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EP21 失敗 断罪 女体盛り

遅くなってしまった・・・。

 スペースワーカーを作り、進化し、ネシアを連れ出した。そして・・・。


 「やっぱり決められないよぉおおおおおおお!!」


 夜中に俺の寝室の扉を開け、盛大に叫んだのは先日俺が美汐を懲らしめる為にこの世界に呼び戻した、スペシア・レーンシュラインだ。

こいつは俺の前世の姿らしい。認めたくないというか、認められないというか・・・。だが・・・。

こいつのこの優柔不断な性格と、意味の無い我儘には若干心当たりがある。

俺の小学生の頃、親にこんな風に我儘をしていた事を思い出した。そしてその夜に謝る為に親の寝室に忍び込んだ・・・。

そんな事を思い出している。


 そして今・・・。


 「銀河ぁ!決めてよぉ!ねぇってばぁ!」


 そう言いながら俺のベッドの中にもぞもぞと潜り込んでくる。

こいつは・・・。

同族嫌悪マキシマム。いやな事を思い出させやがって・・・。

しかしこいつは別に子供では無い。普通の人間でありながら、一つの世界を管理運営していた程の能力がある大人だ・・・。大人なんだよ・・・。


 「子供か!!」


 えぇーい寝られん!!


 「だって!だって!だってぇ!」


 今のこいつは世界を管理運営していた頃のままの筈・・・何だが・・・。

一体こんな奴がどうやって一人で世界を動かしていたのだろうか?当時は既にその世界の管理者は居なかったはずだし・・・。

結局最後は自殺して仕舞う訳だし、何がしたかったんだか知りたい所ではあるが・・・。

拒否反応は抑えるべきか・・・。


 俺も甘いなぁ。


 「わかったわかったから・・・。」


 「ほんと?」


 女性特有の臭いと共にベッドの中で俺の腕にしがみ付くスペシア・・・。


 あざとい。


 実にあざとい。


 こいつは自分が俺の眷属として産み出された事を知らないようだ。

他の皆も今のこいつを見て、敢えて何も話さ無かった様だ。

眷属同士なら俺が強制的にリンクを遮断したりしない限り、悪意のある嘘はつけないからな。

つまり・・・。


 「はぁ・・・。」


 「ねぇホントに決めてくれるの?」


 「嘘に決まってんだろバァーカ。」


 上げて落していくスタイル。


 「なんで「お前は今言うこと聞いてくれないの?と言う。」いうこと聞いてくれない・・・!!」


 これ以上ない位にスペシアの目が開かれる。まさに驚愕と言った感じだな。


 あほか・・・。


 「お前が自分で責任を取りたくないって思っている事は、全員・・・と言っては語弊があるが、幹部連中は全員知っている。」


 「意味が分からないよぉ・・・。」


 ベッドの中で擦るような話じゃないな・・・。


 「分からないなら教えてやろう。お前が今頭の中で考えている事は、俺には筒抜けだという事だ。

そしてお前にはもう他人を操っていたスキルは無い。スキルの無い只の美形なだけのお前のいう事を聞く意味が無い。

分かるな?お前の言う事を今まで聞いてきた奴らは、魅了耐性が無かった。只それだけだ。心からお前の事を思って動いた奴なんて、片手で数えるほどしか居ないだろう。」


 面倒なので今まで言わないままでいた事を全部言って見た。


 「そういうアンタはどうなのよ・・・。」


 これが普通のスペシアか。質の下がった底冷えするような声で俺に尋ねる。


 「さあな。あるいはそうかもしれん。俺はお前の生まれ変わりらしいからな。お前と同じスキルを持っているかもしれん。

まだまだ・・・確認するつもりは無いがな。真実を知ってがっかりするのも、俺の冒険の内だ。」


 スペシアは俺の腕を引きちぎらんばかりの力で握りしめてきた。


 「何よそれ・・・!!!」


 この反応。・・・何となく読めてきたなぁ・・・。


 だが俺に自重は無い。


 「お前、どうせ自分に向けられた愛を確かめる為に、スキルの届かない管理者の領域にまで無理やり押し込んだんだろう?そこからなら世界中を見渡せるらしいからな?

んで、自分をしたって寄って来た奴らが、自分のいない所で何をしているのか知った訳だ。」


 「うるさい・・・・!!!!」


 普通の人間の腕ならとっくにミンチになっているであろう力が、俺の腕から異質な音を出している。


 「大方、何も覚えていない・・・。といった所か。お前抜きで普通に生活でもしていたのだろう。

いや・・・もしかしたら罵詈雑言でも言いあって楽しんでいたか。俺が覚えている人間だとしたら・・・後者だろうな。お前の性格からして。」


 「やめてーーーーーーーーーーーーーーー1!!!!」


 あぁ・・・。耳がキーンってなってるわぁ・・・。


 「俺たちにそんなスキルは元々効かないし、身内には既に魅了耐性を付けてある。

その状態でも今の状態が続いているという事は、俺の有るかどうかわからない魅了スキルが強すぎるか、

俺にはそんなスキルは無いか、弱いんだろうな。スキルが。」


 スペシアは前世での記憶を思い出しているのか、全身から汗が吹き出し、俺の腕を握ったままで小刻みに震えだした。


 「俺の前世だとは思えないほどのヘタレっぷりだな。・・・いやそうでも無いか。俺のガキの頃そっくりだ。反吐が出る。」


 俺は震えたまま縮こまったスペシアを無理やり自分の方に向かせた。

きれいな瞳が非常に濁って見えるのは錯覚だろうか。

見開いた目からとめど無く涙が流れ、歯の根が合わない様で、ガチガチと歯の音が聞こえる。

呼吸も乱れ、今にも意識を飛ばしそうな位浅い呼吸を繰り返している。


 「はっ・・・はっ・・・はっ・・・。」


 そして俺はとどめの一言をくれてやることにした。


 「ここに来て改めて判っただろう?誰もお前の事なんか気にしてない。」


 ビクッとしゃくり上げる様に呼吸が変わる。


 「前に生きてきた世界は幸せだっただろう?誰もが愛してくれた。」


 俺が言葉を発するたびに、スペシアから血の気が引いていく。


 「だが。」


 スペシアの手に振り絞ったような万力の力が籠められる。


 「誰もお前を愛していない。全部嘘だった。」


 グルンと、スペシアの目が白目を剥き口から白い泡が溢れ出す。

スペシアの手から力が抜け、俺の腕が自由になる。


 「やっと眠ったか・・・。子守歌も面倒だな。」


 すると、俺の腰のあたりに妙な湿り気が・・・。


バサッ


 「こいつ漏らしやがった!!!」


まぁ・・・ある程度予想は出来ていたこととは言え、実際にやられると結構来るものがあるな・・・。


 俺は例によってナノマシンでスペシアの失禁を無かったことにして、みるが・・・。


 「おい・・・何だこれは・・・。折角綺麗に乾燥させて・・・?ん?」


 これは・・・まさか・・・。

さらさらとしてそれでいて独特のフェロモンが含まれた・・・。


 俺は思わず犬掻きの途中のような状態で固まったまま、股間から汁を垂れ流すスペシアを四つん這いの状態に引っ繰り返した。


スパ――――ン


 俺はおもむろに形の良いスペシアのケツを引っ叩いた。

ビクンビクンと痙攣はするもののまだ目を覚まさない。


スパ――――ン!スパ――――ン!


