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EP26 因果応報

(゜ε゜)キニシナイ!!

 宇宙港の入口は避難してきた人々でごった返していた。

見渡す限りの人、人、人。コロニー中の人間が押し寄せたのかと思うほどの多さ。


 駄目だろこれ・・・。ここに海賊が来たらもう終わりだろここ・・・。

しかも満員電車みたいになっていて殆ど身動きが取れないぞこれ・・・。

誰かこけたら将棋倒しになるなこれ。エスカレーターも全部止まっているし、階段にも立っている人がひしめき合っている。


 「誰だよ・・・宇宙港に避難誘導した奴・・・。絶対何も考えてないだろ・・・。」


 「あの・・・。そろそろ降ろして欲しいんですけど・・・。」


 そう言えば担いだままだったな。


 「よっと。これからどうする・・・?今からシェルターに行けって言ってももう動けないだろこの人たち。」


 「・・・そんなレベルの話では無いと思います・・・そもそも一つのシェルターにこんなに多人数収容できません・・・。」


 まぁそらそうか。普通は各所に散ってシェルターが配置されているはずだし、そもそも近くのシェルターに避難ってのが普通の筈だしな。そもそも何でここに避難してきたのか分からん。


 「なぁ。何でこんなに皆ここに来たんだと思う?」


 「頑丈な建物だからでしょう。あと、ほらあそこ。防衛隊のワーカーが守りに来るのがここだけですから。」


 ・・・?なんでワーカーがいるところにわざわざ避難するのか?


 「え?馬鹿なの?」


 「ええ?」


 「巻き込まれるだろ・・・?戦闘に・・・普通に考えたら。」


 「あれ?警備のワーカーが居る所になんか来ないと思うんですけど・・・?」


 かみ合わないなぁ・・・?俺がおかしいのかな?普通こんなポンコツの居る所なんか警戒するにも値しないだろう?だって相手のオーキは、体当りするだけでマースは一発アウトなんだぜ?当たるかどうかはさておき。しかしマースの攻撃は通らない。武器もない。そんな奴に遠慮するか?


 「ゲルン・マースが抑止力になるとでも?」


 「!?」


 彼女は今気付いたと言わんばかりに驚いて見せる。


 お前今さっき死にかけただろうに・・・。


 「そう言えばナイフ効きませんでしたね・・・。」


 「こいつらこれで全部か?こんな数で守り切れるわけ無いじゃん?ここに来るまでに何十機いたよ?」


 おそらく三・四十機街で暴れていた。その内の十数機俺と彼女で潰したが、それでも未だ二十機近くが残っている。ここに居る防衛隊の倍近い数のオーキだ。止められるはずが無い。走って体当りされるだけで蹂躙されるだろう。


 「冷静になって考えてみると・・・。圧倒的に戦力が足りませんね・・・。」


 彼女は辺りを見回して戦力になり得るものを探しているようだが、見当たるはずも無く人で溢れかえった宇宙項へと視線を投げかける。


 「と言うかもうこのコロニー駄目じゃないか?あんだけ破壊されて復興できるのか?」


 彼女は今思い出したという表情で手を叩く。


 「そう言えば自己紹介をしていませんでしたね?先ほどは危ない所を助けていただいてありがとうございました。防衛隊のメル・リリパです。」


 「あ・あぁ。雨宮銀河だ。旅人みたいなもんだ。」


 「質問の答えですが。お金はある所には在るモノです。それに壊れたブロックを取り換えるだけなので、復興自体は直ぐに始まると思います。」


 技術力の差って奴か?それとも単に慣れているだけか?もしくは両方。


ーーーーどぉぉぉん・・・。


 お?始まったか?


 「な・・・何の爆発でしょうか?」


 「アンタ通信機とか持ってねーの?」


 「防衛隊の通信はワーカで行いますので・・・。」


 そうか・・・。もはやただの一般人と化したか。


 「・・・。」


ーー雨宮聞こえるか?


 (聞こえている。状況は?)


ーー現在連合軍特殊部隊との交戦中。外の海賊は一掃した・・・。文字通りな。


 (なんでや・・・。主砲禁止ってゆーたやろ・・・。)


ーー主砲は使っていない。ベリスの副砲の紋章兵器と・・・テラ娘の紋章兵器がな・・・。


 (そんなに威力があったか・・・。これは俺の調整ミスだな・・・。しくじった。海賊の生き残りは居るのか?)


ーーコロニーの中にだけな・・・。 


 (外の海賊は?)


ーー塵一つ残さずに消滅したよ。世界が少し平和になったな。


 (慰めるな。)


ーー連合軍の方も間も無く鎮圧が完了する。お前の嫁たちは規格外が過ぎる。あと部下も。


 (それは俺のせいか・・・。半分な・・・。)


ーー今さっき爆発が聞こえたと思うが・・・。連合軍の戦艦が外部隔壁に突っ込んだ。侵入した兵士はロペさん達が応戦する。外はドルフに任せる事にした。


 (ドルフ隊で問題ないのか?)


ーー逆に何の問題があるのか聞きたいぐらいだ。センサーで確認したが相手は三機しかいない。こちらは十四機でフルボッコだぞ。


 (あ・・・。)


 いや・・・こういう時はあの可能性があるな・・・ゲームだったら。


 (ボス補正とか無いのか?)


ーー何ロボだ。あるはず・・・。ないとも言い切れないのか。いや。それでも問題ない筈だ。レイブも残っているし、サダコにティオレもいる。ムラサメもな。自分で言っておいてなんだが、やはり過剰戦力だな。


 生身で戦える人間が多すぎるという事か。サダコに至ってはプロのワーカー乗りと言ってもいい位だという話だし。ムラサメなら・・・刀で切れそうだ。・・・?刀?

そう言えばムラサメは一体なぜ刀を持っているんだ?今迄自然に帯刀していて全く疑問に思わなかったが、思い出してみると最初に見た時からずっと腰に刀を下げていたな・・・。シャトルであった時から・・・。どこに持っていたのか?俺の虚数空間みたいなそんなスキルを持っているのかもしれないな。

謎だ・・・。


 「あの・・・?どうかなさりましたか?」


 暫く通信していたからこいつの事ほったらかしだったな。


 「いや。仲間と通信していたんだ。」


 「・・・機人種の方ですか?」


 あれ?そういうふうになるのか・・・。ってか機人種ってそんなこと出来んの?


 「いや違うけど・・・。まぁ気にすんな。俺はそろそろ自分の船に戻るよ。」


 「え!?」


 えってなんだ。何かおかしかったか?


 「あの・・・。私はどうすれば・・・。」


 知らんがな・・・。


 「好きにすりゃ良いんじゃないか?じゃぁな。気ぃ付けてな。」


 「・・・はぃ・・・。」


 俺は慣れた足運びで満員の宇宙港の中を突き進んだ。


 人の間を通るのってコツが居るんだよな・・・。痴漢に間違われないように気を付けていた日々もあったわぁ・・・。だがそんな俺を原付が救ってくれた。奴らは目を光らせて待っていやがるからな・・・。獲物が掛かるのを・・・。


ーーーーーーーーーー


宇宙港レンタルドッグ


 「おーおー・・・。なんかものっそい光っとりますなぁー。」


 零番艦ラビス所属のパイロットエクシリス・イロリナートは目を細めて、光り輝く二番艦ブロアを眺めていた。ドルフ隊十四機はレンタルドッグ周辺の警戒に当たっている。それもその筈、すぐ隣に連合軍の宇宙戦艦が居るのだ。しかし・・・。


ーーエクス、何故あの船は隔壁に突き刺さっているのかしら。さっきから疑問に思っていたのだけれど。


 現場を見ていた訳では無いし、艦内の情報を手に入れられる訳でも無い。何故私に聞く・・・?

