ケンカ
放課後、校庭ではイカした二人が対立していた。
一人は相手を今にも襲い掛からんとしている西野大地。
一人はそんな相手を気にしていない様子で他の事を考えている東野院空。
一人は誇り(プライド)を傷つけられた。
一人はその誇り(プライド)を傷つけた。
彼ら二人の様子を友人の月華と陽子はただ黙って見守ることしか出来なかった。
「どれ、手合せ願おうか!」
空が構える。 それと同時に大地も戦闘の態勢をとった。
一陣の風が吹く。
「行くぜオイィッ!」
先手必勝。 先に動いたのは大地だった。
憎き敵の前まで一気に駆け寄り拳を振り上げたその時、
「タイムストップ!」
全ての動きがピタリと止まった。
説明しよう。 『タイムストップ』とは身体能力が異常な空が使える技の一つ。 全神経を巡らせ、時が止まっている様に見えるのだ。
「愚かな大地め。 俺に逆らった事をその身をもって後悔させてやる! オラオラオラァッ!」
動きが止まっている大地にこれでもかと目にも留まらぬ速さでラッシュする。
気が済んだのか、彼はラッシュする手を止め「そして時はなんとやら」と言ったと同時に「ブルァッ!?」と大地がグルグルと回転しながら吹っ飛び地面に伏した。
「大地くん!?」と悲鳴を上げる陽子。
何だ? 今、何が起こったんだ? と大地と空の間に起こった事を捉えられずに驚愕する月華。
「グォッ……、空……。 テメェッ……、何をしやがった……?」
「別に。 少し本気を出したまでさ」と空は涼しい顔をしながら答えた。
「ふざけんな……! この……、クソ野郎が……!」
「そこで地べたに這いつくばっているがいい!」
アッハッハッ! と空は魔王の様な高笑いを上げながら大地の目の前から去って行った。
力が入らない大地は地に伏したままただ彼が去る背中を見つめる事しか出来ない悔しさに「クソッ!」と拳を強く地面に叩き付けた。
こうしてイカした二人のケンカは終わりを告げたのだった。