 左右両方を往復ビンタの要領で更にはたく。

既にはたかれたケツは赤を通り越して青くなっているが、まだ起きる様子が無い。


 仕方ない・・・ナノマシン。AEDだっ!


バチン!!


 俺の両手に無線のAEDが現れ、軽く放電させると小気味よい音が鳴る、


 「寝たふりしているなら今のうちに起きろよ・・・。」


 俺最大出力につまみを合わせ、試しにAEDを合わせてみる。


ビビビビリビリビリ


 「お・・・おきてるからぁ・・・・ん・・ふぅ・・ぁ・・・。」


 やはり最初の一発で起きていたか。


 「お・・・おひりが・・・・あぁん・・・ふぅ・・・。」


 ・・・。俺はAEDはとりあえず分解した。しかし・・・。

再びシ-ツにシミが出来ている事に気が付いた。


 「この・・・。」


 俺は右手を大きく振りかぶる。もちろん一度ナノマシンで回復させてある。

当の本人は、何故かこちらを潤んだ目で見つめながら、荒い呼吸で涎を垂らしている。


スパ-------ン!!!!


 「きゅー――――――――――ン!!!」


ブシュッ


 この野郎・・・。


 盛大に噴出した液体は俺の全身が酷い匂いになる位の量だった。

だが・・・。


 「ぎ・・・ぎんがぁ・・・。」


 怒りと欲情が混じり合った妙な気持のまま俺は再び、スパンキングを繰り出すのであった。




ーーーーーーーーーー


 「今日もいい朝だ。作業も終わっただろうしこの後の事も話し合わないといけないな。」


 俺は久しぶりに一人でベッドから起き上がり、めいいっぱい背伸びをして体中に血液を巡らせる。

爽やかに目覚めた後は、シャワーでも浴びて一気に目を覚まそう。


 俺はシャワールームの扉を開け、そして閉める。


 「銀河きゅんおはよー・・・ってあれ?」


 ロペが居た。


 「俺の部屋の風呂を使う必要性!!!」


 個々に割り振られた個室にはそれぞれ、トイレも風呂も簡易キッチンすら付いているワンルーム仕様だ。

それなのに何故・・・。わざわざ俺の部屋の風呂に・・・しかも湯船につかってまったりしていた。


 俺は再び風呂の扉を開け、普通に侵入する。


 「よく考えたら別に外で待っている必要も無いな。何でここの風呂に入ってるんだよ?自分の部屋のが壊れでもしたか?」


 ロペはお気に入りであろう親子三羽連れのアヒル型玩具、『アヒルマキシマム三連星』を湯舟にぷかぷかと泳がせ、突っついて遊んでいる。

そんなロペを後目に、俺は触れれば作動するシャワーを使用し、体を洗う。


 人間らしい活動をしないと、その内それが当たり前になりそうでなんかなぁ・・・。


 「むぅ・・・?昨日私もずっと一緒に居たんだよぉ?」


 何だと・・・?


 俺は頭を泡塗れにしたままでロペに向き直る。


 「ずっと見てたのか?」


 「ずっとみてたよぉ?」


 そうか。じゃあ・・・。


 「あの部屋の天井から荒縄で縛り吊るされている奴も、観て来たか?」


 「芸術的だよねぇ。」


 だろう?わかるか。


 「お前はやっぱりいい女だ。」


 「でしょ?内助の功。聞いてくれる?」


 ?


 「下腹部に銀河きゅん専用って油性マジックで書いてきた。」


 俺はグッと親指を立て、再度シャワーを作動させる。

全身を包み込んだ泡を洗い流し、湯舟に突入した。


 「あっ!あひるちゃーん!」


ざっば~~~~~


 入れすぎた湯が俺のお質量分だけ溢れていくのと同時に、三連星の果てしない旅が始まる。

訳も無く、排水溝に辿り着く。


 ロペは三連星を拾い上げ再び湯船に浮かべた。


 「あの娘結局どうなの?大分おかしかったけど・・・。」


 「アイツはアレで普通だったんだろ?昨日も行ったが、只のかまってちゃんなだけだ。

そう。言うなれば、只のお花畑妄想女・・・。そんな所だろう。」


 ロペは俺の胸に背中を預け、三連星を念動力ですいすい動かす。


 「でも・・・。目覚めていたよ・・・?最後の方は。ちゃんと。」


 ・・・?どういう事だ?


 「ロペ何を・・・。あっ。」


 そうだ・・・。俺は失念していた。アイツは俺と同じ存在。つまり高密度精神生命体。

そして俺はつい先日の事を思い出す。美汐を分解した後の事だ。

肉体に魂を再インストールする時の事。

正常ではない。

それを失念していた。

しかもこう言っちゃなんだが、美汐とスペシアでは、情報量が桁違いに差がある。


 ・・・そうかぁ・・・ちょっと悪い事をしたかもなぁ・・・。アイツの魂のインスト―ル、まだ終わっていなかったのかもしれない。

そのせいで、表層の自我しか動いていなかったとしたら、納得は出来ないが説明はつく。

あれだ。ゲームのインストールが完全に終わって無いけど、一定量のデータがインストールされれば限定的に遊べるドン。

みたいな?