と、首をかしげてエクスと呼んだ同じ零番艦パイロット、ヒューニ・ティノティノへと答えを返す。


 「知らんよー。今出て来たばっかりやろー?」


ーーそれもそうね。


 何でもない、只の暇つぶしだ。敵艦への攻撃は必要ないとの命令だった。と言うより、出来ないのだ。


 「なー。あの高速船ってー。報道の船やんねー?危なくないんかなー?」


ーーそうね。危ないわね。


 そっけない。モニターの端に映ったヒューニの目線は、何か別のモノを追っている様だ。


 「何か気になる事あんのー?」


ーー連合艦からワーカーが出るわ。


 コックピットの中で胡坐をかいていたエクスは慌てて臨戦態勢に入る。


 「良ぉ分かったねー?てかもっと早ょぅ教えてよー。」


ーー動いているのは分かっていたけど、出てくるか分からなかったのよ。エクス。攻撃されるまで手出ししたら駄目よ?


 「わかっとるよー。」


 連合艦の後部ハッチがこじ開けられ、三機のワーカーがふわりと宇宙空間に漂う。そして隔壁の開いたままの雨宮達の使用しているドッグの方を向くと、おもむろに銃を構える。


ーー撃ってくるかしら?


 「撃たへんとええなー。撃ってきたらティオレはんのスナイパーライフルでコックピット撃たれてまうなー。」


ーー物騒な話ね。流石は元クロスチャーチル。でも彼女意外といい人よ。


 「お話ししたんー?」


ーー少しね。あっ。


 連合ワーカーも報道の高速艦の存在を確認したのか、構えるだけ構えて撃ってこない。このままの状態はあまりこちら側にとっては宜しくないかもしれない。相手は連合軍こちらはただの民間私兵だ。ある事無い事情報提供されてしまえば、テロリストにだってされてしまうだろう。だが・・・。


ーーあのワーカー連合軍の識別じゃないわね。しかも所属国家の登録もされていないわ。


 この世界の全てのワーカー、戦艦、宇宙船、戦闘機などは所属を明らかにする為に必ず国家への登録が必要になる。雨宮達のワーカーや戦艦も商業国家に登録されている。もちろん非合法に。


 「テレビに映るだけでえらいこっちゃなー。うちら正義の味方ごっこ出来るやーん?」


ーー・・・それも有りかも知れないわね、先手を打った方がいいかも。


 「ほな聞いて見んとなー。」


 エクスはそう言うと、ラビスとの回線を開く。


 「新庄はーん。あのワーカー登録なしなんですわぁ。」


ーーふむ・・・。こちらでも確認した。戦艦の方も船籍不明になっている。こちらから報道に情報提供しておく。

  落とすなり回収するなり好きにしていいぞ・・・と雨宮じゃないな。回収は意味が無いか。


 「回収したら雨宮はんごっつ歓びはるなー?おみやげもろてこかー。」


ーー煙幕が必要だな。ふむ・・・。ジャミングはこちらでも出来るが・・・。


ーーただいまぁーっと。通信中?


 「ろぺはんやーん。お仕事終わり―?」


 モニターに映し出されたロペは、首からバスタオルをかけ、フルーツ牛乳を片手に持っている。


ーーおーよぅ。今何中?


 「雨宮はんにお土産こさえよーとおもてなー?あの船から隠れなあかんねーん。」


ーーおっけーおっけー。なんとでもなるょ。二十秒後作戦開始おk?


 「おっけーやー。」


 流石ロペはんやわぁ。出来る女はかっこえーなぁー。


ーー併せるわエクス。


 「見た事無いワーカーやし、きっと喜びはるなぁ。にゃんにゃんしてくれはるかもしれへんよー?」


ーー・・・。そういう事をオープンチャンネルで言わないで欲しいわね。


 あれー?そのままやったわぁー。はずかしー!


 モニターに映るロペは、副艦長席に戻りコンソールを操作し、カウントを始める。


 「せやせや・・・他のドルフのみんなは念の為にカメラに映ったらあかんよー?」


 最後の十二機目のドルフから了解の返事が来る頃には、間もなく作戦開始の時間だった。


ーー3・2・1.


ーーアタック!


 合図と共に報道船の死角になる隔壁の裏側から、煙幕弾が放たれ十発もの煙幕は周辺を真っ白な煙で包み込んだ。


 「いくでー!」


ーー高速キャプチャー!


 急加速で視界ゼロ、レーダーも全く効かない白い闇の中を、二機のドルフが真直ぐに連合軍の不明機へ向かっていく。


ガガガガッ

ガガガガガッ

ガガガガガガッ


 三機の不明機は煙幕を張られたことに驚いたのか、はたまたこちらを認識できない事で混乱したのか、めちゃくちゃに銃を乱射しだした。


 「しろーとさんやなー?」


ーーとても軍人とは思えないわね。


 そして視界ゼロの宇宙空間でエクスとヒューニは最短距離で不明機へ接触し・・・。


 「コックピットばーーーん!」


 レーザーソードでコックピットを焼き切った。


ーー相変わらずエグい事するわね。


 「ひっさつやーん。」


 一機を墜とし、レンタルドッグの方へ送り出すと二手に分かれそれぞれコックピットの位置にアタリを付ける。


ーーそこっ。


 最大出力のレーザーソードは一瞬でコックピットを焼き切り、動く機影はドルフだけになった。


 「ほな帰ろかー。」


ーーそうね。


ーー二人共、煙幕が消える前に戻ってくれ。他の艦ももうすぐ戻ってくるはずだ。


 ?はずぅ?


 「なんかあったんですかー?」


ーーブロアとの連絡が途絶えた。そこから何か見えるか?


 エクスは煙幕の切れ目まで移動し、最大望遠のスコープを覗き込む。


 あっ。まぶしー!


 「目ーがチカチカしますー。」


ーー光っているという事か?


ーーゴホンっ。ブロアは謎の閃光に包まれています。ベリスとレムルは近くに居ますが接触が出来ない模様です。


ーー・・・雨宮事だな。分かった。戻ってくれ。掃除が必要だろう?


