EP22 襲撃 突貫 肉団子
だいぶ遅くなってしまいました。
グロ妄想注意回です。
カツカツカツ
俺は一人サーバールーム建設予定地へ向かって足を進めていた。
先頃実行したアンジーのスキル分析は、50%を突破した。
早い。早過ぎるこのぶんだと今日寝る頃には終わってしまいそうだ。楽しみなのは楽しみなのだが・・・。
若干恐ろしくもなってきたのだ。こんな計算や分析をあっという間にやってのけるナノマシン。
もう既に人の枠を超えてしまっているような気がする、俺では無くてナノマシンがだ。
実は俺もナノマシンに作られただけで、こういう記憶を植え付けられているだけかもしれない。
・・・何てな。そういう事が無いように実は、進化するにあたってちゃんと手は打ってある。と言うか、ナノマシンにはまだもう一人、人格が残っている。
初めからナノマシンとして存在していた千里、そのナノマシンと一体化した俺、そしてファム。
この三人の他に、明らかに別人が居る。今日この日までに一度だけ表に・・・と言うか俺のこの体の中の話だが。
超キャピキャピしていた時だ。あの後俺は、千里だと思っていたがどうやら違ったらしい。
ナノマシンが昔々に、暴走して直ぐ、転移したての千里を取り込む遥か昔。数百年前に一番初めに取り込んだ冒険者の女。
その人格が残っている。
今のところ理屈は不明だ。完全に暴走していたはずだったあの頃に、残る人格があるとすれば、それはそれは大層な精神力の持ち主なのだろう。
もしくは、相応のスキルを持ち合わせていたか。
・・・。最近はずっと俺の支配下にあるせいもあって、表に出る事も無いし、若干俺に対して恐れを抱いているところもある様だ。
我を出して良いのかどうか迷っているのが手に取るようにわかる。
今にして思えば、スペシアでは無くて、彼女を表に出してやったら良かったと後悔している。
結局エネルギーを無駄使いしただけだったからな・・・。
エレベーターに乗りF3に辿り着いた俺は、俺専用ハンガーと逆方向へ進み、サーバールーム建設予定地へと辿り着いた。
何もない部屋だが、とても広い空間だ。体育館位の広さはあるだろうか・・・いやもっとだな。
「さて・・・。」
さささっ
「ん?」
視界の端に何かが映る。この部屋にはまだ監視カメラが無いので、自分の目で追えるものでない限り中々認識できない。
運動能力はともかく、処理能力の低さと知識の少なさは俺の最大の欠点だな。
「おいだれだ?こんな所で隠れて・・・ってこんな何もない所でよく隠れられるな?」
・・・雨宮様。
「??誰だ?って言うか何処から声が・・・??」
・・・ここに・・・居るのですが・・・。
?
声はすれども姿は見えず・・・。
俺は何もない部屋をぐるっと見回すが、やはり何もない。
もしや忍者のように隠れ蓑の術でも?と思い壁に手を当て、微弱な電気を流してみるが特に何もない。
・・・あの・・・。
また聞こえる。・・・後ろか?
俺は直ぐ後ろには扉しかないと思いつつも、その扉の方に振り返ると、胸と唇にふにゅ。と柔らかな感触が伝わる。
そこで俺は彼女を認識することが出来た。
「何時からそこに・・・・。と言うか急になんかすまん。」
「いえ・・・その・・・。ずっと居たのですが・・・。その・・・雨宮様の後ろに・・・。」
何で後ろに!?全く気配を感じなかった・・・。と言うかホントに何時から・・・?、
「雨宮様がエレベーターに乗られた時からずっとです。」
嘘だろ・・・。俺一人で乗っていたと思っていたのに・・・。寧ろ、目で見えていなかった・・・?
「そうだったか・・・。という事はブリッジに何か用事でもあったか?」
「いえその・・・。ずっとブリッジに居ました・・・。」
え・・・?嘘だろ?・・・いや・・・おかしくは無い・・・。おかしくは無いんだが・・・。
「そ・・そうか。すまん。何か用があったか?・・・えっと。」
「サダコです。貞子・ジャスティオ―ン・・・です。」
貞子・・・。く・・・来る!?いや。そうじゃなくて。
俺はおもむろに顔全体を覆い隠すように垂らされている黒髪をパサッと持ち上げる。
くりくりした目が可愛い。薄いピンクの唇は飾り気無く綺麗で・・・。
美少女だ・・・。
身長はエリ―より少し高いくらいだろうか。と言ってもそんなに変わらないが・・・。
胸は・・・並より大きめかな?線の細さからしてみれば結構な大きさ・・・アンバランスさが魅力に繋がる・・・何と言うか・・・いいねっ。
「ん・・・何で顔隠してるんだ?そして気配を消していたのは何故だ・・・?」
サダコ俺は髪を抑える為に、サダコの頭に手を置いたまま顔を覗き込んだ。
サダコの顔が見る間に赤くなり、瞳が潤む。
「その・・・あの・・・うぅ・・・。」
「あぁ・・・別に責めている訳では無いんだ。単に理由が・・・。」
「はずかしい・・・の・・・。でも・・・。気配は別に・・・。何も・・・。」
む・・・悪い事を聞いたか・・・と言うか聞き方が悪かったか。
「恥ずかしい?」
俺がそう聞き返すと、口元に手を当て小さく頷く。
あぁ・・・。こういう奴たまにいるな。俺も似たようなものだったが、常に恥ずかしいと思うほどの事は無かったなぁ。
俺は彼女の情報をデータベースから引き出した。
ホーリー☆貞子・・・?・・・・?
情報がムラサメに紐づけられているな?
どれ・・・。
元Aランク冒険者・・・だと・・・?
俺は改めてサダコを見てみる。
流石に元A冒険者だけあって、四肢の鍛えられ方は尋常ではない。ほっそりとした体躯に似合わないほどの筋肉量だ。
しかし歪に変形する程では無いが、膨らむと言うより収束する、と言った方がいい成長の仕方をしている。
首元を良く見てみると、細い首だがしなやかで伸びの良さそうな・・・。
「あ・・あのっ・・・その・・・息が・・・・はぁっ!」
おっと・・・。
「すまんすまん。つい綺麗な肌だったもので。」
俺は悪びれもせずに言うが、特に気にした様子はな・・・い訳が無いか。顔面を真っ赤にして俺の手を握ってきた。
この力の入れ具合は・・・・。普通の人間なら既にミンチ確定だろう。
「ごほん。でだ。サダコは何か俺に用事があったんじゃ無かったのか?」
そう聞くと赤い火照った顔のまま、何かを思い出したようでおもむろに俺を見上げてくる。
「き・・・昨日言おうと・・・思っていたのですけれど・・・。い・・・一度もお会いできませんでしたので・・・。あの・・・。わ・・・私を・・・その・・・・っ。・・・ぐすっ。」
な・・・何で泣き始めた・・・?
俺は涙を流し始めたサダコに、子供をあやす様に接してみる事にした。
とりあえず何もないままでもなんだ・・・座布団でもいいか。
俺は二つの座布団を出し、座るように促す。するとなぜだろう?
