EP19 解き明かされる秘密 後編
解き明かされる秘密とは!?
自重・・・それは自らに課す制約。
俺には関係なかった。
「ぎんちゅわぁ~ん・・・足に力が入らないよ~・・・。」
エリューシア・クライオ・バハムル。このちっこいのに、人生経験豊富な三十路女子はなかなかの手練れであった。
メガなフレアでも吐き出しそうな名前だが、ベッドの上では年相応の女だった。
「へへへ・・・。銀ちゃんええ身体してまんな~。」
ぺたぺたとベッドの縁に腰かけた、俺の背中や脇腹に触れてくる。若干ひんやりしていて火照った体にはちょうどいい。
「俺の真似か?・・・ほら、ペタペタ触んな。」
「また欲情しちゃう?」
「お前ってばロペみたいなことを・・・。」
まぁ、弟子みたいなものらしいし、似てくるのも仕方ないのかねぇ?
俺はつい、エリーのふわふわの髪をなでる。触り心地がよい。
彼女の髪は少し特殊らしく、色も不思議な色をしている。ミラージュテクによって、普段は一色に見せてはいるが、流石に一昼夜通してその状態を維持することが出来なかったらしく、地の髪色が出ていた。
「・・・ふわふわの猫っ毛だな。綿あめみたいだ。それにしても珍しい色だよな。ツートンの地毛ってのも悪くないな。」
彼女の髪はなんと分け目を隔てて半分が金、もう半分が銀と言う何ともありがたい髪色をしていた。
まぁ・・・この世界では百歳なんてザラにいるんだが。
「にしし・・・。いいでしょ。」
にかっと、綺麗な歯を剥き出しにして笑う姿は愛らしいとも言える。しかし、それだけの女でも無いと、今となってはなんとなくわかる。
「銀ちゃんは何にも聞かないのね?」
エリーはもぞもぞと這起き、俺と背中合わせになりもたれ掛かってきた。軽い。
小柄な体は吹けば飛びそうな印象を持たせるが、彼女は実は百戦錬磨の猛者であったりする。
軍に在籍していた期間は、ロペの部下としては一番長い。それだけに修羅場も数多く潜り抜けてきたのだ。
「聞いて欲しいか?俺としては話してくれるなら聞くが。」
「それずるっこだよ。聞いて欲しいけど・・・。また今度にする。」
まぁ、ここには他に二人も居るからな・・・。
「どういうタイミングで起きたものかと・・・。」
イントたんと同じく、ベロペとしてのロペの部下でもあり、つい昨日まで敵?のようなものであった、イン・トゥエルブ。
彼女の体は成熟している。・・・いや別にイントたんが育って無いとか言ってないぞ・・・?
しかし、彼女の体は成熟していても、この世界にやってきたのはつい先日の事だったらしい。
しかも生まれてまだたった三年。いんとぅえるぶさんさい。なのだ。
だがまぁ中身は管理補佐官として、数えきれないほどの月日を過ごしてきた、熟練の精神生命体ではあるのだ。
出る所は出て、引っ込むところは引っ込んでいる。若干ロペやアンジーより肉が無いが、俺は大好物だ。
「起きていたか。イン・・・。」
イン・トゥエルブ・・・。この名前に引っかかりを感じる。
「どうしましたか?」
「いや、名前の事なんだが。それは自分でつけた名前か?」
俺はまだすーすーと、寝息を立てるイントたんを見て訊ねてみた。
「違いますね・・・。只のロットナンバーです。イントエシリーズだからイン。
十二番目だからトゥエルブ・・・。何だかパッとしないですね。こんな筈じゃ無かったのですが。」
ふむ・・・。
「じゃあ俺が名前を付けてやろう。俺のもんだっていう証を立ててやる。」
嬉しかったのか機能の事を思い出したのか、顔尾赤くしてベッドに顔を埋める。
「銀ちゃんのネーミングセンスが試されるの。」
ぐっ・・・。ハードルを上げてくるスタイルか。
「一分くれ・・・。」
そうだな・・・どうせなら雨宮的に?それとも銀河的に?うむむ・・・・。
銀髪の・・・。あぁ。頭皮と言うか髪は、ここに戻る前にちゃんと治したぞ?
さすがに頭部の筋繊維丸出しの女の欲情するほど、特殊な性癖は無いつもりだ。
・・・。閃いた。
「命名しよう。お前は今日から、アイリーン・雨宮と名乗るがいい。」
エリーとイン・トゥエルブ改め、アイリーン・雨宮はそろって驚愕の表情を浮かべていた。
「銀ちゃんズルいの!反則なの!」
「恐れ多いです!!いきなり・・・その・・・雨宮だなんて・・・あの・・・。嬉しいですけど・・・
その・・・。」
どーせそのうち籍も入れるんだ。今から名のってもいいだろ。
ちゃんと責任はとる男。雨宮銀河です。よろしく。
エリーの声が耳に入ったのか、イントたんがもぞもぞと動き出した。
サラサラの水色の髪が若干色っぽいが、幼さの残る顔立ちのせいで、美しいより、可愛らしいの方がしっくりくる。
「モーモーだよ!じゃあ私も名のるよ!エリューシオ・雨宮・バハムルです!・・・えへへぇ・・・。」
「おぉ・・・。それっぽいじゃないか。良いね。」
俺の感。俺の感。
「銀ちゃんって意外と独占欲強いね。」
「私もそう思いました。」
「ふにゅ・・・。おふぁよーございます・・・。」
ふと思う。今思ったのだがイントたんもそうだが、ロペも昔の名前の後ろになんだか凄い数字が付いていたよな?
あれは一体なんだ?
「おはよー!」
「おはようございます。」
「おはよ。」
どうやら完全に目が覚めたようだな。さて・・・。
「銀ちゃん大変なの!!・・・。」
えっ?なんだいきなり。
「急にどうした?」
「丸一日経っちゃっているのよ!」
はぁ?
「おねぼーなの!」
な・・・なにぃ!!!!
「遅刻かっ!!」
ちゃうやん!!
「違うな。」
「銀ちゃんノリツッコミなの。」
ちゃうねん。いや違わない。とかそういう話じゃなくてだな。電話・・・。
じゃないな。
ぽかっ
「いたいのー?」
「トラウマを思い出したやないか。」
ここは異世界ここは異世界・・・。
俺が心を静めていると、エリーが膝の上に乗って甘えてくる。
「ごーめんね?」
これが噂のハッピースマイルの威力が・・・。
・・・あざといっ。
俺はさっき叩いたエリーの頭を撫でた。
「社畜の苦痛を思い出したのだ。」
「う~ん・・・。銀ちゃんがそういうのって想像つかないのー。」
今の俺しか知らないんだ、そらそうだろ。
「私は・・・。見ていましたよ?ロペ様と一緒に。」
んん?どういうことだ?
「アイリーン?」
「私は・・・、他の数人のイントエシリーズもそうですが、雨宮様の体が砕けるまでずっと見ていました。」
砕ける・・・か。あぁ・・・今思い出したぞ・・・。あの瞬間、俺が死んだ瞬間の事。
むむむ・・・・?頭が痛い?
「ぐぬぬ・・・何だ・・・。」
「きっとナノマシンが、異世界に居た頃の記憶にアクセスしようとしているのでしょう。
雨宮様が許可を出さない限りそうそう思い出したりはしないはずですが・・・。」
思い出さない?
