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EP16 朝倉美汐と銀河フィーバー

長い・・・?


 俺はきっと彼女の逆鱗に触れてしまったのだろう。立ち上るオーラは赤く見え、怒りが可視化するとあんな感じかなと、そう思うような気持になる。

俺はまだ後ろを振り返ってはいないが、俺の後ろでは多くの人が作業をしていたり、研究や、調整作業などをしている・・・筈だった。

しかし彼女がここを訪れた時、平和なドックは一変、地獄絵図へと変貌した。正直これ以上彼女を戦艦に近づかせたくない、戦艦の耐久値がどの位か分からないからだ。

一応、彼女の歩いている床は何事も無かったようなので、床と同じぐらいの耐久力があるなら、何とかなるのかもしれない。

しかし、今まで彼女の大声を一身に喰らい続けて気が付いたと言うか、思い出したが、声とは口から扇状に広がるものだ。真正面を向いていても、その周りのある程度影響する。

放射状に広がる声、振動は、反射し、薄れはするものの後ろにも影響がある。しかし、しかしだ・・・。


 彼女の声は、俺の見た感じだと360度、全方位に放射されているように思える。


 そうでも無ければ、あの時の時点で5・60メートルは離れていたドックの入口の扉が跳ねるほど振動したり、近い距離に居たとはいえ、ハイパーヒューマノイドであるロペが、後ろに居た状態で

気絶するほどの振動が来るはずが無い。俺でさえ50メートルの距離で内臓がダメージを受け、視界が一瞬奪われる程の威力だった。普通の人間は間違いなく死ぬだろう。

そんな威力だった。


 今日ほどナノマシンに感謝した事は無い。恐らく俺もロペもナノマシンが無かったら確実に二回目の死を迎えていただろう。

彼女は今もなおこちらに近づいてくる足を止めない。出来る限り彼女から他の生物・・・作業をしている人達から遠ざけたいのだが・・・。

一つ、懸念がある。あの声がナノマシンにどんな影響を及ぼすのかが不明なのだ。実は彼女がドックに入ってきてから直ぐに彼女をスキャンしているのだが、

情報が来ないのだ。これは即ち、彼女の声によってナノマシンが機能不戦、若しくは機能停止状態になっているからだと推測できる。

この情報からわかることが何か。それは即ち。


 あの声は俺も殺せるという事。


 確かにバックアップもあるし、ナノマシン自体も予備として世界中様々な所に在ることは確認できている。

しかしだ。ナノマシンを破壊する。しかもナノマシンが機能不全に陥っている可能性すらある。更にそのことを考えると、頭が痛い。

復活できない可能性も出てくるんじゃなかろうか?精神体にダメージがあったりしたら魂ごと消滅させられる可能性もある。

こうなるとスキャンが効かないのが何より痛手になる。対策が立てられない。逃げの一手しかないのだが、俺の後ろには意識を失っているであろう

一般作業員や、非戦闘員が大勢いるのだ。これ以上引く事も出来ない。自分の事だけ気にしていれば良いのだろうが、

俺はこの後この船を使うのだ。俺が今背にしている・・・?背にしている!?


 俺はこれ以上下がれないところまで来てしまった、彼女もどんどん近づいてくる。もう二十メートルを切っている。この距離は致死距離だ。

彼女の目には涙が溢れているが、俺も泣きたい。と言うか止まって下さい。お願いします。

俺は返事があると困るので、もう何も言わないままで下がり続けていたが、船の袂までついに来てしまった。先ほど俺に注意を促してくれた

作業員と思われるおっさんの乗っている船だ。かなりの距離があったはずだがもう逃げられない。


・・・!


ーーーーー


ミシオ・アサクラ 27歳 超人亜種 


      状態 怒り(重度)

         悲しみ(重度)

         絶望(重度)

         空腹(重度)

         スキル暴走(重度)

         混乱(軽度)

         憑依(軽度)

         冷え性(中度)

         肩こり(重度)


種族スキル 共感(封印)


個人スキル 超振動臨界絶叫(ウルトラヴァイブレーションクリティカルシャウト)


付与スキル クルファウストの加護

      フルヴォイスブースト

      ジャンキーフィーバー

      増血

      臓器強化

      振動中和


ーーーーー


・・・・・・。


 急に情報が入ってきた。どうやら彼女の攻撃でナノマシンが破壊されることは今のところない様だ、一時的な機能不全に陥っていたようだが

彼女に寄生することは成功していたようだ。


 読み取れることが多すぎるが、早急に対策を立てなければ・・・。


 俺は可能な限り並列思考を使用し、意識を加速させる。


 まずは分からない事の分析だ原因までわかるといいが。


ーーーーー


怒り(重度)


 マスターの心無い一言に寄って怒りを覚えている。クルファウストの加護Lv2によって、自然に収まる事は無い。


悲しみ(重度)


 マスターの心無い一言に寄って傷つき、涙を抑えきれない。クルファウストの加護Lv2によって、自然に収まる事は無い。


絶望(重度)


 マスターの心無い一言に寄って、過去のトラウマを刺激され、全てに絶望した。クルファウストの加護Lv2によって、自然に収まる事は無い。


空腹(重度)


 過度なダイエットにより、前日の昼より食事をとっていない。


スキル暴走


 クルファウストの加護Lv2によって引き起こされた暴走状態。命ある限りスキルが強制的に発動するパッシブ正体に切り替わる。

アクティブスキルが、パッシブスキルに強制変更されることにより、精神力や生命力が常に失われ続ける為、この状態が続くと死に至る。


混乱(軽度)


 自らの意思に反して肉体を操作できない状態。自意識はある。


憑依(軽度)


 本人と異なる魂(精神体)が肉体の中に居る状態

現在オーナ・ニーが憑依中


冷え性(中度)


 末端神経の血流が悪く、手先やつま先が冷える。過度なダイエットによる弊害。


肩こり


 Eカップ場伊達じゃない。


クルファウストの加護Lv2


 魔人クルファウストにより肉体を改造されたものに与えられる加護。

体内に発信機と自爆装置が埋め込まれており、他者の手によって状態異常になると、二度と元に戻らなくなる。

個人スキルを強制的に使用し続けるパッシブ状態に反転させる効果があり、個体の為に調整された加護である為、

個人スキルの威力をブーストするフルブーストのスキルを与え、使用薬物の効果をアップさせるジャンキーフィーバー、

スキルの使用時間を長くする増血、そして彼女の個人スキルの特性を中和し、自爆させないようにする臓器強化、振動中和を与えた。

発信機を通じて魔人クルファウストに加護の与えられた者の見聞きした情報が伝えられる。


超振動臨界絶叫(ウルトラヴァイブレーションクリティカルシャウト)Lv10


 このスキルの所持者は、非常に地声が大きくなり、肉体の許す限り大きな声が出せるようになる。

 アクティブスキルとしての使用時の効果範囲は常人の声の届く範囲の十倍、しかしこの範囲は、声帯付近の筋力量によって左右される。

 自らの声により発生する振動を操作することが可能で、その気になれば後ろを向かずに後ろへ声を届けることが出来るが、声の発生源は変わらない為、

大声を出すと自分の脳が揺れる。

 対象を自ら選ぶことが出来ず、通常の声の届く範囲でしかスキルを使うことが出来ないが、レベルが上がるごとに振動の操作範囲、効果範囲が大幅に上昇する。

 またこのスキルは対象を選ぶことが出来ない弊害として、自らも振動の影響を受ける為、自爆する危険性をはらんでいる。

 身体強化系のスキルや魔法と非常に相性が良く、それらを使用する事に寄って、威力の制限なくスキルを使用することが出来る。

 大気の振動を利用しているわけではないので、宇宙空間でも使用が可能。

 

ーーーーー


 何から突っ込んだらいいのか分からない。ダイエットはほどほどにしておけよ?じゃない。

どうやらきっかけは俺の心無い一言だったらしい。それは良く分かった。すまん・・・。なんかすまんかった。

 

 それにしても、またクルファウストか。彼女も改造されているみたいだが・・・。見た感じ・・・というかナノマシンでスキャンした分には肉体的に異常はない。

状態異常で気になるのはスキル暴走と、触れたくはないが、憑依だろう。


 次元の狭間に消えたトレマンよりも加護のレベルが高い。しかしだ。しかしそんな事がくだらない事のように思える。


 何だこの個人スキルのレベルの高さは・・・!!!