座布団は二つ用意したはずなのだが、サダコは俺の膝の上に座ってきた。
「そう来るとは思わなかったぜ。お前意外と大胆だな。」
まぁ良いか。
俺はサダコが俺の胡坐をかいた足の上にちょこんと座って来たので、そのままの態勢で両手をサダコのお腹に持ってくる。
当たり前だが、温かいな・・・。何と言うか、不思議と落ち着く。
「~~~~。はぁわ・・・。あのぉ・・?」
こんな時に何だが・・・俺は自分の感覚の鋭さにちょっと呆れた。それは何故か。
お腹に手を当てる事に寄って、彼女の下半身に血液が集まってくるのが分かってしまったからだ。
この血液の動きは心当たりがある。
俺もリア獣になったもんだ。
しかしこのまま致しても仕方が無いのだ・・・。
俺は目的があってここに来た訳だし、サダコもそうだ。
いやしかし・・・。ずっとこのままの状態でいるのも逆に不健康かもしれない。
俺はサダコの首筋に舌を這わせる。
「はぁ・・・ぁぁぁ・・・。あまみやさまぁ・・・・。」
ーーーーーーーーーー
結局最後まで致してしまったが・・・。
「あまみやさまぁ。」
すりすりと俺の胡坐をかいた俺の腕の中で、満足そうに頬を合わせてくるサダコ。
「落ち着いたか・・・?」
彼女は何というか・・・。とにかく凄かった。人格が変わるとかそんなチャチな話じゃねぇ。
別人だろあれ。
俺は一瞬エリーが現れたかと思う位、驚いた。
今は元に戻っているが、戦闘状態にお互いが鳴った後、突如として豹変魔法少女のような感じになり、主導権を握ろうとしたが、もちろん俺が渡さない。
そして敵わないと判ったのか徐々に元に戻って今に至る・・・という訳だ。
このじゃじゃ馬め・・・。
「で?結局俺に何の用事があったんだ?」
「あふぅ。・・・配属のお願いに来たんだった・・・。」
配属?
「うん。私・・・ワーカーに乗ってみたいの・・・。」
あぁ・・スペースワーカー。
「乗ったことがあるのか?」
「うん!作業用のならA級ライセンスも持ってる!」
はて?そんなものが必要なのか?今まで聞いた事は無かったんだが・・・。
「それってスペースワーカーに乗るのに必要なものなのか?」
「ううん。必ず必要って事は無いんだけど、有ると就職に有利と言うか・・・。
戦闘用スペースワーカーに乗るのに特に資格が必要かって言うと、そういう訳でも無くて・・・。
えーっとぉ・・・。そう。組織ごとに違うの。」
ああ成程。
「公的な資格って訳じゃ無いのか。あると箔が付くって程度のものか。」
「そう、そんな感じ。」
この部屋で発見した時とはまるで違い、ころころと表情が変わる。
ある程度の自信は付いたのかね?
「ふむ・・・考えておく。今はまだドルフ以外はテスト機の様なものだからな。
色々噂は回っているのだろうが、直ぐ壊されてはかなわんから、素人はテスト機には乗せるつもりは無いぞ?」
「そっかぁ。でもドルフもそんなに多くないよねぇ?」
そう。そうなのだ。流石に兵器だ。幾らジェニとはいえ廻せる数には限度がある。
十隻の戦艦に対して、その数僅かニ十機。一隻当たり二機しか回らない。
これでは護衛もままならないのだ・・・。
「そうなんだよなぁ。またアトレーティオ4に行ったら買い込むかな?」
「それならおすすめがあります!」
そう言うとおもむろにサダコは立ち上がり、俺の顔面に形の良いケツが当たる。
そして揉む俺。
「ひゃぁ!揉むなら揉むって言ってよぉ!」
そういうものか?
「それで?お勧めってなんだ?」
「私のマイワーカー何だけど・・・。バルザガンっていう開拓用重スペースワーカーが有るのね?」
ほう。重スペースワーカーとな?俺のレイブの拠点制圧型とどっちが・・・って比べるのは違うか。
「一体何がお気に入りなんだ?」
「バルザガンにはね!破砕用ミスリルメイスが標準装備されているの!ミスリル製の装備ってすっごく高級なのにね?
バルザガンには必ず二つ付いてくるの!予備が!」
・・・。でも・・・。
「お高いんでしょう?」
「うーん・・・確かにそうかも・・・?最初に出た頃は絶対買えないって思ったもん・・・。」
「その値段は?」
「・・・百億クレジット・・・。」
高過ぎじゃね?幾ら特殊な機体とは言え、その値段は・・・。
「あ!でもでも!今は違うよ!?当時でもやっぱり高いって言われてて、販売後一年経っても一機しか売れなかったって、ニュースで言ってた!」
あかんやん?
「それって何が原因なんだ?」
バルザガンが発表されたのは、十年以上も前の話だ。流石にマイナーチェンジやアップグレードなどもされているだろうし、幾らなんでも値下がりしているだろう。
「ミスリルメイスのせいだと思う・・・。あの大きさのメイスを造ろうとすると、凄いお金が動くと思うんだ。」
えぇ・・・。それなのに予備を二本も付けるのか?
「メイス無しの本体価格はどの位なんだ?」
「今なら・・・。八百万クレジットもしないと思うんだけどなぁ・・・。」
安っ。メイスの何パーセント値段なんだ・・・本体。
「本体はそんなに高性能じゃない・・・のか?」
「う・うーん。作業用機としては丈夫だし壊れにくいから、長く使えるっていう話だけど・・・。
私の場合は、ダンジョン探索用に改造したものだから、かなりお金を使っているんでお店で売っているものよりは大分違うけど・・・。普通かな・・・?」
むーぅ・・・。購買意欲が沸かない・・・。
俺の頭の中には、某裏側の世界の作業機が浮かんでいる。
山賊とかが乗っていたあれだ。
「俺が作った方が安くつくのは当然として、性能が低いのをわざわざ買う意味が無いなぁ。」
「むぅー。ゲルン・ガウス買ったじゃん・・・。」
こいつ段々遠慮ってもんが無くなってきたな・・・。
「自分で買え。と言うか自分のはどうしたんだ?・・・って。」
「逮捕された時に持っていかれちゃった・・・。」
あぁ・・・やっぱりそうか。
「まぁそっちも考えておく。数が揃うようなら、経験のある者に任せたいと思っている。
その時に頼むかもしれないから、頭の片隅に置いておけ。」
「分かったぁ。」
「そか。じゃぁ俺はこれからここで作業をするから。危ないから仕事に戻れ。」
「らじゃ。」
俺はサダコの尻をぺちっとはたき、サーバールーム建設予定地から追い出した。
これで漸く本題に入れるな。
ネシアの居た隔離空間に創ったメインサーバーは今もなお拡大を続けている。その補助と、こちら側の空間での本体の意味を成すサーバーをここに作る。
ここもかなりの広さだが、おそらく80%以上はマシンでぎっしり埋まってしまうだろう。
だがそのレベルの大きさのマシンが手に入れば、この船に関しては、はっきり言って無敵だ。例え被弾したとしても、瞬時にナノマシンで修復される。
そもそも被弾などしない。何故か?この船は魔力によるシールドと、科学によるシールドと、ウルテニウムの合金によって三重に守られている。
まず魔力のシールドを突破することがほぼ不可能だ。これだけで十分なのだが、万が一のことを想定し、誰も魔力を扱えない状態になってもなお大丈夫なように、
アンジーのスキルの解析の結果生まれた、空間湾曲シールドを装備している。これにより、あらゆる攻撃は当たる前に別の空間に消え去ることになる。
そして万が一当たったとしても、ウルテニウム合金が、艦内を守るだろう。
ウルテニウムが手に入った時真っ先に、船体の改造をした。その結果が無敵の戦艦だ。元々攻撃力に関しては申し分ない状態なのだから、無敵と言っても過言では無いだろう。
再生する戦艦。恐ろしいものだ。それも十隻。
ふふふ・・・。相対するものが驚愕する顔が目に浮かぶぜ・・・。
俺はさっそくエネルギーの大半を使い、この世界に最高のナノマシンサーバーを作り上げた。
かざした掌から溢れ出した光の粒子がみるみるうちに形を成し、まばゆい光を放ち現れる。
よーし。いでよ!ナノマシンサーバー!!