 「りょーかいでーす。」


 あー。まだチカチカするわぁ。



ーーーーーーーーーー


ラビスブリッジ


 「ロペさんの見解は?」


 ロペは一頻り腕を組み考えた後、何かを思い出した。


 「あれ銀河きゅんが進化した時の光に似ているね?」


 「本当か?何が起こるか分かったものでは無いな・・・。雨宮はまだ戻ってこないのか?」


 んー。あ、もう直ぐそこに居るねぇ?・・・お・ん・な・づ・れ。


 「銀河きゅん浮気発覚・・・?」


 「詳しく聞いても良い事か・・・?」


 ロペが頬を膨らましブーブー言っている間に、アミィ、イント、アンジーが戻る。


 「手応えが有りませんでしたわね。ちょっとイラッっとしましたが。」


 「あのスーツちょっと威力が・・・。」


 「そうね。慣れるまで時間が掛かりそう・・・。「運動不足じゃん。」やめてよっ!」


 三人はそれぞれ捕虜を捕まえてきたが牢屋は既に女海賊たちが居るので、とりあえず独房に押し込んできたとの事だった。


 「皆それ大丈夫なの?発狂しない?」


 「一時間ぐらいなら大丈夫だと思ったのですが・・・。」


 あの懲罰房は速いものなら数分でギブアップする事も有るので、ロペとしては少し気がかりだったが、特に必要な奴らでも無いし別にいいかと割り切って考える事にした。


 「もう銀河きゅんも帰ってくるみたいだし、お話はその時にしよっか。皆汗流してきなょ。」


 ロペの言葉に促され三人は各々の部屋に戻り汗を流してくることになった。


 「ロペさん。俺はなんだか嫌な予感がするのだが。」


 「はっはっはっ。奇遇だね私もだょ。」


 そんなやり取りの後、ブロアを監視していた三番艦レムル四番艦ベリスより連絡が入る。


ーーロペ様。ブロアの光が収まりました。映像を送ります。


 ラビスのモニターにブロアが映る。しかし・・・。


 「な・・・何だあのまがまがしいモノは・・・。」「ベリスってあんなに形状違ったっけ?」


 ちょっとこれは・・・。銀河きゅんに急いでもらわないと・・・。あっ。


 「ドルフ隊応答を。」


ーーはぁーい。


 「マスコミの高速船は一隻だけ?」


ーー現在三隻確認してますー。


 「全部捕まえてきて。」


ーーらじゃーでーす。


 十二機のドルフ達は光学迷彩を使用し、飛び回りブロアを撮影しているであろうマスコミの高速船を捕獲しに発進した。


 「口封じか・・・。」


 「是非も無し。見たら仕方ないょ。」


 (銀河きゅん。のんびりしてないで急いで帰ってきてほしいなー。)


ーーすまん。あんまり急ぐと周りの人間を潰してしまいそうでな。


 (銀河きゅんも訓練必須だねぇ。)


ーー!?


 「急いで戻ってくるって。」


 「便利だなナノマシン。」


 「今私の端末の量産型みたいなのを考えているから。それが出来たら皆にわたすょ。」


 「それはありがたい。」


 これはこれで便利だからねぇ。生身での通信もいいけど、趣ってのも残して良いと思うのょ私は。


ーーーーーーーーーー


 ロペから恐ろしい通信が入った。俺はフェインの様に矯正されたくはない。他の皆さんには悪いが、一気に行かせてもらう!


 俺はナノマシンに命じ、宇宙港のトイレに有るゴミ箱の中で大きな爆発音を鳴らす。耳をつんざく大音響で辺りは一気にパニックに陥った。


 今や!


 「雨宮ダーッシュ!」


 俺は外に逃げ出す避難者の流れにさかのぼり、一気にレンタルドッグまで駆け抜けた。


 ドッグの中に入るなりドルフが開いた隔壁の外から戻ってくるのが見えた。


 開いとるやんけー!俺じゃ無かったら死んでる・・・。


 普通外部隔壁が開いているとドッグの入口の扉は開かない。しかし普通に開いた。すると案の定、一気にコロニー内の空気が吸いだされ外を逃げ惑う人がこっちに吸い寄せられてくる。


 ナノマシン!閉めろ!


 雨宮は壁伝いに内側に入り、何とか扉を閉めた。


 一体誰がこんな迷惑な事を・・・。外部隔壁が開いているのは何となく分かっていたが・・・。

音がしたからな・・・ワーカーの。だがセキュリティが死んでいるとは思わなかった・・・。うかつー。


 俺は一気にラビスのブリッジの近くまでダッシュジャンプし、壁抜けでブリッジに到着した。


ーーーーーーーーーー


 「誰だよ!セキュリティ殺したの!普通に扉開いたぞ!?」


 「「「えっ!?」」」


 今は非常時と言う事も有り、ブリッジにはロペ、新庄、イファリスの三人しかいなかったが、三人共驚きこちらに注目した。


 「えっ?じゃねー!ロックが全部開いてるんじゃねーか?遮断用の隔壁とかチェックしたか?」


 新庄が慌ててロペが仕込んだハッキングツールを起動し、宇宙港の全体図がモニター上に現れる。

そこには『OPEN』の文字と共にセキュリティレベルの高い場所のロックが絶賛開放中だという意味を表す『CATION』の文字が乱れ咲いていた。


 「うわっ。気にしてなかった・・・。ごみん銀河きゅん・・・。」


 「危うく一般人ごと宇宙に放り出されるところだったぞ?」


 「取り敢えず元に戻しておくか・・・?」


 元にねぇ?・・・あ。駄目だわそれ。


 「今はダメだわ。ここに入れないようにだけしておいてくれ。他は・・・知らん。」


 「分かった。」


 新庄がキーを幾つか叩くと、自分達のいるレンタルドッグのコントロールがラビスに渡り、今開いている外部隔壁以外の隔壁、扉の全てがロック状態になった。


 「で。なんかあったんだな?」


 「そうだそうだ。これを見ろ雨宮。心当たりがあるだろう。」


 そう言ってモニターに表示された異形を見た俺は素直な感想を口にした。


 「妖怪・・・・?」


 「あれはブロアだょ・・・?」


 んんっ?・・・・・・へ?


 「マジで?」


 「マジだ。」「マジょ。」


 嘘だろ・・・。あの・・・なんだあれ・・・?銀色の人魂・・・?に、良く見たら女の顔がびっしりと張り付いて・・・いるように見える。腕の様な物が幾つも全身からウネウネと何かを求めるように蠢いている。あっ!こっち向いた。


 「うわぁ・・・。・・・?」


 「何だロペ。何か気に成る事でも?」


 こちらを向いた面の正面は丸く見えるが、真ん中に横一線の繋ぎ目の様なものが見える。そしてそれはゆっくりと開き、こちらを見た。雨宮の中のナノマシンがあるじ に危険を通告する。


 「ドルフが何かやってたな?急いで回収しろ。ここを脱出するぞ!!」


 俺とロペは急いで席に戻り、ロペは館内放送をかける。


ーー全艦に通達。緊急発進する。緊急発進する。外部との入り口をすべて閉鎖。直ちに対ショック態勢をとれ。繰り返す・・・。


 「全艦スクランブル。人員を全て収容。直ちに発進しろ!繰り返す・・・。」


 新庄も他の船に連絡をやったようだ。俺はソロコントロールシステムを起動させ、今いる三人のコントロール以外の全てのコントロールを掌握する。


 「発進するぞ!」


 「ドルフ隊全機収容完了。人員漏れ無し。」


 優秀な人材ばかりでよかった。


 音も無く浮き上がり開いた隔壁から一斉にマギアシリーズが脱出する。目玉はその瞬間ラビスに向かって光を放つ。


 「イファリス!!!」


 「全開!!!」


 イファリスのマジックシールドが全開になると共に、目に見えるほどの障壁が現れる。そして直後、謎の光が接触しマジックシールドを減衰させる。


ゴゴゴゴゴゴ・・・・


 揺れた・・・?なんて威力だ。


 「状況は!」


 「シールド半減・・・です。まだあと十回ぐらいなら問題ありません!」


 結構余裕じゃねーか・・・。焦って損した・・・。


 「ブロア・・・こっちを見ているぞ・・・。」


 「何があったんだか・・・。って・・・。目玉・・・?」


ーー提督!!ご無事ですか!!