尋常ではない尋常ではないぞ!


 俺の体を貫いたことのある新庄の超電磁キャノンは、目覚めたばかりのスキルの為レベルが1だった。今はもっとレベルが上がっている事だろうが・・・。

そしてデカスのオーバーパワー。あれもレベルが1だ中々使い込んでもレベルが上がらないとシャトルで愚痴っていた。あんな恐ろしいスキルのレベルが早々上がってたまるものか。

そう考えるとこのレベル10の異常さが判る。俺だって強くなっていない訳では無い。

 オーラの使い方も何となく習得したし、ナノマシンの数も圧倒的に増えている。最近は魔法もまな・・・ぼうとしている。

それに、これは後から分かった事だが、どうやら俺は眷属化した者のスキルを使うことが出来るらしい。スキルコピーが出来るようになっている。

いずれはナノマシンを寄生させてスキルを奪い取ったりできるかもしれない。

・・・・。今日ここから生きて帰ることが出来ればだが。

 いかんいかん・・・。何を弱気になっている雨宮銀河。俺はこの世界で最強の生物ハイパーヒューマノイドだ。現にレベル10のスキルの直撃にだって耐えられている。

大分ナノマシンによる治療をしてはいるが、対抗できないほどではない。彼女のスキルが相手ならもしかするとゲイルのスキルで相殺できるかもしれないが、アイツは眷属じゃない。

眷属=嫁みたいな構図が出来上がってしまった今、男を眷属化して誤解されるのは避けたい。・・・ちがう!違う!そんな事を考えている場合ではない!


・・・・・・。もうヤるしかないか・・・?


 いや、ナノマシンを使うにしても何なりとできる筈だ。ナノマシンは万能だ!


 俺は一体どうしたい?

女を殺すのは避けたい。


 俺はこいつをどうしたい?

元の状態に戻してやりたい。


 それは可能か?

分からない。


 (ぎ・・・銀河きゅ~ん・・・。)


 (ロペ!?大丈夫か!)


 (なんとかぁ・・・。ナノマシンでの治療って結構エネルギーを使うんだねぇ・・・?)


 (・・・。この女を制圧して黙らせたい。何か策は無いか?)


 (銀河きゅんは忘れてる。)


 (何をだ?一刻を争うんだ、問答は・・・。)


 (銀河きゅん私の権限をコピーしたでしょ?)


 (そうだな・・。)


 (私の持つ権限は、限定特級創造情報管理操作権限と言って、この世界に関することなら、大概出来るんだよ・・・?

今の私はまだレベルが低くてたいした事は出来ないけど・・・銀河きゅんなら・・・出来ることがあるかも知れない。)


 (・・・くそっ。知識が足りないのがこんなに致命的なんだとは思わなかった。もっと早く確認しておくべきだったな。)


 (銀河きゅ~ん・・・。ナノマシンわけてぇ~・・・修復が追い付かないよぅ・・・・。)

 (直ぐ送る・・・!)


 ぐ・・・。情けない・・・。馬鹿みたいに下がってばかりで何もしていないじゃないか俺は。

出来ることが山ほどあっても何もしていなければそんなことに意味はない。前世と同じだ。



 ・・・・御免被るっ!



 ナノマシン達!あの女に超深度寄生するんだ!!!

完全に魂まで侵食してしまえ!!!やり過ぎ?知った事か!!もう前世の様なくだらない俺に戻るのは嫌なんだよ!!


 「ぎぃっ!!!!げっががががががああ!!!!」


 女の顔面が引きちぎれんばかりに歪む。全身が一度に痙攣し、筋肉が異常に引き絞られていく。20%


 女が白目を剥く。眼球に赤々とした血液が異常なまでに流れ込んでいく。もはや白目ではなく赤目と言ってもいいぐらいに。40%


 異常に力が入っているため女の口からぼろぼろと白い物体が落ちる。ガリッゴリッと不快な音が周囲に響く。60%


 無意識の抵抗か、クルファウストとやらの介入かナノマシンを排除しようとしているのか、ぎこちない動きで頭と両手ががくんがくんと糸人形のように動く。80%


 眼球が零れ落ちそうなほど飛び出し、その形が把握できる。鼻からは鼻血が、耳からも流血し、口からは嘔吐物と共に気味の悪い物体が零れ落ちた。90%


 穴と言う穴から血液と汗が吹き出し、浸食される魂が最後の抵抗を試みる・・・。


ーーーーー


試験用第二広域開拓世界人 超人亜種 個体名称 朝倉美汐の存在情報をプールしました


サーバーに保存します・・・・・完了しました


精神体が汚染されています


精神体をクリーニングします・・・完了しました


汚染体のデータを隔離し保存します・・・完了しました


汚染体の分析を開始します・・・・完了しました


汚染体は魔人クルファウストの細胞を培養したものと判明


外科手術により脳に縫い付けられていましたが切除及び分解しデータをサーバーに保存します・・・・完了しました


朝倉美汐の肉体拘束を解除します・・・


ーーーーー


 「はぁ~~~~。焦ったぁ・・・・。」


 脳に縫い付けられていたってか?そのせいで、異常として認識できなかったのか?

いやしかし、変なものが付いているならそれは異常だろう?何故認識できなかった?

ナノマシンを寄生させて、物理的に調べるまで分からなかった事がひっ掛かる。


 「銀河きゅ~~~ん・・・エネルギーが足りないよぅ~~~。」


 離れた所で倒れていたロペは、意識を取り戻し自己治療をしていたようだが、どうやらエネルギーが足りなかったようだ。

怪我らしい怪我は全て治せたようだったが、そこで力尽きたらしく立ち上がれ無い様だった。ぐで~っと床に体を預けてこちらを見ている。


 「雨宮!!大丈夫か!!」


 大丈夫なんだけどなぁ・・・。一応。


 男衆三人がこちらに向かって走って来る。テツはその肩に気絶したままのジェニを担いでいた。

そしてその後ろからアンジー、ゲールマンと続き、救急隊員と思われる白衣とヘルメットをかぶって、ストレッチャーをガラガラ押した男女が十数名走り込んできた。


 俺は目の前まで迫った・・・、何と言ったか?朝倉美汐を見てギョッとした。


 眼球が血で真っ赤に染まっているのもそうだが、瞳に光が無くなっている。

それに、出るものはすべて出たらしく、彼女の足元はひどい有様だった。

しかしそれを気にする様子もなく、只虚ろに立ち尽くし、意識があるのか定かではないが、フラフラと、今にも倒れそうになっている。


 「おい大丈夫か・・・?」


 「・・・・。」


 そうか、スキャン。


ーーーーー


ーーーーーー 肉体年齢27歳 人型人形 


      状態 抜け殻

         貧血(重度)


種族スキル なし


個人スキル なし


付与スキル 雨宮銀河の傀儡


ーーーーー


!!!!?


 人形・・・・?人間じゃ無くなっている!?

名前の部分が空白になっている。一体どういう事だ・・・?

スキルも全部無い。抜け殻と付与の部分が気になるな。


ーーーーー


抜け殻


 肉体から精神体を取り出した状態。この状態では人は人となり得ず

只の人型をしたたんぱく質の塊。


雨宮銀河の傀儡

 

 雨宮銀河の意識下でコントロール可能な状態、人体の稼働制限を無視してコントロールが可能。


ーーーーー


 あれ・・・?死んだのか・・・?殺しちゃった・・・?