「どういうことだ?」
「精神的な負担は、精神生命体にとって物理的なダメージと同義です。雨宮様の記憶の一部は、
その精神体を守るために一時的にロックされていたのです。・・・肉体のある今となってはそこまでの負担にはならないですが、記憶によってはそうも言いきれないのでしょう。」
気を使ってくれたんだろうか。しかし、今思い出したのは何故だ・・・?
「雨宮さん・・・。私も見ていました。あの瞬間、あの場に居た全員が危機を感じ取ったんです。
雨宮さんはここだけではなく、別の異世界からもオファーが来ていたのです。私も今こうなったので、言ってしまいますが、あの時にも多くのイントエシリーズが犠牲になりました。」
「????わかんないよー?」
あぁ・・・エリーちょっと黙ってような。
俺はエリーの頭をなでながら話の続きを促した。
「という事はだ、この世界が異世界からの侵略を受けたのは二回目という事か?」
「それはちょっと違いますね。」
アイリーンが引き継ぐ。
「厳密にいえば、雨宮様が侵略された世界に居たのが二回目なのです。いえ・・・
もっと言えば四回目・・・ですか。」
四回目?
「どういう事だ?俺は二回しか・・・。」
「前世の更に前。と言えばお判りいただけますか?いえ・・・。完全に浄化されている筈ですから、
前世以降の記憶は無い筈なのですが・・・。」
ちょっと待て・・・。意味が分からないぞ?
コンコン
ーー入るよーぅ?
ロペと・・・ジェニ?
何故か二人が寝室に入ってくる。
「イントたんから聞いたよぅ?」
「銀・・・また三人も嫁を増やしたって?」
そうか・・・。眷属同士のリンクか。仕事の早い事で。
「ジェニがいるという事はドル・・「その話はあとにしよぅ?」はい・・・。」
おっかぶせてきた。何だろう・・・。避けたい・・・。
寝室の巨大ベッドの上に上着を脱いだ二人が腰を掛ける。
「ま・・全く・・・こんな匂い分プンプンさせて・・・。体が火照ってきちゃったよ。」
む・・・確かに消臭なんかはしていなかったが・・・。フェロモン的なものだろうか。
「それでまぁ話の続きなんだけどさ。銀河きゅん前世以前の事を何か覚えているかい?」
前世以前とか言われてもな・・・。正直なにも思い出せるようなことは・・・。
「いいや・・・?全く何も。」
「そうかぁ・・・。じゃあサーバーの方の問題・・・というか、銀河きゅんサーバーの場所って分かるの?」
「分かる。場所の名前は分からないが。行こうと思えば行けるし。
ロペは何か考えている様だ。
「その場所に何かあるのか?」
「ううん。場所自体には何も。サーバーの中にね?その時の・・・。二代前と三代前の銀河きゅんの記憶が残っているの。」
はぁ?なんでやねん?そもそもそのサーバーはナノマシンの為の記録用サーバーだったはずだが?
「どういう事だよ・・・?全く意味が分からないんだが。」
「こーら銀。けんか腰になるんじゃないよ。これから説明するさ。な?」
ロペはジェニとかをお見合わせて、頷いた。
「まず・・・この世界の前に居た世界。試験用第二広域開拓世界なんだけど。」
その名前は聞き覚えがあるな。俺がサラリーマンをしていた世界だな。
「異世界に侵略されて、占領されてしまったみたいなんだ。」
えぇ・・・?またなんかぶっ飛んだ話だなぁ?
「占領って言っても、何のために?あの世界にそれほど価値があるとは思えないんだが・・・。」
まぁそうだよねぇ。と苦笑しながらロペは俺の前に膝をついて、膝の上に頭を載せているエリーを、
ベッドの上に転がした。
「ふあー。」
ころりとベッドの上を転がるエリーはイントにぶつかって止まった。そして俺の膝の上ロペが頭を載せてくる。
「ごめんねぇ銀河きゅん。今が話す時だと思ってさ・・・。」
いつものノリと違う少し遠慮がちなロペに、俺は何故か緊張している。
「おぅ。具体的にはどうなんだ?」
「銀河きゅんが狙われていたんだ。でも、そいつらが来た時に銀河きゅん死んじゃったから。」
????
「あのトラック衝突の時、あの世界では大爆発が起こったの。あの場所であの時に。あの場で助かったのはトラックの運転手だけ。」
爆発?エンジンに引火でもしたか?
「エンジン・・「それは違います雨宮様。」じゃないのね。」
ロペの言葉を今度はアイリーンが引き継いだ。
「あの世界に起こった大爆発は、侵略をしてきた異世界の使う世界間移動システムの反作用で、
雨宮様の居た世界の攻性防壁が作動した時に起こる、副作用のようなものです。その爆発によって異世界の先遣隊は全滅したのですが・・・。」
「その大爆発のせいでぇ、世界に大きな穴が開いてしまったのさぁ。それも修復不可能なほど深刻な。」
つまりなんだ・・・。過程は分かる、でもそれじゃないな。
「その穴は(・)異世界と完全につながってしまって、直通トンネルになってしまったんだ。
もう直せないなら、いっそ完全に定着させてしまおうという事なんだって。確かにその方が世界は安全だけど・・・。」
開きっぱなしなんだからそりゃぁなぁ。
「まぁ、おさっしぃ。そのトンネルから凡そ地球では対処できないレベルの侵略者がやってきて、あっという間に地球全部侵略されたんだぁ。」
全部かよ・・・。
「生き残りは居るのか?」
「それは多分大丈夫、相手も一応普通の人間だし、狙いは銀河きゅんだって言ったでしょぉ?今はどうなっているか分からないけど、最後に見たときは奴隷みたいになってたなぁ・・・。」
それもどうなんだろう・・・?正直あんまり思い入れらしい思い入れも無いが、いざ滅んだとなると又見てみたくなるから不思議だ。
・・・まてよ?
「ロペ。そいつは俺を狙って前の世界に来たんだろう?どうやって俺の場所を知ったんだ?」
「方法が同じかは分からないけど、手段はあるんだよ。私がずっと銀河きゅんを見ていたのもそれでだし。」
ずっと・・・。
「ずっとっていつから!?」
エリー以外の三人は、う~んとうなって考えているが・・・。
「さっきチラッと言ったけど、今の銀河きゅんの体から数えて、四銀河きゅん前から。」
どんな単位だよ。
「でね?その三銀河きゅん前の世界が、二銀河きゅん世界前の世界を・・・。「わかりにくいわ!!」あれ~?」
「その単位が全てを台無しに!」
普通でええねん普通で!
「まぁ・・・銀河きゅんが生きてきた前の世界、試験用第二広域開拓世界が、その前に銀河きゅんが生きていた試験用第八牧場閉鎖世界に侵略された。
と、いう事。」
前世の俺は何をやらかしたんだか・・・。なんでそんな生まれ変わった俺も殺すみたいな感じになってるんだぁ?
「ちなみにさぁ、その世界は何が原因で閉鎖になったの?」
閉鎖世界と言うからには、閉じられているのだろう。だが、閉じられていない世界に脱出した。そう考えると色々推測が出来るが・・・。
「え・・・と?あぁーその世界の銀河きゅんは確か・・・女の子だったはず。」
アラヤダ!性別ちゃうのね!