ーー雨宮様!


 それぞれの艦から通信が接続される。


 「問題ない。各艦手を出さないでくれ。周りから見られないようにジャミングと物理遮断を頼む。

あー・・・誰だったか・・・。そう。六番艦のオピュラ・・・?あ。」


ーーマリス・オピュラ副艦長です!!しゅよ!目隠しならお任せください!!


 そう言うや否や、六番艦オーバスは目玉の頂上に移動し、巨大なドームを作り出した。彼女の個人スキル絶対隔離空間。通称引きこもりは、物理的な視界、音、温度など、物理的要因を様々遮断する球体型障壁を作り出すことが出来る。しかし球体型故、地に足のついた状態では迂闊に使用できず、試しに見せてもらった時は大玉ころがしの様に他のメンバーに転がされていた。


 この宇宙空間なら・・・。触られれば動いてしまうだろうが、そこは他のメンバーがフォロー可能だ。


 「続いて八番艦・・・えーっと・・・。」


 人が多くて名前を覚えきれんのだ!


 「あ!セシリア・源内だ・・・。この障壁をこの場に固定しろ!」


ーー了解です!(名前よんでもらった・・・。)


 これでいい・・・よな?見られないし、ジャミングも出来ている。


 「よし・・・ロペ。ブリッジは・・・。」


 「や。ついてく。」


 「いやしかしだな・・・。」


 ロペがいやいやしている間に、他のブリッジクルーたちが続々と持ち場に戻ってきた。


 「こっちは大丈夫なのよー。」


 「行ってこい雨宮。なるべく急いで解決してくれると助かる。」


 確かにな・・・。今の状態で見つかりでもしたら面倒ごとに巻き込まれる気がしてならん。


 「よし・・・行くぞロペ。」


 「ほいきた!」


 俺達は急いで新型パワースーツ『バトルドレス一号』を身に着け、零番ドッグへ向かう。


ーーーーーーーーーー


 「ライ。念のためにアレを使う。整備は?」


 「ハッ!問題ありませんボス!テラ娘・・・ピュリアも連れていきます。」


 ピュリア?テラ娘・・・。ん?


 「詳細は後程ご説明します。今は・・・。」


 「判った。」


 俺達がマシンに乗り込もうとドッグに入るとそこには、零番艦に集まった精鋭達が待ち構えていた。

それぞれバトルドレス、タキシードを身に着けている。


 「乗り込むんだろ?」


 切嗣は武器も持たずにテラ娘の肩の上に居た。


 「ボス。私は二号機の方に乗ります・・・。ピュリア!全部武器を付けなさい!」


ーーえー?おもたいよー・・・。


 シャベッタァァァァァ!!


 「なんでしゃべっとるん!」


ーーあ、おにーちゃんはじめま・・・「どうなっとんの!?」して・・・。


 また何かあったのか俺の中!!


 「くそ・・・今はそれどころじゃないか・・・。おい!今は何も聞かないが・・・そこに置いてある武器はちゃんと持って行け!」


ーーむ~~~。はぁ~い・・・。


 「デカスもゲイルもいけるのか?」


 「あたぼうよ!」「問題ないぞ。」


 今ここに揃っているのは最大戦力では無いが、問題ないだろう。


 「俺はギンサーガに乗る。ちょっとぐらい使わないとな。レイブはアメリア、サダコ、キャン、ロペ、ゼルミィ、コフィだな。ドルフ隊二人はそのまま。ピュリア?とライはテラ娘か。ゲルン・ガウスは・・・。」


 「ハイハイ!!私が乗る!!」


 嬉々として名乗りを上げたのはルミコだった。


 「生身で出るより安全そうだし。私が乗るよ!」


 こいつちゃんと操縦できるのか・・・?レイブと違ってフィードバックシステム何か無いんだが・・・。まぁ良いか。確かに安全には違いない。本物のゲルン・ガウスだからな。


 「銀ちゃん俺達は肩にでも捕まっていくかい?」


 そうだな。倉庫なんか飛ばした日にゃ壊されそうだし・・・。


 「それで行こう。と言うかそれしかないわ。」


 俺はコックピットに乗り込み、何故こんなことになったのか?と、今更ながら考えていた。


ーー銀河きゅん全員準備オッケー。


 「よし。出ようか。イントたんハッチ開いて。」


ーー了解です。ご武運を。


 ラビスから出撃すると、やはり目玉は俺の方を追尾する様に追いかけてくる。巨大な目。あれはどこかで見た事がある様な気がする・・・。やはり・・・。


ーー銀河きゅん。あれって閉鎖世界の干渉かなぁ?


 ロペから通信が入るが、何となく違うような気もしている。クルファウストに干渉されて以来、この船のマジックサーキットには、様々な紋章を書き加えている。その中には外部からの干渉を遮断する紋章も含まれている。効果のほどは未だ机上の物でしかないが、恐らく問題はない筈だ。準備は嫌と言うほどやったつもりだ。亜高速航行が出来る様になって船に居る時間は減っている。だがその間も俺は時間の許す限り船を弄り、バトルドレスを、タキシードを作り、ナノマシンを進化させてきた。


 「ナノマシンを進化させ過ぎたのかなぁ?」


ーーそれは大丈夫なんじゃ無かったっけ?銀河きゅん前に言ってたよね?セーフティを用意したって。


 「そう言えばそうだったな。じゃあ何が原因だったのか・・・?」


 そうやって相談事をして居る間にもグングン目玉はせまってくる。


ーー主よ。ナノマシンとは勝手に判断して動くものなのですか?


 ティオレ・・・。心配そうにメインカメラを覗き込んでくれるのは良いが、振り落とされないでくれよ・・・。


 だが確かにそうだ。そもそもこんな大がかりな進化をする前には必ず俺に許可を得る様に・・・?


 「ああああ!!!!!」


ーーにゃにっ!!


 ビクッ!とコックピットで跳ね上がったロペがこれの方をじっと見てくる。


 「俺許可出したわ・・・。」


ーー・・・え?なんの?


 「分からん・・・ちょっとログを確認する・・・。」


ーーーーー


テニー・マドマックス寄生群体より規格外進化の要請あり


マスターによる承認を確認


識別名マギア・ブロアとの融合を開始します


その他の寄生群体から除外要請


外部に配置します


ーーーーー


 んはーーーん!!進化じゃねぇ!!合体しとるやんけ!!!

外部に配置って!殆ど融合しとったやんけ!デスマスクみたいになっとったぞ!


