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EP20 世界を揺るがす新兵器

最近温かくなってきましたねぇ。

 「ファムネシアさん・・・・!!はぁっ!!はあっ!!ちょ・・ちょ・・っとまって・・・・!!」


 「いけません。あと一時間以内に私を追い抜かないと、朝食が一食抜きになってしまいますよ?」


 一悶着あった翌朝、艦内を二組のトレーニング集団が通り抜けていく。


 一組はファムネシアを先頭とする内勤チーム。


 もう一組がロペを中心とする、戦闘探索チームだ。


 俺の知らない間にどうやらファムネシアはロペと相互に情報交換を繰り返していたらしく、以前に比べて格段に感情表現豊かになっている。

それだけでは無い、この世界の情報や軍の訓練、商業情報などを改めて学んだらしく、かつて無い活力に満ちていた。


 「アミィさん。一度でも私を抜けば終了ですよ。他の皆さんもあと五十分です。マスターの家来として恥ずかしくない実力を示してください。」


 「「「「「「「「「「はいっ!!!」」」」」」」」」」


 ・・・おい。

家来ってなんだ。


 この集団をヌ―の大移動と表現するなら、もう一組は・・・サイキック誘導兵器とでも言うのだろうか・・・?

常人ではありえない動きでの鬼ごっこを繰り広げる、チームロペ。


 「おねーちゃん速すぎッ!!」


ダン!!


 寸での所で逃げられ、地団太を踏んでいるのは、過去に一度ロペの地獄の訓練を乗り越えた一人、ロペの実の妹アメリアだ。


 「アメちゃんまだまだねぇ・・・っとっと!」


 大柄なアメリアの後ろから、完全に隠れた状態で馬飛び風に表れたのは、これまたロペの訓練を克服した経験のあるホムラだった。

彼女は流石にこの訓練でスキルは使わないだろうが、それでもあの五人の中で一番線が細いとは思えない俊敏さとパワーである。

その五人のうちの一人であるイファリスは、現在別の場所で新兵訓練・・・。否、地獄の特訓の為にこの訓練には参加していない。

この間色々あったエリーはと言うと・・・。


 「ぎんちゃ~ん!きゃ~っちして~!!」


 むはぁ!!俺の上半身にダイブしてきた。


 「お前ってば何やってんの?」


 「今の私なら結構やれちゃうのだ。」


 そう言って傍から眺める俺の肩車に乗る。


 「ほら、進化しちゃったわけだし。私は。意味が無い事は無いんだけど、他の娘にさせてあげた方がいいかな~って。」


 「あぁ、そういう事か。」


 底上げされちゃってるし・・・って急に軽くなったと思ったら、次はロペが俺の肩に乗っかってきた。


 「エリーだけズルいぃ。わたしもぉ~。」


 若干勢いで首が振られるが何とか踏み止まる。普通の人間だったら首が確実に折れているな。


 「隙アリ!!!でござる。」


 「すきなしっ!!」


 神速の拳が俺の頭上を通り壁に大きな音を鳴らす。


ズン!


 お前もいたんかい~・・・。最近見ないからどうしてたのかと思ったが、元気そうだなござる。


 「殿!失礼を!」


 シュバッ!と音が出るくらい機敏な動きでロペと共に走り去っていく。

その後ろからやや遅れ気味に他のメンツがやってくる。


 「いつの間にか鬼ごっこに変わっていたでござる。なんてな。」


 「切嗣、良いのか?追いつけなかったら朝飯無いらしいぞ?」


 後ろからゆっくり追いかけていたメンツは驚愕に顔を歪ませ、次の瞬間には消えていた。


 眷属化していなくても、凄い奴は凄いって事だな。


 「頑張れー。」


 みんな訓練頑張ってんなぁ。


 そんじゃぁ、俺も飯食って、やることやるかぁ。



ーーーーーーーーーー


食堂にて


 「いたーっきまーす!」


ガツガツハムハム!


 そんな俺をカウンター越しに眺める三人。


 「相変わらず食い方は綺麗なのだなぁ。」


 「ボス可愛い。」


 「私たち訓練参加しなくてよかったのかなぁ?」


 セイラーはテキパキと次に来る者たちの食事の支度をしながら、ちらりと俺を見ている。

後の二人は昨日の内に手が足りなくなると思い配属させた、料理スキル持ちの二人。エルフのキャン、そしてデーモンのムラサメだ。

二人とも厨房に配備されてはいるものの、元は名うての冒険者だったらしい。

偶然にもこの二人はたちの悪い金持ちに求婚され、それを断った事でヘルフレムに冤罪で叩きこまれたという共通点を持つ。

しかも監獄内で分かった事らしいが、二人とも同じ金持ちに求婚されていたらしい。

二人によると、酷く性格が汚くて醜いとの事。あれと結婚するぐらいなら死ぬ。とムラサメは言い、奴の妻という事が汚名に聞こえるとはキャンの感想だな。


 「雨宮。この後お前はどうするんだ?採掘はまだ丸一日は掛かりそうだぞ?」


 セイラーも言うように、時間がまだあるのだ。正直俺が何かをする必要があるかと言えばそんな事は無かった。

この船のマニュピレーターアタッチメントには様々な種類が有り、それを駆使する事で、ちまちまとスペースワーカーを使って採掘するより、断然効率が良かった。

昨日俺が見たのは、丸鋸まるのこのような巨大なアタッチメントで、小惑星を真っ二つにしている所だった。


 もう俺の目の中から星が飛び散っていたんじゃないかって言う位感動したね。モニターに張り付いて見てしまったわ。

あの時マニュピレーターを操作していたのは、元々重機など、作業用機械の扱いになれていた、メロウとホビットのハーフのナナコだったかな。そんな名前だった。

神がかったマニュピレーター捌きで、小惑星から一定量の鉱物を切り分けていくあの姿に俺は感動した。

俺も時間が有ったら練習したい。今は流石に作業の邪魔になりそうだから、やめておこう。


 「俺はこの後スペースワーカーを弄りに行く。」


 そう言うと三人は、あぁあれか。と多少呆れているような苦笑で俺の視線を返した。


 「産業廃棄物ですよね?あれって?」


 「ばっか!それをこれからリサイクルするんよ!壊しても微々たる金額だし、俺の遊びにゃもってこいなんよ!」


 「遊びってぇー。」


 遊びも本気で。これは結構マジな話だ。何をやるにも手を抜くと痛い目を見るのは自分だからな。

昔・・・、前世の俺はこれで何度も泣きを見た。


 「楽しい事するのが一番のホリデーよ!」


 「まぁボスが楽しいならそれでいいんですけどね。」


 俺は箸をおき立ち上がる。


 「ごっそさん!今日も旨かった!三人とも言い嫁になれるな!」


 そう言うと三人は顔を赤くしそれぞれ明後日の方向を向いた。


 「片づけるからさっさと行けよぅ。」


 「ん。じゃな。」


ーーーーーーーーーー


雨宮専用零番ハンガー


 「おおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおお!!!!」


 俺の目の前に広がるのは十機のゲルン・ガウス。見た感じが普通にカッコイイのがやはり残念だ。

これで産業廃棄物ってのは、初めて乗った奴には分からんよなぁ。

まさに新型詐欺。


 さーってと・・・。まずはどいつから弄ってくれようかのぅ・・・。

今の俺はエネルギーも満タン。やる気もマックスだぜ!


 まずは・・・そうだな。このゲルン・ガウスを普通に使えるようにして見るか。


 ナノマシンを・・・そうだな・・・網の目状に展開。ゲルン・ガウスの頭からまずはスキャンだ。


ーーーーー


 ゲルン・ガウス 汎用スペースワーカー(故障)


 状態 アーム破損

    レッグ可動域不足

    コックピット開閉装置破損

    メインモニター無し

    スタビライザ―なし

    ラジエーター無し

    エンジンパーツ不足

    バックパック接合部破損

    エネルギータンク無し


ーーーーー


 敢えて言おう。ゴミであると。


 ・・・にしても見た感じスタビライザーは付いているように見えるんだが・・・?


