EP101 創ろうよ!
今年最後のガッツで投稿します。
今年もPVありでした。来年もよろしくお願いします。
良いお年を!
ーーーーーーーーーーチームミンティリア
工場の中に入った六人はその圧巻の巨大さに首が痛くなるほど見上げ、アレは何これは何と燥ぐイミルとトトの手を離さない様にぐるぐると回されるエリー。
「すっご、外から見ても大きい建物だと思ったけど、やっぱ中もすっごいね」
「これぐらいのサイズでないと、ロボは動かせないからさー」
コッファは皆のスクリーンショットを撮りながら、きょろきょろとデバックをしている様だ。
「やあ!皆久しぶり!」
「「「「「「誰や!?」」」」」」
突如何も無い空間に現れた一人の男性は、妙に親しげに一向に近づいてくる……と思ったが一行の横を通り抜け、その後ろに居たチームライの元へと進んでいた。
「びっくりした……」
「いきなり現れたのです」
急に話しかけられたと思い驚いた二人は、エリーにしがみ付き謎の男の行く末を見守っている。
「ジャックじゃん!」
「めちゃめちゃイケメンになってて草」
「普通の人間になってる!」
大爆笑のチームライを横目に見ながら足を進めるミンティリアの前に、小さな受付のようなカウンターが有り、その受付には三人の女性が何やら忙しそうに手を動かしている。
「あのー?」
「あ、銀河旅団の方ですね?少々お待ちください……。IDデータ照合中です」
「お?仕事が早いね?」
「照合が完了しました。初めましてようこそウルトラロボットクリエイタ―の世界へ。宜しければご説明をさせていただきますが、如何なさいますか?」
ミンティリアは皆を振り返り、互いに頷くとお願いしますと、チュートリアルを開始する。
ーーーーーーーーーー
「ではご案内させていただきます、私は銀河製作所エピ・クラチカと申します宜しくお願い致します」
「え?あ・よ・宜しく……」
(り・リアル―……)
自分達を引き連れてて前を歩く女性型NPCは、見た目だけでは普通の人間と一切区別がつかず、彼女の頭の上に自己紹介と共に表示された、名前のポップアップに表示される(N)の表記によって辛うじてそれが判別できる。しかしこれもミンティリアには何のNなのか厳密には判別できない。
壁に扉が収納されるタイプの扉をくぐり、案内されるがままに進んで行くと、見上げる程の大きさがある謎の機械が彼女達を迎え入れる様に仄かに光を放ち、静かにその巨大なボディの周りをモノリスの様な何かが回っている。
「ほぉおおおおお!!」「ふおぉおおおおお!!」
イミルとトトは見上げても天辺の見えない巨大な機械に感嘆し、エリーの手を引きぐいぐいと近づいていく。
「こちらが新しいクリエイトマシン、十七次元造物装置……通称十七号基です」
(何故十七号基?)
「何故と思われたでしょう?実は……」
理由は簡単、ただそんな名前が似合う気がした。それだけだった。
「特に意味は無いのね」
「ええ。ですが実際に何らかのロジックが有り自在にマシンや複雑な機器を製作する事が出来る……と言う事です」
(使っている人達も分からないのね)
ロボットだけでは無くこのクリエイトマシンは、家やビル等の建造物、パワースーツや洋服、有機物を含まない物なら大抵の物を創る事が出来る。しかもこの装置には未知の部分が多く、今日迄の研究によってその未知の部分が恐らく拡張機能であるという事、その拡張を行う為のパーツもこのマシンで造る事が出来るという事。各地の都市にも同じ装置があると言う事。そして。
「成程有料……えっ?」
「クレジットを積んでいただければ、その分多くのリソースを使う事が出来ます。クレジット無しでも利用は可能ですが、皆様のランクが低い間はそのランクに応じたリソースしか配分できず、大きな物を造るのには少し時間が掛かりますね」
(有料コンテンツって事かー!)
