EP18 解き明かされる秘密 前編
タイトル負けする本編とはいかに。
俺は・・・雨宮銀河。34歳独身のサラリーマンだった男だ。前世で死に、この世界に来てから早二週間が過ぎた。
・・・?
二週間!?えぇ・・・?
この世界に来て・・・?宇宙に放り出されて?三日寝込んで?海賊に拉致されて一日経って?
警察に捕まって?監獄に行って?四日過ごして?監獄出てジェニに会って?美汐に会ってそこで一日?
で・・・買い物して・・・?今日?
二週間も経ってねぇ!!
怒涛だろ!?ってかやり過ぎじゃね?
ちょっと急ぎ過ぎた??寝る間も惜しんで働き過ぎだろ!?俺!
何てな。確かに時間は経っていないんだが、内容が濃い濃い・・・。でも、思うようにいかないまでも、
好きなように生きられている。それが一番だな。
そして、今。俺は・・・。俺たちは念願の宇宙戦艦を手に入れ、果て無き観光の旅路へと・・・。
「雨宮様?起きてください・・・。朝ですよー。・・・でもまだ起きなくてもいいですよー・・・。」
んん・・・?なんだ・・・。夢かよ・・・。
「はぁ~・・・。楽しい夢だったなぁ。また今日も仕事かぁ・・・。」
って・・・。誰だ・・・俺の股間でプレイボールしている奴は・・・。
俺は恐る恐る、布団をめくってみると・・・?
「おふぁよーございまぁーふ。」
俺ってこういう奴だよ。
ーーーーーーーーーー
「はぁーーーーーーっ!!!はぁーーーーーーっ!!!」
激しく上下する胸に手を当て、俺は落ち着くように言った。だが聞く耳を持たなかったのは・・・お前だろ?
「も・・・もう・・・あの・・・!!」
「ん~・・・。悪いけどもうちょい付き合え。」
「あーーーーーっ!!!」
ーーーーーーーーーー
「ちょっとした悪戯のつもりでしたのに・・・・。しくしく。」
ガッツリ咥え込んでおいていまさら何を言っているんだか。
「おい、フェイン。お前ももう起きろよ。お前はずっと寝てただろ?」
仰向けにベッドに寝そべっている俺の上で、ヒューヒュー言いながら、真っ青に顔の血の気が引いたフェイン。
この虚弱ッキ―め・・・。最初のニ・三分元気だと思ったら、急に糸が切れた様に俺の上に崩れ落ちて、気絶した。
結局こいつはずっと俺の上で眠っていたのだが、何故か首に巻き付けた手が全く離れなかったので、今もなおこのままである。
しかしこのままでは色々ままならないと思い、結局俺は俺に悪戯を仕掛けてきたフェインとイファリス。二人のエロフ・・・エルフを眷属にしたのであった。
「寝たふりすんな。もう今のお前は虚弱じゃ無いだろう。起きろ。フェイン。」
「主よ・・・。もう少しだけ・・・せめて息が整うまでは・・・。」
そうして眷属にしたフェインだったのだが、眷属にした今も、今迄の虚弱の幻影を引きずっているらしく、
体がうまく使えないようだった。
フェインは長い間ヘルフレムで過ごしてきたヘルフレムの重鎮・・・だったらしいが、元々体力が虚無に等しく、徒歩で数メートル歩くだけで、
スタミナが無くなり、しゃがみ込む。そしてしゃがんでも筋力が足りなくて立ち上がる事も出来ない。難儀な奴だった。
そんなほぼ身体能力の無に等しいこいつが、なぜ今のままで生きてこられたかと言うと、本来エルフにはない筈の類い稀なる魔法の才能と、
スキル、テンプテーション故の事だった。
監獄内では、看守、囚人を含め全ての者が彼女のお願いを無視できず、その願いをかなえる事に尽力してきた為、
彼女自身は何もせず、只お願いしていれば良かった。それだけで他の誰かが、全てを代わりにやっていたのだ。
噂には聞いていたが・・・。エロフ・・・いや、エルフの繁栄欲求は凄まじいな。
イファリスはもともと軍人だ。鬼教官ロペの元で地獄の訓練を越えてきた猛者だ。その体力たるや凄いものだった。
だが反対にフェインは、眷属化してなお、体力が無く俺のターンになるとすぐ気絶するため、余計ないたわりが必要だった。
しかしその欲求は途切れる事を知らず、血の気を失った顔のまま俺をむさぼりにやってくるものだから、ちょっとしたホラーだった。
血色さえよければ、おそらくは世界に名を轟かせるほどの美女と言っても差し支えないのだろうが・・・。
彼女ははっきり言ってやせ過ぎである。だがその割に体格は悪くない。むしろ恵まれていると言ってもいいだろう。
身長は高く、175はあるか。そして若干比率としてデカいのが俺としてはモノ申したいところではあるが、まぁ許容範囲だ。
・・・。何の事かって?バストだ!胸!
こいつはこのデカい胸のせいで、度を越した肩こりに常に悩まされていた。それもそうだ。はっきり言って、筋力が全くないのだ。
そんなこいつが、スプーンを持ち上げるのに汗をかくレベルの虚弱体質が、スイカ二つを両肩にぶら下げるとか、ある意味拷問に近い。
それゆえ、ヘルフレムではほぼ常に横になって、半寝たきりの生活を送っていたらしい。一度倒れると自力では起き上がれない。
その為、常にだれかが介護・・・介助する必要があった。
「落ち着いたか?」
「はぁ・・・はぁ・・・。何とか・・・はぁ・・・。」
熱い吐息が・・・と言うか、呼吸が浅いだけなのだが。少し落ち着き、余裕が見えてきた為俺は彼女に死刑宣告をしようと思った。
彼女の魔力の、魔法の才能はこのままにしておけない。ぜひ育ってもらわなければならない。
何故か。彼女には艦長をやってもらわなければならないからだ。それも単に、魔法の才能を持つものが、
あまりにも少なかったせいでもある。今の彼女の立ち位置は、言って見れば幹部だ。部隊の指揮位はやってもらわなければならないだろう。
だが現実はこれだ。ハッキリ言って寝たきり老人の方が、可能性が低いだけ可愛げがある。
こいつの場合は、出不精なだけだ。それでもこじらせると、ここまで酷いのだと、俺に教えてくれたことは感謝している。
どうでもいい情報だがな!
キビキビとした口調とは全く違うやる気の無さ、全てを他人に丸投げしてきた甘え。全部捨てさせねばならない。
・・・・・・・。大人の時間も楽しめないしな・・・・。
「イファリス!」
俺が突然大きな声を出したので、エロフ・・・いやエルフ二人は驚き体が跳ね上がる。
「くっ!!うっ!!!」
そんなもんで呼吸困難になってくれるなよ・・・・。話が進まねー。
イファリスがフェインに回復魔法をかけ、話を聞く体制が整う。
「イファリス。お前はロペの訓練を受けてきたな。」
「はいっ。」
「よし。それの倍、フェインにやらせろ。俺の体の上で気絶する事はもう許さんと思え。」
フェインは小声で「私はもう死ぬかもしれない。」とかぶつぶつ言っているが、ナノマシンで綺麗になった二人は、
さっそく訓練に入るのだろうか、イファリスがフェインを引きずって出ていった。
・・・。ひょっとして、この船に居る間は、毎日こうなのかね?