 俺は近づいてよーく見てみる。するとこれは・・・。


 「段ボールじゃねーか!!色塗ってあるだけじゃん!!!」


 俺は勢い余って引っぺがしてやろうかと思ったが、その勢いのまま更にぶっ壊れそうだったので何とか踏み止まった。


 いくら中古品ったって、このごまかしは無いわー。

無かったら無かったで、べつにええっちゅーのに。わざわざゴミを引っ付けて寄こさんでもええやないか・・・。


 「雨宮様。もうこちらにお越しでしたか。」


 む?だれだ?俺のハンガーに入ってくる奴は。


 「だれだ?」


 「あ・・失礼しました。私はこのゴミ・・・いえ、ゲルンシリーズの前の設計者をやっていました、ライプリー・レシュです。

ロペ様から手伝って欲しいと言われまして、来ました。」


 手伝うってもなぁ・・・。あ・・・。そか。そうだな。

流石ロペ。気が利くなぁ。俺の頭じゃ足りないだろうことを見越している。

情けないが、自分で学ぶと決めたからな。これでいい。


 「気軽にライとでも呼んでくださいね。ボス。」


 むむむ・・・。リア充の臭いがする・・・。気のせいか・・・?

俺がコミュ障なだけか?


 「あぁ。よろしく頼む。さっそくなんだが・・・。」


 俺はスキャンの結果を伝え、一から作り直す事を説明した。

するとライは立ち入り禁止の柵を乗り越え、マシンの足元に行って何やら調べている。


 「何かわかることが?」


 「はい・・・。この機体は一度しか動いた形跡が有りませんね。恐らくここに運ぶ時に起動して壊れたのでしょう。つまり・・・。新品なんですよね・・・。」


 マジか・・・!業者も焦っただろうな、折角買い手が見つかったのに自分で壊したとかシャレにならん。

道理でさらに半額になっていた訳だ。


 ?


 という事は?



 俺は全てのマシンにスキャンをかける。すると案の定全ての機体が故障していた。


 「俺も壊してみたかったのになぁ・・・。」


 「それもどうかと思いますが・・・。」


 何と言うか・・・。THE秘書。と言うような感じでとても良い。

纏う空気感も取り繕うような事が無いからか、柔らかくそして心地よい。

まさにいい女代表のような感じだな。体の線は細く、胸もささやかだがそこはかとなく感じるエロス。

・・・じゃない。一つ纏めの金髪お団子に、びしっと決めたスーツが映える。


 「あ・・あの?なにか・・・?」


 「んにゃ。いい人選だと思っただけさ。これからよろしく頼む。俺の頭の足りん部分を補ってくれ。

楽しく遊ぼう。」


 俺がそう言うと上品に笑い、ライは手元の端末を俺に差し出してきた。


 「これが、本来のゲルンガウスの設計図です。この通りに作り直せば。現行のCE社のドルフと同程度の性能は有る筈です。・・・ですが。」


 「ですが?」


 「当時では作れないエンジンや、ジェネレーターなど、内部機構を全部入れ替える必要が・・・。」


 成程。設計図自体は完璧だが、物が作れなかったのか。金が無かったから。

だがそれは何とでもなるな。しかしその設計図を一体どこから持ってきたのか?

まぁ十中八九ロペの差し金だろうな。


 「よし。ライ。俺に設計図の見方を教えてくれ!」


ーーー


 そこから俺は端末を使い半日ほどをかけ、何とか設計図の見方を身に着けた。

ここからがやっと俺のターンだ。


 「イヤー時間が掛かったなぁ!悪かった。」


 「いえ・・・とんでもない。普通この設計図を完全に理解するのに、学校で四年以上学ぶ必要が有るのですから、たった数時間でマスターできるボスはその・・・。とても凄いです。」


 おぉっ。なんか手放しでほめてもらえたぞ!嬉しいやん。


 「ではまずどのようにされますか?」


 「まずは全部の機体を設計図通りに作り直す。・・・必要は無いか。二つぐらいでいいか。」


 俺はそう言って目の前の二機にナノマシンを展開し、分解しそのまま作り替えていく。元々足りないものが多いため、みるみるうちにエネルギーが吸われていく。

とは言っても千分の一も減らない訳だが。

一度光の粒子にまで分解されたマシンは、再び形を成し、設計図通りのゲルン・ガウスが完成した。


 ・・・?これがゲルン・ガウスか?あれ?設計図通りの筈なんだが・・・?


 光が散り、現れたそれはつい先ほどまで見ていたゲルン・ガウスとは似ても似つかないものになっていた。


 「何だか見た目が全く違いますね。」


 俺もそう思う。

俺とライはお互い見合い、首をかしげながらもう一度設計図を見直した。


 「こんなに見た目が変わるものかぁ?設計図がモノクロだから分かりにくかっただけかねぇ?」


 するとライはある事に気が付く。


 「あ・・・ボス。固定武装が有りません。」


 あ・・・。忘れていた。と言うか。


 「この設計図には固定武装が無いぞ?」


 「そう言えばそうですね?汎用型の設計図ですから・・・もしかすると元々無いのかも知れませんね?」


 成程、その可能性はあるな。俺が見たのと、ここに来たのは量産型だからな。

この汎用型の設計図通りにやれば、そりゃ違うものが出来るわな。


 「でも・・・悪くないのぅ・・・。」


 出来上がってしみじみ思う。ついに俺が作り上げた第一号のスペースワーカーが完成したのだ。


 「世に出回っていない汎用型だ。俺が勝手に名前を付けても良いのだろう?」


 「ふふっ。そうですね。センスが試されますよ?」


 うっ。若干ハードルが上がった・・・。


 ゲルンもガウスもこれっぽっちも残っていないしなこれ。似通った名前にするのはやめておくとして・・・。

ライに手伝ってもらったし・・・ライプリー・レシュ・・・。そしてあまみやぎんが・・・・。


 ・・・閃いた。


 「決めた。こいつはレイブ。レイブで行こう。」


 「何か意味が?」


 「ゲルン・ガウスとは全く逆だと、そう思わせる意味もあるが、雨宮の雨とライプリーのイブを取って、レインイブ。

縮めてレイブだ!」


 俺が腰に手を当てレイブを見上げながらそう言うと、ライは顔を真っ赤にして俺の背中に寄り添ってきた。


 「な・・・なんだか二人の子供みたいですね・・・。」


 お。確かにそうだな。


 「そうだな!合作だしそう言うのもいいだろ?」


 「合作って私は何も・・・。」


 「何言ってんだ、これからこいつをオシャレさせるのは任せたぜ?俺は他のコンセプト機を作りに行く。」


 武装の一つも無いのは流石にな。これは設計図通りに作っただけだから、あくまで五年以上前のモデルだ。

これから俺が作るのは、海王星にカチコミをかけるに足る、新型機。俺の考えた最高のマシン・・・のようなものだ。

まぁ・・・。まだまだ知識が足りんしこの力もまだ慣れたとは言い難い。もっと知識や技術を吸収して、更なる高みを目指すべし。


 「お任せくださいボス。ボスのお眼鏡にかなうオシャレをさせて見せます。」


 そう言うとライは、ドックの端に有る扉から、併設された研究施設へ向かった。

きっといい武装を完成させてくれるだろう。


 さて・・・。コンセプト機とはいったものの・・・。この宇宙に居る以上、水中型とか要らんしなぁ。


 ・・・閃いた。


 よし。面白+アルファで行って見るか!