 いや。おかしいな?そんな筈は無い、だが・・・。超深度寄生を指示した結果がこれだ。

魂が無い。そんな事も可能なんだな・・・。やってみないと判らないことも多いな。


 ・・・。サーバーに保存しますって言ってたな?

インストールできるのか?コピーとかも出来そうだな?


ーーーーー


マスターの命令を確認


個体名称 朝倉美汐をサーバー内でコピー・・・完了


精神体個体名称 朝倉美汐を肉体に再インストールします・・・


ーーーーー


 ナノマシンが騒がしい。中々のエネルギーを使っている様だ。しかしこれで元に戻る・・・はず。


 目に見えないナノマシンの動向を見守り、淡く発光する彼女の体を見た。


 ナノマシンで綺麗にしておいてやるか。流石に自我を取り戻した時に汚物まみれだと、又スキルで攻撃されるかもしれないしな。


 徐々に光が収まり、周りには仲間たちが辿り着いていた。


 「銀河きゅん。どうなったの?」

 「まだ詳細は分からない。これから確認するが、それよりも彼女が復活するかどうかを待ってくれ。


 完全に光が収まると、彼女は糸が切れた人形のように床にへたり込んだ。

完全に放心状態のようであり、思考が纏まらないのか、しきりに頭をさすっている。


 そうか。サーバーに記録した時の彼女は、スキル垂れ流し状態だったから、生命エネルギーが足りてないのかもしれない。


 俺は彼女に近づき、ナノマシンでエネルギーを分け与えた。

彼女は眷属化していないが、何とかなるだろう。


 「私は誰私は誰私は誰・・・・。」


 エネルギー不足なのかと思いきや、もしかしたら違うのか?近づいて見て分かったが、彼女は何やらかすかに聞こえる声で、何かを呟いている。


 「貴方は誰貴方は誰貴方は誰・・・・。」


 ・・・。心を壊してしまったのか・・・?

 しかしそれは勘違いだと気づく。


ーーーーー


インストールが完了しました


ーーーーー


 まだ魂のインストールが終わっていなかったのだ。

人形の瞳にわずかに光が戻ったような気がする。という事は人形では無いのか・・・?


ミシオ・アサクラ 27歳 超人亜種 


      状態 放心(軽度)

         混乱(軽度)


種族スキル ーーー(指定されていません▼)


個人スキル 超振動臨界絶叫(ウルトラヴァイブレーションクリティカルシャウト)


付与スキル 雨宮銀河の傀儡

      フルヴォイスブースト

      ジャンキーフィーバー

      増血

      臓器強化

      振動中和


ーーーーー


 良かった・・・。戻った・・・?戻った?戻ってないな!

と言うか元の状態が分からん。ジャンキーフィーバーとか、有ったらあかんのとちゃうか?

元の状態でこのスキルならとんでもない高性能なスキル構成なんだが・・・。


 あと種族スキル指定されていません・・・てどういうことだ?文字通り自分で・・・俺が指定できるのか?


 俺はスキャン情報の▼の部分をポチって見る。


ーーーーー


種族スキル 選択してください

      共感

      念話

      千里眼

      地獄耳

      キャメルクラッチ

      パイルドライバー

      逆水平チョップ

      パワーボム

      ノーザンライトスープレックス

      トペ・コンヒーロ

      ドラゴンスープレックスホールド

       ・

       ・

       ・


ーーーーー


 ・・・・???種族関係なくないか?

しかも何でプロレス技ばっかり・・・?思わずキャメルクラッチを選びそうになってしまった・・・。

一応本人に確認した方がいいか?


 「聞こえるか?意識あるか?喋れるか?」


 少し俯いたままの顔が若干起き上がり、視線がこちらを向く。唇が若干動き出した所で俺は反射的に全力バックステップ!


ドン!!


 ぐぁ・・。ビビってつい反射的に下がってしまった・・・。後ろは戦艦がある為下がれないのに・・・。

 かなり速度で後頭部を強打してしまった。しかし今はどうでもいいがこの船の装甲凄いな、俺のアタック(不可抗力)に凹みもしないとは。


 とことこと、先ほどいた位置まで戻ると、両目一杯に涙を貯めた顔で彼女はプルプルしていた。

思いっきり息を吸い込み、口が開くっ!!


 「うあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!」


 泣いた。全宇宙じゃなく彼女が。俺も泣きたい。


 俺が近づいたせいもあるが、いつの間にか距離が詰められており下がろうにも下がれず、あまりの衝撃に鼓膜が吹き飛び、両目から光が失われた。

鼻血は出ている様だが、臓器は無事のようだせめて耳を塞ぐべきだったが、あまりに突然過ぎてガードできなかった。

寧ろ、俺も日々強くなっている。ナノマシンのアップデート速度は素晴らしいの一言で・・・じゃない。


 痛みすら感じない奇跡の砲撃。


 完全に油断していました。


 俺はしこたま背にあった戦艦の装甲に叩きつけられ、一瞬小学生のころに死に別れたじいちゃんに出会った気がした。


 急速にナノマシンが肉体を再生し、足りない部分を再構成する。

傍から見ているとさぞや気持ち悪い絵になっているだろう。今俺はコンクリートの壁に書きなぐられたアートもどきの落書きの様に、酷い有様だ。


 もとはと言えば俺が余計な事を言ったことが引き金になった訳だし、ここは甘んじて受けよう。


 などと現実逃避をしている間に人の気配が近づいてくる。これはさっきの女だな・・・。


 死体蹴りダメ絶対!!


 とか言ってみる。俺は率先してやる方だが・・・。


 「あ・・あの・・・・?ぅえっ・・・私殺人を・・・・ふぇ・・・。」


 「よいしょっと・・・。」


 べりっという生理的に嫌悪するような音が、背中から聞こえるがあえて我慢する。

肉が装甲に張り付いているまま再生してしまったようだ。激しく痛いがにこやかに笑顔でも作ってみる。


 「や・・・やぁ・・・。」


 やあってなんだよ俺!!コミュ障か!!


 「は・はぁ~い?」


 ノってきた・・・。何やってんだこのやり取り・・・・・。

気まずい、非常に気まずい・・・。


 「「あの?」」


 ハモった。何でここで引くかな俺!童貞か!


 「はぁ。体は何ともない様だな。これだけ殺しに来るぐらいだし。随分とそう・・・余裕があるね?」


 なんか脅迫じみた言い方になってしまった。しかもなるねってなんだよ。


 「はぁ・・・ん・・・ご・・・ごめんなさいぃぃ・・・。」


 「分かったから・・・もうわかったから・・・。もうデカい声を出さないでくれ。頼むから。皆の為に。な?いい子だからもう勘弁してくれよ。

あめちゃんいるか?」


 俺もしかして混乱してる?


 「え?あめちゃんですか?」


 そっちかいっ。


 「ぎ・・・きんが・・・きゅ~~ん・・・。」


 「かはっ!うがおぉぉぉ・・・」


 「・・・・・(悶絶)」


 また後ろが・・・彼女の後ろも酷い事になっている。

この歩く災害め!レベル10恐ろしすぎるだろ!