ーーーーーーーーーーー
メインブリッジ
「おーっす。」
って、結構起きたから時間が経っているはずだが一人しかブリッジの居ない。
「雨宮さん。おはようございます。」
オペレーターシートにはイントたんがいる。そう言えば海賊の船でもオペレーターをやっていたな。
「おはようイント。早いんだな。」
特に何かを感じた訳では無いが、褒められたと思ったのか、顔を赤くして照れるイント。
「他の方の事は把握していませんが、私かロペ姉さまならおべレーターは出来ますし、あとA・・・」
「その名前はよせ。
「私は良い名前だと思うんですが・・・。まぁ、アメリア姉さまも他の四人も、オペレーターは出来るのですが、
私は専門の通信兵ですので。機器周りを把握しておこうと思いました。」
勤勉だな・・・。俺も見習わないとな。
「それよりも雨宮さん。気になることがあるんですが。」
ん?
「ウルテニウムについてなのですが、以前雨宮さんが解析した時に、『この世界に存在しない。』と言っていたと、
話を聞いたのですが・・・。これから行く場所はこの世界何ですよね?」
あぁ。確かにそうだな。そう言った。だが・・・。
「あぁ。他所の世界に行く訳じゃない。ナノマシンに先行調査させたところによると、
どうやら海王星方向からの彗星の残骸が塊になってあるらしい。それがウルテニウムを含む物なんだってさ。
誰かに奪われでもしたら目も当てられんから、さっさと取りに行きたいもんだな。」
「成程。では異世界からの飛来物・・・という事ですか。一体海王星は今どうなっているんでしょうでね?」
確かにな・・・しかも何時エンカウントしてもおかしく無いらしいし、なるべく早く終わらせたい。
「でも流石雨宮さんです。この時の為に、工業用コンテナを購入して置いておくなんて・・・。」
ロペに頼んで購入して置いたものだな。コンテナの目的は別にあるんだが・・・まぁそれはまたこんど話ゃいいか。
そうえば・・・。
「ゲルンガウスは届いたのか?」
「いえそれが・・・。注文した業者が、マギアシリーズの足の速さについて行けないという事で、届けられないと、
ついさっき苦情が入ってきまして・・・。」
なんとーー!!!
「諦めるなよ!!!もっと頑張れよ!!!熱くなれよ!!!!」
「雨宮さん!?」
クーダン、クーダン・・・。クールダーウン。
俺のゲルンガウス・・・。
「かと言って、船足を落とす事もしたくないしなぁ・・・。何だかんだで、制限時間では無いが、
早めに動かなきゃいけない事が多いなぁ。手遅れになると、とんでもない事にもなりそうだし・・・。
・・・あ。
ドルフ。ドルフは!?
「CE社からの届け物は!?俺のドルフは?」
「えと・・・あのぉ・・・・。」
イントたん・・・。もう届いているって言って!!
「あの・・・やはり早すぎて追いつけないと・・・。」
うわーーーーーハァーン!!!
・・・・。
決めた。
「イントたん。今九番艦は誰が乗っている?」
イントたんは、手元のコンソールを叩き、モニターにリストを表示してくれた。
「覚えのない名前ばっかりだな。あ。」
ショウコが乗ってる。
「良し。九番艦に繋いでくれ。」
「了解しました。」
呼び出しから応答までの間が短い。すぐに返事が来る。
ーーこちら九番艦フェトラ、オペレーター、エィル・ミーです。旗艦。繋がりました。どうぞ。
「ショウコを呼んでくれ。あと艦長は誰だ。」
ーー了解しました。ボス。艦長は今不在です。代理として、ウィルマ・ビューリファーが当艦を担当しています。
聞き覚えが無い名前だ。女囚の中の一人か。
「イントたん。艦長代理のデータはあるかい?」
イントたんはモニターの端にウィルマのデータを表示する。
これはナノマシンに寄るスキャンのデータだ。
ーーーーー
ウィルマ・ビューリファー 25歳 エルフ機人種
状態 健康
種族スキル 人機一体
個人スキル 超魔導操作
後天スキル 闇魔法
土魔法
焔魔法
船乗り
ーーーーー
ほう・・・!
成程。流石ロペ。いい人選だ。
ーーお待たせしましたボス。ウィルマ・ビューリファ―艦長代理です。
ーー私もいるわよっ!
「来たか。朝っぱらから悪いな。今からお前たちはCE社と、何て言ったか・・・?リサイクル兵器のえーっと。」
「雨宮さんガック社です。」
「あぁそれそれ。ガック社に行って、スペースワーカーを取ってきてほしい。研究と俺の遊び用の奴な。」
ーー了解しました。もしお急ぎでしたら、アンジー様にもこちらへお願いしたいのですが。
アンジー?
「何かあるのか?」
ーーはいボス。彼女のスキルを私のスキルと合わせれば、空間跳躍が可能です。
マジで?
ワープできるの?
「ほ・・・ほんとか・・・?
ーーは・・ハイ。可能です。しかしスキルの練度から、一隻に限りますが。
「良し!許す!チャっと行って来てくれ!アンジーを直ぐそっちに送る。
俺は眷属を遠距離から操作できる。普段は使う事は無いがこの時の俺はちょっと、メーターを振り切っていた。
・・・アンジーは今自室か。ヨシ・・・。
俺自身も近距離なら転送することが出来る。
俺はアンジーをナノマシン化し、通信網を使い九番艦のブリッジに転送した。
ーーえっ?ええ!?ちょ・・・・!!
お?おぉ?ポロリ・・・じゃないな。着てないな?
「アンジー。大胆だな?」
ーー銀河様!!一声かけてくだされば!!一声掛けてくだされば!!!
アンジーはどうやら風呂上がりだったようで、パンツ一丁の状態でブリッジに現れた。
すまん。今は反省している。
アンジーは速やかに得意の物質生成で、急いで下着と服を装着した。
ーー酷いですわ!髪もまだ乾いていませんのに・・・。
ーーアンタ・・・銀河様って言ってたっけ?ちょっと話を・・・。
「ショウコ。ステイ。」
ーーワン。
ショウコはキチンという事を聴くイイ娘。ツンだが。きちんとお座りで待っている。
「そこのウィルマと協力して、俺のスペースワーカーを受け取ってきてくれ。詳しくは彼女に話を聞いてくれ。」
ーーもぅ・・・。分かりましたわ。後でご褒美を要求いたしますね?
「考えておく。」
ーーしかし銀河様。旗艦の操縦は誰が・・・?
考えてなかった。
「あ!なんか通信してる!銀ちゃーんおはよー!」
エリューシオか。
「エリーだよー!」
エリューシオ・・・エリーは俺の横に立ち、モニターに手を振る。
その瞬間、ウィルマの顔から血の気が引いた。
ーーっっ!!!悪食エリー
「むっ!酷いの!悪食じゃないもん!グルメだもん!・・・・?あれ?」
エリーはモニターに映るウィルマに気付くと何かを思い出そうとしている。
「あっ。軍警察襲撃犯のウィルマ・・?」
おっとぉ・・・?物騒な話だな?
