EP23 傍若無人
丸一週間以上かかった・・・。
襲撃されたり、訳の分からないことがあったりで、結局飯を食う暇もないまま俺は自室に戻る、
ムラサメを伴い、俺の右手には襲撃をして来た超絶雌猫海賊団とか言う変な名前胃の海賊団のボス、クイーンキャットの襟首をつかんで引き摺っている。
部屋の扉を開けると、既にティオレとモーニャがそこに居た。
「待たせたな。その辺にかけろよ。」
「あ・・・ボス。そいつは。」
「知っているのかティオレ?」
「えぇ。猫耳保存委員会を破門されたクイーンキャット・・・いえ。エリザベート・アブクラハルですね。」
名前は上品な感じがするのになぁ。
「耳狩りエリザベートと言ってそこそこ有名なはずです・・・。特に獣人には。」
物理的に刈りに来るのか。
猫耳雨宮じゃなくって良かったわ。
マギア級には零番から四番迄、用途を分けたハンガーが存在している・・・とは言っても配備されている装備が無いに等しい位しかないので、自然とそうなってしまった。零番はラビスにしかないが、俺専用、一番はスクランブル用、二番は客人用、三番は訓練用、四番はメンテナンス用と言った感じだ。
他の艦は一番から四番迄しか使われておらず、懲罰用に掃除をする位しか用途が今の所無い。
ティオレは先ほどまで救助隊として船外活動をしていたのだが、疲れた様子も無くそわそわと落ち着きがない。
モーニャはもちろん独房だ。この船の懲罰用独房は、非常に静かだ。限界を超えた静かさと言う表現がしっくりくる。
外界からの完全遮断。僅か一畳の独房に入った時、無音の空気清浄効果を持つナノマシンのせいで、換気扇すら無く、通気用のダクトも無い。
有るのは座布団一枚だけ。トイレは必要となれば壁に収納されたトイレが出てくるようになっているが、独房の管理はナノマシンが自動で行うため、誰かと会話をすることも無い。それ故に中に入ったが最後、自分の動く音以外の発生源が存在しない為、じっとしていると耳鳴りを伴う静寂が訪れる。
試しに何人か体験という事で一時間ほど、時間を区切って入った者たちが居るらしいが、三十分も持たずに泣いて許しを請うた。
唯一一時間の体験を終えることが出来たのが、ござるだけだった。ござる曰く「瞑想するには丁度良い。」との事だったが、他の体験者からすれば、只の拷問。だという事だ。俺はナノマシンから返事も来るし完全に孤独と言う事は無いから、そういう意味では俺には意味が無いだろう。
だがまぁ、それでこそ懲罰として効果が有る物だろう。
そして、懲罰を経験して、先頃の反発した集団の中にいた者達は、全身全霊を込めて土下座し、泣いて謝ったらしいが、いかんせん元ベテラン冒険者の多い集団だ。
抵抗した所で力が及ぶことも無く、独房に放り込まれた。そして中に入るなり全力で号泣恐怖におびえていたが、数分も経つ頃には顔から表情が消え、時間が経つにつれて無駄な動きが無くなっていくという。
「モーニャ。独房の居心地はどうだった?」
俺のその言葉に過敏に反応するモーニャ。彼女は体験しつつ二回目の独房をフルで経験してきた。
その質問をした途端、ふっ。と表情が消え、視線は斜め下四十五度を見つめたまま小刻みに震えだした。
「もうさからいませんもうしませんいっしょうけんめいつくしますわがままいいません・・・・。」
聞こえるか聞こえないか位の声でしっかりと反省の言葉を唱え始めた。
「相当堪えたようですね。他の者達も同じように大人しくなりました。」
これを大人しいというのは如何なものかと思うが・・・。まぁ良いか。
俺はモーニャの頭に手を置き、ぽんぽんと頭をなでる。すると涙が止めどなく溢れ出してきた。
「もう逆らいませんから!!!!もう独房には行きたくないっス!!!!うわーん!!」
独房効果によって押し込められていた感情が爆発したようだな。独房恐るべし。
ドサッ
引き摺っていたエリザベートをベッドの上に放り投げた。
「ずっと起きていたのだろう?何か言いたい事はあるか?」
「な!!なにかも何も!ずっと首が締まっていて何も言えなかったのよ!!視界が白くなってきて死ぬかと思ったわ!!」
この部屋に入ってからもゆっくりしていたからな・・・。
「で、あのシャトルの状況は一体どういう事だったんだ?シャトルの肉詰めみたいになって何がしたかったんだ?」
そう質問をした途端、エリザベートは眉間にしわを寄せ、非常に苦い顔になった。
「話したく・・・。「お話しろ。」はい・・・。」
話したくないと言いたかったのだろうが、言葉を遮ってムラサメの刀がのど元を軽く突き刺した。
普通に流血しているんだが・・・。ベッドにシミが出来る・・・!
「こらムラサメ。次から寸止めにしておけ。シーツが血で汚れるだろ?」
俺に注意されるとムラサメは刀を拭って終い、てへっと、舌を出した。
何だか私怨が入っているような気がするな・・・?
「そりゃぁ~自分より先に銀河きゅんのベッドに入ったからでしょ~。」
気の抜けるような声で俺を責めるロペが、俺の後ろから近付いてきた。
そのまま俺の背におぶさってくる。
「おっと・・・随分早い到着だな?仕事はもう良いのか?」
「イントたんに任せてきちゃった。」
なむ。イントたんが目をウルウルさせながらモニターとにらめっこしている姿がはっきりと浮かぶ。
「いじめっ子だな。」
「失礼な~。」
「あ・・あの?ばんそうこうでも有りません?」
サクッと刺された喉元からだらだらと流血するエリザベート。
イカンちょっと忘れていた。
俺は意味も無くエリザベートの目の前に近づき、そっと傷口に手を触れる、
「あっ・・・。何を・・・。」
海賊と言う割には免疫が無さすぎるのではないだろうか?
俺が目の前に来ただけで、目が泳ぎ、顔面は沸騰しそうなほどの熱を帯びているように見える。
俺のその行動を皮切りに、何故かロペはシャワーを浴びに行き、他の三人も何故かその後に続く。
そんな間にナノマシンは治療を終え、俺はまた意味も無くエリザベートをコロンと、押し倒す。
「じゃあ話してもらおうか。」
「あ・・・あのっ!・・・そのぅ・・・。」
エリザベートが言うには、脱出用シャトルに乗って脱出した際、宇宙空間に投げ出された者達も救助しながら移動していたらしいのだが、その方法が、転移魔法を使ったもので、収容人数など気にせずにホイホイ詰め込んでいったところ、シャトルの肉詰めが完成したそうだ。
転移先に入らなくなったら感覚で分かるそうで、ちょっとした隙間でもあればまだイケる・・・と思って勘違いしてしまうようだ。
そして最後に自分がシャトルの中に転移してしまったものだから、その時初めて惨状に気付いたんだと。
彼女自身、コックピットの隙間、車で言うアクセルのある足元の空間、あれの半分ぐらいの隙間にギッチギチに押し込まれてしまい、声を出す事すら出来ず、
気を失っていたのだそうだ。
壮絶体験だな・・・。肉体が四分の一に圧縮されるぐらいで済んでよかったなこいつ・・・・。
他の奴は何故生きているか理由が分からないレベルのものまでいたのに、運のいい奴だ。
因みに、一番ひどい目に有った奴はエリザベート自身が転移する直前に転移した巨人族の女で、上半身と下半身が熱せられたエンジンで両断されたうえ、下半身はエンジンの熱で完全に炭化してしまっていた。どうやらエンジンの熱は想像以上に凄いもののようだ。しかも上半身も首から上は隙間に入る為に、転移した直後に九十度以上曲がり、口の中には液体の様な個体の様などろどろの物体に侵されていた。
奇跡的に死ななかったのは、そのエンジンの熱のせいで千切れた上半身の傷口がふさがったせいだ。あと数分遅れていたら死んでいた。
かなり美人だったが・・・その時の状況を思い描くと、酷い話もあったもんだと同情する。
「お前あほだろ。」
「あほっていうなぁ!!」
俺の頭の上にクマのぬいぐるみが現れ、頭を揺らす。
「なんだ?クマ?」
「あっ!キャプテンジャック!!」
今なんと・・・?