 「悪い事したな。」


 「それは全然だよ。元々あんな感じだったし、基本的な事はほどんど変わっていないから。

おかしかったのは、子供のままだった事・・・だね。流石に大人になってからはあんな感じではないよぉ?」


 「子供の相手をしていたのか・・・俺は。」


 「そういう事なんじゃないかなぁ・・・。最後の方は違うけど。」


 俺は精神的に子供の奴相手に、ハッスルしていたのか・・・。若干恥ずかしいな・・・。

 

 「そんでぇ・・・。」


 ロペは頭に巻いたタオルを外し、湯舟でブクブクとタオルに空気を包み込んで遊びながら俺に尋ねる。

纏めた神の先っちょがこちょこちょと俺の鼻先に当たってくすぐったい。


 「次の一手はどうするのぉ?もう撤収作業は昨日の内に終わるように言っておいたから、いつでも出発できると思うょ?」


 流石だなロペ、手回しが良い。


 「イントたんの家に行こうか。海王星のコロニーの様子を見たが・・・大きな混乱は無かった。

あそこでの生活や経済活動は見た感じでは滞りなく上手く行っている・・・と言うか、普通だったな。

恐らく難民も大勢いるのかもしれないが、それを考えても問題らしい問題は起っていなかった。」


ぶひゅ


 ロペはタオルに包んだ空気を握りつぶしてこちらを向いた。


 「まぁ辺境って言っても、コロニーの数は百やそこらじゃすまないからねぇ。どの程度の規模の難民が出たかは分からないけど、受け入れる事が出来ないほどでは無いのかもしれないねぇ?」


 俺は特に意味も無くロペの頬にキスをして少しため息をつく。


 「にゃん。」


 「やれるかどうかは兎も角として、やらなきゃいかん事は多いな。

別に人が増えるのは悪い事じゃないし、こっちの世界に順応してくれるのなら別に居たっていいだろ。

だが問題はそれを先導した奴らがどう出るかだな・・・。クルファウストの言う通りなら、危険な奴っぽいんだが・・・一応対策はしてあるから、その結果も気になる所ではあるな。スペシアレベルのヤバいスキルでは無いみたいだから話の通りならなんとでもなる。」

 

 「こそこそ隠れて異世界を支援しているのが私は気になるなぁ。」


 まぁ見返りでも貰っているんだろうて。


 「行くか。ウルテニウムは手に入れたし、サーバー造ったり例のエンジンの改良型も作ってみたいし。

船全体の改造もやらにゃいかんしな。やる事は山積みだぜ。」


 「人員はメキメキ育っているよぅ?買い物も粗方済んだし、私の引っ越しも終わったしぃ・・・。

後は何が良いかなぁ?やってみたい事はいっぱいだよぉ。」


 俺たちは風呂場を出てサッと着替える。着替えの途中天井から芸術的に吊るされたスペシアが、

俺たちに抗議する。


 「ちょっと!どうなっているのよっ!何なのよこれ!?なんで落書きされているのよっ!!」


 身じろぎするたびにナノマシン性の荒縄が食い込み、ぷらーんぷらーんと不規則に振り回される。

しかし計算されつくした荒縄の食い込みは、痛みを伴わず寧ろ快楽を覚えるように縛り上げられていた。


 「んんっ・・・あふぅ・・・。見てないで降ろしてよぅ・・・。あんっ。」


 右へ左へとぷらーんと動くスペシアを目で追いながら、俺はこいつをどうしようかと、

対応を決めかねていた。


 「なあ、お前これからどうしたい?ここに居るのが嫌なら、分解してやるけど。」


 「もぅなんなのよぉ!ついて行くか死ぬかって!選べる訳無いでしょ!」

 

 大人になったのは態度だけかよ・・・。中身は全く変わっていないんだが。


 「銀河きゅん、そろそろ行かないと。皆集めてあるんだょ?」


 集めてある?全校集会か?・・・いや学校じゃ無いし。


 「そうだな。じゃあこれが最後にしよう。時間が無駄だ。お前は俺の力の一部を受け継いでいる。

だから野に放つわけにはいかない。俺に永遠に従うなら分解せずにここに置いてやる。

だが、従えないならこの場で分解する。一分で答えを出せ。六十・・・五十九。」


 「え・・?ちょ・・・!!!」


 ロペが何をどうしたのか分からないが、荒縄を外し、スペシアを床に転がした。

俺がカウントを進めていく間、スペシアは先ほどまでと同じように、視線を彷徨わせ、両手を彷徨わせ、歯の根がかみ合わない。

俺の目を見て来た一瞬があったが、それで俺の本気を悟ったのだろう。

きっと今この六十秒でどうやって逃げるか考えているのだろう。通気ダクトを見て、部屋の入口を見て、俺を見て、ロペを見て。

そして残り十秒。スペシアは一つの結論を出した。


 「あ・・雨宮銀河私に跪きなさい!!」


 スペシアは以前と同じスキルを選んだようだ。


・・・・・。


・・・・・。


 だが俺達には何の効果も無い。こんな事も有ろうかと、俺は精神攻撃無効のスキルを眷属に与えていた。


 「それが答えか?」


 俺はしぶしぶ、折角産み出した眷属を分解した。だが意外と抵抗するようで・・・。


 「や・・やだっ!!もう死にたくない!!ロペさん助けて!!」


 ロペは助けを請われてスペシアに近づく・・・様に見えたが、実際は違ったようだ。


 「何の為に・・・?」


 ロペは、既に膝まで分解され自らが失われていく感覚に苛まれているスペシアの鼻先まで近づいて、逆に質問を返した。

そのこめかみにはうっすらと、血管が浮いている。


 「ロクな情報も無いし、無駄にエネルギーを消費しただけだったな。

・・・だが、最後に俺の役に立てることを喜べよ。」


 「消えるぅ!私が消えるっ!!いやぁあああああああああああ!!!!!」


 俺は見えない触手で部屋の壁に幕を作り、壁が壊れないようにする。


 「うるさい奴だ。」


 俺の右手は、以前新庄が使ったスキルを模したような形状に変化している、


 そして、スペシアの顔面に穴をあけた。


 「流石ハイパーヒューマノイドの上位種。まだ息があるのか。」


 「ガヒュ。め・・・が・・・。」


 円形に穴の開いた顔面から、ポタポタと赤い血液がしたたり落ち、私室の床に池を作る。

そして下半身は消え、首だけになったところでスペシアの生命反応が途絶えた。


 「あれが昔の俺なんだと。度し難いな・・・。朝から最悪だぜ・・・。」


 ロペは俺の腕にそっと腕を絡め、寄り添って俺たちは一番ハンガーへと向かった。


ーーーーーーーーーー


スペースワーカー専用一番ハンガー


 俺たちがハンガーに到着する前にはもう既に、全員集まっていたようで、ヘルフレムから一緒に脱出した元女囚達、俺を監視するために集まった各国の諜報員達、ティタノマキアから出向してきたメンテナンス要員、そして俺の仲間たち。

・・・。それとは別に見覚えのない奴らがチラホラ見える。


 「ロペ。知らない奴らが居るんだが・・・。」


 「うん。私の友達・・・と言うか、軍時代からの仲間って言うか信用出来そうなところを引き抜いてきたの。

と言っても数人程度だけど・・・。だめだった?」


 そんな目で俺を見るな・・・。


 上目づかいで俺を見上げるロペは、何故か庇護欲をそそる。好きにしろと言ったのは俺だ。

反対するのも今更だろう。


 「俺は裏切らないならそれでいい。ロペも友人が居れば気が楽だろう。」


 「ありがと。銀河きゅん!」


 俺は不意に腕を引っ張られ、体をよろめかせたところで、ロペからのお礼のキスを貰った。

そんな事をしながら七百人以上いる集団に近づいていくと、一人の女がロペに気付き、近づいてくる。


 「ロペ!久しぶり!呼んでくれてありがとう。ずっと隠居していなきゃいけないのかと思ったよ」

 

 ルミコ・イバナガジマ・・・?首から下げられたIDカードにそう名前が記されている。

・・・・・・?どこかで聞いたことがある様な?