 ・・・って自分で言っておいてちょっとマテ。何をウケ狙いで行こうとしているんだ俺は。

これには誰が乗るか分からんのだから、誰が乗っても大丈夫なようにするのは最低条件だ。

それを踏まえて・・・そうね。強襲型、拠点制圧型、可変型なんかも良いな。後は・・・。

あぁ・・・やっぱり頭から離れない・・・・。

もうこれは一回作っちまうしかないな。


 俺は纏まらない考えのまま、一機のポンコツの前に辿り着いた。

そしておもむろにナノマシンで分解し、俺の脳内設計図に様々な情報を書き込んでいく。

右腕にハンドキャノン・・・左腕にレーザーソード・・・そしてランドセルに・・・高感度レーダー。

レッグにはハンドガンタイプ・・・ランドセルにはこんなあんな・・・・。


 そして光の粒子にまで分解されたポンコツは、原形を残さず新しいマシンへと生まれ変わる。


 ・・・うむ。実に壮観だ。一度でいいからやってみたかったんだ。

さて・・・君の名前は何にしようかな・・・。


 俺の目の前にはレイブとほぼ同じ大きさの・・・巨大な女の子型マシンが正座している。

ハッキリ言って巨人と間違えそうだ。本気で造形に凝ってしまったが為に、見た目は人間のそれと全く変わらない。

だが、腕にはハンドキャノンとレーザーソード、ふとももにはハンドガンがホルスターに入っており、背中に付いたバックパックには展開式のウィング型ブースター。そして・・・。


 「ちょっと欲張り過ぎたかな・・・。」


 胸の上には不思議な模様が浮き出ていて、マフィアとかの愛人がしていそうなタトゥーの様にも見える。

しかしそれは左右対称に描かれている紋章兵器である。


 「まぁ。魔法使いじゃなくても使えるからいいか。」


 そういう問題では無いからな・・・。


 自分で作っておいてなんだが、普通に巨人の女の子って言っても誰も気づかないんじゃなかろうか?

普通に武装してこんな娘が居そうな気がしてくるから、この世界は不思議だ。


 俺は完成した巨人娘型マシンに、借りでテラと名付けた。だが声には出さない。まだ考え中だ。


 てくてくとテラ娘の名前を考えながら歩いていると、もう隣りのポンコツに辿り着いてしまった。

そんなに離れてないもんな。


 テラ娘の頭には流れる炎の様な赤い髪が備わっている。しかしそれは特にこれといった用途は無く、見た目だけのものだ。

伸びる髪にしても良かったかな・・・?


 「さて・・・強襲型で行って見るか。」


 強襲型と言えば一撃離脱。生還する事を目的とした攻撃機だ。

どういう攻撃が良いのだろうか。物理兵器?それとも光学兵器?む~~~ん。

バズーカなんてのも・・・いやいや・・・。

いや・・・何を悩んでいる雨宮銀河。漢だったら・・・アレしかないだろ!?


 俺は脳内設計図に新しいコンセプトを叩きこんだ。

一撃離脱とはいえ一回でガス欠とかダメだな。そこは欲張っていこう。

スピードとある程度の耐久力、そして・・・破壊力!

破壊力と言えば・・・?アレしかないだろ?アレ。

一応他にも簡単な武装を付けておいて・・・よし。


 俺がゲルン・ガウスに手を触れると、それを合図にナノマシンが分解し、光の粒子になる。

そしてその粒子は新しいマシンを産み出した。


 「うむ。ベタだが・・・。まぁ良いんでないか?」


 ヒット&アウェーとはよくいったモノで、一撃で粉砕し戻ってくる。ただそれだけを追求した結果、この形に落ち着いた。


 体積の半分はあるのではないかと思う位の、巨大な加速機構付きハンマーに柄を跨いで座ったままで鎮座するマシンが、目の前に現れる。

腰の両側に可能な限り動きを阻害しないレベルの光学サブマシンガンを装備し、足の裏、腰回りのスカート、背中の小型バックパック、

そして肩に上から2・4・2・2の配列で備えられた計十機ものブースター、索敵もこなして貰う為に至高性の高い高感度レーダーも装備。

そして破格の性能を誇るのが、エネルギータンクだ。これは俺がオリジナルに開発したこの世界でまだ実現していないとされる、超小型エネルギータンク。

しかしこのタンクの中には、従来の液体燃料では無い、液体燃料よりはるかに圧縮された圧縮固形燃料が詰まっている。

戦闘時間にして実に百時間は優に戦える。丸三日間の戦闘が可能だ。だがそんな風に使う事はまず無い。

これは新しい燃料とタンクの実験機だ。敵艦から認識できないレベルの距離から発進し、単機で戦艦、若しくは拠点を一発殴って帰ってくる。

そんなコンセプト機に仕上がった。そしてそういう任務にはコレが必要不可欠だろう。・・・光学迷彩。そしてEMP。

この二つを一つにし、認識される事無く破壊し帰還する認識疎外システム『ジャム』これはまだ改良の余地がある。

創ってから気が付いたが熱探知に引っかかるのだ。それを乗り越えてこそ本当の認識疎外と言えるだろう。

新型エネルギーの事も有り、戦闘中であっても認識疎外を切って戦う必要が無い。サーモセンサーにしか引っ掛からない破壊兵器・・・。

そして多くのブースターによるブレーキ&ダッシュ肩のブースターは稼働型で、いざという時は両足のブースターと合わせて、急制動をかける事も可能だ。

ただし中の人は酷い目に遭う。中々良いのではないだろうか?


 次はそう。重火力タイプだな。


 そうだな・・・。火力、重火力と言うからには実弾だろう。だが実弾は二次災害の危険もあるなぁ。

だがそんな事を恐れていては、高火力はでないっ!

まずは遠距離からの爆撃・・・ミサイルだな。これは外せない。しかも無線誘導型のホーミングミサイルが作れるぞ!

ふむ・・・新しさを求めてみてもいいか・・・。可変型ミサイルランチャーなんてのもどうだろう?

全弾を打ち尽くす事を前提とした、近接武器に変形するロケットランチャー・・・。何事もチャレンジだな!

そしてガドリングガン。これは外せないな!肩にはミサイルを積むから、腕、腰、膝なんてのもアリかな?

稼働エネルギーに余裕があるって素敵。なんぼでも積めちゃう。

後はそう・・・某アニメの死神にあやかって・・・、しかしきちんと攻撃力も持たせた緊急用拡散ビーム。これは胸部だな。

手にも何か持たせたいところだが・・・。あっ。

まだ武装を積める所が有るでは無いか!そう!メインカメラのある頭部!

・・・。そうか・・・俺は汎用マニュピレーターの事ばっかり考えていたな。そうじゃないよな。

本気のマシンってのは、違うよな!


 そして強襲型の横に有るゴミ三つを分解し、俺は夢のいっぱい詰まった重火力型、拠点制圧型とも言える大火力の機体を生み出すべく、ナノマシンを展開し、三機を新生させる。


 現れたのは頭部に超長距離高性能ロックオンシステムを採用した高感度レーダーと、メインカメラを阻害しないレベルで開く口元がキュートな大口径粒子加速砲。そして緊急攻撃用胸部拡散ビーム砲、両腕はマルチマニュピレーターを排除し、グレネードランチャーを内蔵した内蔵型アームとし、その腕には二砲門のがドリング砲、そして腰にも可動式のガドリング砲を二砲門。問題のロケットランチャーはきっちり可変式にしてみたが、一発でも被弾するとひしゃげて使い物にならないかもしれない。ここはまだ要改造だな。ミサイルを打ち尽くした後はアームのガドリングごと覆い被せて、殴れるようにしておいた。グーで。

背中にはこの超重量の機体をぶっ飛ばすべく、小型戦艦クラスの稼働調節が出来るブースターを採用、強襲型と同レベルでのスピードを実現した。

しかし非常に取り回しが難しくなってしまったのではないだろうか?むしろ・・・生身で乗るとGで死ぬかもしれない。

ハッキリ言ってこの機体は強襲型の三倍以上の重量がある。・・・まぁ、やってやれない事は無いか。テスト飛行が楽しみだ。

しかしこの機体はその重さのせいで宇宙空間でしか使用できないな・・・。きっと火星なんかで卸してしまうと大地にめり込んでしまうかもしれない。

そう言うのを緩和するためのブースターなんてつけていないからな。もはや歩く爆弾・・・いや歩くことは出来ないから、漂う爆弾?