「ジャック?」
「い・・・イイじゃない!名前ぐらい付けたって!!!」
んー。こう言うのがアレだろうか。アホ可愛いとかいうジャンルだろうか?
そうして話を聞いている間に、シャワーを浴びに言った一行が戻ってきた。
「おさきぃ。銀河きゅんも入るぅ?」
どどど・・・どうなっているんだ?
俺は何故か興奮している・・・?
ロペの裸は見慣れている・・・と言うほどでも無いが・・・。
ロペは言うに及ばず。その後ろに隠れるようにしているムラサメ。彼女も暴力的なまでの性能を誇る胸部装甲と、全身の強化筋肉・・・じゃない。
一体どうやって生きてきたらこんな美しい体が出来上がるのか?そう疑問を抱かせるのに足るまさに肉体美。他の三人に比べてしっかり筋肉が付いているにもかかわらず、
しなやかでいて、尚且つ女性特有の柔らかさを失っていない・・・。
そんな体が二人・・・ティオレもエルフとしては非常に力強い肉体の持ち主だ。ダークエルフとはこうも魅力的なのだろうか。
純粋なエルフ種のフェインやイファリスとはまた違い、光沢と言っても差し支えないほど瑞々しい肌に、吸い込まれそうな唇・・・。
「うむぅ・・・。」
「ボス?どうしたっすか?」
あぁ・・・。イカン。どうしても比べてしまう。だが・・・悪くない。悪くないぞモーニャ。
小柄なボディにマッチする二つの饅頭はツンと上向きで腰に手を当てた姿がなんとも無邪気でおじさんはもう・・・・。
俺は釘付けになっている自分を奮い立たせ、エリザベートの衣服を分解する。
「ちょなっ!?服がっ!!」
光の粒子とかして消えていく服を掴もうと、空を切るエリザベートの腕を掴み、そのまま押し倒そうとしたのだが・・・。
「ボぼぼぼぼぼ・・・ボス!!私がっ!!」
今日は何時になく押しが強いムラサメ。何時もは凛として筋の通らない事が許せない。そんな固い印象が他の者達には有るのだろうか。
サダコ以外とは割と距離を置いているように感じる。だが・・・。
「次は私の番ですぅ~~~!!!」
「むぎゅぅ!」
エリザベート背に轢き、押し倒される。
今日はこういう日か。
ーーーーーーーーーーー
ーー雨宮さん、雨宮さん、間もなくフリースコロニーに到着します、至急ブリッジに来てください
俺はそんなイントたんの声で目を覚ます。
「いい目覚ましだぁなぁ~~~ぁ。」
流石に五人相手はなかなかいいバトルだった。
皆体力のある猛者だったが無限の回復力を持つ俺には敵わなかったようだ。
「ボス・・・。あの・・・。起き上がれないのですがぁ・・・。」
「むにゃぁ・・・もうたべられないっすぅ~・・・。」
モーニャのは寝言か・・・?ベタなセリフを・・・。
「もう少し休んでいろ、ロペ。行くぞ。」
「銀河きゅん私とのぴろぴろとーくはぁ?」
ピロートークとでも言いたいのかねぇ?
「もう着くって言ってただろ?先に行くぞ?」
ロペは慌てて自分用の制服を着用し、気が付く。
「わぁ・・・。」
ムラサメを始めとし、今だ目の覚めないモーニャやエリザベート、ムラサメ同様目が覚めても自由が利かないティオレ。
ナノマシンに寄る肉体の急激な変化に脳がついて行かないと、こうなるらしい。
この後脳の進化のためもう一度眠ることになるのだ。危なくて連れてはいけない。
目が覚めない二人の進化は既に始まっている。地力の違いがこういう所に現れるのが少し面白い。
フェインは死にそうだったしな・・・。
俺とロペは大事なものを扱うようにそっと、ムラサメとティオレの目を閉じ、ブリッジに向かった。
ーーーーーーーーーーー
「あっ!二人とも遅いですよっ!もう入港中です!」
おっと・・・。そいつは悪い事をしたな。
「もぅ・・・ロペお姉さまばっかり・・・。」
頬を膨らませてプリプリ起こる姿が実にキュート。
俺とロペは両サイドからイントたんの膨れた頬を突っつき、ぷひゅ。と気の抜けるような空気音出してしまったイントたんは、顔を真っ赤にして俺たちにぽかぽかとじゃれついてくる。
「も~~~~!!!!」
「「「「「「「いんとたんかーわいー。」」」」」」」
ブリッジクルー全員からの唱和が起こる。いいチームワークだ。
新庄の癖なんだろうか?くいっくいっと、眼鏡の位置調整をしているような違うような、そんな動きが目立つ。
俺は知っている。奴の部屋にはイントたんのグッズが製作されているという事を。うちわ、はっぴ、抱き枕、端末カバー、様々なイントたんグッズの開発許可を俺に求めてきた。何故なら・・・。
相変わらず無一文には変わりない状態だからだ。
ん?もちろん許可したぞ?だって面白そうじゃん?俺も抱き枕欲しいし。
そして今現在・・・裏向きになってはいるが、奴の尻に敷いているクッションはデフォルメされたイントたんのクッションだ。
デザインは何とサダコ・・・。アイツこんな才能が有ったのか・・・。
「よー!遊びに来たぜー!!」
「俺は一応止めだんだが。」
デカい声でデカスとゲイルがブリッジにやってきた。
「どうしたんだ?」
「俺たちはまだブリッジを見てなかったからよ!殆ど来る事は無いだろうがなっ!」
がはは。と笑うゲイル、
あ・・・そうだ。
「デカス彼女には振り向いてもらえたのか?」
俺は敢えて煽っていくスタイルで話しかける・・・が。
「何で知ってんだよ!!いやぁー無口なんだけどあの儚げな感じがたまんねーよなぁ!!」
儚げも何も・・・ロボですからなぁ・・・。そら無反応だろう。
「けど聞いてくれよ!今朝あいさつしに行ったらちょっとこっちを見てくれたんだよ!!」
は?
「ちょっとは可能性出て来たぜ!!」
・・・・?
おかしいな・・・?テラ娘には何もプログラムしていない・・・それ処かOSすら入っていない空の状態なんだが・・・。
勝手に動く・・・?いや。そんな筈はない。テラ娘はあくまで巨人型バトルドレス。マシンだ。スペースワーカーと変わらんのだ。
「銀河様。まもなく停泊します。」
「あ・ああ・・・。」
音も振動も無くラビスは止まり、マギアシリーズの為に借りあげたレンタルドックに食料や日用品を納品しに来た業者が集まってくる。
それに対応しているのは・・・フェイン・・・?なぜあんなところに・・・?