だがまぁ、監獄に居た以上誰かしらなんかやらかしているだろう。
ーー違いますっ!私は何もしていません!!軍警察にハメられただけです!!私は無抵抗で捕縛されました!
この件にロペは関係していなさそうだな。
「エリー。皆何かしらあるから。気にしてやるな。」
ーーボス!誤解です!私は冤罪なんです!!
「別に気にしていない。だが何か気になるから、帰ってきたら話を聞かせてほしい。」
ーー・・・了解しました。ではブリーフィングに入ります。
「ああ。アンジー九番艦を頼む。」
ーー了解しましたわ。
通信は切れた。
「エリー。仲良くしろよ?」
「うーん。彼女は私が捕まえたのね?」
え?
「直接の知り合いと言うか、捕縛したのか?」
「うん・・・。確かに無抵抗だったの。おかしいと思ったの。」
軍警察にハメられたとか言っていたな。
「軍警察は、確かにあの時からずっとおかしいとは思っていたの。」
「ほう?」
「だって、自分たちで捕まえればいいのに、私たちに捕まえさせるなんておかしいの。
ロペおねーちゃんが居なかったら、私たちも一緒にテロリストにされていたかもしれないの。」
・・・。穏やかじゃないな。
軍にせよ、軍警察にせよ、キナ臭いな。ただ一つの事をする。
一人ならすぐ出来ても、皆でやるとなると、とたんに出来なくなる、何故かって?
足を引っ張る奴が必ず居るからだ。どんな組織にも必ずいる。
俺の経験上の話でもある。そして俺も足を引っ張る側の人間だった。
何故ならば楽をしたかったから。重箱の隅を突っつくようにデータを精査し、
姑の如く計画の粗さを指摘する。そして白紙に戻す。いや・・・これを覆すような奴も居るのだ。
そういう奴の事を勇者と言うのだろうな。
「自分たちが狙われる要因は何か思いつくか?」
エリーは、一瞬、ほんの一瞬だがいつものにこにこ顔から年相応の軌跡を思い起こさせる渋い顔になったが、
俺が見ている事を思い出したのか、すぐにいつものにこにこ顔に戻る。
「銀ちゃん、めっ。」
なんか怒られた。見られたい顔では無かったようだな。
だがここで俺の天邪鬼が目を覚ました。
「俺はそんな取り繕わないエリーも好きだぜ?」
・・・?
あれ?止まったぞ?
俺は何故か固まったエリーのほっぺたをぷにぷにしたり、目の前で手をひらひらしたり、
しては見たが、動く気配が無い。何故だ?何があった?
「雨宮さん?何かしたんですか?エリーさん動かなくなっちゃったんですが?」
「いや・・・スイーツ雨宮を披露しただけなんだが・・・。」
「なんですかそれ・・・。」
しかし本当に動かなくなってしまったぞ?
・・・これはなんだか嫌な予感がする。
スキャンだ。
ーーーーー
エリューシア・クライオ・バハムル 30歳 エルフハイブリッドクォーター
状態 抜け殻(0-E)
投薬後遺症(重度)
成長停止(重度)
老化停止(重度)
種族スキル 調和
個人スキル 究極反転
後天スキル 闇魔法
復讐の炎
ハッピースマイル
隠し腕
くるふぁう
ーーーーー
!!!!
やられた!!
「イント!ロペはまだ戻らないのか!!!」
「はっ!はいっ!!今全速でこちらに向かうように通信を送りました!」
トラップに引っかからなかっただと・・・?
くるふぁう。これだけで何となくわかった。今まさにエリーはクルファウストとかいう奴に呼び出されたのだろう。
魂のみの状態で。
そうか、俺は勘違いしていた。クルファウストとやらが、転移かなんかでこちらに来るものだと思い込んでいた。
それ故のトラップだったのだが、こちらから出ていくぶんには何も引っ掛かる事は無い。
これしかないな。
俺はエリーを抱きかかえ、自らのシートに座る。
そしてエリーの唇を奪った。
ナノマシンに寄って体の隅々に防御壁を構築する。これで外部からの変化には応じないようになった。
内側からの変化は起らない。これは彼女の魂に刻まれたスキルのせいだ。
俺はもう一度、スキャンの情報を表示する。
ーーーーー
エリューシア・クライオ・バハムル 30歳 エルフハイブリッドクォーター
状態 抜け殻(0-E)
投薬後遺症(重度)
成長停止(重度)
老化停止(重度)
種族スキル 調和
個人スキル 究極反転
後天スキル 闇魔法
復讐の炎
ハッピースマイル
隠し腕
くるふぁうす
ーーーーー
どうやら侵蝕は止まったようだ。後は魂を引きずり戻す・・・。
?
いや。そんな事する必要があるか?
違う。トレースすればいいんだ。自分の頭の悪さに腹が立つ。
舐めた真似しやがって。
俺はエリーのスキルに触れてみた。完全に体から魂が離れてしまった訳では無い様だな。
もしそうなら、俺のが美汐にやった時の様に完全な抜け殻になるはずだ。
目には見えない光の糸のようなものが俺の目には見えた。
これを辿ればいい。
クルファウスト・・・短い付き合いだが、今日で終わらせてやる。
俺は自らをナノマシンよりさらに小さい光の粒子にまで分解し、エリーの魂の糸を辿った。
ーーーーーーーーーー
??????
「ふむ・・・。今日ははかどらんな。」
額の左右からヤギの角のような赤い角の生えた男は、手術台を前にそう呟いた。
「思ったより抵抗が強いですね。これほど強固な精神防壁は今までありませんでした。
これを崩す事で研究が一気に進みそうですね。」
傍に控えたナース服の女はそう言って、光の塊に手をかざした。
ーーーーーーーーーー
見える・・・。エリーの居る場所が。この宇宙から外に出てはいないようだ。
光の終着点はコロニーのようだ。だが、冥王星がかなり小さく見える。寧ろ海王星の方が大きい・・・。
という事は海王星圏で間違いなさそうだな。
あまり速度を上げるとエリーの魂に無駄に負担をかけることになる為、これ以上の速度は出ない。
かなりの早さなのだろうが、俺の感覚としてはゆっくりだ。
ゆっくり近づいてくるコロニーの中に辿り着くと、普通の居住コロニーのようだった。
オフィス街の様な所に向かって糸を辿り、病院だろうか。大きな建物の手術室に辿り着いた。
「やっとたどり着いたか。」
突如現れた俺に、腰を抜かしたナース服の女と、俺が現れた際、わざとぶつかった角のある男。
男は足を完全に踏み抜いてやったので、おそらく骨折どころの話では無いだろう。
見るからに怒ってはいるが、脂汗で額がテカっている。
「き・・・貴様っ!!一体どこから!!」
俺は無言でナノマシンに寄って作り出した金属の鎖を、うずくまる男の足首に巻きつけ、そのまま後ろ流れで手首を縛る。
手術室と思われる部屋には煌々と明かりが灯っており、非常に眩しかった。
手術台の横に有る謎の機械に手を触れ、分解。情報を入手し、別に物体に変換する。
これはアンジーから教えてもらった物質生成の基礎から生み出した物体変換。
俺は部屋の両端に遠隔操作可能な滑車を作って、男を縛っている鎖をひっかけ
天井に作ったフックに、手首を拘束している鎖を引っ掛け宙吊りにする。
そこで女が部屋から逃げようとしたので、同じように滑車をもう一つ作り、両手両足を縛る。
しかしこちらは鎖ではなく、荒縄にする。
女は胸の下と肩と下腹部と股で固定するように縛り、滑車に荒縄をひっかけた。体の固定と、強制開脚の構えだ。
「貴様!!何をする!直ぐに解け!今ならまだ!グギャ。」
とりあえず顎を一度砕く。
「誰が喋っていいと言った?うるさい奴め。」
俺はいったん男をそのまま放置し、女の方に近づく。
「た・・・助けて・・・。」
この女の顔はどこかで見た覚えがある。・・・。
そうだ。イントだ。細部は違うものの、造りやパーツのバランスはイントと全く同じ。
全く同じ・・・?