「で・・その世界の管理者・・・神と恋に落ちて・・・フって・・・えーっと・・・。」
なんだか凄く言いにくそうな感じを出しているが、ここ迄言っておいて今更だろう・・・。
「ご・・・拷問して・・・そのぉ・・・。公開拷問で世界中にさらし者にしたって・・・。」
アーハン。オケ。ちょっとそれ楽しそうやんけ。
「その恨みで追いかけてきたと。」
「そうみたいなんだけど・・・。」
ちょっと根に持ち過ぎなんじゃなかろうか。もう何年も・・・。いや。
関係ないか。俺も小学生ぐらいの時の嫌がらせとかまだ覚えているし。会ったら、がッ。ってしやろうとかって思うしな。
「けど?」
「世界が閉鎖された時点で、管理者は権限を失うし、力も失う。つまり普通の精神生命体、ゴーストみたいな存在に成るのね。力が無いから生まれ変わる事も、世界を移動する事も出来ない。精々出来る事と言ったら、肉体のある人間に近づいて違和感を覚えさせるぐらいかな?魂だけの存在って、本当に何にも出来ないんだよ。唯々漂うだけ。だから、私としては原因は別にあるかも・・・とか思ってる。」
なんと・・・。という事はその閉鎖世界の中で力を付けた奴が居るって事か。
「そのフラれた管理者が原因じゃ無いとしたら、他には何が原因があるんだ?」
「えとねぇ・・・その世界は牧場世界って言って、あらゆる世界に人間を送り込むための所謂人間牧場なんだ。人間を養殖して、出荷する。そういう世界。だから品種改良も盛んにおこなわれているの。その中で特異個体を生み出して、世界を越える術を生み出したんじゃないかなーと・・・私は思う。
で、その世界で生み出された人間は、造りだした管理者の意向によって動くの。もしかしたらそう言うのが有るのかも知れないな~っておもったのぉ。」
えぇ・・・?俺が女だったとか拷問の件を話した意味はぁ?
「ま~科学力に加えて、人数が圧倒的に多いから勝ち目はないよねぇ。第二世界はまだ出来立てほやほやだったし、文明も人間も発達してないし、寧ろ退化しつつある。そのうえ地球の中で戦争を繰り返す程度の低い人間だから・・・。それに引き換え意図的に軍として作り出すことの出来る人間を、大量に生産したら良いだけの閉鎖世界は、質も、量も、圧倒的だったみたいだねぇ。」
ふーむ。結構危ない世界だなぁ。ここにもやってくるのだろうか?
「ここにも来るかね?」
「多分・・・。目的が目的だからねぇ。可能性は否定できないよぅ。」
まてよ・・・?
「俺をずっと見ていたんだろ?その世界の様子を見ることは出来ないのか?」
「う~んそれもう出来ないんだぁ。権限とかそういう事じゃなくって、閉鎖されているという事は、滅ぶ、消滅するって事だから。
多分もう無いんだと思う。で、その世界の消滅に合わせて侵略に出て来たんじゃないかなぁ?」
移住やん?
「それって移住とか難民とかっていわね?」
「それは明確な意思で国土を奪ったりしないでしょ?だから侵略者でいいの。」
・・・。そっかぁ。ここにも来る可能性があるかぁ。
「因みにロペ。最初の俺はどんなんだった?」
そう訊ねると、ロペを含めた三人は嬉々として俺の周りに押し寄せた。
「それはもう凄くて!」「すっっっっごくかっこよくて!!」「とっても親切で」
「ちょっと待っていっぺんに喋るなし・・・。理解はできるけどさぁ。」
「世界をすくってぇ!」「平和にしてぇ!」「いっっっっっぱい子供を作ったねぇ!」
・・・。それなんて主人公?
「しかし今の俺にはそんな素養が欠片も無いんだが。」
ロペは目が爛々と輝いている。俺を見る目がちょっと怖い。
「そんな事無い!いつの銀河きゅんもそういう要素はあったよぉ!ただ・・・使わなかっただけで・・・。」
素養はあったが必要が無かったんだな。少なくとも前世と、その前は。・・・今はどうだろうか?
「そんな銀河きゅんだからホレたって事さぁ。」
唐突に告られた。何のイケメン発言?俺ルートに進みたいのか?
とりあえず俺はイケメンロペの目をじっと見つめてみる。
ロペは色々やる割に羞恥心が強いので、反応がいちいち楽しい。
今も自分の言った言葉をようやく理解したのか、若干頬が赤くなり目が泳いでいる。
「あ・・・あれぇ?もっと何か無いのぉ?お・・・俺も好きだよ・・とか?なんとかかんとか・・・。」
・・・・。真面目に聞いていて損をした気分になるな。
俺は自分がどんな奴だったか聞いただけなのだがなぁ・・・?
可愛い奴ではあるのだが、緊張感が足りんのぅ・・・。
・・・もしかしてそう言うの要らないのか?
俺は俺の下半身に顔を埋めたロペの頭を撫で、別の気になる部分を尋ねる事にした。
「最初の俺が割といい奴だってのは何となく分かった。じゃぁその次の・・・女だった俺はどうなんだ?」
聞いてどうなるものかとも思うんだが、聞いてみたい興味心を抑えられんもんだ。
「そうだねぇ。言って見れば・・・傾国の美女・・・かなぁ?性格は悪くないんだけど、好き嫌いが激しい、
あと・・・酷いサディストだったよ。」
酷いサディストって・・・。それ性格悪くないのと反目しないか?
・・・超善人でどSとかも居ておかしくはないか・・・?極端に言えば。
「何と言うか、万人に好かれるんだけど、本人は嫌いな奴が多くて、物凄くストレスがたまっていたみたいだね。」
あぁ・・・・自分の事だと思うとその気持ちが分かる様な気がしてくるから不思議だ・・・。
何故か健康なはずの俺の胃もキリキリ痛む気がする・・・。まぁ気のせいなんだが。
「それで気に入らないのに近づいてくる奴を片っ端から拷問にかけて、千切っては投げ千切っては投げ・・・。
最終的には神をも魅了して、世界を自分の手にしていたのだけれど・・・。」
「けれど?」
「神が・・・と言うか管理者が、業務を放棄してまで銀河きゅんに近づいてくるから、世界の管理がおろそかになって、牧場としての機能を果たせなくなったんだぁ。それでもそう判断されるまでは、銀河きゅんが世界を運営していたんだょ?」
俺がやるんではだめだったという事か?
「で、まぁその時の銀河きゅんは、最初の銀河きゅんの知識をすべて持っていたまま生きてきたから、
それを活かして生きる天才的な知能を持っていたのよ。最初の銀河きゅんがそうだったから。次の銀河きゅんもそうだったのね?