「多くの方は依頼を熟しランクを上げて、リソース配分を増やしていきますが、そうで無い方も僅かながらいらっしゃいます」
一部の金持ちNPCはそうやって自分の為に強力なマシンを造り、自らであったりその財貨を守るための護衛として、様々な物を作り出している。
「成程ねぇ、ゲーム的では有るけど、最初からそんな事は出来ないのね」
「はい、信用と言う物がございますので、相応……と言う事でございます」
ミンティリアのコミュニケーション能力に助けられ、コッファの頭の中に雨宮からは秘密にされていた内部の情報が次々に頭に飛び込んでくる。
「ミンティリアさん、ちょっと……」
「ん?ミンで良いわよ」
チームミンティリアはNPCから少し離れ、身を寄せ合って相談する。
「チュートリアルって大事だね、色々分かったよ」
「うん、この世界の情勢まではまだ分からないけど、この工場の役割は何となく分かって来たわね」
「あと信用ってのがもしかしたら結構大事なのかもしれないよ」
「それはエリーも思ったの、この世界ではひょっとするとクレジット=信用で直結しているのかもしれないね」
「うん。お金を出せば出すほど大きなリソースを使わせてもらえるって事は、金持ち=強敵が成り立っちゃうね」
「ほぅほう」
「じゃあ……お金を稼ぐのが大事って事?」
トトは今一つ分かっていないようだがとりあえず相槌を打ち、イミルは顎人差し指を当て、どことなくロペの所作を思わせる。
「そうだね。でもその関係が間違い無いなら、信頼もお金に直結する可能性があるよね」
「ふむ、ならまずは仕事でもしてみるか。冒険者ギルドの様なものが在るのかもしれないな」
一行は相談を終え受付嬢に付いてさらに進むと、銀河旅団専用の宿舎や食堂、更には資料室のような場所まで案内され、この世界がまるでゲームの中とは思えなくなってきたミンティリアは、その疑問をパーティメンバーにぶつけてみた。
「ねぇ此処って本当にゲームの中なのかしら?」
「難しい話?」
「あぁイミル、そう言う小難しい話じゃ無いんだけどね?何か気になっちゃって」
「此処迄現実と違いが無いなら、ゲームと考えないで行動した方が良いかも知れないね?ボスのやる事だから多分リアル準拠で色々大変そうだし……」
「その話はもしかするとあまり意味がないかも知れないな」
ティオレはそう言い、現実世界の事を振り返る。
「主はダンジョンを造って見せた、そしてそのダンジョンは世界を取り込む事だって出来た。だったら主の中には世界を創る方法論が有ってもおかしくは無い……と、私は思う」
「別の世界か……」
キャッキャと燥ぐゲーマ―眷属達を横目に、考察を済ませたミンティリア達は、これ以上は時間の無駄だと思い、受付嬢の話の続きを促した。
「皆さんはこれから当工場所属のディガーとなって、工場からの依頼や周辺の様々な方からの依頼を受けて、ランクを上げマシンアリーナで頂点を目指してみてはいかがでしょうか」
ニコリと整った笑顔を見せる受付嬢は、新しいシナリオの道筋を示し、受付の席へと戻って行った。
この世界ではクレジット、金以外の信用を手に入れる方法として、アリーナと呼ばれる其々の手に入れたマシンを使ってトーナメントを勝ち進み、賞金を獲得しアリーナランクを上げていく方法等も有り、高いランクの人間程信用もそれなりに得られるとの事だった。
「アリーナか、と言う事は……」
其々チュートリアルを済ませたチームは同じ事を考えているのか、辺りのチームを見渡し拳を前に突き出す。
「やっぱゲームはこうでなくちゃね、トップランカー目指しましょうか!」
「「「「「おー!」」」」」
考察は取り敢えずさて置き、折角のレクリエーションを楽しむことにしたチームミンティリア、受付嬢から示されたシナリオのスタート地点と思われるディガー登録装置の前に辿り着くと、全員で登録を済ませチームを登録し改めて『イミルと愉快な仲間達』とチーム名を登録した。