「女。お前の名前は?」
「イン・トゥエルブです・・・。」
・・・・。若干引っ掛かるが、イントの名前が個性的すぎるので比較しにくい。
イント。と名前の中に入っているだけで、共通する部分は無いのかもしれない。
だがやはり引っ掛かる。調べるべきだな。
ーーーーー
イン・トゥエルブ 3歳 人工人間β種
状態 緊縛
高揚
恐怖(重度)
動悸(重度)
冷え性(軽度)
便秘(軽度)
種族スキル 同種作成
個人スキル 鋼鉄の髪
後天スキル 変身
クルファウストの加護
ジャンキーフィーバー
毛根強化
再生力強化
増血
記憶封印
ーーーーー
・・・。俺は無言で女の毛根から根こそぎ引きちぎった。頭皮が一緒にはがれ、剥き出しの筋繊維が生々しい。
「ぎぃいいいいいいいいい!!!!!!!」
再生力強化のせいだろうか?恐らくは、気絶するであろう程の痛みだったはずだが、気絶する事無く痛みに悶えている。
半端にスキルを持っているとろくな事が無い。それを体現したかのようだった。
男は俺の行為を見て唖然としたまま、口から血とヨダレを垂れ流していた。
俺は男に向き直る。
「取り敢えず準備は整った。さぁ。今日の俺はすこぶる機嫌が悪い。お前が死ぬのは確定している。
その時が来るまで、俺を楽しませ続けろよ。」
俺は周囲を見渡して、様々器具が置かれた棚を見つけた。
「色々揃っているじゃないか。いい病院だな。メスも清潔だ。AEDもあるのか。そうか、AEDか。」
ベタな所から攻めていくか。
俺はAEDを手に取ってみる。本体の方からスプリング状のコードが伸びてアイロンのような端末をつないでいる。
直ぐ傍にはジェル状の通電を補助する薬剤が置かれていた。
「オイルマッサージでもしようか。」
俺は男の服を分解し、腹に薬剤を塗り、AED端末にもたっぷりと薬剤を付けた。
しかしこのままではな・・・。
俺はナノマシンで、医療用AEDを拷問用AEDに改造した。
通常のAEDの出力の十倍まで調節できるように改造した。
まぁ、こいつは人間じゃないし、このぐらいで値を上げる様ならさっさと分解してしまうか。
お楽しみはこれからだ。
「いふぁ・・・いふぁなにふぉ・・・。」
俺はAED同士をくっつけ、スイッチを入れる。
バチッ
目が眩むほどの閃光がAED端末の間で弾ける。と同時に焦げ臭いにおいが鼻を衝く。
「ひゃ・・・ひゃめろ・・・!!」
バチバチッ
「ぎぃ!」
強烈な電流によって男の全身が強制的に跳ね上がる。
皮膚の焦げる独特の臭いが一瞬室内に広がるが、換気扇が優秀なのか直ぐに消え、新鮮な空気に戻る。
「いきなり十倍はきつかったかな?でももう一回。」
バチバチッ
「イッ!クヒュ!」
全身の筋肉へ、そして脳へ。プログラムのない只の電流が走る。普通なら最初の一回目で脳が焼けきれるだろうが、
こいつの場合はそうでも無いらしい。
「ふっふっ・・・。丈夫な体じゃないか。産んでくれた親に感謝しないとな?」
バチバチッ
「マギャ!!」
何かしゃべろうとしたらしいが、良く分からなかった。
「もっと抵抗するかと思ったんだが・・・。やはり男はつまらないな。」
俺は男の顎を治し、話が出来るようにした。
「回復魔法か・・・!?いった・・・。」
バチバチッ
「い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”!!!!」
目から光が消え、気を失ったようだ。
バチバチッ
ビクンビクンと跳ねる体に合わせ、呼吸が荒くなっていく。
失った意識も強制的に戻ったようだ。
「ハッ・・・ハッ・・・・な・・何が目的だ・・・!!」
しかし顎を治しておいてなんだが。良く喋る。
俺はAEDを置き、直ぐ傍に置いてあった点滴を下げるための支柱のような金属の棒を手に取った。
「な・・・今度は何を・・・。」
俺の手に収まった金属の支柱は、刺々しく変化し、錆びた針金へと変化した。
俺は無造作にそれを振り、男に叩きつけた。
「ふぐっ!!
錆びた針金が肌に食い込むが、直ぐに再生している様だ。
「成程な。これでは楽しめない訳だ。外してしまおう。」
ーーーーー
クルファウスト・オ・リジン 7805歳 魔人β種
状態 物理拘束(脱出不可)
裂傷(再生中)(重度)
打撲(再生中)(軽度)
魔力防壁(物理)
種族スキル 魔種共鳴
個人スキル 儀式召喚
後天スキル 転移魔法
闇魔法
暗黒魔法
回復魔法
風魔法
雷魔法
医療技術
看護技術
介護技術
指圧技術
ヨガ
加圧トレーニングインストラクター
高地トレーニングインストラクター
小学校教諭
中学校教諭
小児教育マスタリー
ようじょだいすき
再生
苦痛耐性
痛覚耐性
ーーーーー
・・・子供の敵ッ!!!
今なら多分できる。美汐を分解した時のデータを基に肉体だけで無い、魂にまでアクセス。
・・・。出来る。ロペの権限のお陰だな。その権限も分解する事でサーバーにそのデーターも蓄積されている。
眷属全員に権限を付与する事も出来る。まぁ今はそれは置いておいて・・・。
こいつの要らないものは・・・再生、苦痛耐性に痛覚耐性・・・後は・・・個人スキルも種族スキルも外してみるか。
・・・おっと・・・ようじょだいすきも外す・・・・と。
ーーーーー
クルファウスト・オ・リジン 7805歳 魔人β種
状態 物理拘束(脱出不可)
裂傷(再生中)(重度)
打撲(再生中)(軽度)
魔力防壁(物理)
種族スキル 選択してください▼
個人スキル 選択してください▼
後天スキル 転移魔法
闇魔法
暗黒魔法
回復魔法
風魔法
雷魔法
医療技術
看護技術
介護技術
指圧技術
ヨガ
加圧トレーニングインストラクター
高地トレーニングインストラクター
小学校教諭
中学校教諭
小児教育マスタリー
ーーーーー
よし。
外せた。
これは何だろう?美汐の時にもあったが、結局選ばずに放置してしまっていたな。
折角だ、なんか選んでみっか。
ーーーーー
種族スキル 選択してください▼
ようじょだいすき
ロリコン
ペドフィリア
巨乳スキー
貧乳スキー
精剛
魔種共鳴
暗黒魔法マスタリー
転移魔法マスタリー
教師の素質
トレーニングマスタリー
ジャイアントスイング
・
・
・
ーーーーー
ツッコミは必要ですか?必要ですね?