 「ごめんなさい俺のせいです。」


ーーうぇぇ。銀河きゅーん?


 「一回分解するしかないな・・・。」


ーー彼女怒っているのかねぇ?めっちゃ追い掛け回されてるし・・・。


 今は俺のギンサーガと、ロペの強襲型レイブの二機で並走して逃げている真っ最中だ。何故か執拗に俺の方を追跡してくると思ったが・・・。仕方ない事だわな・・・。


 「しゃーない。こいつの力を見る為にも丁度良い機会だ。」


ーーどうするのぉ?


 「受け止めてやるさぁああああ!!」


 俺はギンサーガを急停止し、目玉と向き合った。


 流石はマギア級!!でっけぇ!!


 見開かれた目をそのままに、目玉は俺に突進してくる。


 「どっせーーーーーーい!」


ぐにゅ


 うっフィードバック切っておけばよかった・・・。


 やわらかい目玉に包まれるような形でギンサーガは押し留まり、未だ恐ろしい力と質量で突進を続ける目玉を完全に停止させた。


 中々のパワーである。戦艦止められるとか・・・。コロニーも止められそうじゃね?


 何とか勢いを完全に殺したことに安堵する雨宮だが・・・。


 上から何かが!?


ーーいたーーーーーーーーいい!!!目っ目が―――――――!!!


 瞼が下りてくる!!


 雨宮は慌てて目玉から離れ距離を取った。


 こいつ今喋ったな・・・?まぁ元は人間だしおかしかないか?通信を送って話が出来るかもしれないな。


 「テニー・マドマックス!応答しろ!聞こえるか!?」


ーーひゃい!!


 目玉は一瞬ビクンと身震いをした後、雨宮の声のする方を見た。


 「聞こえているんだな。今から元に戻してやるからじっとしていろ。」

 

ーーご迷惑をおかけします・・・。


ーーーーー


マスターからテニー・マドマックス寄生群体へロールバック命令を確認


ロールバックを開始します


ーーーーー


 再びまばゆい輝きに包まれる目玉ことテニー・マドマックス。


 今までで一番恐ろしい相手だったぜ・・・。


ーー銀河きゅん?ごめんなさいした?


 「戻ってからにするわ・・・。しかしこれからどうすっかねー。今からアト4に戻るわけにもいかないしなぁ。」


ーーでは私から提案です。このまま海王星コロニーに行きましょう。様子も見たいでしょうし、デルモストとの接触を図るべきだと。


 バーさんいつの間にブリッジに・・・。


 「それは構わないが・・・食料はもつのか?」


ーー銀ちゃんだいじょーぶなのよー。二月は余裕なの―。


 ならまぁ・・・足りなくなる事は無いか。向こうのコロニーでも補給は出来るし大丈夫か。


 「判った。そうしよう。」


再び強く輝く光が収まった後、元に戻ったブロアがそこに有った。


 「ブロア応答しろ。」


ーーはい・・・。


 「大丈夫か?」


ーーちょっと目が痛いですが・・・大丈夫です・・・。


 「今からそっちに行く。収容してくれ。」


ーー!!了解です!


 俺はロペ、ティオレ、ムラサメを連れて、ブロアへと着艦した。


 「皆はラビスに戻っていてくれ。新庄。全艦進路海王星コロニー何時でも動けるように準備しておいてくれ。」


ーー了解した。


ーーーーーーーーーー


二番艦マギア・ブロア


 内装は全く変わらんな。まぁシリーズものだけあるか。それにしても・・・。


 雨宮とロペはマシンを固定しムラサメとティオレは、それぞれ雨宮のギンサーガの肩から飛び降りドッグへ降りた。が・・・。周りには誰も居ない。


ーー雨宮様お迎えに行けず申し訳ありません!どうかブリッジ迄お願いします!


 ・・・?


 「誰も居ないのと何か関係があるのかなぁ?」


 あれ・・・?俺ってばもしかしてまたしでかした?いや・・・?間違ってクルーを分解したなんて事は無い。スキャンしてみたら・・・うん。良かった、ちゃんといる。元居た座標データを基にしているはずだから、自室に居るんだな・・・?


 「あれ・・・?」


 歩きながらあれこれ考えていると、いつの間にかティオレは先にエレベータの前で先に扉を開けて待っていた。


 「主よ。何かありましたか?」


 「さっきからずっと考え事してるぅ?」


 「なに。皆何処にいるのかなってさ?」


 「どこにいたのぅ?」


 「懲罰房。」


 「・・・・それはまた・・・何とも・・・。」


 今回の件を鑑みてナノマシンが勝手に判断したのだろう。艦長以外の全員が独房の中で再構成されている様だった。


 どうやって謝ろうかと考えながら歩いているうちに俺達はブリッジに到着した。


ーーーーーーーーーー


 俺達がブリッジへと入ると見慣れた艦長席ではソロコントロールシステムが起動していた。


 「外から見るとこんな感じなんだな。」


 少し細長い淡い青色の卵の様な物がソロコントロールシステムの外観である、雨宮達が到着した事を伝える為、ロペがこんこんと軽くノックをする。すると卵は真ん中から二つに割れ、ぐったりした様子の艦長が姿を現した。しかし、全身の肌の色が紫色に変わり、おおよそ彼女には保持できないであろうと思われるほどの濃密な魔力がブリッジに漂い始めた。


 「むっ。これは・・・。皆問題ないか?」


 「問題ないですボス。」「主よ問題ありません。」「私も何にもだょ。」


 心配はいらなかった。だが恐らく普通の人間がこの濃密な魔力の中に居れば、彼女の様に魔力中毒となり、肉体が先に死を迎えるだろう。肉体と魂、それを繋ぐエーテルサーキット。其の全てにマナ。魔力が必要になるがこの中でもエーテルサーキットが最も重要とされている。エーテルサーキットに魔力が流れない状態が続くと魂が肉体から離れる。しかし逆の場合はまた様相が異なる。過剰に供給された魔力はエーテルサーキットの変質と共に肉体も変質させる。肉体や魂などを破壊しないところがまだマシ、と言う話もある。だがこの事態の本質はそういう事ではない。変質するという事は元の状態と違う状態になるという事。この場合は・・・。


 「人種じゃ無い・・・のでしょうか?彼女は?」


 確かに・・・見た感じは魔族・・・と言う感じだな。だが俺の目がおかしくなっていないのなら、あれは何だろうか・・・?ロールバックしきれなかったとかあるのか?いや・・・時間が掛かっているだけと言う事も有り得る。