「何で私……?」
「ほら、お姫様じゃん?」
「解せぬ」
弄られているのか只構われているのか判断のつかないまま、イミルは頬を膨らまし、登録を済ませた後でその首に光るネックレスが突如現れた事気が付いた。
「なにこれ」
「ん?あ、私もある―」
「皆お揃い―?」
全員の首から同じ物が見え、それに手をかざすと現在のランク、所持金、所持品等各種データの閲覧が出来るようになった。
「成程、これがあって初めてスタートって訳ね」
「そのようだな。なんだか冒険者に初めて登録した時の事を思い出したよ」
自分が少しばかりのクレジットをその認識票と思われるネックレスに所持している事に気が付くと、これをどう使うべきかとトトは考える。
「千クレジットって何に使えるのかなー?」
「リアル準拠だと一食で無くなる金額なんだけど?」
「物価は安いと助かるなー」(皆贅沢だなー)
「……これはまさか、そうか、そう言う事か」
「ティオレさん?」
ティオレはそれぞれにしか見えないネックレスから投影されるARモニターを見つめ、何かに気付く。
「もう課金が出来るようだ」
「「「「「!?」」」」」
その言葉を聞いたコッファは、自分の口座とにらめっこし、この位なら、いや、止めといた方が……と頭を抱え、イミルはトトに直ぐにお金使っちゃだめだぞ、と諭している。
「レートは……?」
ミンティリアは試しに現実世界の一万クレジットを課金してみた。
「うわっ、十万クレジットになった十倍だ、これヤバいかも……増えちゃうかーそうかー増えちゃうのかー」
「危険なやり口だな……流石は主。いや、クルーからお金を巻き上げてどうするのですか!」
感心しつつも突っ込みを入れる事も忘れないティオレは、取り敢えずイミルと自分の分を一万ずつ課金し、トトやコッファ、エリーも其々とりあえず同じ額の課金をした。
「これでどれ程の物が造れるかよね」
「金額に比例してくれることを祈るばかりだが……それはそれで困るな」
つい自分の口座残高を思い浮かべてしまうティオレは、元々それほど金遣いの荒い方では無いが、何が役に立つか分からない今リアルマネーを選択肢に入れてしまっている自分に危機感を覚える。
(装備は支給されるが、細々としたものに散在していた自分が憎い)
「ティーねぇありがと」
「うむ、とりあえず十七号の所に行ってみるか」
「そうね、早く行かないと混みそう」
先ほど通り過ぎた制作区画、十七号基の周りには既に多くの眷属やクルー達が周りに集まり、其々ARモニターと向かい合い、何かをしている様子が伺える。
「成程、これでそのままアクセスして、操作出来るのね」
「むん、やってみる」
「まぁまぁ待ちなって、此処はまず私が一発やってみるから、それからでも遅くないって」
コッファはそう言い、クリエイト画面を開き操作に入ると驚愕する。
(えっぐい!マジリアル準拠!これはプロでも厳しいぞ……?何が何か分かってないとお金が無駄になる……やっべー)
コッファのモニターに表示された数百にも及ぶ項目は、全てリアルで雨宮が必要だと思ったパラメーターが割り当てられており、全てを理解する者は恐らく一握りもいないだろうと彼女は確信する。たまたま近くに居たライやゼニア等、プロフェッショナル達が真っ青になっているのを確認し、何故こんなに難易度を上げたと自らの主に軽く呪詛の言葉を吐いた。
巨大な十七号の周囲には数多くのコンソールが、渋滞が出来ない様に間隔を空けて配置されている。
コッファは取り敢えず一万クレジットを課金し十万ポイントを手に入れ、全三百二十項目にも及ぶパラメーターへと均等にポイントを振った。
(ポイントのレートは十倍かぁ……これで大体の能力が分かるっしょ……後は)