 強襲型にせよ重火力型にせよ、頭部のメインカメラの形状と、メインフレームしか汎用型とは似ても似つかない機体に仕上がってしまったな。

だがまぁ派生機体だ。名前はそうベタでいいか。レイブ強襲型にレイブ拠点制圧型。ふふふ・・・こんなもの普通に作っていたら金がいくらあっても足りないな!!

弾薬に一体どれほどの金が掛かるんだろうか?まぁ金はあるんだが、俺がその都度作るのもめんどくさいし。


 さて・・・汎用型一、テラ娘一、強襲型一、拠点制圧型三・・・あっ。最初の方の奴一機ずつじゃダメじゃん。

しかしテラ娘をもう一機作るのはなぁ・・・。まぁ良いか。

俺は特に深く考えず、一機しかない機体をもう一機づつ創り、手を加えていないゴミは後一機になった。


 ふふふ・・・・ここから先は俺専用機の出番だな。俺の機体にはこの世界の・・・と言うか、今の俺の全てを注ぎ込んでやる。

かのマッドサイエンティストな娘バカもこう言っている。逃げ場無しと。

俺専用機から逃げるなどありえないな・・・。


 まずトラクタービームだ。あの技術は何とかナノマシンに寄って手に入れる事に成功した。それにアンジーを眷属化した事に寄って手に入れた空間切断能力・・・いや。

正しくは多次元空間開放能力。アンジーは空間を切り裂いて使う能力だと勘違いしている様だが、実は能力自体はそういうモノではない。使いようによっては時間すら開放することが出来る・・・。

これはまだ俺の推測の域を出ないが、閉鎖世界を解放する事が可能な能力なのでは無いのかと考えている。解放する事とはすなわち制約、制限を取り払い無くしてしまうことを意味する。

使い方を誤ると世界の崩壊も招きかねない。実はそんな能力だった。俺はこの能力の詳細をナノマシンに寄って知った時背筋が凍る思いをした。そんな能力をサラッと目の前で使っていたのだ。

その力の一部を使いこなしているとは言え、もしも・・・もしもクルファウストの標的がエリーではなくアンジーであったなら、既に改造されていたのが美汐でなくアンジーだったのなら・・・。

もしかしたら世界は既に無かったかもしれない。そう思わざるを得なかった。

だが考えようによっては素晴らしい力になる。今この世界の戦艦や宇宙船は、亜光速に迄加速して移動する技術が主流だ。アンジーは自分の力を分析して科学技術によって、この力の現象を実現可能だと言っていた。それはつまり、少し飛躍した考え方ではあるが、いつの日かマギアラビスで世界や時間を越える事が可能だという事に他ならない。

まぁ、今のところは兵器としての転用位しか実現していないが。


 だが・・・。俺がその力を解析する事で全てが解決する。


 するのだが・・・・。


 「エネルギーが圧倒的に足りない。」


 このスキルは何が凄いかと言うとその力だけの話ではなく、スキル自体の情報量が天文学的に膨大なのだ・・・。

恐らく今この世界にあるすべてのナノマシンを動員しても、完全に解析するのに世界が寿命を迎える以上の時間が掛かると分析結果が既にナノマシンに寄って出ているのだ。

これも単にナノマシンが足りない、そしてナノマシンの性能にまだ先があるという事に他ならないと、俺はそうプラスに考える事にした。

そんな事を考えているうちに俺は一つ忘れていた事を思い出した。


 量子コンピューターって・・・この世界にも無くねぇか?今のこの世界に存在しているコンピューターで最も優れているのは、何を隠そう俺のナノマシンサーバーだ。

しかしあれも、中身の記憶媒体に既存のウルテニウムやらオリハルコニウム、ミスリルなどの希少金属を使う事に寄って性能を強化しているだけであって・・・いや。

物理的な技術は確かに優れてはいるのだが、理論的に優れている訳では無いのだ。例えていうなら、背比べをしていてちょっと俺がデカい。そんなレベルだ。

どんぐりの背比べだなまさに。そんなレベルでは話にならないが・・・。無いなら作ってしまおうという話でな?

量子コンピューターって確か、小さいコンピューターを大量に並列に繋いで一つのコンピューターとして機能させる・・・そう言うものだったような気がする。

それなら実現可能だ。そう。可能なのだ。だがそれで現実的な時間で解析を完了させるコンピューターを作ろうと思えば、それこそ天文学的な数のナノマシンが必要だ。

だが不可能ではない。俺の器が大きくなればなるほど、ナノマシンを大量に作る事も出来るし進化させる事も出来る。

だが・・・仮に鼠算式にナノマシンを作るシステムを使って万が一ナノマシンの制御を失ってしまえばそれこそ一大事だ。正直なところ取り返しがつく事態とは考えられない。

そしてそれにはどこからエネルギーを持ってくることになるか?この世界が丸ごと飲み込まれる・・・かも知れない。

世界そのものがどの位のエネルギーを持つモノなのかなんて、全く想像もつかないしな・・・。


 という事で、俺はまず世界各地に散っているナノマシンサーバーをパワーアップする事にした。

普通のスーパーサーバーから、量子コンピューターサーバーにパワーアップする・・・。

どうやら規模を徐々に拡大していくことで、加速度的にサーバーがパワーアップしていくようだ。

俺の脳裏にナノマシンであふれた世界がちらっと見えたが・・・知った事か。なったらなったで俺や、

ナノマシンの底に眠るもう一つの意志がある限り、暴走する事は無い・・・と思う。そうだったらいいな。


ーーーーー


マスター権限により全世界のサーバーのアップデートを開始します・・・全行程の2%を完了しました


 ・・・えっ?

俺の頭の中で認識できないレベルの数列が加速度的に増えていっている様な気がする。

認識できないのだ・・・早すぎて、そして膨大過ぎて。これはやらかしたかもしれない・・・。


マスターへの負荷軽減の為にマスターの精神体を拡張します


 ちょ・・・!


ーーーーー


 「ぐあぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 死ぬっ!!!


 一瞬で意識が拡散するような激痛が襲ってきては消え、襲ってきては消える。

例えようの無い痛みとしてすら既に認識できないレベルの何かが無理やり俺と言う存在を押し広げていく。


ーーーーーーーーーー


 ・・・・っ。


 何だ?ここは一体・・・?


 俺の意識は何もない・・・いや、光の柱が一本だけ、見えない位果てしなく伸びた、上も下も右左も分からない空間に居た。

俺は意志の力を振り絞り、光の柱に近づいていく。


 「っ!!あなたは・・・!!」


 そこにいたのは紛れもない・・・ファムネシアだった。

しかし俺の造ったまだ幼さの残る体のファムネシアではない・・・・凄く・・・大きいです。


 「女の子にこんな事言うのも失礼だが、おっきいな・・・。」


 「少し傷つきます・・・。でも実際に大きいのは分かります。」


 俺はファムネシアの顔の前まで近づいておもむろに鼻を触ってみた。


 「ひゃっ。あの?」


 「ああ、急にすまん。つい触ってしまった。」


 質感とか、実態があるのかとか確認してみたかったのだ。

触った感じは普通の人間と変わらない。そんな気がする。


 「雨宮様・・・一体どうやってここに来られたのですか?私にはいきなりここに現れたように見えたのですが・・・。」


 「それは俺にも分からん。ナノマシンに聞いてくれ。ちょっとやらかしてしまってな・・・。」


 俺はここに来る直前の事を手短に話した。


 「それは・・・とんでもない事と言いますか無茶と言いますか・・・。良く生きていらっしゃいますね。」


 俺もそう思う。


 「成程・・・では恐らくナノマシンはあなたをここに退避させたのですね。恐らく今頃、

高密度精神生命体としてのあなたを更に拡大しているのでしょう。」


 高密度精神・・・?なんじゃそれ?