 「あ・・あわわ・・・。あし・・・あしが・・・!」


 ムラサメがテニーの足元を見て後退りしながらティオレの後ろに隠れる。


 「主よ・・・。これは・・・?」


 テニーの足はソロコントロールシステムのフットペダルのあった部分と一体化している。


 ・・・。またなんか失敗したか・・・俺?いや・・・違う。

これは・・・。


 「ぐぬぬ・・・。」


 「銀河きゅん?」


 俺の安全装置が動いた形跡があるな・・・。これはやっぱり・・・。


 「テニーよ。お前の余剰魔力ちょっと寄こせ。」


 魔力で代用できるかどうかは分からないが、やってみるか。


 今現在テニーはソロコントロールシステムの脳と艦を直接繋ぐフルダイブモードを使用している。と言うか使用せざるを得なかったのだろうな。このブリッジに他に誰も居ないのがその理由だろう。恐らくこのままで変異前もずっと動かしていたのだろうな。並の精神力で出来る事ではない。この戦艦のフルダイブモードは相当量の魔力が無いと魔力を船に吸い尽くされて死ぬ可能性もある。この娘の魔力量では操船のみに魔力を全て注ぎ込むことになりそうだ。マジックシールドの使用などもってのほか。武装の使用も出来ないだろう。その関係でブロアには魔力に長けたプロフェッショナルを副艦長とシールドコントロールに配置していたはずなんだが・・・二人と独房の住人となっている。若気の至り・・・。


 俺は直ぐにテニーの唇を奪い、魔力を根こそぎ吸い出した。その後俺の中に居るナノマシンを使いテニーの体を元に戻した。何故か機能していなかったテニーの寄生群体を回収し分析に回す。


 「あ・・・。体の色が戻っていく・・・。」


 「むぅ・・・。今回一番割を喰ったのは彼女ですが・・・。むぅ・・・。」


 「・・・いいな・・・。」


 ・・・足りないな。幾ら余剰して余っていたとはいえ、マンションの貯水タンクを子供用のじょうろで満タンにするのは不可能か・・・。だが魔力を俺の生命エネルギーに変換する事は成功した。これならこの世界中に漂うマナからも生命エネルギーを捻出することが出来るかもしれないな・・・。


 「ロペ、サプリ持ってるか?あれ三つぐらいくれ。」


 「これ?」


 ロペは腰裏に引っ付いた小型バックパックの中から、俺の造った魔力補給用のサプリをケースごと取り出し、三錠のサプリを俺に寄こした。


 「口移しする?」


 「してもいいが・・・。」


 うーん。ごちゃごちゃ言うのも面倒だな。


 俺は既にサプリを口に含んだロペの唇を奪う。


 「んーーー~。」


 ちょっとロペの魔力も回復しているな。


 「・・・気持ち回復したような気がする。」


 戦艦一隻を元の状態に戻す、それだけの事と思ってやってしまったのだが・・・その前に一度進化しているから大丈夫かと思ったんだが・・・。全然大丈夫では無かった様だ。エネルギー枯渇とか久しぶり過ぎてどう対処していたか忘れていた。


 「サプリは魔力のみを回復することに特化しているせいか、俺にはあまり効果が無いみたいだ。」


 「おろ?あ、そっか。魔法を使っている訳じゃ無いもんねぇ。」


 そうだ。飯を食おう。それで全快するわな。


 「飯を食ってエネルギー補給したいのだが・・・。足りるかね?せめてテニーを治してから戻ろうと思うんだが。」


 「主よ、私のサプリを人ケース全て飲んでみては?切り離すぐらいなら足りると思うのですが。」

(見ていて思うが、主のエネルギーと言うのは魔力に換算するととんでもない量だと思う・・・。あれ一粒で私の魔力でも全快するのだが・・・。)


 「そっか・・・。ラビスに戻ったらなんぼでもあるか・・・。よし。」


ザラザラザラザラザラ

ぼりっごりっがりっ


 「サプリなんて口いっぱいに食うもんじゃねーな・・・。粉っぽい。」


 ティオレとムラサメが水!水!とブリッジ内をひっくり返そうとするので止めておく。しかし何とかテニーの足をブロアから切り離す事に成功した。思ったよりエネルギーの状況が芳しくない。やはり一度ちゃんと食事しないとだめだな。


 「雨宮様かみさま・・・?」


 「目が覚めたか。ドッグの隔壁を閉めたあたりで意識レベルが低下したのを確認している。他の奴は一体どうしたんだ?」

 

 そこで初めてブロアに有った一連の風な状況を俺は把握した。


 懲罰房に入った人数が飛び抜けて多かった事から始まり、懲罰房から出ても体調不良でほとんどの者がダウン、ブリッジクルーが全滅した。そして何より・・・。


 「正直すまんかった。反省している。ケガが無くて何よりだった。」


 「銀河きゅんやり過ぎ~。やっぱり訓練しなきゃだね。」


 あ~~っ・・・。反論できない・・・。


 「お腹いっぱいになってからな・・・。」


 「主よ・・・。私は轟沈させてしまったかと思いました・・・。神より預かった大切な船を・・・。」


 また神出てきた・・・。


 「すまん。あれは俺の魔力弾の流れ弾だった。詫びに何か俺の叶えられることなら叶えよう。何でも言ってみてくれ。」


 俺はテニーのSCSソロコントロールシステムの前で膝を付き、未だに起き上がれないでいるテニーの頭をなでる。くすぐったそうに目を細める姿が何だかそそる。しかしその言葉に反応したのは当の本人では無く、周りに居た三人・・・と異常を感じ、ブリッジに集まってきたブロアのクルー達だった。


 「・・・艦長!!チャンスよ!!」「何が起こったのか分からんが、今でしょ!」「羨ましい・・・。」


 「ボス・・・!」「おやぁ?」「主の御心に感謝しなさい。」


 一度魔力を完全に枯渇させてしまっているせいか、体はほとんど動かないみたいだな。しかし何かを言おうとしている事は分かる。


 「・・・私にもその・・・お慈悲を・・・ください・・・。」


 (言った!!)(私も乱入できるかしら・・・。)(羨まし・・・。)


 慈悲・・・?慈悲とは何ぞや・・・?俺の解釈は間違っている可能性があると、ナノマシンが言っている。失敗の詫びに自害するって意味じゃないよな・・・?


 「良く分からんが判った・・・。皆の体調も戻ったようだし、副艦長に船を任せて俺の部屋に来ると良い。詳しくはそこで聞く・・・元気になってからな?」


 「はい・・・。」


ビーッビ-ッビーッビーッ


 けたたましいアラートが艦内に響き渡る。それと同時にブリッジクルーが入り口を塞いでいたムラサメをよいしょと押し退け、それぞれの持ち場に付く。


 「マスター!ラビスから通信開きます!」


 「頼む。」


ーー雨宮!連合軍の増援が来た!とりあえずラピスに戻ってくれ。


 「判った。すぐ戻る。」


 俺は辺りを見回すと、一人待機している奴がこちらを見て様子を窺っている。彼女は確か・・・。


 「船医か。テニーを頼む。」


 「ハッ!お任せください主よ!」


 俺多たちは急いでブロアへ戻った。


ーーーーーーーーーー


 「遅くなったか。」


 新庄は周辺の海図を見ながらそうでもないと答えた。


 「スキルを解除させろ。ジャミングは継続今のままでは俺達も海賊の仲間にされかねん。」


 どうしたものかと考えていると、不意にバーバラが俺に声を掛けてきた。


 「交渉事なら私に任せなさい。これでも元は将校です。イント。連合軍の船籍を確認なさい。」


 「は、はいお婆様。」


 指揮を執る姿は流石に元将校といった所か。手慣れている。


 「冥星軍第三艦隊所属軽巡洋艦『ネタロー』です!護衛艦三隻と共にこちらへ向かっています。」


 「ネタロー・・・ですか。あれは特殊な艦長のいる船ですね。迂闊に手を出すと痛いしっぺ返しを食らうかもしれません。」


 「特殊な艦長ってなんだ?スキルの事か?」


 「それも有りますが・・・歴戦の英雄・・・と言うのも有りますね。あれの艦長は、タロー・ピーチカン中佐・・・いえ今は大佐ですか。傭兵術は並、戦術も並以下ですが、桁外れに運のいい男です。まぁそれは、ロペ様やアミィさんの方が詳しいでしょうが。」