 「銀河きゅんこの娘は・・・ってどうしたの?」


 「いや・・・。どっかで聞いたことがある名前だと思ってな?そんなに前じゃ無いと思うんだが。」


 「私?あったのは初めてだと思うんだけど・・・。」


 あーーー・・・・喉元まで出かかっているが・・・・。


 「銀河きゅんトベツの・・・。」


 あーーーー!!!そうだソレダ。


 「それな!とべっちゃんを監禁調教したって言うあの・・・。」


 「ちょっとまってよ!いかがわしい言い方をしないでほしんだけど!?ロペ!?」


 「私が言った訳じゃ無いんだけどねぇ・・・?銀河きゅん誰に聞いたの?」


 それはもちろんとべっちゃん本人に・・・と言いかけた所で、遠くに他の野郎共と一緒に居たとべっちゃんが、こちらに気付き、白衣を振り乱して駆け込んできた。


 「お前はぁ―――――!!!!」


 「ひぃっ!ちょ!!」


 あまりの必至さについロペの後ろに隠れるルミコ。

ロペの表情も若干引きつっている。


 「死んだはずじゃ無かったのか!!キャッシュマン!!!君は俺に!!」


 「あーうそうそ。嘘だって。」


 軽っ。


 「だってそうでも言わないと、ちゃんと勉強しなかったでしょ?ギャンギャン泣きわめいて、垂れ流しでさぁ。」


 「「えっ?」」


 俺とルミコはロペの方を見てとべっちゃんを見る。

とべっちゃんは膝を付き、項垂れている。


 「るみこぉーーーーー何で俺より早く死んでしまったんだぁ―――――!!!」


 とべっちゃんはロペに飛びつき、両肩を掴んでロペを揺さぶる。

当のロペはケラケラ笑いながら、当時の言葉をこの場で吐き出していく。


 「俺にもう一度愛を教えてくれたのは君だったじゃないかぁー!!」


 「やめてくれぇ!!!!」


 あまりの恥ずかしさに、顔面を手で隠しながらバックステップで五体投地し、床を転げまわる。


 「もっときみといっしょにいたかったー!」


 ここで待ったをかけるのはルミコだった。


 「ちょっとちょっと・・・あんた何を言ったのよ・・・。」


 「映像見る?記録残してあるけど?」


 「見る。」


 おぃ。止めるんじゃなかったのかよ。

そのまま二人してロペの端末に映し出されている同時のとべっちゃんの嘆きを・・・。


 スピーカーで大音量で吐き出した。


ーールミコ――――――――!!


 「ぎゃぁーーーーーーーーーーー!!!!オフっスピーカーきってくれぇ!!!」


 話が進まないのでいったんロペから端末を没収する。


 「「ああっ。」」


 全く・・・。


 画面の中のとべっちゃんは今よりも大分若く、全裸の状態で牢屋の中で涙を流している。


 「なんで全裸なんだよ・・・?」


 「いやぁ・・・彼さぁ洗濯とかしないからさぁ、もう買わなくっていいかなって。」


 何だそりゃ。


 「それぐらいやってやれよ・・・監禁してたんだから・・・。」


 「いやヨ。カズマは私のタイプじゃないもの。」


 バッサリ言ったな・・・。あ。とべっちゃんが死んだ。


 「それに私はロペから仕事の依頼でカズマに色々教えていただけなんだから。」


 仕事ねぇ。冒険者ってのは色々やるもんなんだなぁ。


 「そかぁ。とべっちゃん。脈は無かったみたいだし、別の女を探しに行こうぜ?な?」


 とべっちゃんは床に倒れ伏したまましくしくと涙を流し、這いずって男衆の所に戻った。


 器用だなおぃ・・・。


 男衆からは励ましの言葉をかけられているようで何よりだ。


 「にしてもアイツ・・・意外と強くなっているものね?結構な時間は経っているけれど、あれ程までになるとは思っていなかったわ。

あの時はもっとひょろっちくて、気弱な感じだったのにね。」


 ルミコは当時の思い出を語り、何かを思い出したのか顔をしかめる。


 「何の顔だよそれ。」


 俺は苦笑いしか出てこないが、おそらくとべっちゃんの身の回りの事だろう。


 「いやぁ・・。多分殆どロペのせいなんだろうけどね?私が雇われたときには既にすっごい汚かったのよ!髪は伸びっぱなしでカッピカピだし、白衣は黒と黄色の斑模様だったし、はだしだったし、ひげも伸び放題。歯は黄色を通り越して黒かったし・・・。」


 俺はロペを見る。するとふいっと顔を反らし、俺の視線から逃げる。

俺はロペの腕を組んで引き寄せる。


 「ハニー。何が原因か教えてもらおうか。」


 「だ・・だーりん?当時は私もお金が無くってぇ・・・。まだ新兵だったからぁ・・・。」


 「から?」


 「最初の一年位は、ほったらかしにしてました・・・・。食事だけ知り合いに頼んで・・・。」


 その知り合いとやらはホントに食事の世話しかしなかったんだな・・・。


 「見ろ・・・あのとべっちゃんを。今もまだ若干残ってんだろ?当時の名残。」


 おそらくまた一度も洗っていないであろう白衣・・・のような黄色っぽい服。

その下に来ているのはこれまた洗っているのかどうかわからない、黄ばんだタンクトップ。

この戦艦に居る限り、ナノマシンで臭いは周りに届かない。だが見た目が・・・。


 「う~ん・・・サポート用ロボットでも与えてみるぅ?」


 そんな犬のえさを変えてみる?みたいに言われてもなぁ・・・。でも悪くないかもな。


 「よし・・・。創ってみるか。」


 俺はそれっぽいものをそれっぽいイメージで作り上げる。

ぶっちゃけ適当だ。とべっちゃんが普通の生活を送れればそれでいい。

だがロボットのイメージなぁ・・・。


 俺の手のひらに光の粒子が集まり、徐々に形を実体化していく。

そして光が消えた後に残ったのは、ボールのような球体だった。


 「ん?これは何だ?」


 「ちょっと自分で作っといて何だは無いでしょ・・・。」


 それはそうなんだが・・・。


 「ん?銀河きゅんこれ球ちゃんじゃない?」


 何だそりゃ?