それが有ったから、世界の運営なんて、普通の人間では不可能な事も可能にしていたのょ。
銀河きゅんチートだわぁ。」
そんなン今の俺にゆわれてもなぁ・・・。
「でまぁ、ずっと何もしないで付きまとってきた神・・・じゃない、管理者に嫌気がさして公開拷問、
さらし者にしたってわけ。」
只のストーカーかよ・・・。
「一応それなりの理由はあるんだな。問答無用で拷問して世界を乗っ取ったのかと思ったわ。」
俺の脳裏に嬉々として男を鞭で叩くボンテージ姿の俺が浮かぶ。
ぐぁ・・・。だから俺じゃないっての・・・。
「私もその後世界をどうするのか気になってはいたんだけど、結局何もせずに転生しちゃったのさぁ。
全部ほったらかしにして。」
ぐ・・・。その気持ちも何故か良く分かる。どうやら俺は根本的なところはそんな前から変わっていないようだな。
恐らく飽きたのだろう。
「転生ってそんな簡単に出来るもんなのか?」
「出来るわけ無いじゃん。それを出来るのは管理者だけだよ。」
「でも転生したんだろ?サラリーマン銀河に。」
「そうなんだよねぇ・・・?で、話は戻るんだけどぉ。その方法が分かるのが・・・。」
「サーバーの中の記憶か。」
その時の俺の記憶を手に入れればそらわかるわな。
・・・?記憶を手に入れる?そしたら俺はどうなるんだ?上書きされる?
いや、それは自分でしなければいいだけの事なんだろうが・・・。相手は世界を運営していたような、それこそ神にも等しい存在だった奴だぞ?
何か罠が有ってもかしくないかもしれない。
「・・・。ちょっと危険かもしれないが、前世の俺をここに復活させてみるか?」
「それは無理じゃないかなぁ?魂は一つだょ?今は銀河きゅんがその魂の持ち主だし、体だけ復活させたって・・・。」
あの時の美汐みたいになるか・・・。
魂・・・魂ねぇ・・・。
「銀ちゃん・・・難しいお話は眠たくなるの~・・・。」
エリー・・・。そうだなぁ。難しく考えるから纏まらんのかなぁ。
エリーが俺の腕を持ち上げて自分の首に巻き付けようとするので、加減してぎゅっと首を絞めてみる。
「みゅ~・・・ぎぶっ・・・ぎぶなの~。」
速攻でタップしてくるのですぐに緩めて少しエリーに体重をかける程度にしておく。
「ロペ・・・。魂ってなんだ?」
ロペは俺の突拍子もない質問に目をパチパチさせながら俺を見上げる。
「魂とは・・・精神生命体・・・。」
「精神生命体とは?」
「精神生命体とは魂・・・・って事じゃないね。・・・情報・・・?情報体?」
そうだよ。情報だよ。ロペは知っているかね?いや、知っているはずだ。
俺が、美汐の魂をコピーしたことを。つまり、俺はエネルギーさえあれば美汐を無限に生み出せる。
しかしその場合はどうなる?昔読んだとんでも情報のウェブサイトなんかでは、自分と出会うと死ぬとか、消滅するとか、
大分おっかない事が掛かれていたような気がするが・・・。そんな事が有るのだろうか?
「ロペ。例えば・・例えばなんだが。もし、同じ人間を二人作って合わせてみたらどうなる?」
ロペはう~んと考え込んだが、既に答えを知っているのだろう、それを話してくれた。
「どうもならないょ。同じ魂何か二つ存在しないんだから。そもそも実行が不可能・・・ってもしかして銀河きゅん出来るの?」
やっぱり。あの時の事はチェックしていなかったか。ロペらしくないな。
「美汐の件は別にロックしていなかったんだから、見ても良かったのに。
それを見てたら今の話で俺が、何を考えているかすぐわかったはずだぜ?」
そう。可能だった。俺は美汐の魂を無理やり引っこ抜いた後、サーバーに保存してコピーした。
美汐のマスターデータは未だにサーバーに保存されている。
つまり・・・MCO48とか作ろうと思ったら作れる・・・。じゃないな。
俺自身のマスターデータも、サーバーに有る。それをコピーしてサーバーに有る記憶と融合させてしまえば・・・。
本人を再現・・・復活させることが出来るんじゃないかねぇ?
「見てきた・・・。確かに可能だねぇ?でも・・・。体はどうするのぉ?」
「それこそどうにでもなる。ファムネシアと千里の体を創ったのは俺だぞ?」
ロペはそうだったと頭を掻く。
「危険な気もするんだけどねぇ?やってみるぅ?」
「おう。人手が増えるのは望むところだ。それに、眷属として産み出すし、
抵抗したり反乱させないようにするスキルにも心当たりがあるしな。」
それにスキルじゃなくても、体や魂に直接プログラムを組み込んだらええだけやし・・・。
なんかもう俺、人間ではありえないような考え方してないか・・・?
「じゃぁ・・・そうな。それもいいんだが・・・。」
流石に丸一日以上ファイトしていたんだ、若干腹が減ってきた。
「飯にしようぜ。そしてやる事やらにゃ。」
そう俺が言うと、ロペは何かを思い出したように、ぼんと手を叩いた。
「そうそう銀河きゅん目的地にはとっくに着いているから。
これからどうするか、皆に指示を出してもらわないとぉ。」
あぁそうだったのか。何か忘れていると思ったら・・・ウルテニウムを手に入れに来たんだった。
「そう言えば敵襲は無かったのか?ここは危険地帯なんだろ?」
「それが無かったのさぁ・・・静かなものだったよ。」
俺は小脇に抱えたエリーを放して立ち上がる。そしてナノマシンで服を作り装着した。
大きく背伸びをすると、体が固まっていたのかぱきぱき音が鳴る。
「食堂に行こう。」
「ぎんちゃ~ん。私のお洋服ないよ~ぅ?」
「あ・・・私の服も・・・。」
「はわわ・・・雨宮さん私も服が有りません・・・!」
そう言えば連れ込んだ時にひん剥いたっけか。
「ロペ頼む。」
俺に女物の服を作るセンスとか無いからな。同性に任せた方が良いだろう。
「あいあぃ~。洗浄して~、こんなんどうでしょ。」
・・・随分とまぁエキセントリックな・・・と言うかサイケデリックと言うか・・・?
てか、ゴスロリじゃねーか。
「ロペねぇさま!?」
「流石は上位管理者・・・。」
「ふりふりひらひら~。」
新しい服に身を包んだ三人はキャッキャしながら、自分の身だしなみを整えている。
う~む・・・。よい・・・よいぞ!
これから成長するイントたんとエリーはともかく、アイリーンの細身に非常によく合う!
いや、二人にも非常によく似合っているのだが。アイリーンのインパクトが凄い。昨日はナースキャップで隠れていた髪も、今は広がりのある背中ほどの銀色のロングヘア―が見え、黒のシックなドレスが露出した胸元から上を上手に映えさせている。そして締め付けるタイプの服なのかサイズが合っていないのか、これでもかと強調された胸元。
俺得。流石ロペ。
と言うか・・・宇宙戦艦の中でゴスロリドレスに身を包んだ三人を連れて歩く俺って一体なんだ?
ーーーーーーーーーー
マギアラビス内食堂
・・・なんだこれ。
食堂であったであろう場所は、辺り一面が引っ繰り返したように散らかっていて、所々に血の跡がある。椅子は壁に叩きつけられたのかひしゃげているし、テーブルも床に備え付けられている筈なのに、床を支点にUを逆さにしたような形にひん曲がっている。テーブルに備え付けられていた調味料の類も当たりに散乱しているし、厨房に続く扉はシャッターが下りていて通行できなくなっている。しかもそのシャッターもかなり頑丈なはずなのだが、めちゃくちゃボコボコになっていて、このままでは開かないだろう。
「おい・・・何だこれ・・・。新型の筈だろ・・・?え?どういう事・・・?」
俺はめちゃめちゃ動揺していた。何せ俺はまだナノマシンで内情を把握しただけで、自分で見て回るのは今が初めてなのである。
めっちゃ楽しみにしていた・・・。それがこの有様だ。
「ぎ・銀河きゅん落ち着いて・・・?」
だれだ・・・?一体誰だ?俺の船の中でこんなおイタをしでかした奴は・・・?