「主よ。あれも訓練の成果です。まともに対人対応が出来るようになりました。」
「引きこもりから一歩前進・・・どころじゃ無いな。普通に談笑しとる。」
「銀ちゃん!ジェニちゃんが外で待ってるから早く出てきなって。」
む・・・。
「アンジーあとは任せる。ロペ、イントたん、エリー。行くぞ。」
「あ~い!」
「新庄さん後をお願いします。今行きます!」
「じゃぁイファリス。あれもよろしくね。」
「承知しました。」
俺たちはラビスを出て、宇宙港前のロータリーへ出た。するとワンボックスタイプの車の運転席からジェニが顔を出した。
「遅い!」
「そうかぁ?」
「アンタがなかなか起きてこないからって、ゆ~~~~~っくり入港してきたからねぇ?イント?」
俺はイントたんを見てみるが、プイっと顔を反らすイントたん。
「しりませんっ。」
そう言うと車にさっさと乗りこんでしまった。
「ちょっと怒らせちゃったか。」
「だねぇ。」
「二人ともからかいすぎぃ。」
そう言いながら俺たちは車に乗り込んだ。
ーーーーーーーーーー
車内
「イントたん。バーバラと言うのはどういう人なんだ?」
「はい。とても物静かな方です。武官では無く文官といった所でしょうか?軍の最高幹部とは言っても、うちに居る時は普通のおばあちゃんでした。と言っても、もう何年も合っていませんが。」
流れる車窓の景色をふと見ると、妙にいかつい男が目立つ。
ハッキリ言ってこのコロニーにはふさわしくない、見るからに犯罪者と言った奴から、インテリヤクザ、チンピラ、ギャング、マフィア。そんなふうに言っても疑う事は無いだろう容姿をしたものが非常に多い。
「なぁ。ジェニ。今日は祭りでもあるのか?妙にゴツイ男がいっぱい居るんだが。」
ジェニは徐々に車のスピードを上げながら返事をしたが、顔が少々こわばっている。
「へぇ・・・それは私も知らないねぇ。じゃぁ・・・あのずっと後ろを付けてくる車は祭りの関係者かい?」
俺は車の窓を開け、後ろの車を見る。そしてギリギリで頭を止める。
チュン
ちょっと髪が落ちた・・・?
顔を出した所を狙われたのか、元々今から撃つつもりだったのかは分からないが、明らかに俺に向けた射撃。
「あぶね。撃ってきたぞ?」
「銀河きゅんふつぅだね?」
確かに。だが宇宙空間に放置されるほど怖い事も無い。それに・・・。弾丸の動きは見えているから。
「銃撃戦になったらヤバイ。一旦ウチに行くよ!」
ヒィーーーーーーン
ジェニがアクセルをめいいっぱい踏むと、あっという間に加速し、後ろの車を置き去りにした。
「ふあー。はやいのー。」
加速の反動で後部座席を転がったエリーは、俺の膝に頭を乗っけて驚いている。
「ジェニ様!スピードを出し過ぎでは!?」
「もう着くよ!」
あっという間だった。
加速してからは本当に、魔法の力って偉大だわ。ラビスに衝撃や振動がほとんどない事を何者かに感謝する。
「今日は他の兄弟たちも集めてあるから、ちょっとほとぼりが冷めるまでお茶してから行こうか。」
ほぅ。ロペの兄妹。ロペ男にロペ娘・・・ちがうか。
どんな人たちなのか気になるなぁ。
ーーーーーーーーーーー
前に来たときはもっといっぱい連れてきてしまったが、今回は四人だけだから静かなものだ。
と言うかそれが普通なのだが・・・。
「なんか怒るねぇ?」
「俺のせいかね?」
「気にしなくていいさ。」
前に来た時と同じように、玄関の扉は自動的に・・・では無くメイド二人が開けてくれた。
「「お帰りなさいませお嬢様。大奥様。大旦那様。」」
んん??
何か俺の呼ばれ方がおかしくないか?
シェリーと弥生はキャッシュマン邸のメイドの中でも最古参のメイドだという。
二人ともエルフにもデーモンにも見えないのだが・・・。
「あらあらあらあら~大旦那様どうなさいました~?」
「いや。なんでもない。」
俺たちは応接室でしばし休憩する。
「大奥様にご報告がございます。今朝方早く連合軍の艦隊がコロニーに入りました。
それの原因かもしれません船も多数・・・恐らく海賊でしょうが・・・あと、食堂の方に皆さま揃い踏みでございますので、お急ぎのようでしたらお早めに。」
「海賊ねぇ・・・。屋敷の防壁を戦闘レベルに引き上げな!」
「イエスマム!」
弥生はそのやり取りの跡、どこかへ走り去っていった。
「では~皆さんで食堂へ行きましょうね~。」
シェリーの性格なのだろうか、彼女はいつも通りの応対をしてくれる、
俺たちはシェリーの跡にに付いて応接間から衝動へ移動した。
漫画みたいなお屋敷だよなぁ・・・。どっちかというとホテルの様にも見える、
この数えきれんほどの部屋数は何用なのだろうか?金持ちと言うのは良く分からんな。
そうして食堂へと足を踏み入れると、似たような顔ぶれがずらり・・・十一人・・・。
直系の家族だけでこの人数だろ?ちょっと多くね?手かロペ大家族過ぎじゃね?
俺の感覚が昔のままだからかな?この世界では普通なのかな?
「あらん?貴方がロペの旦那様ね?さっこっちへ・・・「いや。銀はこっちだ。」あら・・・お母さま?」
俺はジェニに促されるまま、所謂社長席のど真ん中へ座らされる。
めっちゃ注目を浴びているんだが。すげー居心地が悪いんだが。
「おいジェニ?一体何のまね・・・「もう知っているかもしれないがこの男が雨宮銀河だ。」ちょっと・・・。」
さっきからジェニはちょっと喰い気味に被せてくるな?
「お義母さんちょ「そして私の旦那様になる。」は?」
中年を過ぎ、初老と言っても過言ではない位の男性が発現しようとしたところまたもやカットイン。
誰にも何も言わせまいとするジェニの意志がよく見える。
・・・は?
いまにゃんと?
「フフフ・・・あたしは尽くす女だよ?」
がたがたがたっ
「おばあ様!そいつは一体誰なんだ!」
「ばーちゃん!冗談にしてはきついぞ!」
「おばあ様!私にも紹介してくださいまし!」
「・・・めでたい・・・?」
「きゃー!ジェニ様カッコイー!」
「ばーば・・・貪欲・・・。」
反応は様々だが、一番俺がついて行けてない。
「それは別にいいんだが・・・本気か?」
「女にそんな事言わせるなんて・・・。意地悪だねぇ?」
ちょっともじもじしているのが可愛い・・・が・・・。
「何故・・・?って聞いて良いのか・・・?」
俺の横に座るジェニは、俺の耳に口を寄せ、そっと囁いた。
「好きになっちゃったもんは仕方ないだろ・・・。どうしてもって言うなら・・・今日全部終わった後部屋に来な。」
「む・・・わかった。」
「おーいおーい、何こそこそしてんだよ!めでてぇ話じゃねぇか!で?式は何時上げんだ!?
会場は抑えてんのかよ?招待客は・・・・。」
気の早い奴も居るんだな。俺と同い年位の奴は何て―んだ・・・?