 「TAMAKOシリーズの支援ロボットだよ。色々出来るから、世話役にはちょうどいいよね。

AIは謎だけど。」


 すると、足元に転がった紫色の球体からニョロっと足?の様な物が生え、続いて手の様物も生えた。

目と思われる場所に光が灯り、極微小の起動音が鳴る。


ーTAMAKO---ぉーー


 俺はフリーキックの要領で球体を蹴り飛ばした。


 ハンガーの彼方まで飛んでいく球体は手足をなびかせハンガーの壁に激突するも、何で出来ているのか跳ね返り、とべっちゃんの頭に激突した。


 「あ。」


 「いたそ・・・。」


 すまんとべっちゃん。悪気は無かったんや。


 「球ちゃんにはナノマシン経由で指示を送っておくねぇ。」


 「そうしてくれ。・・・で。ルミコだったか?」


 「ん?」


 彼女は学者と冒険者の二足草鞋での生活に限界を感じているという事で、冒険者家業を休業し、

ロペの引っ越しの手伝いをするのと同時に、自身も住み込みでこちらに合流する事にしたという。


 「学者ねぇ。専門は?」


 「私の専門は異世界。まぁ・・・昔のロペに当てられた口なんだけどね。

君の傍に居ればそのうち異世界にも行けそうな気がしてるんだ。」


 いずれはそうなる様にするつもりではあるが・・・。


 「気の長い話かもしれんぞ?」


 「良いってそれは。冒険者家業を休業している以上、飯の種が必要だし。」


 飯のタネ・・・。あ。そう言えば・・・。


 「ロペ?うちってそう言えば給料みたいなの払っていたっけか?」


 「?いいや?何も?だよ?」


 「え”っ!どうやってこんなに大勢を無給で!?」


 無給って言うか、生活共同体って言うか・・・。指名手配されていたような娘も居るからなぁ。

外には殆ど出してやれないし、金をやっても使える機会なんか・・・。


 「通販も出来ないしなぁ。」


 「なんでさ?」


 ロペはあちゃー。とばかりに、頭をポリポリ掻いて説明を始める。


 「言い忘れたけど、ここに居る娘は全員、元ヘルフレム監獄の囚人だから。まだ刑期も終わっていないし、全員の死亡が認定されるまで脱走状態だから・・・。そういう事は出来ないのさぁ。」


 この世界のインターネットの様なもの、亜高速通信網は個人認証が必要で、犯罪者には利用できないようになっているのだ。そう言った事も含めて丸ごと解決するのが、ナノマシンには可能なんだが・・・。


 「そ・・・そうだったのかぁ・・・。なんか怖そうな人が多いと思ったんだ・・・。」


 「ケンカするなよ?」


 「しないし!むしろやられるわ!」


 話が一段落着いたところで、俺はいつの間にか用意されていた朝礼台の様な所に案内る。

皆が見渡せる高さになっているようで、全員の顔やら特徴をナノマシンにインプットしていく。

これで不用意に離れた所で死なない限り、再生してやることが出来るだろう。

これから先はちょいと大変かもしれないしな。


 「色々指示されている忙しいなか良く集まってくれた。今日はこれからの身の振り方について俺から話しておく。」


 壇上の俺に注目が集まる。怪訝な視線を向けるもの、疑いの視線を向けるもの、熱の入った視線を向けるもの、様々だ。


 「俺たちは言うなれば海賊の様なものだ。そしてお前たちはまだ犯罪者のままだ。」


 ざわつくハンガーにロペの静かに。と言う声が響き、もう一度静まり返る。


 「俺の目的はこの世界の侵略者。異世界からの侵略者をどうにかする事。今のところそれだけだ。

そしてこの世界には、侵略者と裏で繋がっているものが居る可能性がある。

まずはその可能性を潰し、責任を取らせる。しかる後侵略者を根絶する。

まぁ、恭順の意を示すものには相応の対応をするがな。何か質問のある者は?」


 質問を呼びかけると、数人から挙手が有り、俺は適当に近くの奴を指し、促した。


 「四番艦ベリス機動兵器担当、モーニャ・ティンクです!

進言します!当艦隊には機動兵器が足りません!人があぶれているであります!

後娯楽が足りません!自分達がお外に出られないのは分かっているでありますが!

折角お外に出たのにもっと色々したいであります!おうちに帰りたいであります!」


 ふむ。以前話を付けたと思っていたのだがな・・・。


 「チョットあなた・・・「いい。俺が言う。」・・・はい・・・。」


 アミィが彼女に道理を叩きつけようとしていたが、これは恐らく俺の仕事だろう。

道理など通らん。


 「ではモーニャ、一つ訊ねるが。行方不明の指名手配者が街に出てどうなると思う?」

 

 そう訊ねた途端彼女の顔が青くなり、一歩後ずさる。


 「そ・・それは・・・。」


 「どうなる?」


 「た・・・逮捕されるであります・・・。」


 「そうだな。」


 見れば彼女はまだ未成年に毛が生えた程度のお年頃だろう。年齢的には大人とはいえ、甘えが抜けきっていないようだ。


 「娯楽は建設中だ。うちに帰ってどうなる?家族は生きているのか?