まぁ・・・コロニーが壊れたりしなかったからよしとしようか・・・。


 俺は再び死屍累々となったこの場に居合わせた身内だけにナノマシンで治療を施した

放っておくのも後味が悪いので、他の人たちは脳震盪で倒れた位の感じで、そのまま眠ってもらった。

何だかんだで他の人が起きていると又問題がありそうだしな。

救急隊員たちもまさか、ミイラ捕りがミイラになるとは思わなかっただろう。ヘルメットにヒビが入っているような気がするが

気のせい。気のせいだ。


 「大丈夫か皆?」


 「「「「「生きてる~。」」」」ますわぁ。」


。若干一名返事が無いが・・・因みにジェニはテツが担いだままだった為、痛みは感じていなかったのだろうが、

気絶したままさらなる追い打ちを受けた為、何気に永遠の眠りにつく寸前だった。


 「で?も・・・お前は一体何なんだ?おれにこれほどのきょ・・・攻撃をしたのはあんたが初めてだぜ・・・。」


 イカンイカン、モブ娘って言いそうになった。思い出すとあれがきっかけだった気がする。

俺は反省してちゃんと出来る子。


 「あの・・・なんとお詫びしていいか・・・。」


 「俺は良いんだよ。自業自得だし、強い子だから。でもな・・・?」


 俺が後ろを振り向くと、怨嗟の声すらなく倒れた百人強の人達が運ばれていた。

別の入口からは救急車が大挙して押し寄せ、辺り一面野戦病院の様になっていた。


 「これを私が・・・?」


 「分かっていたんだろ?自分でやったことは。・・・自分で動けたかどうかはさておき。」


 自意識があったのはスキャンした時からわかっていたことだ、


 「あの時・・・いや、以前に何かおかしなことは無かったか?」


 俺は体の不調が無いか確認しつつ、彼女の脇を通り抜け、彼女が吐き出した謎の物体を拾った。

ぶよぶよと弾力がある物体の中に、何かの鼓動を感じる。生きているのだろうか?

恐らくこれが発信機・・・か自爆装置のどちらかだろう。

スキャンの結果は思った通り・・・よりもっと酷かった。


ーーーーー


生体縮退爆弾


 強力な暗黒魔法によってブラックホールが閉じ込められた爆弾。

爆弾を包み込む生体部品は人間の肉体を暗黒魔法によって強制的に加工したもの。

肉体の保持者の魂は暗黒魔法によって強制的に爆弾の保有者に取り込まれる。


ーーーーー


 分かったような分からんような・・・。

危険なものだって言うのはなんとなくわかった。それよりも暗黒魔法って言う単語にときめいている俺がいる。

どうしようもないなっ!


 「・・・なにか?」


 俺は慌てて拾ったグロキモ爆弾を分解し、分析に掛ける。


 「きえた・・・。」

 「気にすんな。それより体に異常は無いか?どこかおかしな所が有ったら今言ってくれ。

この先会う機会があるか分からんからな。」


 流石にこんな大事件を起こしたら、監獄に・・・ってもうないじゃん。自分で爆破したじゃん俺。

まぁ、事件だが・・・どうなる?どうする・・・か?何もなかったことに出来なくはないが、もう既に搬送されている人が沢山いるので、

手遅れか。


 「あの・・・。私はっ「銀河きゅ~ん・・・へ~るぷみぃ~。」


 はいはい・・・。俺はのそのそと這いずるロペをおんぶし、ゲールマンの案内で応接室に戻ることにした。


 「申し訳ないですが神様。わしは警察に事情説明を求められているので一度出てきます。後の事はアンジーに任せますのでゆっくりしていってください。」


 そう言ってゲールマンは出ていった。


 テツはジェニをソファーに寝かせ、俺も疲れが出てきたのでロペを横に座らせてソファーに腰かけた。

男三人は部屋の隅に座り込み、アンジーもデスクに合わせたリクライニングタイプの椅子に座った。


 「で?何か言いたいことがあるのか?」


 「当たり前です!言いたい事はいっぱいあります!・・・でももういいです・・・。

私あんな事をしでかしてしまって、もう一般人としては生きていけません・・・。」


 俯き涙を流すながら嗚咽を漏らす。

今聞くのはどうかとも思ったが、ここに警察が来る可能性もあるから、いろいろ聞いておこうか。


 「アンタ、魔人クルファウストって知ってるか?」


 「っ・・・!知ってます。何度も夢に出てきました。」


 涙を袖で拭って俺の方を向くと、鼻水が垂れる。・・・締まらない。


 「ぉいぉい・・・ほら、はい、ちーん。」


ずびぃーー


 「おせわをかけします・・・。私は夢の中で何度も手術台の様な所に縛り付けられ、メスを入れられました。でも夢だから痛くもなんにも無いんです。

でも、変なものを体に入れられたり、臓器を取り出されたり、いろいろな夢を見ました。」


 それホントに夢か?スキャンと言うか、ナノマシンを寄生させたときに手に入れた情報には、実際に手術された後もあったし、埋め込まれた爆弾も出てきた。

夢だと思い込まされているのかもしれない。調べてみたいところではあるが、流石に無関係な奴を眷属にするつもりもないし、分解して解析迄する気もない。


 「まぁ・・・仮にそれが夢だったとして、他にその周りに何があったか覚えているか?」


 涙は引いて落ち着きを取り戻したようだ。顎と肘に手を当ててう~んと考え込む。


 「他にも何人か、同じように手術台みたいなものに括りつけられている人が居たと思います。あと・・・。」


 見間違いかも知れませんがと前置きをしてから彼女は俺たちにとって衝撃的な事を言った。


 「巨大な目玉とか、巨大な口とか、そんな化け物が一杯いる様子が、窓から見えました。」


 ・・・・。そこはまさか・・・。


 「海王星最終防衛ライン・・・?」


 ロペはまだ体力が戻らないのかソファーに完全にもたれ掛かり、頭を背もたれに乗せたままで彼女に確認した。


 「場所の名前は分かりませんが・・・。あちこちボロボロで、基地みたいなところでした。」


 間違いなさそうだなぁ。やっぱり夢じゃないんじゃないか?

でもだとしたら一体どうやってそこまで行って帰ってくる?それこそワープでも出来ないと無理だろう?

一番近いとはいえ、冥王星圏から海王星圏迄ワープなしでは行き来出来まいよ。


 「目が覚めたら・・・と言うか気が付いたら家のベッドで普通に寝ているだけでしたから。

何も無いと思っていたのですが・・・?」


 「あそこはダンジョンの最深部だよ?魔法では行き来出来ないょ。だとすれば、何らかの技術・・・科学技術で行き来していたんだろうねぇ?」


 「三人とも何か心当たりはあるか?」


 俺は男衆に尋ねてみる。


 「俺はある。と言うか、俺の知っているモノを使えば、そういう事も不可能じゃないな。だが現実的じゃない。」


 「どういう事だ?」


 「三つほど不可能な点がある。まずはそれ自体が水星ダンジョンの最深部、アースガルド宮殿の宝物庫にあるからだ。

二つはそこにあるモノは、使用可能なものが限られている。そして三つめは・・・。そこも・・・アースガルド宮殿も、この世界ではない。世界をまたぐ技術はここいらの世界にはない。

つまりアースガルド宮殿のモノを使っての今回の騒動は起こせない。それ以前に、そんな事をしようとすれば、天使どもや巨人の軍隊を相手にしなければならないからな。」


 テツは一体何を・・・・?だが、話を遮る気は俺にはない。何かとても大事な話な気がするのだ。


 「そんでまぁそんな事で、俺の知っている可能な所からは出来ないという事が分かるわけだ。」


 「しかし、それらと同じか、それに類推する技術がある可能性があるという事だな。しかもその技術は非常に高度だ。誰にも気づかれる事無く、

しかも、痕跡すら残さない。科学技術があるという事だ。魔法や魔術呪いに類することなら、だれかしらに感知できてもおかしくないからな。」


 とんでもない技術だな・・・。気が付いたら改造されていたとか、ライダーもびっくりだわ。


 「その話が事実なら、もう枕を高くして寝られないなぁ。何時でも何処でも攫われるって事だからなぁ・・・。」


 避ける方法が無い。俺以外は。だがそうなると判っていれば、俺はある程度対策を練る事も出来る。それが救いだろうか?


 「科学技術だと言うなら、斗捌に調べさせたらどうだ?あいつなら何とかなる話じゃないか?」


 新庄ソレダ!