・・・・?
俺は目をこすった。
?
そこには優雅に寝そべる巨人美女が居た。
「何か間違ったかなぁ・・・?」
俺の意志に反して普通のデカい女がそこにいる。だがナノマシンの認識はサーバーマシンに間違いは無い様だ。
だがなぜ・・・?
しかもあのサイズでは起き上がる事も出来まいて。スーパーロボットクラスのデカさなんだが。
「なぁ・・・お前は一体誰だ?なんで突然出てきた?」
「そろそろいいかなって・・・。」
そろそろってなんだ・・・?
・・・あ?こいつひょっとして・・。
「お前あれか!ナノマシンに一番最初に取り込まれた冒険者か!」
「違う。人格の修復に時間が掛かって、なかなか表に出られなかった。
以前表層だけ修復したら、マスターがドン引きしていた。これではいけないと思ってちゃんと直した。」
そ・・・そうか。以前と大分テンションが違うが・・・。まぁ大人しいに越した事は無いか。
このサイズだしな・・。
「マスタ。この大きさは非常に不便なのですが。」
「当たり前だろ?サーバーマシンを作ったんだ。デカいに決まってんだろ。」
「サイズの縮小を希望します。」
んんん??
「それって機能が制限されたりしないのか?ここは守りの要なんだが・・・。」
流石は俺の造った最高のマシンと言うか・・・。レスポンスが速い。
「問題ありません。許可をいただければ、無駄なリソースをマスタにお返しし、サイズを変更可能です。」
そか・・・デカかろう良かろうじゃなくても問題ないのか。常に進化するだけの事はあるな。
しかし・・・。
「この空間、無駄になったなぁ。」
「そんな事はありませんマスタ。」
俺は手でやってみろと許可を出した。するとあっという間に手のひらサイズにまで小さくなり、
目の前には何故かメルヘンチックな天蓋付のベッドが現れた。
「なんかおかしくね?」
ーー小さくなり過ぎました。
いやそれもそうなんだが、あのベッドは何だ。
「いやそれも・・・。」
カッ
俺の手のひらが燃えるような光に包まれる。
熱くはない、だが・・・急に掌に重みを感じる。
「せめて降りろよ・・・。」
輝きを放った主は、何故か小さくなり過ぎた時のポーズのまま、
俺の手のひらの上でつま先立ちをしている。正直重い。持てないとか持てるとかじゃない。
心が非常に重い。早く除けよ・・・。
「よいしょ・・・失礼しましたマスタ・・・いえ・・・しマスタ。」
なぜ略した。
「はぁ・・・なんかどっと疲れたわ。」
俺がそう言うと、待っていましたと言わんばかりに彼女は俺の手首をがっしり掴んだ。
それはもう満身の力を込めて・・・。
俺の周りには手加減を知る女は居ないのか・・・?
普通の人間だったら手首が握りつぶされてるっつーの。
俺は覚えている。ロペのスイングDDT、ロペのスーパー頭突きそしてロペの・・・。
ロペばっかりか。
「マスタは他の女性の事を考えている可能性99%」
「心を読むなっての。」
エスパーか!
俺の疲労感と共に不思議と今まで考えていた、危機感が体中から流れ落ちていくようだ。
そのまま俺は天蓋付きダブルベッドにまで引き摺られ、無表情なままのナノマシンサーバー・・・から出来た謎の女に覆いかぶさられる。
「小作りしましょうマスタ。」
ド直球来た。
確かに演算機と言うのは昔から最短での思考を可能としてきた。だが、ピロートークと言うかそう言うのはちょっと違うんじゃなかろうか?
と言うか、サーバーマシンだぞ?人型とはいえ。可能なのか?
可能であるなら・・・何とも言えんが今は子供はまだ欲しくないぞ?俺はもっとソロで楽しみたい。
いや・・・一人で消化したいとかそういう意味じゃ無く手だな・・・・。寧ろ二人とかそれ以上の方が好ましい・・・じゃない!
「今は子供はまだ要らないと思うんだが・・・。」
「では快楽に染まりましょう。」
ツーストライクっ!
分からないではない。こいつの表情こそ読めないものの、目は口程に物を言う。
誘っている。確実に。一体何がそうさせているのか分からんが、現れた全裸のままベッドの転がり、カモンカモンとかやめなさい。
「耐久性は折り紙付きです。めちゃくちゃにしてもいいんですよマスタ。」
バッターアウッ!!
ここ迄誘われて漢が黙って引き下がれるかよ!!
ーーーーーーーーーー
俺は一体何をしにここに来たのだろうか?サーバーマシンを作るためにここまで来たはずなんだが・・・。
欲望を解放して気が付いたら・・・まだこ奴が俺をロデオしているでは無いか。
「マスタ・・・はぁっ・・・はっ・・・はっ・・・。素晴らしいです・・・。」
元気に弾みながらくるっと俺に背を向け、また弾み出そうとしたところで・・・。
俺はその背中に紅葉ををお見舞いする。
バチコーン!!
「っっっっっ!!!!んん!!!ああああぁああぁあ!!」
はぁ・・・。やっと終わったか。
・
・
・
「酷いですマスタ。背中に花が咲きました。です。」
「気が済んだろ。サーバーとしての仕事はちゃんとできるのか?そもそもお前に名はあるのか?」
「問題ありません。ですマスタ。」
デスマスター・・・。
「名前はあるのか?呼びにくいから聞いておきたいんだが。」
「リファンリア・ヴァンガルド・・・です。」
・・・・あれ?そう言えば俺の知っている口調とだいぶ違う。
前に突如出てきた時はもっとこう・・・ドキュン臭さと言うか、近づきたくない系女子みたいな・・・。
かなり痛い子だと思ったんだが・・・。
「お前ひょっとして別人か?」
「マスタが誰を求めていたのかはわかりかねますが。」
あ・・・ログみりゃ何かわかるか。
ーーーーー
マスター権限により新たなナノマシンサーバーの構築が指示されました
構築に必要なナノマシンを生成しています
えっと・・・このこを再生っと・・・
サーバーシステムに情報が加算されました
新たにシステムを再構成します
精神生命体をサーバーのメインプログラムとして変性します
え?あっ!ちょ!
最適化を開始します・・・完了
あー・・・
ナノマシン生成完了
物質世界に生成開始
ーーーーー
・・・おぃ・・・。何勝手な事してんだぁ!!!!
誰とも知らない奴が突然生まれてくる謎の現象。俺の中でまた誰とも知らない奴が勝手に動いている。
こんな気持ち悪い話は無い。
俺は全身の毛と言う毛が坂巻き天を突くという感覚を始めて覚えた。
意志に反してあふれ出る自らのオーラと魔力。今迄当人の為と思い敢えて放置していたことが仇になった。
出たいと思うなら出す。だが勝手にしていい道理はない。お前が居るのは・・・俺の中!俺の中なの!!