そして作る物の指定を搭乗型マシンと設定し、更に千クレジットを課金し同じ様に一万ポイントではあるが、均等に振り分けたマシンを造った。
「さて、何が出るか……」
「何を造ったのです?」
「NVDだと思うんだけど、もしかしたらSWになるかも……」
「ポイントの量が問題なのか?」
「それも有るかも」
そして一分も経たない内にコッファのインベントリーに、名称未登録ワーカーと、名称未登録スペースワーカーの二つが投下された。
「うわっ陸専用ワーカーとか初めて見た!これはヤバいぞ!」
「何だと……ポイント如何によっては適応出来ない地形が有るのか?」
「そうみたいだね、一万ポイント均等に振ったワーカーは……弱い!これゴミだ!陸戦仕様の……ブースターも何もない奴……何に使う奴だこれ?」
一万ポイントを振り分けたワーカーは、徒歩で動く旧式ワーカーのマイナーチェンジの様で、燃料に軽油が指定されており、それもまたコッファを混乱させる要素となっている。
「それは見た事有るのです。農業用ワーカーにそっくりです」
「……そうか、農家でもやってみるか」
「それよりもどの位クレジットを入れたんだ?」
「千と一万とで其々均等に造ったよ」
周囲の眷属達にもその話が聞こえたのか、全額かよ……と、人柱を躊躇しないコッファに対して青い顔で様子を窺っているが、一万位なら……と残高とにらめっこを始める者達が現れ始めた。
「そもそもSWを造るのにはそれだけは必要なんだな、だが、今後の事も考えてとりあえず私も一万にしておこう。イミルもそれで良いな?」
「うん。コッファ、教えて」
「良し来た、ちょっと……いや大分長くなるけどこれからの事を考えて、ちゃんと説明するからあっちで座ろうよ」
ミンティリアパーティー改め、イミルPTは近くに併設されているオープンテラスのカフェに陣取り、コッファの確認した十七号の詳細とその分析を聞くことにした。
「あのマシンはリアル準拠……現実世界と同じ要素を盛り込むことで本物と遜色の無いと言うか、恐らく本物のマシンを創る事が出来る様になっている物なんだと思う。十七号の意味は分からないけれど、恐らく一万一ポイント以上でSW、それ以下でノーマルワーカー。私が均等に割り振った十万ポイントでは、マッサマンで見かけたデュアルの初期型、デュアルプレーン、五百年以上前に存在したSWと同レベルの性能だった。一万ポイントがデフォだと考えれば、そこそこの性能な筈」
コッファは一つ一つのデータを思い起こすようにゆっくりと、トトやイミルにも分かるように説明していく。
「私の提案として、ちょっとした賭けになるけれど……。ちょっと多めに課金してスタダ決めるのが有りなんじゃ無いかな?と、考えている。確かに出費は結構痛いけど、皆ARコンソールを開いて此処を見てみ?」
コッファの開いて見せた画面は、課金画面と同じ画面からタブ一つ隣に表示されている、exchange、両替のタブだった。
「等価だ」
「な!?何だと!?」
その言葉だけで事態を把握したティオレは、つい大きな声を出してしまった事で回りから注目されている……様な気がして辺りを見渡すが、同じ様にチームで相談している者達も含め、その様子を見る限り自分に注目している者達は居なかった。
「さっき課金は十倍だと言ったじゃないか……」
「言ったよ……でも実際にそうなんだから仕方ないじゃないか……。でも一日に一回しか現実に持ち出せないみたいだから、ある程度は……いや、そういう問題じゃないんだけど……」
「お金増えるのー?」
「「「しっ!」」」
きちんと分かりやすく説明していた事も有り、トトもこの事態の異常さに気が付き、自身がお金で非常に苦労したことをふと思い出し、遠い目をして虚空を見つめている。
「トトちゃん?」
「ううん、何でも無い」