 「それな!だがあいつはキャッシュマン邸に残ってレポートを完成させると言ったっきり、出てこないぞ?」


 そうなのだ。監獄で考察した事や、実験した事をレポートに纏めているようなのだが、食事もとらずずっと部屋にこもって出てこないのだ。


 「だがまぁ、新しい研究対象がいるとなれば話は別だろう。とるモノもとらずに出てくるぞ。」


 そんな話をしている間に、自ら修理した端末を使って何かをしていたアンジーから嬉しい報告が入る。


 「雨宮様。マギアラビスを筆頭に他九隻の艦艇の所有者を雨宮様にっ設定いたしましたわ。

神の艦体にふさわしい壮観な景色が目に浮かぶようですわっ!」


 めっちゃ興奮しているが俺は神じゃない。


 「かっ神様ですかぁ!?」


 朝倉がのっかってきた。

ヤメロ―めんどくさいぞー。


 「違う。まぁ・・・現状できることと言えば、罠を仕掛けるぐらいしかないから、当初の目的を達成するために・・・。」


 俺はふんす!と意気込みを新たにする。


 「遊ぶか!!」


 全員ずっこけた。・・・・え?なんで?


 「雨宮!今までの話の流れでなぜそうなる!!」

 「いやだって出来る事無いじゃん?俺はともかく、みんな何が出来る?」

 「「「「「・・・・・・。」」」」」」


 それぞれ考え込んではいるが結局何も案は出なかった。


 「な?だったら俺はレベリングでもしたいところだよ。それに、冒険したいし。」


 クルファウストとやらは精力的に動いているらしいが、俺には手が出せない可能性もある。

・・・お。そうだ。ロペは知っているような口ぶりだったな?


 「ロペ?」


 「すー・・・すー・・・。」


 寝てるし・・・。まぁ、ロペはほとんど普通の人間と変わらないからなぁ。


 「アンジー。船ってすぐに動かせるのか?」


 アンジーは苦笑いをしながら答える。


 「雨宮様。それは流石に無理ですわ・・・。今回の件で、オーバーホールとまではいかないものの、全艦総点検をしなければいけません、何処にどれだけのダメージがあるか分かりませんもの。

まさかの戦略級兵器でしたもの。破壊されていないのが奇跡ですわ。」


 あぁ・・・やっぱり・・・。俺のマギアラビス・・・。


 「・・・・戦略級兵器・・・・。ぐすっ・・・。」


 あー・・・・。こいつの処遇もどうしたものか。名前からしてどう考えても転移者か転生者だものな。


 「雨宮様。お爺様から連絡がありました。」


 おぅ?


 「彼女・・・朝倉美汐の処遇は雨宮様にお任せしますとの事でした。あと、マギア級については急ピッチで修理・検査をさせておりますので明日にはお渡しできるとのことです。」


 明日!?あれだけの被害が出てもそんなものなのか・・・。凄いな大企業。


 「じゃぁ・・・今日は休むかぁ・・・めっちゃ疲れたわ。」


 「そうですわね・・・今からですと定期便も間に合いませんし、ホテルを取りますね。」


 おっ。贅沢ぅ。まぁ。俺も金はあるし!金はあるし!


 「折角だからいいホテルにしようぜ!」

 「切嗣お前自腹な。」

 「ひでぇ!!」

 「結局お前何もしてないだろうが!!スキル使えよ!」


 だってよ・・・。とか言いながら部屋の隅で三角ずわりでめそめそしだした。めんどくさい奴だなぁ。


 「雨宮様。では参りましょうか。」


 シートから立ち上がったアンジーが眠ったロペを背負い、ジェニはまたテツに米俵の様に担がれて、運搬される。

ティタノマキアの表玄関は警察や報道陣に囲まれているようなので、地下に向かうとのことだが・・・。


 「アンジー重くないか?変わるぞ?」

 「全然大丈夫ですわ。このくらいの荷物平気です。」


 荷物て、急にディスってくるぅ。


 「地下には何があるんだ?」

 「はい。裏と表に通じる地下駐車場がありますの。まぁ、どちらも今頃はマスコミが張っている事でしょうから、取り敢えず裏から出ますね?」

 「任せる。」


 地下1Fについた俺たちは、ワンボックスタイプの車・・・。フローターと言うらしいが、それに乗り込んで裏口から出る。

らせん状の出入り口への導線を通り、星の光が見えた。街のネオンが映えるがかなりの距離があるようで、外に出てすぐ、マスコミの物と思われる中継車の様なものとすれ違った。

一瞬レポーターらしき女と目が合ってしまったが、車は止まらないので気にしないことにした。

因みに運転手は朝倉美汐。彼女は一応支店長の運転手も兼務していたとの事なので、ここのコロニーの地理に誰も詳しくは無いから、必然的にやらせることになった。


 「あの・・・私は許されたのでしょうか・・・?」


 いきなり何を言い出すのか・・・。


 「さぁな。それより前を向け。マニュアルの車なんだろ?事故るなよ?」

 「大丈夫です。イザとなれば自動に切り替えが出来る車ですので。」


 便利なものだ。しかし・・・助手席に座るアンジーの顔が徐々に引きつっていく。

後ろに座った男衆も何故か両サイドの手すりにしっかりと手で掴んでいる。

俺はと言うとジェニとロペが寝ているので、二人に無理やりシートベルトを着け、俺もシートベルトをしてはいるが・・・。

早くない?この車速くないか!?


 見える景色がグングンとものすごいスピードで迫って来る。目算でに三十分は掛かると思っていたのだが、もうすぐ都市内に突入するぞ・・・?


 「おい。朝倉美汐ちゃんよ?ちょっとスピード出し過ぎじゃねーか?」


 切嗣が言うのもわかる。と言うか・・・。


 「おい朝倉の!!このまま市街地に入ったら事故るぞ!!」

 「止まらないんです・・・。」


 ・・・・えっ?


 「何?ごめん。もっかい言って?」

 「ブレーキが効かないんです!!スピードもまだ上がっています!!もう自動運転に切り替えた後ですけど!!手動に戻らないんです!!!」


 なぁんてこったぁ!!!


 「おい!新庄!ハッキング出来るか?」

 「任せろ。」


 新庄はグイグイカーブを曲がる車の中で器用に一番前までたどり着き、強制通信のスキルを使った。


 「・・・・!雨宮。この車は外部から攻撃を受けているぞ!車の内部ネットワーク内に誰かがいる!!」


 え!?誰かって・・・。こびとさん?じゃないか。


 「ネットワークの中って・・・。どうやって入るんだ?」

 「首から上が生体機械の機人種なら、可能だと聞いたことがある。電子世界にフルダイブできる能力があるらしい。」


 えっ。それ羨ましい。俺も欲し・・・って。


 「俺もそれ出きるやん。」


 「「「「「えええっ!!!??」」」」」


 ナノマシン化してしまえば出来るもんね!!


 「よーしじゃぁおぢさん行っちゃうぞー?」


 「ま・・待て!!お前が行ったらこっちはどうする!?」


 「いざとなったら切嗣か、アンジーのスキルで脱出したらよいさ。」


 二人を指名してはみたものの、二人とも青ざめた顔をしているな?


 「私そこまで精密にスキルをコントロールできませんの・・・。下手をするとコロニーの外にまで出てしまうかもしれません。」

 「俺も見たことのない所には行けないぞ!?この速さじゃ外の状況なんか確認できねぇ!」


 アンジーはともかく切嗣使えない。


 「さっと終わらせてくるから。後よろしく。」


 俺は一瞬でナノマシン化すると、車のコンソールの中に突入した。


ーーーーーーーーーー


車内コンピューター内部


 ・・・・・へぇ~~~。何もない。

ってまぁそんなもんか。元々景色なんかいらないしな。

そしてずっと気になっていることがある。ここに入ってから視界にちらちら移る謎の飛行物体が。


 何だあれ?一昔前のポリゴンでできた、ナマエヲオシエテクダサイとか言ってくる奴によく似ている。デジタルデビル何とかみたいな。

しかもずっとこっちを見ている。ヤダ・・・アタイ視姦されて・・・る?