俺の体から無意識のうちに黒い靄が溢れ出す。
「うわわわっ!ぎ・ぎんちゃ~ん!」
溢れ出した靄に何故か乗っかっていたエリーが食堂の外まで流されていく。
「雨宮さん!あっ!」
そしてイントたんもまた、靄を押し留めようとしていたようだが、ひょいっと靄に乗せられて何処かへ運ばれていく。無事だったのは若干俺の前に居たロペとアイリーンだけ。
「これは・・・。う~ん。広いのも問題が有るのかなぁ?ってあれ?エリーとイントたんは?」
「先ほどの雨宮様のオーラの流されてどこかへ行ってしまいましたね・・・。」
れれれ冷静になれ俺。良く見るんだ。犯人を捜して・・・。って。監視カメラを確認すればいいじゃないか。それぐらいはこの船にも装備してある。
俺はナノマシンを使って、この船のサーバーにアクセスし、映像を確認する。
ーーーーーーーーーー
前日食堂内
対峙する二人の男女。
何やら言い争っている様だ。
「貴方はクルファウスト!!良くも私の体を弄んでくれたわね!!」
「お前はミシオ・アサクラ!何故ここに居る!?死んだはずでは無かったのか!」
「死んでたまるものですか!覚悟しなさい!ここであったが百年目!!」
「ま・・まてっ!!ここは戦艦の中・・・・!」
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぃ”や”ぁ”ぉ”ぅ”!!!!!
その瞬間映像は途切れ、映像が砂嵐に切り替わる。これは雨宮のイメージによるものだ。
ーーーーーーーーーー
見ているだけで耳から血が出るかと思ったわ。
「アイツこの中でスキルを使いやがった・・・。」
「ぅえ?あいつって・・・まさか。」
「美汐に決まってんだろ!あの眼鏡ぇ!」
しかしクルファウストは無事だろうか・・・・。アイツも魔人の端くれだ、死にはしない・・・と思いたいが。
俺はナノマシンで艦内を捜索し、未だ戦闘中の二人を見つけた。二人は移動しながら周りに被害を振りまいている。クルファウストは逃げるだけで精いっぱいなのか、この食堂のあるF2を走り回っている。
この船の二階層には、食堂を始め、多種多様な施設が設置されている。トレーニングルームからプレイルーム、リラクゼーションルームに、俺がこれからゲーセンを作る予定の空き部屋に、航宙機やスペースワーカーなどのシュミレータールームもこの階層に有る。
頼むからシュミレータールームには入らないでくれ・・。と祈りを込めて俺はシュミレータールームの入り口をロックした。ここで、シュミレータールームの前を通ったクルファウストが中に入ろうとして扉を叩いている様だが、諦めて更に進む。ずっとこの階層に居るのだろうか?
俺は二人の先回りをするべく、二人とは反対に回り、プレイルーム前に待機していた。ここの前には非常階段がある。恐らくここから他の階層に逃げるつもりなのだろう。
させない・・・。二人共、チョット教育が必要な様だな。
そして数分後、持てる力の全てを使って逃げ回るクルファウストと、美汐が現れた。
「雨宮さん!捕まえてください!侵入者です!!」
俺はとりあえずより危険な方を捕まえる。
「ふぇ!?」
俺のオーラ触手に首根っこを掴まれ、宙にぶらーんと浮いているように見える美汐。
クルファウストは大汗をかきながら床に膝を付き、荒い呼吸を繰り返している。
「た・・・・助かりました主よ・・・。」
激しく披露しているクルファウストとは裏腹に、元気いっぱいの美汐は触手に掴まれたままじたばた暴れている。
「雨宮さん!どうして私を捕まえるんですかぁ!!」
「あ”?」
「すみませんなんでもないです・・・・。」
俺は大人になった。・・・と思う。身内じゃ無かったら問答無用で分解していた。
こめかみ当りがヒクついているのが何となくわかる。
本当なら胸ぐらを掴んで、小一時間説教でもしてやりたいのだが・・・。
「美汐・・・。何故艦内で暴れた・・・?」
美汐は何故俺からそんな言葉が出るのか分からないというような顔で呆けている。
「なぜって・・・侵入者ですよ?しかも敵じゃないですか。」
はぁ・・・。こいつは・・・。
「お前は自分のスキルがどういうモノなのか分かっていて、本気でそんな事を言っているのか?
もし本気でそんな事を言っているようなら、今日は一日折檻だな。」
美汐は触手に掴まれたまま小刻みに震えだす。一瞬起ったのかと思ったがどうやら違うらしい。
「え・・・。嫌です・・・。」
決めた。こいつは再教育が必要だ。ちょっと甘やかし過ぎたらしい。
俺はナノマシンで大きくエネルギーを使い、先ほどまで話をしていた前の俺・・・。
女だった時の前世の俺を作り出した。
俺たちの目の前で白い煙と電撃の様なエネルギーの奔流が巻き起こる。
「銀河きゅん!?こんな所で何を!?」
「銀ちゃん凄いエネルギーが!」
ロペと同じぐらいのエネルギーを注ぎ込んで作り出した肉体、そしてサーバー内での封印を解き、甦らせたのはもちろん例の女だ。煙の様なエネルギーのカーテンが晴れるとそこには、黒と金の髪を後ろに居一つに束ねた、所謂ポニーテールの髪に、俺の目を離さない素晴らしい肉体美を誇る美女が居た。
「すげぇイイ女だ!!」「すっごいイイ男だ!!」
お互いの目がしっかりと合う。
女の方は割と恥ずかしかったらしく、少し俯きがちに視線を外すが、それでも気になるようで、ちらりと手を後ろで組んでこちらを見てくる。
「ねぇ・・・。」
「よぅ。気分はどうだ?丸ごとコピーしてみたんだが・・・。違和感は無いか?」
「無いけど・・・それより・・・。」
完全に煙が晴れる。それよりも早く、ロペとエリー、イント、アイリーンが彼女の前に立つ。
む?折角煙が晴れたのに見えんでは無いか・・・。
「銀河きゅんこの娘全裸何だけど?」
あれ?そうか・・・。体と魂を作っただけだったなそう言えば。
ロペたちの陰に隠れた彼女が頭だけのぞかせて俺を見る。
「何故私の記憶を取り込まなかったの?こうして生き返らせた理由は何?」
そう言えば自ら転生したとかいう話だったな・・・。余計な事をしただろうか?