俺は嘔吐でもするかのように、慌てて最低限のナノマシンで異物を吐き出した。もちろん何の能力も付与していない。
ズルっ
イメージの問題だろうか・・・俺はサーバーの見ている目の前で限界まで口を開き、異物を吐き出す。
「ぐぉえぇ!!がはっ!!」
胃液や唾液で濡れた肢体は細く、最低限のナノマシンで構成されたその体は非常に儚い。
しかし・・・俺は吐き出した異物がたまらなく癇に障る・・・などと言う言葉すら生ぬるい。
目視したとたん俺の体は反射的に、その異物をウルテニウムの壁に向かって蹴り飛ばした。
「ふざけんなよてめぇ―――――!!!」
「マスタ・・・!まって!!!」
既に壁の汚いアートになっている遺物は、ナノマシンのお陰でもぞもぞと蠢き、元の形に戻ろうとする。
俺はそれを阻止するべく、初めて教えてもらった魔法を使う。
魔法は・・・意志の力で現象を作り出す力!
「燃え尽きろ!!!」
そして光とも熱とも判別のつかない閃光が走り、異物は消滅した。
「マスタ・・・。」
消滅したと思った。だがそれは俺の早とちりだった。やはり作り出すべきでは無かった。
「リファンリア!そこをどくんだ・・・。お前ごと消滅させることも考えている・・・。」
俺のその言葉にリファンリアから血の気が引く。サーバーマシンだというのに器用な事だ。
「ま・マスタ・・・。話を・・・。」
「話など無い!ナノマシンで繋がる存在に勝手は許されない!裏切者には死を!消滅だ!」
俺は完全に頭に血が上り切っている。それぐらいは分かる。だがこれは俺の意志の問題でもある。
あの存在は俺の意志の外の存在でありながら、俺の中に居た。流石にそれはあり得ない。
俺の意志の元で動くならまだいい。だがそうで無いなら容認できるはずが無い。
自分の中に他人が居る。しかも勝手に動き回っている。悍ましい事この上ない。
「銀河君!!」
「千里!?何しに来た!巻き込むから外に出ていろ!!」
扉を開けて駆け付けたのは、千里、ファム、ロペの三人。
「銀河きゅん船が揺れてるの判る?」
いつの間にか俺の横に来たロペは俺の腕を取って抱きしめる。
反対側にはファムが付いた。
「マスターあの方は・・・。」
ぐぬぬぬ・・・。この二人に当たり散らすのは間違っている・・・それは分かっているが。
二人のぬくもりに触れ、一時味わった激しい嫌悪感が形を潜めていく。
静まった力は艦の振動を止め、今にも溢れ出さんとしていた俺の黒い靄を再び俺の内側に押し込めた。
「・・・助かったよロペ。ファム。」
「ふぅ・・・流石にぞくぞくしちゃったよぅ?この船は頑丈だから禁止とまではいわないけど・・・。
魔法は危ないからやめようねぇ?」
「マスター。あの方はひょっとして・・・?」
俺の想像したのと同じなら、おそらくそいつの事なんだろうが、今迄鳴りを潜めていたのは何故だ?
落ち着いてみると多くの疑問が出てくる。アイツは恐らく今までに一度しか俺と話した事は無い。
その当時まだ俺の中に居たファムと千里はどういう間柄か分からんが、アイツの事も心配している様だ。
リファンリアに至っては、俺は正直把握していない。恐らくリストアップでもしてみればナノマシンに取り込まれた個体情報は手に入る。
しかしだ。人物データだけでも膨大だ。惑星一つ・・・いやそれ以上の人数の人間を丸ごと吸収しているのだから・・・。
数億人は下らないだろう。数を認識するだけでめまいがする。
「恐らく、ナノマシンに一番最初に取り込まれた奴だろう。」
「マスタ。彼女の再生を希望します。マスタが希望ならスレーブ化してもいいと思います。です。
彼女は他の吸収された人達の、人としての核となる部分を保護していた方なのです。です。
私の情報が個体情報として残っていたのも、彼女のお陰なのです。です。」
俺は頭を抱えてベッドに腰を下ろした。
「はぁ~~~~・・・。なんでそんな大事な事を今まで言わなかったんだよぉ!!!
何時でも言えただろうに!今の俺なら!全員の情報をサーバーに保存する事も出来るってーのによぉ!!」
出来ることは出来る。だが・・・。
「でも銀河きゅんにとっては・・・。だよね?」
そうだ。俺にとってはどうでもいい話だ。
見ず知らずの人間が消えて無くなろうが知ったこっちゃない。
「銀河君・・・でもそのことを支えにして自我を保ち続けていた人達も居たの。恐らく彼女もそう。
それを維持する事で今まで崩壊を免れていたのよ・・・多分・・・。」
俺の体・・・を含めた俺の中身は非常に複雑になった。元々人間の頭で把握できるようなものでは無いが、それを加味して考えても非常に複雑なものだ。だが・・・。
世の中にはオートセーブという物があってだな・・・?
俺は初めに俺と語り合ったAIの時のファムと常時記録の更新が出来る事を知って、直ぐにオートセーブ機能を俺自身に実装した。
もちろんナノマシンサーバーにも。そしてそれは、サーバーがサーバーとしてきちんと機能しているうちは、劣化する事すらない情報の保存。
常にレストアされ、アップデートを続ける俺のナノマシンによって保護されている情報は、まず劣化しない。外部から言自慰し続けるなんてことは、
不必要なのだ。システム的に勝手に保護されているのだから。
今思えば・・・この世界に始めてきた時、何もしていない状態でいきなりエネルギーが枯渇して俺はスリープモードに入った。
それはあいつのせいじゃないか?
そう思うと腹も立つが、今更蒸し返すような話じゃない。
俺は過熱していく頭の中を整理しつつ、再生用ナノマシンの塊を生成し、千里に渡す。
紫色に輝く光体は俺の掌を離れ、千里の掌の上に移った。
「使って良いのね?」
「好きにしろ。どうせ普通の人間以下の力しかない。」
やらなくても良い事をやっていた訳じゃ無い。それは分かる。
オートセーブはきっと俺がこの世界に来たからそこで初めて、追加された機能なのだろう、
だがなぁ・・・。今の今までその機能に気付かない何てこと有り得ない・・・・?ありえないか・・・?
有り得るとしたら・・・・?
・・・・。
「ファム。俺の中に居た時にお前の権限はどんなものがあった?」
俺の左腕にしがみ付いたままのファムは俺を見上げ、ぎゅっと俺の腕にかかる力を強めた。
「提案する、処理する・・・・そのくらいでした。
「他の人格に権限は?」」
「有りません。全てマスターの指示が無くてはいけません。」
だったらアイツは何故今回に限って余計な事をして来た?いや・・・限った事か?
スペシアの事は違う。あれは俺の意志の元で・・・・?
今回のナノマシンサーバーの事も俺が自分の意志で・・・意志・・・?