トトは頭を振りいつものトトに戻る。最近はいろいろ上手く回り始めているのか、トトは昔の思い出と過去に遭った酷い事を上手く切り替えて考えられる様になり、以前よりお金に苦労し無くなった事も有ってか、順番に過去手に入れられなかった物を取り戻していこうと、本人なりに考えて日々を過ごしている。
「一日一回も換金できれば、稼ぎとしては十分すぎると思うのよー?」
エリーが言うように日雇いの仕事と考えれば、充分稼げるのではないかと他の五人も考える。しかもシナリオが進めば相応の危険が待っているのだろうが、それ相応の稼ぎも獲られるのだろう。口の端が緩むのを少し感じるコッファだが、そこを考えた時、初期投資をケチってはいけないのでは無いかと、この話の始めに戻る。
「私は一千万課金する。それで全空間仕様の戦艦を一隻創ろうと思う」
「「「「「!?」」」」」
トトやイミル、エリー、ティオレにもその金額は軽く出せるような金額では無いのだが、ミンティリアには特に気になる金額では無い。しかしゲームに課金する金額としては些か行き過ぎとも思ったミンティリアは、その考えの続きを促した。
「一億ポイントも有れば恐らくマギア級と迄は行かなくとも、サラマンダー……いやオベロン、ティターニア級位迄は行けるんじゃないかと思う。母艦が有れば恐らくそれなりに良い仕事も受けられる筈だし、それを持っているだけで多少の信用は得られる筈だよ」
「はいっ!」「トト君どうぞ」
元気良く手を上げて意見を述べるトト。手元にはサービスで運ばれてきた透き通った冷たい水の入ったコップが有り、立ち上がった瞬間に一瞬叩き付け、テーブルに水が跳ねる。
「誰が動かすの?」
「「「「「「……」」」」」」
確かにここにはメインオペレーターが二人、エンジニアスキルのあるコッファもいて、動かせそうな雰囲気を醸し出してはいるが、実際の操舵主を経験した事が有るものはいない。もっと小さなマシンなら全員が動かせるものの、流石に戦艦を動かした経験は無く、今からその情報をインストールするにしても一度外に出なければならず、イミルPTのメンバーは少し考えこむ。
「お金で解決出来る……と思う」
「まだ課金するつもりか!?」
「投資額に見合う稼ぎが有ればいいんだよ!一億位迄は許容範囲だ!」
「ちょ、いや、それは」
裏と表の電子の世界で暴れてきた彼女にとって、お金とは只の数字で在り何時でも簡単に手に入れられるものと言う認識以外は特に無く、多少興奮してその頃の考えがチョイッと顔を出したが、一瞬で先々を考えた結果、やり過ぎもいけないかも?と皆の止めこそしない物の、少し考え直した方が良いのでは?と必死にコッファの課金を考え直せと言う姿に、心の動いた彼女はここから先の事も考え、結局一千万クレジットの課金を行う。皆は其々のマシンを創り、コッファは皆に見守られながら巨額の課金を行う。
「ふぅ……結構ドキドキするね」
「普通そんなに課金しないのよー?」
「むぅ」
一千万クレジットの課金の末一億ポイントを手に入れたコッファは、周りの眷属達が少ないポイントをやりくりして陸戦用ワーカーを創っているのを横目に、バイザー型端末を装着し、自らの頭脳をフル回転させ一億ポイントを上手く振り分け、その振り分け項目の中に拡張適性の項目を発見、亜空間・地上・宇宙・海・地中・捻じれ空間等の適性を獲得し、現実世界ではありえない高性能全適応型戦艦を創り上げた。
「ふははははは!出来た!出来たぞ!!」
制作時間実に五時間。途中飽きてしまったイミルやトトを連れてエリーは外の街に繰り出し、ティオレはミンティリアと共にさらに街の外へと向かい、十万ポイントのSWの性能を試しに行ってしまった為結局一人でこの場に残り、完成させた感動を仲間たちと分かち合おうとしたコッファは、一人膝を抱え涙をぬぐうのであった。