「記憶に関しては何時でも取り込めるからいまする必要が無いと判断した。そして生き返らせたのでは無い。新しく作り直しただけだ。」
「じゃぁ私のスキルを外してよ!前と全く同じなんて・・・。」
ちょっと悪い事をしたかな・・・。
「同じなじゃ無いが・・・スキルはちょっと待て。」
ーーーーー
スペシア・レーンシュライン 0歳(35)ハイパーヒューマノイド
状態 健康
種族スキル 選択してください▼
個人スキル 狂乱の魅力
後天スキル 並列思考
超速演算
世界の鍵
徒手空拳
エスパー
ーーーーー
エスパーっ!!ってそれはまた後にして・・・。
狂乱の魅力ね。どうもテンプテーション系のスキルはパッシブなタイプのスキルが多いように見えるな。
まだ二人にしか会っていないが・・・。
俺は個人スキルを外し、別のスキルを付けるべくリストを見た。
ーーーーーー
選択してください▽
狂乱の魅力
傾国の美女
スーパージャンキーフィーバー
みんなの嫁
みんなの妹
みんなの姉
神
世界を終わらせし女
恨まれし者
拷問姫
サディスティックレディ
・
・
・
ーーーーー
何と言うか・・・随分カオス寄りだな・・・?
俺はリストの情報をスペシアの目に直接表示しながら、訊ねてみた。
「どれがいい?一応もっと下の方にもいろいろあるみたいだが。」
「えぇ!?選べるの!?嬉しい!!」
あれが無くなっただけでも凄い良い顔をしていたが、まぁ、喜んでくれたようで何よりだ。
「・・・なんか変なのばっかり・・・。」
「ほぇ?どんなのぉ~?」
「・・・嫁・・とか・・拷問姫とか・・・あ。これが良い。」
そう言ってスペシアが選んだのは・・・。
ーーーーー
スペシア・レーンシュライン 0歳(35)ハイパーヒューマノイド
状態 健康
種族スキル ぶっこぬきジャーマンスープレックス
個人スキル 愛されし者
後天スキル 並列思考
超速演算
世界の鍵
徒手空拳
エスパー
ーーーーー
んんん??ちょっとまてよ・・・?
ーーーーー
愛されし者
全ての存在から愛されるもの。それは真の愛。出会う全ての人から愛を囁かれ求婚され、
出会う全ての者が全身全霊をかけてあなたを愛するだろう。
そう、全てを捨てて。
ーーーーー
あかーーーーん!!
「それ駄目だ!さっきまでの奴と何にも変わらない!!」
「えぇ!?でもここに居る皆は何も・・・。」
「私たちは銀河きゅんの眷属だからねぇ?でも・・・。」
さっそく効果が現れたのか、クルファウストが襟を正してスペシアに近づく。
「その吸い込まれそうな君の瞳を・・・ずっと見ていたい。私とけっ・・????」
最後まで言い終わらないうちにスペシアの姿が掻き消え、次の瞬間にはクルファウストは非常階段(下り)に向かってすっ飛んでいた。
そして俺の目の前には、全裸の女のブリッジ姿。・・・これはまさか・・・。
「ぶっこぬきジャーマンか・・・。」
ゴキッっという生理的に嫌悪感を覚える音と共に、クルファウストは非常階段の踊り場に顔面で着地する。
「も・・もういっかいかえたいぃ・・・・。」
マジ泣きだなぁ。
俺はもう一度スキルを選択させる。
「これはやだ・・・これもやだぁ・・・。どれがいいスキルなのか分からないよぉ・・・。」
もう嫁とか妹とかでいいじゃね?とか思わないでも無いが、流石にそれを言うほど空気が読めない訳でも無い俺も特に全部確かめた訳じゃ無いが、選べるスキルの数が多すぎるのだ。
この選べるスキルは一体どういう基準で選ばれているのだろうか?
美汐の時はほぼプロレス技だった。(結構な数調べてみたがほぼプロレス技だった。)
彼女の場合はどうだろうか。
「ねぇ、これ多いよ?どれを選べばいいのぉ?」
まだえらんどるんかい!
「どういうスキルがほしいんだ?」
「あんまり人に追いかけられないのがいぃ・・・。」
トラウマになってんのか。そりゃ死ぬまで追いかけまわされたらそうもなるか。
「人を遠ざけるやつにするか・・・。「まって!それもヤダ!!」おぃ。」
「だって寂しいし・・・。」
こいつホントに世界を運営していた奴か・・・?
こっちの都合とはいえ、呼び戻したのは俺だしな。まぁ・・・いいか。
「しゃーないなぁ。どんなのが良いんだ?」
「・・・え・・・。」
絵?え・・・・。じゃぁこんなんどうだ?
ーーーーー
絵画の才能
水彩画、油絵などの絵画の制作、販売が得意になる。
また、絵を用いた物理攻撃に大きなアドバンテージを得る。
ーーーーー
「こんなんどうだ?絵だぞ?」
「ちっがうし!何で絵なの!?」
「じゃぁなにがいいんだよ・・・。」
「もっと他のが良い!」
こいつもしかして自分で選びたくないだけか・・・?
「もう自分で選べ。めんどくさい。」
俺はほったらかしにしてあったクルファウストを回収して食堂に戻った。
この後どうする?飯だよ飯!あいつを作ったせいで無駄に腹が減っているのだわ。
「ハッ・・・主殿私は一体・・・。」
「犬に噛まれたとでも思ってほっとこう。」
「そうですか・・?」
ぼろくそに荒らされた食堂をナノマシンで元に戻し、厨房のシャッターを開ける為に艦にアクセスする。
どうやら昨日からロペの指示でウルテニウムの採掘は進んているようだが、まだ終わってはいないらしい。しかし、届いたと思われるスペースワーカーはドルフしか動いていないようだ。
俺は厨房へ続くシャッターを開けた。
ウィーン
そこには床に転がった死体が・・・。
「死んでないぞ!死んでないからな!」
セイラーが居た。
「何でこんな所に居るんだ・・・?」
「出られなくなったんだ!!昨日の夜に朝の仕込みをしておこうと思って、
厨房に入ったらいきなり安全装置が作動したんだ!それから赤内側から開けようとしても開かないし、
何もする事が無かったから寝ていたんだ・・・。」
美汐ののせいか・・・。はた迷惑な奴だなぁ全く・・・。
「とりあえず飯だ。はぁ・・・。腹減った。」
「む・・・。分かった。」
セイラーはもうウチの厨房のトップだ。他にも何人か厨房入りしたいものがいるらしいが、何か作ってもらってから考えよう。料理スキルとか持っている奴が良いな。
彼女はてきぱきと調理をこなし、俺の目の前に大量の料理が並んでいく。
「まだ作っているぞ?早く食べてくれ。テーブルに置けなくなるぞ?」
「まてまてまて・・・!」
もうそんなに食う必要が無いんだった。言うのを忘れていたなぁ。
「ん?なんだ?」
「悪い。言うのを忘れていたんだが、今迄みたいに大量に食う必要が無くなったんだ。
未だしてくれたものは食うが、今後はそのつもりで頼む。」
「何だそうだったのか。分かった。これからは量より質に拘るか。」
「そりゃぁいいな。」
腹が一杯になる感覚は俺にはもう無いが、旨さは分かるつもりだ。質より量を優先しているとは言うが、旨い事言は変わりない。このレベルなら金出しても食えるな・・・。
「ぎ~んちゃ~ん。おなかすいたよ~?・・・良い匂い!」
エリーも食堂に来たみたいだな。
「あいつ等はどうしてる?」
「まだ選んでるみたいだよ~。選んであげなくてよかったの~?」
「必要ない。アイツは間違いなく俺の前世の奴だ。
ああやって自分の責任を逃れるために人にやらせる手口はよく知っている。
昔俺もよくやっていた。」
「あ~・・・。なるほろ・・・うま~。」
エリーは俺の隣に座って適当に有る物をつまんでいく。
「雨宮?あいつってまた新しい女が来たのか?」
セイラーもなんか女の子なんだな・・・。そういう方向には艦が働くんだなぁ。
「まぁな。その内来るから、甘やかさないでやってくれ。言うこと聞かなかったら殴ってもいいから。」
「銀ちゃん厳しいの~。」