 「貴様いったい何者だ!!」


 「お前の方が何者だよ!!!この生首がっ!!!」


 急におまだれして来たので、つい言い返してしまったが、話しなきゃいかんのか?失礼なのは分かっているんだが。


 「お前ちょっと絵的に気持ち悪い。」


 「酷い!!俺だって好きでこんな姿をしているわけじゃないんだぞ!?」


 くそ・・・3D対戦格闘ゲームの主人公みたいな顔して・・・。

笑いをこらえるのが大変じゃないか!!


 「まぁなんだ・・・。お前が生首なのはまぁ百万歩譲っていいとして、車に攻撃すんな。殺すぞ。」


 「うぐっ・・・。俺だって好きでやってるんじゃないって言ってるだろ!!体が人質になっているんだよ!!」


 なに・・・?急になんかファンタジー要素入って来た?


 「デュラハンとかなの?あんた。」

 「モンスターじゃねぇ!!!俺はれっきとした機人種だ!!失礼な事言うなよ!!!」


 おっと失礼失礼・・・。


 「じゃぁ何か?お前一人の為に俺等に危害を加えたの?馬鹿なの?死ぬの?」


 「お前らがここに来なければ俺はこんなことせずに済んだんだよ!!大人しく監獄に入っていればよかったものを!!」


 何だ?こいつ俺が監獄に入っていたことをなぜ知っている・・・?


 あぁ・・そうか。


 「お前F28に居ただろう。」


 「なにっ!何故そう思う・・・。」


 「俺の情報なんか、あの場に居たやつ意外に知っている奴は限られている。数を数えられるぐらいなものだろう。」

 「そんな訳あるか!!!お前を拾った軍の戦艦の乗員は全員知っているわ!!警察だってしってるだろうが!!」


 こいつ何でこんなに詳しいの?俺がこの世界にきて直ぐの事から知ってるとか・・・。


 「ガチストーカーとかキモいんだが。」


 「やりたくてやってんじゃねぇんだって言ってるだろ!!!???」


 なんか事情があるらしいけど・・・。知った事かよ。

俺は生首に向かって靄の触手を伸ばし、ふわふわ浮いていて、目障りなので叩き落とした。


スパ―――ン


 「へぶっ!!!」


 叩き落とした勢いのまま転がっていく生首を捕まえ、触手を大きく振りかぶる。

そしてグルングルンと、大きく振り回し・・・・。


 「ま・・・まて!!!待ってくれボス!!!」


 む・・・。


 俺はなんとなく叩きつけるのをやめ、目の前に転がして触手でコロコロしてみた。


 「ああぁあぁああぁああぁ!!!まってくれぇ!!!めがまわるぅううう!!」


 「何か最後に言いたいことがあるなら聞くが。」


 「た・・・助けてくれよ!!!俺だって一応仲間だっただろ!?勝手に逃げて悪かったよ!!仕事なんだ!!仕方ないだろ!!?」


 別に気にもしてないんだが・・・。助けを求められてほおっておくほど薄情なつもりも無いしな。

それに、演技だったかもしれないが、監獄は割と楽しかったしな。それに一役買ってくれていたかと思うと、何とかしてやりたいとは思うが・・・。


 「その生首状態何とかならんのか?妖怪ちょんちょんを思い出すんだが。」

 「何それ!?妖怪ってなんだ!?」


 何だ妖怪知らんのか・・・。まぁそれは良いとして。


 「しゃーないなぁ。何してほしいんだ?俺は高いぞ?」


 俺は生首を踏みつけながらリフティングでもして見ようかと思ったが思いとどまる。鼻水とかついたら嫌だし。


 「俺は今自分の家に居るんだが・・・。イントネスとかいう奴に体を抑えられてるんだ。そいつを何とかしてくれればすぐにでも車を止める!」


 イントネスねぇ?聞き覚えは無いなぁ。フィットネスなら何となくわかるが。


 「その家はどこだ?」

 

 「このコロニーの外れに住宅街があるんだ。俺はそこの一軒家に住んでる。妻も子供もいるんだ!!助けてくれぇ!!」


 ぐぅ・・・一気に情に訴えてきたか。


 「ふぅ・・・。因みに嘘だったら、完全に分解して養分にするからな。どこにも逃げられないと知れよ。」


 俺はそう言うと生首に手をかざし、侵入ルートを逆トレースし、生首の侵入ポイントへ出た。


ーーーーーーーーーー


一軒家


 「な・・・なんだっ!!」


 俺の目の前に、簀巻きにされた子供と、全裸でベッドに縛り付けられている女がいた。

そして個人用端末に頭から突っ込んだような感じになっている、あの生首の体と、その体に銃口を突き付けている奴がいた。


 こいつがイントネスか?


 「おいイントネス。ちょっと動くなよ。」


 スキャーーーーーン!!


ーーーーー



イントネス・ハ 男 人工人類β種


   状態 動悸(軽度)

      こむら返り(軽度)

      さかむけ(重度)

      出血(軽度)


種族スキル 同種作成


個人スキル 恐喝


付与スキル 地球人の誇り

      変身

      敏感肌


ーーーーー


 肌弱いのか・・・?足つってるし。


 それに、地球人だと・・・?地球は既に滅んでいるはずじゃなかったっけ?

変身も気にはなるが、後だな。


 俺は見えない触手でイントネスを亀甲縛りにし、逆さに吊るした。


 「さて・・・お仕置きの時間です。何か質問のある方。」


 俺はぐるりと部屋の中を見回す。う~ん生首の嫁さんが実に扇情的だ。子供はもう暴れるのを諦めたのか、簀巻きのまま寝ている。

肝の座った子供だな・・・。


 「よっと・・・先にほどいてやるよ。服着てきなよ。あ・警察は簡便な?後で事情は説明させるから。」


 俺は寝室と思われる部屋のベッドを部屋の端へ押しやり、少し広めの空間を作った。

そして床にナノマシンで作ったビニールシートを敷き、そのシートの丁度中央になる部分にイントネスを吊るした。


 「何をするつもりだ!!」


 俺は無視をし、どういう趣向で行こうかと考える。こいつが女だったらよかったのに・・・。


 ん。閃いた。


 そしてまず、子供を簀巻きのまま一回のリビングに転がしに行き、キッチンにあった揚げ物用の鍋に火をつける。

 揚げ物用の油がなみなみと入った鍋はそこそこの重さを感じるが、俺にはどうってことない。

そして暫く待ち、温度計が200度を指したころに火を止め、二階の寝室にお玉と一緒にもっていく。

・・・。おっ?あれはコンセントで使う電磁調理器じゃないか。この世界にもあったんだな。


 「お待たせ。コンセントをつないで・・・スイッチオン。」


 イントネスはなみなみと油の入った鍋を見て、これから何をするのか考えている様だが、思いつかないらしい。


 「とりあえず俺はこのお玉を油で熱するぜ。」


 暫く油にどっぷり漬けたお玉は直ぐに冷めるだろうが、かなりの熱を持つようだ。

そして俺は油から引き上げると同時に無造作に剥き出しの頬に押し付ける。


ジュ―――


 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 うるさい奴だなぁ。


 「な・・・な・・・な!!!」


 もうショックで口がきけないか?まだ始まったばかりだぞ?