 俺はロペの方を見ると、ロペはやれやれとこちらを向いた。既に副艦長席で何やら連絡を取り合っている。


 「確かにあの運の良さは敵に回すと危険だねぇ。でもこっちにはクルファウストが居るから。それに銀河きゅんの行動を阻害出来るほどだとは思わないょ。」


 それほどですか・・・とバーさんは俺の方を見るが、直ぐに別の問題へと話が移る。


 「銀ちゃん、ネタローもそうだけど、海賊ほったらかしなのよー。」


 そうだった。まだ残っているんだった。忘れてたな・・・。


 「防衛隊では全く歯が立たないから・・・。誰か一人向かわせるか?」


 「だったらウチのドルフ二機を回したらいいと思うょ。あの二人は優秀だし。サクッとお土産も持って帰ってくるよ。」


 お土産・・・オーキか。手に入るとなったらなったでちょっとそわそわしてくるから不思議だ。ゲルン・ガウスの偽物としてしか認識していなかったが、それ単体で考えると、欲しいと思う心もある。


 「ん。じゃあそれで。」


 「おっけー。エクス?」


 ロペはラビスに居るレイブのパイロットに指示を出した。


 あ。


 「生かしたままで連れて来てくれたらご褒美な。落ち着いたら話が聞きたいし。」


 「話と言えば・・・。耳狩りの話は聞けたのか?女海賊共は牢に入れっぱなしだぞ?


 トラブルが起き過ぎて問題が山積してきた。後回しに・・・あ・・・あれ?後回しにしてはいかん事を何か忘れているような気がしているんだが?何だったのか思い出せん。


 「そう言えばアイツあの後どうしたんだ?ムラサメ?」


 俺は後ろに控えていたムラサメに尋ねると、再び牢に戻したとの事だった。流石に眷属化しても放置するわけにもいかないか。ムラサメも眷属化して限界を突破した強さを手に入れているが、それは耳狩り女も同じだ。旨く取り込めるといいんだが。


 「雨宮さん。十分後にこちらの副砲の射程に入ります。」


 そうか副砲の・・・。ってまてまてまて。


 「ネタローってマジックシールドあるのか?」


 アミィが俺の質問に答えてくれる。


 「無いと思います。私達の出た後に改良されていれば話は別ですが・・・あの船も型落ちですし、戦前からだましだましで使ってきたハズですから。やはりネックはあちらの艦長の運・・・ですね。」


 運・・・ラックかぁ・・・。今迄の俺を振り返ってみると、決して悪くは無いと思うんだが、思うんだが・・・。思いたいんだが・・・・。


 「主砲で消し飛ばそうか・・・?」


 「銀河きゅんそれちょっと待って欲しいな。あの船には欲しい人材が居るんだょ。」


 ほほう。ロペの眼鏡に適う人材か。


 「ゴーギャン・パワーハーツって言って、歴戦の猛者だょ。彼の医療技術はぜひ欲しぃと思うんだょねぇ。銀河きゅんの居ない時になんかあったら彼が居れば安心だし。ちゃんとした医者がもうちょっと人数欲しいんだょね。ほら、今女の子ばっかりだし、男のメンバーも増やしていこうかと。」


 女ばっかしでも構わないが・・・。そうだな・・・。


 「任せる。」


 「おっけー。ついでに綺麗処もかき集めるょ。アイツの運のせいなんだろうけど、見た目と能力が非常に高い人材が多いのょ。きっといい収穫が期待できるょ。」


 ロペはやる気だ。しかし一体どうやって・・・?


 「何か手段があるのか?」


 「こーれ。」


 ロペはそう言って自分の端末を俺に見せ、にこっと笑顔を振りまいた後、コンソールと端末を接続した。非常にいい笑顔だった。だがそれだけに何をやらかしてくれるのか・・・。楽しみです。はい。


ーーーーーーーーーー


宇宙戦艦ネタロー


 冥王星宙域のパトロールに出ていたタロー・ピーチカンは以前雨宮を救助した際に周りにもてはやされ、結局昇進したくない本人の希望は適わず大佐に昇進した。


 「あーもう・・・。折角パトロールに専念できると思ったのにまた何かあったのかよ・・・。」


 「艦長。どうせあともう少しで司令部に移動になるのですから、戦果の手土産でも持っていけば宜しいのでは?」


 要らない。激しく要らない。俺は降格されたいの。準佐位で良いのよ。地方勤務したいのよ。

忙しいの嫌いなのよ・・・。


 「艦長。まもなく指定されたコロニーに到着します・・・。あれは・・・。」


 「・・・?なんだ・・・?船籍照合。」


 オペレーターの女性は手元のキーを叩き指示を実行する。


 「商業国家所属、マギア級戦艦との事です。データベースに加えます。新造戦艦でしょうか・・・?」


 新造戦艦・・・だと・・・?まさか運は俺にあの戦艦に乗り換えて新しく戦果を挙げろと言うのか・・・?いや流石に海賊の真似事みたいなことをさせようとはしないだろう。犯罪者になりたい訳じゃない。


 「あー。いやな予感がビンビンする・・・。もう帰らない?パトロールに戻ろうよ。あれは絶対海賊じゃないって。」


 「いえしかし・・・。救難信号を受けてしまいましたので・・・。現在コロニーは防衛隊が全滅。海賊の旧式ワーカーによって宇宙港が占拠されているという事ですが・・・。」


 あのマギア級が気になります。と副艦長は改めてその戦艦をモニターに表示し拡大する。


 一機の戦艦から二機のワーカーが飛び出し、直ぐ近くに居るもう一隻の戦艦に入った。


 あれは何をしていたんだろう?運ではない本能の部分が近づかない方がいいと警鐘を鳴らしている。


 「あのワーカーは何だ・・・?」


 「・・・不明です。レーダーでは探知できませんでした・・・!?艦長!」


 「どうした!?」


 「か・・・艦のコントロールが奪われました・・・。オペレート不可能です・・・。全ての計器が不明な情報を受信しています。」


 !?


 「火器管制!!」


 「操作不能です・・・。」


 「し・・シールド!!」


 「解除されています・・・。」


 「生命維持!?」


 「今のところ以上ありません・・・。」


 殺すつもりは無いという事か・・・。はぁ~~・・・。


 「お手上げだな・・・。まさか近づく前にやられるとは・・・。」


 電子戦に長けたものが居るのか・・・。このままどうなるのか・・・。


ーーーーーーーーーー


ネタローワーカードッグ


 「隔壁開けろ!?緊急発進します!」


 「手動で開ける!少し待ってくれ!」


 全ての電子的なコントロールが奪われた今。全ての隔壁を手動で動かすほかない。今、ネタローのワーカー部隊ラッキーストライクは六機の連合軍正式採用ワーカーの一つ『バーモ』に乗り込み、隔壁が開くのをコックピットで待っていた。


 「・・・遅い・・・。まだなの・・・?」


 「無茶いうなよ!一人で開けるもんじゃないんだ!文句言うなら降りてきて反対側動かせ!六人もいるのに使えない奴らだな!!」


ーー何ですって!!


