十七章
―――『ミズガルズ』中央都市『雪消月』の宿『ささめ雪』のカナトの部屋の前―――
ここに来てどれくらいの時間が経ったのだろう。
いつまでもこうしていても仕方がない。
意を決してドアノブを回し扉を押す。
室内は夕日で照らせれて、風でカーテンが揺れる。
そしてベットの上で静かに寝息を立てるカナトの姿が視界に入った。
「カナト…」
思わず言葉が漏れる。
そしてベットの傍まで歩み寄り……
その頭を持ち上げおもむろに自分の頭にぶつけた。
「ぐはっ!!」
カナトが唐突に音連れた痛みで飛び起きる。
私は痛む頭をさすりつつカナトを見つめる。
「おそよう、カナト。随分とゆっくりなお目覚めだねぇ。」
「シルフィアーナ!?なんでここに…って今何時だ?」
その反応を見て全て元通りになったことを悟る。
「もう夕方だよ。」
「うわぁ…マジか…。悪い!!油断した!」
カナトはベットの上に座りながら頭を下げた。
自分でも分かるくらい口角が自然と上がっていく。
いつものやり取り。
凄く心が落ち着く。
「ん…?なにニヤニヤしてんだ?」
「……っ!!」
慌てて顔を逸らし、窓の傍まで歩いていく。
「ねえ…カナト。私頑張るから…頑張って強くなるから。だから…カナトを守れるくらい…ううん、カナトの隣に立てるくらい強くなったら…大事な話があるの。」
「大事な話…?今じゃダメなのか?」
「…っ!ダメ!今は…その色々と心の準備が…」
「…?まあ、いいけど…分かったよ。でも簡単には立たせてあげない。シルフィアーナに負けないくらい僕も強くなる。もう―――」
その先の言葉は風に遮られる。
でも微かに聞こえた聞こえた言葉は―――
『大事な人に死んでほしくないから。』
「よし、じゃあ行こうか、次の層に。」
「上に行く方法が見つかったのか!」
「ふふーん、まあね。カナトには話したいことたくさんあるんだから。」
本当にたくさん―――
カナトのことをもっと知りたい。私のことももっとたくさん知ってほしい。
その想いは心の奥底にしまう。
カナトが自分から話してくれるその日まで。
その時は私も……
部屋の中を暖かな風が吹き抜ける。
天はどんなに手を伸ばしても届かない。
でも誰かと一緒ならどんなに不可能なことでも出来る。
この世界はあらゆる可能性に満ちているんだから。