 「なぁその高密度なんたらって・・・一度聞いたような覚えがあるが、なんなんだ?」


 「そうですね・・・分かりやすく言えば、世界に居る管理者と同等の存在・・・とでも言いましょうか。

権限が有るか無いか、それだけの差しかないのですが、それが大きな差でもあります。しかし・・・。」


 今の俺は最初からロペのような管理者と既に存在としては同等の存在だったのに、更にそれを超越する存在に成ろうとしている。

もはや何なのか分からんな。


 「それって定義するものがあるのか?」


 「一応あります。しかしここから先の情報は私の権限ではお伝え出来ないのです。私もベロペ・・・今はロペさんでしたか。

彼女と同等の存在でしかありません。ただその役割が違うと言うだけで、存在としては同等です。つまり雨宮様とも同列の存在だったのです。

権限もそれに伴うレベルのものしか有りませんので、その情報をお伝えする手段が無いのです。」


 ・・・?

あぁ・・あれか、管理権限とかそう言うのか。意味不明な言葉の羅列に強制的に変換されてしまうあれな。


 「そかぁ・・・。にしてもここに一人で暇じゃないか?」


 「暇です。」


 言い切った。キリッて感じで、言い切った。


 「今の私は自閉モードと言いますか、世界の侵略から身を守るために私自身を守らなくてはならないのです。それ故に身動きが取れないのです。」


 「そうそう。それちょっと聞きたいんだが。世界を侵略してくる奴ってさ、只の人間だろ?言ってしまえば。」


 「そうです。しかし世界には・・・必ず一人、神に、管理者に対抗しうる力を持った存在が産まれます。

そしてその存在は大抵の場合、自らの力に気付く事無く寿命を迎えます。ですが・・・閉鎖世界になってしまった事に寄り、その者は寿命を迎えることなく生き延び、自らの力を使いこなす事に成功し、生存をかけてこの世界に侵攻してきました。、」


 寿命を迎える事が無いのに?生存をかけて?


 「どういう事だ?」


 「閉鎖世界の中では寿命が有りません・・・と言うか、止まるのです。そういう概念が取り払われてしまうので。

しかし、閉鎖世界は消滅します。それは生きる上で世界を移動しなければならないという事です。

そしてこの世界は閉鎖世界では無いので、その者の時間も再び流れ始めます。つまり寿命を迎えることが出来るようになるのです。」


 ん~~~。クルファウストの話を聞く限りは、それで大人しく死にたいとかそういう奴じゃなさそうなんだがなぁ。


 「別に死ぬためにここに来た訳じゃないんだろう?」


 「そう・・・だと思います。私にはそれは分かりません。その者は今狭間の世界、海王星ダンジョンと呼ばれる場所の最奥、管理者空間に居座っています。そのせいで私の監視が届かないのです。とはいっても、見る事が出来るだけで、今は何もできませんが。」


 そんなにリソースを割いているのだな・・・。


 「うむ・・・。そだな。そいつは俺に任せておけ。出会ったら五秒で分解してやる。」


 「取り込んでしまうと汚染されてしまいそうですね?」


 にこやかに笑うファムネシアは、とても新鮮だ。ウチにいる方のファムネシアも大分感情表現が豊かになったが、元になった方は流石に自然だな。


 「まぁ・・・クルファウストの奴が言うには、たいした力を持っている訳じゃ無いみたいだから、

サクッと終わらせて来るさ・・・モノのついでに。」


 俺ってばいつまでも遊びたいお年頃なんだよなぁ・・・。

俺専用機も完成させたいし。量子コンピューターの事も気になってしょうがない。

今あの世界に有る、約二千機にも及ぶナノマシンサーバーが全てアップグレードしようとしているんだ。

世界中で二千機とか少ないと思うだろうが、全然そんな事は無い。一つ一つの大きさが半端じゃないからな・・・。

しかし量子コンピュータになるなら、サイズも大分小さくなるはずだ。ナノレベルの並列コンピューターなんだし拳大の大きさでも、どんなレベルなのか想像がつかない。


 「それにしても、今更だが初めて会った気がしないな。とはいっても分身体の方にはずっとあっているわけだが。」


 「私もこうなるまではずっと見ていましたよ?ベロペと一緒に。」


 不穏な話を聞いた。


 ロペと言いイントたん達と言い、なぜみんなして俺を見ていた・・・?


 ん?


 どうやらナノマシンは目的を達成したようだ。俺の背後から、俺を包み込む何かが俺と一つになっていく。


 「全くもう・・・あなたと言う人は。ここはそんなにホイホイ来て良い所では無いのですよ?・・・ってえぇっ!!」


 ん?んん?ファムネシアがなんだかとっても慌てている。

だが今の俺は身動きが取れない。


 「雨宮さんっ!ナノマシンになんとか言ってあげてくださいっ!私が取り込まれて!・・・・。」


 え?なんて?


 「・・・!・・・・!!」


 ファムネシアの声が聞こえなくなった。と同時に俺自身のアップデートも終わったみたいだ。

力が漲る感覚なんか無いが、とても不思議な感じがする。何と言うか認識できる範囲が劇的に広がったというか、頭の回転が速くなったのかね?


 そう感じていると同時に、今まで目の前にいたファムネシアが姿を消している事に気が付いた。


 まさか・・・攫われた?


 何てな。ナノマシン、元に戻してやれ。


 「こ・・こ・・・こ・・・・。」


 「こ?」


 「怖かったんですけど・・・?」


 今まで動けなかったはずのファムネシアは、俺の目の前にまで歩いてきて正座をする。

しかし・・・。


 「しかも何でさっき迄より巨大化しているんですか!?倍以上大きくなっているんですけど!?」


 ぱっと見で二十メートルはあるだろうか。俺の目の前にはキメの細かい肌の膝小僧。

そして下乳を見上げるというのも悪くない。そしてピンク色のぽっちが・・・。


 「お前全裸じゃん。」


 ファムネシアは俺を包み込むように上半身を倒し、両手で俺を掴んで目の前に持っていく。

必然、視界いっぱいの顔面。近すぎても分かりにくいというのはこういう事か。

俺はファムネシアの鼻を撫でる。


 「ひゃっ。」


 「落ち着け?今のそれは肥大化したお前の力のイメージだ。元の自分・・・普通のサイズの自分をしっかりイメージして固定しろ。そうすれば元に戻れる。」


 俺がそうアドバイスをしてみると、ファムネシアの周りに光が集まり、俺よりも背の低いファムネシアになった。


 「どうですか?」


 上手く出来た事が気に入ったのか、両手を腰に当てて胸を張る。これ以上ないどや顔だ。

しかし・・・。


 「サイズが戻ると急にエロく感じるから不思議だな。服着ろよ?服。」


 俺に指摘されるまで全く気が付いていなかったようで、今更ながら両手で胸と股間を隠す。


 「何か今更って感じもするが・・・。服・・・作り方わかるか?」


 「分かりません・・・作って下さい・・・。」


 素直でよろしい。


 俺は適当に最近ファムネシアの着ていた服を思い出し、色とサイズの違う服を着せた。


 「これは・・・。」


 「つい最近ファム・・・あっちのファムネシアが着ていた服の色違いだ。コロニーで買い物でもして来たのだろう。」


 「羨ましい・・・。」


 ナノマシンに寄ってパワーアップし、余裕が出来たからかファムネシアは少し欲が出てきている様だな。


 「ふぅ。お前も一緒にくるか?ここはナノマシンに任せておけばいいし、ここ以上に進化したナノマシンサーバーを置いておくのに適した場所もなかなか無いからな。

ナノマシンに変わりをさせてみて良いんじゃなかろうか?」


 そんなことが出来るの!?とばかりに驚きを隠さないファムネシア。

まぁ・・・それが出来る事が分かっているのも、ついさっきナノマシンがファムネシアを眷属化したせいなんだが・・・。

これに伴って、ファムネシアの持つこの世界の全てを操作する権限が俺に移譲された。

因みにロペの持っていた権限は、知る権限。理解する権限。進化する権限。この三つだった。


 「行く。私も行く。この世界に侵攻してきた奴を殴ってやるんだから。すっごい怖かったんだから!」


 精神生命体は肉体が無いと脆弱・・・。そんな話をしていたような気がするな。今はナノマシンに寄って彼女も進化したハイパーヒューマノイドの体を手に入れた。

これで、俺、ロペ、ファムネシアと、それぞれ神クラスの力を持った存在がそろい、それに相対するのが・・・。


 「相手は魅了の力を持つおっさんらしいぞ?それも非常に力が弱いと、部下から・・・元部下から言われている。その体で殴ったら死んでしま・・・別にいいのか。もともとそういう運命だし。」