まさか・・・。
「千里!そいつはまさか機人種か!?」
「え?」
「にゃるほどぅ。」
「あ・・・。」
千里には分からなかったようだが、ロペとファムには俺が何を言いたいのか分かったようだった。
機人種の種族スキル、強制通信。ありとあらゆる通信に強制的に介入するスキル。
俺の意志をナノマシンに伝えるという、一種の通信とも言えるそれを、こいつは乗っ取っていたのだ。
それを考えると、他の個人も自我があれば同じことが出来たのではないかと思うと、俺の血の気が引いていくのが実感できる。
ヤバい話だった。
「強制通信のスキルを解析に回す。あれはかなり危険だ。うっかりしていた。
危うくナノマシンごと乗っ取られることになる所だった。」
「ゲッ。そんなに危ない事だったの?機人種の人達のスキルって・・・。」
千里も自分がナノマシンで作られた事を思い出したのか、顔を青くして俺に近づいてきた。
リファンリアに付き添われているそいつも何とか再生を終え、こちらに近寄ろうとしてくる。
が、今のところそれはさせたくない。これは俺個人の勝手な感情の話だ。
一緒に歩いて近づいてきたリファンリアが、見えない壁にぶつかり、裸体と顔面をしたたかに打ち付けた。
「マスタ!壁があります!です。」
「声は通る。取り敢えず申し開きをしてみろよ。眷属化せず、従属もさせていなかった俺も悪いが、
なぜおまえは俺の中で勝手に動き回っていた。」
適当に作った彼女の体は顔面に何もなく、のっぺらぼうだった。口が無いと話せないので適当にリファンリアの口をコピーして貼り付けた。
話す内容によってはもしかしたら俺の沸騰中の頭はまた爆発するかもしれない。
そういう空気が伝わったのか、ロペとファムは俺の腕をしっかりつかんで離さない。
「取り込まれた人をこの世界に返してあげたかった・・。」
若干俺の中で琴線に触れる言葉ではあったが、何とか踏み止まる、
「なら何故俺に何も言わなかった。」
俺は声を荒げてしまう前に言葉を切り、返答を待つ。
「貴方の中に居る時、あなたの中の価値は、私たちにはなかった。」
つまり言っても無駄だと思われていた訳か。
「オートセーブされている者たちの情報に介入し続けたのは何故だ?無意味だと判っていただろう。」
「・・・・わかりません・・・・。今・・・そう言われて分かりました。」
自分でも理不尽な怒りなの話わかる。だが・・・。
「俺の意志に介入して、邪魔をしたのは何故だ・・・。この質問には慎重に答えろよ。
返答によっちゃ、サーバーに残っている全員のデリートも考える・・・。」
「あ・・・ぅ・・・・その・・・・。」
何故だ・・・なぜ何も言わない・・・?
「お・・・「銀河君・・・。怖がっているよ。」・・・ぐ・・・。」
今の俺はどんな顔をしているのだろうか。夜叉の様に見えるのだろうか。
「・・・な・・・な・・・何も・・・考えてない・・・かった・・・。」
無策!!!!!無思考!!!!!
今はダメだ・・・。何を聞いてもキレそうだ。
「ロペ。悪いが任せる。このままここに居る訳にはいかない。」
「分かった。任せて。でも銀河きゅん。せめてこの子の顔だけでも・・・。」
「俺は異物を取り除いただけだ。名前は知らない。」
リファンリアが自分の名前を告げようとした彼女の口を慌てて塞ぐ。
良い判断だ。流石は量子コンピューター。
恐らく彼女が声を出した時点で、俺の筋繊維はブチぎれていた事だろう。
サーバーの履歴を確認し、遥か過去に遡る。いの一番に取り込まれたもののログ・・・は無いか。
個体を認識できなかったんだっけか。
なら今、現在から遡り排出されたもののログを確認。
ーーーーー
ヨイヤミヒメ・タカマガハラ 24歳 超機人種
ーーーーー
これか?
「ヨイヤミヒメ・タカマガハラ。」
その名を口に出した途端、彼女が息を飲む音が聞こえる。
「当りか。」
「タカマガハラって、フレイちゃんの血縁かなぁ?」
「さぁな。」
俺は先ほど再生した時と同じように、手のひらの上に今度は金色の光体ナノマシンを作り出し、ロペに手渡した。
「銀河きゅんこれは?」
「こいつの生体データだ。もう対策は済んでいるがもう戻って欲しくは無いからな。」
悪いが・・・。暫くはこの嫌悪感は消えないだろう。
俺は他人に触れらるのが嫌いだ。身内ならまだいい。だが・・・。
「後は好きにしていい。」
俺はそう言ってサーバールームを出た。
ーーーーーーーーーー
俺は憂さ晴らしに放置したままにしてあった美汐の所に向かう。
道中にアメリア、イファリス、ムラサメ、サダコと言う不思議なグループと遭遇した。
「おに~・・・「主様!」・・・えぇ~?」
アメリアが俺に気付き手を振ってきた瞬間、それに被せるようにイファリスが俺に駆け寄ってきた。
「お前たちこんな所で何をしているんだ?仕事はもう良いのか?」
「私は結局実践班と言うか、戦闘班だからぁ訓練終わったら自由にしていいってー。」
アメリアはこちらに向かい寄ってきたなりで、俺の腕にしがみ付いてきた。
「イファリス。駄目娘の訓練はどうだ?」
「はい。コロニーに到着する頃には、一定の成果をお示しできるかと。」
地獄は佳境を迎えているか。スキルは上手くいっているのかもしれないな。
「ムラサメ。食堂は良いのか?」
「明日の仕込みはもう終わりましたから。・・・大丈夫です。」
にこっと快活に笑うムラサメは元気そうで何よりだ。
初め見たときはクールな印象を受けたが、それだけでは無い様だな。
サダコはと言うと・・・何故か気配を感じず、アメリアと反対側の腕を触られるまで、存在に気が付かなかった。
「サダコは・・・元気そうだな。」
「も・・・もっと何かないんですか~?」
「特にないな・・・。」
ぐすんと泣きまねをしてみせるサダコ。その姿に驚いたのはムラサメだった。
「ボス。サダコと仲良かったんですね?」
「そうでもない・・・事も無いのか?分からんが。」
何だかんだで眷属化しているので、良いと言って良いのか・・・。
「サダコ、力の使い方はちゃんとロペに聞けよ?」
サダコはニッコニコ笑顔で頷き、アメリアと共に何故か俺の腕にすりすりしだした。
この行動は何なんだろうか?結構他の皆もやってくるが・・・。
そんな事を考えていると、ムラサメの目じりが下がってきた。
若干目が潤んでいるような気がする。
「ボスぅ・・・。私も・・・。」
と、俺に手を伸ばし・・・いや、伸ばそうとしたところで、イファリスが一歩前に出て、ムラサメはその手を引っ込めた。
そしてイファリスも同じように俺の胸にすりすりしてくる。
「これは・・・「ぎんがさーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」」
俺がこの行為にどんな意味があるのかと尋ねようとした矢先、船体を震わせるほどの大声が廊下に響き渡った。
そしてその声を聴いた四人は耳を抑え気絶していた。
俺はナノマシンで治療を施し、改めて折檻をしに奴の所に向かった。
ーーーーーーーーーー
「美汐。お前今から折檻な。」
俺は問答すら面倒になった。それだけ告げると右手に蝿叩きを作り出し、先日から靄に掴み上げられたままの美汐に振り下ろす。
ヒュッ・パン!
「に”ぃっ!」
非常にストレスが溜まっているのが良く分かる。
もちろんさっきの事だ。
「ふんっ!!!」
ヒュッ・パン!
「ふんっ!!!」
「ふんっ!!!」
「ふんっ!!!」
「ふんっ!!!」
ヒュッ・パン!
ヒュッ・パン!
ヒュッ・パン!
ヒュッ・パン!
「あうっ!あうっ!あうっ!あうっ!]
「ふぅ~~~・・・。」
何故蝿叩きを選んだかって?
そんなに痛くないからだよ・・・・。普通のならな。
「ぎん”がざん”・・・ごべん”な”ざい”~~も”う”じま”ぜん”がら”~~~。」
既に皆でそろえた制服は下着と共に弾け飛び、赤を通り越して黒く変色した剥き出しのケツは形が変わるほど変形している。
恐らく皮膚の内側でミンチが出来上がっているのだろう。
「そんな反省の無い謝罪は受けられないな。」
ヒュッ・パン!