俺たちは二人で八人用テーブル一杯に広がった料理を平らげた。
どうやら俺のエネルギーも満タンになったようだな。この感覚は初めてかも知れない。
ーーーーー
エネルギー保有値が最大になりました
許容量最大値を増加します
ーーーーー
まてまてまて・・・。いや?良いのか?そうか。
腹いっぱい食うのが最大値増加のフラグだったのか。
そんな事を考えていると、エリーの箸が止まる。
「銀ちゃんなんかね?エネルギー保有値が最大になりました。許容量最大値を増加します。って言われたの~。」
おぉ。育っているな。
「エリーもか。こうやってエネルギーの最大値を増やすみたいだな。地味だが結構必要な事だから、忘れないようにしないとな?」
「うん!いっぱい食べて大きくなれるかな!?」
これはギャグか・・・?いや・・そう言えば説明していないな。
こう言うのはロペに任せていたが・・・。
「なるぞ。今のエリーは第三次成長期真っ最中だからな。」
「ほぇ?何それ?ホントにそんなのあるの~?」
「あるぞ。体の成長が大きく始まるんだ。きっとナイスバデーになるぞ。」
「ホント!?それ嬉しいよ~!銀ちゃんありがと~!!・・・あ。でも・・・。」
エリーは嬉しかったようで、キラキラしていたが急に俯いてお腹をさすりだす。
「銀ちゃんが褒めてくれたちいさ・・・「その話はいいから!」ほぇ?」
ベッドの上の話は外に持ち出さないようにしてくれ・・・。
「ん?なんだ?大きな声で。おかわりがやっぱりいるのか?」
セイラー・・・聞こえていなかったようだな。
「いや。大丈夫だ旨かった。いつもありがとう、御馳走様。」
「ごちそうさま~。」
「お粗末様でした。」
セイラーは手慣れた動きで食器を片付けていく。
エリーも手伝い、片付けを始めた。
今のあいつを見ていると、昔の自分を見ているようでかなりストレスがたまる。
何の解決にもならないが暫く近づかないようにしよう。
俺自身が一番わかる、アイツは甘やかしたらだめな方向に進む奴だ。
誰にも甘やかされないで初めて、真っすぐ進むことが出来る、そういう奴だ。
そんな物思いにふけっていると、スペシアの手を引き、ロペたちが現れた。
「銀がきゅーん、この娘なんとかしてぇ・・・。」
「ほっとけ。もう自分に集まられるようなスキルは無いんだ。後は自分で何とかするさ。
こんな甘えるやつは、フェインだけで十分だ。二人も要らん。」
その内ロペと並んで最高幹部みたいにしようと思って、結構な力を注いで作り上げたんだ。
甘えて堕落されたらかなわん。
「他の奴らにも伝えておけ。こいつは甘やかすと増長するから、放置しろって。」
「それは分かったけどぉ・・・。」
ん?
「他にも問題が?」
って聞いておいてすぐわかる。
「ふぅ・・・。役に立たないよぅ?このままじゃ・・・。」
ロペにこうまで言わせるとは・・・。
「仕方ないな・・・。最後に一度だけ甘やかしてやるか。」
その言葉を待っていたのか、今迄嘘泣きをしてロペの服のすそを掴んでいた手を放した。
「今フェインを矯正するために、特訓をやらせている。それに参加しろ。」
「え・・・?特訓?」
「そうだ。甘えが1ミリも無くなるまで。殴ってもらえ。」
「え?それって~・・・。ロペおね~ちゃんの・・・?」
エリーの考えた通りだ。ロペ式の特訓、AGフォースの五人を鍛えた。センリの性格を捻じ曲げて、
イファリスの忠誠心を育てた、その特訓だ。
「なむ~。」
「イファリスが今やっているのぉ?」
「そうだ。まだ二日とかしか経っていないから、合流しても問題ないだろう。
クルファウストも特訓に付き合わせてもいいかもしれないな。アイツはトレーナーの素養がある。」
って、カウンター飯を食っているクルファウストの事を忘れていた。
「説明するのを忘れていたな。アイリーンの事はもう調べただろうから分かるだろう。
クルファウストは、侵略世界の科学者だった。」
そして今ここに居るジェニ、ロペ、イント、アイリーン、セイラー、エリーに向けて、海王星のコロニーに行った時に知った事を話した。
「移住・・・?そんな事だったなら先に言ってくれたら良かったのに!!!!
この世界は広いんだょ!!閉鎖世界の住人を受け入れるぐらいなんでも無いのに!!!」
ロペがクルファウストに向かって吠える。しかしそれも意味が無い事が分かっているようで、
直ぐに俺の隣の席に座る。そこにセイラーが食事を出した。
「腹が減っていると怒りっぽくなるというぞ?食え?」
ロペはこれ以上八つ当たりをしないように食事に専念するようだ。
「そうだったのですね・・・。それならあの猛攻も分からなくはないですね。倒しても倒しても次から次へと、
仲間の死体を蹴散らしながら特攻してきていましたからね。」
「そうですね。なりふり構っていられない状況もあったのでしょう。しかし・・・。」
そうだな。しでかした事は許される事では無い。ロペの怒りも収まらないだろう。
「どういう状況であれ、やったことが許されないのは向こうも分かっているだろう。
これからもさらに進行をしてくるに違いない。そうだな?クルファウスト。」
食事の終わったクルファウストは、俺たちの居るテーブルの前に立って頷いた。
「あの王は確かにあの世界の住人にとっては良い王様なのでしょうな。しかしこちらの側からすれば、只の侵略者に他なりません。しかもあの世界が閉鎖されたのは、他ならぬ王のせいなのですから。」
む。聞き捨てならない話だな。
「クルファウストその話の詳細は分かるか?」
「もちろんですとも。これでも、昔は研究者兼宰相などをしておりましてな?」
侵略世界の辿った道筋はこうだ。
↓
侵略世界で大きな戦争が始まる。
↓
数百年続いた戦争がその王によって統一されることで終わる。
↓
統一された国で悪政が始まる。
↓
反乱が起る。
↓
皆殺しにする。
↓
こんな事を起させたのは神の仕業だと勘違いして、管理者を襲う。
↓
管理者が世界を放棄。閉鎖世界になる。
↓
管理者の放置した補佐官を捕え、モンスターと同化させる。
↓
モンスター化した補佐官を使い第三世界に侵攻。
そして今に至る・・・。という事だ。
「そんなの勝手すぎます!!この世界のイントエだけじゃない・・・向こうの世界のイントエも皆!」
「イントさん落ち着いて・・・。」
イントたんが興奮するのも分からんでは無いな。随分身勝手な奴が居たもんだ。自分しか見えていないそんな感じがする。だがまぁこれは一方的な意見だが・・・。
ケツに火が付いた状況だというのにやる事はやっている。そんな印象もあるな。
「移住してきた奴を滅ぼすか?」
「そんな事はしないさぁ。・・・でも、軍や政府はどうするか分からないなぁ。」
そう言っていると、今まで黙って構われるのを待っていたスペシアが口を開いた。
「王を殺してしまえばいいじゃない・・・。そうすればそういう国は混乱して・・・。」
「一機にこの世界で暴れるだろうな。」
俺はクルファウストを見る。
「そうでしょうな。今まであれが王であることに異議を唱えた者はおりませんでしたから。
私がこうやって普通に出来ているのは、この世界に居て、あの王から離れた為でしょうな。
魅了耐性を持っているものは皆殺しにされてしまいましたしな。」
成程な・・・魅了系の能力か。
「魅了耐性で問題が無くなるんだな?」
「私の研究の一つにスキルの研究が有ります。・・・朝倉嬢にやっていたような・・・。
その結果分かった事です。あの王の力は非常に弱い。それ故一番低いレベル1の魅了耐性でも無効化できます。」
あのコロニーには魅了耐性を散布しておくか。
・・・あれ?意外と簡単に終わる事かこれ?