「フォルゥ?自己紹介ぐらいしな?」
「あーそうだったな。って言っても俺から順番じゃな・・・。兄貴から行くか。」
「そこは私からだろ!?」
銀髪に染めた男兄弟が取り敢えず仕切ろうとするが、父親と思わしき影の薄い御仁がそれに待ったをかける。
「私は・・・。「順番と言うなら私が最初ね?」はい・・・。」
「初めましてぇ。トレナ・キャッシュマン・・・十八歳でーす。」
「げ・ゲルフ・キャッシュマンだ!次っ。」
「お・・おぅ・・。(スルーするのかよ・・・。)フォルネウス・キャッシュマンだ。」
「エスト・キャッシュマン・・・。むぅ・・・。割と・・・。」
「アーニーでーっす!おねーちゃんって呼んで・・・いいのかな?あれ?私がお爺様って言うのかな?」
「お爺様って・・・私たちとほとんど変わらないでしょうに・・・キャンディよ。」
「アーケロンだ。アメリア姉さんより下だ。」
「オルセイです。姉府たちもお世話になっていますようで。」
「昇竜。」
「しょうにーもうちょっと紹介しようよ・・・。あっパメラです。一番下です。」
「・・・ゲルファー・キャッシュマンだ。」
「雨宮銀河です。えー。ロペたちには世話になっています・・・いつの間にか夫婦になっていました。」
しまった・・・余計な事を言ったか・・・。
「ロペちゃんらしいわねぇ。見つかったらだめよ?」
母親の言葉じゃねぇ・・・。
にしても個性的なメンツが揃っているな。年齢的にはロペとアメリアが四女と五女になるなら、
キャンディ、アーニー、フォルネウス当りと同じぐらいか俺は・・・。
「大旦那様、そろそろイオタ邸へ向かわれませんと・・・。」
スケジュールを抑えられている!?
弥生は全壊俺とあった時よりもかなり近い位置に陣取って、俺に話しかけてくる。
控えめな胸が当たっているんだが・・・。
「外が落ち着いたか・・・?分かった。皆さん申し訳ないが・・・。
「何と呼べばいいかな・・・一応弟でもあるし、銀河。と呼ばせてもらうが、俺たちに敬語など必要ないぞ。
寧ろそうしなければならないのは俺たちの方だしな。」
「そうそう。まさかジェニママが結婚したいなんて言うと思わなかったもん。」
ゲルフとアーニーが俺を気遣ってくれる。
「じゃあ遠慮なく。・・・悪いが・・・とそうだ。皆は知っているのかな?海賊らしき奴らがうろついているの。」
「無論。兄者、我らは問題無い故、用事を済ませて来られよ。」
古風なのは昇竜か。下から二番目なのにしっかりしているな。
って言っても成人していない訳じゃ無いからなぁ。
「むしろ銀河兄さん?の方がちょっと心配なんだけど・・・?」
見るからに品行方正っポイのがオルセイか。
「何だったら俺がついて行くか?キャンディもつれていけば身の安全は保障できるぜ?」
乱暴な物言いの中にキラリと光る気づかいが出来る男。フォルネウスだ。
キャンディは、あまり歓迎していないのかこちらを見ないが・・・。
「私は構わないわ。行くなら早く行きましょう。嫌な予感がするわ。」
ちょっといい奴な感じ?
「そうだな。銀河。私も行こう。何、同席する訳じゃ無いさ。これでも元冒険者だ。
キャッシュマン一族は皆、成人を迎えると共にギルドに登録する。腕はある。大丈夫だ。」
何このお姉さま、超カッコイイ。守られちゃう系男子になるか俺?
「皆好き勝手言ってるけど・・・。この中で一番強いの銀河きゅんだからね?」
ロペも流石に上の兄弟がいる中では前に出て来ないな。
「そうですね・・・。ですが見た所、レベルを上げたりはしていないようですが・・・。」
「ぉ?鑑定ってやつかい?」
俺を鑑定スキルと思われるもので見たのはアーケロン。ワイルド系ロン毛の弟、一番ガタイのいい男兄弟だ。
外見に似合わず慎重さがうかがえる。
「はい。レベルゼロという事は、まだダンジョンに入っていないんですよね?ロペねぇ。
さっきの言葉は・・・。」
「勘違いでも間違いでもないよ。私だって今は銀河きゅんの次位には力があるんだから。
私はレベルもある程度上げているし、ちょっと事情があって強くなったから。最低限の人数で来たんだよ?」
「最低限って・・・ロペぇ。仲間はどのぐらいいるんだ?」
「うーん銀河きゅん何人だっけ?」
「あー・・・。六百九十・・・八人?だっけ?」
「中規模艦隊かよ・・・。」
「実際そんな感じだな。」
「マジかぁ・・・。面白そうじゃね?銀河ぁ。俺も行くぜ?」
「・・・エストおねぇさま。私も参ります。」
「む・・・なら私も行こう。やはり少し気になる。」
結局大所帯で行くことになってしまった。
「銀河きゅんアイアンナックルは使っちゃダメかなぁ?」
「駄目だろそれは!まだ言ってんのか・・・。」
「バグナグよりはランクダウンしたんだけど・・・。」
そう言いつつロペはポケットか、らバグナグとアイアンナックルの両方を取り出す真似をする。
実際にはナノマシンで作り出しているのだが、まだ兄弟たちには秘密にしておくという事なのだろうな。
「大旦那様、お車の準備が出来ました、お急ぎください。」
だから弥生近いって・・・。もう密着しているんだが・・・。
ーーーーーーーーーー
バスだな。というか、軍用トレーラーと言うか。
「普通にこんな厳つい車が出てくるとは思わなかったわ。機銃が付いている車とか初めて乗ったわ。」
「何だったら撃ってみるかい?」
「もぅ・・・駄目に決まっていますわ。冗談ですわよ?」
「あはは・・・わかってるって・・・。」
ちょっと・・・ほんとにちょっと触ってみたかったりして・・・。
にしてももう着くのか、直ぐ近く何だな。
「この辺りは軍役上がりの一族が多く暮らしている地区なんだよぅ。」
「成程ね。私兵なのか知らんが、物々しい警備体制の家がやけに多いと思った。」
「雨宮さんもう着きますので降りる準備を。」
「おぅ。」
立派な門構えの門をくぐる前に、イントたんが車から顔を出し、セキュリティーシステムにアクセスする。
すると門が自動で開き、車は敷地内に入った。
「ロペんちに劣らずって感じだな。でっかいわぁ。」
「多くの客人を招き入れる文化があるからですわ。客室が多いほど権威がある・・・そんな古い文化の踏襲ですわね。」
それにしても・・・初めて見た時からずっと気になっていたのだが・・・。
キャンディのこの何と言うか・・・アホ毛?一体どうなっているんだ?
針金でも入っているのかとも思うが・・・いや・・・そんな事は流石に・・・。
「な・・なんですの?」
「いや・・・髪・・・気になってさぁ。みょんって・・・。」
つむじ辺りの毛だろうか?一本・・・では無いのだろうが・・・こう・・・みょんっって感じで先端がくるっとカールしている。
触りたい・・・。
「そ・・そんなに見ないでくださる・・・?」
「うむ・・・すまん。」
イオタ邸玄関に到着した俺たちは、応接間に通されるが・・・。
「おばあさまはやはり自室にいらっしゃるのですね?」
「はいお嬢様。奥様も旦那様もお仕事で出られておりますが・・・。」
「構いません。おばあさまのお部屋に行きます。」
「しかし・・・。」
「もう閉じこもっていられる時間は終わったのです。今から、責任を取っていただくので。」
イオタ邸の使用人たちがにわかにざわめく。
「行きましょう雨宮さん。」
結局応接室にキャンディ、エリー、エストを残し、俺、ロペ、ジェニ、イントたん、フォルネウスでバーバラの自室へ向かう。
「フォルネウスも残っていても良かったのに。」
「みずくせぇ事言うなよ。」
こういう奴か。
一つの部屋の前に立ち止まり、イントたんがノックをする。
「おばあさま。いらっしゃいますね?入りますよ?」
「お・・おじょうさま!」
なんだかイントたんは興奮気味のようだ。メイドさんの制止も聞かず、扉に手を掛ける。
ガチャガチャ
「鍵がかかっているねぇ?」
ロペはメイドさんに向けて質問をする。
「はい・・・お食事の時間以外はずっと・・・。」
「食事も中で?」
「はい。」
ここは俺が・・・と思ったが、ロペに制止され、俺はその場に踏み止まる。
「古いタイプの鍵は開けやすいねぇ。」
かちゃ
一瞬じゃねーか。どこの大泥棒だよ。
ロペの見事なピッキングテクによりあっさりと開く扉。
「誰が勝手には言って良いと言いましたか!!!」
すっげぇ声・・・。
まだ部屋の外にいるにもかかわらず、その声に乗せられたプレッシャーはすさまじいものだと感じる。
イントたんも少し怯むが、それでも構わず扉を開け俺たちは中に入った。
部屋の中は薄暗く、お世辞にも大金持ちの家の当主が済んでいる部屋とは到底思えないほどの汚さだ。
そして臭い。
「バーバラ・・・。何やってんだい・・・。」
「ぅっっ!!ジェニ先生!!」
バーバラはジェニが居る事に気付くと反射的に、椅子から立ち上がり姿勢を正す。
俺はこちらを向いたバーバラの後ろの状況に親近感を覚えた。
ネトゲやってる・・・?