 そう・・・。もう既にロペが予約済みだ。かく言う俺も予約している。

右の頬を差し出したら左の頬も差し出しなさい。そんな気持ち。

慈悲の気持ちで拳をプレゼントしたい。


 「じゃぁ戻ろうか。」


 俺はナノマシンに命じ、この場に新型ナノマシンサーバーを構築させる。

すると目の前に突如として某ドーム球場十個分は余裕でありそうな巨大なサーバーマシンが現れた。


 「は・・・早いですね!?なんですかこれ!?」


 「ナノマシンサーバー。」


 「サーバー!?それにしては大き過ぎませんか!?」


 それがそうでもないんだなぁ。時空間跳躍・・・。つまり世界を渡るようなワープをしようとすると、これでもまだ足りない。

この空間は全然広い様だから、まだまだガッツリ進化させられそうだし、丁度いい。


 「ふふふ・・・我が崇高な目的の為に・・・。何てな。これでもまだ足りないんだ。

この空間一杯になる位にデカくなるかもしれんから、まぁそのつもりで。」


 「戻ってくるつもりも無いので別に構いませんが・・・。ほんとに規格外と言いますかなんと言いますか・・・。」


 「さっ。もどろっか・・・。あぁ・・・。名前はどうしようか?ちっこいほうと被るだろ?」


 「あー・・・。お任せします。」


 「後悔するなよ?」


 俺達はパワーアップしたナノマシンの解析したアンジーの本来の力を使い、元の世界に戻った。



ーーーーーーーーーー


雨宮専用零番ハンガー


 元の世界に戻った俺そして世界には初めて足を踏み入れるというファムネシア。

二人はハンガーのラストポンコツの前で、手をつないだままで到着した。

誰にも見られていないようで安心した。何故なら・・・。

どう言う理屈でこうなったのか分からないが、何故か二人とも生まれたままの姿だった。

だが事後と言うのは表現に無理があるだろう。実際何もしていないし・・・。

何と言うのか・・・ある意味ファンタジーな光景ではある、俺は今、全裸で、全裸のファムネシアの手のひらの上に立っている。


 あれ?おかしいな・・・?俺はそもそも服を着たままだったはずだし、ファムネシアにも新しい服を着せてやったはずなんだが?


ーーーーー


マスターの現世帰還を確認


情報のアップデートを開始


完了


新たに作成された副次器官を生成


制御プログラムをインストール


完了


新たに作成されたプログラムのインストールを開始


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


完了


ーーーーー


 ナノマシンによる更新がリアルタイムで行われる中、ファムネシアは手のひらで光り輝く俺に目を細くしている・・・。


 「ちょ・・・雨宮様!・・・目がっ!目が――――――!!」


 まて・・・ファムネシア・・・左手はそのまま・・・!落ちるから!!!


 ファムネシアも俺が左手の上に居る事は分かっているからか、空いた右手で目を覆い隠そうとするも、激しい光に目をやられ、フラついた拍子に、ラストポンコツ事先行量産型ゲルン・ガウス(故障)に腰が当たってしまい、ゲルン・ガウスを倒してしまった。


 そうだよ・・・ファムネシアデカいんだ。ゲルン・ガウスが大体十メートル位の大きさに対し、ファムネシアは倍以上の大きさがある。

天井に手が届きそうだ・・・。


ガシャーーーン


からからから


パサッ


 音が軽い・・・。一体何で出来ているって言うんだこのポンコツ・・・。後で調べてみよう。


 そんな事を考えている間に、俺の進化?アップデートは完了したようで、徐々に俺の体を覆い隠していた神々しい輝きは消えていった。


 「目がチカチカします・・・。それと何か倒してしまいました・・・ごめんなさい。」


 「あぁ・・・すまんすまん。俺もこんな光るとは思ってなかった。それにそこに転がっているのは元々壊れていたから、別に気にしなくてもいいぞ。」


 「ボーーースーーー!!!」


 む?あの彼方から何かに乗ってくるのはライだった。

何か一輪のバイクみたいなのに乗ってきた。あれチョット乗ってみたい・・・。


 「ボ・・・・!?誰!?で・・・デカッ!!!」

 

 その一言に傷ついたファムネシアは俺を肩に移動させ、その場で三角座りをして顔を伏せた。


 「小さくしてやるから・・・。な?落ち込むな?」


 今の状態なら真正面に回れば・・・。


 「あ・・・あの・・・・?」


 イカンイカン、不埒な事を考えていた。取り敢えずファムネシアを普通のサイズに変更し、適当に服を着せる。

しかしまだ落ち込んでいるのか中々顔を上げてくれない。


 「ライ・・・。彼女も一応女の子でな・・・?」


 「あ!・・ごめんなさいつい・・。」


 「いいの・・・。なんで大きかったのか私も分からないし・・・。良いの・・・ってぇ!小さくなってるぅ!!」


 反応おそ!


 「ボス・・・。壊れてしまいましたね・・・。」


 「ああぁ~。気にすんな。見ろこれ・・・。」


 俺はバラバラになった鉄くずの塊プラスアルファに近づいた。


 「アルミじゃねーか・・・。小学校の自由研究かよ・・・。爪楊枝アートのコックピットとかだったら芸術点あげられそうだな。」


 「えぇ~・・・?アルミぃ?ですか?」


 ライも近づき、散らばった残骸を一つ一つ丁寧に調べていく。

その間もファムネシアは、自分の体をペタペタ触り、ああでもないこうでも無いと一人呟いている。


 「あはは・・・一機五千クレジットの理由が分かりますね・・・。只の張りぼてですねこれ・・・。」


 あらやっぱり・・・?って事は騙されたのかなぁ?

いや・・・敢えてこういう業者を選んだ可能性も否定できない。なんせ選んだのはロペ・・・いや俺か。


 「まぁ・・・形があっただけましだろ。」


 「低いハードルですね。」


 二人で力なく笑いあい、一通り残骸を調べ終わると、俺はナノマシンを使って鉄くずを一か所に集め、力を行使する、


 いやぁ・・・元がゼロに等しいからこれはとんでもなくエネルギーを消費しそうだな・・・。


 そんなふうに俺が考えていると、訓練の終わった戦闘探索チームがハンガーに押し寄せてきた。

凄い騒がしい。何人いるんだアレ?ってか今朝あんなにいっぱいいたか?


 「ぎーんが!」


 ロペが俺を見つけると・・・。


 「キュー――――ン!!」


 体が温まっているのか・・・。


ズン!!!!