どないやっちゅーねん!!
どんだけ幼女だいすっきゃねん!?
ふぅ。
なんか何時でも替えられるみたいだし・・・とりあえずジャイアントスイングで。
ぽちっと・・。
個人スキルもほぼラインナップは変わらないみたいだな・・・。
元々の種族スキルらしいスキルは魔種共鳴しか見当たらないなぁ。
個人スキルは教師の素質・・・と。
「貴様・・・雨宮銀河だな!!!一体私に何をした!!!直ぐにこの・・・!!」
ゴッ
人が考えている途中で急に喋り出しやがって・・・。若干ビックリしたやんげ。
つい手が出た。
クルファウストはこちらを見て驚愕している。まぁそうだろうな。
後天スキルとは、クルファウストの様に外科手術で付与するものばかりではない。
魔法技術や技能の様に努力で身に付けられる者もこの中に入る、
おそらく奴の耐性スキルは、トレーニングの賜物だったのだろう。
「痛い・・・!な・・・何故だ?私は・・・痛みも苦痛も克服した・・・!!
地に滲様な訓練を経て漸く手に入れた・・・・!?」
「ようじょだいすき。」
俺はクルファウストに向かって呟いた。
「ようじょだいすき?」
「な・・・は・・・・?」
誰にも知られないはずのスキル。この世界では鑑定スキルがあるのかどうか知らないが、
他人には自分のスキルは見せられない。信頼しているとか家族とかそういう問題じゃない。
他人に見せるシステムそのものが存在しないのだ。
しかしこれには穴と言うか抜け道もある。文字に起こせばいいだけだ。
それ故に不便ではあるが、俺も頭の中で他人のステータスを表示させて確認している。
だが、それはあくまで俺にしか出来ない事。他の奴にも出来ない事は多分無いが・・・。
その為には他人を操るスキルが必要だろう。
「何を驚くようなことがある?」
俺は部屋の端に設置した滑車のスイッチを入れる。
うぃーーーん
「あ?・・・や・・やめろ・・・!!!」
滑車の巻き上げスピードは非常にゆっくりしたものだ。猫が獲物を狙う時の様に、
ゆっくり・・・ゆっくり・・・。
うぃーーーーん
「まて・・・。待ってくれ!!話し合おう!!」
待ち時間を演出する為に、非常に長く鎖を作ってある。
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
「こ・・・こんなことをしてタダで済むと思うのか!?・・・・や・・・やめろ!!!」
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
「おっと・・・。反対側の滑車もスイッチを入れないとな。」
俺はゆっくり歩き反対側の滑車のスイッチを入れた。
リモコンが手元に有るのだがそれは敢えて使わないでおく。
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
ジャラジャラジャラ
ウィー―――――ン
両側の滑車が同時に動き出す。
「ま・・・!まって・・・!!!」
十分に巻き取られた鎖。その鎖の終点には・・・。
もちろんクルファウストの足首に繋がっている。
ジャラ
ウィー―――――ン
ぶちぅ
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
股が少し裂けた所でリモコンでストップする。
更にスピードを遅く調整してとりあえず置いておく。
少しパワーがあり過ぎたか。抵抗する間もなく引きちぎってしまう所だった。
クルファウストの胴の下には、既に裂けた股から溢れ出した大量の血液が水たまりを作っている。
「ひぃっ!!な・・・何故痛みが!!!あぁ・・・!!いたい・・・・いたいいぃぃぃぃいぃ!!!」
ふーむ。これほど違うとは思わなかったな。
耐性スキルか。今後は要チェックだな。
因みに女の方はデザートとして置いてある。
彼女のスキル、鋼鉄の髪とやらは既に変更して、千年殺しとかいう必殺技っぽいものに変えてある。
「さて・・・。ここからお話ししようか。」
「今更・・・ぎゃっ!・・やめ・・・。」
俺はリモコンを奴の目の前にぶら下げ、スイッチを押す。
「分かるか?これが何か。」
うぃーーーーーーーーーん
「ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ・・・。」
ボタボタボタ
股の裂ける範囲が徐々に広がる。そのたびに大粒の血液が足元の水たまりを池に変える。
俺はナノマシンでクルファウストの傷口だけを塞いだ。
「さて・・・。おはなし、しようか?」
クルファウストは俺を見上げ、無言で頷いた。
「何から話してもらうか・・・。そうだ。」
俺は奴の髪を引っ掴み、頭を上げさせる。
「お前を使っている奴は誰だ。どこにいる?」
俺は適当にそれっぽい事を聞いてみる。
「そ・・それは・・・。」
ん?当りを引いたか?
「取り敢えず、何処まで足が伸びるか試してみるか。」
さっきは勢いがあり過ぎて一気に裂けてしまったからなぁ・・・。
うぃーーーーーーーーーん
先ほどより滑車の動く速度はゆっくりだが、滑車自体のパワーは変わらない。
ミチミチと皮膚が、筋肉がゆっくり裂ける音がするが、俺は気にせず話しかける。
「で?誰の事かな?それは?」
「ぐっ・・・いっ・・・んんっ!!!!がぁああ!!」
うぃーーーーーーーーーん
「あ・・・あ・・・・ぁあああ!!!」
ミチミチミチミチ
うぃーーーーーーーーーん
「いぃぃいいいぃぃいいい!!!言う!いいいいいいうがああぁああ!!!!」
ブチブチブチブチ
うぃーーーーーーーーーん
「話にならんなぁ。俺が聞いた事を思い出せよ。」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
ぶちん
うぃーーーーーーーーーん
「あぎゃっ!!!」
俺は滑車を止めるが、先に回していた右足側は千切れてしまった。左側も皮一枚で繋がっているだけだ。
どうやら気を失ったようだが・・・。
バチッバチッ
「ギャッ!!」
直ぐ起こす。
「傷口は既にふさいである。言いたいことがあるなら聞くが。別に話したくないならそれ以上追及はしない。
俺は皮一枚で繋がっていた奴の左足を千切り捨て、両側の滑車を今度は両手首に繋いだ。
そしてて天井のフックに引っ掛けた鎖を一旦解いて、首に巻き付ける。
「魔法は使わないんだな。」
俺は素直に思った事を聞いてみた。
すると今思い出したかのように奴の魔力が高まった。が。それだけだった。
「魔力が・・・!魔力が抜けていく・・!!」
昔漫画で見たモノを参考にして作ったんだ。この鎖はそういうモノ。
可能性を断つ。それだけで心にはダメージが有るものだ。
「転移魔法で逃げようと思ったか?残念だったな。」
最後の頼みの綱である魔法を否定され、余裕を保つための耐性スキルを奪われ、
威厳を保つために秘密にしている性癖を握られ、奴の心は丸裸になった。
「もういいだろう。楽にしてやろる。脳に直接聞けばいいだけなんだから。」
奴に若干安堵の表情が見える。ぽちっとな。
うぃーーーーーーーーーん
「楽になるまでは時間が掛かるがな。」
敢えて鎖には余裕を持たせてある。
これまでの痛みの経験。待ち時間の焦燥感、耳に付く鎖の音・
今のクルファウストには、全てが恐怖だった。
圧倒的な力の差を身をもって知る。これで諦めないなら分解すしか無いな。
「やめてくれ!!!もうやめてくれぇぇぇ!!!!助けてくれ!!助けてください!!