「ロペ?あれは・・・。」
「ん?」
ジェニがにらみを効かせる中、俺たちは部屋の中を捜索する。
VRシステムだろうか?ゴーグルのような端末が有り、ゴーグルを動かすと、モニターに見える画面も連動して動いている。
「おっ?こりゃぁスペースアーク2だな・・・。良い趣味してるぜ。」
ゲームの名前だろうか?
モニターには沢山のアバターが映し出され、こちらを見て様子を窺っている様だ。
「いきなりキャラが止まって、返事が無くなれば気にもなるか。」
フォルネウスが言うには、VRMMORPGスペースアーク2は、戦後間も無く発売された、ネットワークゲームの中でも、利用者数トップを誇る大人気ゲームなんだとか。
キャッシュマン邸の中にも多くのユーザーがいるらしい。
「俺も買おうかな・・・?ゲーム久しぶりにやってみたい・・・。」
「アトレーティオに行ったら買いにいこっか。」
「うむ。」
俺達がそんな話をしている中、ジェニとバーバラはそれぞれ話すことがあるらしく、昔話に興じている様だ。
「そっちの話が終わったら教えてくれ。」
「ちょっとあなた達!人の端末を触らないで!」
まぁ・・・普通の反応だわな。
ここから見る限り、婆とは聞いていたが・・・ジェニとそんなに変わらなくね?
「おばあさまの容姿ですか?」
イントたんが俺の視線に気が付いたのか、俺の疑問に答えてくれる。
「我が家は、人工人間の一族ですので。ある程度まで成長するとそこで成長も老化もしなくなるんです。寿命も有りませんし、外囲による死以外は後はそう病気とか、そういうモノでしか死が訪れない種族と言われています。」
なんとまぁ。面白い・・・と言うか都合のいい種族も居たものだ。
「成程・・・。じゃあ、人工人間種の人達と仲良くなれば、俺に孤独は訪れないって訳だ。」
「雨宮さんには私が居ますよ?」
によによと笑うロペに、イントたんは俯き、またバーバラの端末を弄り始める。
「銀、ロペ。こっち来な。」
ひと段落着いたのだろうか?、顔を青くしたバーバラと、疲れた表情をしたジェニがそこに居た。
「粗方こっちの事情は話したよ。」
「うん。で?何か言い残す事はあるの?」
ロペのその脅しとも最後通告とも取れる言葉に、バーバラの額から冷や汗が伝い落ちる。
「も・・・申し開きもございません・・・。」
バーバラはそう言うと腰を下ろしたソファーを降り、その場で土下座した。
「立って。」
「え?」
「たって。」
「は・・ハイ・・・。」
「お・・おいロペ・・・なにを。」
そうか、フォルネウスは知らないもんな。
「イントたんフォルネウスを頼む。」
「・・・はい。」
土下座などどうでもいいのだろう。ロペはウォーミングアップ済みだ。既にあったまっている。
「一発でとりあえず我慢してあげるから。後は銀河きゅんに任せるし。」
「っっ!!」
顔を強張らせ慌てて歯を食いしばるバーバラ。
ゴキッ
頭蓋骨まで浸透するような重い拳がバーバラの顎に吸い込まれていき、バーバラはその場で崩れ落ちた。
「一応生きてる。まだ殺すわけにはいかないし。・・・。」
俺はロペの肩を抱き、こつんと頭を触れさせる。
「よく我慢した。」
「うん。」
ロペの拳はナノマシンが無ければ、爪が皮膚に食い込み、出血していたであろう強さで握りしめられている。
俺はこのままほおっておいても話が進まないので、ナノマシンでバーバラを回復し、無理やり起こす。
バチッ
「ギッ!」
「おっおい!銀河何を・・・!」
「気にすんな。その内分かる。」
目を覚ましたバーバラはぽつりぽつりと、最終防衛ライン敗北時の話を始めた。
「あの時の私たちは、政争に明け暮れ、自らの立場を守ることに精いっぱいになっていました・・・。
それ故に・・・。自分の元から兵を割く事を皆躊躇ったのです。」
一旦言葉を切り深くため息をつくバーバラ。元軍人とはいえ今はただの引きこもりだ。
ナノマシンに寄る強制回復に強制気付けで、かなり体力を消耗したのだろう。
「それだけじゃないでしょ?」
「えぇ・・・。救難メッセージを黙殺した後。直ぐにある人物から接触があったのです。
それは、デルモスト・オ・リジンと名乗る男でした。」
オリジン・・・?
「撃ち漏らしていた奴もやっぱりいたから・・・。」
「その男は私たち当時の軍首脳部に、助けを求めてきたのです。移住したいと・・・。」
んん・・・?
「向こうの世界が消滅するから?」
「それが・・・理由としてはそれも有るのでしょうが、私たちに伝えられたのはもっと違う内容で・・・。」
「別の原因もあったと?」
「ええ。彼は、王を止める為に力を貸して欲しいと、そう言ってきました。私たちは管理者様方が全滅した事実をそこで知り、慌てて海王星圏に軍を配備しました。しかし・・・。」
「誰も帰ってこないと。」
「はい。その後一つだけコロニーが無事だという事を知り、生き延びた彼らの為にそこに部隊を派遣し、生活基盤を支えられるようずっと支援を続けてきました。」
「罪滅ぼしのつもり?」
「私の場合は・・・ですが・・・。」
「他の奴らは違うか・・・。やっぱり。
まぁイントたんのおばーちゃんだし、私も昔は良くしてもらったから、この辺でいいや。」
「そか。満足したならそれでいいか。・・・しかし向こう側も一枚岩では無い様だな。
クルファウストに又聞かなきゃいけない事が増えたな。」
聞いてみれば人間らしいけど、実に下らない。そんな話だった。
気になる事も増えてしまったし、ここで我慢した分、後のメンツはきっとえらい目にあうだろうな。
なむ。
「アンタはこれからどうするんだ?ずっとここで引きこもりでもするのか?」
「失礼なっ。私はこのスペースアーク2を通じて各方面に情報を集めて回っていたのです。
こう言っては何ですが、私も元は軍の一翼を担っていた身です。私兵とはいえ相応の力は持っているつもりです。」
ゲームで情報集め・・・。
俺は何故かほっこり温かい気持ちになった。
「ちょっと!何故そんな子供を見守る父親のような優しい笑顔になるのですか!?」
「いやいや・・・頑張っているんだなぁって・・・。」
ふぁいっと。俺はそう心Ðの中で応援する。
「目指せ脱引きこもり!」
フォルネウスが余計な事を言う。
「そういう意味でしたのね!!失礼な!別に外に出る必要が無かっただけで出られない訳では無いのですよ!」
しかしバーバラの言葉からは、引きこもりとツンデレを足したような言葉に聞こえるだけだ。
引きこもっている訳じゃ無いんだからねっ。
しかしまぁ冗談はさておき、ネトゲで情報収集とかどのぐらいのモノなのだろうか?