 ラッキーストライクのメンバーに選ばれるのには特別に選ばれる必要があるという事も有り、エリート意識が強く、ネタロー艦内でも鼻つまみ者の扱いを受けていた。それも有ってか、ラッキーストライクは今こそ待遇を改善させて、自分達を目上の者として認識させようと必死だった。


 「今のままだとワーカーが伏せて通るまでに二時間は掛かるな。もういいだろ?出るだけ無駄だって。」


ーーふざけないで!海賊が居るのよ!コロニーだって目の前なのに何もしない連合軍が居ますか!!


 しないんじゃなくて出来なくされたんだと、既に敗北しているのだと、そう言ってやりたい心をグッと押し殺し、ネタロー整備班長ダイン・メロス中尉は奥歯をかみしめた。一応彼も連合軍としてのプライドはある。悪あがき位はしたい思いはある。しかし・・・。


 (一人反対から手伝ってくれるだけで五分で終わるんだが・・・。)


 本来手動で隔壁を開ける時は、両側に一人ずつ付き呼吸を合わせてクランクで巻き取り式の隔壁を開けるのだ。しかし一人で開ける時は二倍以上の労力を必要とする。片方のクランクを回し、上げ過ぎる前に反対側に行きまた上げ過ぎないようにクランクを回す。しかしこの隔壁一枚二百メートル近くあるので両側を行き来するだけで非常に時間が掛かる。それも有り、少しずつしか開けられないのだ。


 (とはいえあいつ等と息を合わせて開けることが出来るとも思えないんだが・・・。)


 いっそチームでやれよと言いたいのだが、武器を持っている以上下手に暴れられるのも困るので言われるがままになるしかなかった。そんな思いを知ってか知らないでか、ラッキーストライクのリーダー、レンファ―・カタール中尉はいら立ちを隠そうともせず悪態をついている。


ーーホントに使えないわね整備班って!守られてるばっかりで役に立たない!隔壁位開けなさいよ!!


 (・・・やめた。同じ開けるなら俺が外に出て様子を見るだけでもして来よう。)


 幸い今迄の頑張りも有り、這って外に出ることが出来るぐらいは開いている。


 (俺が思うに・・・。こんな大掛かりな事を出来るのは一人しかいないんだが・・・。あの人を敵に回して無事で済むとは思えないんだよな。)


 ダインはスピーカから聞こえる罵声をスルーし、一人外壁を伝い、ブリッジの傍までやってきた。

目の前に広がる暗黒の空間に淡いブルーの光を纏うマギアシリーズはどこか神々しく映った。


 (あの船カッコイイな・・・。こんなポンコツじゃなくってさ、あの船みたいな新造戦艦を仕事場にしたいんだよなぁ。ガキの頃はいつかサラマンダー級を触ってみたいって思っていた。キャッシュマン大尉か・・・。ガウスのOSを事故らせたときには悪い事をしたなぁ・・・。俺犯人知ってんだぜ・・・。)


ガンガンガン


バキバキバキッ


 (何だっ!?)


 音のする方を見ると、何とラッキーストライクのワーカーが隔壁を破壊して出てきた。


 (アイツら頭悪すぎだろ!!アト4が機能していない今修理なんかできないんだぞ・・・?)


 そしてワーカーの通れるサイズの穴が開くと六機のワーカーが外装を擦りながら無理やり出てきた。

そしてそのままアト4の直ぐ傍に居る戦艦に向かって飛び立っていく。しかし、向こうの戦艦からはワーカーが出て来ない。何故かは分らないが、ラッキーストライクはいきなり発砲、相手の戦艦に張り付こうとしたが、何か目に見えないシールドに遮られ・・・。一機のバーモが爆発した。


 !?


 (何だ?機銃があったのか・・・?ここからじゃ見えないが・・・。あっワーカーが出てきた!

何だあれ!?)


ーーーーーーーーーー


 どうなるのかやってみただけなんだが・・・尊い犠牲に乾杯。


 「次元湾曲シールドに触れると爆発する・・・と。」


 元々は非接触式光子バリアという物がこの船には搭載されていたのだが、ディメンションブラスターのエネルギーを他にも使ってみたい俺の好奇心を満たす為に、前述のバリアは分解、新しく次空間湾曲全対応型バリア、通称湾曲シールドを標準装備に変更した。爆発したワーカーだが、実際はシールドに触れて爆発したのではなく、シールドの影響範囲にボディ事侵入してしまったが為に動力炉が捩じ切れ爆発したのだ。触れただけで爆発するとかないから・・・。そんなのあったらデブリが漂うこの宇宙でバンバン爆発が起こるがな・・・。


 「ロペ、無いから。触れただけで爆発とか無いから。別の要因があるから。」


 「ありゃ?そっかそっか。動力が捩じ切れたのねぃ?」


 俺は腕を組みウムと頷く。


 「にしても・・・。アブねー奴らだな?いきなり撃ってきたぞ?ロペなにしたんだ?」


 「ネタローのコントロールをこっちに移したのょ。」


 思いっきり敵対しとるやんけ。そら撃ってくるわ。


 「交戦する事はもう無いんだろうが・・・。」


 「でもこっちがやった事は分からないはずなんだけどねぇ?なんで撃ってきたんだろ?」


 あ・・・ジャミングは継続中だったか。という事は単に危ない奴らだっただけか。


 さて・・・。軍の正規部隊だしなぁ・・・。しかも上級将校もいる。割かし扱いは気を使うんだが・・・。そんなにおどおどしていても仕方ないし、やっちまうのは間違いだからなぁ。運のいい奴か・・・。という事はだ。そいつにとって都合の良い様に事を進めれば双方にとっていい結果も生まれるかもしれないな?だが今すぐにそれを思いつくかと言えばそうでも無いか?うーむ・・・。


 「なる様になるか。」


 「最初は任せてっ!」


 不穏な事を言われた気がするが、いざとなれば力で解決するさ!


アモン 29歳 人種とデーモンのハーフ 


 冥王星宙域生まれのデーモンハーフ。しかしデーモンとしての特徴はほとんど眠っているまま普通の人とほぼ変わらない人生を歩んできた。軍に入隊して勤勉に訓練を続ける中特殊部隊ラムダステイツにスカウトされるが、初任務でアミィに脳天をヒールで破壊され即死。


スージー 33歳 人種 


 水星宙域生まれの未婚の乙女。部隊のムードメーカーであったが、実力に見合わないヤル気のなさが目立つ女性だったが、部隊の人間と少し離れてうろうろしていた所、バトルドレスに慣れないアミィに後ろから頭を握りつぶされ何が起こったか分からないまま死亡した。


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