 「さて。お前には二つの選択肢がある。このまま何も答えずに俺の遊びに付き合うか、俺の質問にちゃんと答えて遊びに付き合うか。

さぁどっちがいい?」


 「おっ・・おま・・・・ちょ。」


 俺はもう一度お玉を油に浸す。そして暫く待つ。


ジュッ


 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 大げさな奴だな。

お玉型に両方の頬が赤くなり、少し肌がただれたかな?と言う所で、生首の嫁さんと思われる女が寝室に戻ってきた。


 「凄い声が・・・・って何をなさっているんですか!?」


 「お・し・お・き!」


 俺はそっとイントネスに囁き、奴の服を脱がせ、ズボンを下ろした。


 生首の嫁さんは「キャッ」と可愛らしい声を上げ両手で目を塞いだ。


 「嫁さんや。ちょっと悪いんだけどさ、下のキッチンからトウガラシ持ってきてくれね?」

 「え・・・?と・トウガラシですか?」

 「そ。あぁ、有るならハバネロでもいいよ。」


 すると彼女は直ぐにキッチンへ行き、両手に七味唐辛子と、ハバネロソースを持って戻ってきた。


 わかってますなぁ。


 「さぁて・・・。前座も終わったし、観客も来た訳だ。あんたの知っていることをぜ~んぶ。教えてくれないかなぁ?」


 俺は再びお玉を油に浸し、暫く待つ。


 「あの・・・これはどうしましょうか・・・?」


 しゃがみ込みお玉を付ける俺に合わせて俺の顔を覗き込むように尋ねる嫁さんの目は、闇色に輝く炎が宿っていた。


 「慌てなさんな。」


 「ほら。イントネス。なんかいう事があるだろう。」


 俺は立ち上がり熱されたお玉を胸に押し付ける・・・・寸前で止める。

お玉の熱が空気越しに肌に伝わっているのだろう。顔面から大汗をかき始めた。


 「い・・・一体何を話せって言うんだ!!!」


ジュッ


 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 お胸のぽっちは敏感肌にはきつかったかね?でもまだ前座の続きに他ならんよ?


 「ほら。反抗的な態度をとっていたら、アッツいラブがアタックするぞ?」


 そして俺はまた後ろを向き、お玉を油に沈める。


 「誰に頼まれたのかな?」


 「そんな事言うと思っているのか!!!」

 「じゃあ仕方ないね。」


 そう言い、俺はお玉で油をすくって振り返る。

おっとっと・・・こぼれるこぼれる・・・。


 これにはさすがに肝を冷やしたのか、顔面から血の気が引き、目じりに涙がたまってきた。


 「ま・・・まった・・・まて・・・!」


たぱっ


 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 鎖骨からドロッと滴り落ちる200度の油は、既に揚げ物を上げるのに使った後で、少しとろみが増している。

油の伝った後にはただれた皮膚がじゅわじゅわ泡立っている。


 「じゃぁ・・・奥さん、とんがらしを。」

 「はい・・・・!」


 生首嫁は、一切ためらうことなく練トウガラシのふたを開け、スプーンで油の通った跡に塗り付けた。


 「ぎいぃいいいいっ!!!!ふぐぅうぅぅぅうううう!!!」


 こいつのこの敏感肌のスキルには大きな弱点がある。全身の神経がスキルを持たないものより敏感で、色々なものを感知しやすい代わりに、

味覚や痛覚など、内部に響く神経も敏感になるのだ。恐らくこいつは痛みに激しく弱い。脳から伝達される刺激に常人をはるかに超えて耐性が無い事を意味している。


 「ようしゃねぇな奥さん。」


 生首嫁は明らかに不審者である俺の事などもう友達として認識しているのかの如く、手を握ってきた。


 「私・・・こんなに興奮したの初めてなんです・・・。楽しいっ!!!」


 キテるね!!


 「さぁ・・・。お話・・・する?もうチョットしなくてもいいかな~って俺は思うんだけど・・・どう思う?」


 「はいっ!ちゃんと話したくなるまでじっくり待ちましょう!!」


 冷静に遊ぶ俺とは少し違い、半ば狂気に足を突っ込んだような官能的な笑顔で答える生首嫁。

後の生活大丈夫かね・・・?


 そして俺はまた油を一すくいし、今度はイントネスの目の前にお玉を差し出した。


 「今は話したくないよね?わかる。その気持ちわかるわぁ。」


 「はな・・・まって!!!!」


 俺は自分の身長を生かし、頭の上にお玉を動かした。


たぱっ


 「んんんんんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”あ”ぁ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!」


ボタボタボタッ


 敷いててよかったブルーシート。


 「まぁきたない・・・。」


 頭頂部から流れ落ちる油と共に少量の毛髪と頭皮が流れ落ちていく。

そして余りの痛みに意識を手放したイントネスは失禁した。


 えーっと・・・・。そうだな。ナノマシン。起こせ。


 ビクン!と体内に入り込んだナノマシンから、覚醒するに足る電気ショックが発せられ、強制的に目を覚ました。


 「は・・・?え・・・?」


 目を覚ました所に畳みかけるように・・・ソース。


 「奥さん。ソース。」

 「はいっ!!!」


 そのソースは捻って開けるやつじゃなかったかな?今、出る量を調整する中蓋ごと取れたぞ?


どぽどぽどぽ


 「ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんんっ!!!!------んんっ!!!かはっ!!!」


 剥き出しの肉に直に劇物がかけられ、敏感な彼は意識を失う→刺激で起きる→意識を失う→刺激で起きるを繰り返していた。


 「ヒュー――――・・・ヒュー――――・・・・」


 過呼吸になってんなこれ。

 口から泡を吹きながらも、きちんと呼吸が出来ないらしく、みるみる顔から血の気が引きどす黒くなっていくが、その状態異常はナノマシンでカットする。


 「ハッ!ハッ!・・・ハッ!」


 不規則な呼吸が彼の思考能力を奪っていく。もうショック状態でまともに呼吸も出来ないのだろう。


 「あ・・・全部使ってしまいました・・・・。」

 「良いって良いって。楽しめたろ?」

 

 そう言うと生首嫁はもじもじしながら、「はい・・・!」と元気よく答えた。

頬は赤みが差し、瞳は潤み、今にも感極まり泣き出しそうなぐらいこちらを見る目がアツい。


 しかしこれ以上やると脳が死ぬかもしれないな。


 「もう話したくなった?」


 そう訊ねると、真っ青な顔で首を縦に振り、許しを乞うてきた。


 「な・・んで・・・も・・・(ヒュー)・は・・・なし・・・ます・・・。

だから・・・っゆ・・・・ゆるして・・・。」


 息も絶え絶えとはこういう事かな・・・。やっと話が聞けそうだな。


 俺はナノマシンで体を治してやった。と同時に、鍋を生首嫁に持たせ椅子の上に乗せた。

生首嫁の位置からなら、油は全身にたぱぁする事だろう。


 「・・・・ぇ・・・ぁ・・・・。あの・・・。」


 「ほら。話せよ早く。あんまり時間かけると、彼女重くて鍋落すぞ?」


 俺は普通にあしらうように促した。すると喋るわ喋るわ・・・。どうでもいい事も、今までの人生で一番俺が怖いとか

本当にどうでもいい事がほどんどだったが、ホンのわずかだけ、有益な情報があった。


 「俺は、共和国のデージンって言う奴から依頼を受けてあんた達と、この諜報員を消しに来たんだ。

まぁ・・・トラウマをもらっただけだったけどな・・・・。」


 共和国のデージン。それしか情報は無かった。多分こいつは使い捨てなんだろう。

まぁ、俺を狙っている奴が居るってことが分かっただけでも良しとするか。


 「あ・・・あの・・・・も・・もう・・・・おもくて・・・ぁぁ・・・。」


 あ。落した。


たぱぁ・・・ゴン


 俺はとっさに飛び退き、酷い有様を見た。


 普通の話をしている俺とイントネスの空気に、徐々に生首嫁も正気を取り戻したのか、話の途中からもう内股になって、小鹿のようにプルプル震えだしたが、話が終わるまではと、

水も差さず一生懸命耐えていた。


 そのぷるぷる萌え・・・とか思っていたがほんとに限界だったのね。それはもっと早く言おうぜ・・・・?