コッファの製作が終わり、辺りを見渡して見ると、彼女と同じ様に膨大な項目を理解するメカのプロ達が、仲間のマシンを一人で創っていたり、自分のマシンを拘っていたり、ちらほらと眷属達が残っている。
「よっ」
そんな中コッファに話しかける機会を窺っていたのは、アマリーだった。
「イミル達がいるからそっちに合流したいんだけど、アタシ未だ他の仕事があってさー。とりあえず様子を見に来たんだけどどうよ」
「あっ、アマリーさんお疲れっす。何とかなりそうですよ、ウチのPTは、ですけど」
「ほほう、結構自信ありそうじゃん?」
「まっプロですからねー」
アマリーは軽くコッファから説明を受けた後、自分の分も頼むとコッファの端末へとクレジットを送金し、コッファはアマリーのマシンを製作にかかる事にした。
「ちょっとやり過ぎじゃ……ってもう居ないし……」
アマリーから送金された金額は百万クレジット。一機のマシンを創るのに掛ける金額では無い、と思いつつも、楽しくなってしまったので仕方ないと言い訳をし、一千万ポイントのNVDを創り出し、満足げに背もたれにもたれ掛る。
(でも、アマリーさんのおかげでNVDを創るのに必要なナノマシン仕様の権限が、一千万ポイントが下限だって事が判ったから、得るものは多かったな)
そんなやり取りがあった事等つゆ知らず、外に出ていたメンバーが各々戦利品を片手に戻ってきた。
「ほいっ」「もごっ!?」
「焼き鳥だよー」
大きな欠伸をしていた所にほいっとネギまを差し込まれ、あわや大惨事かと思われたが、そこは上位眷属、その口でもごっとつかみ取り、モグモグと租借し目を見開く。
「ウマーーーーっ!」
「でしょー?」「私が発見しました」
イミルがエッヘンと胸を反らし、大量の紙袋に入った焼き鳥を三人でもぐもぐしながら、帰ってきた。
「船はどうー?」
「ふぁっちり」
ぐっと親指を立て、私の創った最強の戦艦を見せては見たものの、数字ばかりが羅列された艦のステータスを見ても、三人は今一つ理解に及ばず、出かけている際に見つけた地下格納庫へと行けば、マシンを出して観る事が出来るとコッファを連れ出そうとするのだが、他の二人が未だ戻らず、二人には携帯端末を通じてメッセージを送信し、四人は工場の地下にある巨大格納庫へと向かう事にした。
ーーーーーーーーーー銀河製作所 共用地下格納庫
先の見通せない程巨大な格納庫にやって来た四人は、自分達の創ったマシンを並べあーだこーだと語り合い、街の外に出た二人が戻るのを待った。
「ごめーん、遅くなっちゃった」
「済まない、中々梃子摺ってしまった」
「何処まで行ってたのさ」
「街から出て直ぐの谷なんだが……」
銀河製作所の有る工場街を抜け、炉模町の外へ出るとマシンや輸送機も通れる北向けの巨大な高速道路が有り、西には謎の洞窟、東には谷、南には森が広がっており、見渡す限りの巨大な森は立ち入り禁止となっている。
二人は東の谷へと向かったのだが、二人曰く、東の谷には巨大な竜が闊歩し、二人の十万ポイントを注ぎ込んだSWで何とか亘り合えるが、恐らく強力なモンスターなのではないかと話し、二人のゲーム的なインベントリの中には、その竜からドロップしたと思われる数多くの素材が入っており、二人のゲーム内レベルも桁違いの上がり方をしている。
「そこって始めから行くべき場所?」
「多分違う……絶対違うわね。あんな恐ろしいモンスターがレベル1プレイヤーの十万ポイントマシンで倒せるはずが無いわ。プレイヤースキルとかそんなレベルじゃ無かったのよ」
「ああ、私も操作に熟れる迄撃墜される寸前だったからな……」
「たまたま私達のSWにアンチマテリアルライフルを装備していたから倒せただけで、普通は絶対無理よ」
「暫く竜は見たくないな……」
そして二人のマシンも皆の横に並べられ、かなりボロボロにされた状態で、マシンの足元にあるコンソールには修理費用がこれでもかと大きく表示されている。