「じゃあさっそくその情報とやらを教えてもらっても良いのかね?」
バーバラは買うと三・四十万クレジットはするであろうマイチェアーに座り直し、端末に手を伸ばす。
そしてゴーグルを身に着けると、部屋の薄暗さの理由が分かった。
「おぉー。ホログラフ!」
「冥王星宙域の海図か?」
「そうです。ジェニ先生が商業活動から、力を蓄えているのは知っていましたから。
私は流通に特化した力を蓄えていたのです。」
バーバラはそう言うと、ホログラフにいくつかの企業のロゴを表示した。
スープレックスグループ・・・?
「なんでやねん。」
「何がですか?」
「いやなんでも無い。」
まさかイントたんの名前の中から引っこ抜いたのか・・・?
「あぁ。そうだったのかぁ。スープレックスグループといやぁ、資源輸送を主だった産業にして、
人員輸送食、糧輸送、あらゆる輸送を一手に引き受ける企業グループじゃないかい。」
ロペもロゴを触り、リンクを開いて企業の情報ページを開きながら感心している。
「うーん、輸送ねぇ。確かに凄いんだけどぉ・・・。私たちには必要ないかもねぇ?」
確かに・・・。少なくとも今すぐ必要では無いな・・・。だが・・・。
「異世界の住人が全員この世界に移住してきたら、必要になるかもだな。」
「まぁその様なことがあれば、連絡なさい。食料でも生活物資でも送り届けましょう。」
俺としては若干上から目線っぽいのが気に障る感じがするんだが・・・。ロペは・・・。あっ。
ガターン!
「い・・・イントたん!?」
「何時までふんぞり返っているのですかおばあさま!!この世界の上級管理者様なんですよ!?ロペねぇさまは!いえ!ベロペ様は!!」
お気に入りのマイチェアーごと引っ繰り返されたバーバラは、ズレたゴーグルを外し、顔面蒼白と言った状態になっている。
「ジェニ・・・さっき話したって言ってたじゃん・・・。」
「その事は伝え忘れていた・・・。」
「ジェニ先生・・・!!」
なんでそんな大事な事を!と、バーバラか刺さる視線をジェニは顔を反らして口笛を吹く。
そしてもう一度バーバラは額を床にすりつける。
「管理者様とはつゆ知らず・・・。!無礼お許しください!!!
戦う大人の土下座は美しい。まさに誠意。誠心誠意と言う言葉を表現するとこうなる。
そう言う決意が漲っている様だ。
「もう良いって・・・。これから馬車馬の如く働いてもらうんだから。」
ほほう。
「それは例えばどんな・・・?」
「ティタノマキアでマギア級を量産しようと思うの。」
バーバラは顔を上げ正座に姿勢を変えた。
「部品の調達ですか。」
「ちょっと違う、資源の調達。部品はメーカーの方で作るれるから。」
「承知いたしました。それと・・・。イント?ちょっとこっちに来なさい。」
バーバラは若干こめかみに力が入っている、しかしイントたんは俺の後ろに隠れて出ようとしない。
「先ほどから気になっていましたが・・・。あなたは一体誰ですか?」
俺は・・・と言いだそうとしたがそれを制して、ロペが間に入る。
「銀河きゅんは私の旦那様だよ?頭が高くない?」
「申し訳ございませんでした!!!」
どうも権力には弱いらしい。あっさり俺に向かって頭を下げるバーバラ。
遠慮とかしない俺も俺だが、ロペもまたまぁ・・・自重しないというかなんというか。
そんなこんなで、バーバラには物資方面での支援を取り付ける事に成功した。
ロペの怒りも一応収まった・・・のかな?他の三人に向かう事はまず間違いないだろうな。
「そうだ。忘れるところだった。他の三人の居場所は分かる?」
「はい。現在地迄特定できます。」
現在進行形でストーキング中かよ・・・。
「ダイゴもベイルーンもまだ現役ですから。ベイルーンは冥王星艦隊総司令部のある軍事コロニーアストラの・・・自室で・・・若い女性士官をレイプしていますね。」
ひでぇ。色々ひでぇ。どっちがだれがって?どっちもだよ!
・・・でもじっくり聞いちゃう。
「ダイゴは火星の実家で軟禁されているようですね。使用人に手を出して勇者イチロー・・・
祖父に折檻されたうえで地下室に入れられているようですね。」
子供かっ!
「グレンは天皇冒険者ギルドのギルドマスターになっていたわ。所謂天下りね。仕事もしないで高い給金を貰っていたっていう話ね。そして若い冒険者に手を出して・・・。」
「捕まったのか?」
「えぇ。今は無職ね。遊び歩いているみたい。」
おっさんたち全員が性犯罪者だって言うのは良く分かった。
「ふむ・・・海王星方面には誰も居ないか。じゃぁ・・・。」
「銀河きゅん後回しにしよぅ?ちゃんと我慢するから。」
「ロペがそれでいいならそうするか。」
「ん。侵略者に対応するのが先。」
「で・・・バーさん。侵略者に関しての情報は他に何かないか?」
「誰がバーさんですか誰が!ごほん・・・。えー。そうですね・・・。
あぁあなた方が疑問に思っていた、海王星圏コロニーの食料事情についてですが・・・。
あれは私が物資を流通させています。それ故に飢餓などの混乱は回避できている筈です。」
「あれはヴァーさんの指示だったのか。今後どうするかはまだ決めかねているから、
取り敢えず物資についてはそのまま継続してくれ。」
「分かりました。では今まで通りに経済と流通は維持します。これからどうなさるので?」
そうだな・・・。侵略者の所に行くなら・・・ダンジョンに入る必要があるんだよなぁ?
「ダンジョンって素手で行けるもんか?」
「また無茶いってんな。無理だっつーの。話の流れからすっと海王星ダンジョンに行くんだろう?
あのダンジョンは存在が確認されていないんじゃなかったっけ?」
「ダンジョン自体はあるよ。でも、冥王星ダンジョンと同じ規模のダンジョンだから、素手で行けるのは銀河きゅんぐらいじゃないかなぁ?」
「「いけるのかよっ!!」」
フォルネウスとバーバラの声が重なった。
「でもまぁ持っていて損はなさそうだし、武器買いに行こうか。」
「銀河きゅん買う必要あるの?」
確かに・・・。無いな。
「俺は要らないと思う・・・が。見たり触ったりしたいのだ。そうすれば再現できるし。」
「んあぁ。なるほどぉ。それならアリだね。」
「よっし。じゃあ次はアトレーティオか!」
「えぇ・・・。にーちゃん付いてくるの?」
ロペは心底迷惑そうな顔でフォルネウスを突き放す。
「なんだよ!いいじゃねぇか!俺は暇なんだよ!」
「「「無職乙。」」」
「ニートじゃねぇ!」
言ってねぇし・・・。
「じゃあまた買い物だね。あ・・・。」
「どうしましたか?」
部屋を出ようとしたところで、ロペが何かを思い出したようでバーバラに質問をする。
「今この辺に居る軍と、海賊。あれは何狙いか分かる?」
「あぁ・・・。軍は私を探しに来たのでしょうね。海賊の方は分かりかねますが・・・餅は餅屋と言いますわ。」
あー。エリザベスにでも聞いて見ろって事か。ちょっと吊るして聞いてみるか。
「分かった。じゃまた。」
「ええ。吉報をお待ちしています。」
俺たちは応接室の三人を拾い、イオタ邸を出た。
海賊は一体何をしに来たのか。分からない事はまだあるが、とりあえずは移動だな。
ーーーーーーーーーー
帰路の車内にて
「ところでみんな・・・。スペースアーク2ってやっぱり有名なのか?」
「ほえー?銀ちゃんもゲームするの?」
ゲームは好きだ。現実感の無いものの方が俺は好みだな。
「昔よくやっていた。だが・・・。ああいうゲームはお話の中にしか出て来なかったからなぁ。
実際に触ってみたいなーと。」
「では、アト4に行ったら、専門店をのぞいてみる?」
専門店?ゲームショップ的なものがあるのか・・・?