ヘルフレムに居た者の大半は冤罪で叩きこまれた者達ばかりだった。

つまり、その手の人間がこの世界にはかなり多く居る、そういう事だろう。

そんな奴らが、口封じをしていないと思うか?自分が逮捕された時の事を思い出せ。

そして面会に訪れた家族は居たか?この船からでも確認はできる筈だ。通信可能な者は限られているがな。」


 俺は言葉を切って周りの者を見る。特に気にしていないものも大勢いる中、すすり泣くものも少なからずいる。見ている限り、比較的若い者から怨嗟の声も聞こえてくる。

以前と同じ・・・では無いか。だが、似たようなものだ。


 炙り出す必要があるな。今後に支障が出る前に再教育を施さなくてはならない。


 「ふぅ・・・。うちに帰りたいものは前に出ろ。そうでない者はそいつらを前に連れてきてやれ。」


 そう言って速やかに動き出したのは、シャトルで俺に恭順を誓った者達だった。彼女らはゴミを見るような目で、帰りたいと願う若い者達を俺の前に引き摺り出した。


 「痛いっ・・・どうして・・・。」


 仲が良かった同士なのだろうか、隣り合って俺の話を聞いていたうちの一人がもう一人の腕を掴んで俺の前に引き倒した。


 「これで全員か?」


 静まり返ったハンガーに俺の声と、すすり泣く若い女たちの声だけが響く。

大体百人ぐらいだろうか。結構な人数が引きずり出されてきた。


 「良し。改めて聞こう。」


 床に引き倒された女たちは目の前に来た俺を見上げて次々と要求を出してくる。


 俺はそういう事を言いたいんじゃないんだがなぁ。


 「おい、誰かこの馬鹿どもを黙らせろ。」


 「ハッ!」


 凛とした声で前に踏み出したのは・・・。ティオレ・アンク。ダークエルフとも呼ばれる月出身のエルフ種の女だ。

体格も良く、百八十はあるだろうか背筋も伸び、女騎士と言う表現がよく合う銀色のロングヘア―にちょっとたれ気味の耳がよく似合う。

釣り目がちな細い目が、より威圧感を増す要素になっているが、端正な顔立ちは見る者を魅了する美しさだ。


 「ティオレ一応加減してやれ。」


 俺そう声を掛けてみたが・・・。


 何故かティオレは俺の方を見て頬を赤らめ、潤んだ目でこちらにすすすっと、寄ってくる。


 「わ・・・私の名前を知って・・・・。」


 はぁ・・・。そっち系の娘だったのか。

俺は空気が変わるのを懸念し、ティオレの尻を叩き、続きを促す。


パーン!


 「ひんっ!し・・失礼しましたっ!!」


 改めて一歩前に出るティオレ。


 「重力操作グラビトンコントロールステージワン。五倍。」


 そう言って彼女が手をかざすと、集められた若者たちがカエルを潰したような声を出し始める。


 「グェッ・・・。」「ぎぃ・・・!」「たすけっ・・・ぐぇ。」


 「ティオレ、どのぐらい続けられる?」


 「はっ。この程度なら一週間は可能です。」


 帰ってきた返事が俺の想像の遥か上を行くものだったので、俺は少し思考が鈍った。


 「・・・。お・おぅ。そうか。まだ全然大丈夫そうだな。」


 俺が押しつぶされようとしている女たちにそう声を掛けると、それぞれ恐れや悲しみ、憎しみのこもった視線を向けてくる。


 「改めてお前たちに聞こうか。恭順か死か。選べ。死を選ぶものはこのままミンチになるまでここで見ていてやる。ここはそういう場所だ。」


 「く・・・狂ってる・・・。」


 一人の女が俺にそう言ってくる。


 「ハッ。自分の認められない物事に対して理解を示せないのは、未熟な人間の証だな。

理解する必要も無いし、そう考える意味も無い。俺からすれば、今の状況で狂っているのはお前達だぜ?

忌野際でそんな相手の神経を逆撫でする様な事を言うんだからな。お前の一言で他の奴が一緒に死ぬリスクが跳ね上がってしまった事が分からないか?」


 「じ・・・自分はぁ・・・雨宮様について行くであります・・・・!!でも・・・お母さんに会いたいでありますぅ・・・・。」


 ほう・・・。中々根性があるじゃないか。最初に俺に楯突くだけの事はあるな。


 「そうだな・・・可能な者だけ対応したいところだが・・・。そうだな。」


 ・・・閃いた。


 と言うか、ナノマシンで調べたらいいだけか。


 俺はナノマシンに命じ、マギアシリーズに乗員登録されている全員の家族とその状況を調べさせ、現在ここで潰れている奴らのものを、プリントアウトした。


 どれどれ・・・。


 ・・・。これはあかんなぁ・・・。


 「雨宮様?如何なさいましたか?」


 ティオレが心配そうに俺の方を向く。そんな顔をしていただろうか。


 「ふぅ・・・。そうだな・・・丁度いいか。聞け。ティオレ、緩めてやれ。動けないレベルでいい。」


 「承知しました。三倍。」


 肺の中の酸素をすべて吐き出しつつあった女たちは、命に危険が無くなった事で安堵した様子だ。


 にしてもすごいな・・・。重力五倍だぜ?普通死ぬぜ?それでも大丈夫なこの娘達もそうだが、それを完璧に見極めて、ギリギリを責められるこのティオレも只者じゃない。


 「サクッと終わる話だから、直ぐ済ませておく。お前たちの家族は全員死亡が確認できた。

死因は様々だが確実に殺す事を目的とした方法で死んでいる。口封じだろうな。」


 俺が確認の取れた事実を話すと、目を見開いて嗚咽を漏らす女たち。

それもそうだろう。彼女たちからすれば捕まった理由すら不明なのだから。

今ここに捕まっている者達には一つの共通点がある。

それは、生まれのルーツに教会国家と言う場所が絡んでいる。そして・・・。


 「ここに居るお前たち全員に言えることだが。

家族を殺したのはクロスチャーチルとかいう奴らである可能性が非常に高い。」


 この名前は以前ござるから聞いている。テロ組織だという話だが・・・。

根の深そうな問題が有るのかもしれないな。


 この話を聞いた数人は、覚えがあるのか何か思いふけっている。

そして押し付けられた者達から、抵抗の力が消えた。


 「ティオレ。放してやれ・・・?ティオレ?」


 なんだ・・・?顔色が悪いな?


 「雨宮様。自分は・・・。これからもあなた様の忠臣として、生きていたいです。」


 「あぁ。それは自由にしてくれてかまわないが・・・。どうした?」


 「私はこの重力を解放した後に、この者達に殺されるかもしれませんので。」


 なに・・・。


 すると、俺の傍にござるが現れた。


 「其方自身で言うでござるか?何なら拙者が・・・。」


 「こう言っては何だが、私は一切関りの無い事なのでな。」


 そして重力を解き放ち、彼女たちにとって重要な話が飛び出した。


 「私はヘルフレムに入るまでずっと、クロスチャーチルとして活動していた。」


 その声を聴いた途端、魔法、スキル、銃弾、様々なものがティオレに襲い掛かるが、

全て俺の見えない触手で止まる。


 「ティオレ。」


 仕方が無いという表情でティオレは再び重力の檻に全員を閉じ込めた、


 「お前たちの気持ちと考えは分かるつもりだ。だが・・・。いや。お前たちにとって重要な事では無いかも知れないが、私がヘルフレムに入ったのは、三百年ほど前の事だ。それから一切外界とは接触していない。」


 それはそれで驚きだな。長老と言う言葉が俺の頭をよぎるが、スルーしよう。


 「ふぅ・・・。物分かりが良いと助かるんだがな。ティオレ、それにモーニャ。お前たちは今晩やる事が終わったら俺の部屋に来い。

今日は色々忙しいだろうからな・・・。」


 そして俺は他の者達を見た。


 「すまないな。折角の集会だったが、面倒になってしまった。今日の所はお開きにしよう。

皆よく堪えてくれた。これから一度フリースコロニーへと帰還する。準備出来次第順次発進を・・・。」


 「あの・・・。」


 ん?