うぃーーーーーーーーーん
とりあえず、放置する。さて、かなり時間があるから女の方も見てみよう。
俺が女の方を振り向くと、電気ショックでも受けたかのように、女の体が跳ねる。
ぴちゃ・・・
ん?水たまり・・・じゃないな。
まぁ・・三歳だし仕方ない・・・のか?
「さぁお嬢ちゃん。あいつと同じ目に遭いたいかな?きっと楽しいぞ?」
何を言っているんだこいつ?と言わんばかりの表情だったが、先ほどまでの奴とのやり取りを思い出したのか、
全力で首を横に振る。
「何でもします!!知っている事も全てお教えしますから・・・あ・。」
今理解したのだろう。俺が聞きたいのは宣言じゃない。と、
俺はもう一つのリモコンのスイッチを押してクルファウストに向き直った。
うぃーーーーーーーーーん
うぃーーーーーーーーーん
ジャラジャラジャラ
「ょうおっさん。さっきぶり。」
血液が足りないのか、全身の色が土気色に変わってきた、
「私は太陽系王国の筆頭科学者だ!国王陛下の命により、魂を解読する為にここに居る!!」
そう。それでいい。
余計な前置きは、おまえ達には要らない。
うぃーーーーーーーーーん
うぃーーーーーーーーーん
ジャラジャラジャラ
「で?」
「融合技術を作ったのも私だ!世界を越える技術を確立したのも私だ!!あのようじょをここに連れてきたのも私だ!!「それはしってる。」」
うーむ。思ったより重要な情報が手に入った。つまりこいつを確保すれば、世界を渡る術が手に入る。
「そうか。俺が聞きたかったのはちょっと違ったんだが・・・。まぁ良いか。」
俺はクルファウストの滑車を止めた。何とか腕は千切れずに済んだようだな。
うぃーーーーーーーーーん
「ほかに・・・・ほかに・・・・あっ。私はトレーナーだ!魔法を教えられる!!太陽系王国の中でも指折りの魔導士だ!
きっと役に立つ!!」
そうなんだよなぁ。こいつのスキルは、今の俺達にとってかなり必要なんだが・・・。
「別にお前を分解してしまえば、おまえ自身は要らないんだよなぁ。「ぎゃぁあああああ!!!!」」
おっと忘れていた。
俺は女の方の滑車をリモコンで止めた。
「そうだ、あの女は何だ。」
心が完全に故国よりも俺に傾いたのだろう。両手が開いて入れば揉み手でもしそうな位、
気持ち悪い引きつった笑顔で答えてくる。
「あ・・あの女は王国からの監視でございます!!直ぐに殺してもいいかと!!」
信用されていないとかそういうモノでも無いのだろうな。
「成程な・・・。因みに王国とやらは、何処にあるんだ?」
「海王星ダンジョンの最深部の『門』の先にございます。」
「海王星の最終防衛ライン・・・管理者たちの居た所はどうなっている?」
「現在は王国の前線基地として使用されています。修理修復などは何故かできませんでしたが、
我らの世界から持ち出した物資を使い、新たな基地を建設しました。」
異世界ねぇ・・・。鵜呑みにする訳にもいかないが、嘘はついていないようだなぁ。
「何のためにこの世界を侵略しに来たんだ?」
これは聞いておかないとな。
「わ・・・我らの世界が・・・消滅の危機に瀕しているからです・・・。」
これだけ聞けば勝手な話だと思う。
「移住ではだめだったのか?この世界の管理者に話を通せば、可能だったはずだが。」
そこまで俺が言うとクルファウストは項垂れる。
「我が国の王は、我らがそういう進言をしても聞く耳を持たない方です故。」
「そんな奴に従ってこの世界に迷惑をかけに来た訳か。」
俺が両手をバキバキ音を立てるたびに、クルファウストは残り少ない水分を汗にしてたらす。
「も・・・もうそんな事は私はしません!あなたに従います。だから!!!」
そんな話をしていた所に、女の方から呟くような声が聞こえた。
「何か問題があるようだな?」
女は不敵な笑みを浮かべて、俺を憐れむように見た。
「私の目を通じて、我らが王にこの状況が伝わるわ!あなたはお終いよ!」
俺は首をかしげる。
はて?そんなステータスこいつに有ったかね?