イカン・・・コレクター心が疼く・・・。
「行こうか!・・・一式そろえるとどのぐらいかかるんだろうなぁ・・・。」
「ほぇ?そんな必要あるの?」
え?
「銀河きゅんそのままネットワークに侵入できるじゃん?」
・・・生身でゲームの中に入れと・・・。
「何かチートな感じがプンプンしますね?」
「やっぱ普通にゲームしたいわ。」
ーーーーーーーーーー
「で・・・なんか人数が増えているんだが・・・?」
「あ・おにー様お気遣いなく!」「兄者。適当にやっているので・・・。」「今更じゃねーか?」「買い物のついでですわ。」「ここがブリッジかぁ。最新型っていいよねっ。」
何時の間にやらキャッシュマン兄弟が五人も増えたんだが・・・。
「ロペ?」
「私は知らないょう?勝手について来ちゃったんだから・・・。」
「ちゃんと面倒見ろよ?」
「ぅえぇ・・・。」
ロペは自分のコンソールに顔を埋めてひらひらと了解の意志を示した。
しかし・・・。エストの位置が近い。
艦長席についた俺の真後ろにぴったりくっついていて、本来なら使徒は回る仕様なのだが、迂闊に回せない。
吐息が耳に掛かりそうな位の距離間である。
「エストさんや・・・。何だか近くないかい?」
「銀河さんや。そんな事はありませんよ。」
何だこのやり取り。物理的に近いっつーの。
まぁ良いか。
「今から出港するから、どっか座れる席使って座ってくれよ。座らなくても安全だけど、一応な。」
艦長席の周りはいざと言う時にマギアラビスのソロ用コックピットになる為に予備のシートなどは設置されていない。
エストはしぶしぶ副艦長席の隣に有る予備シートに腰かけパメラを膝の上に乗せた。
「エストお姉さま・・・?何故私を膝の上に・・・?」
「なんかこう・・・抱き枕的な?」
「ほら、とりあえず開いている予備シートに座ってくれ。皆チェックが終わり次第発進準備。
準備出来次第各艦順次発進だ。」
モニターに映るフリースコロニーの貸しドッグ、逆噴射で距離を取り、ゆっくり旋回する。
すると少し離れた所に、何故か連合軍の艦隊が何かを待ち構えている。
「何だあれ?」
五・六隻は居るだろうか?砲塔は何故かこちらを向いている。ちょっと警告してやらないといけないかなぁ?
「ロペ?」
「ん。もう送ったよ。あと十秒そのままでいると主砲で消し飛ばすよって。」
まだ試射もしていないというのに・・・。
変なフラグでは無いといいんだが・・・。
「雨宮、前方の連合軍艦隊より入電、止まれ、妖しい動きをするなら撃つ。との事だ。」
・・・イラッ☆
「新庄、カウントダウンを送ってやれ。センリ、ディメンションブラスター起動。」
「わかった。」「了解!起動シークエンス開始。」
各艦に俺の指示が届き、十隻全ての艦の中央部から、四股に分かれたウルテニウム合金製の次元収束針が展開する。
これにエネルギーをチャージしてそのまま突っ込むだけでも十分攻撃力があるが、放射攻撃としてチャージしたエネルギーを解き放つことで、広範囲に空間を歪める効果を散布する。その後、ねじれた空間は魔力によって操作が可能だがディメンションブラスターではプログラム通りに、捩じ切れるまで空間を歪めるようになっている。
「ディメンションブラスターシステムオールグリーン。起動かんりょ「チャージ開始。40%」りょ・・了解!」
「チャージカウント表示します。10・9・・・。」
「カウントを送信する。8・7・6・5・・・。」
「銀ちゃん連合艦隊より入電、直ちに武装を解除して投稿せよ。」
「銀河きゅん・・・?3・2・1・0チャージ完了。」
「チャージ40%安定しています。」
・・・。
「目標敵旗艦上部50っセンチ。」
「っっ!!了解っ・・・。」
「センリ。トリガーは・・・「いけます!」任せる。」
「よし撃て。」
モニターに映る敵艦隊に向かい、違和感のレベルを越えないユラユラとした何かが射出される。
そして・・・。
ーーーーーーーーーー
連合軍旗艦
「ぐぬううう。奴らは何故武装解除しないのだ!!」
(民間船だからに決まってんじゃねーか・・・。命令なんか通用しねーっての・・・。平時なのに。)
「あー・・・。もしかしたら混乱しているのかも知れませんね?」
「ふふっ。海賊共め。我が海賊討伐大隊旗艦『エクスプロージョン』に恐れをなしたか!」
(んな訳ねーわぁ・・・。どう見たってあっちの方が最新型の・・・!?)
「前方の民間戦艦より入電、あと十秒そのままでいるなら主砲で消し飛ばすと・・・。」
おにぎりの様な三角の頭を、てかてかと見せつけるように振り、額と思われる場所に青筋が浮き出している。
「ぐぬぬぬぬ!!!止まれ、妖しい動きをするなら撃つ!照準合わせ!」
(あれヤバい・・・。なんか物凄い魔力の反応が・・・・。)
オペレーターの青年将官は、手元のコンソールから、脱出艇のメンテナンスをしている部隊に、何時でも出られるようにしておくようにと、文章でメッセージを送った。
おにぎり頭の一歩後ろに控えていた、気難しそうな細身の将校はおにぎりの頭に手を置き、自分の方を無理やり向かせる。
「貴様さっきから見ていれば・・・。一体何をしている?民間人に砲塔を向けるなど、軍法会議を通り越して、起訴ものだぞ!」
起訴、と言う言葉に反応したおにぎりは、自分の失敗を認めまいと正当性を主張する。
「な・何をおっしゃいますか!私は今作戦行動中ですぞ!それ・・・「極秘の作戦だ!!!」・・・。」
通常の作戦行動とは違い、極秘作戦には民間の協力は得られない。何故なら、その民間ごと巻き込む恐れがあるからだ。
避難勧告などをして、作戦に支障のない状況を作り出すのが、将官としての腕の見せ所なのだが・・・。
「第一!「民間戦艦より超高エネルギー反応!!」えっ・・・。」
「アスター中尉!状況は!!!」
「だ・・・脱出を推奨します!!!」
「全艦隊緊急退避!!!」
ーー4
「マッサー中佐!こちらです!!」
ブリッジクルーは、各自足元の緊急脱出ハッチより滑り降り、脱出用シャトルに搭乗する。マッサーと呼ばれた将校もそれに続き脱出を図る。
そして一人取り残されたおにぎり。
ーー3
「な・・・なんだというのだっ!!!私の艦隊だぞ!!!」
ーー2
「中佐!」
「もう時間が無い!直ぐに出ろ!!」
事前に艦内クルーにはアスターからのメッセージで通達されていた為、
逃げ遅れたものは居なかった。
「脱出後は!?」
「艦艇の下部に潜り込め!」
次々と脱出していくシャトル。訓練の賜物である。
一糸乱れぬシャトル捌きで全てのシャトルが脱出し、それぞれの艦の下に潜り込むように軌道を修正する。
(うっ・・・気持ちわる・・・。この感覚は何だ・・・?)