「うっ、二千クレジット……」
「あちゃー、千五百は痛いなー」
「貸す?」
「あんたもう課金すんのやめなさいよ!何か痛々しいのよ!ってか千五百位で借りないわよ!」
コッファには特に痛くも痒くも無い程度の出費なのだが、他の仲間達には理解する迄に拒否反応が出てしまう。
「むぅ~。まぁ良いか。取り敢えず戦艦も有るしどうする?」
「いきなり戦艦は無いでしょ?取り敢えずなら依頼を受けに行きましょうよ。それかアリーナに挑戦してみるか」
「そこはストーリーに添って進んでみないのー?」
「あぁそれがあったか……この先のストーリーは?」
「何か好きにしろとしか言われていなかった気がするが?」
「自由なの?逆に不自由なんだけど……?」
「はいはいっ!トトは戦艦に乗ってみたいー!」
「私も……」
年少組二人はどうしてもラピスとの比較をしてみたいらしく、戦艦への搭乗を願い出るが、また今度と先程の案内所とは違う、依頼受け付けのカウンターへと進み、其々携帯端末にディガー専用のアプリをインストールした。
「いちいち此処に集まっているのは、携帯端末を持っていない人達なのね」
「このアプリが有れば何処でも依頼を受けられるし、報酬も遠隔で受け取れるから便利だな」
「さぁイミル隊長、我々は何処の依頼を受けましょうか」
ティオレはイミルに目線を合わせながら、頭に手を置き優しく微笑みかける。
「うん、この名前が気になってた」
イミルは自分の端末に表示したクライアントの依頼から一つを選び、皆に見せる様にその画面をゆっくり動かしながら説明する。
「高速道路に土砂が積み上がっているのを除去して欲しいって、依頼が有る」
「ほうほう」
イミルの示した依頼は、複数のクリア条件が指定されている複合依頼で、土砂や瓦礫の除去と共に道を塞ぐ原因となったものを突き止め、排除又は排除出来ない場合は、ディガー組合に報告せよとの依頼だった。
「スリムコンドル運送」
「この名前が気に入ったのねー」
「そう」
「何か普通っぽい依頼主なのに結構込み入った依頼なんだね」
「良し、では早速その依頼を受けて北の高速道路の入口へ向かうか」
「「「「「おー!」」」」」
イミルと愉快な仲間達は、千ポイントで簡単に作れるバギーに乗り、町中をすいすいと走り、炉模町の北へと向かうのだった。
エピ・クラチカ 二十六歳 高位人種 銀河製作所受付嬢
ウルトラロボットクリエイタ―のアップデートによって新たに追加されたNPC……として生み出された筈だったが、その実雨宮のサーバーの中に存在していた過去のナノマシンによって消え去った惑星の住人の一人。
彼女の精神はナノマシンによってズタズタに引き裂かれていたのだが、その精神生命体を雨宮によって修復される事によって復活を遂げた。
しかし彼女が生きた時代とは全く時間軸が異なり、また彼女は別の銀河に生まれた人種である為、今居る太陽系について全く知識が無く、放逐する事も出来ない為、消去法的にウルトラロボットクリエイタ―のNPCとして眷属達の世話役を雨宮から与えられ、これから先をどうしたいかという人生について考える時間を雨宮に与えられている。
高位人種とは通常の人種よりも多くの環境に適応が可能な上位種となっている。彼女の場合は宇宙空間、つまり真空状態にある程度の耐性が有り、宇宙服やパワースーツを着用せずに宇宙空間で活動する事が可能となっている。しかしその状況はさながら息継ぎの出来ない海で潜水している様な状況で在り、肉体が適応していても人種としてのシステムのせいで完全には適応出来ておらず、それを補うために彼女の生きてきた惑星では酸素供給システムが非常に発達しており、雨宮はその知識を元にこの銀河で存在していない新しい酸素供給システムを創り出し、キャッシュマンエレクトロニクスへと流している。