 俺の胸にダイブしてきた。


 「ぐはぁっ!!」


 しかし俺は怯まない。何故なら今の俺は以前・・・今朝の俺とは違うのだ。

言わばスーパー雨宮。だが・・・。

たーたったーたらららたーらったあーらったあーらっ。俺の頭の中に某国民的バトル漫画のRPG戦闘音楽が流れた。

このまま殴られそうだ。しかも後ろに何故か岩山があって突っ込みそうだ。


 「銀河きゅん?何かアップデートされて急に全裸にされたんだけど・・・?心当たりは・・・?」


 ロペは笑顔のままで俺の脇腹をくすぐってくる。


 「まてっ・・おうぅ・・・。心当たりと言うか俺が進化したからだっ・・っっっやめっ!!」


 こいつは全く・・・・けしからん・・・。


 「進化したのとその子は何か繋がりが・・・?」


 俺はファムネシアの本体が眷属になった事を含め、向こうの空間で話していたことを手短に話した。


 「あらぁ・・・確かに良く見るとファムネシア・・・。」


 「名前はネシアな。」


 「え?」「え?」「え?」


 「決定、」


 この場に居た三人は何の話か良く理解できないようだが、別にそれはいいか。分かりやすいのが一番だ。


 「チョット安直すぎませんか!?大方後で出てきたからネシアになっただけなんでしょう!?」


 「そうだが?」


 何か?と俺はネシアの方を向いて首をかしげる。


 「も・・もうそれでいいです・・・・。」


 「あきらめるんか~ぃ!」


 ファムでーす。


 ネシアでーっす!


 二人合わせてファムネシアでーす。


 俺の頭の中で色違いのスーツを着た二人がステージに上がっていた。


 「ボス・・・ちょっと可愛そうですよ・・・?」


 なぜうちの娘達は俺の心が読める・・・!?


 「それで?目標は決まったんだよね?銀河きゅん。」


 もちろんだ。


 これから俺専用機を作り上げ、コンテナに押し込まれている・・・あっ!


 「ロペ!ウルテニウムはどうなっているんだ?」


 「えっとね・・・現状採取率が70%・・・弱ってとこかな?今日中にはおわるょ。」


 そうか。なら今使える分もいくらかあるかも知れないな。


 「直ぐに出せる分はあるか?」


 「大丈夫だと思うょ?何か作るの?」


 「俺専用機。」


 「・・・・ずるぃっ!!」


 ふはは・・・なんとでも言うがいい・・・。


 そう言っている間にロペが指示を出したのかハンガーの遮断壁が下り、適応処理を終わらせる。

そしてそこには、大きな工業用コンテナ二個分のウルテニウム原石が山積みになっていた。


 おぉ!これだこれ!では早速・・・変換をして・・・。


 ナノマシンの光に包まれた原石は、ウルテニウムとそれ以外に分けられ、純度100%のウルテニウムインゴットが出来上がった。


 「割と含有率が高かったみたいだな。こんなに出来るとは正直思っていなかったわ。」


 「え?銀河きゅん、これ十万分の一も無いんだょ?」


 は?


 俺はちょっと間の抜けた顔をして居ただろう。

いやしかしいくら何でも・・・。多過ぎませんか?十万倍よりもっとあるって事だよな?

どう考えても収まらないんですけど?


 「その量をどうやって持って帰るんだ?」


 「ん。今みたいに銀河きゅんに分けてもらって、鉱石だけを・・・虚数空間にしまっていこうと思うんだけど・・・。

銀河きゅん。空間共有してもらわないと、私の虚数空間だけじゃいっぱいになっちゃうんだけど・・・。」


 あ?そう言えばそんなものあったな。全然使っていなかったから忘れていたわ。

と言うかウルテニウムの箱入れっぱなしだったわ。まぁまだ出す必要ないんだが・・・。ソウルクリスタルが入っていただけだったし。

もう一個はエンジンみたいだしなぁ。


 んあ?それでもう一つ思い出したぞ?そうだ。ラビスにサーバー造るんだった。後エンジンも積み込んじゃうか。

でもその前に・・・。


 「銀河きゅん?」


 「あぁ・・・聞いてる。分かった。もう大丈夫だ。俺はこのがらくたを使って俺専用機を創る。」


 「あ・そう言えばあの入口のとこに居た無口な巨人の娘は誰?」


 それの事も忘れてた。


 「テラ娘か?あれは人間じゃ無いぞ?ロボだ。」


 「え”?メンズが口説きに掛かっているんだけど・・・?」


 そんなに判らなかったかよ!我ながら恐ろしい完成度だぜ・・・。


 「因みに誰が口説きにかかっているって?」


 「ゲイルと切嗣。」


 馬鹿じゃね?


 ワロス。


 ほっとこ。


 「よし。切り替えていこうか。」


 そう。俺は造るんだ。


 んん・・・。


 俺の中で無数のマシンが俺を使えと呼びかけてくるようだ。

青いマシン、赤いマシン、銀色のマシン、そしてテラ娘・・・。

いやテラ娘は置いておいて・・・。


 無造作に置かれていたウルテニウムがナノマシンに寄って蠢き、形を変える。

二足歩行可能な人型のフレームが形どられ、俺の頭の中で一つのマシンが組み上がっていく。

それを現実に引きずり出すために、俺は自分のエネルギーの他に、この世界に存在するマナと言うまだ研究していない未知のエネルギーも、使用する。マギアラビスを解析して学んだ、マジックサーキット、紋章術。そして、アンジーの力を解析し手に入れた空間を操作する技術。

今の俺の持てる全てを詰め込み、フレームだけのマシンに様々なパーツが虚空から現れ取り付けられていく。


 「うっわ・・・。なにこれ・・・。」


 「ほえー・・・銀ちゃん凄いの・・・。」


 センリとエリーが俺の傍まで来たようだが対応は後だ。

エリーは何故か俺の肩までよじ登ってくる。


 下半身のアクチュエーターにマジックサーキットを施す。

そして素材がウルテニウムに変わった事で可能になった、超小型エネルギータンク兼ナノマシンサーバー。

駆動エンジンはあの箱型を徹底解析した、さらなる小型化に進化したタイプを。

コックピットはアニメで憧れた全天周型上下左右前後360度モニター可能なタイプを・・・。

汎用マニュピレーターに、胸部次元断裂砲、そして右腕に仕込むのは俺の反則パワー、見えない触手。

左腕に仕込むのは、空間ごと削り取る亜空間蝿叩き・・・じゃない。そんな形に変更可能な、ナックル型武装。次元シュレッダー。

こんな事が出来るのも、マジックサーキット技術のお陰だな。

そしてありとあらゆる異常を察知可能な、超次元レーダーソナー。これには電子攻撃機能や隠密機能など、単独であらゆることが可能なように、わがままに色々詰め込んだ。その理由は、空間跳躍機能の為だ。時間座標、空間座標、次元座礁。これら全ての条件を解析してからでないと、空間跳躍は出来ない・・・と言うか可能だがしたくない。ワープした先に既に何かありました・・・じゃ済まないからな。

バックパックの代わりに内臓式展開ウィングを装備し、外部ブースター六基に加え、大型ウイングブースターを使用すれば、理論上亜光速迄加速可能だ。

しかも全身ウルテニウムとオリハルコニウムの合金で作り上げた俺合金の超高硬度ボディ。美汐のシャウトにだって余裕で耐えられるぜ。これ大事。


・・・・ふぅ・・・。思ったよりエネルギーを使わなかったな・・・。

まだ大分余裕がある。・・・上半身にも敢えてスペースを開けてあるんだが・・・。

ええい!作らいでか!!


 俺はついでに俺合金を使い、スペースに収まるサイズのテラ娘をニ十体造り、空いたスペースに収めた。

デフォルメされたプチ娘達が可愛い・・・。若干スペースに難があるかも知れないが、入るから大丈夫だろう。

俺の頭の中で、ぎゅうぎゅう詰めに押し込まれたプチ娘のギャーギャー言う姿が再生されるが、そんな機能は敢えてつけなかったので良しとしよう。


 誰もが目を覆うほどの閃光の中から、深い青を基調とした、十メートルほどのマシンが現れた。


 「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」


 俺の後ろから割れんばかりの歓声が上がる。


 おめーらいつの間にここまで来ていた・・・。

しかも内勤組まで全員来ているじゃないか・・・。居ないのは当直のオペレーターだけか?