 「その・・・。」


 一人のロリっ娘が俺の前に歩み寄ってきた。この娘は見覚えがある。シャトルで俺の足元に居た娘だ。

名前は何と言ったか・・・。そう、バルバラ。バルバラ・マキシモートだ。

垂れた犬耳がかわいらしい、ドワーフと犬系獣人のハーフだ。


 「あの・・・。」


 バルバラの目線に合わせて膝をついた。この娘の身長は百四十ぐらいだろうか。

流石に五十以上離れているとこの距離では首が痛い。

近いのだ。


 「何だ?言って見ろ。」


 「待て出来たご褒美がほしいですぅ・・・・。」


 俺は今どんな顔をしているだろうか?

こんな事があった後でも、平常心と言うのは非常に心強い。

だがなぁ・・・。


 俺はつい頭を撫でてしまった。


 「はふぅ。」


 「はぁ・・ご褒美っつってもなぁ・・・?」


 俺はロペを振り返るが、ロペはやっちまったな。と言うようなジェスチャーで頭に手を置く。


 それから僅か数秒後、俺は獣人系女子からの頭を撫でて、と、そしてそれ以外からのハグコールに全て応えることになった。


 「他のものは作業に戻れ。あぁ・・・分かった・・・わかったから・・・。こら・・すりすりするんじゃない。首を引っ張るな・・・。ああもう・・・。」


 タガが外れたかのような女たちのラブコールの中、複雑な表情な家族を亡くした者達は、

艦内警備担当者によってそれぞれの担当官の営倉に、暫くすし詰めになる事だろう。

そしてこのもみくちゃの中に、ショウコやセイラー、ムラサメ、果ては何時も絡みついてくるエリーなども混ざっていたのは何故だ。

俺はそこからたっぷり五時間は彼女たちをあやすのに時間を費やすことになった。


ーーーーーーーーーー


マギアラビスメインブリッジ


 腹ぁ減ったし、散々な目に遭ったな。だがまぁ。不満がたまるのは分からなくはない。

そもそもがヘルフレムに入れられるような理由が無い者達だ。だが・・・それ等にいちいち対応していてもな。

だがなぁ。俺はフェミニストなのか?何とかしてやりたいという気持ちも僅かにある。それと同時に完全に掌握しきれていない自分にも腹が立つ。

こんな反乱紛いの事を許してしまった俺にも責任の一端はある、クロスチャーチルか・・・。

正直面倒しかなさそうだったから、避けようと思っていた奴らなんだよなぁ・・・。


 「銀河様?こちらの準備は何時でもよろしいですわ。」


 「あぁ。イントたんチェックが終わり次第発進準備開始、艦隊でフリースコロニーへ向かう。

コロニーとジェニへの連絡をしておいてくれ。」


 「了解です。各艦へ通達・・・。」


 一波乱過ぎ去ったと思ったらまた波乱・・・。まぁ前回のは俺の自業自得なんだが・・・。

はぁ・・・。やっちまうかぁ。クロスチャーチル。


 「ロペ。クロスチャーチルについての情報を集めておいてくれ。」


 「らじゃりまー。ティオレちゃんだっけ?彼女への聞き取りは今夜?」


 「そのつもりだ。美味しくいただくとしよう。」


 「それ何だなぁ。私も時間があったらまざるぅ。」


 「好きにしろ。」


 今このブリッジには、改めて配属が決まったメンバーが居る。

火器管制は切嗣が今まで臨時でやっていたが、専門家が見つかったので交代になる。

彼女は・・・と言うか元々軍人でブリッジクルーだった事も有る、センリ・ギオボルト、ロペの部下の一人。


 「火器管制システムオールグリーン。まだ試し撃ちすらしていませんが・・・。データ上は問題ありません。」


 ・・・?こんな娘だったっけ?


 「センリは、あそこに座ると元に戻るというか、大人しくなるのよぅ。」


 きっとひどい目に遭ったのだろう。元々箱入りのお嬢様だったらしいからなぁ。


 そしてオペレーターに新庄が入る。こういう時は機人種が役に立つと、自ら志願してきた。

他にも機人種はいるが、対人戦略には一日の長があるという事も有り、他を出し抜いて俺が指名した。


 そしてブリッジマスコットのエリー・・・。冗談だ。エリーもハイスペックな能力を活かすために、

オペレーターに入る。対艦隊戦略のエリー、対人戦略の新庄、対異世界戦略のイント、現段階では最高の配置では無いだろうか。

俺に足りない部分を補う人間がいっぱいだぜ。俺何もしなくてよくね?

他にもダメージコントロール担当だとか、艦艇防衛担当だとか色々いる、総勢二十名ぐらいこのブリッジに居るな。


 「あ・・・ぎ・・・ぎんがさん!システムチェックオールグリーン各艦発進準備完了です!」


 照れておるこやつめ。


 「雨宮、フリースコロニー及びジェニファー女史への連絡もついた。」


 「銀ちゃん!周辺宙域敵影無し・・です!」


 「艦内通達おっけ~何時でも行けるよん。」


 「全艦発進。進路を確保し次第、亜高速航行に入る。」


 「全艦発進、進路確保担当艦前へ。」


 「進路確保確認。亜高速航行へシフト。」


 「アンジーちゃん!」


 「ブースト段階加速開始。20秒後に亜光速に入ります。」


 「了解。各艦カウントダウン。」


 「4・3・2・シフト!」


 モニターに映る景色が徐々に引き延ばされるように流れていく。


 加速時のGは全くと言って良い程かからない。何故なら・・・。


 「イファリス。マジックサーキットの調子はどうだ?」


 「はい。問題ありません。隅々まで魔力が行き渡るのを感じます。これなら戦闘にも十分耐えられるかと。」


 元々イファリスは別の艦の艦長候補としてリストアップされていたが、探せばいるもので、相応の力を持ったものが後から後から、ボロボロ出てきたので、本人の希望によりラビスに残ることになった。