俺は改めて彼女のステータスを確認してみたが、詳しく見てもやはりそんな事はこの体、魂では不可能な様だ。
「私を馬鹿にしているの・・・?」
「いや・・・バカって言うか、可哀そうだな・・・って。」
「そいつにはそんな機能は元々在りません!消してしまいましょう!!」
クルファウストは彼女を遠ざけたいのか、あまり良い感情を持ち合わせてはいないようだった。
「機能だのなんだの、俺には良く分からんが、彼女が人工人間であることにそういう話が関わってくるのか?」
俺はクルファウストを解放してみた。ナノマシンで欠損した体を創る。
千切ってしまった足は分解して養分にした。
「おおぉおお!!私の体が!!あぁ・・・ありがとうございます!ありがとうございます!!!」
「おまえはとりあえずその子の改造を止めろよ。元に戻すぐらいはできるだろう。」
「ははぁ・・・・!!!」
クルファウストは綺麗な土下座をし、手術台に横たわるエリーの魂に魔法をかけている様だ。
時間が掛かりそうだな。
「女。お前は王国の何だ?何者だ?」
「そんな事に私が・・・。」
ポチっとな。
うぃーーーーーーーーーん
「あっ!!!!ぐううううう!!!!」
ほう・・・中々気骨のある抵抗。だが・・・。
「もうダメ・・・。」
早いな!!今からくすぐってやろうと思ったら、もうギブアップしやがった。
まだ数秒しか経っていないのに・・・。
うぃーーーーーーーーーん
おおぅ・・・。ふぁーんたすてぃこー・・・。
彼女は両足を高く上にあげる格好で吊るされている。ブイ字開脚ってかんじ。
彼女のナース服はミニスカートなので、完璧に紫のパンツが丸見えである。
「ほう・・・。大人パンツだな。」
「この変態!!!おろしなさいよ!!」
おろし・・・。ふむ。おろしか。
「そうだな。おろすか。いいぞ。そう望むならやってやろう。」
いま彼女の足には鎖が巻かれ、それを滑車によって引っ張り上げている。俺はその滑車の根元に、
おろし金をつけた。
「俺って優しいな。女の子のお願いは聞いてあげたくなっちゃうんだ。」
そしてスイッチを押す。
うぃーーーーーーーーーん
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ
おろし金は自動で上下にスライドするように作ってある。
「い・・・いや・・・・・・。」
彼女も願いを叶えた俺に礼でも言いたいのだろうか?口がもごもごしている。
クルファウストはもう危害を加えられないと思ったのか、部屋の端に行き滑車を眺めている。
うぃーーーーーーーーーん
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ
「そうだ。」
クルファウストは面白いスキルを持っていたな。
俺はナノマシンで着脱可能になったスキルを彼女に張り付けた。
再生である。
うぃーーーーーーーーーん
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ
いざ。エンドレスおろし金。
「ひいっ!!!あ!!!!あぁ!!!!うっ!!!!」
ゴリゴリと音を立てて彼女の足の骨を肉ごとおろしていく。
うぃーーーーーーーーーん
じゅっくじゅっくじゅっくじゅっく
ゴリゴリゴリゴリ
「がががっ!!た!がぁ!!ごごおおぉおお!!!」
うぃーーーーーーーーーん
じゅっくじゅっくじゅっくじゅっく
ゴリゴリゴリゴリ
「グゲッ!!!ががが!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁああああ!!1」
滑車を止めてみると引っ張られ過ぎて腹迄避けた下半身と、既にひざ下まですりおろされた足がある。
再生の力は凄いな。裂けた下半身と、ずたずたになった足が徐々に再生していく。
しかしずっと引っ張られたままなので、再生した下半身は、腹から下が強制的に下半身としての機能を持たされ、
ふとももの延長上にいきなり腹が存在する、ミュータントの様になっていた。
「おーぅ・・・。クルファウスト。お前もこうなる所だったんだぜ?再生剥がしておいて正解だったな?」
クルファウスト自身も、自らの持つ再生能力の強力さに唖然としていた。
「この世界に来てから妙に力が漲るとは思っておりましたが・・・。まさかここ迄とは・・・。」
この世界とクルファウストの世界とでは随分環境が違うようだな。
「いやぁ・・・いやぁあああああああ!!!!」
気を失った彼女が意識を取り戻した瞬間、自分の体の変化に気が付いたようで、
狭い手術室に絶叫が響いた。
「なにこれ!!!何なの!?いやぁ!!!いやぁああああああああ!!!!」
「随分不細工になったな。おめでとう。望みどおりにおろしてやったぞ?礼の一つでも言ってみたらどうだ?」
敢えて挑発する必要は無かったが、こういう奴には、躾けが必要だ。
「許して・・・もう止めて下さい!!!これ以上・・・」
ポチっと。
うぃーーーーーーーーーん
じゅっくじゅっくじゅっくじゅっく
ゴリゴリゴリゴリ
「あ”っあ”っあ”っあ”っあ”っあ”っ!!」
神経が過敏になっているのか、おろし金が動くたびにガクンガクンと頭が動く。
「おろしてくださってありがとうございます。だろ?」
うぃーーーーーーーーーん
じゅっくじゅっくじゅっくじゅっく
ゴリゴリゴリゴリ
「「あ”っあ”っあ”っあ”っあ”っあ”っ!!あ”---------!!!」
ボタボタボタボタ
失禁した。それは大量に。
それもそうだ。下半身が裂けたのだし、泌尿器感も剥き出しのままだ。
裂けた所は無理やり皮膚が覆い隠した様な状態になっている。良く見ると、管だけ外に露出している。
俺は滑車を止める。
「お礼は?」
「あ”あ・・ん”っ・・・あ”り”がぁ”どぅお”ございまじだぁ”あ”!!」
全身の筋肉が緩み切っていて、まともに会話も出来ないようだが、再生の能力はそれを回復していく。
削れたひざ下はもう既になく、新たに裂けた下半身は首の下まで続いている。
どうやって生きているのか不思議なぐらい、人体としては不合理な状態だった。辛うじてつながっているのは首から喉までだ。
さて・・・この状態で話は出来るかな・・・?
彼女は徐々に欠損した部分が再生していくが、おろし金に阻まれ、足の指は明後日の方向を向いてもはや足としての機能はなさそうだった。
「さて・・・。元に戻してほしかったら、俺に逆らうな。わかった?」
彼女は唯一自力で動かせる首を力強く振り肯定の意志を示した。
彼女の顔面は筋肉が完全に引きつり、見る影も無かった。
「所属は?」
「だ・・・だいようげいおうごく・・・ぜんに”ゅうぶだいじょぞぐでず・・・。」
・・・・うぬぬ・・・。裂けた範囲が広すぎて、喉迄まともに機能していないな・・・。
「目的は。」
「ぐるばうずどあがぜのがんじど、ぜんぜんぎじにごのぜがいのじづじょうお”ごうごくずるごどでず。」
非常に聞き取りにくい。監視と報告。だろうな。
「どうやって報告していた。」
「ごろに”ーのづうじんじぜづヴぉづがいまじだ。」
喋る度に吐き気がするのか、おそらく胃があるであろう、右半分の方がビクンビクンうごめいている。
彼女の足元は、人体に存在するあらゆる液体が池を作っていた。
コロニーの通信設備か。
「おまえは何のために動いている。」
「あ・・・あ・・・。」
?
彼女は何かを思い出したのか、涙を流し、俺を見た。
「あばびや・・・ぎんが・・・ざば・・・。」
クルファウストを通じて俺の事を知っていたのだろうが、名前を呼ぶ彼女の目が、
誰かと被る。
「べーろーべーざまば・・・・。」
・・・・?
彼女は意識を失ったようだ。
ベロペ様?ロペの事か?いや・・・彼女は異世界の・・・。
・・・・。仕方ない。
俺はナノマシンで、事前に保存していた彼女の存在データのうち、肉体のデータをロードしナノマシンで彼女を元に戻した。
「・・・・・ぅ・・・ごおふっ!!ぐえっ・・・!!」
彼女は元に戻った途端胃の内容物を全てぶちまけた。と言っても何も無いのか、緑色の胃液だけだが。
俺はナノマシンで、その場全てを綺麗にし、蹲る彼女の前に座った。
「クルファウスト。お前もこっち来い。」
「承知しましたっ!!」
奴は持てる力の全てを使って俺の傍に飛んできた。
こいつ変わり過ぎだろ・・・。
俺は彼女の背中をさすりながら話を聞く。
「どこまで覚えている?」
「ぜ・・全部・・・。」
ふむ。インストールは問題なかったようだな。
「聞きたいことが出来た。お前のさっき言っていたベロペって言うのは誰の事だ。」
彼女はポケットに入っていたハンカチで口元を拭いて、話始めた。
「第三超広域開拓世界。ここの管理者の事です。あなたの事も、以前からお慕い申しておりました。
ベロペ様は、傍仕えのイントエは・・・どうなったのでしょうか?」
あの時の事か。
「悪いが俺は何も知らん。だが・・・。ベロペは俺の傍に居る。傍仕えのイントエがどのイントエか知らんが、
一人それっぽい奴なら近くに居る。」
その言葉を聞くなり、彼女は何故が俺に飛びついてきた。
「貴様!雨宮様に何をっ!!」
だからお前は一体なんだと・・・。
「良かった・・・、。良かったです・・・。お会いになれたのですね。」
うむ・・・。話の内容は分かるんだが・・。何故こいつかこんな事を言うのか分からない。
「おまえは一体なんだ?何者?」
「私は・・・海王星で異世界の奴らに食われました。それから精神生命体である我々は、未完成の人工人類に無理やり押し込まれ、
記憶を封印されていました。」
成程・・・スキルのアレはそういう事だったか。
「それから・・・。向こうの世界で重要な事を知りました。是非に!」
「分かった。一旦俺の船に帰ろう。ロペもそろそろ来る頃だろう。」
俺の・・・タメも・・・結構来ている。
「クルファウストお前も来い。まだ聞きたいことが山ほどある。」
「ははぁ!!承知しましたぁ!!」
土下座はもう良いっての。
「このコロニーはどうなさりますか?」
そう言えばここに来るまでに、多少見はしたが、このコロニーは生きている。
つまり、生活をしている一般市民がいるのだ。
なぜか?