「むぅ・・・?ひょっとするとだな・・・。割と簡単に終わるかも知れんぞ?
この件は。」
「ほほう!我が主は何か妙案が!?」
ハードルを上げるなっての。
「魅了耐性を与えるナノマシンを散布したらいいだけだろ?それかさっきしたみたいに、
スキル引っぺがしてしまえばいい。クルファウスト。王はどこに居るんだ?」
「そうですな・・・。私も暫く戻っておりませんでしたから、現状は不明ですが・・・。
可能性が有るのは、海王星ダンジョンの中か、海王星圏の一番大きなコロニー・・・ですかな?」
コロニーか、ロペならわかるかな?
「ロペ?コロニーの場所は分かるか?」
そう言うと、ロペは自分の端末を取り出し、もぐもぐしながら操作する。
「んぐっ。ふぅ。五年前から情報が更新されていないけど、多分ここで合っていると思うよぉ?」
俺は端末を見る。
示された場所は海王星ダンジョンの直ぐ近くにある都市コロニー。
アクロポリス居住コロニーだ。
「ここである根拠は?」
「簡単な話だょ。この五年、海王星圏に行く船はゼロだった。もちろんあっちから来る船もね。
物資が底をつくのは時間の問題だろうね。と言うかもうないかもしれない。そして海王星圏には自給可能なコロニーが殆ど無い、海王星圏だけで食料も、生活物資も賄うことは不可能。極めつけに、新しくコロニーを創ろうにも資源も無い。ダンジョンから手に入るのは機械部品だけ。」
寧ろ今迄他の宙域に手を出していない事がおかしい位の・・・?
手を出していない・・・?
「クルファウスト。あのコロニーの食料事情はどうなっているんだ?」
「そうですなぁ・・・。普通に見えましたが・・・。」
そうだよな。あのコロニー、別に混乱しているわけでも無かったし、むしろ普通。
という事は経済活動が普通に行われれている・・・?
「食料事情が安定している、民衆が混乱していない。そしてコロニーまでは王のスキルは届かない訳だ。
これはもう・・・。」
そこまで言うと、ロペがテーブルを叩く。
「やっぱり軍が接触していたのか!!」
静まり返る食堂。
「海王星圏を明け渡したのかもしれないな・・・。」
俺はロペの味方のつもりでいる。出来る限りは意志を汲んでやりたい。
ここ迄情報が出そろうと、俺たちの行動も決まってくる。
まず軍上層部との接触。これは必須かもしれない。ついでにロペにぶん殴らせてやれば一石二鳥だ。
次に侵略世界の王とやらの排除。これは恐らく簡単に済む。
あとは難民がどうなっているのか確かめて、対処する・・・。だな。
おっと・・・忘れたらいかんな。造られたモンスターを分解して、取り込まれたイントエシリーズを助ける。
これは俺にしかできんしな。
「よし。これでやる事が決まった。」
自然と俺に皆の視線が集まる。
「ゲルン・ガウスの改造だ!」
「ほぇ~?」「銀河きゅん!!」「雨宮さん?」「ぎ~ん~・・・。」「雨宮様ぁ・・。」「・・・・えぇ?」「流石主殿ですな!戦力増強ですか!」
クルファウスト・・・お前は分かってくれると信じていた。
「大丈夫、それはすぐ終わる。それでだ、ジェニ・・・ちょっとお願いを聞いて欲しいんだが・・・。」
ジェニが一歩後ずさる。
「一人で良いんだ。軍の上層部の人間と繋いでくれないかな?」
「まぁ・・・そうなるか。分かった。私が・・・。「私がやります!!」」
イントたん・・・?
「おばあさまなら、知っている筈ですから。きっと今も実家に居ますし。」
何でもイントたんの祖母、元土星方面軍艦隊総司令バーバラ・J・イオタは、軍を引退してからずっと家に引きこもっているという。物理的な意味で一番簡単に会えるのが彼女だな。
「ならそれでいいか。ロペもいいな?」
「分かった。バグナグ造って準備する・・・。」
うむ。ロペは俺の意図を分かったようだな。しかし・・・。
「素手にしておきなさい。」
「えー。」
動機が不純だがロペに笑顔を取り戻せたようだ。
ーーーーーーーーーー
「あ・・・あれ?私このままどうなるのぉ・・・?」
美汐は雨宮の触手によって空中に固定されたまま、放置されていた。
「もうしませんから!・・・誰か!助けてーー!」
そこに通りかかったのは、アメリア。ロペの妹だ。
「凄い・・・空中に浮かんでる・・・。」
不可視の触手のあるべき場所を手でなぞるが、何の感触も無い。
「アメリアさんあのっ!」
「ごめんねー。おにーちゃんのお仕置きでしょ?がんばってー。」
手をひらひら振りながら食堂に向かって歩き去った。
「あれ・・・?私が悪いのかな・・・?」
あまりのぞんざいな扱いに、心が折れかけている美汐だった。
そして食堂にて雨宮は思う。
俺は何であの女を作ったのかと。
それは美汐を仕置きさせる為じゃなかったかと。
まさかその仕置き人を仕置きする羽目になるとは思わなかった。
と。
クルファウスト・オ・リジン 7805歳 魔人β種
侵略世界の科学者にして、王国、太陽系王国と呼ばれる国の宰相。王のそばにいた頃は精神的支配を受けていたが、
第三世界にやってきてから、支配が薄れ雨宮によって拷問を受けた際、完全に支配から脱出した。
β種と呼ばれる種には寿命が設定されておらず、一定の期間成長するとそこで肉体の活性化が完全にストップする。
その副作用として老化しない体になるが、外的要因によって死にはする。 医療技術に精通しており、外科手術が得意。長い時間を研究や自らを鍛える事に費やしてきた為、医者、トレーナー、教師など、様々なスキルの他に、魔法にも長けていて、太陽系王国では並ぶ者のいない猛者としても知られていた。そして長年の研究の成果として、世界間移動システムの構築に成功、王国に他世界への侵略をする手段を与えてしまった。この事に罪悪感を覚えたクルファウストは、自ら第三世界に乗り込み、王国を亡ぼす人間を作り出すために多くの人間を実験に使っていたが、美汐、エリーを実験台にしたことにより居場所を特定され、拷問される。
拷問により精神支配から完全に脱したクルファウストは、雨宮に忠誠を誓い、自らも眷属として認められることを目指し、日々第三世界の知識や技術を学んでいる。