 「あ・・・。えっとマジックサーキットシステムオールグリーン・・・です。はい・・・。」


 「ぷふっ。今更だねんイーちゃん。」


 エリーの吹き出しに釣られて他のものも表情が緩む。


 「さって・・・。アンジー?」


 「まもなく安定速度に到達します。」


 本来なら、手動での艦艇操作は必要ないのだが、勘が鈍ると困るとの事で、普段から三人の総舵手がローテーションで操縦する事に決まった。

もはやお馴染みとなったアンジー。彼女はホントに何でもできるな・・・。メカマンの卵だったり、経営者だったり。

オールマイティーと言うかなんというか。


 その他に、元々戦闘機乗りだった、コフィ・ミトラクル、旅客船の総舵手をしていた、ビューレ・マレクレア。

この三人がラビスの総舵手・・・。メイン総舵手だ。今は他にもサブ総舵手として訓練中のものが数人、各艦に他の担当を持ちながら配属されている。


 まだまだ新造戦艦だからなぁ。モニターしなけりゃならんことが多いから、それに伴ってここの人数も多くなるか。


 最悪の場合、俺一人ですべてを賄うことが出来るが、十隻の艦隊全てを操作することが出来るかは・・・未知数だ。

不可能では無いが、いきなり実践する訳にもいかないしな。


 「銀河様。安定速度に到達いたしましたわ。」


 「よし、各部モニター開始、記録状態を維持しつつ周囲への警戒を怠るな。各部署ごとにシフト体制に移行。ローテーションで動け。以上。俺はサーバールームへ行く。」


 さて・・・。各艦は大体同じ間取りだから、各艦に一基ずつサーバーを作っておいておけば、ナノマシン不足に成る事はまずないだろう。

その為のエネルギー源はその辺を漂っているデブリで十分だな。エコロジーエコロジー。


 「イファリス。そう言えば訓練は上手く行っているのか?」


 俺は頭の上に有る魔導コントロールシステムのシートに座るイファリスを見上げてみる。


 「ぼちぼち・・・といった所でしょうか。帰還するまでには・・・と思っていましたが、根が深い自堕落と言うか、怠け者と言うか・・・。雨宮様、一度彼女のスキルを使用禁止にしてみても宜しいでしょうか?」


 「スキル?あいつ使った事無いようなことを言っていなかったか?」


 「彼女のスキルは使うのではなく、そういう状態を作る物なのです。つまり・・・。」


 「パッシブスキルか。」


 「そういう事です。しかし今私たち全員に魅了耐性が付与されています。彼女はそれでも他のものに頼ることを止めません。そして・・・。彼女は嘘をついています。」


 「嘘?」


 「そうです。彼女はスキルの事を熟知しています。彼女はエルフです。長い時間を掛ければそのスキルを分析する事は容易です。

それを使った事が無い知らなかった・・・。そんな事が有り得るでしょうか?私は無いと思います。恐らくですが、彼女のスキルはかなり強力です。

しかもほぼ完全にコントロールされているのではないでしょうか?・・・あくまでも私の推測の域を出ませんが、ほぼ間違いないと思います。」


 そうか・・・自信があるというか、完全にスキルに依存しているのかもしれないな。

そう言うと麻薬みたいだな・・・魅了スキルと言うのは。


 「分かった。試しにやってみるか。」


 俺は眷属として進化したフェインのスキルを、テンプテーションから努力の申し子とか言う謎のスキルに交換した。

詳細を確認すると、努力することに快感を見出す事で、それを永遠に続けることが出来るという物らしい。

どんな物事も努力することが出来るものだ。アイツは何に目覚めるのだろうか。

そして努力に目覚めた後にスキルを元に戻したらどうなるだろうか?

人で遊ぶのはモラルが・・・なんてことは俺にはない。


 「どうなるのか楽しみだな。この後も訓練するのだろう?」


 「はい。警戒態勢が解かれましたので、これから引っ張って行こうかと思います。」


 フェインはイファリスともう一人、厨房に居るキャンと三人で一チームである。

因みにフェインは今は配属は無く、今も自主訓練中・・・の筈だ。スキルが変わった事でいい変化があるといいんだが。


 さて・・・俺も例の空き部屋に向かうとするか。


 俺は艦長席のシートから立ち上がり、サーバールーム予定地へと向かった。


ライプリー・レシュ 31歳 機人種 元スペースワーカー開発設計者


 元ウィザード社のゲルンシリーズ開発責任者。商業連合に存在する連合メカニックスクールの主席卒業者。

卒業後まもなくゲルンシリーズの開発に着手、シリーズの処女機、ゲルン・ソードはウィザード社を代表する売り上げを誇る主力商品として、各国に販売され、多くのマイナーチェンジを求められる程の人気機種となった。それ以降ウィザード社の主席開発者として、主力商品であるゲルンシリーズに力を注いできたが、ゲルン・ガウス開発の一連のごたごたに巻き込まれ、罪状不明のままヘルフレム監獄に投獄される。

個人の戦闘力はほぼ無いが、内勤チームと一員として、ネシアの主催するトレーニングに参加し、徐々にシェイプアップしていくことに喜びを見出しつつある。

再配置後は、改めて雨宮専用ハンガーの責任者として、新型機の武装開発から、新技術の開発に尽力している。

個人的な戦闘能力はまだ皆無に等しいが、スペースワーカーのパイロットとしてはかなりの腕を持っているが、パイロット強化スーツを着用しないとスペースワーカーに登場する事を禁止されている。


ルミコ・イバナガジマ  30歳 人種 元冒険者見学者


 天王星ダンジョン専門の冒険者と、ダンジョンのモンスターを研究する学者をしていたが、トベツを教育し、ヘルフレムに収監するためにロペに依頼され

パーティ『銀河研究会』を結成、三人でダンジョンに潜り油断させたところでトベツをロペの造った地下牢に監禁。自身の知識を叩きこむ。

そして、全ての知識を叩きこんだ後、ロペによって別の場所に軟禁されていたが、生活自体に不便が無かったため、特に不満も無く学者業を続けていた。

ロペのアパートの近所に住んでいた事も有り、ロペがマギアラビスに引っ越しする際に共について行き、マギアラビスの資源管理官に任命される。

集会にてトベツと再度で合うが、トベツ自身には特に興味が無く、むしろ不潔な状態を何故か保っていたトベツをあきれた様子で見ていた。

どちらかと言うと研究対象として雨宮の体を調査してみたいと思っている。

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