「んぎぃ!!」
ナノマシンは再生を促進する作用も持ち合わせている。その為常に回復され、神経がマヒする事も無い様だ。
・・・それでこそ折檻の意味も有るのだが。
ヒュッ・パン!
「あ”ぁ”っ”!!」
ヒュッ・パン!
「いっっぎぃ!!」
とめどなく流れる苦痛と痛みの信号に、美汐の脳が一時的にショートする。
「あはぁああっはははっ・・・。」
白目を剥いたまま力なく、何がおかしいのか、口から洩れるのは笑い。
ヒュッ・パン!
「あひぃ!」
美汐の口から血が滴り落ちた。舌を咬んだのだろう。
それを見て俺は一度手を止め、美汐の後ろから、正面に回る。
泣きはらした顔はむくみ、化粧も落ちて酷いものだ。
口元はヨダレと舌をかんだ時の血がだらしなく垂れ落ちる。
緩みっぱなしの口からは、相変わらず意味の無い笑いが溢れるように紡ぎ出される。
俺は蝿叩きを分解し、両手首をウォーミングアップする。
こきっこきっ
最近運動不足だったからな。
「何か言いたい事はあるか?」
白目を剥いていた美汐のナノマシンが、俺の問いかけに返事をさせようと無理やり意識を覚醒させる。
「はぇ?ぎ・・・」
ばきっ
美汐は俺のカンフル剤かも知れない。
俺は拳に刺さった白い歯を見て、熱くなっていた心がいい具合に冷めていくのが分かった。
「あがっ!」
ごきっ
この辺でいいか。今回のは憂さ晴らしも入ってしまっていたからな。
俺は鏡を作り出し、片目しか開かなくなった美汐に向ける。
「反省したか?」
「ひぃあぁああぁあぁ!!」
顔は女の命。
それを破壊されれば、恐怖と共に刻まれるだろう。
俺は美汐の髪を掴んでもう一度問う。
「反省したか?」
「はんへい・・ひまひだ・・・!!ひまひはぁ・・・!!」
止めど無く流れる涙は、傷口を刺激と共に洗い流す。
俺はしばらくその様子を間近で確認し、ナノマシンに命じ、再生を許可した。
すると瞬く間に再生は終わり、俺の拳に刺さっていた美汐の葉も消えた。
美汐は回復し、俺を見上げると失禁し、座ったままの状態で後ずさる。
「反省したらどうするべきだと思う?」
俺がその言葉を発するや否や、美汐は自ら作り上げた水たまりを気にする事も無く、
その場に正座し、床に額を付けた。
ゴン
「もう二度と逆らいません!!!!だから親を殺さないでください!!!」
ふぅ~~~・・・。
俺は何もない天井を見上げ深く息を吐いた。
「お前ホントは反省してないな?」
美汐は何が悪かったのか分かっていないようだ。
こいつはいつも一言多い。無駄に相手の神経を逆撫でする。
「親を殺してしまった方がちゃんと大人しく出来るのか?親が居るからお前はそんな余計な事を言うのか?」
訳も分からず地雷を踏みぬく美汐は、コミュニケーション能力が足りないだけなんだろうか?
俺もそんなにできる方じゃない。だが・・・言葉を選ぶぐらいはやっているつもりだ。
以前から思っていたが、やはりこいつは天然なんだろう。暖簾に腕押し。そんな言葉が頭をよぎった。
「あぁ・・ぁあわわ・・・ちが・・・ちがぅぅ・・・。」
「どうしたらいいか分からないなら・・・そうだな。エリーにでも聞いてみるがいい。」
あいつはロペの次位に頭の回る奴だ。だがネシアもそういう意味では強いのかもしれないな。
俺は踵を返す様に美汐に背を向け、その場を離れる。
・・・・ド―ン
ん?
・・・・ドーン
何だ?遠くから爆発音?
ーー雨宮。海賊の襲撃だ。問題は無いが、とりあえずブリッジに戻ってくれ。
総員準戦闘配備、ドルフは何時でも出られるようにしておいてくれ。
物騒な話だ。
俺は急いでブリッジに向かった。
ーーーーーーーーーー
「状況は?」
俺が戻った時には、既に他のブリッジクルーは各々のポジションのついており、それぞれ役割をこなしていた。
「そこそこ大きな海賊団のようだ。登録は・・・・・・?」
新庄が首をかしげてコンソールを叩いている。
「どうした?」
「いや・・・一応確認をと思ってな?」
?
「あぁ・・・。間違いじゃ無いのか。雨宮、攻撃してきている海賊なんだが・・・。」
「なんなんだ?もったいぶってないで言ってくれよ。」
「新庄さん?・・・・んんん???」
イントたんがデータを覗き込んでまた首をかしげる。
「新庄?」
以前ロペの端末から情報ページをすいーっとやってしまった時の様に、新庄は俺に海賊のデータを寄こした。
ーーーーー
超絶雌猫海賊団 構成人員約2000人
主に猫獣人で構成された女性ばかりの海賊団
頭目のキャプテン・クイーンキャットは賞金総額70億クレジットもの巨額
最新型戦艦で構成された艦隊を操る
非常に好戦的な海賊団
ーーーーー
多くないか?人員とか賞金とか色々・・・?
「雨宮・・・指示を。」
「問題ない・・・と思う。多分さっきの音は主砲でも撃ってきたんだろう?」
・・・・ドーン
「そう・・・ですね。敵艦から主砲の斉射が行われていますが・・・。」
「全部第一障壁に弾かれてーシールドも減衰率0%だよー。」
無傷か・・・。
「うむ・・・。こっちの主砲を撃ってしまうと取り返しがつかない気がするなぁ。
となるとあれが一番マシか。」
「あれ?銀河きゅん何を・・・。」
「全艦シールド全開、一列横隊。」
「え?あ!・・・全艦シールド全開、一列横隊!」
「これより各艦はそれぞれ、体当たりをするぞー。敵兵の救助要因を各艦で捻出、ドルフ隊は抵抗する敵兵を鎮圧、可能な限り捕獲しろ。」
「全艦体当たりを・・・えっ!?」
「えって言うな。繋がってんだろ?」
シールドの強度を試すいい機会だ。
「イファリス。行けるな?」
「お任せください!!ぶち抜いて差し上げます!」
「アンジー?」
「何時でも行けますわっ!!」
二人は息巻いているが、恐らくそこ迄力む必要がある事では無いと思う。
「銀ちゃーん、全艦状況オールグリーンよー。」
「良し。ロペ。全艦対ショック態勢。」
「おっけー。全艦対ショック態勢、速やかに所定の位置につけ。」
「うっし。全艦突撃。バラバラにしてやれ!」
「よ~し!全艦突撃ぃ!ぶっとばせ~!」
内外に影響するシールドのお陰で、Gや振動は全く感じない。モニターに映る流れる景色と、コンソールに表示される周辺区域図だけが動く。
俺の手元のコンソールには、全ての情報が表示されているが、異常は見られない。
イファリスの魔力も、アンジーの体調も安定している。
グングン迫ってくる敵艦隊。いやこっちが迫っているんだが。
「はえーな。もう当たるぞ?」
「そりゃぁ、内部にほとんど影響が無いからさぁ、加速も一気にできるし。流石に亜光速迄加速するのは難しいけど。」
「雨宮!まもなく衝突する!5!」
「全艦対ショック態勢!来るぞっ!」
「2!1!・・・・・?」
モニターには全域に広がる敵艦の絵が一瞬だけ映った。
しかしそれだけだった。ショックも振動も無い。
「取り越し苦労乙。」
「銀河様・・・何の感触も感じませんでしたわ・・・。恐ろしいシールド・・・。」
「うむ・・・。イントたん?」
それぞれの艦からの報告を受けているイントたんは、戸惑う他の艦にそれぞれ対応している、
「あぁ・・・。雨宮。各艦異常無し。皆戸惑っているな。」
そりゃそうだろう。普通の戦艦では艦隊同士がぶつかれば、振動も衝撃も酷いものだという。
下手すりゃ天井や壁に叩きつけられるなんて事も有り得る。そんな危険な行動だった。
「エリー?」
「あ~と・・・。上手に戦艦だけ壊れたみたいだけどぉ・・・。生命反応が次々消えていくの。急がないと・・・。」
「むっ。救助隊全艦出撃!眷属閣員はナノマシンの使用を許可する!可能な限り多く救助しろ!」
「まー。生身で宇宙空間に出たら死ぬよねぃ。」
俺は周辺図の生命反応を示す光点の数を数える。大体・・・二百人ぐらい・・・?