 「!!------!!!!!--------!!!!!」


 声にならない声を上げ200度の油の滝行を行ったイントネスを、再びナノマシンで治し、

俺は彼をメッセンジャーとして使うことにした。


 あ。部屋片づけにゃ。


 「やぁやぁお世話になりました。」

 「い・・・いいえぇ・・・そのっ・・・とっても楽しかったです・・・・。」


 また一人・・・・目覚めさせてしまったか・・・・。


 部屋も片づけたし、そろそろ帰るか。

てかあいつ何で戻ってこないんだ?もう銃は突き付けられてないのに。


 「じゃあ戻るわ。また機会が有ったら・・・・一緒に拷問しようぜっ!」


 「はいっ!!!お元気でっ!」


 俺は生首の突っ込んでいる端末を経由してあの車のコンピュータへと戻った。


ーーーーーーーーーー


 「よっ。」


 「ぅわっ!!びっくりした!!!急に目の前に現れるなよ!!」


 「お前寝てただろ。」


 「そんな事は・・・。」


 この野郎・・・。人がって言うか、自分とこの嫁が全裸で縛られているってのに・・・。


 「戻って生身に針でも指してやろうか・・・。」


 「まてぇ!!・・・って戻ってきたってことはもう・・・?」

 「そうだ。もうアイツは依頼主の所に戻った。お前もさっさと車止めろ。」


 ここからじゃ何がどうなったか全くわからないな。


 「もう大丈夫。路肩に停めておいた。」

 「そか。じゃあ俺は戻る。もう余計なことすんなよ。」

 「正直アンタには関わりたくない・・・・。」


 俺はそういうと、車の中に戻ろうとしたが・・・。


 「アンタの嫁さん・・・・素質あるぜっ!!」


 いい笑顔でグッドサインを送っておいた。


ーーーーーーーーーー


 戻った。車内に誰も居ない。


 「あ?銀河きゅんもどってきたぁ。」


 車の外からロペがカギを外し、扉を開けてくれた。


 「解決したのぉ?」


 「まぁな。中々楽しませてもらったぜ。今度ロペも一緒にダイブするか?

いい経験になると思うぞ?特にロペは。」


 なんせハッカーだしな。


 「皆は?」


 「もうチェックインをしに行ってるよぉ?」


 「そか。ロペは?体調は良いのか?」


 ふと気が付くとロペは片手に端末、もう片手にソフトクリームを持ってぺろぺろ舐めていた。


 その視線に気が付いたのか、ロペは俺に向かってソフトクリームを差し出した。


 「はいっ。あーん。」


 いいね、ソフトクリーム。

俺はかぷっとかぶりつき、心地よい甘未にしばし浸る。

すると、ロペの顔が急に迫ってくる。


 ちょ・・?


ペロっ


 「うはは!銀河きゅんほっぺにまで付いてる~。」

 

 「ははは。急になめんなよ、ビックリしたじゃないか。」


 「別のとこもぺろぺろする?」


 「しよか。」


 「おろ?」


 俺は車から出てホテルに向かう。ロペを小脇に抱えて。

ロペはドアマンに車のキーを預けると、一気にソフトクリームを平らげた。





 「雨宮の!無事だったか!」

 「おうょ!部屋は?」


 「スイートだってよ!俺初めてだ!」


 俺は切嗣からカギをひったくると、エレベ-ターに飛び乗り、丁度一緒になったアンジーと朝倉は目をパチパチしながらこちらを見た。


 「あ・雨宮様!!お戻りになられたのですね!・・・ってぇえええええええええ!!!」

 「あ・・あまみ・・・ぃぃぃぃぃ。」


 意外と早いエレベーターだった。50階建てのホテルの最上階。ロイヤルスィートルームが俺たちの部屋らしい。

アンジーも隣りの部屋の鍵を持っているようだったが・・・。

悪いな・・・皆。


 エレベーターが到着するや否や、俺はアンジーも反対側に抱え、朝倉を肩に担いで部屋に突入した。


 「雨宮様・・・?」「銀河きゅんどしたの・・・?」「ふぇぇぇ?」


 俺はキングサイズのベッドの上に三人を転がし、新たな技を編み出した。


 「銀河きゅんの服が消えた・・・・。」

 「雨宮様・・・きゃっ。」

 「えっ?えっ?」









 「俺は今・・・猛烈に滾っている!!!」


 













ーーーーーーーーーー


 「切嗣。鍵は・・・?」

 

 先ほどものすごい勢いで通り過ぎていった雨宮に奪われて今は無い、手に持っていたはずの鍵を握ろうとして、手をワキワキさせている切嗣。


 「あれ?ない。」


 「もう一部屋の鍵は?」

 

 「アンジーちゃんが持って行ったけど・・・。」


 アンジーは先ほど現れた雨宮と共にエレベーターに乗って行ってしまった。

朝倉も一緒だ。


 「俺らの部屋は?」


 頭を抱えてうずくまる新庄。


 「俺たちは今無一文なんだぞ・・・?」


 わかるな・・?と諭すように切嗣の肩に手を置く新庄。


 「え・・・?え・・・?」


 「切嗣の、お前にしか出来ない事だ。」

 

 「「鍵取って来い。」」


 その後二人に脅された切嗣は、しぶしぶスキルを使い外から見えるロイヤルスィートのベランダから侵入したが・・・・。


それはまた別のお話。


朝倉美汐あさくらみしお27歳 印刷会社勤務のOLそして地下アイドル。


 朝倉美汐は印刷会社で働く普通の女性である。


 しかし、ひとたびコスチュームを変えると、地下アイドル、ヴァイブレーションしおりんに変身するのだ!

 マイクを使うことなく歌うアカペラの歌唱力が凄いと評判のアイドルとして小さなライブハウスでステージを披露していたが、ステージ帰り偶然居酒屋ヨモツヒラサカに寄り、一人酒をしていた所で店ごとトラックに押しつぶされ、転生する。

 雨宮より早い時間軸に転生したため、第三世界での生活は27年と、前世と同じ時間を過ごしている。

 元々のオタク気質のおかげで、転生後も特に不自由なく暮らしてきたが、この世界にはカラオケが存在せず、壁の薄い部屋に暮らしている朝倉には苦しい環境であった。


 しかし!我らのアイドルヴァイブレーションしおりんは、異世界にステージを変え、新たな装いで再び降臨するのであった!


 ネットワークを通じ、ファンを集めようとしたが、この世界ではネットワークアイドルは普通に星の数ほど存在しているため、全く鳴かず飛ばずのまま勢いのままにライブハウスを予約し、只歌うためだけに借りはしたものの、27年間歌から離れていた為、全く歌詞が思い出せず、魂の奥底からシャウトした。

その際にSS級スキルと後程認定された超振動臨界絶叫(ウルトラヴァイブレーションクリティカルシャウト)が発動。ライブハウスを丸ごと粉砕してしまう。

 そして借金を抱えたまま、何とか大手メーカーのティタノマキアに就職。返済の日々が始まったが、支店長の目に留まり、資格を持っていたことから、秘書に抜擢され給料が激増。僅か一年で完済した。

 新しい人生が始まると意気込んでいた所、魔人クルファウストに寄って肉体を改造され、超人亜種とカテゴライズされる改造人間にされてしまう。そして雨宮が現れ、その心無い一言に絶望し暴走してしまった。

 クルファウストの加護を取り除かれた時、朝倉は雨宮に寄り添う女性たちに何故か憧れを抱いてしまう。その影響もあってか、もともとコミュニケーション能力に問題のあった彼女は、まともに雨宮を見て話せず、何故か雨宮に恋をしてしまう。

本人も恋をしている自覚はあっても理由が全く分からない為、言葉に出来ない思いにもどかしさを覚えている。それと同時に、初対面で突然モブ娘呼ばわりされたことに対しては非常に憤慨していて、アイドルとしてのプライドを著しく傷つけられたと思っており、謝罪を求めたいが、怒りより恋心が何故か上回ってしまっているために言い出せなくなってしまった。

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