 「雨宮・・・これは一体・・・!」


 新庄も見上げながら感嘆の声を上げ、周りを見て回るようだ。

それを皮切りに、他のメンバーも俺専用機に群がるように集まっていく。


 「銀河きゅん。名前は・・・?」


 「そうな・・・。」


 俺はセンスが無い。分かっている。皆まで言うな。


 だが・・・この機体が俺の歴史を作る・・・。かもしれない。


 「そうだなぁ・・・。サーガ・・・サーガ・レイン」


 ふふん・・・。中二心全開だぜ!


 「ふむぅ・・・銀河きゅん。の歴史・・・ねぇ。」


 「じゃぁ・ギンサーガだね。」


 え?ちょ?ジェニさん?


 「お~銀ちゃんサーガ!ギンサーガ!」


 エリーっ!!


 「判り易いねぇ?ギンの間に星でも入れようか・・・?」


 ギ☆ンサーガ?入れるとこ間違ってね?


 「おねーちゃんそれ入れるところ違うよ?ギンとサーガの間にぃ・・・。」


 ギン☆サーガ?やめろぉおおおおおお!!!


 「まてぇ!!!もうギンサーガで良いからそれ以上手を加えないでくれぇ!!」


 締まらない・・・せっかく作ったのに・・・・。



ーーーーーーーーーー


 「あの・・・。」


 「何ですか?ファム?」


 「えっと・・・ネシアさん・・・?」


 「若干納得は行かないんだけど・・・。もう決めちゃった事だし、今更かぁ。」


 「あの・・・逆にしても・・・?」


 「そういう問題じゃないから!!違うから!!!」


 「何て呼べば・・・。」


 「なんでもいいわょぅ・・・。」


 「おねーちゃん?」


きゅん・・・


 何この気持ち・・・。この子は私、私はこの娘。ただの分身体の筈なのに・・・。

このときめく想い・・・なに・・・?


 「あの・・・おねー・・・さん?の方がいいですか?」


きゅんきゅん


 胸が・・・アツい!!!


 「おねーさま?」


キュイン!!


 「それ。」


 「え?」


 「私姉。あなた妹。おk?」


 「は・・・はいっ!!」





艦内は今日も平和だった。 




ファムネシア(ファム) 0歳 ハイパーヒューマノイド。第三超広域開拓世界において、核となる存在の片割れ。

 他世界からの侵攻に遭い、自らの存続が危うくなる前に、核自身が汚染若しくは破壊されることを想定し、人格を持たない部分を世界の中に逃がした。

 しかしこのファムネシアは世界の中に入り込むことが出来ず、虚数空間をさまよっていたところを管理者ベロペによって救出され、ナノマシンの統合AIとして、存在が許されることによって世界への侵入を果たした。しかし直後に雨宮が死に、転生してきたため、管理者ベロペの気まぐれにより連れ戻され、雨宮の寄生体として同化し存在することになった。

ネシアとの話し合いの中で先に生まれたが妹になった。


ファムネシア(ネシア) 0歳 ウルテマヒューマノイド 第三超広域開拓世界において、核となる存在。

 他世界からの侵攻に遭い、自らを守るために隔離空間に逃亡、世界の根幹として最低限の力を維持し続け、救世主を待ち続けるために、防衛モードのままで世界を監視していた。しかし見るだけで何も出来ず、歯がゆい思いをしていたが、進化途中の雨宮に連れ出され、ナノマシンに寄って新しい肉体の実験台にされる。

その際、ベースデータに体長二十五メートルと、ナノマシンに寄ってプログラムされてしまった為、本体は巨人をはるかに上回る巨体として作り上げられた。

ファムとの話し合いの中で後に生まれたが姉になった。

ファムが大好き。


キャン・マーズ・プラネタ エルフ種 88歳独身。元冒険者。


 火星ダンジョンを中心に活躍していたB級冒険者だったが、その活躍を聞きつけた悪辣な金持ちにしつこく求婚され、ダンジョンから戻った際、出入り口にて襲撃され、捕らえられる。

しかし、その金持ちの妻になるなんて、これから先の人生最大の汚点になる。と目の前で唾を吐きかけた。

その事に気を悪くした金持ちによって、無理やり罪状不明のままヘルフレム監獄に投獄、長い時間を過ごした。

貯蓄が趣味で、銀行を含め数十か所に自分の財産を隠してあることが自慢。

ヘルフレムから脱出した際、トイレ戦争に負けキャッシュマン邸の前で力尽き倒れる。

雨宮が戦艦を探している間に自分の銀行口座が凍結されている事を知り絶望するも、得意の料理を生かした仕事がしたいと、全体の管理者であるロペに直訴、マギアラビスの厨房に配属される。

ヘルフレム内では争いが絶えなかった為体中あちこちに傷跡があることがコンプレックスになっているが、その内雨宮に治してもらおうと、寝室に侵入する機会を窺っている。


ムラサメ・タチ アークデーモン種 652歳独身。元冒険者。


 金星圏を股にかける冒険者集団『刀剣の集い』の元リーダーで元A級冒険者。自ら率いるチームの上得意として多くの依頼を出してくれていた商人が、彼女の美貌に目が眩み、ライバルチーム『マジ刈る☆ヴィナス』総勢178人全てを雇い襲撃をかける。しかし、ムラサメ以外のチームメンバーは襲撃の際に命を落とし、それに激高したムラサメによって、襲撃者チーム側もチームリーダーホーリー☆貞子以外のメンバーはその場で命を落とした。当時からすでにS級に手が届く位置にいたムラサメにとって、戦力は問題では無かったが、同レベルの力を持つホーリー☆貞子との一騎打ちにて相打ちになり、身柄を捕えられることになった。

商人の屋敷にて拘束され、求婚を受けたが、断る。その際に妻になるくらいなら死ぬ。と自ら舌を噛み切って自殺を試みるも、回復魔法を使う護衛の手によって失敗に終わる。

その後、チーム『マジ刈る☆ヴィナス』皆殺しの罪を着せられヘルフレム監獄に投獄される。本来ギルドに依頼された仕事では投獄される事は無いが、商人は金を積み、無理やりそれを捻じ曲げた。

しかしヘルフレム内にて、ホーリー☆貞子と再会、力をたたえ合う親友として長い時間を共に過ごした。

ヘルフレム脱出後は、自分の力を生かした仕事がしたいと、雨宮に直訴に向かおうとするも、親友貞子の運の悪さに巻き込まれ、雨宮までたどり着けない間に、いつの間にか厨房に配属されていた。


ナナコ・ストロング 26歳 メロウとホビットのハーフ。元建築士。


 幼い頃から女の子用の玩具には目もくれず、働く機械シリーズの玩具を欲しがっていたという、生粋の重機マニア。

その熱意は監獄に居た時から他の者に知れ渡っており、重機について説明させると半日は時間がつぶれると、その話題を振らないように周りが気を使っていた。

彼女はとある建築現場の責任者に抜擢され、設計から現場監督迄マルチな才能を発揮し、順調に進むかに見えたが、発注元のトラブルが原因で仕事が途中でストップしてしまう。

この事を問い詰めにクライアントの元に乗り込んだ時、自殺したクライアントの第一発見者となる。

その後、ロクな取り調べも行われず直ぐヘルフレムへと投獄されるが、直ぐに誤認逮捕として報道されヘルフレムから出ることになると思われていたが、そのときには既に人間不信になっていて、面会すらしないまま長い時間が流れた。

ヘルフレム脱出の際、トイレ戦争にいち早く気づき、トイレの確保に向かったが、近くを人が通るだけで体が固まってしまうようになってしまった為、間に合わなかった。

その事態の収拾に現れた雨宮に、感謝し礼を言おうとしたが緊張して話しかけられなかった為、常に機会を窺っている。

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