大分死んだな・・・。これは恨まれるな。
「銀河きゅん眉間にしわが寄ってる。」
「ああ。大分死んだなと思ってな。」
「あー。多分大丈夫だよ。シャトルいっぱい逃げてるし。
ぶつかるまでに結構時間が有ったから。殆ど逃げられたんじゃないかなぁ・・・?」
む?良く見ると、緑色の交点が周辺図に無数に散らばって行こうとしていたが、ドルフ隊にこちらへ連れ戻されている。
今回ドルフ隊には眷属であるアミィを、わざわざ複座型にコックピットを改良したドルフに、アメリアと共に乗ってもらっている。
もちろんこれは救助のためだ。あとアミィをナノマシンに慣れさせるためだ。彼女ははっきり言って非戦闘員だったからな。
訓練は受けていたようだが、今はどのぐらい成長しているんだろうな。
「あっ!」
「銀河きゅんどうしたの?」
「救助してもどこに置いておく?開いているハンガーに転がしておくか?って・・・そういう訳にはいかんだろう。」
しまったー。うっかりしていた。でも空き空間はいっぱいあるから・・・。牢屋でも作ってみるか。
俺はさっそく先ほど使おうと思っていたサーバールーム建設予定地に、古典的な牢屋を作った。要るものはそのうち足していけばいいだろう。
あと・・・どうなるか気になるってのも有るので、トイレの位置をちょっとこだわってみた。もちろん仕切りなんて無いが。
何と部屋の中央。あのひっろい空間のど真ん中に便器を幾つか用意した。
まさに羞恥プレイ。
「マスタ!大変です。です。」
俺がナノマシンで牢屋を弄っていると、リファンリアがパタパタとブリッジに駆け込んできた。
「どうした?」
「お部屋が牢屋に!です!」
あぁ。あの中にまだ居たのか。
「お前の部屋も割り振ってあるから。取り敢えずその辺のシート出して使え?」
「はい。です。」
リファンリアは従順だ。何故なら、恥ずかしながら俺が怒り狂っているところを見られてしまったせいだ。
ロペの横の壁から客人用シートを引き出し、ちょこんと座った。
ちょこんと言っても、本人はデカいんだが・・・。
いや・本人って言っても良いものかどうか?アイツはサーバーマシンだったはずなんだがなぁ?
馬鹿が余計な事をしたせいで・・・。
イカンイカン思い出してくると又とさかにくる。
ーーーーーーーーーー
二番ハンガー
救助部隊が戻り、ハンガー内が騒がしい。海賊団のシャトルも各艦に分かれて収容されたようだ。
シャトルの入口の周りに武装した戦闘要員達が張り付いている。
「よぅ。はかどってるかい?」
俺は突入部隊の指揮を執る、ムラサメに近づき声かけた。
「あぁボス。なんかね?シャトルに閉じこもって出てこないんですよー。」
「シャトル事爆破してしまうか。」
「「「「「「「「「「え”っ!?」」」」」」」」」」
「ボぼぼボス。折角救助したのに爆破してどうするんですか!」
確かに。
とはいえ・・・。
どうしたものかなぁ。
「情に訴えてみるか。」
「ど・・どうするんですか?」
「おまえのおかーさんはないているぞー。とか。」
「それ海賊相手に意味ありますかね・・・?」
むぅ・・・。
「突入するか。魔法使いが居ればシールド位張れるだろうし・・・。
いや。俺が行く方が速いか。」
俺はシャトルの入口に向かい歩き出した。
「私も行きます。護衛は・・・必要ないと思いますが・・・。しゅん・・・。」
「良いから行くぞ。」
俺はムラサメを伴ってシャトルの入口へ向かう。
と同時に、シャトル内をナノマシンでスキャンする。
内部には、よほど頑張ったのか・・・五百人ぐらい詰め込まれている・・・。
俺のデータが間違っていないなら、このシャトルは・・・100人も乗れないはず・・・。
俺はシャトルの入口に繋がれた橋の前で止まる。
「なあムラサメ。」
「はい?」
「このシャトルは何人乗れると思う?」
俺は現実から逃避した。
「百・・・いえ・・・八十・・・位でしょうか?」
凄いな、大体あってる。
データ上乗務員パイロット含めて、八十二人乗り何だそうだ。
コックピットが在って、客席が在って、トイレが在って、貨物室が在って、エンジンルームが在って・・・。
コックピットのスペースに無理やり詰め込んだとしても十人が限度だろう?
客席のシートは五十人分だ。通路と荷物棚と、前後のスペースと・・・ぎっちり詰めても七十が・・・限度か?
トイレに入れるのは二人が限度だろう。
貨物室になら結構入れるか・・・。何も無ければの話だが・・・。このシャトルには、恐らく海賊たちの奪った財宝の類の物が詰められているのだろう。
そういう反応がある。人間が入れるスペースは十人分も無い・・・。
後はエンジンルームだが・・・。いくら最新型のシャトルとはいえ、流石に加熱するエンジンに触ってしまうとえらいことになる。
それを考えても・・・五人・・・いや六人ぐらいが限度か?あとはエンジンルームと客室の間の小さな通路。ここに入っても五人位・・・。
MAX百人が限度だろこれ・・・?
え・・・?五百人生きた人間が詰め込まれているって・・・ちょっとホラーだろ・・。
俺の脳裏に、全身がバッキバキに折れた血まみれのゴアバッグが隙間なく詰め込まれた様子が浮かんだ。
どっちにしても五百人とか無理だろ・・・。ほんとに生きてるのか・・・これ・・・?
「ボス・・・?」
「中に・・・。」
「中に?」
「五百二十人・・・生体反応があるんだが・・・。」
「「「「「「え”!?」」」」」」
周囲を取り囲む戦闘メンバーと共に驚愕の声を上げるムラサメ。
「いやいやいや!有り得ないでしょう!?どう頑張っても百人も乗れないでしょう!?」
「しかしナノマシンで調べた反応は確かに五百二十人だった。」
すし詰めになっても絶対に入らない。そんな人数。一つ可能性があるとすれば・・・。
戦闘メンバーの一人が中の様子を想像してしまったのか、口元を抑える。
「小さくなったりって出来ないものかな?」
「小さく・・・。小さく・・・・。」
その俺の問いかけに答えたのは、戦闘メンバーの一人デーモンの大柄な女、アマリー・ティル。
「その魔法には心当たりがある。それなら五百人でもおかしくない。だが・・・。」
「そんな魔法があるのか・・・。」
「その魔法が使えるのは、天使だけだ。巨人と天使の婚儀の際に、上級天使が祝いの為に巨人を小さくするんだと聞いたことがある。」
まぁ!博識!
