縦にこだわった為、練習するたびに自爆し修理の素材を集めに走り回ることになっていた。
今のアーリマンは完全に修復され、黒と灰色のボディに、宇宙空間に溶け込むような漆黒の翼を畳んでしまっている。つい先頃まで必死で練習し、片方の翼が折れていたのだが練習の終わりにライが完全に修理してくれていた。
「ふふふ。中々上手に作れたのでは無いかしら?」
キャンディのアンブレラはロボドールという、女の子用のA.I搭載型着せ替え人形を巨大化させたようなフォルムに変わっていた。マシンの頭部からは金色に輝く髪のように形取られた展開式外部装甲シールドリルに、左腕にはアンブレラ型仕込みレーザーレイピア、チラリとのぞく胸元には赤く輝くフレイダイアと呼ぶ宝石のような兵器がキラリと光る。腰から下は鳥かごのようなふわっとした見た目のワンピーススカートのスカート部分が萎むこと無く膨らみを保ち続けている。
「お嬢様メカって感じするね!」
「良いでしょう?洋服にはエンチャントが施されているので、魔法攻撃にも有効なのですよ?」
得意気に胸を張るキャンディの横にはキラッキラに輝く全身鎧に身を包んだパメラが居る。
パメラは結局マシンの中に乗り込み戦う事より、自分が生身で戦う事を選んだ。この全身鎧は変身しても自在に伸縮し、以前のように変身して服が破れる様な事になっても問題ないように設計されていた。変身前でもルミコと同程度の戦闘能力を手に入れられる、パワースーツのような役割をすると共に、変身後の防具の役割も果たすアイテムとなっていた。大幅な小型化に成功し、普段はイヤリングとして耳につけられる、アクセサリーとして肌身離さず餅有る事を可能としていた。
「うふふふ・・。銀河さんの驚く顔が目に浮かびますね。」
「んー。銀河おにーちゃんは変身できる事は知っているような気がするんだけどなぁ。」
ビィーーーーーーーッビィーーーーーーーッビィーーーーーーーッ
ビィーーーーーーーッビィーーーーーーーッビィーーーーーーーッ
ーー全艦に通達、艦隊後方より大型戦艦の反応を多数感知総員戦闘準備態勢へ移行してください。繰り返し・・・。
「あら・・・?スクランブルでは無いようですわね。」
「デビュー戦かぁ!?」
「ルミコさんオートバランサーをつけてありますからね?」
「準備運動準備運動っと・・・。」
その時確認された機影はラビスのクルー達にとって斜め上の存在であった。
佐藤洋介 48歳 混合β超人種 勇者
雨宮が元世界に居た頃の、ゲーム仲間であり、当時は小学生だったが非常に雨宮と仲が良く、雨宮宅に自由に出入りし共にゲームを楽しんでいた。
雨宮死亡により自宅への出入りが規制される直前、雨宮のPCを湯船に沈め処分し、雨宮本人と一番親交の深い人物として事情聴衆を受けるもゲームをする共に食事をする以外の事が無かった為僅か数分で聴衆は終了、何故か執拗に雨宮の情報を知りたがった警察に疑念を持ち、自らの意思で警察を捜査その先に異世界の存在が居る事を確認するも志半ばで、異世界との関わりを持つ警察官によって殺害される。彼の死後雨宮と紐付けられた存在は第三世界へと引っ張られるはずだったが、牧場世界によって強制的に召喚されてしまった為第三世界へと辿り着く事が出来なかった。
享年15歳。
牧場世界へと召喚された洋介は、閉鎖されつつある世界を救うべく奔走したが、結局その世界が閉鎖される原因となったのが自らを召喚した世界の王だったことを知り糾弾するが、捉えられ界獣を作る為の素材として最初の実験体としてイントエシリーズと融合される。(世界的な意味では洋介も原因の一つ)しかし、意識を失う事無く抗い続け肉体が変質した後も鋼鉄の意志を持って動かないと言う事を必死に続けていた。
完全に牧場世界が閉鎖され無理矢理第三世界へと連れて行かれるが、最も巨大な界獣として成長した事が功を奏し、他の界獣を制御する手段を手に入れ全ての界獣を自分の周りに留め、雨宮を待つ事にした。
エマ 混合β超エルフ種 僧侶 第五双性世界の基幹システムであるシステムユグドラシルの外部管理責任者。
世界樹と呼ばれる樹木性管理システムユグドラシル7号機の管理責任者として育てられ、神祖エルフという第五双性世界の片割れを支配する種族の長でもあった。当世界でユグドラシルの異常を感知し調整作業中に牧場世界へと強制召喚される。
牧場世界に召喚された後洋介子供であった洋介を守る為様々な知識や技術を、洋介へと教え込んだ。
牧場世界の王への協力を頑なに拒んだ事で王を怒らせ、牧場世界にて人間牧場の苗床として設置される。