「向こうの世界からの移住者が既にここに居るんだな?」
二人は俯き、俺に返答する。
「その通りにございます。」「はい・・・。」
手遅れだったか。しかしだ。
「俺は別に、異世界を破壊したい訳じゃ無いし、異世界の人類を皆殺しにしたい訳でも無い。
既に生活があるというのなら、それは尊重しよう。既にこの世界は一度敗北しているわけだしな・・・。」
ロペもそれに関しては何も言うまいよ。
クルファウストか・・・。連れて帰ったら美汐が何て言うかなぁ。
「まぁ良い。それらの話も含めて、一旦帰る。」
俺は二人を粒子にまで分解し、エリーを連れて、マギアラビス戻った。
ーーーーーーーーーー
マギアラビスメインブリッジ
「わわわっ!!」
ん?いかんいかん。ちょっと位置がずれた。
「イントたんすまん。」
「たんて・・・。大丈夫ですけど。そちらの二人は・・・?」
そっか・・・説明・・・ちょっと待ってもらおうか。
俺はクルファウストに食堂で待つように言い、イントたんを肩に担ぎ、イン・トゥエルブと、エリーを引っ掴んで自室に戻った。
「雨宮さん!?」
「ふぁ~~~・・・。銀ちゃんのおへや?」
「雨宮様・・・?」
俺は全員の服を分解した。
「ひゃぁ!」「わわっ!」「え?え?え?」
うちの息子はフィーバー中です。
「ふぅ~・・・・。さぁ!始めようか!!!」
吠え盛る魔獣は一昼夜を通してなお、静まる事は無かったという。
ーーーーーーーーーー
「ほほぅ・・・。こんな技術があるのか・・・。ふむ・・・。私の居た世界では及びもつかない技術だ・・・。
寝返ってよかったなぁ・・・。」
一人放置されたクルファウストは食堂に向かう道すがら、艦内を観察していた。
自動ドアに驚き、トラクタービームのエレベーターに驚き、センサーでオンオフする只のライトにも驚いていた。
「魔術かとも思ったが、どうやら全く違う技術のようだなぁ。」
キョロキョロしながら教えられた食堂に向かっていると、ついよそ見をしてしまったクルファウストは、
目的地の食堂から出てきた女性とぶつかった。
「あいたた・・・。申し訳ない、自分は・・・あ。」
「いたたぁ・・・。こちらこそごめんなさ・・・い!!!」
出会うべくして出会った二人の運命や如何に。
エィル・ミー 42歳 ドワーフ機人種
両手と胸から上が全て生体機械のドワーフ種。商業連合に属するコロニー出身で、元連合国の職人。
ヘルフレム以前は、金属加工業を家族で営んでいたが、大手ライバル会社からの誘いを断り、町工場としての立ち位置を固辞したため、事故に見せかけて、両親が雑害される。しかもその車を運転していたのはエィル本人であった。
当時はやっていた、車のコントロールを奪うネットワークウィルス『THE・ダッシュ』にエィルの車が感染、コントロールを奪われ工場で仕事中の両親に突っ込んだ。
警察もネットワークウィルスの存在は知っていたが、操作は全くされず、事故の翌日にはヘルフレム行きが決定していた。
エィルの特技は反復行動。脳内に一度行った動作記録を保存し、ロードを繰り返す事に寄って、同じ行動を連続して行うことが出来る。
この為一連の作業を保存する事に寄り、理屈が分からなくても、フローチャート式に行動記録を保存する事に寄って、どんな作業でも無意識にやってのけることが出来る。
ロペは彼女の特技を知って様々な可能性を探ったが、適正人材の不足から、オペレーターを急遽やってもらうべく、行動記録を彼女に渡し、オペレーターマニュアルをインストールした彼女は、必要な行動をオートで行うことが可能で、体をプログラムで自意識外で動かしている。
その為言葉と脳内の考えは全く違う事もしばしばあり、マニュアル通りの行動しかできないが、そんな自分を脱出し、新しい自分になりたいと、最近思うようになった。
ウィルマ・ビューリファー 25歳 エルフ機人種
体の上半身、腰から上、首から下が生体機械のエルフ種。元々冥王星宙域の大学生で、警察活動や、政府の活動に異議を唱える、活動家をしていたが、軍警察の罠に掛かり逮捕、ヘルフレム監獄に収監されることになった。
荒事に離れていないものの、魔法の才能を有する稀有な存在として、ロペの見出され雨宮所有のマギア級戦艦九番艦マギア・フェトラの次期艦長として、艦長代理に任命される。活動家としての実績もあり、作戦立案や行動計画の構築に一日の長があり、雨宮も一目置く存在に成りつつある。
完熟訓練中は代理だが、順当に行けば艦長となる、しかしライバルがいない訳では無く、現在九番艦の艦長代理は八人もいるので、今回の雨宮からの指令をチャンスと見て、他のライバルから差を付けたいと思っている。
イン・トゥエルブ 3歳 人工人間β種
異世界にて製造された人工人類のβ種・・・。つまり、試作品。
侵略世界による振興で倒れた彼女はその魂を捕獲され、侵略世界に連れて帰られ、その世界で第三世界で製造される人工人類とは、全くスペックの異なる弱い人工人類として生まれ変わった。
元々第三世界に生まれ変わる為に強化された精神生命体であったが為に、肉体が器としての機能を果たしきれず、戦闘行動を含め、あらゆる行動に制限があり、まともに生きていることが不思議なほど常に疲労している。
ロペから雨宮の事を、転生前から聞かされ続けていたという経緯もあり、雨宮が第三世界にやってくる前から雨宮の事を、ロペと共に見守っていたイントエシリーズの一人。
侵略世界で生まれ変わってしまった時に彼女は「鋼鉄の髪って・・・何の役に立つのよ!!こんな虚弱な体で戦いなんてできないのに!!」
と嘆いていた。