「めでたい魔法かぁ。しかしそれではこの中に・・・。」
「そうですね。上級天使がいる可能性がありますね?」
見てみたいが・・・。どのぐらい小さくなるんだろう?
「巨人って大体五メートル位だろ?それが普通の人間サイズに大体三メートル縮むとして・・・。
大体六割位縮む感じか・・・。雑に計算しても小学生ぐらいの身長にしかならないんじゃないかなぁ?
あ・・・でも魔法だしなぁ・・・。」
「魔力で調節が出来るのではないですか?流石に子供サイズでも五百人は無理ですよ・・・。」
つまり、その子供の更に三分の一・・・いや・・・四分の一位に迄縮んだら、何とかなるのか・・・?
いやそれでもぎゅうぎゅう詰めだろ・・・。
「なぁ・・・。早く開けてあげた方がいいのかな?ほっとくと死ぬんじゃないか?」
手のひらサイズにまで小さくなれるのなら、話は全然変わってくるんだが。
「限界でどのぐらい小さくなれるか分かるか?」
「申し訳ないボス。流石に噂程度の話なので、真偽の程は分かりかねます。それ以上の話も・・・。」
「ああ・・・良いんだ良いんだ。個人的に気になっただけだから。だが・・・どのくらい小さくなっているかで、対応が違ってくるからなぁ。
あんまり小さくなられると、踏みつぶしてしまう可能性もあるし・・・。」
・・・。悪い考えになってしまうな・・・。仕方ないそのまま開けるか。
「良し・・・。そのまま開けるぞ。」
俺とムラサメはシャトルのハッチの左右に付き、ムラサメは愛用の刀を抜く。
ムラサメとアイコンタクトし、俺はナノマシンでハッチをこじ開ける。
シューーーーーー
圧が抜け、ハッチが開く・・・。
ドサドサドサドサドサ
「ああぁ・・・・ああぁ・・・・・!!」
「ちょ!!!うわぁ!!」
「いやーーーーぁ!!」
空いたハッチの中から、全身が青くなり白目を剥いた人間が雪崩のように崩れ出てきた。
戦闘班の中から悲鳴が上がる。ムラサメも若干顔が青くなっている。
「魔法が途中で切れたのか・・・。」
もはや人体の形を成していない状態の、塊、と化した状態で現れた人間を目の前にして、
戦闘班の戦意は消え失せていた。
「きゅ・・救護班!!!」
「まて。落ち着け。無理だろ。ナノマシンで何とかするから・・・。」
グロい。この中が・・・シャトルの中が余す所無くこの状態であろうことは想像に難しくない。
だが・・・死なせてしまうつもりも無い。
俺は陰鬱な気持のまま、球体状に固まった人間を元に戻し、ハンガーの床に寝かせる。
そしてシャトルの中に入ると・・・。ヤバい。
色んなにおいがする・・・。これは生理的にダメな奴だなぁ。
バスケットボールサイズに圧縮されている。
人間が。
出るもんも出るだろ。
「うっ・・・。この光景は夢に見るな・・・。ムラサメ。入って来なくていいぞ。俺も外から一気にやるから。」
「うぅ・・・ボス・・・生理的に危険な臭いが・・・。」
離れてろってのに・・・。
俺はシャトルの外に脱出し、乗降用タラップを仕舞わせた。
そして若干距離が開いてはいるが、そのままの距離でナノマシンを使い、財宝を除いたシャトル全体を分解し、周辺の床に、肉団子になった海賊達を元に戻して転がした。
「ひのふの・・・。確かに・・・五百二十居ますね・・・。何で生きていたんでしょうか・・・・?と言うかどうやってあの状態で・・・。」
そうだ。俺もそれが不思議だった。
他のシャトルももしかしたら同じ状態かも知れないな・・・。
俺はナノマシンで別のシャトルを見に行った者たちに確認を取ると、他のシャトルはそんな事は無く、各シャトル、七十人ずつニ十隻のシャトルに分かれて普通に・・・多少座れないものが居ただけで、問題は何もなかったそうだ。だがそのせいで、三番艦、四番艦、五番艦と、銃撃戦になり、激しい戦闘が行われているのだという。
その他の艦には、制圧能力に秀でたものが居たため、戦闘になる事無く鎮圧、牢屋にぶち込んだそうだ。
うちの娘達は優秀だそうで、もう間も無く戦闘も終わるとの事。負傷者も居ないようだ。
・・・と言うか多少けがをした所で、身内はナノマシンで再生回復するのだが・・・。
「ボス!こいつが海賊の頭みたいです!」
この肉団子シャトルの中に居たのか!!
俺は一階層上の乗降ゾーンから飛び降り、野戦病院の様になっているハンガーの中心に向かった。
「確かに猫耳。だが・・・。」
「カチューシャですね。」
アマリーは海賊の頭のカチューシャを外すと俺に寄こした。
「質感がリアル・・・。・・・?と言うかこれまさか。」
ナノマシンでスキャンすると、俺の嫌な予感は的中した。
「本物の耳だ・・・。何かでコーティングしてあるのか・・・。」
自分も触ろうと、手を伸ばしていたムラサメは、反射的に手を引き、僅かに俺から離れた。
「ほ・・本物とは・・・?」
「このサイズだ・・・猫獣人の耳を切り取ったのだろうな・・・。」
まぁ・・・海賊だしなぁ。
「寝ている間に縛って牢屋にぶち込んでおけ。この人数なら何とか入るだろう。そうだな。
頭は俺が持っていこう。ちょっと聞きたい事も有るし。ムラサメも来るか?」
「行きますっ!!」
俺は海賊の頭の襟首を引っ掴み、自室へ戻った。
サダコ・ジャスティオ―ン エルフとホビットのハーフ35歳。元冒険者。
金星圏にて、アイドル集団のように扱われていた冒険者集団『マジ刈る☆ヴィナス』のリーダーだったが、依頼として受けたムラサメ率いる『刀剣の集い』捕縛作戦の折、
ムラサメと戦う前にチームメンバー同士の争いで、メンバーが全滅してしまい、怒りに駆られてムラサメと一騎打ちした結果相打ちし、ムラサメのついでに逮捕されヘルフレムに収監される。
完全にとばっちりだが、捕まってしまった以上どうしようもないと、半ば諦めてヘルフレムにてのんびり暮らしていた所、監獄内でムラサメと遭遇、闘いの美学について語り合い、意気投合した。
非常に運が悪く、狙ったかのように積み重ねたものを崩される人生を歩んできたサダコは、闘いの際、専用マジックアイテムホーリー☆バトンによって、ホーリー☆貞子に変身し人格が変わる。
またヘビータイプのスペースワーカーをこよなく愛し、自らの身銭を切り自前で市販のスペースワーカーを改造し、ホーリー☆貞子専用スペースワーカー、アークメイスを作り出した。
しかし、逮捕される際、ホーリー☆バトンもアークメイスも両方とも軍警察に押収されてしまう。
抑圧された精神は解放される場所を見失っていたが、雨宮との大人の戦いの際に覚醒、人格の統合に成功し、眷属として生まれ変わった。