アスターが周りに居るクルーを見てみた所、魔力の扱いにたけたものが、自分と同じように体調の不良を訴えていた。
「一体何が・・・。」
ーー1
おにぎりは火器管制システムに張り付き、操作する。
「先に落してしまえば・・・」
ーー0
ぐにゅ
旗艦上部50センチ。狙い過たず。歪んだ空間はその周りの空間をもろともねじり、
その空間に存在するすべてをねじる。
「はぁっ・」
おにぎりは捩じれに巻かれ、こよりの様に捩じれる船の天井に巻き込まれ、弾け飛んだ。
(うぇぇぇぇ!!!やばいやばいやばい!!!)
「おっ・・・おえっ・・・!!全速ッ!!脱出だ!!!!」
魔力に鈍感なパイロットが羨ましい。アスターはそう思う。
同じように体調不良を訴えていた者達は、気を失ったり、嘔吐を繰り返している。
(脳髄が焼き切れそうだ!!!・・・死ぬか・・・?)
アスターが死を覚悟した時、魔力の波が消え、辺りの宙域に静寂が戻った。
ーーーーーーーーーー
「敵艦隊沈黙。全艦艇から脱出用シャトルの脱出を確認。勘のいい奴が居たようだな。」
「シャトルに通達。救助は必要か?」
俺は勝手な事を言っているな。だがまぁ俺はそういう奴だって事を知ってもらうにはいい機会なのかもしれんな。
・・・いっそ指名手配でもされてみるか・・・?
「銀ちゃん、救助要請六。全艦ラビスに収容するよ?」
「任せる。あ・・・ついでにフリースには戻らないと言っておけ。次の行き先はアトレーティオ4だ。」
「了解なの!進路修正、目的地設定オッケーなの!」
面倒な事はさっさと終わらせるに限るわ。
「主!シールド展開完了。」「シャトルの収容固定を確認しました!」
「良し、亜光速航行に入れ!」
そして俺達は、波乱の元になりそうなやつらをその腹の中に乗せたまま、ショッピングに出かける事にした。
ーーーーーーーーーー
マギア・ラムからこんにちは
私は雨宮様に選ばれた一番艦マギア・ラムの艦長、シンシャー・テルフォギア38歳独身。
幼い頃から魔法しか出来なかった。頭でっかちと言われたこの私が、艦長に選ばれた。
とても光栄な事だ。どうしよう・・・あ・・・感動して涙が・・・・。
「シンちゃんー?また泣いてる!?なんで!?悲しいことがあったの?」
「うっ・・・うっ・・・違うんだ。嬉しくて・・・。」
「まぁた思い出し泣き?しっかりしてよ艦長!!」
「すまなぃ・・。」
いかんせん私は涙もろい。涙腺が緩いのだろうか?直ぐに涙が出てきてしまう。
先ほどから私に話しかけているのは、一番艦副艦長の、イーリン・ゼンメツ。縁起でも無い名前だが、
それは彼女のせいではない。彼女は現月共和国国家元首マキゾ―・E・ゼンメツの孫娘だ。
これまた非常に嫌な名前だが、恐らく彼のせいでは無いのだろう。
「イーリンは訓練に参加しなくても良いのか?」
「したいけど・・・私はこっちの方が重要だから・・・。覚える事が多すぎて他の事なんてやってらんないよ!」
私も同じようなものだ。紆余曲折あったものの、何とか生き残り新しく職?を得て今や新人艦長。
身に付けなければいけない事は多い。
「でもそれが出来ると思ってもらったからこそ、いま私たちはここに居るんだろ?」
「そうだね!ボスから期待してもらっているんだよねっ!よーし!ヤル気出てきたぁ!」
この艦に足りないもの・・・。そこから始めていこうかしら。
そうね・・・。まずは機動兵器かしら。ロペ様はその内と言っていたけれど・・・。
きっと必要になるわよね。流石にこの中型戦艦をたった二機で守ると言うのが無理・・・?
ニ十機配備だけ聞けば数字として多いと思ったけれど、全部でニ十機だったから・・・。
十隻あるうち二機づつしか配備出来ないのは問題よね・・・。
オリジナルの新型機が有るっていう話も聞いたけど、量産される予定はあるのかしら?
駄目ね・・・雨宮様に聞かなければ解決しない事ばっかり・・・。私に何か出来る事は無いかしら?
あ、あと何も入っていいない部屋もいくつかあるわね。あれは雨宮様にしかわからないし・・・。
「あれ?私に解決できる問題が無い?」
困ったわ・・・折角艦長になったのに、仕事の出来ない奴って思われてしまうかも・・・。ぐすっ。
「また泣いてるし・・・。」
「泣いてない・・・。」
泣いてるけど・・・。
仕方ないわね。今は皆で訓練中だし、また今度ね・・・。
「私も体を動かしてこようかな・・・。」
「根を詰めるのも良くないよー?」
「ちょっと行ってきます。」
あー。雨宮様にお会いしたい。
別の艦に居るから無理だけど・・・。
私の力をお見せできるのが、戦闘中だけだし、印象に残るのもきっと大変ね・・・。
でも負けられない・・・。私にはもう何もないから。
ここが。ここだけが私の全て。
雨宮様の為に全てを捧げると誓ったあの日から。
新しい私になったの。
力を磨いて、女を磨いて・・・。私・・・もっと頑張らないとな・・・。
決意を新たに、シンシャー・テルフォギアはトレーニングルームへ向かうのだった。
フォルネウス・キャッシュマン 33歳 超人種 キャッシュマン一族の次男
マルチな才能を持つBランク冒険者。実力的には生身ではBランク止まりだが、本人曰く、スペースワーカーを使わせれば右に出るものは居ない。
との事。しかし現状その実力は定かでは無く、むしろ、冒険者よりジェニの後継者として経営の方に才能を発揮している。
態度や口調からは想像が難しいが、細かな気遣いの出来るビジネスマン。
しかし冒険者として大成する夢をまだあきらめてはいない。それ故ひそかに雨宮について旅に出ようと考えているが、
自身が役職のある立場に居る為、踏ん切りがつかず、どっちつかずの行動になってしまっている。
本人曰く、スキルは戦闘向きじゃない。これのせいで冒険者としては伸びないのかもしれない。との事。
エスト・キャッシュマン 35歳 超人種 キャッシュマン一族の長女
超人キャッシュマン一族の長女、成人後大学生と両立し冒険者ÐランクAを達成した生粋のエリート。
学生の頃は冒険者としてのあだ名『流星のエスト』として多くの女学生に慕われていた。
キャッシュマン一族としては唯一、火星ダンジョンをソロで中層まで到達した超人中の超人。冒険者としての実力は既にSランクに届いているという噂があるが、婚期が遠のくという理由でSランクに昇格することを頑なに拒んでいる。
軍には入らず冒険者一本でやってきたが婚活のため休業、太陽系各地の婚活パーティに参加するも本名がばれるたびに、言い寄ってきていた男性は離れていくため、冒険者として活躍し過ぎたことを後悔している。
しかしそんな考えもある中、火星ダンジョンの謎を解き明かしたいとも考えているが、今の実力では中層を攻略することが出来ない為、パーティを汲むことを考えている。




